ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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はじめてのおつかい・雪花・白羽編

「ふぁぁぁ……おはようレイナーレ」

「おはようとは言えませんね。もうお昼過ぎですよ」

「あ、もうそんな時間なの? ゴグマゴグを調整してたら時間の感覚なくなっちゃって」

 欠伸を一つして周りを見る。

「あれ? 白羽と雪花ちゃんは?」

「あ、あの二人ならおつかいに出かけてます」

「ふーん……」

 朧は目を覚ますために顔を洗おうと洗面所に向かおうとしたが、洗面台の扉のノブに手をかけた瞬間だった。

「何ぃ!? なんで、どうして、何故、一体全体どういう事だ!」

「落ち着いてください」

 掴みかかった朧を、レイナーレが光の杖で殴打して気絶させた。

 

 

 

 どうも。白雪(しらゆき) 雪花(せっか)です。ちなみに、白雪と言うのは私に姓が無かったので朧さんが付けてくれました。

 今は(しら)ちゃん(黒羽(くろはね) 白羽(しらは))と一緒にレイナさん(レイナーレ)に頼まれてお買い物です。

 ちなみに、何故自己紹介しているのかといえば、朧さんが自己紹介は大事だと言っていたからです。

「頼まれたのは何だっけ?」

「人参、玉ねぎ、ジャガイモ、豚バラ肉、カレールゥ」

 メモを取り出そうとしたら、白ちゃんが教えてくれた。

「今晩はカレーライスかな?」

 私が着る服の色はほとんどが白なので、跳ねるのには気を付けないといけません。

「カレー、嫌い」

「白ちゃん辛いの苦手だもんね」

 レイナさんが作るカレーは甘口なんだけどね。

「う~ん。スーパーに行けば大丈夫だと思うけど……商店街の方がいいのかな?」

 レイナさんはスーパーじゃなくて商店街を利用してる。

「商店街だとお店をいくつか回らないといけないから、今回はスーパーにしよう。白ちゃん、いい?」

「了」

 白ちゃんはコクンと頷いた。

 

 

「うわぁ~、おっきいなー」

 スーパーには初めて来たが、ここまで大きな建物はお隣さんを除けば初めてだ。

「しょ、商店街の方が良かったかな?」

 白ちゃんに同意を求めたが、白ちゃんはため息を吐いて一人でスーパーの中に入っていってしまった。

「あ、待ってよ白ちゃん。勝手に行っちゃだめだよ」

 私はそれを慌てて追いかけてスーパーの中に入った。

 

「ううっ、中も広い……」

 広さでいうなら前に住んでいた山の方が広かったが、ここは広いのに加えてごちゃごちゃしていて、何がどこにあるのか分からない。

「えっと……野菜は」

「こっち」

 何がどこにあるのかも分からない私を、白ちゃんが引っ張る。

(じ、自分よりも年下の子に……)

 少し――いえ、かなりショックです。

 

 その後、頼まれていた食材を買い――選んだのは私です。野生児なので食材選びには自信があります――会計を済ませてお店を出たのですが……

「へー、中々可愛いじゃん」

「でもちょっとつーか、かなり幼くね?」

「ばっか、それがいいんじゃねえか」

「なんだ、お前ロリコンかよ」

 変な男の人たちに囲まれてしまいました。

(困ったなあ)

 私は雪女で、白ちゃんは天使と堕天使の合成獣(キメラ)――ところでキメラってなんですか?――なので、攫われそうになったとしても大丈夫だとは思います。

 ですが、朧さんには出来るだけそういう力は使うなと言われているので、なるべく穏便に事を済ませたいです。

「あの、何か用でしょうか?」

「お嬢ちゃんたち、ちょっとお兄さんたちと遊ばない?」

「今なら美味しいお菓子とかあげるよ?」

 ……そんな言葉で付いていく子供は最近ではいないと思います。今時の幼児誘拐犯でもこんな誘い方はしないでしょう。口説くのなら朧さんみたいにやってください。あの人がやった事は半分脅迫でしたけど。

 そんな私の内心を知ってか知らずか、さっき言わなかった人がさっき言った人を笑いました。

「今時そんな言葉に引っかかる奴なんていねーって」

「相手は子供なんだから、多少無理矢理でも問題ねえよ」

 そう言って私たちに向かって伸ばされた腕は、白ちゃんに跳ね除けられた。

「触るなゴミ共」

 白ちゃんが冷たい声音で言い放った一言に男の人たちは一瞬怯んだ様ですが、すぐに顔を真っ赤にしました。

「舐めてんじゃねえぞガキ共!」

「犯されてのかゴラァ!」

 年齢が二桁にも達していない相手に対してその発言はかなりアウトだと思います。いえ、今はそんな事を行っている場合ではありません。

「逃げるよ白ちゃん!」

 男たちに立ち向かうように鋭い目つきをして立っている白ちゃんの手を引き、私は周りの雑踏の中に紛れるように逃げます。自慢ではありませんが、私は逃げるのは得意です。

 後ろの方で逃がすなとか何しやがるとか家の子に手を出すとか死にたいのかとか、叫び声が上がりましたが、振り向かずに人混みの中を走り抜けました。

 

 

 

「うぅ、すっかり暗くなっちゃった」

 あの後、適当な方向に逃げてしまったため帰り道が分からず、家についた時にはもう日が沈んでいました。

「乙」

「白ちゃんが言う?」

(元はといえば白ちゃんがあの男の人たちに喧嘩を売るような事をしたのが原因なんだよ? 私もあんな人たちに触られるのは嫌だけどさ)

 私がそんな葛藤をしている間に、白ちゃんは家の扉を開けて中に入ってしまいました。

「ただいま」

「た、ただいま帰りましたー」

 白ちゃんに一拍遅れて私も帰りの挨拶をすると、奥からフラッと朧さんが出てきてお帰りとだけ言ってまたフラッと戻って行きました。

 それと行き違いにレイナさんがやって来ました。

「お帰りなさい。ちょっと遅かったけど、何かあった?」

「あの、ちょっと男の人に絡まれて」

 私がそう言うと、レイナさんは頭を痛そうに押さえてから私たちから買い物袋を受け取りました。

「気を付けてくださいね。何かあったらあの人が激怒しますから」

 それで一つ気付いた。

「さっきの朧さん、何か変じゃありませんでしたか?」

 私たちがこんな遅い時間に帰ってきたのにお帰りの一言だけだったし。

「あー……」

 レイナさんの目が泳いだ。そして私の耳元に顔を寄せると、小声で(ささや)いた。

「ここだけの話ですが、さっきまで全然落ち着かない様子で動物園の熊みたいに部屋の中を歩き――」

「レイナーレ」

 レイナさんの言葉を遮るように、いつの間にか現れた朧さんが似合わない笑顔をして立っていた。

「な、なんでしょう朧さん?」

「食材を買ってきて貰ったんだから、もう夕食の支度(したく)できるよね?」

「は、はい今すぐ」

 そそくさと立ち去るレイナさんを半目で見送ってから、朧さんはこちらに目を向けた。

「大変だっただろう? 風呂は沸いているから入るといいよ。二人一緒にね」

「あ、はい」

「感謝」

 朧さんは私たちを見て懐かしそうな顔をした。その意味を尋ねようとしたが、その前に朧さんが口を開いた。

「何なら俺が一緒に入って背中でも――」

「お断りします」

「ごゆっくりどうぞ」

 


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