歪みの行進曲
さて、死にかけたがそれはさておき。ヴァーリと美猴をイッセーが通るであろう道に案内した後、『
「ゲオルグー。例の物はできたかー」
「こっちだ」
そう言いながらどこぞの学校の様な場所を歩いていると、教室の一室から声をかけられた。
「ここにいたか……出迎えくらい寄こせ」
広くて探すのが面倒だ。
「生憎、うちにはお前を出迎えられそうな人材はいないのでな」
「
「この組織にまともな人間が入ると思うのか?」
それは言外に『
「よし、表に出ろ」
「それで、例の物は?」
「ああ、出来ている」
ゲオルグが手元の魔方陣をいくつか操作すると、霧と共にいくつかの宝珠がはまった円形の装置が現れた。その装置の中央には、誰かを拘束できるように枷が幾つも付けられていた。
「機能は?」
「注文通り何らかの合図と共に枷に繋がれた者の
「素晴らしい。さすがは上級
「これで例の件は呑んでくれるのだろうな」
「ああ。特殊な『蛇』の事だろう? 面倒だが引き受けた」
ゲオルグの問いに、渋々とだが頷く。
「それで、これはどうする? もう渡しておくか?」
「おや? 頼めば設置してくれるのかな?」
「アフターサービスとしてそれくらいは引き受けよう」
「へぇ、羽振りがいいねぇ。でも遠慮して、自分でやらせてもらうよ」
(仕掛けたい事もあるしな)
内心で今後の算段を付けながら、結界装置を魔力で製作した影の中の異空間へと仕舞い込む。
「取引は完了した。これにて失礼する」
そう言って転移し、この場を後にした。
「……この場には転移妨害の結界を張っているのにも拘わらず、いとも簡単に転移を行うのか」
「クスクスクスクス……」
場所は変わって『
なお、周りに人はいない。悪魔も堕天使もいない。今の朧の半径百メートル以内に近づける生命体はオーフィスだけである。それ以外は皆実験材料にされる可能性がある。
何故そんな事になったかというと、『
そもそも朧は戦闘職よりも研究職の方が向いており、RPGの適性職業はラスボスを影で操る真・ラスボスであり、彼がその気になれば三大勢力は今頃戦争になっていたかもしれないほど悪知恵が働く。腹黒いと言ってもいい。今やっている事も、他者が聞いたら誰もが指を指して非難するであろうほどに酷い事である。
「これで旧魔王派は……クスクスクスクス」
それに加え、何かに没頭している朧は何をしている訳ではないのに、周囲の雰囲気が暗くなる。部屋の明かりの一段目と二段目くらいの違いだ。その雰囲気に当てられると、誰もがまるでお通夜の様に静かになる。
故に、研究室に閉じこもった朧に近づく者はオーフィスを除いて存在しないのである。
「クスクスクス……
そこで朧はクククと不気味に
「全く、誰かは知らんがいい作戦を考えたものだ。わざわざ
朧がそれを聞いて考えたのは些細な事。ほんの少しだけの要素の追加。
「発動の際に光力と
朧はこの作戦で、旧魔王派を壊滅させようとしていた。周りの被害などは一切考えずに。
「さあ、もうすぐで終わりだ。待っててオーフィス。すぐに、
朧は進んでいく。元通りには決して繋がらない道を。