IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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やっと書き終わった…;

因みに次は外伝のIF学園編で書いて、そっから先は暫くなろうの方で新作を書く予定です。


のほほん・ひる 後編その2

 

 

「さて、これからどうしようか?」

 

「とは言ってもな、最早選択肢が…」

 

 

 割と衝撃的な合流を果たしたバンビーノとアイゼン達。突然の転移、遭遇した複数の化物、未だに合流出来ない仲間達。悩みの種は尽きないが、今の彼らを最も悩ませているのは、他でもない彼女達だった。何とか再会を果たしたセシリア、鈴、シャルロット、ラウラの四人は互いの無事を喜び、その後は雑談を続けていたのだが…

 

 

「あーあ、もうこんな時間…どうしよう、今日の店番すっぽかす羽目になるわ……」

 

「私はとっくに門限が過ぎてますわ。このままでは確実に、お母様だけでは無くお父様にも叱られます…」

 

「むぅ、私は寮生活だから親はともかく、参謀長に懲罰を受けるのは確実…」

 

「ラウラ、こんな時ぐらいミリタリー部の口調やめたら? て言うか、参謀長って教頭先生のこと?」

 

((違和感しか感じねぇ…))

 

 

 もう薄々と感じていたが、ISを知らなかったり、藍越学園在中だったり、全員家族円満だったりと、目の前の4人は自分達が知っている彼女達と瓜二つだが、殆ど別人であった。似ているところや同じところもチラホラと存在しているが、ISのことを微塵も知らない時点で論外だ。

 しかし、だからといって放っておく訳にはいかない。もしも自分達の知っている一夏達と鉢合わせしたらどうなるか不安も感じるが、このまま見捨てて死なれでもしたら目覚めが悪い所の話では無い。

 

 

「まぁ、なるようになるしかないか…」

 

「そうだな。てなわけで、おーい御嬢さん方、そろそろ移ど…」

 

 

 その時、不意にミシリという不吉な音が足元から聞こえてきた。嫌な汗が流れるをの感じながら、そうっと床に目をやると、小さな亀裂が目に入った。その瞬間、小さな亀裂はビキビキと大きな音を立てながら一気に広がり、やがて騒音を撒き散らしながらポッカリと巨大な穴を作り出した。

 突然のことに反応が遅れ、バンビーノ達6人は為す術も無く重力に引っ張られ、穴に吸い込まれるようにして一人残らず落ちて行った。一瞬だけ全員死を連想したが、覚悟をする暇は与えては貰えなかった。

 

 

「痛たぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「ぐえ!?」

 

 

 途中で誰かが悲鳴を上げたかもしれないが、それが誰なのか確認する暇も無いぐらいに、早々に床に叩き付けられたのである。ギリギリで受け身を取り、ダメージを最小限に抑えたアイゼンが即座に復活し、周囲の様子を窺う。何やら病院とは思えない、随分と広いホールのような場所に落ちたみたいだが、一体ここは何処なのだろうか。そして、そんな場所に落とされた他の面々は無事なのだろうか。

 

 

「大丈夫、皆?」

 

「おおぉぉ痛てて…凄い痛いが、全員生きてる」

 

「もう、踏んだり蹴ったりですわ、今日の私…」

 

 

 背中、もしくは尻から叩き付けられ、変な悲鳴や呻き声を出すくらいに滅茶苦茶痛かったが、落ちてから床に到着するまでの時間と、辛うじて誰も怪我をしてなかったことから考えるに、そんなに高いところから落とされた訳では無さそうだ。

 

 

「それにしても、ここは一体なんだ…?」

 

 

 改めて周囲を見渡すと、本当に何も無い質素な広間だった。しかし目を凝らすと、何やら正面に大きな扉が存在していることに気付いた。今までの病室の扉と違い、無駄に大きく、無駄に装飾され、無駄に威圧感を誇ったその扉は、なんですぐに気付けなかったのか不思議なくらいの存在感を放っていた。

 

 

「なんか、ゲームのボス部屋みたい…」

 

「ちょっと、そんなベタな…」

 

 

―――何て誰かが言ったその時、扉が内側から勢いよく開け放たれた…

 

 

「うおッ!?」

 

「な、何!?」

 

 

 同時に何か黒い影が二つ、中から放り投げられるように飛んできた。影は空中でクルリと回転し、体勢を整えて綺麗に床に着地するや否や、忌々しそうに扉の方を睨み付けた。因みに、扉に思いっきりガンを飛ばしている二つの影…もとい、二人の少年少女は、バンビーノとアイゼンにとって非常に見慣れた二人だった。

 

 

「セイス、それにエム!!」

 

「ん? おう、バンビーノとアイゼンか。二人も無事で良かった」

 

「セヴァス、今は目の前のアイツに集中しろ。でなければ、マジで死ぬ」

 

 

 計らずとも合流出来たことにより、少なからず喜ぶ様子を見せるセイスだったが、それに反してエムの様子には余裕が無かった。良く見ればセイスもエムも少しばかりボロボロになっており、僅かだが疲労の色も見え隠れしている。生身でのエムの実力はバンビーノと同等であり、セイスはそれを軽く上回っている。おまけに二人の信頼関係は組織内でもトップクラスということもあり、二人で連携を取らせた際は凄まじい戦闘能力を発揮する。にも関わらず、今の二人は苦戦しているように見受けられるのだが…

 

 

「……お前ら、何と戦ってるんだ…?」

 

 

 バンビーノの問いに、セイスとエムは一度だけ互いに目を合わせ、扉の方に視線を戻し、指でさしながら一言だけ。

 

 

「「大魔王」」

 

 

 それと同時に、扉の奥から何かが悠々と歩み出てきた。身長と体格は大の大人と殆ど変らないが、そこから放ってくる雰囲気は只者では無かった。更に見た目と言うか、身に纏っているものも普通では無く、ごつくて禍々しい西洋甲冑と漆黒のマント、極め付きに頭上には鬼のような角と言う、中二病感溢れる別の意味で凄まじい格好だった。

 この時点で既に言葉を失ったバンビーノとアイゼンだったが、扉から出てきた人物の顔を見て更に呆然とする羽目になった。何故なら、セイス達の言葉通り、露骨なまでにコッテコテの魔王の格好をした人物の顔が…

 

 

「良く来たな勇者たちよ、我が名は大魔王『サウザント・ウィンター』、この魔王城の主なり」

 

 

―――どっからどう見ても、織斑千冬にしか見えなかった…

 

 

「小賢しい塵芥共、さしずめ我が財宝目当てのこそ泥と言ったところか。ならば是非も無し、我が力の前に平伏し、無限の彼方へと消え去るが良い。この雑種共」

 

「その顔で喋るな、紛い物が!! さっきから別の理由で殺意が留まることを知らないんだよッ!!」

 

「あれは、流石に無い…」

 

「しかも無駄に強いんだよ、あのなんちゃってブリュンヒルデ…」

 

「なんかもう、いっそエムが不憫だ」

 

 

 常日頃から殺したいと思っている人間と同じ顔で、あんな格好しながら世迷い事を吐かれると調子も気も狂うどころの話では無く、今のマドカの心境は最早、言葉では形容できない混沌としたものに化していた。強いて言うなら自分だけでなく、因縁ある相手も同時に、これ以上ない最悪の形で侮辱されたような気分なのかもしれない。

 言葉から察するに、例によって織斑千冬本人とは別人なのだろうが、それだけで済めばどれほど良かったことか。なまじ戦闘力が高く、セイスと二人掛かりでも手こずっており、いい加減に黙らせたくても上手くいかないのが現状だった。

 

 

「そこまでだ、サウザント・ウィンター!!」

 

「これ以上、お前の好きにはさせない!!」

 

 

 そして、そんな状況に追い打ちを掛ける様にして新たな乱入者が二人、バンビーノ達が落ちて来た天井から舞い降りてきた。声からして男と女が一人ずつ、年もセイス達と同じくらいのようだ。しかし、その見た目は千冬魔王と大差が無い程にぶっ飛んでいた。

 男の方は白い鎧で身を包んでおり、首には同じく白いマフラーを身に着けていた。全体的にどことなく某マスクライダーを連想させる格好だが、一切隠していない、うんざりする程に見慣れた黒髪少年の顔が全てを台無しにしていた。別にブサイクでは無いし、むしろイケメンに分類される容姿だが、今のセイス達にとってはもう本当にいい加減にして欲しい展開であることは確かだ。

 

 

「姉さんだけでなく、お前までそんな格好で何をしてるんだ、織斑一夏ッ!!」

 

「俺は織斑一夏などでは無い。愛と正義の守護戦士、『白騎士(ホワイトナイト)・ワンサマー』だ!!」

 

「黙れェ!! どいつもコイツも、私をバカにしているのかああああぁぁぁ!!」

 

 

―――マドカ、怨敵の乱心により、既に涙目である…

 

 

「そして楯無、お前もか…」

 

「わ、私は更識楯無なんて名前のIS学園生徒会長では無いわ。今の私はワンサマーの相棒、『謎の淑女(ミステリアスレディ)・ノットシールド』よ!!」

 

 

 因みに今更だが、もう一人の方は楯無だった。彼女の今の格好はぶっちゃけ、セ○ラーマ○キュリーのコスチュームをそのまま着ているようにしか見えない。しかし、ノリノリの一夏と違い、こっちは微妙に恥ずかしそうにしている。ていうか、ちょっと待て…

 

 

「微妙に恥ずかしがってる上に今の発言、お前まさか俺達の知ってる方の楯無か?」

 

「え、もしかして本物のセイス君?って違う違う、今の私はノットシールド…!!」

 

「いやいや、もう手遅れだから色々と…」

 

「おーいセイスにアイゼン、そしてバンビーノおおおぉぉ!!」

 

 

 今度は何だと思い天井を見上げると、防災用に設置されていたのであろう消火ホースをロープ代わりにして、オランジュがスルスルと降りてくるところだった。そして、彼に続くようにして簪と箒も降りて…否、何故か飛び降りて来る。思わずセイスはギョッとしたが、簪は楯無が、箒は一夏が御姫様だっこで受け止めたので、無用な心配だった。おまけに、一夏に受け止められた箒は超嬉しそうで、楯無に受け止められた簪は微妙な反応をしていたので、狙ってやったようだ。

 こんな時にまでよくやる…なんて心中で呆れつつも取り敢えず今は、合流出来たアイゼンとバンビーノ、そして自分の隣に降り立ったオランジュの無事を素直に喜んでおくことにしよう。

 

 

「よう相棒、良く生きてたな」

 

「ぶっちゃけ死ぬかと思ったが、あの二人に助けて貰った」

 

 

 狐の着ぐるみに襲われたオランジュ達。何とか保安室に立て籠もって凌ごうと試みたが、遂にはドアが破壊され相手の侵入を許してしまい、最早これまでと覚悟を決めたその時、あの二人は現れた。

 通路の反対側から颯爽と駆けつけてきた二人は、荒ぶる狐にダブルライダーキックを華麗に叩き込み、テレビのヒーローさながらに三人を絶体絶命の窮地から救いだした。オランジュとしては色々とツッコミどころ満載な二人の状態に物申したいところだったが、こっちでもワンサマーラブな箒と、同じく一夏が好きでヒーローも好きな簪は目をキラキラさせ、それどころでは無かった。箒だけでなく妹にもあんまり反応されなかった楯無が若干凹んでたが、まぁ置いておくとしよう。

 箒は即座にワンサマーを一夏と断定したが、それを本人に指摘するのは簪によって阻止された。彼女曰く、それこそがお約束だとか。オランジュとしても下手な発言をすれば自分も地雷を踏み抜く可能性があるので、敢えて最低限の自己紹介のみを済ませ、後はひたすら沈黙を貫いた。そして、そのまま成り行きで行動を共にしていたのだが、通路にポッカリと開いた穴を見つけて飛び込み、今に至る。

 

 

「で、あの年甲斐も無くコッテコテの衣装着たブリュンヒルデは何だ?」

 

「知らん、だが…」

 

 

 視線をマドカの方に向けるセイス達…

 

 

「あれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないあれは姉さんじゃないって分かっているのに本気で苛つくっていうか中身が別人だからこそ殺したくて仕方ないいいいぃぃぃぃぃッ!!?」

 

「どうした、そこの少女。悩みがあるなら聞くぞ?」

 

「お前もだ織斑一夏ああああああぁぁぁぁ!!」

 

「……これ以上放置するのは、マドカの精神衛生上、あまりよろしく無い…」

 

「うん、確かに…」

 

 

 いつもの冷静で冷淡なマシンガールの仮面がボロボロに崩れ、殆ど素の状態になっているマドカ。隠し通せていると思っているのは本人だけでセイスやオランジュ達にとっては今更過ぎるが、ここまで取り乱す姿を見ていると流石に可哀相になってきた。

 

 

「まぁ、素手の俺とマドカの二人掛かりで互角だったから、そこにアイゼンとバンビーノ、ついでに楯無が加われば楽勝だろう。さっさと終わらせて、帰るとしようぜ」

 

「そうだな。じゃあ、俺は邪魔にならないように後ろの方…で……」

 

 

 セイス達フォレスト派の現場組に加え、狂った狐をブッ飛ばした一夏改めワンサマーと楯無も参戦するとなれば、裏方組の自分は足手まといにしかならない。そう思い、オランジュは回れ右して壁際に下がろうとしたのだが、その足が止まる。彼の視線の先、マドカ達のやり取りを見守っていたセシリアや簪達の遥か向こう側に、黄色い着ぐるみが、先程の保安室で見かけたヒヨコの着ぐるみが…

 

 

―――ヒヨコの着ぐるみ装着したのほほんさんが、スパナ片手にヒタヒタとこっちに歩み寄ってきていたのだから…

 

 

 突然硬直したオランジュを不思議に思った他の面々が彼の視線を追いかけ、それと同時に全員が彼と同じような反応を見せた。誰も彼もがのほほんさんに混乱と戸惑いの視線を向けたが、彼女はそんなことに一切構う事無く、いつものニコニコ笑顔のまま、歩み続けた。そして凍りつき沈黙した空気の中、大魔王の目の前で立ち止まった彼女は…

 

 

「なんだ小娘、この私に盾突くつもッ…」

 

 

―――スパナを持った右手を大きく横に振りかぶり…

 

 

「がふゃばッ!?」

 

 

―――フルスイングで、ブリュンヒルデの側頭部に勢いよく叩き込んだ…

 

 

「「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」」

 

 

 振り下ろされたスパナはゴキィ!!っと明らかにヤバい音を響かせ、魔王サウザンドウィンターを壁際にまで吹き飛ばした。彼女の奇行に慣れていた筈のセイスとオランジュは勿論のこと、実質初体験になるアイゼンとバンビーノは唖然としていた。マドカも口をあんぐりと開けて呆然とし、のほほんさんと直接的な関係がある簪と楯無に至っては完全に思考が停止している。他の面々も似たり寄ったりの反応を見せたが、誰もその場で我に返る事は出来なかった。

 何故なら魔王がブッ飛ばされた際に頭をぶつけた壁を発生源にして、一瞬で部屋中に亀裂が走り、そのまま反応する暇も無く、またしても部屋が崩壊した。しかも今度は床だけでなく天井も壁も全て崩れ、何もかもが消えていく。上も向いても、下を向いても、横を向いても何も無い。自分達が居た筈の廃病院を構成していたものが次々と崩れていき、全て消滅していく。やがて最後に残ったのは、どこまでも続く真っ白な空間と…

 

 

「ごめんね、ちょっとやり過ぎちゃった」

 

 

 少し申し訳なさそうにする、のほほんさんのそんな声だった…

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「ちょっと待てええええええぇぇぇ!!」

 

「ひゃあ!?」

 

 

 ベッドから勢いよく起き上ったマドカが最初に耳にしたのは、自分と同年代の少女が上げた短い悲鳴と、彼女が引っくり返って床に頭をぶつける音だった。マドカは未だに混乱する頭を強引に落ち着かせ、取り敢えず周囲の様子を窺ってみる。部屋は普通に蛍光灯で明るく照らされており、自分が腰を降ろしているベッドの周りには怪しげな機材が所狭しと置かれているが、ここは病院では無いことは確かである。

 

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

 転んだ拍子にぶつけた頭をさすりながら、自分に話かけてきた少女…クロエ・クロニクルの姿を見て、マドカはやっと全部思い出した。

 まず、自分は既に篠ノ之博士の元に身柄を預けられている。専用機が完成するまでは行動を共にするよう言われているが、それまで思いのほかやることが無く、実に退屈な日々が続いた。そんな彼女の様子を見かねた篠ノ之博士はクロエを巻き込み、とある提案をする。

 

―――くーちゃんの『ワールド・パージ』で、面白い夢を見てみない?

 

 正直言って最初はあまり乗り気では無かったが、他にやることも思いつかず、結局はその提案に乗ったマドカ。何より、『無意識の中に埋もれた願望をベースにする内容』という、自分でも二人の言葉にも惹かれた。自分で気付いていない、ある意味での自分自身の気持ちを再認識してみたいと思った面もあるかもしれない。まぁ尤も、その結果はと言うと…

 

 

「大丈夫のようですね、一応は。しかし焦りました、まさかマドカ様に『ワールド・パージ(娯楽仕様)』を実行中に、それも束様のラボの中で外部から干渉を受けるとは、完全に想定外です。この場所にハッキングをしてくるなんて、相手は一体何者なのでしょうか…」

 

 

 取り敢えず、今の夢の内容はノーカンで良さそうで、それだけ分かれば充分だった。まだクロエが何か言っているが、その言葉を右から左へと全て聞き流し、マドカはヨロヨロと立ち上がる。そして力の無い足取りで、部屋の出口へと真っ直ぐに向かう。独りでブツブツと呟きながら考えを纏めていたクロエは、マドカがドアノブにを伸ばしたところでようやく気付き、声を掛けた。

 

 

「何処に行かれるんですか?」

 

 

 その問いに対し、マドカはクロエの方へと向き直って、非常にくたびれた表情を浮かべながら一言だけ、こう返した。

 

 

「……二度寝してくる…」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「う~ん…一夏、格好良い、よ……」

 

 

 ところ変わって、ここは深夜のIS学園。その寮室の一つである簪と本音の部屋、そしてその部屋の中にあるベッドで幸せそうな寝顔を浮かべる簪。そんな彼女の様子を、反対側のベッドに半透明な黒い髪の少年と腰掛けながら見つめる癒し系少女は、非常に満足げである。

 

 

「よ~し、今度は大丈夫。いやぁ、さっきは本当にどうなるかと思ったよー」

 

「今度は大丈夫?」

 

「うん、ばっちりなのでーす。今度こそかんちゃんは、夢の中でおりむーのヒロインやってるよー」

 

「色々な人の夢を混ぜてみようって言うのは、中々に面白そうで実際に面白かったけど、まさか一人だけ特殊なのが混ざってたのは流石に予想外だったからね…」

 

「なんかこの前の学園襲撃事件の時の人と関係があるみたいだよ? かんちゃんが言うには確か、人の夢とか意識に干渉する技術があるとかなんとか。まぁ、私やあすちー程じゃないみたいだけどねー」

 

「お蔭で皆の夢がその人の意識や力に引っ張られて、変な副作用を起こした結果があの滅茶苦茶な夢か。誰か寝る前にホラー映画でも見たのかな?」

 

「本当は前回の事件の時に一人だけ夢見れなかったかんちゃんに、おりむーとキャッキャウフフな夢を見せるつもりだったんだけど…」

 

 

 そこで言葉を区切り、簪の寝顔に視線を戻す二人。今頃、先程の廃病院での内容を再構成した夢の中で、無意識の内に形成していた理想像を元にして生まれたヒーローワンサマーと共に戯れているであろう簪。御詫びも兼ねて、本当は全く別の内容の夢を見せ直すつもりだったのだが、先程の夢に影響されてしまったのか、彼女自身の意識が先程の『ホワイトナイト・ワンサマー』との再会を心から望んでいた。なので、取り敢えずさっきの廃病院の夢をリメイクして見せているのだが…

 

 

「まぁ本人が喜んでいるなら、それで良いか」

 

「だね♪」

 

 

 その後、霊能少女と幽霊少年によるレイトショーは翌朝まで続いた…

 

 




○今回の話を元も子もない言い方で表現するならば、『盛大な夢オチ』

○夢があんなになった原因達(↓)
ア「最近、サイ○ブレイクにハマってました」
バ「寝る前に青鬼で遊んでました」
オ「動画サイトで五夜フレディーズ見て叫びました」
セ「何があってもマドカの隣に」
マ「セヴァスと一緒に打倒姉さん」
簪「二つの憧れが融合」
楯「一夏君、生徒会だけじゃなくて裏稼業も手伝ってくれないかしら…」

○楯無の衣装は簪の意識に引っ張られたワンサマーの格好に引っ張られた
○暫くセーラー服恐怖症になった
○起床後、セイス達はゲーム機とパソコンを躊躇せずブレイク
○うっかり仕事用の機材もブレイクして財布の中身がワールドパージ

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