IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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さて、次の次くらいに新しい話を書こうかな…?


リア充観察記 中編

 

 

「さぁ、始まりました!! 皆様お待ちかね『男性操縦者監視コーナー』!! イエェアアアアア!!」

 

 

「……うるせぇ…」

 

 

 

 頭のネジが緩むどころか一本残らずブットンだ相棒のテンションにげんなりした俺は悪くない筈だ。けども、パソコンのモニターを前にハイになったこの馬鹿(オランジュ)はお構いなしである。

 

 

 

「司会進行は私、亡国機業シャルロッ党突撃隊長オランジュ!! そして解説役は、我ら『IS少女・ファンクラブ』に潤いと癒しを提供してくれるスーパーエージェント、セイスだぁ!!」

 

 

「いい加減に黙っとけ!!」

 

 

「あべしっ!?」

 

 

 

 彼女らのファンなのはよ~く分かったが、これから目撃するであろう彼女たちの日常はオランジュのような輩にとって辛い事この上ないってのをちゃんと理解してるのか…?

 

 

 

「何だよ、ノリが悪いなセイス…」

 

 

「やかましい。つーか、本当に後悔しても知らねぇぞ…?」

 

 

「ハッ!! 美少女の毎日を覘いてるムッツリスケベは勝ち組ってか、ハイハイ悪うござんした~」

 

 

「久しぶりに組手するか…?」

 

 

「さーせん」

 

 

 

 ムッツリスケベとは心外な。確かに部屋に忍び込んだ時に衣服だの下着だの見る羽目になったことは何度かあったが、それを見て息を荒くしたり興奮したことは無い。犯罪者やっても変態にはならん。

 

 

 

「ついでに言っとくが、女の部屋は基本的に音声オンリーだから」

 

 

「ハァ!?」

 

 

 

 何だよその『有り得ねぇコイツ』みたいな顔は…

 

 

 

「お前は何で昔からそういう妙な所だけ紳士なんだよ!?」

 

 

「知るか、無意識だ。んで事態が進行してんぞ、司会…」

 

 

「ん!? おっと、これは…!!」

 

 

 

 学園の監視モニターに視線を移すと、織斑一夏の部屋の前に二人の少女が立っていた。一人はオランジュがリスペクト中の『シャルロット・デュノア』、もう一人は黒兎隊の『ラウラ・ボーデヴィッヒ』である。ISの操縦技術における現一年生の中でトップ2の成績を誇る二人だ。

 

 

 

「え、なに?…この二人ってマジでモーニングコールしに来たの?」

 

 

「というより、少しでも早く織斑と顔合わせたいんじゃないかと。余談だが、日替わりだ」

 

 

「何が?」

 

 

「起こしにくる面子」

 

 

「…マジで?」

 

 

 

 部屋が一緒なせいでこの二人はセットで行く時が多いが、時たまラウラが単独で先行することもしばしば。後は朝練に付き合うという名目で会いにくる『篠ノ之箒』、若干上から目線な『セシリア・オルコット』と『鳳鈴音』が主な面子だ。

 

 

 

「おんどれぇ…随分と贅沢な身分じゃねえか織斑一夏ぁ…」

 

 

「おいおい、こんなのまだ序の口だぞ…?」

 

 

 

 映像に映っているシャルロットは扉をノックし始めるところだった。そこでモニターの音声スイッチをオンにしてやる。すると、パソコンから彼女たちの声が聴こえてくる…。

 

 

 

 

『一夏、朝だよ~。一緒に朝ご飯行こ?』

 

 

 

 

 たったそれだけの短いセリフで隣の馬鹿(オランジュ)は悶え始めた…

 

 

 

「モニター越しとはいえ、シャルロット様の生ボイス……アザーッス…!!」

 

 

「…そんなに嬉しいのか」

 

 

 

 ファンクラブの奴らが基本的にあやかれるのは画像ぐらいなので音声がレアってのは理解できるが、流石にこの反応は理解できん…。

 

 と、思ってたら今度はラウラの音声が聴こえてきた…。

 

 

 

『ふむ、まだ寝てるみたいだな。』

 

 

『そうだね、どうしようか…?』

 

 

『…だが、これは“アレ”を試すにはいい機会だ!!』

 

 

『え?』

 

 

 この言葉にラウラの目の前に居るシャルロットは当然のこと、オランジュも怪訝な表情を見せる…。俺も正直なところアレが何なのか分からないが、碌でも無い予感が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『クラリッサも言っていた、こういう時は眠りっ放しの相手にボディプレスを喰らわせ、『お兄ちゃん』と呼べばイチコロだとなッ!!』

 

 

 

 

―――シャルロットと野郎二人は見事にズッコケた…

 

 

 

 

「…お、おぉう? これがシリアス天然娘の威力か…や、やるじゃないか……」

 

 

「いつも真面目な分、ボケた時が半端ないんだよな…本人は真面目に言ってるけど……」

 

 

 

 ていうかこの『クラリッサ』って人物が『黒兎隊(シュヴァルツェア・ハーゼ)』の副隊長と知った時は何の冗談かと思ったよ。ドイツに居る仲間曰く、クラリッサのせいで黒兎隊には微妙にズレた日本文化が変な形で浸透しているとか…

 

 

 

『む、どうしたシャルロット?』

 

 

『ラウラ…それは多分、色々と間違って……間違って…』

 

 

『……シャルロット…?』

 

 

 さっきまでこっちと同じように呆れた表情を浮かべていたシャルロットだったが、突然真剣な表情で何かを考え始めた。しばらく顎に手を当てながら真剣な表情で何かを悩んでいる様子を見せる。そして…

 

 

 

 

―――ガシッ!!

 

 

 

『ラウラ…』

 

 

『な、ななな何だ…!?』 

 

 

 いきなりラウラの肩を掴みながら笑顔で迫るシャルロット。その光景は生粋のシャルロッ党であるオランジュでさえ一瞬引いた。やられてる本人は本当に訳が分からなくて怖いみたいだが、はたして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一回でいいから僕のこと『お姉ちゃん』って呼んでみて!!』

 

 

 

 

―――ええぇ…?

 

 

 

 

『んなっ!? 何故そんなことしなければならないのだ!?』

 

 

『いいじゃん、いいじゃん!! ね、お願いだから一回だけ!!』

 

 

『断るっ!!』

 

 

 

 実は人一倍可愛いものが大好きなシャルロット。普段も、時折同い年とは思えない幼さと可愛さを見せるラウラを半ば妹の様に溺愛する時がある…。

 それを知ってるので俺は『そう来たか…』位にしか感じなかったが、オランジュには衝撃的だったようで若干思考がフリーズして固まっている。本当に組織の奴らは彼女たちの容姿しか知らないのか…?

 

 

 

「お~い、生きてるか~?」

 

 

「ハッ!!シャルロット様が可愛すぎて意識が…!!やっぱリアルタイムの映像は凄ぇ!!」

 

 

「……」 

 

 

 

 

 駄目だコイツ、早く何とかしないと。再び意識をモニターに戻すと、彼女達はさっきの体勢のまま押し問答を続けていた…。

 

 

 

『ラウラ、日本には『可愛いは正義』って言葉があるんだよ?』

 

 

『だからどうした!? 私は嫌だからな!!』

 

 

『そんなこと言わないでよ~、一夏にやる前の練習とでも思ってさ~!!』

 

 

『…む……練習…』

 

 

『そう、練習!!』

 

 

 

 つーか、ラウラよ…お前はそれ以上に恥ずかしい行為を既にやり遂げている自覚はあるか…?

 

 

 

「何だそりゃ?」

 

 

「あん? 主な具体例としては…」

 

 

 

 

―――クラスメイトの面前で一夏にファーストキスを捧げながらファーストキスを奪う

 

 

―――同時に『お前を私の嫁にする』と、ズレたプロポーズ紛いを…

 

 

―――裸で一夏の布団に忍び込む

 

 

 

 

「マ・ジ・で・か・!?」

 

 

「マ・ジ・だ」

 

 

 

 臨海実習でラウラが一夏に水着のお披露目をする時、異常なくらいに恥ずかしがっていたと聴いた時は我が耳を疑った。何故に妙な所でこの子は恥じらいを持つのかね…?

 

 

 

「妙な所で紳士なお前に言われたくないと思う…」

 

 

「そうか?」

 

 

「そしてあの野郎、マジでぶっ殺す…」

 

 

「落ち着けって…」 

 

 

 

 今にも持参した凶器(何故か釘バット)を持って奴の部屋に向かおうとしたオランジュを、彼の首根っこを掴んで無理やり制止させる。しかし、どうしてもオランジュはアイツに一発ブチかまさないと気が済まないらしく、ジタバタと全力で抵抗を続ける…。

 

 

 

「離してくれセイス!! 俺はどうしても一回アイツと肉体言語で話したいんだ!!」

 

 

「行かせるわけねーだろ、馬鹿」

 

 

 

 俺だって何度も思ったさ。何でこんな部屋に閉じ籠りながらキャッキャッウフフと青春を謳歌してる連中を毎日観察しなきゃならねーんだ!!と…

 けど、時間と言うものが何でも解決してくれると改めて感じたね。三ヶ月もこの生活を続けていれば否が応でも慣れた。今となっては完全に他人事感覚で見てられるぜ!!

 

 ……実際、他人事だし…。 

 

 

 

『…むぅ、お…お……おね…………お姉ちゃん…』

 

 

『ッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

 

 声にならない歓声が聴こえたと思ってモニターを見たら、遂にラウラがやり遂げたらしい。シャルロットは満面の笑みを浮かべ、心なしか背後にお花畑のオーラが見えた気がした…。

 

 

 

「…やばい、ラウラ、すごく、可愛い」

 

 

「片言になってるぞ…?」

 

 

 

 ファンクラブって掛け持ちありなのか?等とくだらない事を考えていたら事態はさらに進行していた。シャルロットが“おかわり”を要求し始めたのだ…。

 

 

 

『ラウラ、ラウラ!! もう一度だけ言って!!』

 

 

『な!? 一回だけと言ったじゃないか!!』

 

 

『別にいいじゃん減るもんじゃないし~!!』

 

 

『嫌だ!!』

 

 

 

 段々とこの構図がいつものやり取りになってきたな、この二人…。ま、客観的に見てる分には楽しいし微笑ましいから結構彼女達のやり取りは好きなんだよな……“アイツ”が関わらなきゃ…。

 

 

 

 

 

 

―――ガチャ…

 

 

 

 

『……何してるんだ、二人とも…?』

 

 

『ッ!!お、おはよう一夏!!』

 

 

『ととと特に何も無い!!ただ、シャルロットと一緒に朝食に誘いに来ただけだ!!』

 

 

 

 

 

―――出やがったな、独り身の敵ぃ!! 

 

 


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