IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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もう、学園祭編終わったらシリアスなんてやらない…


さて、ここでお知らせです。次回の外伝の方でラジオ番組風の話を書きながらセイスとマドカ達をはっちゃけさせようかと思ってます。

そしてそれを機に、読者の皆様から質問やらコメントを集めて受け付けたいと思ってます。気が向いた方は、扱って欲しい質問やコメを今回の感想に加えて下さい。

 では(>○<)/


暗躍学園祭 中編

 

―――『Artificial・Life-No.6』。

 

 

 

 それが俺の本当の名前だ。産まれた時に貰った物はこの胸糞悪い呼び名と、思い出したくも無い数々の記憶しか残ってない。

 

 

 

―――殴られ、斬られ、刺され、潰され、抉られ、撃たれ、毒され、焼かれ、沈められ、喰われ、蝕まれ、引き裂かれ、押しつぶされ、叩きつけられ、もぎ取られ…

 

 

 

 サンドバッグなんて生易しいものじゃない。痛みと苦しみの日々を送り、毎日生死の境を彷徨った。奴らの都合で人並みの知識と感情を持たされことにより、自身がどれだけ酷い状況なのかも理解してしまった。それがまた拍車を掛けたのは言うまでもない…

 

 終わりが見えず、いつまでも続くこの理不尽な毎日。いっそ死ねたら楽だったろうが、生憎人一倍頑丈な身体がそれを許してくれない。だから俺は全てを諦め、その毎日を受け入れるしかなかった…

 

 

 

―――だがその毎日は、随分とあっさり終わりを告げた…

 

 

 

 ある日突然、俺を産み出し、俺に地獄を味あわせた連中はどういうわけか俺に対する仕打ちを終了させた。そして困惑する俺をコンテナにぶち込み、そのまま何処かへと連れて行った… 

 

 嬲り物にされる日々が終わったことは、素直に喜ぶことが出来た。しかし連れて行かれた場所は、俺にさらなる受難を用意していた…

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

(そろそろ、か…?)

 

 

 

 手にはブクブクと泡を立てる謎の液体の入ったペットボトル。視線の先に居るのは作戦の確認でもする気になったのか、人気の無い校舎裏で集まったアメリカの工作員6名。やるなら今が絶好のチャンスだろう……ていうかこれ以上待ってたら、このペットボトル持ってる俺の方が危ない…

 

 

 

「おい、織斑一夏は何処に行ったんだ…?」

 

 

「さっき更識の女が何処かに連れていきやがった。何か、シンデレラがどうのこうのと言ってたが…」

 

 

「クソッ、面倒な…」

 

 

 

 あぁ、そこには激しく同意しよう。楯無が一夏と本格的に接触したことにより、あいつの部屋に仕掛けた仕事道具を一度全て回収する羽目になった。おまけに最近は、付きっ切りでIS訓練のコーチ役なんて買って出たものだから仕事がやりにくいったらありゃしない。まぁそれが楯無の目的なんだろうけど…

 

 そのせいで最近はラヴァーズの情報しか送れず、亡国機業のファンクラブは逆に喜んでやがるのだが… 

 

 

(…て、やべぇ!!)

 

 

 

 考え事している内に手に持っているペットボトルが完全にヤバい状態になっていた。人数も確認したし、もうやるしかない…

 

 

 

「おい、そこのアメリカ野郎共!!」

 

 

「ッ!?」

 

 

「な…」

 

 

 

 投げかけられた声に反応し、驚きながらも此方を振り向く6人。それと同時におれは両手一杯に持ったペットボトルを十本全部を投げつけてやった。

 

 さっきから中身を激しく泡立てながら膨張しているこのペットボトル。実はドライアイスを入れた後、さらに水を注いである。そうするとドライアイスはとんでもない勢いで泡立ち、ボトルの蓋を閉めても一向に収まらない。密封されたボトルの中で延々と激しく気体を発生させ、ボトルをどんどん膨張させていき…

 

 

 

 

 

―――ドパアアアァァァン!!

 

 

 

 

「うぐぉ!?」

 

 

「ぎゃぁあ!!」

 

 

「な、何なんだ…!?」

 

 

 

 やがて耐久値の限界を迎えたボトルは、凄まじい勢いで破裂する。たかがドライアイスとペットボトルと侮る事なかれ、ドライアイスと水の量…さらには蓋の締め具合によってはマネキン程度の強度なら軽く粉砕できる威力を誇っている。ぶっちゃけ下手な手榴弾より危ない……使う側にとっても…

 

 何にせよ、良い感じに不意打ちを成功させることが出来た。おまけに2人ほど蹲ってるところを見るに、負傷もさせたらしい。それを確認した時には、既に俺は駆け出していた…

 

 

 

「まず一人!!」

 

 

「ぶふぉ!?」

 

 

 

 とりあえず、一番近くに居た奴の顎に一撃加えて黙らす。そして立て続けに隣に立ってた奴のミゾに蹴りを叩き込んで同じように沈黙させた。その辺りで残りの二人が懐に手を突っ込んで何かを取り出そうとし出したが…

 

 

 

「学園に武器の持ち込みは禁止だぜ…?」

 

 

「「ッ!?」」

 

 

 

 気絶させた二人を拳銃を取り出そうとした二人に投げつける。訓練された大の男を見た目10代そこらの普通の餓鬼が片手で投げつけてきたという光景に、二人は思わず怯んでしまい避けきれずに直撃した。たったそれだけで二人は気を失い、静かになる。後は…

 

 

 

「そい!!」

 

 

「ぐはッ!?」

 

 

 

 序盤のボトル爆弾で怪我した奴の顔面を踏みつけて意識を奪ってやった。これで残るは一名…

 

 

 

「さて、お前で最後だな…」

 

 

「な、何なんだよお前は…!?」

 

 

「……お前らが言うか…」

 

 

 

 とは言っても、俺の事を知ってる奴なんて本当にアメリカ政府上層部の中でも一部だけだしな。知ってたところでやることは変わらない…。

 

 それにしても…マドカはこの事を復讐と呼んだが、随分と実感が湧かないもんだ。まぁ、恨み憎しみ怒りを向ける対象が直接居るあいつと、鬱憤をぶつけたかった奴と同郷なだけの人間しか残ってない俺とじゃ訳が違うか……先日、達成感を感想文に纏めて渡してやるとか言っちまったが、どうしよ…。

 

 

「とにかく、全部が終わるまで寝てろ。じゃあな…」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 そう言って俺はトドメを差すべく拳を握り、それを振り下ろした…

 

 

 

 

 

 

 

―――ドゴオオォッ!!

 

 

 

「うごぉあッ!?」

 

 

 

 周囲に響く、やたら大きくて鈍い音。もしも今日が学園祭ではなく普通の日だったならば、確実に誰かが騒音を聴きつけて駆けつけて来たろう。その騒音の発生源は当然ながら、拳を振り下ろした先の工作員の顔面と…

 

 

 

 

―――何故かセイスの背中からだった…

 

 

 

 骨が軋む音と砕ける音を同時に響かせながら、まるで自動車に跳ねられたかのような勢いで俺は吹き飛んだ。そのまま壁にヒビを造りながら激突し、それでようやく止まることが出来た。

 

 

 

「……痛ッてぇ…」

 

 

 

 こりゃあ、身体中の骨が逝ったかもしれねぇ…。胃からせりあがってくるものに血の味が混ざってるところも踏まえ、内臓もやられたらしい……つうか意識が飛びそう…

 

 

 

 

 

 

「おいおい、どうなってんだよこれは…?」  

 

 

「こっちは学園祭を抜け出してまで呼び出しに応じたんスよ?この聞き分けの悪い先輩を説得しながら…」

 

 

「おい、本国の連中の呼び出しを渋ってたのはテメェだろうが」

 

 

「気のせいッスよ、先輩。」

 

 

 

 意識が朦朧としながらも、しっかりと頭に届いた二人の女の声。痛む全身をむりやり動かしながらそちらを向くと、さっきまで自分が立ってた場所に学園の生徒が二人立っていた……褐色の肌をした3年生はISを部分展開して…

 

 制服のリボンからして3年生と2年生、そして展開されたISは明らかに量産タイプでは無い。ということは、まさか…

 

 

 

(『ダリル・ケイシー』と『フォルテ・サファイア』…アメリカとギリシャ出身の専用機持ちコンビかッ!!)

 

 

 

 IS…それも専用機持ちの二人に補足されるというこの最悪の状況、どう考えても詰んでる。実際、焦燥感に駆られた心臓が激しく鼓動し、呼吸も苦しくなる。いや、全身が砕けそうになったので元からかもしれないが…

 

 だが後で隠しカメラで此方の様子を把握してたオランジュから聴いて知ったのだが、死に掛けな上に追い詰められてる筈の俺は……歪んだ笑みを浮かべていたらしい…

 

 

 

 

―――そして俺は、久しぶりに『Artificial・Life-No.6』としての力を作動させた…

 

 


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