IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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前座なので短めです


暗躍学園祭 前篇

 

 

 

 

「おぉう、結構一般人向けだなぁ…」

 

 

『そうでもないみたいだぞ…美術部の出し物は爆弾解体ゲームらしいし…』

 

 

「受けて立とう」

 

 

『待てい』

 

 

 

 作戦当日…つまりは学園祭当日。学園の生徒が招いた一般人もおり、今日のIS学園はいつも以上に賑やかだ。世界に名立たる、世界で唯一の学校というだけあってか催し物も本格的なものが多く、そんじょそこらの学園祭や文化祭とは質が違った。ただ、そこに居る生徒達の雰囲気は年相応の賑やかさだった。

 

 本音を言えば普通に参加してみたいが、今は自分に課せられた任務を全うしよう…

 

 

 

「で、マドカと妖怪は…?」

 

 

『妖怪は巻紙なんたらって偽名で一夏と接触、マド…すいませんエム様、だから銃を下ろせ』

 

 

 

 無線機越しから銃を構える音がした。相変わらずオランジュには名前を呼ぶ許可を与えてないらしい…

 

 

 

「で…?」

 

 

『お前のポテチ食いながら、お前のゲームで遊んでる』

 

 

「いっそ豚になってしまえこの駄目人間」

 

 

 

 今回の任務は『白式と織斑一夏の捕獲』である。一夏との接触は基本的に妖怪ことオータムが担当し、非常時のバックアップ役はセカンドマダーオの役目だ。因みに今は俺達の隠し部屋で待機中だ……例によって俺の所有物を消費しながら…

 

 

 

『とにかく一夏は妖怪に任せるとして、お前の方はどうよ?』

 

 

「あぁ、今は料理部…だったか?それが催し物やってる教室に居る」

 

 

 

 改めて潜んだ教室を見回してみるとそこら中に鍋やら皿が並んでおり、その全てに美味しそうな料理が並んでいた……腹減った…

 

 

 

「因みに、さっき一夏とシャルロットが二人で来た」

 

 

『画像は!?』

 

 

「あるわけないだろう」

 

 

 

 流石に結構焦った。まさか武器調達の為に忍び込んだ教室に、ターゲット本人がやって来るとは思わなかったし。二人は肉じゃがに手を付けながら料理部の人と軽く談笑していたが、流石に生身で専用機持ち二人を襲撃することは無理だ。だから、ずっと隠れてたわけなのだが…

 

 

 

『よく見つからなかったな…』

 

 

「段ボールは神様だと思わないか?」

 

 

『……お前まさか、ス○ーク中…?』

 

 

「イェア」

 

 

 

 馬鹿みたいな方法だが、場所が場所だけに俺がすっぽり隠れれるだけのサイズを持つ段ボールが一ヶ所に幾つも転がってた。そこの一つに隠れ、ずーっと段ボールの中で体育座りしてたわけなのだが…

 

 

 

「本当に誰も気付かないでやんの」

 

 

『すげぇな、オイ…』

 

 

「さて、与太話はここまでだ。武器も調達したし、そろそろ行くかね…」

 

 

 

 組織としてのターゲットは白式と一夏であり、最悪それだけ手に入れば問題は無い。しかし、ISを使えない俺やオランジュには別の仕事がある。それも、俺にとってはもの凄く会いたくてしょうがなかった奴らだ…

 

 

 

『おい、セヴァス』

 

 

「ん、マドカか?」

 

 

『……。』

 

 

 

 通信機から唐突にマドカの声が聴こえてきたのだが、いきなり話しかけたは良いが話す内容は考えてなかったようで無言になる。しかし、その沈黙も長くは続かなかった…

 

 

 

『……気を付けろよ…』

 

 

「…おうよ」

 

 

 

 随分と短く、単純な激励。だが、彼女らしいといえば彼女らしい。人知れず苦笑を浮かべながら、俺はその場を後にした…

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ターゲット発見…」

 

 

 

 そいつらは、料理部から去ってからすぐに見つけることが出来た。仮にも女子校であるIS学園には似合わない、ゴツイ男たちが6人。全員が庶民的な私服を身に着けており、人混みに混ざりながら明らかに素人では無い身のこなしでコソコソと動いていた。パッと見ると強面なので生徒達も一瞬だけビックリしているが、今日は学園祭故に外部の知らない人間が何人か来ている。生徒は身内に招待券を渡せるので、彼らもそういうやつの一人なのだろうと勝手に納得し、特に気にすることも無くすれ違っていった。

 

 ぶっちゃけ外部の人間であり、招待券を渡された点も正しい。ただ…

 

 

 

「いくら自分の国の人間だからって、政府の人間に渡すよう強要したりしていいのか…?」

 

 

 

 正面から普通の手続きでIS学園に国の人間を送るのには、相当の手間暇を掛ける羽目になる。それが例えIS学園のある国の同盟国であろうが何だろうが、だ… 

 

 しかし、その国出身の生徒が“偶々その国のエージェントと面識があり”、招待券を“偶々そのエージェントに渡した”のなら話は別だ。いや随分と滅茶苦茶な事を言っていると思うが、あの国の奴らなら普通にやる。屁理屈さえ言えば、後はゴリ押しで通すだろう…

 

 

 

「流石に全生徒に強要はしなかったみたいだが、やっぱり気の毒だよなぁ…」

 

 

 

 幾らなんでも全員にそんな真似をさせたら、日本だけでなく世界が黙ってないので自重したみたいだ。現状だけでも充分にふざけた行動をしているが…

 

 

 

「さ~てと、余計な茶々入れられる前にやりますかね…」

 

 

 

 料理部から拝借したものを詰め込んだリュックに手を突っ込み、中から空になったペットボトルとドライアイスを取り出す。そして、これからやろうとする事を想像すると思わず歪んだ笑みを浮かんできてしまった…。

 

 

 

「……あぁ、この日を迎える時が来るとはな…」

 

 

 

 長かった、本当に長かった。正直言って、俺にはマドカみたいに直接復讐する相手は残っていない。だからと言って、今日この日を迎えるまで味わった苦難を忘れる時は無かった…。

 

 今目の前に居る奴らが、俺に直接関わったわけでは無い。それでも俺は、今この状況に確かな高揚感を覚える。それは刷り込まれた本能か、積み重ねてきた憎悪か…

 

 まぁ、そんなものはどっちでも良い。今はとりあえず…

 

 

 

 

 

 

「復讐なんて大層なもんじゃ無いが、ケジメは付けさせて貰うぞ…」

 

 

 

 

―――アメリカ……我が生まれ故郷よ…

 

 

 


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