IS学園潜入任務~壁の裏でリア充観察記録~   作:四季の歓喜

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お待たせしました!!しかし思いのほか彼女の登場を喜ぶ人、多かったな…


流星の悲劇 後編

 

 

『今日はどこを回るの~?』

 

 

『レゾナンスで洋服とか…』

 

 

『おぉう、ショッピングモ~ル♪』

 

 

「二人はショッピングモール・レゾナンスに向かう模様。そこで洋服選びをすると思われる…」

 

 

「では『エイプリル』、先回りして二人を待ち構えていてください。カメラで正面から彼女の写真を激写するのです!!」

 

 

「任せろ!!あ、さっきの会話記録は保存した?」

 

 

「無論」

 

 

 その返事を聞くや否や、エイプリルと呼ばれた男は持参したバイクを走らせ、彼女達の目的地であるレゾナンスへと向かっていった。

 

 簪と本音…通称のほほんさんの会話を集音マイクまで持参して聞き耳を立てるメテオラ達。やってる事は完全に無駄にハイスペックなストーカー集団である。通信機越しにとはいえ、それを目の当たりにしたオランジュは自分もコレの同類だと思うと何とも言えない複雑な気分になった…

 

 

---だが、それ以上にこの場から逃げたくてしょうが無かった…

 

 

 

『メテオラ、俺はもう離脱すんぞ…』

 

 

「む、そうは行きません。貴方には最後まで手伝って貰いませんと…」

 

 

『悪い事は言わねぇから、早いとこお前らもこんなこと止めて帰れ。でないと取り返しがつかなッ(ブツッ)…………』

 

 

「…オランジュ?」

 

 

 突如切られた通信…口振りからしてオランジュ自身が切ったわけでは無そうだが、何度通信を試みてもそれっきり繋がらなかった。

 

 

「オランジュ、応答して下さい。オランジュ…?」

 

 

「どうした…?」

 

 

「……通信が切られてしまいました…」

 

 

「あの野郎、今更になって逃げやがったのか…?」

 

 

 

 セイスと同様、元からコレの参加を渋っていたオランジュ。最初は次女とはいえ、あの更識家の人間をストーキング…しかも報告通りなら更識家当主はシスコンなので、下手をすれば命の危機に関わることを恐れたのかと思っていた。しかしセイスに足止めを任せたに今、一体何を恐れているのだろうか?

 

 まぁ、どっちみち今更中断する気は無いのだが…

 

 

 

「ふむ、仕方ありませんね…少々手間が掛かりますが、後は我々だけでやりましょう……では皆さん、気合い注入を兼ねてお一つ…!!」

 

 

「「「「可愛いは正義、内気な眼鏡っ娘はこの世の真実!!」」」」

 

 

 

 

---ドゴーーーーン!!

 

 

 

 彼らが人目も気にせず叫んだその瞬間、その背後で特撮よろしく爆音がなり響いた。恐る恐る振り向いてみると、遥か向こうの方で黒煙がモクモクと立ち上っているところだった…

 

 

 

「おい、何だ今の音は!?」

 

 

「向こうでバイクが事故ったらしいぞ!!」

 

 

「何か、いきなり前輪が外れたせいで大クラッシュしたみたいだったよ…?」

 

 

「「「「「………」」」」」

 

 

 

 彼らが振り向いた方向…つまり事故現場の方向はレゾナンス。そして、今さっきその方向へバイクを走らせた仲間が一人……

 

 

 

「まさか…」

 

 

「……おい、エイプリルと音信不通になったぞ…」

 

 

「……セイスさんに、彼の回収をお願いしときましょう…」

 

 

 

 この時まだ彼らは気付いていなかった……全てにおいて、既に立場は逆転していたことに…

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

『こちら『バンビーノ』、ターゲットを発見した。』

 

 

「引き続き追跡して下さい。そのまま機会を窺い、何としても彼女の写真を…!!」

 

 

『了解』

 

 

 

 エイプリルの事をセイスに任せ、『マジで一回死ねお前ら!!…ぬぁ、街中で展開するとか正気かてめぇ!?』という返事を頂いたメテオラ達はレゾナンスに辿りついていた。既に目的である彼女達はショッピングを開始しており、先行させたバンビーノがそれを捕捉したようである。

 

 

 

「広いなぁ、ここ…」

 

 

「セイス達はその気になりゃ、いつでもここに来れるのか。羨ましいな…」

 

 

「今度は普通に来ようぜ」

 

 

「はいそこ、無駄口は慎んで下さい。彼女にバレますよ…?」

 

 

「「「うっす…」」」

 

 

「やれやれ…バンビーノ、状況に変化は…?」

 

 

 

 今回メテオラに同行してきた面子は全員がオランジュ達とほぼ同い年である。故に、フォレストチームの中でも一際問題を発生させる迷惑集団である。もっとも、フォレストチーム自体が亡国機業内で既に浮いた存在なのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『きええええぇええええええええええええええええええええええぇえぇえぇぇ!?』

 

 

「ッ!?」

 

 

『きええぇぇ!?きええぇぇ!?きええぇぇぇ!?きええぇぇきええぇぇきえぇえぇぇ!?……』

 

 

「ちょっ、何が起きてるんですか!?」

 

 

 

 いきなり聞こえてきたのは仲間の一人、バンビーノの奇声。混乱する此方を余所にひとしきり叫びまくった彼はこれまた唐突に沈黙した。そして、通信を繋いだままの無線機からは…

 

 

 

『おい、君!!大丈夫か!?……駄目だ、白目向いてる…』

 

 

『取り敢えず警備室にでも連れていこう』

 

 

『あぁ、そうだな』

 

 

 

 どうやら警備員が駆けつけ、彼を回収…もとい介抱してしまったようだ。彼の身に何が起きたのかは凄く気になるのだが、それよりも……

 

 

 

「……不味い事になりましたね…」

 

 

「どうする…?」

 

 

 

 流石にこれ以上セイスに頼むわけにはいかない。けれど、仮にもエージェントである彼をこのまま放置するわけにもいかない…

 

 

 

「私が彼を引き取ってきます。皆さんはそのまま任務を続行してて下さい」

 

 

「「「了解」」」

 

 

 

 麗しの彼女をこの目で見れないのは残念だが、言いだしっぺである自分がどうにかすべきだろう。撮影は彼らに任せ、全てが終わったらそれを楽しめば良い。

 

 そう思い、メテオラはその場から離れようとしたのだが…

 

 

 

「あぁ君達、ちょっと良いかな…?」

 

 

 

 唐突に目の前に現れたの一人の男性。その男は店員とはまた違った制服を身に着けており、装備品として無線機やら警防やら懐中電灯を身につけていた……早い話、警備員である…

 

 

 

「そんな場所に集まって何をしているんだい…?」

 

 

「え、いや…私達はただの一般客で…」

 

 

「一般客、ねぇ……バードウォッチング、て言われた方がまだ納得出来たんだけどな…?」

 

 

 

 

---良い年した男共が一人残らずカメラを装備…

 

 

---随分と物々しい集音マイクに無線機…

 

 

---そんな奴らがショッピングモールの隅に集まってコソコソと…

 

 

 

 

「「「「……。(・ω・;)」」」」

 

 

「……。(-_-)」

 

 

 

 

---正真正銘、ただの不審者である…

 

 

 

「散開!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「あ、待てコラぁ!!(;`皿´)」

 

 

 

 彼らの雄叫びが、耳障りなほどに響いた…

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 警備員との逃走劇を経て、メテオラはレゾナンスの一角にあるトイレへと逃げ込み、へたり込んでいた。地味に体力があったあの警備員から逃げ切るのは、元々デスクワーク派である身にとって結構辛いものがあった…。

 

 

 

「ふぅ、我ながら軽率でした……いやはや、恋は盲目という奴ですかね…」

 

 

 

---絶対に違う

 

 

 

「しかし!!これしきの事で諦めたら亡国機業の名が廃るというもの!!」

 

 

 

 クワッ!!という効果音が相応しい勢いで立ち上がり、無線機でバラバラに逃げた仲間達にチャンネルを繋ぐ。すぐにでも集まり、行動を再開せねば…

 

 

 

「さぁ皆さん、民間の警備員如きに何時まで手こずってるのです!!さっさと合流して…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐおぎゃばはああああはあああああいあああ』

 

 

『うおわあああぁぁぁぁ!?』

 

 

『ヒッ!?何だ!?俺の足を掴んでるのは何なんだ!?』

 

 

『誰だテメェは!?ぬあああああああああああああああああ!?』

 

 

『天井が…天井が落ちてくるああああああ!?』

 

 

『な、何なんだこの縫いぐるみ!?独りでに動いて…!!』

 

 

「……。」

 

 

 

 呆然…それしか無い。繋げた無線から聞こえてきたのは、訳の分からない状況を口走りながら絶叫する仲間達。最早断末魔と言っても過言では無いソレは、メテオラの背筋に冷たい何かを走らせた…。

 

 そんな時だった、横から何かの視線を感じたのは…。よせば良いのに、つい反射的にその方向へ自身の視線を向けた彼は固まった… 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 横にあったのは鏡。そこに映っていたのは自分……そして自分より少し若い、セイスとほぼ同年代の黒髪の少年が“自分の右隣に立って”手を振っている所だった…

 

 慌てて隣を振り向くメテオラ、しかし…

 

 

 

「……なッ…」

 

 

 

 そこには誰も居ない。逃げ込んだトイレには、確かに自分以外の人間は存在していない。それを再度確認したメテオラの視線は、自然と鏡に再び向けられる。

 

 

 

「ッーーー!?」

 

 

 

 彼の心臓は今度こそ止まりかけた。何故なら鏡にはやっぱり自分と謎の少年が映っていて、さらに自身の“左隣”には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミ ツ ケ タ ♪

 

 

 

 

 

 

 

-―-珍しく開眼してるにも関わらず、全く目が笑ってない『布仏本音』がそこに映っていた…

 

 

 

 

 

 鏡に映るそれを見てしまったメテオラは、錆び付いたブリキ人形の様にぎこちなく横を向いた。すると今度は…

 

 

 

---居た…しかも鏡に映っていた時と同じ表情で、自分の目の前に……

 

 

 

「ぐおッ!?」

 

 

 

 何かを言う暇も無く、メテオラの視界が凄まじい衝撃と共に真っ黒になった。それと同時に顔面がメキメキと音を立てながら段々と締め付けられていく。これはもしかしなくても、アイアンク…

 

 

 

「かんちゃんはね、ただでさえ人と触れ合うのが苦手なんだよね~」

 

 

「うぐはッ!?」

 

 

 

 

---メテオラの体が、浮いた……

 

 

 

 

(こんな華奢な体の何処にこの様な力が…!?)

 

 

「特にね~君たちみたいな人たちは凄く…すっごく苦手なんだよ~?それこそ泣いちゃうくらいに…」

 

 

「ッーーーーー!?」

 

 

 

 手に加えられる力が心なしか強まり、激痛で声にならない悲鳴を上げるしかないメテオラ。そんな彼のことなど知ったことでは無いと言わんばかりに、彼女は言葉を続ける…

 

 

 

「そんな人が『恋は盲目』って…冗談は、ほどほどにしてよね~?……潰すよ…?」

 

 

「え…あがッ……ちょ、待っ…!?」

 

 

「さてさて、私の親友に手を出しかねない御馬鹿さんには、ちょっとキツメの御仕置きタ~イム♪」

 

 

 

 その宣告と同時に一気に握力が強められ、さっきまでの痛みが生ぬるいものに感じるほどの激痛がメテオラの顔面に走る…。

 

 

 

「あががががががががが!?潰れる、顔が潰れる!?怒らせてしまったのなら謝ります!!だからちょっと許しおぎゃぶああああああああああああああああああああああああああああああああああああああsがう;sklljkv;lvs;lfkjldんkんjvkんskldんjkfgkッ!?」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あ、本音。長かったね…」

 

 

「ごめんごめん、ちょっと激闘を繰り広げる羽目になってね~~」

 

 

「そんなトイレで大袈裟な…」

 

 

「そんなことよりも~早くショッピングの続きを開始するのだ~~!!」

 

 

「あ、ちょっと待って本音!!……もう…」

 

 

 

トイレを理由に待たせときながら、さっさと先に行ってしまった本音を追い掛けるようにして、簪はその場を離れた。半ば本音に振り回され気味だが、何だかんだ言ってその表情は楽しげである。

 

 そして彼女は何の支障も無く、何も知ることも無く、今日という日を心置きなく堪能したのだった…。

 

 

 

 

 

---因みにその日…楯無との鬼ごっこをどうにか生き延びたセイスがIS学園にある隠れ家へと向かってる最中、ふと薄暗い路地裏に視線を向けるとそこには“今日一日分の記憶が消滅した”メテオラ達が捨てられていたそうな……

 

 


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