「……何じゃこりゃ…」
ラウラのベッドの下に置いてあったもの……それはかなり大きなトランクケースだった…。が、そのトランクケースは何やら異様な雰囲気を放っている。
何故なら、やたらデカいそれはどういうわけか、“鎖でグルグル巻きにされ、南京錠で拘束”されていたからだ。しかも何処ぞの神社から貰ってきたのだろうか、怪しげなお札が何枚も貼られている…。
ぶっちゃけ超怖いんだけど…。
「けど、シャルロットの金庫よりは何か入ってそうだな……て、うん…?」
そこで気付いたのだが、そのトランクから何かはみ出ていた。半ば封印状態に近いソレの隅っこから、黒い布の様な物がチラリと見えるのだ。いよいよ持って怪しくなってきたぞこの中身…
「ほぼ手ぶら状態だからな……手土産に、片鱗の一つでも頂いていく…!!」
黒兎部隊長の秘密の片鱗を手に入れるべく俺は仕事道具を取り出し、謎のトランクケースへと襲い掛かる。その異様な雰囲気に改めて気圧されそうになったが怯んだのは一瞬、ピッキング道具を南京錠にねじ込んだ。そして手慣れた手つきでカチカチと弄くって…
―――カチリッ…!!
「おっしゃ、開封!!」
ゴツイ見た目の割には安物だったな、この南京錠。さ~て、ジャラジャラと鎖を外し、念のため怪しげなお札も全部引っぺがす。そして、遂に…
「開け、ゴマ…!!」
その怪しげで未知の可能性を秘めたソレの封印を解いた。さて、鬼が出るか蛇が出るか…!!
「…………まさか黒猫さんが出るとは……orz」
―――これ、この前シャルロットと一緒に買ってた猫パジャマじゃん…
「モウヤダコンナオチ…」
つーか何だってパジャマをこんなモンに入れてんだ?お前、いつも着てるよなコレ…
「……おや、先週の黒兎の着ぐるみ…」
この前クラリッサに唆される(?)形で着てた黒兎の着ぐるみも入ってた。あの時は爆笑モノだったなぁ…全員が全員、本気で『一夏ケモナー説』を信じるだもの。その時のデータは、さぞかし良い値段をオークションで叩き出すことだろう……あ、暫く中止になったんだった…。
「……結局、またハズレかあああああああああああああああああああッ!!」
この遣る瀬無い気持ちを少しでも発散するべく、手に取ったその二つをトランクケースに叩きこもうとするべく思いっきり振りかぶる……フォレストの旦那、俺もう仕事辞めて良いですか…?
―――ヒラリ…
「…あ?」
が、黒兎の方を思いっきり振りかぶったその時…何かが黒兎の着ぐるみから落ちた。どうやら引っ掛かっていた、もしくは知らぬ間に一緒に掴んでいたっぽい…。
―――ナース服を…
「……。」
はい、ちょっと待とうか。思考が追いつかないよ、現実を受け止められないよ、己の正気を疑っちゃうよ。夢だよねコレ、幻覚だよねコレ、良く見たら見えちまったこの目の前のトランクケースの中身の数々は何かの冗談だよね?
―――女医
―――スチュワーデス
―――婦警
―――メイド服
―――レースクイーン
―――チャイナ服
―――スケバン…
「アイツ一体何に目覚めてんの!?」
うわぁ…重症だろ、コレ。全部が全部そこら辺の店で売ってるような安物では無く、オーダーメイド製のワンオフだよ……。
「……仕込んだのは副隊長あたりか…」
いつだかの織斑千冬の絵日ッゲフンゲフン…ピンクノートを見つけた時のような気まずさを覚えながら、俺はそ~っと入ってたものを片付ける。きっちりお札を貼り直し、鎖を巻いて南京錠を装着。これで大丈夫だろう…
「さて、帰るか……て、ヤバッ…!?」
さっさと部屋へ帰ろうとした矢先、此方に近づいてくる気配を感じ取った。この軍人特有の明らかに、訓練された者の一定感覚で刻まれる足音は…
「ラウラか…!!」
よりによって本人か!!この現場で遭遇したら本気でヤバい!?彼女の事だ、命を懸けて俺を抹殺しに掛かるに違いない…!!
「ステルス起動!!」
監視カメラに映らない様にスイッチを入れ、取り敢えずシャルロットのベッドの下に潜り込んで息をひそめる。目の前に『いちか人形』入りの金庫が目の前にあってイラッと来たが仕方ない…
と、それとほぼ同時に部屋の扉が開かれた。入って来たのは予想通りラウラであり、腕に何かを抱えていた……って、アレって…。
(さっきのと同じ小包じゃねーかッ!!)
例の小包を抱えたラウラはさっきのシャルロットと同様に御機嫌で、頬を緩ませながら嬉しそうに小包を見つめていた。そしてシャルロットと違って一瞬だけISを部分展開し、その間にすんなりとプラズマ手刀で小包を開封した……野郎、手慣れてやがる…。
(アイツ、偽名使ったな?もしくは副隊長に買わせたか…)
まぁ、ぶっちゃけどうでも良いか。とにかくさっさとどっかに行って欲しいんだが…
「フフフ…やっと来たか、今回は随分と時間が掛かったモノだな……」
クリスマスプレゼントを開ける子供さながらの表情で中身を取り出すラウラ。が、そこから引っ張り出したものは…。
―――某魔法少女に出てくる、番号ズ5番の衣装だった…
「ナイフはいくらでもあるからな、後はソレに爆薬でも爆弾でも付ければ完璧だ!!は~はっはッ!!」
(……重症だ、コイツ…)
幸いその場で着替えるなんて真似はされず、ラウラはとっとと衣装をトランクに仕舞って部屋から去って行った…。その間際、『今度はリイ○フォースにしようか…しかし、ブレ○ブルーのν―13も捨てがたいな…』なんて呟いていたが、本当に黒兎隊は大丈夫なのだろうか…。
とりあえず、今日の収穫は…
「ファンクラブの連中の喜びそうなネタしかねぇーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
つい叫んじまって楯無に見つかりそうになったが、仕方のなかったことだと思う…