すいません、今日はもう感想返せないかもしれないっす…!!
「さて、戻ったのは良いのだけど…」
メテオラと別れ、いつもの隠れ家に戻った俺。好都合な事に未だオランジュは帰って来ておらず、部屋には俺だけしか居ない。邪魔したり騒いだりする奴も居ないので、テキパキとコンピューターを起動させてカメラの画像をチェックしようとしたのだが…。
「あの二人の部屋にカメラ仕掛けて無いんだった…」
犯罪組織に所属しているとは云え、それはそれこれはこれ。ラッキースケベ以上にタチの悪い真似をするのは気が引ける。何より、本人の了承を得ずに女子の着替えとか入浴中の映像を残すなんて事は、一寸ほど残った良心に何かを訴えかけてきてとてもじゃないが出来ねぇ…。
「これじゃメテオラのこと言えないな。さて、どうしたもんか…」
一応、盗聴器だけは設置してある。だが今回は小包の中身…視覚的情報が必要なのだ。下手な推測だけではどうしようもない。
「ま、とにかく盗聴器のスイッチON!!」
キーボードを軽やかに叩いてシャルロットの部屋に仕掛けてある盗聴器のスイッチを入れる。すると、いつもの様にモニターから部屋の主の声が響いてきた…。
『ハァ~…やっと手に入った~!!アッハハ~♪』
部屋には一人だけなのだろうか、やけにテンションの高いシャルロットの声が聴こえてくる。雰囲気から察するに、今はお目当ての品が入った小包に満面の笑みで頬ずりでもしてるんじゃなかろうか?
『さ~てと、早速開封~♪……あれ…?』
「…ん?」
突然シャルロットが何かに困惑したような声を出した。まるで自分にとって完全に予想外な事態に遭遇したかのような…
『……小包が…開かない…』
「おいぃ!?」
『ふぬッ!!……え、ちょ…何これ本当に固いよ!?』
どうやらメテオラが言ってたことはマジのようだ。盗聴器越しに彼女が悪戦苦闘する呻き声が聴こえまくってくる…。思いっきり引っ張ったり鋏が折れる音、カッターが跳ね返される音まで響いてくる始末だ……コレって逆に苦情来るんじゃないか?業者さんよ…。
「ていうか、買った本人が開けれないとなると俺はどうしたら良いのさ…」
購入者しか開封できないからという理由で俺がこれを担当したっていうのに、現実がこれじゃあ手におえないったらありゃしな…
―――ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォン!!
「って、何だ!?」
いきなりマイクの集音可能量を上回りかねない轟音が学園中に響いた。一瞬だけ本気で耳の鼓膜がイカレそうになってビビったが、どうにか意識をそっちに向ける…。
『ふぅ、まさか僕の最終兵器を使わないと開かないなんて…』
「もしや『シールドピアーズ』使ったのか!?」
『……でも、それでやっと蓋が開くだけってどういう事…?』
「小包壊れなかっただと!?」
第三世代機にさえ大ダメージを与える第二世代機最強の武器のひとつ。それを使われて原型留めたままってどんだけ頑丈なんだよその小包はッ!!……メテオラ、絶対にこの通販サイトの経営者は表の人間なんかじゃ無いと思うぞ…
『おいシャルロット!!今の音は何だ!?』
『ラ、ラウラ!?』
『…て、何故に武装だけとは言えISを展開している!?』
『こ、こここれはその…!!』
おっと、やっぱり学園中に響いていたか。偶々付近をうろついていた、もしくは部屋に戻る途中だったラウラが部屋に入って来たみたいだ。シャルロットは慌てて自分が出していた物を隠そうとしたのだろうが、間に合わなかったようで…
『も、もうラウラったらどうしたの?僕は何も…』
『今更後ろに隠そうとしても無駄だ。そもそも隠しきれてないぞ…』
シールドピアーズを必死に自身の後ろに隠そうとしている彼女を想像してしまった。というか、量子化しろよ…。
『本当にどうした、敵襲でもあったのか…?』
『……え、えっとね…』
すんげー目が泳いでいる、もしくは視線を逸らしている姿を想像するのは本当に容易だった。そりゃあ、通販で買った品を開封する為にISの武装を使ったなんて言えないもんなぁ…。
『コレが中々開封できないから、つい…』
「言いやがった!?」
『そうか、それは仕方ないな』
『しかも納得されただと!?』
嘘だろ!?いくらラウラが色々と非常識だと言ってもそれで納得していいのか!?
『だから言ったろ?そこの通販サイトの包みは非常識なぐらいに頑丈だ、と…』
『うん、正直言って半信半疑だったからビックリした…』
「なん…だと…?」
え、もしかしてラウラも利用者の一人ってことか?でも、名簿に彼女の名前は確か無かった筈…
『ところで、ラウラは何でこの事知ってたの?』
『クラリッサ』
『……何でだろう、その人の名前を聴いただけで納得できちゃったよ…』
「……俺もだ…」
怪しげな通販、腐女子な副隊長…うん、何かを察するには充分だ……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
しばらくして、シールドピアーズによって学園中に響いた轟音を聴きつけた山田先生が来たみたいだったが二人はシラを切り通したらしい。何とか山田先生をやり過ごした後、ラウラはシャルロットに何を買ったのか尋ねたのだが、結局シャルロットは最後まで教えようとしなかった。というわけで…
「結局部屋に忍び込む羽目に~♪……面倒くせぇ…」
ステルス機能全開、警戒心マックスで魔王の類にビビりながら学園の廊下を突き進む。途中、生徒達と遭遇しそうになった時は隠れたり持参したダンボールでやり過ごしながらシャルロット達の部屋をひたすら目指す。そして、遂にその目的地に辿り着いた…。
「とうちゃ~く」
さて、取り敢えず扉の鍵穴に仕事道具のひとつをチョチョイのチョイっと弄ると、数秒でカチャリと音をたてながら開錠。やっぱりココのセキュリティーはちょろい。
「さて、例のブツは…」
流石はあの二人というか、予想通り部屋はしっかり整理整頓されてて綺麗だった。故に、逆にシャルロットがどこに例の品を片付けたのか分からない。とは言っても、こういう作業は手慣れてるつもりなので左程苦労はしなさそうだ。
「大体、誰かに見せたくない教えたくない物を隠す場所ってのは…」
この部屋に物を隠せる場所なんて限られている。クローゼットはラウラも使うから無し、風呂場は論外、ベランダも同じ、ロッカーの類は無い。となると残すは…
「ベッドの下だ、な……ッて、ええぇ…?」
あった。やっぱりベッドの下にあったんだが、例のバグ包みでは無く…
「……金庫…?」
これまた無駄にゴツいダイヤル式の金庫だった。シャルロットのベッドの下であり、その隣に空っぽになった例の包みが転がっていたので多分中にブツが入っているのだろうが…。
「シャルロット、この金庫も買ったのか?これ、性能的にも値段的にもかなり良い奴だぞ…」
政府高官の書類をパクりに行くと高確率でこの金庫とエンカウントしている気がする。あまりに見慣れてしまったので、ある日調べてみたら地味に高額だった事を知った。流石は将来国を背負う者なだけあってか、俺達とは収入差が段違いだ…。
「ま…見慣れてる分、開けるのも慣れてるんだけどな……」
ダイヤルを右にカチカチ、左にカチカチ、また右にカチカチ…そんな風に今まで培った経験と感覚任せに俺はダイヤルを回す。そして案の定、すぐに金庫の戸は開いた。高性能とは言え、所詮は市販……チョロイぜ…。
「さってと、フランス代表候補性の秘密とごたいめ~ん…」
ぶっちゃけた話、既にこの時点で嫌な予感しかしなかった。今まで何かを期待し、それに裏切られるというのがテンプレになって来ているここ最近。今回もどうせそんなことだろうと思ったよ…あぁ、思ったよ!!フランスを強請るどころか、ゴシップネタになるかどうかも怪しい残念な結果になると思ってたさ!!
「けどな…やっぱりムカツクんだよ!!苦労した結果、見つけたもんがこんなだとさぁッ!!」
開かれた金庫にて俺を待ち構えていたもの…それは40センチ弱の大きさであり、見た目は結構フカフカしていそうだった。そして人の形をしており、白ベースの制服を纏って黒い髪をしている。そいつの目は無駄につぶらな瞳をしており、今はその綺麗な視線に対して無性に腹が立った…。
確かにそれは、諸事情により今の日本…それどころか世界でも探すことが難しいとされている。だが、いくらグレーなサイトを使ったとは言っても、購入したものがこれじゃあなぁ…
―――国内完全限定生産ぬいぐるみ商品、『いちか君人形』なんざ何のネタにもならねぇ…
「あぁもう!!本当に最近こんなのばっかりだ!!」
いくら何でも、ぬいぐるみを購入しただけで国を強請るネタに何かなるわけない。購入方法はいささか問題があるかもしれないが、そんなに騒ぐようなことでも無い。完全に無駄足だった…。
「ていうか無駄に可愛くデザインされてやがんな、コレ…」
かと言って全くの創作キャラというわけでもなく、本人をしっかり意識できる程度の面影が残っている。うん、織斑千冬が肖像権の侵害で訴えるまで馬鹿売れしてた理由が良く分かる。ましてや奴に想いを寄せてる奴にとっては尚更…。
「……つーか予想出来たとは言え、何か疲れた…」
もういいや…とにかく、さっさと帰って組織に連絡しよう。完全な無駄足だったと。そんで今日はもう寝てしまおう。嫌なことがあって疲れたら寝るに限る…。
そう思った時点でさっさと部屋から出れば、“あんなもの”を見つけることは無かったろうに…
「……ん?何だコレ…」
シャルロットのベッドとは反対側…ラウラのベッドの下から何かがはみ出てたのを見つけてしまった…
次回、『何かに目覚めた黒兎』