転生者と妖怪   作:ゾル0306

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四姉妹

1年ぶりに朱染家に帰って来た。

不敗のところで世話になってから旅をしながら世界を見てきた。御子神が言っていた・・・人間との共存にはまだ時間がかかりそうだ。妖怪は影で人間を襲っている。その逆もしかり。

だが、妖怪と人間が共存している地域もあった。無理ではないということが分かっただけでもよかったと思う。

 

城に着くとそこには・・・

ピンク色の髪でポニーテールにしてドレスを纏っている女性―――アカーシャだ。

アカーシャは気が付いたのかニコニコしながらこちら側へ近づいて来て話しかけてきた。

 

「龍司、久しぶりね。あの二人はどうだった?」

 

「昔と変わらなかったさ。不敗にはいいことを教えてもらった。」

 

「いいことって?」

 

「ないしょだ。」

 

アカーシャはピーピと文句を言っている。

ほっぺを膨らましながら。

 

そして、俺はアカーシャに抱っこされて城内へ招待された。

教えてくれなかったからさっきの罰ということらしい。俺は嬉しいんだけどね。同時に恥ずかしいけれども・・・

ちなみに「身長が伸びてないね」と言われた・・・。身長は伸ばしたいのに!!

 

案内され城内のある一室へ行くと小さい女の子が3人いた。

 

「刈愛、モカ、心愛、こっちに来て。紹介したい人がいるから。」

 

アカーシャが3人を呼ぶとこっちへ来た。

待って・・・この状態恥ずかしいんだけど・・・いまだ抱っこをされています。

アカーシャは力を入れて逃がさないようにしてるし・・・ひどい!

モカは『クスクス』と笑っているように見える。顔がニヤついてるから・・・

 

「この人は神崎龍司。私の昔からの友人よ。身長が小さいのは気にしないであげてね♪」

 

今の何?俺の気にしていることを・・・笑いながら普通に言いましたよ!この人・・・

俺の第一印象は悪いんじゃない・・・。

するとモカから自己紹介を始めた。

 

「私のことは知っていると思うが朱染モカだ。よろしく。」

 

この人まだ笑ってるよ!ちょっとやめて!という思いは届かず・・・。もう諦めよう。

次はウェーブのかかった長い金髪で褐色の肌の少女が話し始めた。この子はアカーシャと似ていないな。あの義理の子か・・・

 

「朱染刈愛です。よろしくお願いします。」

 

『丁寧でおっとりとしている。純粋。』という感じがするが・・・どこか危ないような感じもする。

 

最後に髪の色はオレンジでツインテールの女の子が話し始めた。

 

「朱染心愛です。よろしく。」

 

この子が一番背が小さいから末っ子だろう。刈愛と似ている。この子も義理の子だろう。

『活発』と言うのが第一印象だ。

現にモカに喧嘩を売っている。

そして・・・ボコボコにされた。

 

時が過ぎた・・・

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

三姉妹と出会って数ヶ月

 

三姉妹とはよく組手をしている。

三人共、大妖怪のバンパイアということで幼いながらそこそこの力がある。一緒にトレーニングとかして実力を伸ばしている。

心愛は「お姉さまに勝てるように強くしてください。」と頼まれて修行を二人よりやっている。その割にはモカにボコボコにされている。

なぜなら・・・モカにも「心愛ばかりずるい。私ともしてくれ。」と頼まれたからだ。影ながらよく一緒に修行をしている。

俺は三姉妹に気に入れられたらしい。

たとえば・・・食事の時に俺の席の横を誰がとるか?というので言い争っていることもあるぐらいだ。

 

 

「俺に用事とはなんだ?」

 

俺は一茶さんの部屋にいる。

今朝起きたらアカーシャに「一茶さんの部屋へ来て。大事な話がある。」とのことだ。

 

「今日この朱染家に新たな血が入る。私の娘でね、仲良くしてもらいたいのだよ。」

 

「亞愛ちゃんっていうのよ。」

 

一茶さんはいつも通りだが、アカーシャは新たな娘ができると微笑んでいた。

 

「了解だ。バンパイアと言うことでいいのか?」

 

「ああ。幼いころに母親を亡くして中国の縁者の元で世話になっていたらしい。そのためか中国拳法などの近接格闘術を極めているようだ。」

 

「おもしろそうだ。」

 

「流石にお前ほどは強くないだろう。」

 

子供で俺ほどの実力があったらびっくりするわ。

 

「それで、亞愛はいつ来るんだ?」

 

「うむ、もうそろそろこちらに着くだろう」

 

「それは随分と急な話だな・・・。モカたちはこのことを?」

 

「まだだ。来たときに紹介をしようと思ってね。」

 

「そうか、了解だ。俺はモカたちのところへ行くな。」

 

一茶さんの部屋を去り、モカたちの居る外へ出た。

外に出ると・・・モカ、刈愛、心愛のほかに黒髪をツーサイドアップにし、チャイナドレスを着ていて、キャリーバッグを持っている少女がいた。

 

俺の姿に気づくモカ。

 

「龍司!」

 

「もう会ったようだな。お互い自己紹介は終わったか?」

 

「うん! あと自己紹介してないのは龍司だけよ!」

 

「そうか、やることが早いな。」

 

心愛の言葉に苦笑した俺は亞愛と向かい合う。

 

「はじめまして。俺の名は神崎龍司だ。これからよろしく、亞愛。」

 

亜愛は方膝をつき包拳礼を取る。

 

「初次対面(はじめまして)。亜愛です。よろしくお願いします、龍司様。」

 

「おっと、龍司様はよしてくれ。普通に龍司と気軽に呼んでくれ。」

 

「わかりました。龍司。」

 

「龍司は『天龍』と呼ばれてるの?」

 

「そうだが。」

 

『天龍』は俺の異名だ。『天龍』とはドライグとアルビオンが二匹で『二天龍』と呼ばれているから俺はそこから『天龍』というのを取って名乗ったら広まってしまったようだ。今では暴れすぎたと思っている。まさか俺の異名が広まっているとは思わなかったからな。

 

「うわさは聞いてました。いつか手合わせしてください。」

 

「いいぞ。」

 

軽く握手を交わすと背後から殺気が・・・

振り返ると・・・頬を膨らませている心愛、明らかに怒っているモカ、背後に怪物のようなものが見える刈愛。

 

「「「私と今から修行をお願いします。」」」

 

仕組んだかのようにハモった三人であった。

 

「分かった。あとで三人まとめて相手をするよ。」

 

「私、一人で十分だ。」

 

「最初は私から!!」

 

「私も!!!」

 

喧嘩をし始めるモカ、心愛、刈愛だった。

それを見ている亜愛は・・・楽しそうに眺めていた。

 

「楽しく生活をできそうだわ。」

 

とつぶやく亜愛。

 

「そうだな。」

 

俺がそういい、亜愛の頭の上に手を置くと頬を赤くしたように見えた。

 

そして俺たちは一茶さんのところへ向かった。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

「よく来てくれたね。私がこの館の主、朱染一茶だ。歓迎するよ」

 

「初次対面(はじめまして)。今日この時を心待ちにしていました。亞愛と申します。お会いできて光栄です、お父様。」

 

一茶さんの言葉に膝をついた亞愛が包拳礼で一礼した。

 

「うむ、私も逢えて嬉しいよ。君も今日から朱染家の一員だ、自由にするといい。姉妹たちと龍司とはもう話したかね?」

 

「ええ、少し。皆優しい人で安心しました。」

 

亞愛はこちらをチラッとこちらを見ている。

 

「それは重畳。」

 

俺たちは一茶さんの後をついていく形で大ホールへと向かう。亞愛のお披露目という演目で朱染家の関係者を大勢呼んだらしい。俺の時もやったな。ずいぶんと昔だけど。対戦した相手をボコボコにしてアカーシャに怒られたっけ、懐かしい思い出だ。

 

長い廊下を歩き大ホールに入ると、既に集まっていた客人たちの視線が集まる。

 

「ボスの隠し子?」

 

「かわいー子ね。」

 

「モカちゃんたちも大きくなったな。うん、可愛くなった。」

 

「朱染家姉妹が勢揃いか。」

 

そこらかしこから聞こえる声に萌香たちの顔が赤く染まる。まだまだ子供だな。

一茶さんが一歩前に出る。

 

「諸君、遠路遥々よく来てくれた。今日は私の新しい娘を紹介する。」

 

促された亞愛が一歩前に出て頭を下げた。

 

「ご紹介に預かりました、朱染亞愛と申します。幼い頃に母を亡くし、中国の縁者の元でお世話になっていました。天涯孤独の身と思っていましたが、偶然お父様の所存が判り、おまけに家族として受け入れてくれて感謝の念に堪えません。新参者ですが、どうぞよろしくお願いします」

 

スカートの端を摘まみペコっと一礼する亞愛に大きな拍手が送られた。モカたちも亞愛の前に出て改めて自己紹介をする。

 

「刈愛です。あなたが来たから私は次女になるのね。背は私の方が高いかしら?」

 

「モカだ。今年で九歳になる。よろしく頼む。」

 

「心愛よ。どーせならあたし、妹が欲しかったのに。どーせあたしは末っ子ですよーだ。」

 

差し出す手を一人一人握る亞愛。

 

「歓喜! こんな素敵な姉妹が出来るなんて夢みたい。請多関照(よろしくお願いします)!」

 

よかった、これなら仲良くやっていけそうだな。一歩下がってモカたちは姉妹でキャイキャイ騒ぐ姿を見守りながら、そう思う。

しばらくして一茶さんが亞愛に話し掛けた。

 

「さて、亞愛。早速で悪いが、君の同族としての『力』を見せてくれるかい?」

 

「はい、分かりました、お父様。」

 

その言葉が何を意味しているのかを察した亞愛は表情を引き締めた。

 

「よろしい。では、刈愛。前に出なさい。」

 

父に促されて前に出る。モカたちもこの後の何が起きるのかを把握しているのか、いつの間にか離れて遠巻きに見守っていた。刈愛と亞愛を中心に俺たちも下がっていく。

 

「では、我が子らよ。遠慮は無用だ。」

 

 

「――殺し合いなさい。」

 

 

この一言で戦いが始まった。

一進一退の攻防が続いたが、少しして・・・一際大きい拍手がホールに響き渡った。

 

「そこまで。ありがとう亞愛、君の実力はよくわかった。正直期待以上だったよ。」

 

一茶さんの言葉に戦いが終わり、一礼する亞愛。

 

「ありがとうございます、お父様。」

 

「うむ。今日はゆっくり休んで、旅の疲れを癒しなさい。」

 

予想以上に強かった。見ている限りまだ余裕がある。何か隠しているようにも見える・・・。

 

「ふ、ふんっ。あんなの大したことないもんっ。刈愛姉さまが全然本気出してないしっ。」

 

何故か得意気に胸を張る心愛。モカは顎に手を当てて考え込んでいる様子だった。

 

「心愛、まだ二人とも本気を出していない。本当の殺し合いならどちらが勝つかわからない。」

 

「そうだな。刈愛姉さんも本気じゃないとはいえ、あそこまでいい勝負したんだ。そこが見えない。」

 

どうやらモカも俺と同意見だった。

 

ある程度ならそこそこの勝負が出来そうだ。闘うのが楽しみだ。


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