転生者と妖怪   作:ゾル0306

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副担任と決意

あの騒ぎの後、学校へ着くとSTの時間となった。

“ガラガラ”ドアが開くのと同時に猫目先生とピンク髪でスーツを着ている女性が教室に入ってきた。

 

「はーい 席について~」

 

その教師は辰弥、モカと亞愛には見覚えのある人物だった 。

 

「こちらの先生は今日からこのクラスの副担任の先生になるアカーシャ・ブラッドリバー先生です。」

 

それはモカと亞愛の母であり俺の盟友であるアカーシャ・ブラッドリバーだった。

二人とも何を言えばいいのか分からないような顔をしていた。しいて言うなら驚愕?自分の親が自分の通ってる学校で教師をやっているとは思わないからな。

俺もびっくりだよ。それに本名で教師をやるなんて・・・。冥王ってばれるかもしれないのに。俺でも名前を変えて通っているのに。

 

「はじめまして、猫目先生から紹介のあったアカーシャ・ブラッドリバーです。担当教科は社会です。1年間よろしくお願いします。」

 

お辞儀をしてにこやかに自己紹介をするアカーシャ。

 

「さっそく一時限目の授業は社会です。では、アカーシャ先生よろしくお願いします。」

 

猫目先生はアカーシャにバトンタッチして教室を出て行った。

どうやら一時限目は社会でアカーシャが授業をやるようだ。なんでこうなったんだ?

 

「一時限目開始まであと15分あります。それまでに授業の準備などを済ましといてください。」

 

アカーシャも教室を退室して行った。

とりあえず、御子神のところに行くか。直接聞いた方が早いだろう。

 

 

辰弥は理事長室の前に着き中へ入っていく。

 

「御子神・・・入るぞ。」

 

入った先には椅子に座っている者――御子神がいた。

いつも通りフードを着ていて、顔を見ることはできない。

 

「来るころかと思ってたよ龍司・・・いや、辰弥。」

 

「直接会うのは久しぶりだな。なぜアカーシャが教師になっているんだ?」

 

すると、何者かが理事長室に入ってきた。

 

「それは私が説明するわ。」

 

声の正体はアカーシャだった。

 

「モカがこの前この学園に行ってから一人で人間界に住んでいたわ。だけど寂しくなちゃって御子神さんに頼んだら教師としてなら来てもいいと言うことだったから教師としてこの学園に行くことにしたの。」

 

軽すぎるよ。そんなことで教師になってもいいものなのか?不思議でしかない・・・

だんだんアカーシャが辰弥に近づいてくる。

 

「龍司、大きくなったわね。おっと・・・ここでは辰弥っていう名前を使ってるんだっけ。」

 

「ああ、ここでは辰弥という名で頼む。」

 

“ギュッ”アカーシャが辰弥を抱きしめる。

顔が赤くなるのが分かる。

 

「お、おい。何をするんだ?ここではやめろ。一応教師と生徒という立場なんだから。」

 

「それもそうね。ここではそういう行為はやめておくわ。そのかわり・・・」

 

雲行きが悪くなっていく。今朝と同じような感じがする。

なぜなら徐々にアカーシャの口が辰弥の首元に近づいてくる。

 

“かぷっ・・・ちゅううぅぅぅぅ・・・・・”

 

血を吸われてしまった。今朝も吸われてしまったせいで血がなくなったような気がする。頭がクラクラする。本当に貧血はきついな・・・。

 

「ごちそうさまでした。とてもおいしかったよ。」

 

やっぱり親と子供って似るんだ。

アカーシャの肌もつやつやしている。

 

「私は普段血なんて吸わなくて、久しぶりに吸ったけど妖怪だと思えないぐらいだったわ。あと、力が湧いてくるような気がするわ。」

 

力が湧いてくるような気がする?・・・サイヤ人の血のせいかな?でも、モカと亞愛はそんなこと言ってなかったしな。うーん、なんでだろう。そのうちわかるか・・・

 

「お戯れのところ悪いが授業まであと2分だぞ。早く教室に戻った方がいいんじゃないか?」

 

御子神がそう言う。

本当に残り時間が2分になっていた。

 

辰弥とアカーシャは走って教室まで戻っていった。一緒に入って来たことでモカと亞愛に怪しまれてしまった。

あとで二人からお話があるそうです。恐ろしそう・・・

授業は普通にやってくれたのでそれは助かったが、アカーシャがこちらを見ると顔を赤くするのはやめてほしかった。なぜなら、横と後ろから黒いオーラを放たれているので。

他の生徒からも嫉妬の視線を受けていたし

 

「あんな美人な先生とも知り合いだったとは!」

「モカさんたちだけではなくアカーシャ先生まで!」

「殺す!」

 

なんてことを言われた。アカーシャは苦笑いをしていたが、この様子が日常になりそうです。

順調に授業も進んでいきHRが終わり帰宅時間になった。

 

月音と一緒に帰ろうと思って月音の席に行くがすでにいなかった。教室を見渡してみるが、教室の中にもいなく、先に帰ったようだ。

 

「辰弥、帰ろ。」

 

「早くしろ、今日は辰弥に夕食を作ってもらおうと思ってるんだからな。」

 

約束してないケド・・・

亞愛とモカの二人と一緒に帰宅することにした。

 

校門を出ると月音の姿があった。

寮とは反対の方向へ歩んでいる。そちらにはバス停がある方角だ。

そして林の中へ月音は入っていった。

 

月音は家に帰るつもりなのか?月音がそう決めたならしょうがないけど、あいつは俺の言葉が届かなかったのか?

 

「辰弥、月音のやつが林の中へ行ったぞ、止めなくていいのか?」

 

モカがそう言う。

 

「早く行かないとここから出て行っちゃうかもしれないよ。」

 

亞愛も言う。

少なからずモカと亞愛も月音のことを友として思っているのかな。それなら嬉しいんだけどね。

 

「なら行こうか。」

 

辰弥たちは走って月音を追いかけて林の中へと突き進んで行った。

 

 

 

月音side

 

今日は朝から大変だった。

小宮砕蔵っていう不良妖怪に絡まれるし、美人の副担任がきてクラスが騒がしくなるし、モカさんたちと一緒にいると辰弥と一緒に嫉妬の眼差しを向けられる。人間界の学校とは全然違うけど、この学園で友達ができた。だからこの学園でやっていこうと決断したんだ。お父さんの手違いで入学をしてしまったけどここに来てよかったと思うよ。

 

ここでは携帯電話が使用できないから、この決断のためにお母さんに手紙を出しにバス停に向かっている。

バス停でバスを待っていると、だんだん足音が近づいてきてだれかの声が聞こえる。

 

「月音!」

 

名前を呼ばれたと思い振り向いてみるとそこには声の持ち主――龍崎辰弥の姿があった。

そしてモカさんと亞愛さんもいた。

 

「どうしたのみんな?」

 

「おまえ何やってるんだ!なんで帰るんだよ!」

 

「そうだ、月音。ここでやって行くんじゃなかったのか?」

 

「辰弥の気持ちが分からないの?」

 

「へっ?別に帰らないよ。」

 

「じゃあなんでここに来たんだよ。」

 

「ここだと携帯とかで連絡ができないから手紙を出そうと思って。」

 

辰弥とモカさんと亞愛さんは人間界に帰るかと思ってここまで追いかけてみたいだ。

月音は届けてもらう予定の手紙を見せると

 

「・・・」

 

一瞬の沈黙が続いた。

 

亞愛さんが冷たい視線を辰弥に向け、目を細めながら詰め寄る。

俺に視線が向けられてるわけじゃないのに怖すぎる。

辰弥は硬直し、顔を青くさせる

 

「辰弥、どういうことかな?」

 

語気に静かな怒りを含ませる亞愛さんの声音。

その後数分の沈黙が続く。

モカさんは関わりたくないような感じがする。というか、今回は亞愛さんの味方なのかな?

 

「・・・ごめんなさい。」

 

辰弥が屈した。

小宮砕蔵との戦いで圧倒的な力を見せた辰弥が負けた・・・

 

 

辰弥side

 

月音は帰るつもりはなく家族や友人に手紙を出すためにバス停に来たのだという。

追いかけてきて損したぜ。亞愛には怒られるし、モカからは後から何か言われそうだし。

亞愛が起こると怖いんだよ。崩月次元刀で真っ二つにしそうで。

亞愛に怒られてからバスが来て月音が運転手に手紙を渡していた。

 

「これを渡しといてもらえますか?」

 

「手紙ぐらいお安い御用だが、本当にいいのかい?」

 

「はい。」

 

「見上げた根性だ、少年。」

 

会話が終わると月音はバスから降りてきた。

すると、運転手と目があった。

 

「よっ!運転手。また会ったな。」

 

話しかけてみると、あいかわらず気味悪いさMAXだった。

 

「ヒヒヒッ、今日さっそく暴れたみたいだな。御子神から聞いたぜ。」

 

御子神、俺が少し喧嘩したことを知っていたのか?それとも噂が耳に届いたのか?というか耳に届くの早すぎだわ。

 

「まーな、軽くな。」

 

「でも、本気でやるなよ。生徒が死んじまうぜ。」

 

「そこまでは力をださねーよ。」

 

「ヒヒヒッ、そう思っておくよ。そろそろ出発する。」

 

「ああ、時間をとったな。またな。」

 

ドアが閉まり、バスは走りだしトンネル内へと戻っていった。

俺たちも寮へと帰って行った。

月音も手紙を出せて一安心といったところかな。

 


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