月音side
翌日、学校へ行くために寮を出たところだ。
昨日はこの学校は危ないところだから逃げてしまおう、辞めようとまで考えていた。だが妖怪でもない辰弥は『俺は種族なんて気にしないぜ。どんな種族でも俺は受け入れるさ。だから、俺と仲良くしようぜ。もう友達だろう?』と言ってくれた。多分、俺が妖怪ではない、人間ということに気づいていると思う。『どんな種族でも』って言ってたから。俺が人間だとバレたら隠していたとして同罪になって殺されてしまうかもしれないのに。
だからこそ俺はこの学園で頑張ってみようかなって思う。ここに来て初めてできた友達と一緒に高校をするために。
このことを月音は考えていたので疲れたような感じだった。
「まてよ・・・ 色男」
そんな時に、男がいきなりつくねに掴みかかってきた。
その正体は。
そう昨日モカさんと亞愛さんに言い寄っていて辰弥があしらった砕蔵だった!
「テメェ 昨日は朱染モカと朱染亞愛と遊びほうけたらしいなッ 。許せねぇッ、何だてめェは!!」
ものすごい・・・。清清しいほどの嫉妬(ジェラシー)だ。
砕蔵はつくねを掴むと学園を囲んでいる壁に叩き付けた。
“ドガッ!!”
「が!?はっ!!」
背中に走るあまりの衝撃で声を上げてしまった。
めっちゃ痛い。昨日も実感したけど・・・これが妖怪の力。人間の俺とは力の強さが全然違う。
「テメェの正体は何なんだ?ああ!正体はッ!!」
腕に力を入れながら、詰め寄った。
やっ やばいっ・・・ 人間ってバレたら殺されるッ、
「正体?? オ…オレは そのっ・・・ バ・・・バン パイア・・・とか」
妖の種類、種族をよく知らなかった為とっさに思いついたバンパイアを名乗っていた。
その言葉にイラついたのか砕蔵は、わざとつくねを外すように壁に拳をいれた。
“ガコーーーーーン!”
「うわーーーーー」
コンクリートの壁は粉々になった。
騒ぎになるかと思いきや、そこは陽海学園!
「おおーーーー」 「パンチで壁がコナゴナに!!」「ほーーーー」
拍手喝さいがあがった。
「バンパイアだと!!バンパイアは不死で凶悪な西洋の大妖怪だぞ!「力」にかけては妖怪一とも言われる!!テメェがそのバンパイア!? ふざけんなッ!」
手のみ擬態を解きつくねの頭部を軽く鷲掴みに出来るほどの巨大な手でつくねを威嚇した。
「ひーーーー!手がっ・・・」
完全に腰が抜け立てなくなったつくねを見て。
「とにかくテメェは二度とあいつらに近づくんじゃねぇ。次にあいつと話しただけでも殺すぞ!もう1人のやつにも言っとけッ!」
そう言い残し歩いて行こうとしたがそれを誰かが止めた。
「小宮砕蔵、少し待てよ。」
それは龍崎辰弥だった。モカさんと亞愛さんと一緒にいた。
3人とも表情は目に明かりはなく暗くしている。非常に怒っているようにも見えた。
辰弥side
「・・・ふああああ・・・ムニャムニャ・・・、もう朝か・・・。」
いつも通り7時に起床し、いろいろと準備をしていたら寮を出ないといけない時間になってしまった。
部屋を出て建物を出ると、俺を待ち構えるかのようにモカと亞愛がいた。
「辰弥待ったぞ、来るのが遅いぞ。集合は10分前だと相場は決まっているんだぞ。」
「いや、待ち合わせしてないし・・・」
「えっ?」
そんな顔をされてもしてないものはしてないんですけどね。
待ってたなら断る理由もないしいいかな
「なら、行こうか。」
その一言で俺の両サイドをソッコーで抑える二人。
それを見ていた周囲の男から殺気や嫉妬の視線をぶつけられる。
もうこんなの慣れたから気にしない、気にしない。少しムカつくけど・・・
“ガコーーーーーン!”
「おおーーーー」 「パンチで壁がコナゴナに!!」「ほーーーー」
突然、でかい音と大勢の叫び声、拍手のような音が聞こえてくる。
「なんだ今の音と叫び声のようなものは?」
「モカ、亞愛、二人とも見に行ってみるか?」
「是是、そうね。」
なんだか嫌な予感しかしないんだけど。
その場に着くと
「とにかくテメェは二度とあいつらに近づくんじゃねぇ。次にあいつと話しただけでも殺すぞ!もう1人のやつにも言っとけッ!」
小宮と言い争っていた?襲われてた?
おそらく昨日、俺たちがモカと亞愛と学園内を捜索していたため嫉妬していたのだろう。だから月音に接触したと思う。執着心はハンパなかったからな。
小宮はその場から離れようとしていた。
「小宮砕蔵、少し待てよ。」
俺は小宮を引き留めた。
詰め寄ろうとするとさっきまで見ていた生徒たちが怯えるかのように道を開ける。自然とプレッシャーを放っているからだろう。
もちろん静粛を与えるつもりだ。俺の友人に手を出したんだからな!
「なんだテメェは!そいつらに近づくんじゃねぇ!」
「俺が誰と仲良くしようと俺の勝手だろ?もしかして嫉妬か?小さい男だな。」
「なんだと!」
小宮は激怒して妖気が漏れ出し・・・自分の体を妖怪の姿に変化させた。
「テメェだけはぶっ殺してやる!!」
と殴りかかってくる。
「二人ともちょっと待っててくれ。あのバカを相手してくるから。」
二人にそう言ってすぐさま振り返り小宮の拳を片手でとめる。
「うわぁ、すげぇ、小宮砕蔵のパンチを片手で止めやがった。」
「誰なんだ、あいつ。」
と外野から驚愕の声が聞こえる。小宮は他の生徒からは強いということで有名だったから驚いているのかな?全く強くないのに。
「なに?俺の拳をとめただと?ありえねぇ。」
「その程度か?期待外れだな。弱すぎるよ。」
刹那―――小宮はさっきとは反対の腕殴りかかろうとするがさっきまでいた場所に辰弥はいなかった。
「ちっ、どこにいる?どこに消えやがった!」
「てめえの後ろだよ。遅すぎる。そんなんじゃ俺には勝てねよ。」
一瞬のうちに辰弥は小宮の背後へ移動していた。
すぐさま小宮は振り向き殴る。
「このっ!!」
がまたそこには姿は無い 。
「なっ!?どこにいる?」
「てめえの後ろだよ。これ以上やってもつまらない。終わりにしよう。」
「なんだと!」
こちらに振り向く小宮のみぞおちに重たい一撃を入れる。
「ぐはぁ」
数メートル飛んでいき、一発のパンチで伸びてしまった。
「二度と俺たちに関わるんじゃねぇ。次はない、その時は潰す!」
と吐き捨てその場を後にして月音の元へ向かう。
周りいた連中は「すごいぞあの人。」「小宮くんを一撃で。」「あいつには喧嘩を売らない方がいいな。」と声をあげていた。
月音に向かうと、けがなどはしていなかったようでよかった。
俺たちは四人でそのまま学園に向かうことにした。
その道中・・・
「なあ辰弥、私と一戦やらないか?」
モカはクスッとわらいながら話す。
「じゃあ、私とも久しぶりにやって?」
亞愛もモカの意見に賛同する。
「気が向いたら相手をするよ。」
ブーブーと批判しているようだが、どこか嬉しそうにしているのはなぜだろうか?
顔がとってもニッコリしている。
何やら不穏な空気が・・・
モカも亞愛が同様に顔を紅潮していた・・・。
じりっじりっ・・・っと・・・
正に、獲物を追い詰めるように迫ってくる。
「あの~どうしたのですか?モカさん、亞愛さん。」
辰弥は尋ねてみると・・・
「辰弥の血を飲ませてもらうぞ。勝負を断ったのだからな。」
「取って食べるんじゃないよ。」
いいや、亞愛さん食べられなくても、血を吸われるんだよ。
月音は・・・今日はかわいそうだから吸わせるのはよそう・・・
「お手柔らかに頼むよ・・・」
モカと亞愛は、再び接近する。
顔は大分赤くなってはいるが、それでも近づいてきて・・・距離がゼロになった。
「「かぷっ・・・ちゅううぅぅぅぅ・・・」」
二人からいっぺんに血を吸われてしまった。
結構・・・痛いっす。
それに数分間吸われてしまい・・・貧血気味です・・・。
「辰弥の血は妖怪のだと思えないくらいおいしいわ。」
「美味しいな。」
お肌がツルツルの女生徒が2名とグッタリしている男子生徒が1名と精神的に来ている男子生徒が1名の4人が学校に着いて、みんなに不審に思われたのは別の機会に・・・