ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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行間一《ラウラ・ボーデヴィッヒ》

 左目に赤いラインが入った黒い眼帯を身に着けた銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 最近過激になってきているISによる犯罪行為やテロ行為への対策をするべく、彼女はドイツの軍事基地で自分のIS部隊の指示を出していた。

 最近ではイギリスの首都ロンドンでISによる事件が起きた。

 英国国会議事堂に付属している時計台ビッグ・ベン――正式名称エリザベス・タワーにはISを身に着けた女性が突き刺さる事件が起こり、そしてセシリアの両親が設立した会社である『Cunard_Black_Sky_Line』の付近でISによる戦闘が行われたという情報が入ってきている。

 まだドイツでそういった事件が起こってはいないが、いつそれが自分の元に降りかかるかは分からない。だからこうやっていつでも対応が出来るように準備しておく必要があるのだ。

 

「ボーデヴィッヒ隊長、ISの搬入が終了いたしました」

 

 敬礼をしながら通達する女性隊員にラウラは目を合わせる。

 

「了解した。ならば各自ISの状態をチェックし、終了次第報告。その後訓練に移る」

「ヤヴォール!」

 

 女性隊員は敬礼し直し、その場を離れた。

 ラウラはハンガーで自分のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』のチェックを再開する。

 今のままでは悪質なテロには立ち向かえない。ラウラはそんな気がしてならなかった。

 

(エルネスティーネ隊長……私は今、ちゃんと隊長をこなせているでしょうか?)

 

 ラウラがまだ“できそこない”と呼ばれていた頃の隊長の顔を思い出す。

 春樹と共に己を高め合っていた頃、エルネスティーネに認められてこのシュヴァルツェア・レーゲンを託された。その後、間違った道を進んでしまったがために周りに多大な迷惑をかけてしまった。その時は自分が隊長になったことは間違いだったと思っていた。

 己はまだまだ未熟で、自分は隊長の責任を担うには早すぎたのではないか。

 その贖罪をするには、どうしたらいいのだろう。

 そんな事を考えていた。

 だがドイツに帰れば、ここにいる隊員たちは自分を隊長として認めてくれる。

 自分でどう思おうが、周りがそう認めているのであればそれをやり遂げなければならない。それが、自分が思う正しい道だと思うから。

 

(しかし、なぜ私は隊長を続けていられるんだ?)

 

 本来使用が禁止されているVTシステムが搭載されていたシュヴァルツェア・レーゲンを使用し、発動させてしまったというのに。

 ドイツ政府は身に覚えのない事と否認。そもそも、そんなシステムを組み込んだ状態で、しかも使用できる状態にするだなんておかしい話だ。他国の陰謀か何かだと考えられているが、いつ、どこで、VTシステムが混入したのだろうか。

 それは未だに分かっていない。

 だが、それとこれとでは別問題だ。そんな大問題を起こしておいて、軍に居続けられる事がそもそもおかしいのだ。しかも隊長という地位もそのまま。上はどういう考えを持っているのかは、正しく認識することはできない。

 だが、その理由は何となくだが予想できる。

 遺伝子強化試験体。

 越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)

 数々のドイツの闇が詰め込まれたこの身は、管理の行き届かない場所には置いておけないのだろう。

 もしかすると、このままこの場所で飼い殺される未来が見える。

 

(だけどこの身は、平和を勝ち取るためのモノ。決して心なき兵器ではない)

 

 IS学園で数々の事件が起こり、臨海学校で事件が起こり、そして自分の知らない場所でまた事件が起こっている。これは由々しき事態だ。

 しかし、ラウラは仲間と共にIS学園の平和を勝ち取ってきた。

 そのステージが、今度は母国に変わっただけの事。やることは変わりないのだ。

 

「よし」

 

 シュヴァルツェア・レーゲンを待機状態のレッグバンドに戻し、光が降り注ぐ場所へ。

 この国を守り、そして己の居場所を守る。

 それがラウラ・ボーデヴィッヒという少女が抱く信念なのだから。

 

「これよりISを使用した訓練に移る。各自ISを装備しろ!!」




また次の更新までしばらく期間を開けてしまうかもしれません。
例の角川の小説投稿サイト用の小説を書きはじめたものですから……すみません。

もし良かったら、そのサイトが開いたときにいらしてください。
加藤彰の名前で投稿するはずです。
では。

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