ISを改変して別の物語を作ってみた。   作:加藤あきら

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行間三《チェルシー・ブランケット》

 セシリア・オルコットは長い一日終えて自宅へと帰ってシャワーを浴びて汗を洗い流していた。

 今日は大きなことが二つあった。

 一つは織斑一夏と篠ノ之箒の二人、または葵春樹は何かしらの事件に巻き込まれている可能性が出てきた事。そして、それに関与らしい事件があった事。

 そしてもう一つは『LOE社』を訪問して自分に授けられたブルー・ティアーズの改良案を社長のドゥーガルド・フィリップスに出して、それを了解してくれたことだ。

 今はとにかく彼女の専属メイドであるチェルシーからの情報を待

 

(下準備はできました……。あとは、わたくしの予測が当たってチェルシーから有力な情報さえ来てしまえば……)

 

 セシリアは大きな計画を考えている。

 織斑一夏と篠ノ之箒、そしてその姉の篠ノ之束が何かしらの行動を取っていることは予測できる。そこで、その協力者として仲間になることが彼女の目的。

 そのためにも、自分は篠ノ之束に認められなければならない。自分が居ることで、事を有利に進められる存在だと認められるしかない。

 だから、彼女はISの改良をドゥーガルド・フィリップスに頼んだし、チェルシーにも情報の入手を頼んだ。あとは自分のISの操縦が上手くなればいいだけ。

 一応、これでも彼女はイギリスの代表候補生。並み以上にはうまく操縦できる自信はある。彼女は日本IS学園に入学した頃よりも強くなってきている。沢山の仲間と先生方々の手によって自分は強くなっているはずである。

 それは七月七日の銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)戦で証明している。

 あれは戦場を駆け巡る為に開発されたISだ。それに、仲間の力はあれど同等に戦うことが出来た。発射されたビームに対し、ビームをぶつけて相殺するという荒業まで出来るようになった自分は、確かに強くなっているはず。

 これは自意識過剰な表現ではなく事実であり、それは彼女自身でも感じ取っている。

 彼女はシャワールームから出るとバスローブを身に着けて、冷蔵庫から冷たい水を手に取ると、ベッドに腰掛けた。

 

 水を一口含む彼女。

 

 すると、セシリアの下に連絡が入った。慌てて電話を取るセシリア。発信元はセシリアの幼馴染であり、専属メイド。そして、日本で起きた事件の調査を頼んだチェルシー・ブランケットであった。

 

「チェルシー? 何か分かりましたか?」

『はい。分かりましたが……その……』

「どうかしました?」

『これは本格的に危険なエリアに侵入するような事です。それでも聞きますか? いえ、本当に聞いてしまうの? セシリア……』

 

 電話の向こうから聞こえてきたのはメイドとしてのチェルシーではなく、幼馴染としてのチェルシーの声。だけど、セシリアはそれに動じることなく冷徹に。

 

「チェルシー、それがメイドとしての態度なの?」

 

 セシリアはそのチェルシーの心配を冷たくあしらった。あくまで彼女とチェルシーの関係はメイドとその主、というものにとどめておきたいのだろう。

 

『すみませんでした……。では、よろしいのですね?』

「ええ、教えて」

『はい。東京では――』

 

 チェルシーは東京で起こった地下歩道での事件の真相をつきとめていた。ネットのニュースやテレビなどではあくまで爆発事故ということになっていたが、実際はISによる戦闘がおこっていた。それを彼女は知ることになった。

 だが、それだけでは危険なエリアになりうるには少々物足りない。それをセシリアはチェルシーに聞いた。

 

「それだけでは危険なエリアというには少々物足りませんか? あるんでしょう? これ以上の情報が」

『はい……。そのISの戦闘には暗部組織が関与していました。爆発事故があったという地下歩道にはISの違法な武器などを生産する研究所があったんです。その違法な研究所が何所の所属か……それが重要なんです』

 

 チェルシーは一呼吸おいて、そして唾を飲み込んでその事を伝える。

 

『あの「亡国機業(ファントム・タスク)」です。あの組織は普通じゃない。規模も、やっていることも、すべてが危険なんです』

 

 一般の人は絶対に知らない。いや、知らない方が幸せなのだろう。普通の人がこういった暗部組織の存在などを知って得することなど何もないのだ。

 チェルシーはセシリアの専属メイドとなっているが、その正体は『LOE社』所属の暗部組織の情報を管理する情報屋のような存在だ。

 だからこそだろうか。セシリアも暗部組織については少しだけだが知っている。世界の闇の部分を少し知ってしまっている彼女は、世の中が普通の人とは少し違って見えるのかもしれない。

 

「『亡国機業(ファントム・タスク)』……」

 

 セシリアがそう呟いた後、チェルシーは続けて言葉を出す。

 

『それからもう一つ。その「亡国機業(ファントム・タスク)」の研究所を攻撃した組織……、それがあの篠ノ之束の組織だということが分かりました』

 

 セシリアは確信した。織斑一夏と篠ノ之箒は暗部組織に携わっていることを。

 そして彼女は行動を起こす。

 改良されたブルー・ティアーズを手に日本へ行き、織斑一夏と篠ノ之箒と接触することを。

 この考えが正しければ――

 

「チェルシー、わたくしは一週間以内に日本へ飛びます。いつでも行動できるように用意はしておいてください。いいですね、チェルシー?」

『了解』

 

 動き出すセシリア・オルコットは、これからどのような動きを取るのか。

 それは、この一週間以内に分かることになる。


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