今回は一夏と春樹の過去のお話。
原作で語られていた一夏誘拐と、織斑千冬がドイツ軍IS部隊の教官になった時のお話です。
それを独自の設定と解釈で書かせてもらいました。
なので、一夏の誘拐について、誰が何でこんなことをしたのか。その理由はまるっきり違う物となっています。
【あらすじ】
これは今から二年前のお話。
第二回IS世界大会モンド・グロッソが開催されていた。その大会にはもちろんの事、前回の大会の覇者、日本代表“織斑千冬”の姿もある。
開催の地はここ日本。
その事もあってか、当時中学校二年生の織斑一夏と葵春樹は千冬の応援に来ていた。
自分たちの姉の活躍に目を輝かせている二人であったが――そこでまた、“何か”が動き始めていた。
序 章『過去へ -Past-』
これは二年前のお話。一夏と春樹がまだ一三歳の頃の事だ。
第二回IS世界大会モンド・グロッソ。
一夏や春樹にとっての我らが姉、織斑千冬が日本代表として、そして優勝候補としてその大会に参加していた。
彼ら二人は決勝戦での千冬の活躍を絶対見ようとして、このモンド・グロッソの大会会場まで来ていたが、まさか、あんな事になるとは誰も思いもしなかった。
だが、またこれが、全ての物語の始まりなのかもしれない。これがなかったら、春樹や一夏はこれから起こる事に巻き込まれること無く、普通の高校に通っていたのかもしれないし、箒に再会する事は無かったのかもしれない。
だけど……この出来事があったから、私たちは平和に生きているのかもしれないし、この世界で、友達と、最高の仲間と、共に楽しい日々を過ごす事も無かったのかもしれない。
すべてはここから始まった。
春樹はこう思っている。
もし、この出来事が無ければ……俺は平和に過ごせたのかもしれない。何事も無く、普通の高校に一夏と一緒に登校して、楽しくバカやって過ごして、彼女なんかも出来たりして、毎日が平凡に流れていく日々を過ごしたのかもしれない。
だけど、この生活も悪くないと感じている。辛い事は正直沢山ある。だけど、目的も無くただ平凡に過ごすよりも、何か目的を持って辛い事もありながら、だけど嬉しい事もあって……。毎日が刺激に満ち溢れている生活の方が、俺は楽しくて良いと思う。今体験している事が全てで“もし”なんてことは妄想に過ぎない。
もしかしたら、普通の高校に通って楽しくしているのが今の自分にとって今が最高と思うかもしれないが、それはやっぱり妄想に過ぎないからだ。
また、この今の状況は必然なのかもしれない。
始めからこのことは仕組まれていて、俺はこのことをやるべくして生まれてきたのかもしれない。
これは言い過ぎかもしれないが、ISという存在は、あたかも自分の為に生まれてきたのではないか、そう思えてくる。
このような地獄の日々に耐え抜くためにISは存在しているのかもしれない。
だけど、今のこの自分のこの体験している事に俺は満足している。
IS学園での生活は、周りは女子しかいないけど、俺もこの状況に慣れてきたし、一夏もいる。シャルルも――男子として接している。
この今置かれている立場にはなんら文句はこれっぽっちも無い。むしろ楽しい。
織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルル・デュノアにラウラ・ボーデヴィッヒ……。
こいつらは俺の大切な仲間だ。友達だ。もし、こいつらに何かしようとする奴らがいるならば、俺はそいつらを許さない。俺は仲間を守っていきたい。
この力で……必ず……。