ZOIDS学園   作:影狐

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その6

「いやはや、見事な勝負であった。

 まさか、バスタークローをアンカーにするとは……いや、言い訳はよそう。

 私の完敗だ。だが本当にいい勝負だった」

 と、ヒルダに言われ、あはは、とはにかんで答えるカリン。

「そ、そんなことないですよ……私は、ただココロの動きに合わせただけで……」

「それがすごいんですよ~、あそこのゾイドの場合」

 と、カリンの言葉に横からリナが口を挟む。

「まず、あんなゾイドに動き合わせられるなんて普通じゃできませんよ~?」

「あ、何でですか…?」

 と、その言葉を待ってたと言わんばかりに、リナは「オティーリエさーん、ちょっとあのココロちゃんの型番見てくださーい」と叫ぶ。

 言われたとおり、「りょーかーい」と言ってからバーサークフューラー、ココロの元へ近づき、噛みつき攻撃を避けて型番を見る。

「あ、危ない!」

「大丈夫ですよー、あの程度で死んだらそれはそこまでだった、っていう事で」

「ひ、酷すぎますよぉ!」

 まぁまぁ、とカリンをなだめたところで、その型版を見たと思われるオティーリエが「げぇ!?」と大きな声を上げる。

 そして、戻ってきながら「なんちゅーもんに乗っているんでありますかカリン殿ぉぉぉぉぉぉっっ!!!」と叫び、二人の前で止まる。

「ど、どうしたんですか?」

 心配するカリンの横で、

「ね? アレはヤバいでしょう?」

 とリナは心配など微塵も思っていないかのようにそう質問する。

「ぜーはー……や、ヤバすぎて久々に叫んだでありますぅ……」

「オティーリエ殿、どうした? 貴殿がそこまでになるとは」

 と、今まで黙って見ていたヒルダの言葉に、ぐ、と顔をあげてオティーリエは答える。

「『アルティメットX』……ご存じで?」

「む? いや、今初めて聞いた」

「お、オーガノイドシステム限定型の一種で……完全野生体ゾイドコア自体に、学習能力を備えるもので……」

 相当息絶え絶えに言うオティーリエに、リナはアイスティー、微糖ストレートを渡す。

「どうも……んぐっ、ぷはぁ……

 その、でありますよ、アルティメットXは、使いこなせれば強力でありますが、

 まずゾイドの動きを完全に御せるだけのすさまじい実力、最適化された動きについていけるだけの技量がない限り、まず機体に振り回されるのが目に見えるでありますよー……

 そもそも、気性の荒い完全野生体に勝手に判断させるようなシステム組み込むわけなんでありますから、当然であります」

 ほぉ、とヒルダは感嘆のつぶやきを漏らし、再びカリンを見て笑う。

「なるほど、つまりカリン殿は将来有望なゾイド乗りの才を持つと言う訳か!

 はっはっは! これは私も相手が悪い! 負けて当然か!」

 全く臆面なく、そうほめたたえるヒルダに、隣でカリンは顔を真っ赤にして照れる。

「まぁ、こんなゾイドを動かせて、コマ犬(コマンドウルフ)一匹動かせないのはどうかと思いますけどねー?」

「うっ!」

「ところで、他のゾイド動かせるでありますかぁ? カリン殿ぉ?」

「うぐぅ…!」

 そこですかさず、リナとオティーリエが追撃とばかりに痛い部分を突いていく。

「二人ともよせ。それもまた才能だ、それ以下では決してない」

 と、ヒルダが止めて初めて、二人は舌を出しながら「「はーい」」と言って止める。

「さてー、とじゃあ、」

 そして、リナが口を開く。

「次の授業へ行きましょうか」

        ***

「撮ったか!? 音響のチェックは!?」

「いやぁ、すげえ映像だったっすよ!!! 撮れたのが奇跡かも!」

「音響、何とかクリアにしたんだな!」

 そんな頃、テレビスタッフ3人衆は、ありあわせのチェック用機材の前で慌てていた。

「予想以上だぜコレ! 低予算の企画だったけど、こりゃあ!」

 そこに映し出される画像を見て、リーダー格の背の低い男はつぶやく。

「この番組、化けるぞ!!」

        ***

「総員、傾注!!

 これより、ランダム戦を行う!!」

 フィリアの号令に全員が一挙して整列し、その言葉を聞く。

「ランダム戦…?」

「アシュワース! ミツキに簡単に説明を行え!」

 はーい、とリナが答え、カリンに説明を始める。

「まぁ、簡単に言うと、本当にランダムでチーム分けして、実戦形式で戦うと言う事ですよ?」

「あ…! なんだ、結構普通だった……」

 と、カリンの安堵の瞬間、目を光らせ「ふふふー♪」と妙に含みのある笑みを浮かべるリナ。

「……『本当に』ランダムで選ぶんですよ…?」

「???」

 と、そこまで言った所で、フィリアが再び声を発する。

「よぉし、理解したようだな。

 では、チーム分けだ!! 委員長!!」

 了解、と言ってメルヴィンが前に出る。

「全員、お手を拝借!!」

 と、その言葉と共にクラス全員が手を上げ、あわててカリンが続いて手を上げる。

「せーっのっ!!」

 そして、次の瞬間、

 

「ぐーうっ、ぱっ!!!!」

 

 その言葉と共に、グーとパーだけの手があたりを埋め尽くした。

 ――――ちなみに、パーなのはカリンと、クレーエ、そして以下生徒2名。

 

「チーム分けは終わったようだな」

「え!?」

 そして理解する。

 その重大な意味を。

「……ど、同数でやるんじゃないんですか…??」

「だ~から今そこの性悪副いいんちょが『本当にランダム』っつったろ? ルーキー」

 続けて「クレーエだ、まぁよろしく」と握手を求めて言うクレーエに、握手をしつつもきょとんとした顔のままのカリン。

「……え? え?、私達って……」

「そっちは4人チーム。

 こっちは36人チームです♪」

「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?!!」

 リナの説明に絶叫するカリン。

 この後、滅茶苦茶悲惨な戦いが発生した。

 


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