ZOIDS学園   作:影狐

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プロローグ:始業式
その1


 ―――季節は、春。

 大体の学校は、おそらく始業式だろう日のこと。

 

「ち、遅刻しそうな時間じゃないですかぁ――――――ッッ!?!」

 

 100人に一人はいるであろう言葉と共に、一人の少女は自室で目を覚ました。

 時刻は、午前8時半。ちなみに、始業式は9時からである。

「きゃ―――ッ! パンツ、パンツ何処ですか!? ブラジャーに制服、あとメガネ!!」

 寝るときは全裸派、という結構いるタイプの人間である彼女は、学生特有の慌てぶりをいかんなく発揮し着替えていく。

 幸い、カバンに必要なものはすべて入れて置いたおかげで、彼女はすぐに用意を完了させた。

「良し!」

 彼女は、部屋に掛けてある姿見で自分の格好を確認してつぶやく。

 やや黒めのシルバーのブレザー、その上から覗く中々可愛いらしい顔だ。美少女と言っても過言ではない。

 インテリ風なおしゃれかつちゃんと度の入っているメガネが、よく似合う。

 おっと、頭のカチューシャ状のアクセサリーも忘れない。

「うーん、寝癖は……目立ちませんかねー」

 と、言いつつきっちりくしで長くつややかな髪を軽くとかし、一つ頷いて部屋を出る。

         ***

「お父さん、おはようございますー!」

「あぁ、おはようリナ」

 一階のダイニングで、キザったらしい声音としぐさで、湯気と共に芳醇な香りの紅茶を片手に新聞を読む男性がいた。

 かなり若く見える彼が、リナと呼ばれたこの少女の父親らしい。

「まぁ、遅れそうだとは思っていたから、この通り朝食は特性ベーグルとミニサラダにしておいた。

 もちろん、きちんと食べていくように」

「はぁい、いい歳こいてイケメン気取りのお父さん♪」

 ふっ、と毒のこもったいつもの娘の言葉をキザに受け流しつつ、彼は静かに朝刊を読みつつ、いい香りの紅茶を一口口に含む。

 その向かい側に座り、いただきますと丁寧に手を合わせて言ってから、これまた丁寧に朝食を食べ始める少女、リナ。

「はむはむ……」

「食べる時は、常に落ち着いて食べるべし。

 相変わらず、我が家の家訓に忠実で何よりだ」

「はいはい、40近いのに中二はやめる事、ですよーお父さん?」

 と、言いつつリナは丁寧かつ素早く朝食を食べ終え、ごちそうさま、と静かに言ってから立ち上がる。

「いってらっしゃい。始業式に遅れないように」

「はぁい♪」

 そうして、彼女は台所を出る。

 向かう先は―――――

          ***

 この街にある共用駐車スペース。

 いや、『駐車』と言うのは正確ではない。止められているものがなぜなら――――

「うわっ!?」

 リナの目の前を、長い金属の尾がかすめる。

 ―――リナの目の前に、機械の恐竜がいた。

 『いつもの光景』だ、ここでは。

「すまん嬢ちゃん! こいつ、相変わらず尻尾癖が悪いもんでな!」

「いいえ~!」

 その恐竜――――RZ‐014『ゴドス』、民間土木作業仕様に、軽く手を振りつつリナは急ぐ。

「民間使用とはいえ、ガリウスじゃなくてゴドスですかー……何か大きな工事でもあるんでしょうね~、ワークトータスよりも手先が器用で同じ位のパワーですし……」

 と、小さくつぶやきながら、目的地まで走る。

「っと!」

 そこの近くには、「大型ゾイド用」と書かれた立札があった。

 それを示すようにか、車を止める駐車場の駐車スペースに必ずある白線が、少なくとも幅が7メートルは開いている。

 当然、その中にいるのは、巨大なモノ。

 寝息をたてていたり、あくびをしていたりする、巨大な動物型の機械。

 いや―――これらは生きている。

「こらー、起きなさい、クロムウェル!!」

 と、そこでリナは一体の機会のような巨大な動物に声をかける。

 ―――それは、巨大な白い獅子。

 それが、寝そべった姿勢から起き上がり、鋭い金色の牙の覗く口を大きく開けてあくびをし、そのまま体をぶるぶるとふるって周りに朝露をまき散らす。

「こらクロムウェル!? 仮にも共和国とガイロス帝国の機動戦主力ゾイドを張ったんだからもっとつつしみを持った行動をしなさい!」

 というリナの言葉にも首を傾げ、とりあえず、頭を下げる、ソレ。

 すると、ライオンに似た頭部が開き、中にあるコックピットが露出する。

「……それでも自分のやるべきことはわかっている辺り、流石主力ですねー」

 まぁ、もっとも、とつぶやきながら、リナはそのコックピットに乗り込む。

「共和国=ゴジュラス、の方が一般常識ですけどね。当然です!」

 慣れた様子で、座席に乗り込み、シートベルトを締めていく。

「そもそも、あなた元はガイロス帝国に逃げ込んだゼネバス系の科学者がネオゼネバス帝国作るために作られたものなのに、どういう訳か共和国に鹵獲されて、機動戦の主力ゾイドになったいきさつがありますしねー」

 ピアノでも弾くかのようにコンソールを操作し、この『メカ生体』を操作するためのOSを立ち上げる。

「コンバットシステムよし……フリーズしないでくださいよー?」

 そして、彼女が操縦桿を握ると同時に、この巨大なライオンに似た金属の塊が四肢を伸ばし立ち上がる。

「さぁ、行きましょう、RZ‐041『ライガーゼロ』―――私の、クロムウェル!!」

 ぐぉぉぉぉ、と天高く叫ぶソレ―――ライガーゼロ、愛称『クロムウェル』は、走り出す。

           ***

 

 

 

 惑星Zi、そこには、

 優れた戦闘能力を持つメカ生体、『ゾイド』がいた。

 

 

 

 


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