RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 みなさん、こん○○は。

 ここでお知らせを一つ。
 今回は書き方を少し変えています。
 具体的には、簡単な解説を本編の途中に入れていることです。
 もちろん、後書きにも解説は書きます。
 本編中のはあくまでもその場でそう思っていただけたらいい、という程度です。

 それではどうぞ。


8両目

 京浜東北線のホームに向かって、俺達は走り出した。

 そこまではよかった。だが、問題が発生してしまった。

 それは、俺達がいろんな意味でデコボコなグループだということ。

 今回に限って言えば、運動神経抜群の岩泉、中くらいの俺と高山、そしてダメダメな小海さん。

 俺、高山、岩泉は公安隊の制服なので、顔パスならぬ制服パス。小海さんは学校の制服なので、手帳を見せる関係上少し遅れてしまう。

 しかしそれでも岩泉、俺と高山、小海さん、と差は開いていき、岩泉は見えなくなるくらい前に、小海さんは歩いているのか?というぐらい、後ろにいた。

 

 八重洲北口改札から入って、しばらくその状態のままで通路を走り、俺と高山は京浜東北線の大宮方面、山手線の内回りが発着する東京駅3・4番線ホームに着いた。

 4番線には山手線の電車が加速をしていた。

 3番線には京浜東北線の大宮行きが、今ドアを開けたところでお客様が大勢降りてきた。

 そこで、高山の持っている、小海さんの携帯に着信があった。

 案の定喧嘩気味になっていて、その間にも発車時刻は刻々と迫ってきて、発車ベルが鳴り始める。

 そのベルもほんの数秒で終わり、無念にもドアは閉まってしまった。

 桜井とひったくり犯を乗せた青い側面の車両は、どんどん加速していく。

 

 

「臼井、岩泉がここにきてないらしいぞ」

 

「まじかそれ……」

 

 

 電話を切った高山から衝撃の事実が伝えられた。

 あんなに早く走っていた岩泉が?

 と、考えていると、隣のホームから俺達を呼ぶ声がしたような気がした。

 振り向いてみると、

 

 

「高山―!臼井―!桜井がいないぞー!」

 

 

「岩泉!そっちは大船方面だ!」

 

 

 高山は岩泉にこっちに来るよう指示した。

 そういえば、岩泉は鉄道の知識は全くなかったな。それじゃあ、「京浜東北線の大宮方面」って聞いただけじゃ分からんよな。

 

 そう、岩泉は鉄道の知識があまりない。研修中も、

 

 

岩泉「EF66ってだけで、よく電気機関車って分かるな~……」

 

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※EF66:国鉄が貨物列車の速度向上を念頭において開発した電気機関車。

    寝台特急の牽引もしていた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 などと、悩んでいた。

 

 高山が指示を出すと、岩泉は手でOKのサインを出し、階段を駆け下りていった。

 と、同時に小海さんが到着した。

 

 

「高山、追いかけるなら早くしたほうがいい」

 

「ああ、そうだな……」

 

「だ、犯人はどこだ?」

 

 

 一瞬で向こうのホームからこっちへ来た岩泉は、息一つ乱さずに聞いた。

 

 

「あ、あおいは?」

 

 

 落ち着いた小海さんもそう言う。

 

 

「桜井と犯人は、さっきの電車に乗って行っちゃった」

 

 

 高山がそう言うと、二人は驚いて、

 

 

「あおい、大丈夫かなぁ……」

 

「桜井の奴!一人で車内乱闘か!」

 

 

 小海さんは桜井の心配を、岩泉は自分もできたであろう車内での乱闘を心配していた。

 いや、車内はまずいでしょ、車内は。

 そんな岩泉にツッコミを入れながらも、高山は飯田さんに連絡をする。

 

 

「飯田さん、すいません!犯人を取り逃がしました! ……… はい、誰も怪我はしてません」

 

 

 どうせまたゆるい感じで飯田さんは話しているんだろう。あの人はいつもそうだからな。

 

 

「それが、桜井が一人で犯人を追って、行っちゃたんです。 ……… えっ!俺ですか?」

 

 

 高山は何を問われたのか。少し考えると、

 

 

「俺、桜井を助けに行きたいと思っています!」

 

 

 そう言った。

 しばらく無言になったあと、高山は「えっ!」とまた驚き、

 

 

「ありがとうございます飯田さん。俺、犯人を追います!」

 

 

 と最後に言って、電話を切った。

 電話を切って、俺達に向かって高山は言った。

 

 

「よし、桜井を助けに行こう!」

 

 

 その言葉を聞いて、小海さんが言った。

 

 

「じゃあ、次の電車で行きますか?」

 

「いや、それじゃあ遅いよ」

 

 

 そう言って、俺は天井から下がっている電光掲示板を指差していった。

 

 

「次の電車はあと5分後、前の電車が出てから大体3分だから、大宮に着くときには8分も差が開く。それだと犯人は逃げちゃうし、桜井の性格上乱闘するだろう」

 

「そうだ。それに、犯人は“さいたまハイパーアリーナ”に向かっているらしいから、國鉄管内を出て、捕まえられなくなっちゃう」

 

 

 さてどうするか。………あ、そうだ。

 

 

「じゃあ、新幹線は?」

 

 

 俺は高山にそう提案する。

 

 

「そ、そうだ!新幹線だ!それなら早く着けるかも……」

 

 

 しかし、生憎時刻表は持っていない。持っていたならすぐに調べられるのに……。

 仕方ないので、自分の携帯を取り出し、時刻表アプリを起動させようとする。

 そこで、小海さんが、

 

 

「……大宮駅でよかったら、あおいに追いつけますよ」

 

 

 と言った。

 俺と高山は顔を見合わせた。

 小海さんは続ける。

 

 

「東京駅13時20分発の“なすの599号”に乗れば、大宮に13時45分に着いて、あおいの乗った電車より5分早く着くことができます」

 

 

 小海さんは何の言い淀みもなくスラスラと言った。

 高山が小海さんに聞いた。

 

 

「もしかして、時刻表全部覚えてるの?」

 

「は、はい……。も、もしかして間違ってました!?」

 

 

 そういえば、小海さんは座学に関しては、女子の中で一番だったな。だから記憶力がいいのかも知れない。

 

 

「高山、今は急ごう。新幹線も間に合わなくなる」

 

 

 小海さんが言った時間まではあと10分しかない。

 それに間に合うためには、走るしかなかった。

 

 

「よしみんな、新幹線ホームまで走るぞ!あ、岩泉!お前は前を走るな!」

 

「え、なんでだよ」

 

「さっきホーム間違えただろうが!」

 

「そうだったな、悪ぃ」

 

 

 俺と高山、岩泉は同じくらいのスピードで走っていた。だが、小海さんはやはり足が遅かった。

 それに、駅構内はお土産を買う人、乗り換える人でごった返していた。小海さんはその人たちをよけながら走っているため、ますます遅い。

 すると、それを見た岩泉は、小海さんのいる場所までダッシュし、まるでラグビーボールを抱え込むかのように小海さんを脇に抱えた。

 そしてそのまま俺達のほうに戻ってきた。

 

 

「さ、急ごうぜ。時間ないんだろ?」

 

「そうだな。急ぐぞ」

 

 

 先頭にいる高山が、大きな声で「すいませーーん!公安隊が通りまーーす!」と言いながら道を開け、そのあとに小海さんを抱えた岩泉、最後に俺、という順番で東京駅のコンコースを駆けていく。

 コンコースにいる人は、「何事だ?」と思いながらも、道を開けてくれる。

 その姿は奇妙なものだっただろう。公安隊三人と、それに連れられた女子高校生、しかもラグビーのように抱え込まれているのだ。なんとも思わないのはおかしい。

 

 

「高山君!23番線ね!」

 

「了解!」

 

 

 俺達は階段を上がり、東北・秋田・山形・長野・上越新幹線の改札を抜ける。

 ここでも制服パスで、小海さんは「この人も公安隊です」といって、通してもらった。

 改札を抜け、ホームに上がる階段の前まで来ると、

 

 

「ここは歩きます」

 

 

 と、岩泉に気を使って言ったが、

 

 

「遠慮すんなって」

 

 

 と言って、小海さんを抱えたまま、階段を一気に上がった。

 やっぱりすごいな。さすが運動の成績がトップなだけある。

 俺と高山もそれに続いて階段を上がった。

 23番線には既に新幹線が止まっていて、発車ベルが鳴り始めていた。

 俺達は急いでそれに乗る。

 急いでいたためよく見なかったが、側面の色使いからして、この車両は200系なのは分かった。まあ、どっちかは分からないが。

 

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※200系:国鉄が東北新幹線用に開発した車両。これには二種類あり、先頭が0系のような車両と100系のような車両がある。

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 俺達が乗り込むと、まるでそれを待っていてくれたかのようにドアは閉まり、新幹線はゆっくりと東京駅を加速しながら離れ、上野、大宮へと向かう。

 




※解説

國鉄200系:国鉄、及びJR東日本が製造、保有した新幹線車両。
 主に東北新幹線で走っていて、今では保存車両を除く全車両が廃車となっている。
 話中でも書いたように、200系には二種類の顔があり、0系タイプのやつ、100系タイプのやつの二種類がある。

EF66:国鉄が東海道・山陽本線系統の貨物の速達化を図って開発した電気機関車。
 貨車のほうも高速で走れるようにしたため、それに合わせる形で開発された。
 貨車だけでなく、2009年3月14日のダイヤ改正までは寝台特急の“富士・はやぶさ”の客車を牽いていた。


 さて、今回の方式はどうだったでしょうか?
 文句が来ないうちはこれでやっていきたいと思います。

次回の投稿日は相変わらず未定です。
 それではまた次回。

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