RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 さて、誰得状t(ry
 はい、5話目です。
 
 次回は未定と言いつつも、結構な頻度で更新しています(だからなんだって話ですが)。
 今回は知らない単語はそんなに出てこないと思います。

 ではどうぞ。
 
 


5両目

 全員が揃い、飯田さんは軽く自己紹介をしてここ、第四警戒班の説明をした。

 

 

「今日から~、君たちの面倒を見ることになりま~す。東京中央鉄道公安室、第四警戒班班長の飯田奈々で~す。ちなみにここは、みんなから警四って呼ばれてます。

 私も、ここに来てから日が浅いから、みんなに迷惑をかけちゃうと思うけど、よろしくね~」

 

 

 飯田さんはいつものようにゆっくりと喋った。それを聞いている桜井がイライラしているのも分かった。ついにイライラが我慢の限界を向かえ、桜井は飯田さんに大声で言う。

 

 

「飯田班長!!」

 

 

 それに対し、飯田さんはまったく動じずにいつものように返す。

 

 

「あ、私のことは飯田さんでいいからね~」

 

 

 桜井はさらに強い調子で続ける。

 

 

「第四警戒班ってこれだけなんですか!?」

 

 

 やはり、桜井に詰め寄られた飯田さんはまったく動じず、いつもの調子で返す。

 

 

「そうですよ~。ここ東京中央鉄道公安室には、第一捜査班、第二捜査班、第三警備班とあって、それぞれ十数人の三交代制で担当してるんだけど、なんていうのかな~、第四警戒班っていうのは、OJTに来た学生さんがいろんなお仕事を、臨機応変に対応するために作られた場所なんですよね~」

 

 

 飯田さんのいつもの調子の説明にイライラしている桜井が、またも続ける。

 

 

「要は、『研修生は雑用でもしてろ』ってことですよね!?私はここへ仕事に来ているんです!そんなのではなくて、一班から三班の人たちと行動をともにして、極悪非道な男どもを相手したいんです!」

 

 

 さすがに飯田さんは困った顔を、……いや、あれはイラついてる顔だ。前に何度か見たことがある。

 なぜ男限定?というツッコミはおいといて、さすがにここまでくると桜井の思考は危ないんじゃないか?と思う。

 正義感が強いのはいいが、第四警戒班での仕事だって、立派な仕事だ。それを“そんなの”で済ますのはいかがなものか。

 飯田さんを見ると、やはり少々イラついてた。だが、そんな感情を表に出すことなく桜井に言う。

 

 

「まあまあ、ここでの研修は長いから、そのうちみんなと一緒に仕事ができる日はくるよ~。だから、最初は気楽に……」

 

 

 ねっ。飯田さんがそう言う前に、桜井のイライラは限界点を突破した。

 限界点を突破した桜井は、早口で、大声で飯田さんに言い寄る。

 

 

「そんな!あなたみたいな人が居るから、女というだけで馬鹿にされるんです!しかも警四なんて言われて、完全に馬鹿にされてるじゃないですか!」

 

 

 飯田さんを見ると、……ああ、だめだありゃあ。完全にキレてる。顔面には出さないが、黒いオーラが見えるようで怖い。

 あんな表情は滅多に出さないからレアだな~。とかもう半ばあきらて眺めていると、高山が、

 

 

「おい、言い過ぎだろう桜井!」

 

 

と言い、桜井の暴走を止めにかかる。だが、その程度で止まる桜井ではない。

 

 

「なんでよ!私は本当のことを……」

 

 

と、二人して口論を始める。

 小海さんはオロオロ、岩泉は腕を組んで爆睡、俺は俺で完全に傍観者だ。飯田さんのレアな表情を眺めている。

 初日からこんなんで大丈夫か?と思うほどグダグダだ。

 

 

「はい、二人とも。喧嘩はそこまでね~。高山君、私のためにありがと~。」

 

 

と、飯田さんが止めにかかる。

 

 

「まあ、桜井さんの言うことも間違ってはいないからね~」

 

「じゃ、じゃあ……!」

 

 

 桜井はここぞとばかりに自分の意見を主張しようとする。

 でも、まじめな顔になった飯田さんに遮られた。

 

 

「でも桜井さん、お仕事はどんなことでも大事なお仕事だから、“そんなこと”や“重要”とかの区別はないからね~?それだけは忘れないでね~」

 

「そ、それは……」

 

 

 飯田さんの最後の言葉が効いたようで、桜井は完全に沈黙した。

 小海さんは喧嘩が収まったことでほっとしている。俺はほっとしたような、または残念な感じだ。岩泉は眠りから覚め、

 

 

「おう、やっと終わったか。……高山、桜井。こんなとこでイチャつくなよ…」

 

 

と言った。すると、高山と桜井は口を揃えて、

 

 

「「違うわっ!」」

 

「仲がいいのか悪いのか…」

 

 

 そんなことを思っていると、飯田さんが話し始めた。

 

 

「はい、この話はこれでお終いっ。みんなも、仕事に大きさは無いから、それぞれの仕事に責任を持ってするように。 じゃあ、これはここの全員に共通することなんだけど、ここ東京中央鉄道公安室に配属された人は、最初に駅長に挨拶しに行くのが慣例なの~。だから、これから駅長に挨拶しに行こうと思いま~す」

 

 

 

 

 現在、8時45分。

 飯田さんによるとこの時間の駅長は、午前9時丁度発の特急を見送るらしく、その特急の出発するホームに居るらしい。これは東京駅の駅長の伝統で、東京駅ができたときから続いているらしい。

 現行ダイヤで9時発の特急は、京葉・外房・内房線の特急“わかなみ3号(安房鴨川・館山行)”と、東海道線の特急“つばめ5号(名古屋行)”と、東海道・山陽・九州新幹線の“スーパーひかり215号(鹿児島中央行)”だ。

 また、時間がかぶってしまったら、駅長は速い列車を見送るため、俺たちは“スーパーひかり215号”の出発する15番線へと向かう。

 

 15番線に俺たちが着いた時には、すでに“スーパーひかり215号”に使用される300系がその長い車輌をホームに着けていた。

 中にはお客様を乗せていて、時計を見るとあと数分で発車だった。

 発車時間になり発車ベルが鳴る。ドアが閉まり300系は徐々に速度を上げてホームを離れていく。

 300系のカモノハシのような先端が見えなくなるまで、駅長はしっかりと見ていた。

 見えなくなった後も、指差しで線路上の異常が無いか確認し、異常がないことを確認すると、俺たちのほうに体を向けて丁寧に頭を下げて挨拶をした。

 

 

「東京駅駅長の片町です。鉄道OJTの皆さんですよね。順に、桜井君、小海君、岩泉君、高山君、臼井君、で合ってるかな?」

 

 

 おお、すげー。もしかして、ここで働いてる駅員の名前全員覚えてるのかな?

 すると高山が俺と同じことを思ったのか、似たような質問をしていた。

 それに対し駅長は笑いながら、

 

 

「たまたまですよ。今年は小海お嬢さんがいらしたものですから」

 

 

と、何気に衝撃発言をした。

 何が衝撃って、小海“お嬢様”ですよ。

 




※元ネタ解説

 300系:初代“のぞみ”で、東海道を270km/hで走り始めた車両。
対航空機輸送を念頭に置いた開発で、“のぞみ”登場時のキャッチフレーズは「午前9時の会議に間に合う」だった。それほどまでに速度を重視した車両であった。
 現在は定期運用から外れ、全車廃車となっている(保存車両を除く)。

 つばめ・わかなみ・スーパーつばめ:“つばめ”、“わかなみ”に関しては私の想像、“スーパーつばめ”は原作に登場。たぶん、“のぞみ”+“みずほ”かと。
 “のぞみ”は東海道・山陽新幹線の最速達種別、“みずほ”は山陽・九州新幹線の最速達種別。
“つばめ”は東海道本線の昔の特急で今はない。
 客車時代には色々な方法で時間短縮が図られた。興味のある人は見てみるといい。
 “わかなみ”は完全に想像。
 現在、京葉・外房線には“わかしお”が、京葉・内房線には“さざなみ”が走っている。それをただ単に足したものだ。


 とまあ、これぐらいですかね。
 ここから、列車のダイヤ、駅の設定など、様々な点で原作とは違っていきます。
 あらかじめご了承ください。
 分からない点、説明不足等々がありましたら、お知らせください。

 相変わらず次回は未定です。それでは。

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