RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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第X章
43両目


 高度研修が終わった数日後、皆の予定を聞いて都合のいい日に遊ぶことになった。

 これは元々鉄道好きの高山と札沼さんを誘ったものだったのだが、興味を持ったほかの3人も来ることになっていた。

 

「で、どこで遊ぶの?」

「んー、向こうで遊ぼうかなって思ってるよ。元々見せたいものもそっちにあるしね」

「分かった。けど、入っちゃダメな部屋もあるから。そこは……分かってるよね?」

「もちのろんだよ。俺だってそういう部屋あるんだから」

 

 特に内職で使う部屋には見られちゃまずいものが大量にあるのだ。それは俺も千歳も同じで、互いに入れない部屋が幾つもある。

 

「そこらへんちゃんと分かってるなら私から言う事は無いよ」

「あれから新しく使い始めた部屋とかないでしょ?」

「ないよ」

「ならセキュリティもかけてあるはずだし、大丈夫でしょ」

 

 あの場所には運がなければ破ることのできない鍵をかけてある。

 解除できるのは答えを知ってる俺らか相当運のいい奴だけだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 高山達を家に招く約束の日。

 俺は千歳と一緒に東京駅へ向かっていた。

 いつもと違うのは、そこへ車で向かっているということ。

 助手席に千歳を乗せ、京葉道の市川ICから首都高を経由して東京駅のほうへ走っている。

 何故車で来たのかといえば、これから案内する俺らの遊び場は駅から離れてるということや、東京までは皆定期でこられるが、そこまでの交通費を負担させるのはアレだと思ったからだ。市川の家なら東京から近いから来てもらったんだけど。

 そんなわけで、俺らは今東京駅の八重洲地下東駐車場に向かっている。

 

「集合時間は何時にしたの?」

「9時ごろに八重洲中央口に来るように言ったよ」

 

 腕時計を見ると、現在9時の30分前。

 

「うん、予定通り」

「今日は順調だったね」

「そうだね。混んでなくてよかったよ。こっからも混んでないといいんだけどね」

 

 そう話しながら、高速を降りるために左車線に寄り、宝町ランプから降りて一般道を東京駅方面に向けて走る。

 その後、八重洲中央口前交差点の手前にある地下駐車場入り口に、右ウインカーを出しながら入る。

 

「さてさて、いいところが空いてるかなーっと」

 

 なんて言いながら駐車場を探していると、出口に程近い場所が空いているのを見つけた。

 

「ここでいいか」

 

 スペースに車をバックで入れ、エンジンを切る。

 時間は8時40分。ちょうどいい時間だ。

 

「じゃあ行こうか」

 

 頷いた千歳とともに車を降り、扉を閉めて鍵をかけてから八重洲口に向かう。

 

「そういえば、そー君と一緒の研修生って、どんな人たちなの?」

「んー、会えばわかるけど中々個性的な人が多いよ」

「例えば?」

「時刻表を暗記してるものすごい記憶力の人とか、運動がすごいできるミリオタとか」

「……なんか、もう無敵じゃない?そのチーム」

「まあ、でも、前者は逆に運動が、後者は鉄道の知識とかそういうのがからっきしだけど、チームだったらそうかもね」

「そのままみんな公安隊に配属されちゃうんじゃない?」

「んー、何とか言って車掌になれるなら、俺は車掌になる。強制的に公安隊に配属なら俺は就職を諦める」

 

 公安隊なんて、ただの通過点程度にしか考えてないし。

 それに、その先に行けないなら俺はそこにいる意味はない。元々、車掌になれなかったら別の場所に行く話なのだ。

 

「相変わらずだねぇっと。集合場所はここ?」

「そう連絡したよ」

 

 辺りを見渡して誰かいないか探すと、

 

「岩泉。おはよう」

「おう、臼井。おはよう」

 

 互いに片手をあげて挨拶する。

 挨拶してすぐ、岩泉は隣の千歳に気が付いた。

 

「お?その子は?」

「一ノ宮千歳ですっ!君が運動がすごいできるミリオタさん?」

「たぶんそいつのことだ。俺の名前は岩泉翔だ、よろしくなっ!」

 

 さすがに見て分かるだろう。

 二カッときれいな白い歯を口からのぞかせながら笑顔を見せた岩泉は、片手を差し出して千歳と握手をする。

 

「そういや高山達は?」

「高山と札沼さんは時間を少しオーバーしてくる予定だ。他の人は時間通りに来るんじゃないかな?」

 

 桐生からわざわざこっちまで来てくれるのだ。多少時間が過ぎることぐらいいだろう。

 そんな話をしていると、改札口から桜井と小海さんが出てくるのが見えた。

 

「桜井、小海さん、こっちだ」

「ああ、臼井。おはよう」

「臼井さん、おはようございます」

「2人とも、おはよう」

「高山はまだなの?」

「向こうを6時半に出てもこっちに着くのは9時少し前なんだぞ。少しくらい待ってやれよ。……でももう来るだろうな」

「ところで臼井君、その方は……?」

「ああ、高山達が来たら一緒に紹介するよ。もうちょっと待ってて」

 

 時計を見れば9時を回ったところだ。2人は今、電車を降りてこちらに向かっているだろう。

 少しすると、改札の向こうに2人の姿が見えた。

 

「遅れてすまん!」

「遠いんだからちょっとぐらいはね」

 

 さて、全員が揃ったところで目的地に向かうとしよう。

 

「じゃあ、行こうか。……と、その前に皆を紹介しないとな。

 左のほうから、さっき紹介した岩泉、高山、札沼さん、小海さん、桜井だ。

 札沼さんは警四じゃないんだけど、ちょっとした縁があって知り合ったんだ」

 

 皆それぞれ千歳に対してよろしくねと言う。とりあえず初対面は成功っと言ったところか。まあ、失敗する要素は無いんだけれど。

 

「じゃあ千歳」

「はーい。……初めまして、警四の皆さん。そー君がいつもお世話になってます。

 私は一ノ宮千歳といいます。船橋交通高校、鉄道車輛整備科の2年で、今は営団の綾瀬工場でOJTやってます」

「まあこいつのこともよろしく頼む。詳しいことは後で話すとして、取りあえず行こうか」

「行くって、どこに?」

「俺達の遊び場だよ」

 

 そう言って皆を連れて駐車場の方へと移動を始める。

 

 

 

 




 なんで高2で車運転できるんだってところは気にしないで頂けるとありがたいです。

8/30追記
思うところがあってことの顛末をだいぶ変えました。
はじめ書いてるときは最初の方がいいと思ってたんですが、今になって何だかつまらなく感じてしまったのでこういうことにさせてもらいました。

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