RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 こん○○は。
 お久しぶりです。何か月ぶりですかね。

 それではどうぞ。


33両目

「臼井君」

 

「ん?」

 

 

 EF62の本を見ながらノートに色々書いていると、後ろから声がかかった。

 振り返れば、そこには小海さんが立っていた。

 

 

「あ、小海さん」

 

「何か調べ物ですか?」

 

 

 俺の見ていた本を見て、小海さんは聞いてきた。

 

 

「まあ、そんなとこ。小海さんは?」

 

「私はアプト式時代の列車制御の資料を読んでたの。

 それで、もうこんな時間だからそろそろ夜ご飯を食べに行こうと思って……。

 あ、臼井君も一緒にどうですか?」

 

「喜んで」

 

 

 本を元あった場所に戻し、小海さんと一緒に食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 食堂に行くと、丁度高山と岩泉も居たので4人で食べることになった。

 

 

「臼井と小海さんも今から食事?」

 

「そう。俺はEF62の性能諸元表見てたらこんな時間になってた」

 

「私はアプト式時代の列車制御の資料を読んでたらこんな時間になっちゃって……」

 

「小海さんは分かるとして……臼井はなんてもん読んでんだ……」

 

「趣味趣味。

 ノッチ曲線とか回路図とか色々載ってて面白いぞ?」

 

 

 千歳に見せたらどんなに喜ぶことか。

 

 注文口で俺はA定食のチキンカツ、高山もA、小海さんはB定食の焼き魚、岩泉は両方頼んでいた。

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

 

 4人で同時にそう言って話しながら食べ始める。

 

 

「小海さんはどんな研修内容なの?」

 

「私は列車制御関係よ。北斗星の件があったからかもしれないけれど、列車を安全に走らせる仕組みについて色々とね。高山君は?」

 

「俺のほうは“リーダーとして必要な条件”って感じの研修なんだけど……、自分ではそんなに向いてるとは思えないし、実際ナポレオンがどうとかの話を聞いても、俺とは全然違うと思うしね。

 正直ただ聞き流してるって感じ」

 

「人から見た自分の評価なんて、大抵自分が思っているものと違うものだし、案外高山はそっちのほうがあってるのかもよ?」

 

「そうそう。今は分からないだけ……かもよ?」

 

「今は?」

 

「そっ。まだそういう経験が無いからあまりピンと来ないのかもしれないけど、リーダーを続けていると『あ、これだ!』って瞬間が来るかもよ?」

 

「そういうもんなのかなぁ……」

 

 

 と一言呟くと、高山はカツを一切れ食べた。

 

 

「それに……高山君はリーダーに向いてるよ、きっと」

 

「……俺が?」

 

「うん。だって、言うことがおじいさまに似ているから……」

 

「おじいさまって、國鉄で偉くなった人の?」

 

「うん」

 

 

 高山は小海さんのその返事に笑みをこぼした。

 

 

「そっか……ありがとう小海さん。

 ……臼井はどんな内容なんだ?」

 

「俺は小海さんと同じものに出てる。

 ただ、つまらん」

 

「つまらない?」

 

「そう。やってるのはほとんど趣味か授業で既知の範囲だから。どちらかといえば図書館で本読んでるほうが楽しい」

 

「本ってさっきの諸元表とかの?」

 

「そう。後は横軽の線形図とかの」

 

「そんなの何に使うんだ?」

 

「趣味とかでな。……あ、そうだ。今度家に来なよ。面白いもの見せてあげるよ」

 

「面白いもの?」

 

「そうそう。何かは当日のお楽しみね」

 

「……?」

 

 

 高山は不思議そうに頭をかしげた。

 そんな高山の隣では、ご飯を食い終わった岩泉が「くはぁ」と息を吐いて返却の為か皿をまとめていて、お盆を持って返却口に向かおうとした。

 食うの早いなぁなんて思いながら俺も皿をまとめ始める。

 そんな岩泉に高山は声をかけた。

 

 

「岩泉。明日暇だろう?」

 

「あん? そうだな。それがどうしたんだ?」

 

「北斗星のアテンダント覚えてるか?」

 

「アテンダントってなんだ?」

 

「そこからか……北斗星で俺達にコース料理を……」

 

 

 と、そこで岩泉は思い出したようだ。

 

 

「おおっ!腹にはたまらない、外国のうまい料理を持ってきてくれた女子のことか」

 

「高山君と同じ学校の可愛い女の子でしょ? 名前は札沼まりさん」

 

 

 小海さんが何故か細く冷たい目で高山を見据える。

 

 

「そ、そう。食堂車の乱闘のときに守ってくれたお礼をお前と臼井に言いたいんだってさ。

 明日軽井沢に来るって言うから、2人を一緒に連れてきてくれないかって。

 ……そういや臼井。明日大丈夫か?」

 

「ああ」

 

 

 まあ、見たい本は別の日に見ればいいだろう。

 

 

「いいぜ、明日は軽井沢さんに会いに、札沼にいけばいいんだな?」

 

「じゃあ、明日は朝一で羽田に移動だな。飛行機が取れるか心配なところだが」

 

「違う!……朝お前の部屋に迎えに行ってやるよ。臼井は分かってるよな?」

 

「ああ。何処に何時だ?」

 

「安中榛名に10時集合でよろしく」

 

「ああ。分かった」

 

 

 俺は席を立ち、お盆を持って返却口に向かおうとした。

 俺が立ち上がった丁度そのとき、小海さんが頬づえをつきながら、ニコニコとした表情で高山に聞いた。

 

 

「うわぁ~、軽井沢かぁ~、いいなあぁ。

 た・か・や・ま・く~ん、私も明日暇なんだけどぉ~?」

 

 

 斜め右下を見ると、ニコニコと無言の圧力を高山にかけている小海さんがいた。

 これはアレか。

 

 

「臼井君? 何か?」

 

「いえ、なんでも」

 

 

 小海さんは高山に向けていた顔をこちらに向けた。無言の圧力が凄い。

 俺が苦笑いで両手を挙げて降参のポーズをとると、小海さんはそのまま高山のほうを向いた。

 俺はお盆を持って返却口へ行き、それから部屋に向かった。

 今日の風呂は早い時間が男子の時間だったので、今は女子の時間だ。

 ちなみに次の男子の時間は深夜だ。

 今日は天気がいいから露天風呂にでも入ろうか。周りに何もないからきれいな星空が見えることだろう。

 

 

「空気も良くなってきてるみたいだしな」

 

 

 なんて呟きながら高山の部屋の前を通り、隣にある自分の部屋へと入った。

 

 




※若干のネタバレが含まれますので、それでもいい方だけお進みください。






 本当にお久しぶりです。
 いや、あれなんですよ。
 リアルが忙しくてなかなか進められないんです。
 具体的にどれぐらい進まないかというと、前回増21号車を投稿した時点で確か臼井君が軽井沢駅の公安室にいたんです。
 で、今日この時点でどこにいるかというと、まだ軽井沢駅なんですよ。

 ね、進んでないでしょう?

 言い訳させてもらうと、どうやって下らせるかさえ思いつけば進むんです。
 4巻の内容は冒頭だけ書き始めてますし。
 ……そんなこと言ってる暇あったらとっとと書けという千歳さんの説教が聞こえてくるので、これ以上は何も言わないことにします。

 それではまた次回。

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