RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

3 / 45
 誰得感が否めないこの作品ですが、3話目です。
 相変わらず文章はあれですが、精進してまいります。

 今回はそんなに専門用語とかは出てこないはずです。
 
 それではどうぞ。


3両目

 姉さんから衝撃の発表があった次の日、つまり冒頭に戻る。姉さんは「一緒に行くか?」なんて言ってくれてたが、起こしてはくれず、先に行ってしまった。

 急いで身支度をし、駅まで全力疾走する。歩けば10分の距離も、全力で走れば6~7分と早く着ける。

 駅まであと少しというところで、乗る予定の電車がホームに入っていくのが見えた。

 ラストスパート!そう思って、最後の力を振り絞り、改札を抜けてホームへと上がった。

 結果から言うと、電車には無事間に合い、さらに座ることができた。あとはこれで西国分寺まで行けばいい。そう思い、カバンからIp●Dと本を出し、音楽を聴きながら西国分寺へと向かった。御茶ノ水からは中央快速線に入るから、乗り換えは不要だ。

 

 

『まもなく、西国分寺、西国分寺です。お出口は左側です。武蔵野線はお乗換えです。

 The next station is …』

 

 國鉄231系電車から搭載された自動放送が聞こえ、降りる支度を始める。

 本はカバンにしまい、Ip●Dはポッケに入れる。

 長い減速が終わり、電車が完全に停まってドアが開く。

 俺は、周りの人の流れに合わせて電車を降り、改札を抜け外に出る。

 外に出て書類に書いてあった通りに歩くと、5分で國鉄中央学園に着いた。

 校門には0系新幹線が置いてあり、いやでも鉄道関係の施設だと分かってしまう。

 そんな校門をくぐり、授業をする13号館を目指す。

 だだっ広い校内を歩いていると、前に平均並みとガタイのいい高校生らしき人が2人並んで立ち止まっていた。たぶんだが道に迷ったんだろう。

 俺がさらに2人に近づくと、相手も気づきこちらを向いた。

 

 

「よっ、お前も鉄道OJTか?なら、13号館の場所を教えてくれねーか?道に迷っちまって」

 

 

 2人のうちのガタイのいい(と言うより、高身長で筋肉質といったほうが正しいかな?)ほうが聞いてきた。

 もちろんそうするつもりだ。姉さんからはいつも、人には親切に接するように言われてきたからな。

 

 

「いいよ。じゃあ、いこうか。」

 

 

 俺たちは13号館に向かって歩き出した。するとすぐに、

 

 

「おう、すまねーな。俺は、桜堤高校二年の岩泉翔だ。よろしく頼む。」

 

 

と、ガタイのいいほう、岩泉が自己紹介をした。続いて隣の平均的な人も、

 

 

「桐生鉄道高校二年、高山直人だ。よろしく」

 

 

と、言った。最後に俺が、

 

 

「船橋交通高校鉄道二年の臼井宗吾だ。よろしく」

 

 

と言って、互いの自己紹介は終わった。

 始業時間まではまだ余裕があったので、いろいろと話しながら歩いていると、13号館に着いた。

 それを見た瞬間、

 

 

「「「ボロッ!」」」

 

 

と、3人同時に同じことを口に出していた。

 建物は鉄筋コンクリート造りの三階建てで、入り口には木の看板に“十三号館”と書かれていた。どうやら、ここが目的の建物だったらしい。

 始業の時間まではまだ時間がある、といってもあと10分も無いので、少し急ぎ足で指定の教室、第206教室へと向かう。

 教室の入り口に貼り出されている座席表を確認し、指定された席へと座る。

 俺は“う”で始まるので、岩泉の後ろの席だった。

 しばらくして、発車ベルの音がしたかと思うと、一秒の差も無く先生と思われる人が入ってきた。その人は、教壇につくと持っていた本を静かに置き、白いチョークを持って黒板に、

 

“五能瞳”

 

と、短く書いた。はい、俺の(一応)姉さんです。

 姉さんは名前を書き終わるとチョークを置き、号令をかけた。

 

 

「起立! 礼! 着席! …明日からは出席番号一番の岩泉からやるように」

 

 

 名指しされた岩泉はぼんやりとしていて、何も言わなかった。

 

 

「聞いているのか岩泉!分かったら返事をしろ!他の奴もだ、いいな!」

 

『はい!』

 

 

 姉さんがそういうと、みんな(当然俺もだが)一斉に返事をした。みんな怖いのか?

 姉さんは話を続ける。

 

 

「まずは自己紹介からだな。私は五能瞳、東京公安機動隊の隊長をしている。普段、私は多忙で教官をやっている暇なんて無いのだが、上とお前らの配属予定の公安隊から、お前らを即戦力になるようにしてから配属してほしい、との要請を受け特別にお前らの教官を務める。ありがたく思え。あと、事故が起こってからでは遅いから、そうならないように、この特設公安科短期講習期間中は厳しくいく、覚悟しておけ。以上!」

 

 

 言い終わると同時に発車ベルに似たチャイムが鳴り、HR終了となった。

 次の時間からは、鉄道に関する知識、法律などの授業などが始まる。

 俺は次の授業の準備をして待つ。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 時は流れ、短期講習最終日。いつものように姉さんは時間ぴったりに教壇にいた。

 この一ヶ月間は大変だった。伝統らしい自衛隊への体験入隊や、これまた伝統らしい蒸気機関車の投炭訓練、射撃練習などの肉体労働をやったり、鉄道に関する知識、法律を詰め込まれた。もちろん、大変なことばかりではなくうれしいこともあった。クラスに友達が二人?増えた。一人は小海はるかさん。ほとんどのテストでトップ通過の頭のいい女の子である。ただ、小海さんは運動に関しては苦手らしい。

 俺?俺は幼馴染に機械オタクが居るおかげで、整備、運転に関してはトップだった。他についてもそこそこよかったと言っておこう。

 もう一人が、桜井あおい。授業で「痴漢は死刑にすべし」とか言ったり、射撃試験で全10発中頭に1発、心臓に1発、残った8発は全弾男の大事なところに命中させたりして、クラスの有名人となっている人だ。

 そんな人たちと楽しくもあり辛くもあった日を過ごし、ついに今日の最終日を迎えた。

 クラスには30人の人が居る。短期講習31日目の今日で全員が号令をしたことになる。

 最後の号令の人が、起立、礼、着席。と号令をかけ、号令に合わせ全員が一糸乱れぬ動きをする。最初のほうこそ若干の乱れはあったが、日がたつにつれてだんだんとそろうようになった。

 全員が席に着き、姉さんがそれを確認すると、この講習で初めての笑顔を見せ、話し始めた。

 

 

「全員ご苦労だった。正確には昨日で特設公安科短期講習は全て終了だ。今日からは半人前ではあるが、諸君らは鉄道公安隊員だ。今日まで厳しくやってきたが、それは我々が人の命を扱う仕事だと認識してほしかったからだ。鉄道公安隊は警察でも自衛隊でもなく、お客様に楽しく旅行をしていただいたり、毎日快適に通勤していただくサービスを提供する鉄道会社“國鉄”の職員なのだ。だから…」

 

 

 姉さんはチョークを手に取り、黒板に文字を書き始めた。

 書き終わりチョークを置く。黒板に書かれている文字は、

“強く”“正しく”“親切に”

の三語だった。

 

 

「これが鉄道の安全を守る鉄道公安隊のスローガンだ。現場に出たらお客様を犯人のように疑うようなことは絶対にするな!お客様には親切にしろ」

 

 

 優しい顔だった姉さんが、ここで厳しい顔になり、

 

 

「しかし、お客様の迷惑になるような奴には、どんな理由があろうとも戦え……いいな」

 

 

 迫力のある声で姉さんの話は終わった。あと、さらに一時間ほど、現場に出てからの心得の話をし、鉄道公安隊の手帳が一人一人手渡しされた。

 手帳は警察手帳と同じように二つ折りで、開くとセンターにバッジが入っていた。警察手帳は桜がモチーフになっているのに対し、鉄道公安隊の手帳は鉄道の父である蒸気機関車の動輪がモチーフとなっている。

 一ヶ月という短い期間だったが、皆緊張の糸が切れたのか、受け取るときに泣きながら受け取る人が大多数いた。岩泉や小海さんも泣きながら受け取っていた。

 そして姉さんが教室から出て、研修の全てが時間通りに終わった。

 帰りがみんな一緒になるのは、初日を含め今日が初めてなので、みんな並んで西国分寺駅へと向かった。

 俺も、岩泉、高山、小海さん、桜井さんと話しをしながら向かう。(と言っても、桜井さんとは若干喧嘩ぎみになってしまうが…)

 西国分寺駅に着き、各々自分の家へと帰る路線のホームへと向かう…、前に、小海さんが、

 

 

「えっと…その…、みんなありがとう…」

 

 

と、目を真っ赤にしながら言った。

 続いて桜井も、

 

 

「高山!岩泉!臼井!これからの研修しっかりやんなさいよ!女ばっかり追いかけるんじゃないよ!」

 

 

と、最後まで桜井らしかった。

 次に岩泉。

 

 

「まあ、なんだ。その…、筋肉馬鹿のバカな俺に勉強を教えてくれたり、ありがとな。…それと、これからみんながんばってくれよ」

 

 

と、また泣きそうになっていた。

 次に高山。

 

 

「えーっと、…みんな、これからの研修がんばって」「ちょっと高山!あんたそれしか言えないの!?」「うっせー黙ってろ!こういうの苦手なんだよ!」

 

 

と、最後まで桜井と口喧嘩していた。

 最後に俺、

 

 

「俺も高山と同じで、こういうのは苦手だから手短に言う。…短い間だったけど仲良くしてくれてありがとう、これからの研修がんばって。……以上だ」

 

 

………俺も岩泉のことをばかにできないな。気を緩めると泣きそうだ。

 こんなことをしている間にもう電車が来る時間になっていた。最後にみんなで、

 

 

「「「「「じゃあね!」」」」」

 

 

と言って分かれる。

 桜井と小海さんは同じ方面らしく、一緒にホームへと向かっていった。

 残った俺と高山と岩泉は、途中まで帰り道は同じだ。

 ホームに下りて、すぐに来た中央快速線の快速東京行に乗った。車両は國鉄205系、昭和時代からの車両で、車齢は50を越える。20m車4つドア15両で運転されている。

 車内はそこそこすいていて、立っている人がちらほら居る程度だった。

 そんな電車に揺られ、岩泉は武蔵境駅で降り、高山は新宿で湘南新宿線に乗換え、俺は御茶ノ水で総武緩行線に乗換えた。それぞれ降りるときには、最後に言葉を交わしてそれぞれ家に向かった。

 




 はい。一巻の一割五分がこの話に集約されてしまいました。
 理由(言い訳)としては、臼井と誰を組ませるか(蒸気機関車の話)が中々思い浮かばずだったので、飛ばしてしまいました。
 ですが、今になって思い浮かんだので、出来次第投稿したいな、と思っています。(ま、誰も見ないと思うけど)

 そんなことはさておき、臼井君の配属場所はどこになるんでしょうね?
 皆と同じになるといいですね。

 分からないことなどがありましたら、いつでもどうぞ。
 それではまた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。