RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 こん○○は。

 珍しくかなり早い更新です。



22両目

 丸刈りの殺し屋さんはキックで岩泉に襲い掛かった。

 すかさず警棒を横に構え、岩泉はそれを防ぐ。

 その隙にもう1人のグラサンがスライディングで下を通り抜け、こちらに来た。

 

 

「はいはい、こっから先は通行止めですよー」

 

「チッ!」

 

 

 進路を邪魔するように目の前に出ると、グラサンの男は若干片言じみた舌打ちをして立ち上がり、大きく振りかぶって殴りかかってきた。

 それを半歩足を引くことで回避し、男は目の前を通り過ぎた。

 通り過ぎる間際に足を引っ掛けて転ばしたが、男は慌てることなく受身を取り、普通に立ち上がってしまった。

 

 

「やばっ!」

 

 

 一瞬こちらを向いてニヤッと笑った男はそのまま高山たちのほうへ走り出す。

 俺もすぐに追跡する為に走り出した。

 その直後、キッチンから皿を持って出てきた札沼さんがその皿をグラサン男に投げつけた。

 そのうちの1枚が顔に当たり、グラサン男が立ち止まる。

 

 

「札沼さん!下がって!」

 

 

 彼女と入れ替わるようにして食堂車の入り口に立ち、頭を押さえている男を取り押さえようと狭い通路を走り出す。

 それに気付いたのか、男は一瞬こちらをみると近くにあったケースを倒して高山達のほうへ向かってしまった。

 面倒な事を……と思いながら男を追跡しようとすると、今度は後ろから札沼さんの悲鳴。

 

 

「Shit!……今度はなんだ!?」

 

 

 なんて悪態をつきながら男の追跡を諦め、食堂車へと急いで戻る。

 すると、入り口のすぐそこで岩泉が札沼さんをかばいながら丸刈りの男に蹴りを入れられていた。

 すぐさま内ポケットからエアガンを取り出し、男の足に向かって何発か撃つ。

 すると男は岩泉を蹴るのをやめた。

 

 

「岩泉、札沼さんを物陰に移せ!」

 

 

 岩泉の上を跳び越し、一瞬後ろに下がった相手にどんどん撃ち込む。

 当たったところで痛いだけで死ぬようなもんじゃないし、今はとにかくここを凌ぐのが先決だ。

 出来る限り撃ち込み、そろそろ弾切れという所で岩泉が後ろから走ってくる音が聞こえた。

 

 

「岩泉!」

 

「おう!」

 

 

 岩泉とスイッチする形で前後交代し、後は岩泉に任せる。

 岩泉は前に出ると、男の突き出してきたスタンガンをかわして、その隙に男の腹部に思いっきり叩き込む。

 男は幾つものテーブルに当たりながら車両後方まで吹き飛び、立ち上がりざまに発炎筒を投げた。

 煙が晴れる頃には当然そこに犯人の姿は無く、すでに逃走済みだった。

 

 

「大丈夫か?岩泉」

 

「ああ、あんな蹴り、肩叩きみたいなもんさ」

 

「そりゃあ良かった」

 

「でも、サンキューな」

 

「いいってことよ」

 

 

 なんて言いながらハイタッチして札沼さんの居るほうへ戻る。

 物陰から出てきた札沼さんは、心配そうに俺達に声をかけた。

 

「2人とも、大丈夫?」

 

「おう、そっちこそ怪我は無ぇか?」

 

「う、うん……。2人とも、ありがとう」

 

 

 岩泉にそう聞かれ、2、3頷いたあとに微笑んで言った。何もなくて良かった。

 

 

「それは何より。……それでは我々はこの辺で失礼します」

 

 

 そう言って一礼し、岩泉を促して食堂車から高山達の逃げたほうに向かった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 倒れたケースを元に戻し、高山とベルニナを探すと2人は9号車に居た。桜井と一緒に。

 なぜ桜井がいるのか。

 桜井曰く、

 

 

「飯田さんに、乗り遅れました、って言ったら、新幹線に乗れば間に合うわよ、って言われたから」

 

 

 だそうだ。

 確かに、東北本線は曲がりくねっているのに対し、新幹線はまっすぐ進んでいる。

 その上、出せる速度も当然新幹線のほうが速いから、あの時間に出れば間に合うのかな。

 まあ、間に合って何よりだ。

 

 

「あ、そうだ。グラサンの男は?」

 

「ああ、そいつなら、私が蹴り飛ばしてそのままどっか行ったわ」

 

「あ、さいでっか」

 

 

 相変わらず容赦しねーな、桜井は。

 

 

「そういえばはるかの姿が無いんだけど」

 

「部屋で寝てんじゃね?」

 

「どうなのかしら。はるかの部屋はどこ?」

 

「ああ、そこ」

 

 

 と言って指を指す。

 

 

「はるかー、いるなら返事してー」

 

 

 桜井がドアをノックしながら言う。

 

 

「はるかー、……って、鍵開いてるじゃない。入るわよ」

 

 

 そう言って部屋のドアを開けた。

 

 

「………。居ないわよ?高山」

 

「えっ!そんなはずは……!」

 

 

 と、高山が部屋を覗こうとしたとき、俺のスマホに着信があった。

 発信者の名前を見ると、“小海はるか”の文字。

 俺は迷わず通話ボタンを押した。

 

 

「もしもし?小海さん?今どこに……」

 

『へー、そんな苗字なんですね、この人』

 

「誰だ手前てめぇ」

 

 

 電話口から聞こえてきたのは、小海さんの声とは程遠い、男の声だった。

 

 

『名乗る必要はありませんよねえ?まあ、状況から推察してください』

 

「てえ事は小海さんをさらった奴か」

 

『そうなりますねえ。あ、スピーカーにしてないならそれにしてください。今からこちらの要求を言いますので』

 

「大体分かってるがな」

 

『話が早くて助かりますよ』

 

 

 俺は皆を集めてスマホの通話設定をスピーカーにした。

 

 

「言われた通りにやりましたよ」

 

『ありがとうございます。では、一度しか言いませんので』

 

 

 スピーカーからは犯人の声と列車のジョイント音が聞こえる。

 どこから掛けているのだろうか。個室か?開放寝台か?ロビーか?

 そんな考えをよそに、犯人は自分の要求を突きつけた。

 

 

『そこにいる金髪の王子様を渡してもらいましょうか。この子と引き換えに、ね』

 

 

 男の声は、子供をあやすような、そんな声で言った。

 




 先日、用事があって八王子に行ってきました。
 新宿から京王線の特急で京八まで。(行きも帰りも7000系でした。ちくせう。8000に乗りたかった)
 本数多くて驚きました。先行が見えるってどういうこと?羨ましい。
 京王のATC、良いですよね。私は好きです。

 あと、途中から交代した車掌さんの声が可愛かったです。
 電車の中じゃなかったら中学生かと思うくらいでした。


 さて、そんな雑談はさておき、近いうちに設定でも書こうかなとか思ってます。
 どこの地域にどんな車両が走ってるとか、主人公達のこととかね。
 まあ、何時になるか分かりませんが。


 次回は相変わらず未定です。
 誤字脱字などがありましたらご報告下さいますようお願いします。

 それでは。

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