RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

21 / 45
 こん○○は。

 前に投稿したやつは消しました。
 深夜テンションてこわい。



21両目

 “札沼まり”と紹介された子は、軽くお辞儀をすると、

 

 

「高山君、私から呼んでおいてゴメンだけど、そろそろ仕事に戻るね」

 

「ああ、分かった。OJTがんばれよ」

 

「それはお互いにね」

 

 

 そう言って厨房に戻っていった。

 

 

「高山君のクラスメイトなんですか」

 

「ああ、OJTをやってるとは聞いていたけど、まさか北斗星で会うなんて思っても無かったよ」

 

 

 小海さんがホッとしたような顔をし、高山は本当に意外だというような顔をしていた。

 今は丁度宇都宮を出たあたりだ。

 俺はそんな二人と岩泉、ベルニナに向かって言った。

 

 

「さ、俺達も戻ろう。次は高山な」

 

「はいよ」

 

 

 さ、気を引き締めていこう。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 郡山を定刻で出発し、今は22時を少し回ったところだ。

 今のところは何もない。

 俺は自分の部屋でスマホを弄りながらごろごろしている。

 

 しばらくニ○動などを見ていると、隣の部屋から大きな物音がした。誰かが倒れる、そんなような音が。

 俺はすぐに部屋を飛び出す。そして、同じく部屋から出てきた岩泉とベルニナの部屋の前で鉢合わせする。ここに小海さんは居ない。聞こえなかったのだろうか。

 

 

「今、大きな音が」

 

「ああ、したな」

 

 

 俺と岩泉はベルニナの部屋の前で立ったままだ。

 中の状況を掴もうにも、扉の鍵は閉まっていて、そのうえ、あの物音から今まで何も聞こえない。

 不審に思い、扉を叩く。

 

 

「高山!大丈夫か?」

 

「あ、うん!何でもないよ!」

 

 

 どうやら大丈夫のようだ。

 

 俺は岩泉に大丈夫だ、とだけ言って、自分の部屋に戻ってスマホを取り出す。

 しばらくインターネットをやっていると、気になるニュースが速報でやっていた。

 

 

「なるほど、これが原因か。………嫌な予感しかしないな、全く」

 

 

 俺が見たニュースサイト。スマホの画面に表示されている記事のタイトルは、

 

“地中海の国、アテラで交通事故! 帝王家族四人の安否不明!?”

 

 となっていた。

 

 これじゃあ倒れるわな。いきなり自分の家族が安否不明なんだもの。

 ……やばい、絶対に何かが起こる。この北斗星で。そんな気がする。

 

 俺はそのベルニナの家族について、軽く調べてみた。

 結果は予想通りで、事故に遭った4人は王位継承権の1位から4位までを持っていた。

 そして、ベルニナと一緒に居た大臣……名前はなんだっけ?

 確か、ブ……ブルー……?ブルなんとかさん?

 そう、ブルなんとかさんは、ベルニナの王位継承権は5位と言っていた。

言っちゃあ悪いが、あんな子供みたいな人が、家族を殺してまで王様になろうなんて、考えてはないだろう。

 とすると、6位以下の奴の誰かが王の座を狙っていることになる。

 それならば、次に狙われるのは、

 

 

「ベルニナか……」

 

 

 思い立ったらすぐ行動。

 桜井ではないが、さすがに仕事だ。手を抜くわけにはいかない。

 

 俺は家から持ってきた、ポケットがたくさんついている、ショルダーバッグの口を開け、中からこれから使えるであろう物を出した。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 23時15分。

 高山が、ロビーカーに行こう、と誘ってきた。後ろには岩泉がいた。

 

 

「あれ?小海さんは?」

 

 

 俺は思ったことをそのまま口にした。

 

 

「ああ、小海さんなら部屋で寝てると思うよ」

 

「そうか」

 

 

俺達は4人でロビーカーとなっている6号車に向かった。

 外はもう真っ暗で、家の明かりがぽつぽつと見えるだけだ。

 速度は80~90km/hくらいだろう。

 

 俺達が泊まっているのは10号車、食堂車は8号車、目的地のロビーカーは6号車にあるので、必然的に食堂車を通ることになる。

 北斗星の食堂車は、ディナータイムが終わってから23時まで、パブタイムとして営業する。

 その時間は予約なしでお酒や料理が食べられるのだが、今は23時25分、その時間も終わっている。

 営業の終わった食堂車は電気が薄暗く、厨房からカチャカチャと食器の洗う音が聞こえた。

 テーブルの間を抜け、厨房の脇を通ると、

 

 

「あれ?高山君、こんな時間にどこ行くの?」

 

 

 厨房に居たのは札沼さんで、俺達が通ろうとすると声をかけてきた。

 

 

「ロビーカーにコーヒーを買いにちょっとね」

 

「そういうことならちょっと待って」

 

 

 と言って、厨房の奥に行ってしまった。

 しばらくすると、こっちに戻ってきた。

 

 

「今チーフに聞いたら、余ったコーヒー飲んでも良いってよ」

 

「大丈夫なのか?札沼」

 

「チーフが言ったんだから大丈夫よ。それに、いつも余った分は捨てちゃうか、乗務員さんにあげちゃうから、問題ないよ」

 

「そういうことなら、遠慮せずに貰おうかな。あ、悪いんだけど、そこの二人はミルクと砂糖が多めのコーヒーが良いって言うからさ……」

 

「OK、じゃあ、ちょっと待っててね。……そっちの君は?」

 

 

 札沼さんが俺を指していった。

 

 

「あ、私はブラックで」

 

「分かりました。 じゃあ、そこの席で待ってて」

 

 

 と言って近くの4人掛けのテーブル席を指差し、彼女は厨房へと向かっていった。

 

 コーヒーを待っている間、いつの間にか仙台に停車していた北斗星が発車していた。

 そろそろ終電ということもあり、ホームには家に帰るであろうお客様がそれなりに居た。

 そして仙台のホームを抜けた頃、チャイムと今日最後の放送が流れた。

 

 

『この列車は、寝台特急北斗星3号、札幌行きです。現在時刻どおりに走っております。次の停車駅は函館です。函館には明朝6時34分の到着予定です。

また、この放送を持ちまして、明朝6時30分、函館付近までは、特別なことがない限り放送はいたしません。あらかじめご了承ください。最後に、青函トンネルの通過は、明朝5時頃を予定しております。ご覧になる方は、放送がありませんのでご注意ください』

 

 

 それで今日最後の放送は終わった。

 今の時間は23時半くらいだ。

 この時間、食堂車に来る人はない。いるとしてもロビーカーに行く人、または帰ってくる人だろう。

 遠くにぽつぽつ見える家の光は、ゆっくりと流れていく。

 それを眺めていると、コーヒーがテーブルに置かれた。

 

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 

 そう言って受け取り、一口飲む。

 コーヒーの苦味が睡魔に侵略されかけていた意識をはっきりさせた。

 ちびちびと飲んでいると、半分くらい飲んだ頃だっただろうか、食堂車の扉が開き、人が入ってきた。

 その人は背が高く、男で、グレーのスーツなんて着ているもんだから、ヤーさん見えてしまう。

 

 

「営業時間外にここに座ってて大丈夫かな?」

 

「大丈夫、ミーティングとかに見えるだろう」

 

「そうかなあ?」

 

 

 ベルニナの心配を高山が払う。

 まあ、ベルニナの服装が私服な件はこの際気にしないとして、高山は岩泉に同意を求めたが、ただ少し笑うだけで何も言わなかった。

 

 

「と言うわけで――――――」

 

 

 少しでもミーティングに見えるよう、俺が話し始めたところで、件の男は横を通り過ぎた。

 その際、バチバチバチと何かの音が聞こえた。

 見ると件の男が、岩泉の首めがけて何かを当てようとしていた。

 男の持つものからは紫電が発生している。つまり、持っているのはスタンガンということになる。

 自分の首に向かって来たそれを、岩泉は予め知っていたかのようにかわす。

 そして、その動作の最中に、左手に持っていた伸縮式の警棒を一気に伸ばし、振り上げ、男に攻撃しようとする。

 男は寸でのところで攻撃をかわし、岩泉と男は食堂車の通路で対峙する形になった。

 

 

「高山班長代理。どうやらこいつは俺達を狙ってるらしいぞ」

 

 

 男から直接聞いたわけではないが、今の行動を見る限り、そう判断しざるを得ないだろう。

 だが、目的は俺達じゃなく、

 

 

「「まあ大方、目的はベルニナ(殿下)だろうがな」」

 

 

 俺と岩泉の声がハモった。まあ、誰でも分かるか。

 ベルニナが目的なら、こいつはアテラ王国の事故にも関与していることになる。正確には、その実行犯を知っている、になるが。

 

 

「要はとっ捕まえて全部吐かせようって話。さ、おとなしくお縄についてください」

 

 

 日本語は分かるようで、その言葉を聞いてこっちに向かって来た。

 その直後、もう1人後ろから入ってきて、相手は計2人になった。

 幸いにも、向こうはロビーカー側から入ってきたので、ベルニナは何とか逃がすことができる。ベルニナを捕まえるには、俺と岩泉を倒していくしかない。

 俺は咄嗟に高山に言った。

 

 

「高山!今すぐここからベルニナを連れて離れろ!あと、札沼さんは厨房に入ってて!」

 

「ああ!」「分かった!」

 

 

 高山はベルニナの手を引いて、食堂車から出て行き、札沼さんは厨房の中に入っていった。

 男と対峙しているのは俺と岩泉だけだ。

 

 

「いいのか?」

 

 

 岩泉が突然聞いてきた。

 

 

「何が?」

 

「いや、お前も高山たちと逃げたほうが良いんじゃないかって」

 

「ああ、大丈夫大丈夫」

 

 

 そう言って警棒を取り出して用意する。

 同時に制服の内ポケットに一丁のエアガンがあるのを確認する。

 千歳と一緒に市販のやつを改造して、規定ぎりぎりまで出力を上げたやつだ。まあ、当たったら痛いくらいだ。大丈夫だ、問題ない。

 

(※作者注:この世界では、エアガンの改造は合法です)

 

 

「まったくもう。……警四内の疫病神は誰だ?」

 

「さあ?今はとりあえずこいつらをやっちまうほうが先だと思うぜ?」

 

「それもそうだな」

 

 

 男はヒーロー戦隊に出てくる悪役のように待っていてくれた。

 俺の準備が終わり男のほうを向くと、相手もそれを察したのかこっちに向き直る。

 

 1ヶ月で二度も乱闘に巻き込まれるとは……。桜井や岩泉だったら喜んでやるんだろうが、生憎俺はそうではない。

 面倒だ、本当に面倒だ。桜井に会ったら何か言ってやる。

 

 そう思っている間に相手は動き出し、戦闘が始まる。

 




 ではまた次回。

  誤字脱字などがありましたらご報告下さいますようお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。