RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

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 こん○○は。

 本日、学校の行事があり、とある車両センターお邪魔させていただきました。
 普段入れないところに入れたり、運転席に乗せてもらったりと、とても楽しかったです。

 それはさておき本編です。
 それではどうぞ。
 
 


20両目

「あおい、結局間に合いませんでしたね……」

 

「大丈夫、飯田さんが何とかしてくれるよ」

 

 

 新幹線で来れば、仙台までには追いつけんだろ。“しんかんせんで追いかけろ”みたいに。

 

 北斗星は大宮を出発した。次は宇都宮に止まる。

 

 

「とりあえず部屋には着いたが、部屋割りはどうする?」

 

 

 今最初に直面した問題がそれだ。

 荷物はそれぞれの部屋に適当に置いてある。

 飯田さんから渡された切符は、ロイヤル(SA1)が2室とデュエット(B2)が2室だ。

 ベルニナがロイヤルとデュエットにはさまれたロイヤルに入るのは確定として、その他だ。

 

 

「じゃ、俺はB寝台の上側で」

 

 

 と言って、高山の持っていた切符を取る。

 ちなみに、上側は1人だけで使える。

 こういうのは早い者勝ちだ。

 

 

「じゃ、お先に~」

 

 

 と言って、持って来た荷物を持って部屋に入る。

 片方のベッドに荷物を置き、すぐに外に出る。

 

 

「で、他は決まった?」

 

「ああ、小海さんと桜井がロイヤルで、俺と岩泉がデュエットの下側だ」

 

「そうか。じゃあ早速始めようか」

 

「そうだな。と言っても通路でやれば『ここに居ますよ』って言ってるようなもんだから、ベルニナと同じ部屋に入って、だな」

 

「じゃ、そういうことで」

 

 

 そういうことになった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 最初は俺が警護にあたる。

 というか、特にこれと言って誰がやるかとかは決まってないので、ただ単に話がしたいだけだ。もちろん警護はするが。

 というわけで、

 

 

「ベルニナの国の鉄道の話を聞いてもいい?」

 

「もちろん!何から話そうか―――――」

 

 

 

 その話は高山たちが呼びにくるまで、途切れることなく続いたという。

 

 

 

「――――――――――――でさ、やっぱり日本の電車はいいよね」

 

「ベルニナは、自分の国で好きな列車とかあるの?」

 

「そうだねえ、僕のところは大体直通車しか来ないからなあ。でも、その中でも好きなのは、イギリスのClass395(イギリスの特急用列車)とか、ICE-T(ドイツの特急用列車)とかかな、他にもあるけど」

 

「あんまり聞かないけど、ベルニナの国で作った車両はあるの?」

 

「一応あるよ。僕の趣味で、特急列車系はICE-Tに似せた車両が、普通列車系は日本の233系みたいなのが走ってるよ」

 

「へ~、そうなんだ」

 

 

 と、ここまで話したところで高山が呼びに来た。

 

 

「そろそろ時間だ、食堂車に行くぞ」

 

「はいよ」 「うん」

 

 

 夕飯は食堂車でディナーらしい。まあ、王子様に駅弁ってわけにはいかないよな。

 そんな訳で、俺達は食堂車に向かう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 列車が増えても減っていく車両。それが何かと聞かれれば、人は“食堂車”と答えるだろう。

 事実、「採算?ナニソレオイシイノ?」という感じに列車を走らせている國鉄でも、その数は減ってきている。

 理由としては、列車の速達化による食堂車の利用者の減少だろう。

 開業当時、食堂車があった東海道新幹線に至っては、一両も残っていない。

 0系は各駅停車運用となり、お客様の利用区間は短くなり、食堂車を使っている間に目的地に着いてしまう。

 最新の700系に至っては、新幹線の中でも最速達種別の運用となり、主なお客様はビジネスマンだ。食堂車をつなげるくらいなら、その分座席を増やしたほうが良いだろう。

 だが、変わらずに食堂車を連結している列車もある。

 それは、一部寝台列車と一部の特急だ。

 食堂車を連結する条件は色々あるのだが、それはまたの機会に話そう。

 

 さて、その食堂車だが、寝台特急である北斗星には、あたりまえのように連結されている。

 北斗星の食堂車は“グランシャリオ”という名前がついていて、その車内はすごく気合が入っている。

 赤い絨毯に、白いクロスのかかったテーブルの上には、ぼんやりと輝く照明。

 一流のレストランにも引けを取らないような内装……らしい。

 前に入ったのは小さい頃だったので、忘れてしまった。

 

 食堂車の扉の前に着き、「北斗七星」と、金色のプレートのかかった扉を開ける。

 中に入ると、内装は予想以上にすごかった。

 ここに國鉄の意気込みが見える。

 

 そんな内装に警四の面子(俺、高山、岩泉)が驚いていると、食堂車のキャビンアテンダントの子が近づいてきた。

 

 

「い、いらっしゃいませ。ご予約の高山様ですね?」

 

「はい。……あ、そうだ。1人、急に来れなくなったんですが……」

 

「かしこまりました。では、こちらにどうぞ」

 

 

 アテンダントの子に案内されて席に着く。

 通路向かって右に2人用のテーブルが、左には4人用のテーブルがそれぞれ壁に沿って並んでいた。

 その中でも真ん中の席あたりに俺達は案内された。

 席は、(高山+ベルニナ+小海さん)と(俺+岩泉)に別れた。

 全員が席に着いたのを確認すると、アテンダントの子は厨房に向かって開始の合図をした。

 オードブル、魚料理、肉料理、最後はデザートだ。このフルコース、1人8000円くらいするらしい。

 その8000円分の料理を、料理が来た瞬間に平らげてしまう奴が目の前にいた。もっと味わえよ……。

 

 味はおいしかった。文句は何もない。

 

 食べ終わり、ゆっくりしていると、案内してくれたアテンダントの子が、しきりに高山を見ている。

 高山と何かあるの?ねえ。と、高山のほうを向くと、小海さんに何か問い詰められている。きっとアテンダントの子のことだろう。

 もう一度アテンダントの子のほうに向くと、その子は同僚の人と何か話した後、高山のほうに向かって来た。

 

 

「高山君!」

 

「は、はい!」

 

 

 と、アテンダントの子に話しかけられた高山は、緊張してか声が大きくなっていた。

 だが、その子の名札を見ると、緊張が解けたようだ。

 

 

「なんだ、札沼(さっしょう)か……」

 

「なんだ、とは失礼ね」

 

 

 札沼と呼ばれた子はわざとらしく怒ったような声になる。

 

 

「ごめんて。で、どうしてここに札沼が?」

 

「何でって、高山君と同じよ」

 

「ああ、そういえば、札沼はアテンダント希望だっけ。……でもまさか北斗星で会うなんてな」

 

「ふふ、驚いたでしょ」

 

 

 彼女はドッキリが成功したかのように笑った。

 そして高山はその子を改めてみんなに紹介する。

 

 

「彼女は札沼まり。俺のクラスメイトだ」

 





 さて、前回やらなかった元ネタ解説です。

オロハネ25:正式には24系25形客車。一人用A個室寝台と2人用B個室寝台が中にある。ちなみに、現実世界では、“ロイヤル”が中央部に存在する車両は、オハロネ25_501ただ1両だけである。

 ああ、早く4巻の内容を書き始めたい。あの話が個人的に好きな話です。

 次回投稿日は未定です。
 誤字脱字などがありましたらご報告下さいますようお願いします。
 
 それでは。

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