RAIL WARS ! ~車掌になりたい少年の話~   作:元町湊

11 / 45
 こん○○は。
 取材とか言っておきながらも、結局行かずに今回の話です。
 理由、もとい本音は、単に面倒になったからと、それを使う予定の話がボツになったからです。ごめんなさい。

 さて、大方予想はついてると思いますが、今回からあれです。あの事件です。
 

 それではどうぞ。 


11両目

 朝、俺は209系500番台の走行音で目が覚めた。

 と言っても、近くを走っているわけではなく、携帯のメールの着信音をそれにしているのだ。

 

 何故って?音が良いからに決まってるじゃないか。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

209系500番台:國鉄が、さすがに古くなってきた101系を置き換えるために投入した209系シリーズの一つ。主に中央総武緩行線や京浜東北線に投入された。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 カーテンを開けてみると、まだ真っ暗だった。朝かどうかすら怪しい。

 仕方ないので、充電コードを挿している携帯のパターンを入力、メールボックスを見た。

 新着メールの欄には、名前が出ていないものが一件。アドレスからして桜井だ。

 俺の携帯は、メールの文章の冒頭部分が開かなくても表示されるので、桜井が何の用件でメールを送ってきたのかはよく分かった。

 それと同時に、姉さんからの着信があった。

 

 

「もしもし……」

 

『ああ、おはよう。緊急招集だ。急いで行くぞ。列車は手配してやったから、今すぐ市川駅に行け』

 

  

 おはようじゃないよ。今何時だと思ってんの。

 

 公私使い分ける姉さんの声は、今日は公用の声で電話してきた。

 桜井のメールでもあったから、緊急招集の件は知っているが。

 

 

「はいよ……」

 

『ま、楽しみにしてるんだな』

 

 

 最後、姉さんの私的な声は、完全に目覚めてない俺の脳には入ってこなかった。

 

 携帯の時計を見ると、午前3時。

 全く、どんだけ早いんだよ……。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 さて、桜井と姉さんから教えられた緊急招集によって、俺は331系に乗って東京駅まで

来た。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

331系:元営業車の試験車。営業運転で故障が頻発したために運用離脱。以降は事業用車として主に乗務員訓練、線路状態の検査などで走ることがある。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 現在の時刻は午前4時15分。俺は東京駅の中を公安室に向けて歩いていた。

 

 というか、これって桜井の願い事が叶ったってことだよな。

 

 どうやら東京駅の神様は、桜井に甘いらしい。

 明日こそは、俺と高山の願いをかなえて欲しいものだ。

 

 いつもと同じように、Ip○Dで音楽を聞きながら、俺は歩く。

 部屋に着き、挨拶をする。気づいた人が「おはよう」と言ってくれた。

 で、警四の部屋に行くと、飯田さんがニコニコしながらそこにいた。

 

 

「そー君、おはよう」

 

「おはようございます、飯田さん。一つ聞きたいんですけど、“緊急招集”って、何があったんですか?」

 

 

 緊急事態になったら召集することもあるらしいが、研修生まで呼び寄せるということはほとんどないらしい。

 

 

「ん~?何でもRJから、横浜駅で大規模な列車妨害工作を行う、って犯行予告されたらしいの。それで、東京中央鉄道公安室(うち)から第一班から三班までの全員が、そこに借り出されるのね。そうなると、ここに誰もいなくなるから、警四の緊急招集があったわけ」

 

 

 まあ、國鉄にいる以上、RJは敵なんだが、今日ばかりはgjと言いたい。

 

 

「ま、そういうわけで、今日は忙しくなると思うから、がんばってね」

 

「今日はいつもよりがんばれますよ。いいことがありましたからね」

 

「何があったの~?」

 

 

 俺はここまであったことを話し始めた。

 

 

 

 

 

 出動のための装備の準備を、飯田さんとしていた。

 午前5時20分頃、高山が到着した。

 

 

「おはようございます!」

 

「はい、おはよう~。高山君」

 

「おーっす」

 

「飯田さん、外すごい人ですね。一班から三班までの方が……」

 

「その話は全員揃ったときに話すから、今は着替えてきて」

 

「は、はい!」

 

 

 高山は更衣室に向かった。

 その後、桜井、岩泉、小海さんの順に到着した。

 全員が着替え終わり、警四の部屋に集まった。

 全員を見渡し、飯田さんは真面目な顔で話し始めた。

 

 

「話をしよう。あれは今から36万……」

 

「飯田さん、そのネタは誰も知らないと思いますよ」

 

「え!?」

 

 

 突如飯田さんはボケに走った。

 が、俺以外の全員はネタが分からなかったらしく、突然変わった飯田さんの口調に首を傾げていた。

 

 

「前置きはいいです。早く話してあげてください」

 

「ちぇ~。……ごほん。え~、今日はRJからの犯行声明があり、ここには私たち以外、誰もいなくなります。それではまずいので、今日、緊急招集で君たちを集めることになりました。あ、もうすぐ集会をやるから、みんな外に出て~」

 

 

 飯田さんに言われたので、皆で外に出る。と言っても、警四の部屋の外、という意味であって、屋外ではない。一応注意。

 外に出ると、一班から三班の人でごった返していた。俺達もその中に混ざる。

 と、姉さんがやってきた。

 つけている装備が歩くたびにカチャカチャと音を立てる。

 皆の前に立ち、差し出されたマイクを断ると、部屋に響くような大声で話し始めた。

 

 

「諸君!ごくろうである。既に知っていると思うが、昨日深夜にRJより、横浜駅での大規模列車妨害工作を行う、との予告を受けた。密かにテロ行為を行うよりは、正々堂々としていて感心するが、反対に言えば、これは我々に対する挑戦だ!」

 

 

 こういった場所で姉さんを見るのは初めてだが、その姿はかっこよかった。

 広い室内でも問題なく通る姉さんの声は、さらに話を続ける。

 

 

「RJにどんなまともな主張があろうとも、お客様の足である列車の妨害をする奴は全て私の敵だ!だから、どんな手段を使っても叩き潰す!すまないが、協力を頼む」

 

 

 姉さんがそう言うと、部屋に集まった人たちが声を一斉に上げる。

 

 

「では行くぞ!」

 

 

 その言葉に隊員達は一斉に準備を始める。

 その間、姉さんは俺達のいるほうに来た。

 

 

「高山。東京駅(ここ)警四(おまえたち)だけになるが、よろしく頼む」

 

「は、はい!がんばります!」

 

 

 高山が手を挙げて敬礼する。それを見た姉さんは、

 

 

「それは、室内ではいいと言ったろう?」

 

 

 と言って、俺と飯田さんの方に顔を向けた。

 

 

「それじゃあな、宗吾、奈々。警四だけに負担になるが……」

 

「大丈夫よ、瞳」

 

 

 飯田さんはいつものような優しい笑顔で言った。

 

 

「姉さんこそ気をつけてね」

 

「ああ、RJごときに遅れはとらんさ」

 

 

 と言って、部屋を出る。そのあとにぞろぞろと隊員が続く。

 飯田さんの話によると、この後専用列車で横浜に向かうらしい。

 高山と岩泉は驚きの目で、桜井と小海さんは「本当だったのね」って顔で俺を見ている。

 

 

「というわけで、今日は私達しかいません」

 

 

 全員が出て行った広い部屋で、飯田さんは高山たちの驚きを無視して話を進めた。

 

 

「いつもより仕事が多く、忙しいと思うけど、がんばっていこ~!」

 

「朝早い上に、忙しいのかよ……」

 

 

 何故か無駄にテンションが高い飯田さん。その前で、明らかに嫌そうな顔をする岩泉。

 テンションが高いままの飯田さんは、そんな岩泉に向かって、

 

 

「まあまあ岩泉君。早く来たご褒美に、お昼はカツカレー弁当奢ってあげるから、頑張ってよっ」

 

「わっかりました~!頑張ります!飯田さん!」

 

 

 早っ!変わり身早っ!

 飯田さんが一瞬で岩泉を手なずけ、仕事を始める。

 担当は班長代理である高山が割り振った。

 

 こうして長い長い一日が始まる。

 

 

 




元ネタ解説

 331系:E331系が元。JR初の設備満載で登場したが、営業運転中に故障が頻発。更新更新アンド更新をしてきたが回復せず、今は北長野にいる。
 私が最も好きな車両。これに乗って通学したかった。

 209系500番台:209系、通称“走ルンです”のシリーズの一つ。
 209系は、重量半分、価格半分、寿命半分をコンセプトに開発された車両で、その中でも500番台は、総武緩行、京浜東北線に溜まっていた103系を駆逐するために投入された。
 あくまでも後継機(E231)が出るまでのつなぎだったので、それほど製造はされていない。
 JR東のみで開発、製造した。(他の車両は、川崎重工とか東急車輛製造(現、総合車両製作所)も作っている)

 補足;“走ルンです”は、使い捨てカメラの“写ルンです”をもじったもの。
 補足:500番台に使われている、三菱GTO-VVVFの走行音は私が個人的に好きなので、登場させてみた。一回聞いてみるといい。


 相変わらず次回は未定です。
 今、並行してオリジナルの話のほうも書いていますので、楽しみにしていただけたらなと。
 あ、言い忘れが一つ。
 私鉄は基本的に大東急になっています。予めご了承ください。

 それでは。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。