プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第九十四話:ロイヤルレインボーバースト

1、諦めない心

 

 スマイルプリキュアは、レインボーバーストをバッドエンドプリキュアに破られ、バッドエンドプリキュアの前に敗北した。バッドエンドプリキュア達は、楽しみにしていたスマイルプリキュアとの戦いだったが、呆気なく決着した事に、落胆の表情すら浮かべていた・・・

 

「エェェ!?もうちょっと強いと思ってたのになぁ・・・」

 

「ウチらの事、偽物言うとったなぁ?ほな、その偽物に負けたあんたらは何やろうなぁ?」

 

「キャハハ!私達が強すぎたんだからしょうがないよ!!」

 

「チッ、こんな奴らに、バッドエンドバーストを使う事も無かっただろう・・・」

 

「そうね・・・アカンベエで十分だったようね」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの蔑む声が、スマイルプリキュア達の耳にも聞こえて来る。だが、反論したくても彼女達は出来なかった。バッドエンドプリキュア達の言葉は、事実だったのだから・・・

 

 俯きながらも、悔しげな表情を浮かべるサニーとマーチ、一度はピエーロさへ退けた事で、慢心していた二人の自信は打ち砕かれた。ハッピーの脳裏に、ダークドリームの言葉が思い返されてくる。友情の大切さを知った、バッドエンドプリキュアは強いと言う言葉を・・・

 

(ダークドリームの言う通りだった・・・)

 

 自信を失いそうなスマイルプリキュア達、駆け寄ったあゆみとキャンディの言葉も、彼女達の心には届かなかった。一方銀玉となって更なる強化をされた自転車アカンベエ相手に、キュアソードもまた苦戦していた・・・

 

「そんなぁ!?ホーリーソードを跳ね返すなんて・・・」

 

 ソードの必殺技ホーリーソードも、強化されたアカンベエの前では通用しなかった。車輪をグルグル回したアカンベエの衝撃波を受け、ソードはスマイルプリキュア達の側に吹き飛ばされた。

 

「ソード!」

 

 思わずアン王女は、顔色を変えソードの名を叫ぶと、ソードは朦朧とする意識の中、

 

(エッ!?今、アン王女の声が聞こえたような・・・)

 

 アン王女の声が聞こえた気がして、ソードは思わず辺りをキョロキョロするも、その油断をアカンベエは見逃さず、ソードはアカンベエの衝撃波を再び受け吹き飛ばされる。険しい表情を浮かべながら、アン王女はあゆみに話し掛け、

 

「あゆみさん、キャンディを連れてこちらに!」

 

「でも・・・」

 

「失礼ながら、今のあゆみさんでは、返って彼女達の負担を増やしてしまうだけですわ!」

 

「・・・わ、分かりました!キャンディ!!」

 

 あゆみは軽く唇を噛むも、アン王女が言って居る通り、エコーになれない自分では、返ってハッピー達の迷惑になると思い、キャンディを連れてアン王女の下に戻った。

 

((あゆみ・・・))

 

 そんな悔しげな表情を浮かべるあゆみを見て、グレルとエンエンは思わず手に力を込めた。

 

 アカンベエは、ヨロヨロしながら立ち上がったソードと、スマイルプリキュアに対し、両手でペダルを回し始めると、身体に付いたタイヤが高速で回転しだし、そこから先程以上の衝撃波を出して、六人のプリキュアを攻撃した。パワーアップしたアカンベエに対し、一同は劣勢に陥り悲鳴を上げた。バッドエンドプリキュア達は、そんなプリキュア達を見て残念そうな表情を浮かべると、

 

「アァア、私達だけじゃなくて、アカンベエ相手にもあんなに苦戦しちゃう何て・・・」

 

「正直、ガッカリやなぁ」

 

「私達を偽物何て言うから、罰が当たったんだよ!」

 

「しかし、不甲斐ない奴らだなぁ・・・」

 

「今のスマイルプリキュアは、私達に敗れた事にショックを受けた抜け殻同然・・・そんな彼女達なら、アカンベエでも十分でしょう!」

 

 バッドエンドビューティは、状況を冷静に分析し、自分達に敗れた事で、スマイルプリキュアは精神的に弱っている事を見抜いた。あゆみに抱かれていたキャンディは、ハッピー達の危機を目の前で見ると、目に涙を為ながら、

 

「ハッピー!みんなぁ、頑張るクルゥゥ!!キャンディも、キャンディも一緒に戦うクルゥゥ!!」

 

 そう叫んだかと思うと、キャンディはその場で藻掻き、あゆみの手からスルリと逃れると、ハッピー達の下へと再び駈け出した。

 

「「「「「キャンディ!?」」」」」

 

  泣きながらこちらに駆け寄って来るキャンディに気付き、ハッピー達は思わずハッと我に返り、

 

「キャンディ、来ちゃ駄目!」

 

「ウチらは大丈夫や!」

 

「うん、だからそこで見て居て!」

 

「あたしたちは・・・こんな事で挫けない!」

 

「諦めるものですか・・・皆さん!」

 

「みんなぁ・・・分かったクル!」

 

 ビューティの合図の下、再びプリンセスキャンドルを手に持った五人が、プリンセスフォームに変化し、キャンディは、スマイルプリキュアの言葉を信じ、その場に立ち止まり力強く頷いた。バッドエンドプリキュア達は、そんな彼女達を見ると口元に笑みを浮かべ、

 

「へえ、またレインボーバーストを使うんだぁ?」

 

「お手並み拝見といこうやないか!」

 

 バッドエンドハッピーが、バッドエンドサニーが、成り行きを見守った。

 

「届け!希望の光!!」

 

「「「「羽ばたけ、未来へ!」」」」

 

 五人は五色のペガサスに跨るや、上空高く舞い上がった。五色のペガサスは、上空で宙返りすると、

 

「「「「「プリキュア!レインボー・バ~~スト!!!!!」」」」」

 

 自転車アカンベエ目掛け、レインボーバーストが放たれた。それにタイミングを合わせたかのように、ソードがジャンプしながらホーリーソードを放った。二つの技が合わさり、その勢いのままアカンベエ目掛け飛んだ。アカンベエは、大汗かきながら必死にペダルを漕ぎ、タイヤをフル稼働させると、衝撃波を放ちプリキュア達の技を相殺させた。バッドエンドピースは、口に手を当てて笑いを堪える表情で、

 

「プププ、残念でしたぁ!」

 

「結局口だけかよ?」

 

 バッドエンドマーチも不愉快そうに吐き捨てるも、ただ一人バッドエンドビューティは、ハッとしたようにスマイルプリキュアを指差し、

 

「いえ、彼女達の目を良く見て見なさい!彼女達は・・・まだ諦めてない!!」

 

 バッドエンドビューティの言葉を表すように、何度もレインボーバーストを試みるスマイルプリキュア達、その行為に刺激されたかのように、

 

「キャンディも、キャンディも、みんなと・・・みんなと一緒に戦うクルゥゥゥゥ!」

 

 キャンディの絶叫と共に、キャンディの背後から、オーラのように鳥のような炎のシルエットが沸き上がった。

 

 

 雲の園・・・

 

 ハッとして首を上げた鳳凰は、何かに呼ばれたような気配を感じ、塔から飛び立ち、下界へと向かった。

 

「長老、鳳凰はどうしたんでしょうか?」

 

 ムササビのような妖精に聞かれた、長老と呼ばれた白い髭を蓄えた老人は、小首を傾げながら、

 

「さあのう・・・嘗て闇に世界が飲まれた時のように、鳳凰は何かの気配を感じたのやも知れんのう・・・」

 

 二人は、下界に舞い降りた鳳凰の姿が消え去るまで目で追った・・・

 

 

 

 スマイルプリキュアの力になりたいと願ったキャンディ、更にあゆみにも異変が起こり、

 

(みんな、みんな頑張ってる!私も・・・みんなの力になりたい!もう一度、もう一度だけでも良い・・・私もキュアエコーになって、みんなと一緒に・・・戦いたい!!!)

 

 そう心に願ったあゆみ、その願いを叶えるかのように、あゆみとグレル、エンエンの身体を白い光の柱が包み込んだ。スマイルプリキュアも、ソードも、アン王女も、その光景に驚き、

 

「あゆみちゃん!?これは、メルヘンランドであゆみちゃんが、初めてエコーになった時と同じ光?」

 

「せや!なら、あゆみは・・・」

 

「そうだよ!きっとあゆみちゃんは・・・」

 

「うん!再びエコーに・・・」

 

「エエ、再びキュアエコーに・・・」

 

「「「「「変身出来る!!」」」」」

 

 ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの瞳に、輝きが宿ったのに反し、バッドエンドプリキュア達は、皆怪訝な表情で光に包まれたあゆみを見た。キャンディも嬉しそうに光の柱を見て居ると、キャンディの心に誰かが話し掛けてきた。

 

(キャンディ、キャンディもあゆみに力を貸して欲しいデデ)

 

「クルゥ!?」

 

(あゆみを再びプリキュアにしたいと思っている、グレルとエンエンが揃った今、キャンディが三人に力を貸してくれれば・・・)

 

((あゆみは、必ず再びエコーになれる!!))

 

「その声・・・アンデ!ルセン!二人の声が聞こえるクルゥ!!分かったクルゥ!!」

 

 キャンディはコクリと頷くと、ロイヤルクロックを取り出した。あゆみと共に、白い柱の中に居たグレルとエンエンは大慌てで、

 

「ウワァァ!?何だこれは?」

 

「ぼ、僕達、一体どうなっちゃったの?」

 

「これは、あの時の!?だったら・・・アンデ!ルセン!居るんでしょう?お願い、私はもう一度プリキュアに・・・キュアエコーになりたいの!!お願い、力を貸して!!!」

 

「「エェェ!?」」

 

 驚愕するグレルとエンエンを余所に、あゆみは必死にアンデとルセンに話し掛け、もう一度エコーになれるように力を貸して欲しいと願った。キラキラ輝く光の中から、あゆみの持って居たスィンクパクトと、真っ二つに折れたリボンデコルが姿を現わし、あゆみとグレル、エンエンの耳に声が聞こえてきた。

 

「あゆみ、あゆみとキャンディの強い願いが合わさった今なら、あゆみをもう一度エコーに出来る筈!」

 

「あゆみはスィンクパクトを、グレルとエンエンはリボンデコルを手に持つセセ」

 

「そして、三人で願うんだ!」

 

「「もう一度、あゆみをキュアエコーにって!!」」

 

「そうすれば、あゆみはエコーになれるのか?」

 

「僕、やるよ!」

 

 グレルとエンエンは頷き合い、二人であゆみを見つめると、あゆみもコクリと頷いた。三人は気持ちを合せたかのように、

 

「私を!」

 

「「あゆみを!」」

 

「「「もう一度、キュアエコーに!!」」」

 

「みんなの力を合わせるクルゥ!」

 

 キャンディは、ロイヤルクロックの上に付いているボタンをカチリと押した。針が数字の1を指さすと同時に、あゆみ達を覆っていた光の柱が消え去り、グレルとエンエンが、そして、目を瞑って居たあゆみの目がゆっくり開いた。

 

「あゆみ、今スィンクパクトは・・・スマイルパクトへと進化したデデ!」

 

「その力で、スマイルプリキュアを助けて上げてセセ!」

 

「「六人目のスマイルプリキュア!キュアエコーとして!!」」

 

(私が、六人目のスマイルプリキュア・・・)

 

「「「あゆみちゃん!」」」

 

 ハッピー、ピース、マーチが、

 

「あゆみ!」

 

 サニーが、

 

「「「あゆみさん!」」」

 

 そして、ビューティ、ソード、アン王女が、皆口元に笑みを浮かべながら、あゆみの姿を見た。

 

 あゆみの手には・・・スィンクパクトが進化し、ハッピー達と同じスマイルパクトが握られ、真っ二つになっていた白いリボンデコルは、完全に元の姿を取り戻していた。

 

「ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、私も一緒に戦う・・・スマイルプリキュアとして!」

 

 あゆみは、スマイルパクトを開き、リボンデコルをスマイルパクトにセットすると、

 

「プリキュア!スマイルチャ~~ジ!」

 

 あゆみはそう叫ぶと、スマイルパクトのパフを、身体の光輝く場所に付けていくと、あゆみの身体を、光の衣装が覆っていく。髪は茶色からクリーム色へと変化し、両脇をリボンで止めている三つ編みの髪が、足下まで伸び、胸とお腹辺りに大きなリボンを付けた、嘗てと同じ、キュアエコーの姿へと・・・

 

「思いよ、届け!キュアエコー!!」

 

 キュアエコーは、六人目のスマイルプリキュアとして、再びその姿を露わにした!!

 

 

2、プリンセスエコー

 

 キュアエコー、復活!

 

 エコーは、力を貸してくれたグレル、エンエン、そしてキャンディに微笑み掛け、アカンベエに苦戦するスマイルプリキュアとソードに合流した。

 

「ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、私も一緒に戦う!六人目のスマイルプリキュア・・・キュアエコーとして!!」

 

「ウン!またエコーと一緒に戦える何て!!」

 

「ホンマや!しかも、ホンマに六人目のスマイルプリキュアになるとは驚きや!!」

 

「うん!新たなポーズも考えなきゃね!!」

 

「アハハ、そうだね・・・でもその前に」

 

「はい、アカンベエを浄化しましょう!」

 

 エコーが加わり、ハッピー達は、気力が漲ってくるかのように感じられた。更に、そんな彼女達の耳に、鳥のような声が聞こえると、見る見るその物体は下降し、キャンディの前へと降り立った。それは雲の園からやって来た鳳凰で、鳳凰は周りをキョロキョロすると、キャンディは不思議そうに小首を傾げ、

 

「ちみは誰クル?」

 

「ひなたを呼んだのは君かい!?・・・・君からは、ポルンやルルンと同じような気配を感じる!あっちの子達からは、ひかりやほのかと同じような力も感じる!あっちの子達は・・・どことなくなぎさに似て居るような気も・・・」

 

 鳳凰は、キャンディを見てポルンとルルンを、スマイルプリキュアを見てひかりとほのかを、バッドエンドプリキュアを見てなぎさを思い出していた。キャンディは目を見開いて驚き、

 

「ポルンとルルンを知ってるクル!?二人共、キャンディの友達クル!」

 

「ひかりさんやほのかさん、なぎささんの事も知ってるの?」

 

 鳳凰はひなたと名乗り、ポルンとルルン、ひかり、ほのか、そしてなぎさの名を出した事で、キャンディも、ハッピーも少し驚いた表情を見せた。ひなたも驚いたような表情を浮かべ、

 

「ポルンとルルンの!?二人はひなたの友達!ひかりやほのかもひなたの友達!なぎさも・・・一応友達!」

 

 ひなたはスマイルプリキュアを見ながらそう呟いた。呆気に取られていたバッドエンドプリキュア達だったが、

 

「何かあの鳥・・・ブラック先輩には棘のある言い方してたね?」

 

「ブラック先輩、何かしたんやろうか?」

 

「足の臭いを嗅がせたとか?」

 

「焼き鳥にしようとしたとか?」

 

 鳳凰の言葉を聞いたバッドエンドピース、サニー、ハッピー、マーチが、あれこれ推測していると、バッドエンドビューティは溜息を付きながら、

 

「ハァァ・・・あなた達、ブラックに聞かれたら怒られるわよ?」

 

「「「「エへヘヘヘ」」」」

 

 バッドエンドビューティは、呆れたように仲間達を諭すと、四人は同じような仕草で舌をペロッと出して頭を掻いた。

 

((ブラック先輩!?))

 

 ソードとアン王女は、バッドエンドプリキュア達が、ブラックの事をブラック先輩と呼んだ事に眉根を顰めた。

 

「ポルンやひかりの友達なら・・・君達もひなたの友達!君からはひなたに近い力を感じる・・・ひなたの力を君に貸して上げる!!」

 

 ひなたの身体が光に包まれると、エコーは温かな力に包まれた・・・

 

(この力・・・心が安らいでくる!)

 

 エコーは目を閉じ、心地良い気持ちに身を預けていると、エコーの目の前にゆっくりと何かが舞い降りてきた。不思議そうにエコーが手に取ってみると、

 

「これは・・・プリンセスキャンドル!?」

 

「「「「「エッ!?」」」」」

 

 エコーの手にもプリンセスキャンドルが握られた事で、ハッピー達五人も思わず驚きの声を上げた。エコーは、手に取ったプリンセスキャンドルをマジマジと見つめると小首を傾げ、

 

「でも、みんなのと違い、私のはフェニックスのような顔が付いてる・・・」

 

「そう、それがひなたが君に与えた力!ひなたが分けた力を、そのアイテムに変えたんだ!!」

 

「私にも、プリンセスキャンドルが・・・ウン!!」

 

 エコーは頷き、プリンセスキャンドルを空に向けて掲げると、

 

「鳳凰よ、私に力を貸して!!」

 

 エコーの身体を光が包み込み、ハッピー達と同じようにエコーの姿が変化していった。ハッピー達と同じ光のドレスのような衣装を纏い、お腹に付いていた大きなリボンは、胸のリボンと合わさったかのように、より一層大きなリボンが胸に装着された。頭には天使の輪のような光のリングが装着され、中央には王冠のようなアイテムが、その両脇には光の羽根のようなものが付いていた。エコーのツインテールの髪は更に伸び、内巻きにカールされていた先端の髪が、膝までカールされていた。

 

「プリンセスエコー!!」

 

 プリンセスキャンドルを手に持ったエコーが身構えた。

 

「今クル!みんなの力を合わせるクルゥゥ!!」

 

 キャンディは、もう一度ロイヤルクロックの上に付いているボタンをカチリと押した。針は動き、数字の2に合わさると、ロイヤルクロックからフェニックスが舞い上がり、エコーの身体を包み込み上昇させる。エコーはプリンセスキャンドルをスマイルプリキュアに向けて構えると、エコーの背後に、巨大なフェニックスのシルエットが浮かんだ。

 

「集え!五つの希望の光!!」

 

「「「「「羽ばたけ、光輝く未来へ!」」」」」

 

 ハッピー達五人は、五色のペガサスに跨るや、エコーに導かれるように上空高く舞い上がった。五色のペガサスは、上空でフェニックスと合わさると、フェニックスは命を宿したかのように咆哮を上げた。

 

「「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー・バ~~スト!!!!!!」」」」」」

 

 エコーも加わり、レインボーバーストはロイヤルレインボーバーストへと進化し、フェニックスの口から、強烈な虹のエネルギー波がアカンベエ目掛け放たれた。アカンベエは必死にペダルを漕ぐも、ロイヤルレインボーバーストは、一瞬でアカンベエを包み込んだ。ハッピー達六人は、キャンドルの炎を吹き消し、キャンドルをクルクル回してアカンベエに背を向けポーズを決めると、

 

「「「「「「輝け!ハッピースマイル!!」」」」」」

 

 背後で爆発が起こり、アカンベエは浄化された・・・

 

「ロイヤルレインボーバースト!?」

 

「ヘ、ヘエ、中々やるやん!」

 

「ウッ・・・で、でも、私達のバッドエンドバーストの方が凄いもん!」

 

「そうでなくちゃな・・・燃えてきた!」

 

「甘く見ない方が良いわ!あの力、以前とは比べものにならないわ!!」

 

 バッドエンドプリキュアの目の色が変わり、再びスマイルプリキュアの六人と視線を交差させた。

 

 

3、止めなさい!

 

 ソードは、キラキラ目を輝かせながら、六人となったスマイルプリキュアを見つめると、

 

「ロイヤルレインボーバースト・・・凄い!これなら、バッドエンドプリキュアにだって負けない!!」

 

 再び希望を見いだしたように、ソードはスマイルプリキュアを見つめた。バッドエンドプリキュア達は、再びスマイルプリキュアに近付くと、

 

「アカンベエをやっつけたんだ・・・ねえ、もう一回私達と勝負しよう!」

 

「ウチらのバッドエンドバーストと、あんたらのロイヤルレインボーバースト」

 

「どっちが上か勝負しよう!」

 

「今度は歯応えありそうだな・・・勝負だ!!」

 

「・・・・油断はしない!こちらも本気で行く!!」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティから、再び勝負を挑まれたスマイルプリキュアの六人、六人は顔を見合わせ合うと、互いに頷き合い、

 

「分かった!その代り、他のみんなに手出ししないで!!」

 

「もちろんしないよ!」

 

 一同を代表したハッピーが勝負を受け、バッドエンドハッピーも、他の妖精やソード達に手を出さない事を約束する。再び一定の距離を取って見つめ合う両チーム、その時アン王女の側で赤く発光し、せつなが姿を現わすと、その側には咲達四人、のぞみ達六人、ラブ達三人、つぼみ達三人、響達四人に、ひかりとほのか、ゆりの姿があった。

 

「じゃあ、私はなぎささんを連れて来るわね!」

 

「うん!お願いね、せつなさん!」

 

 ほのかの言葉にせつなは軽く頷き、再び何処かへと消え去った。えりかは首を傾げながらほのかに話し掛け、

 

「なぎささんと連絡取れないの?」

 

「さっきなぎさからメールが来て、今家庭教師が終わったから、迎えに来て欲しいって連絡があったの!それでせつなさんに頼んで・・・」

 

 そうほのかが話して居ると、くるみの背後が赤く発光し、なぎさを連れたせつなが戻って来た。くるみはそれに気付かず、思わず変顔を浮かべると、

 

「なぎさに家庭教師のアルバイトを頼む何て・・・随分酔狂な人も居るわね?」

 

「く、くるみ、言い過ぎよ!」

 

 ほのかの話を聞いていたくるみが、呆れたような表情でポツリと呟き、かれんは、頬を膨らましているなぎさに気付き、慌ててくるみを窘めた。くるみの耳にそっと顔を近づけたなぎさは、

 

「チャラララ!チャララチャラララチャララ・・・」

 

 そう何かの時代劇のテーマソングを口走り、くるみの首筋を指で押すと、驚いたくるみがパニックになり、ミルクの姿になってかれんにしがみつき、一同を笑わせる。

 

「ミルク!何好き勝手言ってるのよ!!」

 

「な、なぎさ!?脅かさないでミル・・・」

 

「私が居ないと思って、好き勝手言ってくれちゃってさ」

 

 なぎさが頬を膨らませながら、ミルクに文句を言っている姿を見たほのかは、思わずクスリと笑い、

 

「家庭教師って言っても・・・体育の家庭教師で、走り方を教わりたいんですって」

 

「そうそう、走り方教えてお金貰える何て、良いアルバイト見付けたわ!」

 

 なぎさが腕組みしながらウンウン頷いてると、

 

「成る程、そう言えば最近、子供が駆けっこで速く走れるように、家庭教師を依頼する人が居るとか、前にテレビでやってたのを観たよ!」

 

 響もウンウン頷きながら、納得した表情を浮かべた。雑談に興じて居た一同であったが、ハッピー達とバッドエンドプリキュア達が、睨み合う状況に気付いた。なぎさは顔色を変え、

 

「な、何!?何でハッピー達とバッドエンドプリキュアが?」

 

 満と薫は、動揺するなぎさや他の一同に教えるように、

 

「バッドエンドプリキュアは、新たに五人で繰り出す必殺技を編み出したの!」

 

「さっき私と満も、バッドエンドプリキュアと必殺技勝負をしたんだけれど、私達は、彼女達のバッドエンドバーストに敗れた!」

 

「エェェェェ!?」

 

 満と薫が、バッドエンドプリキュアに敗れたという報告を聞き、一同は思わず声をだして驚愕した。二人がプリキュアになったブライトとウィンディの実力は、一同も良く知っていたのだから・・・

 

 なぎさは改めてバッドエンドプリキュアの五人を見つめ、

 

「バッドエンドバースト!?あの子達、何時の間に・・・」

 

 一同に説明を終えた満は、顔から汗を滴り落としながら、

 

「不味い!今のあの子達じゃ、バッドエンドプリキュアには・・・・・エッ!?エコー?みんな、見て!あゆみがエコーの姿になってるわ!!」

 

「本当だ!あゆみちゃん、何時エコーになれるようになったんだろう?」

 

 指を指した満に釣られるように、一同がエコーに気付いてざわめき、ラブは不思議そうに首を傾げた。ひかりはハッとして何かに気付くと、

 

「なぎささん、ほのかさん、あそこにひなたも居ます!」

 

「「エッ!?」」

 

 ひかりの指さす場所を見ると、確かにひなたがキャンディの側に居て、ハッピー達とバッドエンドプリキュア達を見つめていた。なぎさは困惑し、

 

「一体、何がどうなってるの?」

 

 アン王女は、一同がやってきた事に気付き、グレルとエンエンを伴い一同に近付くと、

 

「それは、わたくしからお話致しますわ!」

 

「アン王女!?何時こっちに?」

 

「ええ、グレルとエンエンの付き添いで今日こちらに、何故あゆみさんがキュアエコーになれたかと言うと・・・・・」

 

 アン王女は、手短に状況を一同に知らせた。ハッピー達がバッドエンドプリキュア達に必殺技勝負を挑まれた事、一度はレインボーバーストを破られ敗北したものの、ハッピー達を信じるキャンディやあゆみ、諦めないハッピー達の思いが奇跡を呼び、グレルとエンエン、そしてキャンディの力を借りてエコーに復活出来た事、ひなたが力を貸しに来てくれた事を語った・・・

 

 そんな中、遂に両者が動き、バッドエンドプリキュア達は右手を合わせると、

 

「「「「「ドラゴンよ!私達に力を!!」」」」」

 

 バッドエンドプリキュア五人の思いが一つになった時、五人の身体から黒いオ-ラが沸き上がり、オーラは黒き竜へと姿を変えた。五人の手には、先端に竜の顔を象ったロッドが握られ、見る見るバッドエンドプリキュアの姿を変えていった・・・

 

「ダークプリンセスハッピー!」

 

「ダークプリンセスサニー!」

 

「ダークプリンセスピース!」

 

「ダークプリンセスマーチ!」

 

「ダークプリンセスビューティ!」

 

「「「「「バッドエンドプリキュア!ダークプリンセスフォーム!!」」」」」

 

「ダークプリンセスフォーム!?」

 

(あれが、前にバッドエンドプリキュア達が言ってたダークドラゴン!?)

 

 なぎさ達は、スマイルプリキュアにそっくりになったバッドエンドプリキュアを見て、更なる驚きを見せた。

 

 キャンディは、再びロイヤルクロックの上に付いているボタンを押すと、針は数字の3を指し、

 

「集え!五つの希望の光!!」

 

「「「「「羽ばたけ、光輝く未来へ!」」」」」

 

 ハッピー達五人は、五色のペガサスに跨るや、エコーに導かれるように上空高く舞い上がった。五色のペガサスは、上空でフェニックスと合わさると、フェニックスは命を宿したかのように咆哮を上げた。

 

「「「「「「プリキュア!ロイヤルレインボー・バ~~スト!!!!!!」」」」」」

 

 ハッピー達は再びロイヤルレインボーバーストの態勢に入り、負けずとバッドエンドプリキュア達も、

 

「轟け!絶望の闇!!」

 

「「「「堕ちよ!闇の世界へ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!バッドエンド・バ~~スト!!!!!」」」」」

 

 巨大な闇の竜の背中に乗ったバッドエンドプリキュア達は、巨大な闇の竜の口から黒いブレスを放った。再び激突した両者の技と技、その威力は拮抗し、互いの中間地点で燻(くすぶ)り合った。見て居た一同からざわめきが沸き起り、

 

「あれが、エコーが加わったロイヤルレインボーバースト・・・」

 

「そして、あっちがバッドエンドバースト・・・」

 

「両方共凄い威力ね?」

 

 ゆりが、のぞみが、エレンが、両者の攻防を見て思わず呟き、ジィと見て居たほのかは、

 

「不味いわね・・・あのまま続けさせたら、空間で蓄積されたエネルギーが膨れ暴発し、ハッピー達も、バッドエンドプリキュアも、互いの衝撃で吹き飛んでどうなるか分からないわ!」

 

 ほのかの言葉を聞いた瞬間、なぎさはほのかの手を掴むと、

 

「ほのか、力を貸して!あの子達を・・・止める!!」

 

「待って、なぎさ!無茶・・・・・なぎさ!?」

 

 なぎさが、この戦いを見て居られないと言いたげに、今にも泣き出しそうな表情を浮かべているのに気付いたほのかは、なぎさにコクリと頷き、

 

「分かったわ!止めましょう、彼女達を・・・」

 

「ありがとう、ほのか!」

 

 なぎさとほのかは、互いを見つめ頷きあうと、ハートフルコミューンに手をかざし、互いの手を取り合って同時に叫び、

 

「「デュアル・オーロラ・ウェーブ!!」」

 

 二人の身体をオーロラが包み込み、なぎさとほのかを、プリキュアへと変えていく・・・

 

「光の使者・キュアブラック!!」

 

「光の使者・キュアホワイト!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!!」」

 

 ブラックとホワイトは、ロイヤルレインボーバーストとバッドエンドバーストが燻り合う中間地点目掛け駈け出すと、ひかりが、ゆりが顔色を変え、

 

「ブラック!ホワイト!」

 

「無茶よ!二人共、戻って!!」

 

 ひかりも、ゆりも、慌てて変身アイテムを手に持つも、ブラックとホワイトは、手を握り合いながら燻り合うエネルギー波に飛び込むと、

 

「あ、あんた達・・・」

 

「戦いを・・・」

 

「「止めなさぁぁぁい!!」」

 

 ブラックとホワイトは、手を繋ぎ合いながら球体状のバリアを張り、そのバリアは威力をどんどん増しながら虹色に輝きだした。

 

「エッ!?ブラック、ホワイト?」

 

「どうしてブラック先輩が?」

 

「私は・・・私は・・・あんた達が戦い合う姿何て・・・・見たくなぁぁぁい!!」

 

 ブラックの絶叫と共に、ハッピー達も、バッドエンドプリキュア達も、思わず互いに技を出すのを止め、空間に燻り合っていたエネルギーも徐々に縮小し、やがて消滅した。

 

「ね、ねえ、今バッドエンドプリキュア達・・・ブラックの事をブラック先輩って言ってなかった?」

 

「うん、あたしにも聞こえた!どう言う事?」

 

 咲に聞かれた一同、美希も咲の言葉に同意し、聞こえたと伝えると、一同も聞こえたとざわついた。そんな騒ぎも何所吹く風、ブラックとホワイトは、先ずハッピー達六人に話し掛け、

 

「みんな、怪我は無い?」

 

「大丈夫?」

 

 ブラックとホワイトに労られ、微妙な表情を浮かべたハッピー達は、

 

「怪我という怪我はしてないけど・・・」

 

「今あいつら、ブラックの事をブラック先輩言うとったようやけど・・・」

 

「どう言う事?」

 

「アハハハ、それについては後でみんなに話すよ!」

 

 ハッピー、サニー、マーチに聞かれたブラックは、苦笑を浮かべながら後で訳を話すと伝え、ホワイトは優しそうな目でエコーを見つめると、

 

「またエコーの姿になれたのね?良かった!」

 

「はい!アンデやルセン、グレルとエンエン、それにキャンディやあの鳳凰が力を貸してくれて・・・」

 

「そっかぁ・・・ひなた、久しぶり!」

 

「元気そうで何よりだわ!」

 

「ウン、プリキュア達も、ひかりも、元気そうで良かった!やっぱりこの子達は君達の友達だったんだね」

 

「うん!大切な友達・・・ひなた、エコーに力を貸してくれてありがとう!!」

 

 ホワイトは、ニッコリ微笑みながらひなたに感謝した。ひなたの話題が出た事で、バッドエンドサニー、ピース、ハッピー、マーチも会話に加わり、

 

「せや!ブラック先輩、この鳥に何かしたん?」

 

「どうもブラック先輩の事を話す時は、この鳥微妙な表情してたよ!」

 

「足の匂いを嗅がせたとか?」

 

「焼き鳥にしようとしたとか?」

 

「「「「したんでしょう?」」」」

 

「するかぁぁぁぁ!!ちょっと名前を付けて上げたら、イマイチだったようで・・・」

 

「なぎさはひなたの名前を、ポチとかタマとか、コタツとかストーブとか、どうでも良いような名前にしようとした!」

 

 その時を思いだしたのか、ひなたはジト目でブラックを見つめ、思わずブラックがたじろぐ、

 

「「居るなぁ、直ぐにそんな名前付けたがるの」」

 

 思わず二人のサニーが、同時にブラックにツッコミを入れ、ブラックが言葉に詰まる。そんなやり取りを見て居たゆり達一同、

 

「無事で何よりだわ!」

 

「何だか、さっきまで戦って居たとは思えない、和やかな雰囲気になって居るわよね?」

 

「でも、戦わないで済むなら、それが一番ですよ!」

 

 奏は、そんなブラック達を見て呆気に取られ、つぼみはそんな一同を見て目を細めた。

 

 ひなたは一声鳴くと、再び大空に舞い、ひかりの上でグルグル何度も旋回すると、雲の園へと飛び去って行った。

 

(どうして!?どうしてバッドエンドプリキュア何かと親しげに話してるの?)

 

 ソードは表情を険しくし、ブラックに抗議しようとしているのに気付いたビューティは、ソードを引き留め、

 

「ソード、理由は後でブラックが話してくれる筈です。今は、事を荒立てるのは得策ではありません!」

 

「でも・・・・」

 

 直ぐにでもブラックに問い詰めたいソードではあったが、ビューティの言葉を受け入れ、その場で拳を握って堪えた。バッドエンドプリキュア達は満足したのか、

 

「色々楽しかったし、今日は帰ろうか?」

 

「せやな、何やかんやで楽しめたな」

 

「エヘヘ、ブライトとウィンディの頭も叩けたし、一度はスマイルプリキュアに勝ったし、満足って感じ?」

 

「あたしのお腹は・・・不満足だよ!何か食べたい!!」

 

「ハァ・・・あなたは本当にお腹を良く空かせるわねぇ?」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティは、何時もの乗りをしながらバッドエンド王国に帰ろうとし、それに気付いたサニーはバッドエンドプリキュアを引き留め、

 

「待ちや!さっきの言葉は取り消すわ!!あんたらは、ホンマに強かった・・・偽物や何て言ったウチが慢心しとった」

 

 サニーが素直にさっきの偽物発言を詫びた事で、バッドエンドハッピーも笑み混じりに、

 

「それはお互い様、私達もさっきの言葉を取り消すよ!あなた達は・・・強い!!でも、私達はもっと強くなっちゃうからねぇ」

 

「せや!精々そっちも気ばっときや」

 

「スマイルプリキュア・・・益々興味が湧いてきたねぇ!」

 

「次の対決を楽しみにしているわ!」

 

「じゃあ、ブラック先輩!スマイルプリキュア!後他の・・・またねぇ!!」

 

 バッドエンドハッピー、サニー、マーチ、ビューティ、そしてピースは、そう言い残しバッドエンド王国へと戻って行った。他の仲間達も一同に近付き、プリキュアになっていた一同も変身を解いた。近付いた一同は、再びエコーになったあゆみに温かな言葉を掛けて居ると、真琴はなぎさに詰め寄り、

 

「どういう事ですか!?何でバッドエンドプリキュアに、ブラック先輩何て言われてるんですか?みゆきさん達だってそうです・・・さっきまで戦いあってたのに、どうして?」

 

「真琴、落ち着いて!いやぁ、私にも良く分からないんだけど、何だかあの子達に懐かれちゃってさぁ・・・会話してみればあの子達、根は良い子達だし・・・」

 

「良い子!?何所がですか?あの子達は、バッドエンド王国何ですよ!私達のトランプ王国から、大事な秘宝を盗み出した極悪人です!!」

 

 それまで困惑気味に聞いていたなぎさだったが、真琴がバッドエンドプリキュア達を、極悪人だと言った瞬間表情を険しくし、

 

「それは言い過ぎでしょう!大体、トランプ王国の秘宝を盗んだのはジョーカーでしょう?あの子達は関係無い!!」

 

「関係有ります!奪われた秘宝から産み出されたのが、彼女達バッドエンドプリキュア!!バッドエンドプリキュアだって盗人と同じです!!!」

 

「だから、それはジョーカーがした事でしょう?言わば彼女達だって、無理矢理産み出された被害者じゃない!」

 

 どんどんエキサイトしていくなぎさと真琴に、慌ててほのかとれいかが両者の間に入り、

 

「ちょ、ちょっとなぎさ、落ち着いて!」

 

「真琴さんも冷静になって下さい!」

 

 れいかに冷静になるように言われた真琴だったが、興奮は治まらず、

 

「被害者は私達トランプ王国です!悪から生まれた者が、良い子な訳が無い!!」

 

 その瞬間、沈黙していた満と薫の表情が険しくなり、

 

「今の言葉は聞き捨てならないわね!」

 

「なら私達は、プリキュアで居る資格は無いって、あなたは言いたいのかしら?」

 

「「私達は、元々ダークフォールで生まれた存在・・・」」

 

「そ、それは・・・私は、お二人をそんな風に何て思ってません!」

 

 満と薫に凄まれ、思わず真琴は狼狽えながらも、そんな事は思っていないと必死に弁明した。二人の事や、せつな、エレンの事、ダークプリキュア5の事は、真琴もこちらの世界に来て話は聞いていた。闇の世界で生き、プリキュアのみんなとの出会いが彼女達を変えた事を・・・

 

「真琴ちゃんが、彼女達を許せない気持ちも分かるけど、人は過ちに気付いた時、やり直せる事が出来る!」

 

「うん、バッドエンドプリキュアだってそう!彼女達が間違った道を進もうとするなら・・・」

 

「私達が、正しい道に導いて上げる・・・それもプリキュアの使命だと私は思います!」

 

「私にもあなたの気持ちは理解出来る・・・私にも、のぞみ達やみゆき達のように、もう一人の私と呼べるダークプリキュアが居た。私は、彼女とは相容れない宿敵・・・そう思っていた時もあった。でも、それが間違いだったと言う事が、ようやく後になって分かった」

 

「前にダークドリームが言ってたわよね?彼女達バッドエンドプリキュアとは、何時か並んで戦う日が来るって・・・確かにあの子達は悪い事もするけど、私にも、彼女達が絶対悪だとは思えないなぁ・・・」

 

 押し黙った真琴を労りながらも、のぞみが、ラブが、つぼみが、ゆりが、響が、真琴を諭すように語った。ジッと黙って聞いていたアン王女は、徐に束ねた髪を解き、伊達眼鏡を外すと、

 

「ソード・・・やはりあなたをこちらの世界に残していて良かった」

 

「エッ!?アン王女?ど、どうしてこちらに?」

 

「あなたには黙って居ましたが、妖精学校でもあなたの事は見ていました。まだソードと再会するのは早いと考えて居た私は、他の皆様に頼み、あなたには内緒にして置いて欲しいと頼みました。私が側に居れば、あなたの成長の妨げになると考えていました。ですが、それはわたくしのエゴだと考えを改めました・・・」

 

「アン王女・・・」

 

「良いんですか?」

 

 なぎさとほのかに聞かれたアン王女は、コクリと頷いた。再びソードを見つめて話し掛け、

 

「ソード、わたくしも、最初にバッドエンドプリキュア達が、キュアブラックをブラック先輩と呼んだ時、わたくしは思わず眉根を曇らせました。理由はあなたと同じです・・・ですが、わたくしは考えを改めました!妖精学校でグレルとエンエンが、何者かの甘言を受け、皆さんやソードの変身アイテムを奪い、あゆみさんの心を傷付けた。ですが、皆さんは、非を認めて謝ったグレルとエンエンを許し、更には自分達の仲間として受け入れた。ソード、以前あなたもなぎささん達と同じように、バッドエンドプリキュアの事を救いたいと思った事があったでしょう?」

 

「エッ!?・・・・・アッ!」

 

 アン王女の言葉を聞き、少し考えた真琴だったが、確かにそんな事があった事を思いだしていた。初めて此処に居る一同と出会った時、真琴は、対峙したバッドエンドピースの、水晶を手放すと死んでしまうという嘘を信じ、欺かれた事があった。だが、欺かれたと知る前、真琴は確かに、みんなの協力を仰ぎ、バッドエンドプリキュア達を助けて上げたいと思った事があった。

 

「思い出しましたか?そうです、欺かれたとはいえ、あなたはバッドエンドピースの言葉を信じ、何とかして上げたいと思った事があった・・・ソード、少し彼女達に時間を与えても良いのではないですか?結果はどうなるか、それはわたくしにも分かりません・・・ですが、此処に居る皆様なら、彼女達の心の中で蠢く闇を、晴らしてくれるのではないかとわたくしは思います!!」

 

 アン王女の大人の対応を聞き、なぎさは心の中で感謝しながら、真琴に話し掛け、

 

「真琴、私もつい感情的になって怒鳴っちゃったけど、もう少し時間をくれないかなぁ?彼女達は、私の前では悪さはしないって誓ってくれた!その言葉は信じられるって、私は考えてる・・・」

 

「バッドエナジーを集めに来る事も有ると思う・・・その時は、私達は当然プリキュアとして彼女達と戦う事もあるだろうけど、何時かは彼女達も分かってくれる・・・そうなれば良いなぁって、私も思うなぁ」

 

 なぎさの言葉に続き、みゆきも本心を真琴に語って聞かせた。

 

「ええ、私達と咲と舞だって、直ぐに打ち解ける事が出来た訳じゃ無い」

 

「私もそう・・・先ずは彼女達に、自分達のしている事は、駄目な事だと思って貰えるようにしなきゃね」

 

「先は長いかも知れない・・・でも、私達とバッドエンドプリキュアも、さっきのなぎさとの関係みたいに、笑い合う事が出来たら良いって私も思うわ!」

 

 満、せつな、エレンの三人も、穏やかな表情で真琴に話し掛け、真琴は戸惑いながらも、さっきのように険しい表情は影を潜めた。

 

「正直、まだ腑に落ちない点はあります・・・」

 

「うん、それは仕方無い事だと思うわ!あたし達だってそうだったし・・・」

 

「まああたし達も、バッドエンドプリキュア達の事を、まだ釈然とはしてないし、真琴もそう思い詰めないでさ、今まで通り気楽に行こう!あたし達だって、トランプ王国の秘宝を、ジョーカーから奪還する為に、協力は惜しまないしさ」

 

 美希とえりかは、真琴をフォローしながらも、今まで通り協力する事を改めて真琴に話し、真琴は力強く、ハイと答えた。のぞみは表情を和らげると、

 

「よぉぉぉし、あゆみちゃんも再びエコーになったし、アン王女も戻ってきたし、グレルとエンエンもこっちに来たし、美味しい物でもみんなで食べようよ!・・・決定!!」

 

「そうそう、この前歓迎会出来なかったしね!」

 

「なぎささんの奢りで、パァと!」

 

 のぞみの提案に、ラブと響も同意し、何時の間にか自分が奢る状況になっている事で、なぎさは見る見る変顔を浮かべ、

 

「コラァァ!ドサクサに紛れて何言ってるのよぉぉ!!」

 

「フフフフ」

 

 一同のコミカルなやり取りを見て、真琴は思わずクスリと笑い、アン王女はそんな真琴の背に優しく右手を置き、一同の後に続いた・・・

 

 

 バッドエンド王国・・・

 

 バッドエンド王国に戻ったバッドエンドプリキュア達、バッドエンドハッピーは、今日の出来事を思い返しながら、

 

「スマイルプリキュア、中々興味深かったなぁ・・・ねえねえ、前にブラック先輩に言われた事覚えてる?向こうの世界は楽しいって!」

 

「ああ、前にそないな事言うとったなぁ」

 

「でも、確かに面白いよねぇ?」

 

「そうそう、美味しい物も沢山あるし!」

 

「そうね、色々な知識を学べるのも悪く無いわね!」

 

「でしょう?だからさぁ・・・」

 

 バッドエンドハッピーは仲間達を側に集めると、小声でヒソヒソ話を始めた。見る見る一同の目は輝き、

 

「面白そうやん!ウチ賛成!!」

 

「私も、私も!」

 

「あたしも良いよ!」

 

「そうね・・・私も良いわよ!」

 

「そうと決れば・・・・・ジョーカ~~居るぅぅぅ?」

 

 大声でジョーカーの名を呼ぶバッドエンドハッピー、暫くするとトランプの舞いが現われ、見る見るジョーカーが姿を現わすと、

 

「何です、大声出して・・・何か私に用ですか?」

 

「実は・・・・・」

 

 バッドエンドハッピーは、みんなで決めた事をジョーカーに伝えると、ジョーカーは胡散臭そうな顔で、バッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチを見つめ、バッドエンドビューティと視線が合うと、

 

「まあ、あなた方だけなら許可などしませんが、バッドエンドビューティさんが一緒なら・・・まあ、良いでしょう!お好きになさい!!その代り、ちゃんとバッドエナジーを集めるんですよ?」

 

 ジョーカーの言葉を聞き、ちょっと膨れっ面をしたバッドエンドハッピーだったが、

 

「何か棘がある言い方だけど・・・分かった!」

 

 バッドエンドプリキュア達は、顔を見合わせて嬉しそうな表情を浮かべた。

 

 

 翌日、七色ヶ丘中学校・・・

 

 昨日の歓迎会で大いに騒いだみゆきは、案の定遅刻ギリギリになり、廊下を走っていると、

 

「星空さん、廊下は走らない!」

 

「ゴ、ゴメンなさい・・・あれ!?佐々木先生、机何か運んでどうしたんですか?」

 

「いえ、今日隣の1組に転入生が来たのよ!」

 

「エェェ!?だって明日で一学期終りですよ?」

 

「そうなのよ!でも生徒さん達が、どうしても夏休み前から来たいって話らしくて・・・それで足りない分の机と倚子を、私達教師が運んでるって訳」

 

「机余って無かったんですか?」

 

「それが・・・五人も転入生が入って来て、学校も大変で・・・そんな事より、早く教室に行きなさい!!」

 

「は、はい!」

 

 佐々木先生に促され、教室に向かったみゆき、遅刻ギリギリに来たみゆきを、何時ものようにあかねがからかうも、みゆきはやよい、なお、れいかも呼ぶと、

 

「隣の一組に、今日五人も転入生が来るんだって」

 

「何で!?明日で学校終りやでぇ?」

 

「五人一辺に一組に来るの?」

 

「それも不思議だねぇ・・・普通クラスを分けるよねぇ?」

 

「はい!些か気になりますねぇ・・・」

 

 みゆきからの報告を聞き、あかね、やよい、なお、れいかも、五人の転入生達に興味を持ち、

 

「後でみんなで覗いてみよう!」

 

 みゆきの提案に一同は同意し、休み時間、コッソリ一組を覗いたみゆき達は、思わず目を見開き、

 

「「「「「アァァァァァ!?」」」」」

 

 五人で大声を出しなら同じような仕草で驚愕し、他の生徒達を驚かせる。五人の転入生は、みゆき達に気付くと、倚子から立ち上がり近づいて来た。その姿は、みゆき、あかね、やよい、なお、れいかに似て居て、知らない人から見れば双子と思われる程だった。

 

「ヤッホ~~!今日からこの学校に通う事にしたからヨロシクねぇ!!」

 

「シシシシ、精々楽しませてや!」

 

「分からない事があったら教えてねぇ・・・なぁんちゃってぇ!」

 

「これで何時でもあんた達と戦えるな!」

 

「それは口実で、美味しい物でも食べ歩くんじゃなくって?」

 

「「「「「バ、バッドエンドプリキュア!?」」」」」

 

 みゆき達五人は、転入してきたバッドエンドプリキュア達を見て、思わず腰を抜かしてその場に座り込んだ・・・

 

 

            第十章:六人目のスマイルプリキュア

                    完

 

 




クリスマス前に何とか94話書き終えました!
十一章は、七章のように長くなる予定なので、じっくり頭の中の展開を形にしていこうと考えてますので、こちらに投稿するのを間空けます。

それでは読んでくださった皆さん、良いお年をお迎え下さい!!

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