プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第九十話:バッドエンドプリキュアとプリキュア達(前編)

1、なぎさが見た夢

 

 妖精学校から戻ってきた一同・・・

 

 あゆみはエンエンとグレルの力を借りれば、再びエコーになれる日が来ると聞き、一同はホッと胸を撫で下ろした。あゆみを労りながらも、一同は乗ってきた気球に乗り、それぞれ自分達の住む街へと帰り、アン王女と妖精達は、その姿が見えなくなるまで手を振り続けた・・・

 

 

 その夜なぎさは、妙な夢を見て居た・・・

 

 闇の中に漂う雲のような上で、なぎさは辺りをキョロキョロ見渡した。

 

(これは・・・夢!?でも、何時も見るカオスの夢とも違うような?)

 

 困惑するなぎさの耳に、聞き慣れた声が聞こえてきた・・・

 

「遂に目覚め始めてしまったみたいだね・・・」

 

「エッ!?その声・・・私?」

 

 夢とは言え、話し掛けている相手が自分だと気付いたなぎさは、目を点にしながら困惑した。声は次第に近づき、なぎさの前に現われた人物は・・・キュアブラックその者だった。なぎさは、混乱しながらもブラックに話し掛け、

 

「どういう事よ?」

 

「一度私達は、あなた達の身体を借りた事があった!その影響かも知れない・・・美墨なぎさ!マーブルスクリューシャイニングを使うのは止めて!!」

 

「マーブルスクリューシャイニング!?そう言えば、あの時・・・」

 

 ブラックが話した、マーブルスクリューシャイニングという言葉に、思わずなぎさは反応した。あゆみを、自分達を弄んだソドムに対する怒りが爆発した時、ブラックとホワイトは、身体から溢れる力をそのまま解放し、無意識の内にマーブルスクリューシャイニングを放った事が思い返されてくる。ブラックはコクリと頷き、

 

「あなたも時空の狭間で見たでしょう?あの技は・・・世界を終わらせる力を秘めている!」

 

「世界を終わらせる!?ちょ、ちょっと、いくら何でも大げさじゃ・・・」

 

 そう言いながらも、忘れていた時空の狭間での記憶が甦ってくる。大切な仲間達が敗北する世界を、背中に12枚の光の翼を生やしたブラックとホワイトが、世界を終焉に導く姿が・・・

 

「じゃ、じゃあ、あの時あなた達が放ったのは?」

 

「そう・・・マーブルスクリューシャイニング!最も、あなた達が妖精学校で放った時は、シャイニーブレスも装着していない未完成だったけどね!」

 

「シャイニー・・・ブレス!?」

 

「本来の力で放っていたら・・・妖精学校はおろか、この世界は終焉していただろうねぇ」

 

「ちょ、ちょっと!脅かさないでよ!!」

 

「忠告はしたよ!マーブルスクリューシャイニング・・・もしもあの技を再び放つ時は、カオスと決着を付ける時!!それまでは、今のあなた達ならマーブルスクリューマックスや、マックススパーク、ルミナスとのルミナリオでも十分戦える!!」

 

「アッ!?ちょっと?」

 

 まだ詳しい話を聞きたかったなぎさだったが、急速に目が覚め、慌ててベッドから飛び起き、思わず時計を見た。時間はまだ3時前、なぎさは再びベッドに寝転ぶと、

 

(夢だったのかなぁ!?でも、やけに現実的だったような?)

 

 そう考え込んで居る内に、なぎさは再びウトウト眠りに付いた・・・

 

 

2、バッドエンドハッピーVSスイートプリキュア♪

 

 七色ヶ丘で、プリキュアオールスターズとのクイズ大会以降、バッドエンド王国で大人しくしていたバッドエンドプリキュアの五人であったが、ジョーカーにバッドエナジーを集めてくるように言われ、この日バッドエンドプリキュア達は、久しぶりにバッドエンド王国から出掛けようとしていた・・・

 

「ねぇねぇ、みんなは何所行くの?」

 

 バッドエンドハッピーに聞かれた他の四人、真っ先にバッドエンドピースがハイハイと手を上げ、

 

「私は・・・私の頭を叩いたキュアブライトとキュアウィンディが居る、海原市夕凪って所に行くの!本当は、キュアパッションも纏めてやっつけたいんだけど、あっちまで行くの面倒だし、そっちはマーチ行ってきてよ!!」

 

「コラァ!何で勝手に決めんだよ?あたしは、命令されるのが大嫌い何だよ!!」

 

「でもでも・・・美味しいドーナツ屋さんが、四つ葉町にはあるらしいよ?」

 

「本当!?コホン、ま、まあ、仲間の頼みを無碍に断るのも何だよなぁ・・・じゃあ、あたしが四つ葉町に行ってやるよ!」

 

 バッドエンドピースの術中に嵌り、あっさり四つ葉町行きを承諾したバッドエンドマーチ、バッドエンドピースは、そんなマーチを見て両手を口元に当てクスクス笑った。バッドエンドサニーは、そんなバッドエンドピースを見ると呆れたように、

 

「相変わらずあざとい奴やなぁ・・・まあええ、ウチはプリキュア5達が住む所に行こうと思うとる!あいつら痛めつけたら、またダークプリキュア5がやって来るやも知れんしな!!」

 

 バッドエンドサニーは、右手で拳を握り左手に軽く拳を当てると、不敵な笑みを浮かべた。少し小首を傾げたバッドエンドビューティは、

 

「私は・・・そうねぇ、スマイルプリキュアと言いたいところだけれど、彼女達と戦う時は、五人で一緒にって決めたものね!他には・・・キュアムーンライトと直に戦って見たいわね!」

 

「じゃあ、キュアムーンライトが住む希望ヶ花に行くんだ?」

 

 バッドエンドハッピーに聞かれたバッドエンドビューティは、少し考えると、

 

「そうね・・・そうしようかしら?」

 

「ハッピーはどうするの?」

 

 バッドエンドハッピーは、バッドエンドピースに聞かれ、腕組みしながら考え込むと、

 

「ウ~~ン・・・そうだなぁ、キュアリズムのお家は、美味しいカップケーキ屋さん何だって!それを食べに行こうかなぁ?」

 

「「「行くなら、お土産よろしく!!」」」

 

「ウン!みんなもお土産よろしく!!」

 

「「「OK!!!」」」

 

「ハァ・・・あなた達、私達の目的を分かって居るの?」

 

 バッドエナジーを集めに向かうのか、美味しい物を食べに行くのか分からない仲間達を見て、バッドエンドビューティは溜息混じりに呟いた。

 

 

 加音町・・・

 

 学校を終えた南野奏は、店の手伝いをする為、何時ものように制服姿のままエプロンをすると、

 

「奏、お土産用のカップケーキ、外のテラス席に居る黒い服を着た女の子のお客さんに渡してきて!」

 

「はい!」

 

 奏の母、美空から頼まれた奏は、手際よくメモに書かれた商品を取り箱詰めすると、外に居る筈の黒い服を着たお客をキョロキョロ捜した。奏の視線に、黒い衣装を着た少女らしき後ろ姿を見付けたが、どうも何処かで見た事があるような気がして、思わず奏は戸惑った。そんな奏に気付いたのか、後ろを振り向いた少女を見て、奏は思わず目を点にし、持って居た箱を落としそうになり、慌てて体勢を整えた。奏の顔を見て口元に笑みを浮かべたバッドエンドハッピーは、

 

「ヤッホ~!こっち、こっち!!」

 

「な、何であなたが家のお店に居るのよ?」

 

「今日の私は・・・お客さん!お客さんにそう言う言葉遣いして良いのかなぁ?」

 

「ウッ!?それは・・・」

 

 バッドエンドハッピーに図星を指され、思わず奏は言い返せず言葉に詰まった。バッドエンドハッピーは、動揺する奏を見てエヘヘと笑うも、生クリームが一杯入って、色取り取りのハート形のシュガーと、ハート形のりんごが入ったカップケーキをパクリと口に頬張ると、幸せそうな表情を浮かべ、

 

「あなたの店のカップケーキ、美味しいね?」

 

「エッ!?それはどうも!」

 

 敵とはいえ、自分の店で出している商品を美味しいと言われれば、奏も満更でもない表情を浮かべた。だが、バッドエンドハッピーの目的が分からず、奏は困惑する。奏は、お土産用に箱に詰めたカップケーキをテーブルに置くと、

 

「はい!お待たせしました!!」

 

「ワァイ!みんなもきっと喜ぶよ!!さてと、目的は果たしたし、後はオマケの用事でも片付けようかなぁ?手が汚れるから嫌何だよねぇ・・・」

 

 そう言うと、バッドエンドハッピーは両手に薄いゴムの手袋を嵌め、百科事典のような一冊の本を取り出した。

 

「その本は!?」

 

 気付いた奏の表情が険しくなる。本がバッドエナジーを集めるアイテムなのは、奏もバッドエンド王国との戦いで知っていた。奏は慌ててバッドエンドハッピーに駆け寄り、

 

「止めなさい!」

 

「ベェェェだ!」

 

 止めようとした奏をヒラリと躱し、バッドエンドハッピーは本を捲ると、

 

「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を、黒く塗りつぶしちゃえ!!」

 

 バッドエンドハッピーが、白紙のページに黒い絵の具を叩き付けると、奏の家であるLucky Spoon周辺の空がピンク色に染まり、幼児が描いた落書きのような物体が浮かび上がった。それと同時に、店内に居た奏の両親や店に居た人々が跪き、口々に絶望に染まったかのような言葉を発し、人々から発せられたバッドエナジーが、本に吸収されて行った。

 

 そして、ピエーロ完全復活への目盛りが上がった・・・

 

「よくも私達家族の大切な店を・・・絶対に許さない!」

 

「別に許して何て言って無いよぉ!ベェェェ!!」

 

「可愛くない!」

 

 奏に対して、ベェと舌を出したバッドエンドハッピーを見て、奏は頬を膨らませた。絶対に許さないと言った割には、プリキュアになる気配の無い奏を見て、バッドエンドハッピーは不思議そうに小首を傾げ、

 

「どうしたの!?プリキュアにならないの?」

 

「ウッ!?な、なるわよ!響が来てからだけど・・・」

 

「エッ!?あなた一人じゃプリキュアになれないの?何だ、つまらない!」

 

 バッドエンドハッピーは、本当につまらないのか、倚子に座って足をブラブラさせた。まるで馬鹿にしているような態度を見せるバッドエンドハッピーに、奏が益々苛々し始めた時、Lucky Spoonに駆け寄って来る足音が聞こえて来た。

 

「奏!どうかしたの?」

 

「アコ!ちょうど良かったわ!!」

 

 現われたのは調辺アコ、奏は状況を手短にアコに説明すると、アコはキッとバッドエンドハッピーを見つめ、

 

「響やエレンが来るまで、私が相手よ!レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」

 

 この場に響が居ない為、変身出来ない奏を援護するように、アコはミューズへと変身した。

 

「爪弾くは、女神の調べ!キュアミューズ!!」

 

「エへへへ、ようやく一人現われたね!じゃあこちらも・・・出て来~い!アカンベェェェ!!」

 

 バッドエンドハッピーが、黒玉を高々上に掲げると、Lucky Spoonの店名の由来となっている、カップケーキを食べる為のピンク色のラッキースプーンを、アカンベェへと変えた。

 

「何て事を・・・」

 

 見る見る表情を険しくする奏だったが、バッドエンドハッピーは我関せずと言った表情で、再び美味しそうにカップケーキを食べ始めた。

 

「う~ん!やっぱり美味しい!!アカンベェ、適当にその子の相手しといて!!」

 

「何が適当によ!タァァァ!!」

 

 馬鹿にしているような態度をとるバッドエンドハッピーを見て、ミューズもムッとすると、アカンベェに対し格闘戦を仕掛けた。ミューズの小さな身体が俊敏に動き、アカンベェに対しパンチを繰り出すも、攻撃は当たらず、逆にミューズは、アカンベェに避けられて柱にぶつかったり、倚子に躓いたりして転んだりした。

 

「もう!何で攻撃が当たらないのよ?」

 

 ミューズは頬を膨らまし、攻撃が当たらない事に苛立ちを覚えた。そんなミューズを見た奏は、ある事を思いだしていた。嘗て、まだマイナーランドの歌姫だったセイレーンにも、ラッキースプーンをネガトーンに変えられた事があったのだが、その時の戦いでメロディとリズムは、今のミューズ同様アンラッキー状態になり、ネガトーンに苦戦した時の事を・・・

 

「ミューズ、あのアカンベェは、幸せを呼ぶと言われるラッキースプーンを、闇の力でアカンベェに変えた姿、今は不幸を呼ぶのかも知れない・・・注意して!!」

 

「不幸!?何だか良く分からないけど、無闇矢鱈な攻撃はしない方が良いって事?」

 

「ええ、響やエレンもきっと気付いて来てくれるわ!それまでアカンベェの動きを・・・」

 

「なら!シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!シャイニングサークル!!」

 

 ミューズは、まるで分身の術を使ったかのように、四人の幻影を出すと、五芒星のようなサークルを描き、アカンベェの動きを封じた。動揺するアカンベェだったが、

 

「そんな攻撃つまんないよ・・・バッドエンドシャワー!」

 

「キャァ!?」

 

 座りながらカップケーキを食べていたバッドエンドハッピーは、動きを止められたアカンベェを見ると眉を顰め、バッドエンドシャワーで動きを止めていたミューズを攻撃した。それと同時にアカンベェが力を込めると、ミューズのシャイニングサークルは消滅した。バッドエンドハッピーは、それを見ると再び美味しそうにカップケーキを食べ始めた。

 

「何なのあの子は!?やる気が有るのか無いのか?」

 

 困惑する奏だったが、アカンベェがミューズ目掛けスプーンのような光弾を放ち、ミューズは攻撃を回避し続けるも、再び倚子に躓き転倒する。

 

「ここじゃ戦いにくいわ!もっと広い場所に移動しましょう!!」

 

「そうね!こっちよ!!」

 

 奏の助言に頷いたミューズは、アカンベェを店外に誘導した。奏も慌ててミューズとアカンベェの後を追い、バッドエンドハッピーは、面倒くさそうな表情を浮かべるも、お土産用のカップケーキを右手で抱え、一同の後を追った。

 

 

 突如加音町にバッドエンド空間が発生し、それに気付いた響とエレン、そしてハミィは、途中で合流すると、バッドエンド空間目掛け駈け出していた。

 

「急ごう、エレン!あの方角には、奏のお店がある!!」

 

「ええ!奏、待ってて!今向かうから!!」

 

 駈け続ける響とエレンだったが、広場の方で爆発音が聞こえ、慌てて立ち止まると、

 

「あっちだ!」

 

「見て、響!ミューズが・・・」

 

「良かった!ミューズが来てくれたんだ!!」

 

 顔を見合わせた響とエレンは、互いに頷き合うと、広場へ向かって駈け出した。

 

 

 アカンベェから、スプーンのような光弾が連続でミューズ目掛けて飛んでいくも、ミューズは俊敏な動きで躱し続けていると、響とエレン、ハミィが広場に到着し、気付いた奏はホッと安堵する。奏は大きく息を吸い込むと、

 

「響、エレン、こっちよ!」

 

「奏!ミューズ、待ってて今直ぐ援護に向かうから!!」

 

 合流した響と奏、そしてエレン、三人はキュアモジューレを手に取ると、

 

「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」

 

「爪弾くは、荒ぶる調べ!キュアメロディ!!」

 

「爪弾くは、たおやかな調べ!キュアリズム!!」

 

「爪弾くは、魂の調べ!キュアビート!!」

 

 変身した三人に気付き、ミューズも側に着地すると、まるで四人は呼吸を計ったかのように、

 

「「「「届け!四人の組曲!!スイートプリキュア!!!」」」」

 

 集結したスイートプリキュアを見て、バッドエンドハッピーはニンマリすると、

 

「ようやく揃ったね!アカンベェ、やっちゃって!!」

 

 バッドエンドハッピーの合図を受け、アカンベェの目の色が変わり、メロディ達に対し、先程以上の光弾を連射する。メロディ達は四方に散り光弾を躱すも、メロディは落ちていたバナナの皮に足を滑らせ転倒し、リズムは噴水に落下して水浸しになり、ビートは転がってきたボールを見て本能的に追いかけて壁にぶつかり、ミューズはヒラヒラ落ちてきたビニール袋を頭にすっぽり被り、前が見えなくなって転倒する。

 

「何でこんな所にバナナの皮が落ちてるのよぉぉ!」

 

「イヤァァン、もう水浸し・・・もう最悪!」

 

「わ、私とした事が・・・」

 

「何なのよ、この袋はぁ!?」

 

「アハハハ!何その姿!?」

 

「ハニャニャ、アンラッキーニャ・・・」

 

 バッドエンドハッピーに指を指されながら大笑いされ、ハミィは見てられないと顔を顰め、メロディ、リズム、ビート、ミューズの四人は、顔を少し赤らめながらも、バッドエンドハッピーを見ると、頬を大きく膨らませた。リズムはバッドエンドハッピーを指さすと、

 

「アンラッキーだろうが、大凶だろうが、私達が力を合わせれば・・・乗り越えられるわ!」

 

 リズムの言葉に頷いたメロディが、ビートが、ミューズが立ち上がると、四人は雄叫び上げながらアカンベェ目掛け駈け出すも、アカンベェの側に落ちていたバナナの皮に四人は足を滑らせるも、右手で身体を支えながら、

 

「こんなものぉぉぉ!」

 

 メロディの叫びを合図にしたかのように、四人はそのままスライディングをするような格好でアカンベェの足下に滑り込み、足をすくわれたアカンベェが堪らず転倒する。

 

「今ニャ!」

 

 ハミィは持って居たヒーリングチェストを天に掲げると、

 

「「「「出でよ、全ての音の源よ!!」」」」

 

 メロディ、リズム、ビート、ミューズ、四人はクレッシェンドトーンを召喚し、

 

「「「「届けましょう、希望のシンフォニー!」」」」

 

 両腕をクロスしたまま、クレッシェンドトーンの金色の光の炎と一体化した四人は、

 

「「「「プリキュア!スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンド!!」」」」

 

 金色の炎と化した四人の攻撃を受け、アカンベェが光に包まれると、

 

「「「「フィナーレ!!!」」」」

 

 四人の合図と共にアカンベェは浄化され、元のラッキースプーンに戻った。バッドエンドハッピーは口元に笑みを浮かべながら、

 

「ヘェ、やっぱり強いね・・・まっ、いいや!お土産も買ったし!!じゃあね、ご馳走様!!!」

 

 アカンベェを浄化されても、バッドエンドハッピーはご機嫌な様子で帰って行った。四人は、そんなバッドエンドハッピーが去った場所を、呆然と見つめていた・・・

 

 

3、バッドエンドサニーVS夢原のぞみ

 

 バッドエンドハッピーが加音町に現われたのと同じく、のぞみ達が暮らす街にはバッドエンドサニーが現われていた。

 

「エェェと、プリキュア5が居るのは、確かナッツハウス言うとったなぁ?」

 

 バッドエンドサニーは宙に浮かびながら、ナッツハウスを探し当て前に降りてくると、

 

「こんちはぁ!プリキュア5、居る?」

 

 しかし、中からは何の応答も無く、拍子抜けしたバッドエンドサニーは階段に腰を下ろし、ボォォと池を眺めて居ると、ついウトウト眠り込んだ・・・

 

 バッドエンドサニーが待っているとは知る筈も無く、学校を終えたのぞみはルンルン気分でナッツハウスにやって来ると、

 

「あれぇ!?誰だろう?」

 

 今はアクセサリーの販売をしていないナッツハウスに来る者など、自分達やプリキュアの仲間達ぐらいなのになぁと、のぞみが小首を傾げながら近付くと、待っていたのがバッドエンドサニーだと知り、のぞみの表情が険しくなる。

 

「あなたは、バッドエンド王国!」

 

「ン!?ファァァアァァ!何や、ウチ寝てしもうたんかぁ?ヨッ!待ちくたびれたでぇ!!」

 

「何であなたが此処に!?」

 

「いやぁ、ジョーカーの奴に、バッドエナジーをいい加減に集めて来い言うてなぁ、それやったら、プリキュア5を痛めつけて、ダークプリキュア5を誘き寄せたろう思うたんやけど・・・」

 

「何ですって!?そんな事させない!」

 

「まあまあ、そう急かさんでもエエよ!今日は居らんの?」

 

「エッ!?誰の事?」

 

「あんたがチューした相手や!」

 

 バッドエンドサニーは、いきり立つのぞみをからかうかのように、今日はキスをした相手は一緒じゃ無いのかのぞみに訪ねると、のぞみの顔は真っ赤に染まり、しどろもどろになった。

 

「な、な、な、何!?と、と、突然、何言い出すのよぉぉ?」

 

「エエから、で、居らんの?」

 

「い、居ないわよ!ココは忙しいんだから!!」

 

「ヘェ、ココって言うんや?シシシシシ」

 

 バッドエンドサニーの誘導尋問に、見事に引っ掛かったのぞみは、相手がココだと自らバラした事に気付き、益々顔を赤らめると、

 

「・・・・・アァァァ!?私の、バカバカバカバカ!」

 

 恥ずかしさでバッドエンドサニーの顔を見れず、のぞみは俯きながら自分の頭をポカポカ叩いた。バッドエンドサニーはのぞみに近付くと、

 

「ほんでほんで、どんな状況でキスしたん?」

 

「ど、ど、どうだって良いでしょう?」

 

「エエやん、減るもんや無いんやし!ハハァン、他人に言えないような状況で・・・」

 

「ち、違うもん!ムシバーンに操られたココを元に戻そうと・・・・・ハッ!?」

 

 再びバッドエンドサニーの誘導尋問に引っ掛かったのぞみは、恥ずかしさで思わず俯いた。バッドエンドサニーは、そんなのぞみを見て益々ニヤニヤしながらからかい、

 

「へぇ・・・お姫様のキスで元に戻したんや?」

 

「し、知らない、知らない!聞こえ無いもん!!」

 

 のぞみは、首を激しく左右に振りながら両耳を塞いだ。そんな二人の下に四つの人影が近付き、

 

「のぞみ、どうしたの?」

 

「のぞみ!?・・・あんたは、バッドエンドプリキュア!」

 

「のぞみさんに何をしたんですか?」

 

「のぞみさん、みんな来たからもう大丈夫よ!」

 

 かれんが、りんが、うららが、こまちが、バッドエンドサニーを見て表情を険しくし、のぞみの身を案じるも、駆け付けてくれた仲間達を見たのぞみは、目をウルウルさせると、りんに縋り付き、

 

「りんちゃぁぁん!」

 

「の、のぞみ、どうしたの!?あいつに何かされたの?」

 

 泣きついたのぞみの髪を撫でながら、りんはバッドエンドサニーを睨み付けるも、バッドエンドサニーは肩を竦めながら、

 

「失礼な事言わんといて!ウチはただ、夢原のぞみが誰と、どんな状況でキスしたのか聞いただけや!」

 

「「「「ハァ!?」」」」

 

 予想外の言葉を聞き、りん、かれん、うらら、こまちは、思わず目を点にしながら、のぞみの顔を見つめると、

 

「イヤァァァン!もう、帰ってぇぇ!!」

 

 この場に居るのが耐えられないかのように、のぞみは慌ててナッツハウスの中へと逃げ去った。バッドエンドサニーは大笑いを始め、

 

「シシシシシ!あぁ、面白かったわ!!何やスッキリ・・・ン!?なあ、なあ、その紙袋の中、何が入っとるの?」

 

 こまちが抱えていた二つの紙袋が気になったのか、バッドエンドサニーが紙袋を指さすと、こまちは袋から大福を取りだし、

 

「これは、大福っていう和菓子よ!良かったら食べてみる?」

 

「エエの!?おおきに!・・・・・オッ!中々美味いやん!それ、何所で買うてきたん?」

 

「これは、家のお店の大福よ!気に入ったなら、少し分けてあげるわ!!」

 

「ホンマ!?おおきに!」

 

 こまちは、一つの紙袋をバッドエンドサニーに渡すと、バッドエンドサニーは嬉しそうに紙袋を受け取り、

 

「今日はこれで帰るわ!ほな、またな!!」

 

 こまちから貰った大福が入った紙袋を抱え、バッドエンドサニーはご機嫌で帰って行った。呆然と見て居た、かれん、りん、うららは、

 

「あの子・・・何しに来たのかしら?」

 

「さあ!?」

 

「でも、のぞみさんのキスの話って気になりますよねぇ?」

 

 こまちもうららの言葉に大きく頷き、

 

「ええ、私達ものぞみさんにじっくり話を聞きましょう!」

 

「こまち・・・やけに嬉しそうね?」

 

 かれんは呆れたようにこまちを見るも、四人もナッツハウスへと入って行った・・・

 

        第九十話:バッドエンドプリキュアとプリキュア達(前編)

                    完

 




運動会も中止になり、片付けだけで早く終わったんで、第九十話投稿致します

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