プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第八十六話:困惑のアン王女

1、妖精達とプリキュア

 

 なぎさ達より先に到着していたアン王女は、教室の一番後ろに立ち、授業を眺めて居た。ちょうどココとナッツが、生徒達にプリキュアに関しての問題を出しているようで、

 

「みんな、最近プリキュアになったのは、誰だか知ってるココ?」

 

 ココはそう問うと、生徒達の顔を眺めていった。その中で、一際机から身を乗り出し、手を上げている生徒を指名すると、生徒は大喜びで宙に浮かび、

 

「ハイハイハイ!キュアソードシャル!!」

 

 自信満々でココに答えを言ったのはシャルル、ココは満足そうに何度も頷き、

 

「正解ココ!ソードは、シャルルと同じトランプ王国のプリキュアココ!実は、ココもまだキュアソードには会った事無いココ!!」

 

「シャルルも早く会いたいシャル!」

 

「ナッツ達も、キュアソードを始めとしたプリキュア達に、久々に会うのを楽しみにしてるナツ」

 

 そんな授業を、妖精達は真面目に受けていたが、アン王女の視線が一人の妖精を見て小首を傾げた。

 

(あの子、何だかやる気がなさそうですわねぇ!?)

 

 アン王女の視線の先に居たのはグレル、グレルは授業そっちのけで、プリキュア達にどうやって勝つか考えて居た。

 

(プリキュアって、一杯人数居たよなぁ・・・)

 

「・・・・レル、グレル!」

 

「エッ!?」

 

 誰かに名前を呼ばれて、ハッとしたように顔を上げたグレルを、亀のような先生がハァと溜息を付きながら、

 

「グレル!今は授業中ですよ!!」

 

「ウッ・・・」

 

「全く、何しに学校に通ってるのか分からないぜ!」

 

「本当ロマ」

 

「ウ、ウルセェ!」

 

 ぐらさんとアロマにも呆れられ、グレルはうるさいとばかりに二人を睨み付けた。そんな中、ニヤニヤしたタルトが教室に入ってくると、

 

「みんなぁ、お待ちかねのプリキュアはん達が到着したようやでぇ!」

 

「エェェェェ!?」

 

(エッ!?)

 

 タルトにプリキュア達が到着したと教えられ、グレルを除いた妖精達が、窓に群がり外を覗いた。プリキュア達がやって来るとは知らなかったアン王女は、困惑の表情を浮かべながら窓の外を見て、

 

(ま、まさかソードも一緒じゃ!?ど、どうしましょう?あのような別れ方をして、こんなに直ぐにソードに会ってしまっては・・・)

 

 ソードの成長を見守るつもりでトランプ王国に戻ったというのに、この場で再会しては、この間の行為が全て無駄になってしまうのではと、アン王女は狼狽えた・・・

 

 

 気球がゆっくり校庭に着地し、なぎさ達が一人ずつ降り立った。見渡してみれば、自然に恵まれ木々が生い茂り、鳥のような鳴き声も聞こえてくる。そんな中に妖精学校は建っていた。自然を壊さない為の配慮からか、妖精学校はこぢんまりしていて、人間界で言う分校のような規模だった。一同がそれぞれ辺りを見回し感想を述べ合っていると、何処かライオンに似た妖精が笑顔を浮かべながら近づき、

 

「皆の衆、お忙しい所よくぞおいで下さった!」

 

「ポップ!」

 

「お、お兄ちゃぁぁぁぁん!!」

 

「キャンディ!そなたも・・・ゴボォ!!」

 

 嬉しさのあまり、キャンディは勢いよくポップに体当たりし、堪らずポップは後方に吹き飛ばされ、頭部を強打した。

 

「シシシ、何やか・・・お約束やなぁ」

 

 苦笑しながらあかねが二人を見て呟くと、兄が居る舞は、自分達兄妹の事を思いだしたのか、目を細めながら、

 

「仲が良くて良い事だわ!」

 

「そうね・・・でもこのまま続いたら、その内死んでしまいそうだけど?」

 

「薫、どうしてそう言う事言うの?」

 

「冗談よ」

 

 薫の毒舌を満が窘め、一同から苦笑が起こる。ポップはイタタタと起き上がるも、

 

「し、失礼致した!皆の衆、早速中に案内するでござる!生徒達も、首を長くしながら、皆の衆を待っていたでござるよ!!」

 

「そう何だぁ・・・アッ、ポップ!あゆみちゃんは、後で遅れて来るから!!」

 

「あゆみ殿が!?分かったでござる!他の方々には拙者から伝えるでござる!!」

 

 みゆきから、あゆみは後で来ると聞いたポップは頷いた。真琴は不思議そうにポップを見つめ、

 

「あのポップって言う妖精・・・随分変わったしゃべり方しますね?」

 

「ポップは、あたし達の世界の時代劇が好きなようだし、自然と口癖になったのかもね」

 

「そうなの?」

 

 なおの言葉を聞き、真琴は小首を傾げながらも納得した。一同がゾロゾロ校舎内に入ると、窓から見て居たアン王女は狼狽へ、教室の後ろでウロウロしながら、ブツブツ独り言を言い始めた。側に居た妖精達がヒソヒソ話を始め、パフとエンエンは、そんなアン王女を見ると少し怯えた表情で、

 

「あの人、何だか怖いパフ」

 

「ぼ、僕もちょっと・・・」

 

「大丈夫シャル!あの方はトランプ王国の王女様シャル」

 

 シャルルは、自分達の国トランプ王国の王女だから、大丈夫だとパフとエンエンを安心させ、アロマは、ウロウロしているアン王女をもう一度見ながら、

 

「ロマ!?トランプ王国の?」

 

「そうでランス・・・きっとオシッコでもしたいんでランス」

 

「ランス・・・違うと思うケル」

 

 ランスの言葉を、困惑気味にラケルが否定した。ぐらさんは、ジィとアン王女を見ると、

 

「何か考え事をしているようだぜぇ?」

 

 一同の視線が再びアン王女に注がれた・・・

 

「ア、アン王女、どうかしたココ?」

 

「何かおかしな事でも?」

 

 異変に気付いたココとナッツが、困惑気味にアン王女に話し掛けると、アン王女はハッと我に返り、

 

「い、いえ、何でもありませんわ!どうぞ、授業をお続けになってくださいまし・・・オホホホ」

 

 作り笑いを浮かべながら誤魔化すと、妖精達は再びヒソヒソ話を始めた。その時、教室のドアをコンコンとノックし、ポップが中に入ると、

 

「皆の衆、プリキュア達が到着したでござるよ!」

 

「ワァァァァァ!!」

 

 一斉に教室内に歓声が沸き起ったものの、微妙な表情を浮かべた人物が二人居た。一人はグレル、もう一人はアン王女、戸惑う二人を余所に、案内されたなぎさ達三人、咲達四人、のぞみ達六人、ラブ達四人とシフォン、ゆり達四人とシプレ、コフレ、ポプリ、響達四人とハミィとピーちゃん、フェアリートーン達、みゆき達五人とキャンディ、魔王の順番で入り、皆が黒板の前に並び、最後に真琴が入って来た瞬間、アン王女は咄嗟にその場で身を伏せた。

 

 それに気付いたなぎさは、変顔浮かべながらほのかに話し掛け、

 

「ね、ねぇほのか、今後ろで隠れたのって・・・アン王女だよねぇ?」

 

「そ、そうね、アン王女も来ていたようね」

 

「何で隠れたんだろう?」

 

「さあ!?」

 

 なぎさとほのか、二人の視線がジィと自分を凝視しているのに気付いたアン王女は、少し顔を出し、二人に何か合図するように、右手の人差し指を鼻の前に持って行き、シィとジェスチャーすると、思わずなぎさとほのかの目が点になる。

 

「み、見なかった事にしてあげましょう」

 

「そ、そうだね」

 

「多分・・・私達とあんな別れ方をしたから、顔を合せづらいのかも知れないわ」

 

「じゃあ、みんなにも知らせておかなきゃ!」

 

「そうね・・・でも、真琴さんにだけは内緒にしてた方が良いと思うよ!」

 

 ほのかとなぎさは、困惑気味にアン王女の意を汲み、見なかった事にしようと決めた。

 

(やっぱり、プリキュア何て只の女の子じゃねぇか!)

 

 教室の中に入ってきたなぎさ達を見たグレルは、自分の想像していたように只の女の子で、これなら俺でも勝てると口元に笑みを浮かべた。

 

「ウワァァァ!こんなに妖精さん達が一杯・・・」

 

「本当!」

 

 そんな事とは知らず、目をキラキラ輝かせた祈里とみゆきが、生徒達を穏やかな視線で見つめた。ココとナッツ、タルトは一同の前にやって来ると、

 

「みんなぁ!良く来てくれたココォ!!」

 

「妖精のみんなも喜んでるナツゥ!」

 

「ココも、ナッツも、元気そうだね!」

 

「あたし達は、タルトとは頻繁に会ってるけどね」

 

 うららと美希も笑み混じりに再会を喜んだ。ココとナッツは更に一同に話し掛け、

 

「みんな、生徒達に一言声を掛けて上げて欲しいココ!」

 

「生徒達も喜ぶナツ!」

 

 ココとナッツにリクエストされ、なぎさ達一同は輪になって話すと、ほのかが代表するように生徒達に語り始め、

 

「皆さん、こんにちは!今日は私達プリキュアを招待してくれてありがとうございます!もう一人、キュアエコーが居るんですけど、少し遅れて来るので待ってて下さいね!では、先ず私達から・・・」

 

 ほのかは、なぎさとひかりに目配せすると、二人も頷き返し、

 

「「デュアルオーロラウェーブ!!」」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「輝く生命、シャイニールミナス!」

 

「ウワァァァァ!」

 

 なぎさ、ほのか、ひかりがプリキュアに変身した事で、生徒達のボルテージは上がり大歓声が起こった。ブラック、ホワイト、ルミナスの姿を見た、全身薄いピンク色をしたカエルのような妖精が、両目をウルウルさせ、感極まったのか三人目掛けて駈け出し、

 

「プリキュア!会いたかったでございまちゅ!!」

 

「エッ!?・・・マーキーズ?」

 

「あなたも妖精学校に?」

 

「ハイでございまちゅ!」

 

 マーキーズ・・・

 

 あらゆる生命に希望を与えると言われる、希望の園の妖精で、ジャアクキング復活を目論む魔女から、希望の園の秘宝、ダイヤモンドラインを守って貰う為、なぎさ達に助けを求めに来た妖精の一人で、妖精騎士団の中では最も幼く、なぎさ達からも可愛がられて居た。

 

 ルミナスも、そんなマーキーズとの久々の再会に目を細め、

 

「久しぶりですねぇ・・・皆さんお元気ですか?」

 

「みんなもプリキュア達に会いたがっているでございまちゅ!」

 

「ポルン、ルルン、希望の園のマーキーズが居るわよ」

 

「ポポ!?」

 

「ルル!?」

 

 ルミナスに教えられたポルンとルルンが、妖精姿に変化すると、マーキーズとの再会を喜び合った。

 

 続いて、咲、舞、満、薫が一歩前に出ると、

 

「みんなぁ、絶好調なりィかぁ?私は日向咲、こっちの三人は美翔舞、霧生満と薫そして、私達のもう一つの姿は・・・舞、満、薫、行くよ!」

 

「「「分かったわ!」」」

 

「「「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」」」

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「天空に満ちる月!キュアブライト!!」

 

「大地に薫る風!キュアウィンディ!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「ウワァァァ!」

 

 咲達四人もプリキュアに変身し、生徒達から歓声が上がった。続いてのぞみ達が前に出ると、

 

「皆さん、こんにちはぁ!私達はプリキュア5でぇす!!今日は招待してくれてありがとう・・・じゃあ、みんな行くよ!」

 

「「「「「YES!」」」」」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

「大いなる、希望の力!キュアドリーム!!」

 

「情熱の、赤い炎!キュアルージュ!!」

 

「弾けるレモンの香り!キュアレモネード!!」

 

「安らぎの、緑の大地!キュアミント!!」

 

「知性の青き泉!キュアアクア!!」

 

「「「「「希望の力と未来の光、華麗に羽ばたく5つの心!Yes! プリキュア5!!」」」」」

 

「青いバラは秘密のしるし!ミルキィローズ!!」

 

「ウワァァ、こんどは6人も増えたぁぁ!」

 

 一気に六人増えた事で、生徒達の興奮は更に高まり、ドリーム達は顔を見合わせ笑みを浮かべていると、

 

「ご無沙汰しておりますわ!」

 

 突然話し掛けられたドリーム達、ドリームは、話し掛けた少女の顔をマジマジと見ると、

 

「エッ!?・・・チョコラ!あなたも妖精学校に?」

 

「いえ、私は生徒のみなさんに、おやつを届けに来たのですが、授業を見学していけばとお声を掛けて頂いて、お言葉に甘えていました」

 

「チョコラ姫、以前はお菓子を一杯分けて下さり、ありがとうございました!」

 

「みんなで美味しく頂きました!」

 

「本当にあの時は感謝してます!」

 

 アクア、ミント、そしていつきは、深々とチョコラ姫に頭を下げ、以前受けた厚意を感謝した。そんな三人に、チョコラはニッコリ笑顔を浮かべ、

 

「いいえ!あれぐらいお安いご用ですわ!」

 

 チョコラ・・・

 

 お菓子の国とも呼ばれるデザート王国の姫で、桃色の髪と青色の瞳、頭部にはティアラとウサギのような耳飾りをつけており、桃色のドレスを着ていた。嘗て、ムシバーンによって危機に陥ったデザート王国を、プリキュア5とローズに救われ、それ以来のぞみ達に憧れていた。砂漠の王デューンを浄化し、地球を元に戻したプリキュア達、かれんとこまち、そしていつきは、チョコラの母であるデザート女王に手紙を書き、お菓子を分けて貰った事があった・・・

 

「美希たん、ブッキー、せつな、私達も行くよ!」

 

「エエ、妖精のみんなに、あたし達の完璧な姿、見せてあげましょう!」

 

「そうだね」

 

「じゃあ、行くわよ!」

 

 ラブ、美希、祈里、せつなが一歩前に出ると、

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ、キュアベリー!!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」

 

「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!!」

 

「「「「レッツ!プリキュア!!」」」」

 

「ウワァァァ!」

 

 妖精達の歓声を受け、ピーチは手を振りながら、

 

「どうも!今日は私達を招待してくれてありがとう!!私達は・・・」

 

「「「「フレッシュプリキュアです!!」

 

 続いて前に出たのは、つぼみ、いつき、ゆり、えりかは妖精達に投げキッスをしていて、

 

「ほら、えりか!私達の番ですよ!!」

 

「もう、えりかったらぁ・・・」

 

「オォォ!そんじゃ、一丁行きますかぁ!!」

 

 つぼみといつきに、両脇を抱えられながらえりかが前に出て、ゆりはハァと溜息を付くも、直ぐに生徒達を穏やかな表情で見つめ、

 

「今日は、私達プリキュアをお招き頂きありがとう!みんなと楽しく過ごしたいと思ってます!つぼみ、えりか、いつき・・・行くわよ!」

 

「「はい!」」

 

「やるっしゅ!」

 

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

 

「大地に咲く一輪の花・キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花・キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花・キュアサンシャイン!」

 

「月光に冴える一輪の花・キュアム~~ンライト!!」

 

「「「「ハートキャッチプリキュア!!」」」」

 

「ウワァァァ!」

 

 妖精達から割れんばかりの歓声が起こり、続いて前に出た響達は、

 

「私達もみんなに負けてられないね・・・奏、エレン、アコ、行くよ!」

 

「「「うん!」」」

 

「「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」」

 

「爪弾くは、荒ぶる調べ!キュアメロディ!!」

 

「爪弾くは、たおやかな調べ!キュアリズム!!」

 

「爪弾くは、魂の調べ!キュアビート!!」

 

「爪弾くは、女神の調べ!キュアミューズ!!」

 

「「「「届け!四人の組曲!!スイートプリキュア!!!」」」」

 

「みんなぁ、こんにちはぁぁ!」

 

「今日は、私達プリキュアを招待してくれてありがとう!」

 

「緊張して寝不足だけど、何だか眠気も吹っ飛んだわ!」

 

「みんなとの一時、楽しく過ごしたいと思ってるわ!」

 

「「「「みんな、よろしくねぇぇ!」」」」

 

「ワァァァァ!!!」

 

 メロディ、リズム、ビート、ミューズ、四人が生徒達にウィンクし、生徒達から大歓声が沸き起った。メロディ達の挨拶が終わり、緊張したみゆきは仲間達を見ると、

 

「ど、どどど、どうしよう!?私達の番だよ?」

 

「みゆき、緊張しすぎや!」

 

「そうそう、リラックスリラックス」

 

「何時も通り行こう!」

 

「ええ、では参りましょう!」

 

 あかね、やよい、なお、れいかがみゆきを励まし、五人が一歩前に出るも、みゆきはバランスを崩すと、顔面から地面に激突し、

 

「みゆき?」

 

「みゆきちゃん!?」

 

「みゆきさん、大丈夫ですか?」

 

 あかねが、やよいとなおが、れいかがみゆきを心配そうに見つめるも、みゆきは頭を掻きながら顔を上げ、

 

「アァァン、転んじゃったぁ・・・ハップップ」

 

 みゆきの変顔を見た妖精達から笑い声が起こり、他のプリキュア達が苦笑を浮かべる。立ち上がったみゆきは、

 

「エへへへ、失敗しちゃったぁ・・・みんなぁ!今日は招待してくれてありがとう!!後であゆみちゃんも来るから、楽しみに待っててね!では、みんなぁ!!」

 

「「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」」

 

「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!!」

 

「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!!」

 

「ピカピカぴかりん!じゃんけん・・・ポン!キュアピース!!」

 

「勇気リンリン、直球勝負!キュアマーチ!!」

 

「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!!」

 

「「「「「5つの光が導く未来!輝け!スマイルプリキュア!!」」」」」

 

「ウワァァァ!」

 

 みゆき達もプリキュアに変身し、妖精達から歓声が上がり、妖精達の視線が最後の一人真琴に注がれる。教室の後ろからヒョイと顔を覗かせたアン王女を、ブラックとホワイトは苦笑を浮かべながら見て居た。真琴は一歩前に出ると、

 

「私は、トランプ王国のプリキュアでキュアソードです!今日は招待してくれてありがとう!じゃあ、私も変身します・・・ダビィ!!」

 

 真琴の合図で、直ぐにダビィがラブリーコミューン姿に変化すると、真琴はキュアラビーズを取りだし、ラブリーコミューンにセットした。

 

「プリキュア!ラブリンク!!」

 

「L・O・V・E」

 

 ラブリーコミューンの画面に、真琴が指で「L・O・V・E」と描くと、ダビィがその都度その文字を読み上げ、真琴の身体が光に包まれ、プリキュアへと変化していった。

 

「勇気の刃! キュアソード!!」

 

「ウワァァァ」

 

 真琴もソードに変身し、妖精学校にエコーを除いた31人のプリキュアが勢揃いした・・・

 

 

2、暴走

 

 マーキーズやチョコラに刺激されたように、生徒達も一同の側に近寄った。なぎさ達も変身を解き、妖精達との交流が始まった。ある者はプリキュアの事を質問し、またある者は一緒に遊びたいと頼んだり、なぎさ達は、出来る限りの範囲で妖精達の要望に応えて居た・・・

 

(プリキュア・・・やっぱり直に見ると迫力あるよなぁ・・・)

 

 プリキュアになど勝てると言っていたグレルだったが、本物のプリキュアを見ると、他の生徒達同様、歓声を上げていた事に本人は気付いて居らず、それを見たタルトはニヤニヤしていた。

 

(でも、やっぱり変身してなきゃただの女の子だよなぁ・・・)

 

 グレルは腰に差した竹光をギュッと握り、教室にいるなぎさ達を一人一人見ていった・・・

 

 

 トランプ王国の妖精シャルル、ラケル、ランスは、真琴の側に近寄り、ダビィも妖精姿に変化して互いに交流を始めた。アン王女は、真琴にバレ無いように這いながら近づき、聞き耳を立てていると、

 

「あれ、アン王女よねぇ?」

 

「な、何をやってるのかしら?」

 

 アン王女の不可解な行動を見て、美希とかれんが困惑していると、なぎさとほのかは、真琴以外の一同を呼び寄せ、

 

「何だかよく分からないけど、アン王女は、真琴と顔を合せるのを避けてるみたい」

 

「多分、向こうであんな別れ方をしたから、顔を合せづらいんだと思うの」

 

「そういう事なら協力するけど、あんな行動してたら余計目立つと思うのだけど・・・」

 

 なぎさとほのかに、大体の事情を聞いた一同、ゆりの視線が、真琴の様子を伺うアン王女に注がれる。一同も釣られたように顔を向け、

 

「成る程、それであんな行動を・・・」

 

「ゆりさんの言う通り、余計に目立つ気もするんだけど・・・」

 

 エレンは腕組みしながらコクコク頷き、奏は苦笑気味に余計目立ちそうだと呟いた。アコはアン王女に近付くと、

 

「アン王女!」

 

 アコに話し掛けられ、思わずビクリとしたアン王女は、ゆっくり背後に居るアコを振り向くと、顔を引き付かせながら、

 

「ギクッ・・・ひ、人違いでは!?」

 

「ハァ・・・丸わかり何ですけど?」

 

「いやぁ・・・バレバレ何ですけど?」

 

 アコと響が少し呆れながらアン王女に話し掛けると、アン王女の顔から冷汗が流れた。アン王女はようやく観念したように、真琴にバレないように一同の下に来ると、

 

「皆様、ソードがお世話になっております!ところで、何時からわたくしが居ると?」

 

「最初から分かってたんですけど・・・」

 

「変装ぐらいせな、丸わかりやでぇ?」

 

 なぎさとあかねが苦笑を浮かべながら会話に加わり、アン王女はあかねの言葉を聞き、キラキラ目を輝かせると、

 

「変装!?・・・・・その手がありましたわ!」

 

 アン王女はポンと手を叩くと、周囲を見回した。アン王女の視線が、つぼみの顔をジィと見つめると、つぼみは思わず一歩後退り、

 

「あ、あのぅ・・・私に何か?」

 

「その眼鏡を・・・わたくしにお貸し頂けませんか?」

 

「エッ!?べ、別に構いませんけど、度が入ってますよ?」

 

「構いませんわ!」

 

 アン王女は、つぼみが掛けていた大きな丸いレンズの眼鏡を掛けた。だが、度がきついのかちょっとクラクラし、見かねた美希は、

 

「それじゃ目に悪いわ!あたし、伊達眼鏡を持って来てるから、あたしのを貸して上げる・・・それと、一応ヘアバンドとヘアゴムも貸すわ!!」

 

 美希は、自分が持って居た伊達眼鏡、ヘアバンドとヘアゴムをアン王女に貸した。アン王女は嬉しそうに受け取ると、

 

「ありがとうございます!これなら・・・」

 

 アン王女は、美希から借りたヘアバンドと、伊達眼鏡を身に付けた。伊達眼鏡は、昔の教育ママがしていたような形をしていて、お世辞にもアン王女に似合っているとは言えず、変装としては良かったのだが、髪形はヘアゴムで髪を束ねただけのポニーテイルで、

 

(もうちょっと髪形変えないと・・・いくら何でもバレるわ)

 

 アン王女の変装を、美希は呆れながら心の中でツッコミを入れた。そんな事にはお構い無いように、再びアン王女は真琴達の側に近付き、様子を伺っていると、

 

「あなた達が、アン王女が言ってた新しい妖精達ね?」

 

「そうシャル!私はシャルルシャル」

 

「僕はラケルケル!」

 

「ランスでランス!」

 

「ダビィだビィ!」

 

「私は剣崎真琴事キュアソードよ!こうしてトランプ王国の住民と会えるのも久しぶりだわ・・・アン王女はお元気かしら?」

 

 互いに自己紹介を終え、真琴に聞かれたシャルル、ラケル、ランスの三人、

 

「アン王女なら・・・シャル!?」

 

 突然シャルルの背後から腕が伸び、シャルルを拉致すると、数秒後、口に×マークのマスクを付けたシャルルが戻され、

 

「シャルル、どうしたの?」

 

「ンンンンン!」

 

「それじゃあ、何を言ってるのか分からないケル!アン王女は・・・ケル!?」

 

 今度はラケルの背後から腕が伸び、ラケルを拉致すると、数秒後、ラケルもシャルル同様、口に×マークが付いたマスクを付けられ唸っていた。

 

「二人共、どうしたでランス?アン・・・・」

 

 言葉が完全に終わる前に、ランスの背後から腕が伸び、ランスをも拉致した。数秒後、ランスも×マークを付けたマスクを付けられ唸っていた。

 

「さっきからどうしたの?」

 

 シャルル、ラケル、ランスの背後を、真琴が覗き込もうとして、アン王女は思わずドキリとするも、さり気なくラブ、美希、りんが、自分達の身体で、真琴からアン王女が見えないようにフォローした。遅れてえりかもやって来ると、真琴の注意を逸らすように、

 

「そう言えばさぁ、あたし達って、アン王女の事あんまり知らないよねぇ?真琴、アン王女って好きな物とかあんの?」

 

「エッ!?王女様はお花とか好きです。特に薔薇とか・・・」

 

「へぇ、薔薇が好きなんだぁ・・・今度キュアローズガーデンに案内してあげたいわね」

 

「後は甘い物が大好きです!来る時に頂いた甘い物の数々は、きっとアン王女も食べていたら喜んだと思います!!」

 

(わたくしが食べたら喜ぶ!?)

 

「まだ残ってるから、後でアン王女も食べて!」

 

 小首を傾げるアン王女に、小声でニコニコしたラブが囁いた。更にえりかが真琴に質問し、

 

「じゃあ、逆に苦手な物や嫌いな物は?」

 

「蛸は苦手でした・・・後は、人参を見ると私に良く分けて下さいました!」

 

「へぇ、蛸をねぇ・・・少し親近感湧いたわ!」

 

「本当!人参は私も嫌いだし!!」

 

(ソード・・・そういう事は他人に言わなくて良いのです!)

 

 アン王女が蛸や人参を嫌いだと知り、思わず親近感が湧いたラブと美希、アン王女は困惑気味に心の中で呟いた。

 

「それに、私と同じようにオバケも苦手でした・・・」

 

「オバケも!?何だか親近感湧いてきたわ!」

 

 苦笑を浮かべながら、りんが背後のアン王女をチラリと見ると、アン王女は顔を赤くした。真琴は更に言葉を続け、

 

「以前、王宮の方から怖い話を聞かされた事があって・・・私もアン王女も怖くて夜トイレに行けず、二人で王女様の部屋の・・・」

 

(ソォォォドォォォ!!)

 

 自分の赤っ恥なエピソードを、一同に喋りそうな真琴に、アン王女は側に合った倚子を掴んで頭上に振り上げた。背後から感じる殺気に、ラブ、美希、りん、えりかの額から冷汗が流れる。りんは、慌てて真琴の言葉を遮り、

 

「ま、真琴、それ以上は言わなくて良いわ?」

 

「エッ!?そうですか、昔の事だから別に話しても良いんですけど?」

 

 真琴は小首を傾げると、美希、ラブ、えりかも変顔浮かべながらりんに同意し、

 

「真琴ちゃんが良くても・・・ねぇ?」

 

「うん!真琴ちゃんが、二度とトランプ王国に帰れなくなるとヤバイから・・・聞かなかった事にしておくよ」

 

「真琴・・・聞いたあたしが悪かったしゅ!」

 

「私が二度とトランプ王国に帰れない?そ、そんな事無いです!王女様は、厳しい面もありますが、優しい方です!!」

 

(ソード・・・)

 

 振り上げた倚子を下ろしたアン王女だったが、真琴はさっきの会話の続きを何気に語り出し、

 

「怖い話を聞いてトイレに行けなかった時も、このままベッドで・・・」

 

(ソォォォドォォォ!!)

 

 再び顔色変えて、倚子を振り上げたアン王女に気付いたココとナッツは、慌てて人間姿に変化し、アン王女に駆け寄ると、二人でアン王女の身体を押さえながら小声で話し掛け、

 

「ア、アン王女、落ち着いて!」

 

「他の生徒達も怖がってるぞ!」

 

「で、ですが、あの娘ったら・・・」

 

 ココとナッツの言う通り、生徒達は怖がってアン王女の側から一斉に離れた。りん、ラブ、美希、えりかも加わってアン王女を宥めていると、アン王女は、自分の事をジィと見つめる真琴に気付き、顔から冷汗が流れる。頭上に掲げていた倚子を下ろすと、

 

「い、異常なしですわ!」

 

「ジィィィィ」

 

 真琴は、そんなアン王女の事をジィと見つめると、アン王女は動揺しながら、

 

「エ、エェェと、わたくしの顔に何か!?」

 

((((バレた!完璧にバレた!!))))

 

 りん、ラブ、美希、えりかが、困惑しながら真琴とアン王女の顔を見比べていると、

 

「もう少し静かにしてくれますか?」

 

「は、はい・・・ゴメンなさい!」

 

((((エェェェ!?気付いて無い?気付いて無いのぉぉぉ?))))

 

 アン王女のバレバレの変装を見ても、全く気付いて居ない真琴を見て、りん、ラブ、美希、えりかの目が点になった。真琴に怒られたアン王女は、バレずにホッとした気持ちと、家臣に怒られる屈辱で、複雑な胸中のまま後ろの空いている席に腰掛けた。

 

 

 そんなアン王女を見て居たパフは、

 

「やっぱり・・・あの人怖いパフ」

 

 パフがブルブル震え出すと、つぼみがパフを抱き上げ、優しく頭を撫でながら、

 

「大丈夫ですよ!おそらく、えりかが余計な事を聞いて、素直な真琴さんがそれに答えてしまったのでしょう・・・」

 

「うん、ココやナッツがアン王女の側に付いてるし、大丈夫だよ!」

 

 つぼみの言葉にのぞみも同意し、パフを安心させようとした。パフは二人の顔を交互に見比べ、

 

「本当パフ?」

 

「パフ、パフにはお兄ちゃんが付いてるロマ!」

 

「パフゥゥ!」

 

 アロマは自分の胸を叩くと、パフは嬉しそうに尻尾を振った。そんなパフとアロマを見たのぞみとつぼみは、顔を見合わせながら微笑を浮かべた。会話に加わったみゆきは、アロマとパフに話し掛け、

 

「ねえねえ、二人の住む所にも、プリキュアって居るのかなぁ?」

 

 顔を見合わせたアロマとパフ、アロマはコホンと軽く咳払いをすると、

 

「聞いて驚くロマ!僕達の国ホープキングダムには、遙か昔、伝説の戦士プリンセスプリキュアが居たロマ!!プリンセスプリキュアは三人居て、プリキュアに力を与えるという12個のドレスアップキーを使い、人々の夢を奪い、絶望させる大いなる闇を封じ、世界を平和に導いたロマ!!」

 

 アロマの話を、興味深く聞いていたつぼみ、のぞみ、みゆき、三人は顔を見合わせながら、

 

「プリンセスプリキュア・・・私達のように、この世界の為に戦ったプリキュア達が、ホープキングダムにも居たんですねぇ」

 

「へぇ、アロマとパフの国にも、プリキュアの伝説があるんだねぇ?」

 

「プリンセスかぁ、きっと優雅に戦うんだろうなぁ・・・」

 

「そ、そこまではアロマも知らないロマ」

 

「だよねぇ・・・」

 

 そう言うと三人で苦笑を浮かべた。教室をプカプカ浮かんでいた魔王は、アン王女にビビリ、窓に張り付く一人の妖精に気付くと、妖精に近付いた。

 

「お前、マアムの息子のユメタ!・・・お前も妖精学校に居たカゲ?」

 

「アッ!?魔王さん!うん、僕、友達が欲しくて・・・」

 

「それでマアムに頼んだカゲか?」

 

「うん、最初は反対されたんだけど、少しの間なら良いって言ってくれたの」

 

 魔王はユメタの言葉を聞くと、納得したようにコクリと頷いた。

 

 ユメタ・・・

 

 夢の世界の住人で、魔王の知り合いのマアムの息子である。水色の小柄な体をしていて、マアムと同じように、額に月のマークをした水色の小さな身体をしていた。魔王は絵本の世界に行く以前、偶然彷徨い辿り着いた夢の世界で、悪夢獣と呼ばれる、人間の悪夢から生まれた怪物に襲われていたユメタを助けた事があった。

 

 親睦を深める一同だったが、グレルはピョンと机の上に飛び乗ると、

 

「プリキュア!俺と勝負しろ!!」

 

「グレル!折角来て頂いたプリキュアの皆さんに失礼ですよ!!」

 

 大声で叫ぶグレルを見て、なぎさ達はキョトンとした表情を浮かべた。亀の教師は慌ててグレルを注意したものの、グレルは言う事を聞かなかった。ぐらさんは呆れたように、

 

「全く、グレル、嫉妬は見苦しいぜ!」

 

「う、うるせぇなぁ・・・プリキュア何か、プリキュア何か、変身してなきゃ、只の女の子じゃねぇかぁぁ!!」

 

 他の妖精達からも冷ややかな視線で見られ、グレルは堪らず教室を飛び出した。

 

「ま、待ってよ、グレル!」

 

 それに気付いたエンエンは、直ぐにグレルの後を追った。呆然としていたなぎさ達は、

 

「何なの、あの子?」

 

「あのままほっといて良いんでしょうか?」

 

 側に居たタルトにひかりが声を掛けると、タルトは右手を振りながら、

 

「ああ、構へんわ!少しグレルの頭を冷やした方がエエわ」

 

 そんなグレルの後を、闇が追っていた事に気付いた者は居なかった・・・

 

           第八十六話:困惑のアン王女

                 完

 




夏休みだったので、何とかもう一話書き終わりました!
また次回は間空きます・・・

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