プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第八十四話:真琴の学校デビュー

1、真琴と魔王の居候先は!?

 

 ダークプリキュア5、魔王とピーちゃんの活躍で、無事に助け出されたプリキュア達、アン王女は、トランプ王国で新たに生まれた三人の妖精の事を聞き、トランプ王国へと帰って行った。強がってみたものの、ソードは元気が無かった・・・

 

「ソード、元気出すカゲェ!さっきの勢いはどうしたカゲェ!」

 

「うん・・・・そうだよね!」

 

 一同を振り返り、満面の笑みを浮かべたソードを見て、一同はホッと安堵した。マリンは、膨れっ面しながら魔王を見つめると、

 

「そんな事より・・・やい、エロ魔王!さっきはよくもあたし達に恥をかかせてくれたねぇ?」

 

「カゲ!?あれは、審判の俺に口答えしたえりかが悪いカゲェ!」

 

「ムッキィィ!素直に謝れば許して上げようと思ったのにぃ・・・海より広いあたしの心も、ここらが我慢の限界だよ!!」

 

 マリンタクトを取りだしたマリンは、さっきの恨みとばかり魔王を追い回し、魔王は巧みにプリキュア達の間を掻き分け逃げ続けるも、パッションに呆気なく捕まり、

 

「魔王もマリンも、その辺にしておきなさい!」

 

「は~い!」

 

「分かったカゲ」

 

 パッションに窘められ、マリンは渋々魔王を追い回すのを止め、魔王も素直にマリン、ブロッサム、サンシャイン、レモネードに謝罪した。ブラックは、ダークプリキュア5を見つめると、

 

「あんた達、本当に良いタイミングで来てくれたわ・・・裏でスタンばってた?」

 

「エッ!?何の事?実は、以前にも帰って来ようと思った時があったの!プリキュアのみんなぁ!私に力を貸してぇぇ!!て声が、私達の心の中で聞こえた事があって・・・」

 

「その時は、私達が居た場所から、地球まで大分距離があったから、駆け付けたくても出来なかったんだけど・・・」

 

「それであんた達が、また新たなる敵と戦っているんじゃないかとは思っては居たんだけど・・・」

 

「さっき、またあの時の声が聞こえて、つぼみのお婆さんの薫子さんに助けを求める声が聞こえたから、これはあなた達の身に何か起こったんじゃないかと思って・・・」

 

「マスターに頼んで、闇の気配を探ってもらったところ、この場所だって分かって駆け付けたのよ」

 

「間に合って良かったわ!」

 

 ブラックに聞かれた、ダークドリーム、ダークアクア、ダークルージュ、ダークミント、ダークレモネードが語った内容を聞き、一同の視線がエコーに集まった。ブラックは、エコーをマジマジと見つめ、

 

「エコーの声が、ダークプリキュア5達の下まで届いて居たとは・・・」

 

「過去の世界に飛ばされた、私達の下にも届いていたぐらいだし・・・不思議では無いわ!」

 

 ホワイトは、嘗て過去の世界に飛ばされていた自分達にも聞こえた程だから、ダークプリキュア5の下に届いていても不思議では無いと告げた。ハッピーは、改めてジィとエコーを見つめると、

 

「今改めて思ったけど・・・エコーの力って、凄いんだねぇ?」

 

「エッ!?私に聞かれても・・・でも、みんなの役に立っているなら嬉しいです!」

 

 エコーは、謙遜しながら少し照れたように顔を赤らめた。プリキュア達の中でも異色な存在であるエコーだが、仲間達は、エコーの力の重要性を改めて認識した。

 

 ブラックは一同の顔を見渡し、

 

「折角ダークプリキュア5も帰って来てくれたけど、アン王女は帰っちゃったし、この後どうする?」

 

「ちょっと遅くなっちゃったしね・・・また後日集まって、みんなでソードの歓迎会でも開いてあげましょうか?」

 

 もう日も完全に暮れて、七色中学校も闇に覆われていた。ホワイトは、後日改めてソードの歓迎会でもしてはどうかと提案すると、ムーンライトもコクリと頷き、

 

「それが良いわね!大学生の私達は兎も角、まだ高校生や中学生のみんなを遅くまで連れ出すのは、気が引けるわね」

 

 ソードの歓迎会は、また後日開くという事に一同も依存はなかったのだが、ローズはダークプリキュア5を見ながら、

 

「あなた達、まだこっちに居られるの?」

 

 ローズに聞かれたダークプリキュア5の五人、五人の視線が、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコー、そしてソードに向けられ、

 

「折角新しいプリキュア達にも会えたし、少しはのんびりしたい所だけれど・・・」

 

「あたし達があなた達に会いに来た理由が・・・実はもう一つあるの!」

 

「それをあなた達に伝えるのも、私達の使命!」

 

「これから話す事を、心の何処かに留めておいて欲しいの!」

 

「みんな!カオスに気を付けて!!」

 

「カオスって・・・あのカオス?」

 

 ダークアクア、ダークルージュ、ダークレモネード、ダークミント、そしてダークドリームが、一同に忠告を与えた。カオスと聞いたドリームは、思わずダークドリームに問い返した。

 

 カオス・・・

 

 闇の救世主を名乗るバロムによって、強制的に目覚めさせられた闇の根源・・・

 

 プリキュア達の思いを一つにした、無限シルエットレクイエムによって、カオスは再び眠りに付いた筈だと一同は思っていた。だが、ブラックとホワイトだけは、ダークドリームの忠告を聞いて、ハッとした表情を浮かべた。

 

(そうか!そうだったんだ!!私とホワイトが、最近頻繁に見る長い黒髪の少女の夢・・・あれは、カオスだったんだ!!でも、何故私達だけに!?)

 

 ブラックは、過去の世界から戻って来てから、頻繁に見る長い黒髪の少女の夢の事を思いだしていた。思い返せば、加音町でバロムと戦い、闇の中でカオスを鎮め、闇の門から地上に出た時、ブラックとホワイトは、闇の中に少女を見て居た。後で他の仲間達に聞いてみても、ブラックとホワイト以外、その少女は誰も見て居なかった。あの時はカオスだとは気付かなかったが、今思い返せば、間違いなくカオスであったとブラックは確信した。

 

「ねえ、カオスに気を付けてって・・・どういう事?」

 

 怪訝な表情でダークプリキュア5に問い掛けたブラック、ダークプリキュア5は小首を傾げながら、

 

「さあ、私達にも正確な事までは分からないわ!ただ、カオスの動きが妙だって、マスターは言ってた・・・」

 

「あなた達プリキュアの様子を、カオスは見ているようだってマスターは言ってたわ!」

 

 ダークドリームとダークミントの言葉を聞き、ブラックはチラリとホワイトを見ると、ホワイトもコクリと頷き、

 

「今直ぐにカオスが動く事は無さそうだけど、用心しておいた方が良いのは確かね・・・忠告ありがとう!」

 

「気にしないで!これも私達の役目だから・・・ところで、キュアハッピーって言ったわね?話があるんだけど・・・少し良いかしら?」

 

「エッ!?私に?もちろん構わないですけど・・・」

 

 ダークドリームに呼び出されたハッピーは、一同から離れ校舎裏に場所を移した。静まりかえる夜の校舎裏は不気味で、ハッピーが少しビクビクしているのを見て、ダークドリームは小首を傾げた。

 

「どうかした?」

 

「い、いえ・・・ちょっと夜の学校は不気味だなぁと思って・・・」

 

 思わずそんなハッピーを見たダークドリームはクスリと笑い、

 

「フフフ、ハッピーは、どことなくドリームに似てるわねぇ?」

 

「エッ!?そ、そうかなぁ?」

 

「エエ・・・だからこそ、あなたに聞いてみたいと思ったの!あなた、バッドエンドプリキュア達をどう思う?」

 

 急に真顔になったダークドリームを見て、ハッピーも真顔になった。バッドエンドプリキュアの事を聞かれても、さっき初めて会ったばかりで、ハッピーにも彼女達の事は良く分からないというのが本音だった。

 

「どう思うと聞かれても、さっき会ったばかりだし・・・私達スマイルプリキュアに、どことなく似て居るなぁとは思いましたけど・・・」

 

「そう・・・でもこれだけは言える!彼女達に、光の温かさを教えられるのは・・・スマイルプリキュア!あなた達よ!!」

 

「エッ!?」

 

「彼女達がこのまま闇の道を進むか、光の温かさに触れ、私達のように光と共に歩む道を進むかは、あなた達次第って事・・・でも、それには一度は確実に彼女達と戦う日が来る!友情の大切さを知った彼女達は・・・強いわよ!!」

 

 ダークドリームの言葉を聞き、ハッピーは激しい動揺をした・・・

 

 

 戻って来たハッピーとダークドリームは、一同の様子を見にやって来た佐々木先生に気付いた。

 

「佐々木先生、どうして此処に!?」

 

「どうしてじゃありません!急に学校を使いたいって連絡が合って、気になって来てみたら・・・プリキュアの姿になっているという事は、またあの人達が現われたの?」

 

「ハッピー、この人は?」

 

「私達の学校の先生で、佐々木なみえ先生です!先生は、私達がプリキュアだって知ってて協力してくれてるんです」

 

「初めて見る方よねぇ?私は星空さん、青木さん、緑川さん、日野さん、黄瀬さんの担任をしている佐々木なみえです!」

 

「私は、ダークドリームです!」

 

 互いに自己紹介をしながら、大体の状況を理解した佐々木先生だった。ハッピー達と一緒に現われた佐々木先生を見て、プリキュア達は挨拶し、魔王は目を輝かせ、側に居たブロッサムに話し掛けると、

 

「おいつぼみ、あの美人は誰カゲェ?」

 

「エッ!?魔王は世界絵本博覧会の時に、佐々木先生に会ってませんでしたっけ?あの方は、ハッピー達の学校の先生で、佐々木なみえ先生って言うんですよ!」

 

「知らないカゲ!あの時は、みゆきを懲らしめるのに必死で、気付かなかったカゲ・・・」

 

「私達がプリキュアと知っている数少ない協力者の一人よ!」

 

「魔王、言っておくけど、佐々木先生に変な事したら駄目だよ?」

 

 近くに居たイーグレットとレモネードも会話に加わり、レモネードは前もって魔王を窘めた。

 

「それじゃあ、私達は今回の報告も兼ねて、マスターの下に戻るわ!」

 

 顔を見合わせたダークプリキュア5、ダークドリームが一同に語り掛け、ダーククイーンの下に戻ると告げると、一同は残念そうな表情を見せるも、

 

「そっかぁ・・・五人共、危ないところを助けに来てくれてありがとう!」

 

「ええ!みんなが来てくれなかったらと思うと・・・鳥肌が立ってくるわ」

 

「本当、感謝してるわ!」

 

「また直ぐに会えるって、私・・・信じてる!」

 

「ウン!ダークドリーム、みんな、また何時でも帰って来てよね!」

 

 名残惜しそうにしながらも、ブラックが、サンシャインが、ブライトが、パインが、そしてドリームが声を掛けた。ダークプリキュア5はコクリと頷き、

 

「エエ、また近い内に必ず・・・それじゃあ、また会いましょう!」

 

 ダークプリキュア5は、一同に軽く手を振りながら時空の狭間に消えて行った・・・

 

 その姿を、一同は惜しみながら手を振り続けていた・・・

 

 

 

 一同が変身を解除した事で、佐々木先生は改めて一同を見渡しながら、みゆき、あかね、やよい、なお、れいかを見つめると、

 

「みんな、今日はもう遅いから帰りなさい!親御さんも心配しているわよ?現に、星空さんのお母様から電話を頂いたし・・・」

 

「エッ!?お母さんが?」

 

「ええ、心配してたわよ?」

 

 みゆきの母育代が、みゆきが中々帰って来ない事で心配し、佐々木先生の家に電話を掛けてきたと知り、みゆきは変顔浮かべながら動揺した。なぎさも佐々木先生の言葉に同意し、

 

「そうですねぇ・・・じゃあ、今日はお開きにしようか?」

 

「そうね・・・真琴、あなたはこれからどうする?私と一緒に加音町で暮らす?」

 

 真琴の事を気に掛けたエレンが問うと、真琴は微妙な表情を浮かべ、

 

「そうしたいのは山々何ですけど・・・何時ジョーカーやバッドエンドプリキュア達が現われるか分からないし、私はこの町で過ごそうかと・・・」

 

 真琴が七色ヶ丘で暮らそうかと考えて居ると聞き、みゆき達の目が輝いた。特にやよいはキラキラ目を輝かせ、

 

「本当!?まこちゃんも私達の街で暮らせるなんて・・・歓迎しちゃう!」

 

「それは構わんけど・・・真琴、どっか泊まるあてはあんの?」

 

「一週間交代ぐらいなら、あたし達の家に泊めて上げられるけど・・・」

 

 行く宛があるのか真琴に聞いたあかねとなおも心配そうに、一週間交替ぐらいなら、自分達の家に泊めて上げられると提案するも、真琴はゆっくり首を振り、

 

「皆さんの迷惑になるような真似はしたく無いので、何処か公園とかでダビィと一緒に凄そうかと・・・」

 

 真琴の考えを聞いた一同から響めきが沸き起り、みゆき達は特に目を点にしながら驚き、

 

「「「「「エェェェ!?」」」」」

 

「いや、それは不味いって!」

 

「真琴さん、こちらの世界には、こちらの世界のルールがありますし、そのような真似をしたら、警察の方に家出少女と勘違いされますよ?」

 

 なおとれいかに考え直すように言われ、真琴は困惑気味に、

 

「でも・・・」

 

「だったら、不思議図書館はどうかなぁ?」

 

「良いねぇ!あそこなら本も一杯あるし、楽しく過ごせそう!!」

 

 やよいの提案にみゆきも同意した。ほのかは確認するように真琴に声を掛け、

 

「真琴さん、自炊とかするの?」

 

「自炊・・・って何?」

 

「自炊って言うのは、自分で食事を作ったり、お洗濯やお掃除する事を言うんだよ!」

 

 やよいの説明を聞き、見る見る困惑気味な表情を浮かべた真琴は、ゆっくり首を振ると、

 

「無理です!自炊とかした事無いし、王宮に住んでた頃は、専門の方が居たし・・・」

 

 真琴の困惑した表情を見て、一同は、真琴を一人で暮らさせるのは無理だと悟った。ダビィは微妙な表情で真琴を見つめ、

 

(ダビィが人間の姿になれれば、ソードの力になれるのに・・・)

 

 妖精姿で真琴の為に料理など作って上げられず、ダビィはガッカリした表情で俯いた。

 

「詳しい事情は分からないけど、あなた行く宛が無いの?」

 

「佐々木先生、この子は剣崎真琴ちゃん、キュアソードって言って・・・」

 

 見かねた佐々木先生も会話に加わると、みゆきが手短に真琴の事を佐々木先生に教えた。トランプ王国から、ジョーカーに奪われた秘宝を取り戻す為に、こっちの世界にやって来た事などを語った。ジィと真琴の顔を見ながら話を聞いていた佐々木先生は、

 

「大体の事情は分かったわ・・・良かったら、私の家にいらっしゃい!私は一人住まいだし、一人ぐらい増えたって大丈夫だから!!」

 

「でも、それじゃあご迷惑に・・・」

 

「子供が遠慮する必要無いわ!」

 

 一同からもそれが良いと薦められ、真琴とダビィは、佐々木先生の下で居候する事になった・・・

 

 

「ゴホカゲ、ゴホカゲ」

 

 わざとらしい咳払いをした魔王を、怪訝な表情を浮かべた一同が見つめると、魔王は俺の事を忘れて無いか?と言いたげに、

 

「それで、今日俺は何所に泊まれば良いカゲ?」

 

「「アッ!?」」

 

「すっかり忘れてた!」

 

 順番通りなら、本来魔王を泊めるべき響と奏、アコの三人は、困惑気味に顔を見合わせながら思い出し、

 

「エェェと・・・せっかく七色ヶ丘に来てるし、魔王も加音町に戻るよりは、七色ヶ丘に居る方が良いよねぇ?」

 

「そうそう!響、たまには良い事言うわねぇ!!」

 

「面倒だもんね!」

 

「たまにはは余計だよ!」

 

 奏とアコも響の案に同意すると、見る見るあかね、やよい、なお、れいかの表情が曇り、

 

「そんなん狡いわぁ!」

 

 あかねが思わず不満そうにポツリと呟くと、やよい、なお、れいかがコクリと頷いた。苦笑を浮かべたみゆきは、

 

「まあまあ、ここは魔王の意見も聞いてみようよ!魔王はどうしたいの?」

 

「俺か!?俺は・・・この先生と一緒に暮らすカゲェェ!!」

 

「エッ!?私の家?」

 

 満面の笑みを浮かべながら、魔王が希望を述べると、佐々木先生は困惑した。他の一同も魔王を困惑気味に見つめ、なぎさはハァと溜息を付くと、

 

「魔王ってさぁ・・・意外と熟女マニアだよねぇ?」

 

「熟女って・・・なぎさ、佐々木先生はまだ二十代何だから失礼よ!」

 

「そうでした!」

 

 ほのかに注意され、なぎさは舌をペロッと出しながらそうだったと苦笑を浮かべた。

 

「私、魔王と一緒に住むの・・・嫌です!」

 

 さっき魔王に騙された真琴は、泣きそうな表情で魔王を指差し嫌々をした。魔王は、真琴の周りをプカプカ浮かびながら、

 

「ソード!加音町からここまで、俺が連れて来てやった恩を忘れたカゲかぁ?」

 

「それは・・・それとこれとは別だもの!」

 

 頬を大きく膨らませた真琴に拒絶され、さらに佐々木先生も申し訳無さそうに魔王を見つめ、

 

「私も・・・家はペット禁止だから、見つかったら色々と・・・悪く思わないでね?」

 

「ガァァァァン!!」

 

 魔王はフラフラ地上に落下しへたり込んだ。そんな魔王を見て、一同にも少し同情心が沸き上がった時、誰かを呼ぶ声が校門から聞こえ始め、そちらの方角を一斉に見た一同、段々声は校舎の方に近づいて来て、

 

「みゆきぃ、居るのぉ?」

 

「エッ!?お母さんだ!」

 

「カゲ!?」

 

 声の主がみゆきの母育代だと分かり、みゆきが少し動揺していると、落ち込んでいた魔王は素早く反応して顔を上げた。みゆきが慌てて母の下に駆け寄り、みゆきの母ならば、挨拶しなければ不味いだろうと考え、なぎさ達一同もその後を追った。

 

「みゆき、遅くなるなら連絡入れなきゃ駄目よ!」

 

「ゴメンなさい!」

 

 育代は、みゆきの頭を撫でながらも、さり気なく注意をし、みゆきも素直に謝った。育代は、みゆきの背後に居る黒い物体に気付くと、不思議そうに小首を傾げ、

 

「ところで・・・みゆきの後ろに居るのは!?」

 

「エッ!?」

 

 慌てて背後を振り返ったみゆきの表情が、見る見る変顔に変わった。何故なら、背後には育代を見つめ、目をハートマークにしている魔王が居たのだから・・・

 

「魔王カゲ!みゆきの友達カゲェ!!」

 

「ま、魔王!?」

 

 魔王が当たり前のように育代に話し掛け、みゆきは大パニックになり、シドロモドロの言い訳を育代に始めた。遅れてやって来た一同も、魔王の行動を見て目を点にし、あかねは呆れ返りながら、

 

「魔王の奴、アホちゃうかぁ!?みゆきのおかんにバレるやないかぁ?」

 

「そうですねぇ!あの容姿では・・・九官鳥やオウムだとは誤魔化せませんし・・・」

 

 あかねの言葉に、れいかも困惑気味に同意した。みゆきに加勢して、何とかこの場を誤魔化そうと考えた一同であったが、

 

「そう、みゆきのお友達なの!?魔王ちゃんって言ったわね?みゆきが何時もお世話になってます!」

 

「カゲェ・・・こっちこそ、みゆきには色々お世話になってるカゲェ!行く所が無くて困ってた俺を、みゆきは、家で暮らせば良いって言ってくれたカゲェ!!」

 

 魔王は目をウルウルしながら育代に語り、娘のみゆきが、そんな優しい心を持っていると知り、育代は嬉しそうに表情を和らげ、

 

「まあ、そうだったの?」

 

「エェェェ!?私、そんな事一言も言ってないよぉぉ・・・ハップップゥゥ」

 

 魔王の捏造を、育代は信じて居るのか、意外とすんなり魔王を受け入れ、みゆきは変顔浮かべながら困惑した。

 

「う、受け入れたなぁ?」

 

「うん!受け入れたね?」

 

 苦笑を浮かべたあかねとなお、くるみも困惑気味に、

 

「流石はみゆきのお母さんだわ!」

 

「それより、私達も挨拶しなくちゃ!」

 

 ほのかに諭され、一同も育代に挨拶し、なぎさ、ほのか、ゆりが、自分達が遊びに来たから、みゆき達は七色ヶ丘を案内してくれて遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたと謝罪した。

 

「エェェと、じゃあ私達もそろそろ帰るわ!」

 

「みゆきちゃん、魔王をよろしくねぇ!」

 

 困惑しながらも、なぎさと響に後を託されたみゆきは、かなり動揺しながら、

 

「エェェ!?本当に私の家に?」

 

「みゆき、仲良くするカゲ!みゆきママとも仲良くしたいカゲ!!」

 

「まあ、魔王ちゃんったら・・・でも、本当に言葉が上手ねぇ?良いわよ!」

 

「みんなぁぁぁ・・・」

 

 育代は、魔王が居候する事にOKを出し、半泣き顔のみゆきが、一同に縋るような視線を向けるも、なぎさも困惑気味に、

 

「ま、まあ、みゆきのお母さんも許可してるからさぁ」

 

「みゆき、何か魔王がしでかしたら連絡入れて!今度こそ宇宙の果てに捨ててくるから!!」

 

「それはそれで、魔王が可哀想だよぉ・・・ハァァ」

 

 せつなはジィと魔王を見つめながら、みゆきを励ますように声を掛けるも、みゆきの心は不安で一杯だった。キャンディは見る見る涙目になると、

 

「ずるいクルゥ!キャンディも・・・」

 

「ワァァァ!キャンディは、縫いぐるみって事になってるんだからダメだよぉ!!私、これからどうなっちゃうのぉぉ!?」

 

 自分もちゃんと妖精として、みゆきの家で過ごしたいキャンディも、魔王のように育代に存在を認められたいと思うも、既にキャンディはみゆきが持って居るぬいぐるみだと育代には言ってあり、みゆきは慌ててキャンディを抱き上げ宥めた。

 

 これからどうなってしまうのか?

 

 不安がるみゆきを余所に、こうして、真琴は佐々木先生の家に、魔王はみゆきの家に居候する事になった・・・

 

 

 

2、最初が肝心

 

 佐々木先生のご厚意を受け、真琴とダビィは、佐々木先生の部屋で居候生活をしていた。

 

 佐々木先生の賃貸マンションは、築三年の三階建てで、築三年という事もあり、中々おしゃれなマンションで、真琴は初めて一緒に来た時、こんな素敵な所に、自分が一緒に住んで良いのだろうかと悩んだ程だった。マンションはオートロックで、全室モニタ付きインターホンは、女性の一人住まいにとっては安心でき、佐々木先生がこのマンションを選んだのもこの事が大きかったし、住んで居る住人も、若い女性やカップルが多かった。佐々木先生の部屋は3階の角部屋、間取りは2DKで、洋室6.7畳、洋室5.3畳の二部屋があるものの、真琴が来るまでは、5.3畳の洋室は、専らベイスタ-ズグッズで埋め尽くされていたが、あの日真琴と一緒に帰って来た時に、ベイスタ-ズグッズは、自分の部屋のクローゼット送りにして、5.3畳の洋室は、真琴に提供してくれた。

 

 

 あれから一週間・・・

 

 真琴は朝から緊張していた・・・

 

 今日は、みゆき達が通う七色ヶ丘中学校に、真琴も転入生として登校する日だったのだから・・・

 

 佐々木先生から、子供は学校に通わないと駄目だと言われた真琴は、佐々木先生の親戚として、七色ヶ丘中学校の生徒として通う手配をしてくれた。トランプ王国に居た頃は、学校ではないが、城で読み書きや計算などを、他の孤児達と一緒に、アン王女に習って居た真琴だった。

 

(き、緊張するなぁ・・・学校ってどういう所だろう?)

 

「剣崎さん、そろそろ出掛けるわよ!」

 

「は、はい!」

 

 佐々木先生に呼ばれた真琴は、ガチガチに緊張していた。他のプリキュアの仲間達から、学校生活の噂は色々聞いては居たものの、やはり自分の目で確かめないと、真琴の不安は拭えなかった・・・

 

 

 七色ヶ丘中学校二年二組・・・

 

 遅刻ギリギリに登校してくるみゆきを除いた、あかね、やよい、なお、れいかの四人も、後輩として通う事になる真琴の事を心配していた。

 

「今日からやったなぁ、真琴がウチらの学校に転入してくるの?」

 

「うん!沢山お友達が出来ると良いけどねぇ?」

 

「根は良い子だから、きっと友達も出来るよ!」

 

「ですが、真琴さんは些か世間離れした面もありますし・・・」

 

「れいかが言うんか?」

 

「エッ!?何か問題でも?」

 

「いやぁ、問題って訳やないけど・・・なぁ?」

 

「れいかもちょっと天然な所があるからね?」

 

 思わず顔を見合わせてクスリとしたあかねとなお、れいかは何の事か分からず小首を傾げ、やよいはそんなれいかを見てクスクス笑った。

 

 

 真琴は、職員室で佐々木先生から、自分の担任になる1―1組の担任、坂田すみれ先生を紹介されていた。坂田先生は音楽の担当で、眼鏡を掛けて居て、茶髪のショートヘアーをしていた。佐々木先生より少し若い20代の女性教師で、担任を持つのはこの年が初めてだったが、生徒からの人望もあった。

 

「じゃあ、後は坂田先生の言う事を聞いてね!」

 

「はい!ありがとうございました!!」

 

「では坂田先生、真琴をよろしくお願いしますね!」

 

「分かりました!それじゃあ、剣崎さん・・・一緒にクラスメートのみんなの所に行きましょう!!」

 

「は、はい!」

 

 緊張する真琴が、ぎこちなく坂田先生の後に付いて歩いて居た時、下駄箱から聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

「遅刻ぅぅぅぅ!」

 

「星空さん!あなたは、毎度毎度・・・それに、廊下を走ってはいけません!!」

 

 遅刻しそうで、大慌てで廊下を走っていたみゆきを見付け、佐々木先生はみゆきを呼び止め説教をしていた。緊張していた真琴だったが、遅刻しそうでアタフタしているみゆきを見ると、思わず笑みが浮かび、真琴の緊張が解れた。みゆきもそんな真琴に気付き、

 

「まこちゃん!そういえば今日からだったね?」

 

「はい!これからよろしくお願いします・・・星空先輩!」

 

「エェェ、みゆきで良いよぉぉ!」

 

 真琴に星空先輩と呼ばれたみゆきは、イマイチしっくり来ないのか、みゆきで良いと照れくさそうに真琴に伝えた。教室に向かう真琴の後ろ姿を見たみゆきは、

 

「先生、まこちゃん大丈夫かなぁ?」

 

「エッ!?そ、そうねぇ、昨日から大分緊張していたようだしね・・・でも、あなた達のお仲間の黒川さんが、真琴を気に掛けて、昨日電話でアドバイスしてくれたそうよ!」

 

「へぇ、エレンさんがぁ・・・そう言えばエレンさんも、響さんと奏さんの学校に転入してきたって言ってたっけ?」

 

 この場に響と奏が居れば、エレンが真琴にアドバイスをしたと聞き、些か不安を覚えただろうが、みゆきがそんな事を思う事は無かった。

 

 

 一年一組・・・

 

 真琴が通う事になるクラスメート達は、どんな子が転入してくるのか気になりザワ付いていた。担任の坂田先生がクラスに入り、一同に新しい仲間が加わると告げ、真琴を教室に導いた。真琴の心臓の鼓動がドキドキ速く脈打ち、緊張気味の真琴が教室に入るも、チラリとクラスメートを見て、緊張から下を向いた。

 

(真琴、しっかりするのよ!エレンさんも言ってたじゃない・・・最初が肝心だって!!)

 

 覚悟を決め、顔を上げた真琴は、クラスメート達の視線を一斉に浴びて、再び心臓がドキドキした。

 

「それじゃあ剣崎さん、黒板に名前を書いて、みんなに自己紹介して!」

 

「は、はい!」

 

 黒板を向いた真琴は、白いチョークを手に取ると、昨夜のエレンの言葉が浮かんでくる。頷いた真琴は、背伸びをしながら文字を書き始めたが、それを見ていた坂田先生も、クラスメート達も、真琴の行為を呆然としながら見て居た。何故なら、真琴は最初の一文字である剣という字を、黒板一杯に書いてしまい、隅っこに小さく崎真琴と書かれていた。思わずクスリとクラメート達から笑いが起こり、真琴は小首を傾げた。

 

 

「な、何やってるのかしら、あの子!?」

 

「緊張しちゃったのかなぁ?」

 

 まるで覗き見するように、一年一組を覗くみゆきと佐々木先生、二人の肩を誰かがトントンと叩くと、二人はギクリとしながら背後を振り返った。そこには60近い恰幅良い白髪の男性が立っていて、

 

「佐々木先生、ご親戚の子が心配なのは分かりますが・・・もうホームルームの時間は過ぎてますよ?」

 

「エッ!?こ、校長先生?し、失礼しましたぁぁぁ!」

 

 佐々木先生は、大慌てでみゆきの右腕を掴み、自分のクラスへと戻って行った・・・

 

 7月に入ってから、転入生が来る事などまず無い為、真琴は、クラスメートの女子達から質問攻めにされるも、以前にみゆき達からアドバイスを貰っていて、トランプ王国の事や、プリキュアの事は、秘密にするように言われていた。クラスメート達は、何処か世間擦れをしている真琴の事を受け入れた。

 

 

 放課後、不思議図書館に集まったみゆき達とあゆみは、真琴から今日の出来事の報告を受けていた・・・

 

「ハァ、学校って色々大変何ですね?」

 

「急にどうしたん?」

 

「何かあったの?」

 

 溜息を付いた真琴を見かねて、あかねとなおが聞いてみると、国語や英語、歴史などはチンプンカンプンで分からず、家庭科の授業では、キャベツのみじん切りをしたら、まな板まで一緒にみじん切りをして、家庭科の先生やクラスメートの女子を脅かせた。れいかは、落ち込む真琴を慰めるように、

 

「真琴さんは、トランプ王国からこちらの学校に通ってまだ間もないですし、直ぐに理解出来なくても、気にする必要はありませんよ?」

 

「うん、そうだよ!私何か全部分からないし!!」

 

「みゆきちゃん・・・それはそれで不味いと思うけど?」

 

 れいかの言葉に頷くみゆきを見て、あゆみは苦笑混じりにツッコミを入れた。れいかは真琴の教科書を開くと、

 

「真琴さん、私でよければお教え致しますよ?期末テストも近いですしね!」

 

「本当ですか!?よろしくお願いします!」

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

「みゆきちゃん達まで!?」

 

 れいかから期末テストが近いと聞いた瞬間、みゆき、あかね、やよい、なおの顔色が変わり、真琴同様れいかに頭を下げ、あゆみは再び苦笑した。

 

 真琴は元々頭が良い方で、れいかの教えを受け着実に実になった反面、みゆき達はさしたる上達は見られなかった・・・

 

 

 三日後・・・

 

 れいかに教わった内容を予習していた真琴の側に、ツインテールをした緑髪の少女若林さなえと、赤髪のショートヘアーの真鍋ゆきが近付いた。二人は、見る見る勉強が上達している真琴に興味を持ったのか、

 

「剣崎さんって、本当は頭良いのねぇ?」

 

「本当!転入してきた時とは大違いだよねぇ?」

 

「ううん、先輩の青木さんが教えてくれたの!」

 

 謙遜した真琴が、れいかに教わっていると教えると、さなえとゆきは大変驚き、

 

「エェェ!?剣崎さん、生徒会副会長の青木先輩と知り合いなの?」

 

「す、凄い・・・」

 

「うん!他に星空先輩、日野先輩、黄瀬先輩、緑川先輩にも仲良くして貰ってるの!!」

 

「エェェ!?サッカー部の緑川先輩や、バレー部の日野先輩まで?」

 

「星空先輩っていうと・・・・あの?」

 

「七色ヶ丘中学校、始まって以来の遅刻常習犯で有名な?」

 

 さなえとゆきは、みゆきの事は不名誉な内容で記憶しているようで、真琴は苦笑した。真琴にも、プリキュアの仲間達以外に、親しい友人が出来たようで、みゆき達もホッと安堵した。

 

 真琴はシロップに頼み、トランプ王国に居るアン王女に手紙を書いた。トランプ王国にやって来たシロップから、真琴からの手紙を貰ったアン王女は、内容を見ると見る見る目に涙を浮かべ、

 

「ソードは、向こうの世界で頑張って居るのですねぇ・・・友達も出来たようで何よりです!私も何れ、ソードがお世話になっている佐々木先生に、直接ご挨拶に行かねばなりませんねぇ」

 

「ところで、プリキュアの妖精達はどうしたロプ?」

 

「はい、アフロディテ様に気を利かせて頂き、既に妖精学校に入学して頑張って居ます!こちらの方も、私は近い内に様子を見に行こうと思って居ます」

 

 アン王女の報告を聞き、シロップは頷いた。ソードも、プリキュアの妖精達も、学校で勉強を頑張って居る。今一度真琴からの手紙を読んだアン王女は、嬉しそうな表情を浮かべ、

 

(ソード、次に会う時を楽しみにしていますよ!)

 

 アン王女は、ソードからの手紙を大事そうに懐に仕舞い込んだ。

 

 だが不本意ながら、この後直ぐソードに再会する事になるとは、この時のアン王女は知る由も無かった・・・

 

         第九章:魔王と王女とバッドエンドプリキュア!

                   完

 




中々書く時間が・・・
三連休も町内会の行事で潰れてます。これが投稿された時間は、盆踊り大会でゴミ拾い・・・
これが終われば夏は夜回りだけなので、夏休みの五日間は第十章の執筆に専念する予定です!

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