プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第七十九話:魔王と少女達(後編)

1、魔王の精神修行!?

 

 あれから数日・・・

 

 薫子が所長を務める植物園に集まった、つぼみ、えりか、いつき、ゆりだったが、四人は、目の下に隈を付くって、眠そうな表情を浮かべる、魔王を抱いたせつなを見て呆然としていた。見かねたゆりが心配そうにせつなに話し掛け、

 

「せつな、具合が悪そうだけど・・・大丈夫!?」

 

「ええ、これで魔王から解放されると思ったら・・・嬉しくて踊りたいぐらいよ」

 

「・・・・そ、そう、なら良いんだけど」

 

 何処か口元に笑みを浮かべているようにも見えるせつなを見て、ゆりは困惑した。つぼみ、えりか、いつきも困惑気味に、

 

「せつなさん・・・少し変ですねぇ?」

 

「変って言うか・・・寝不足で、ハイテンションになってるみたいだねぇ?」

 

「一体何があったんだろう?」

 

 そんなせつなを見て、小首を傾げるつぼみ、えりか、いつきだった。

 

 せつなが、目の下に隈が出来る程寝不足な理由・・・

 

 魔王を危険人物と判断したせつなは、翌日も学校がある美希、祈里、ラブの身を案じ、美希の部屋、祈里の部屋、ラブの部屋と、魔王を見張る意味で共に泊まり、一晩中魔王を監視していた。更に昼間は昼間で、魔王がちゃんとおとなしく部屋で過ごしているかどうか監視していて、せつなは寝不足になっていた。ラブ、美希、祈里も、せつなの身を案じ、そこまでしなくても良いと言っていたものの、あの日の出来事がせつなの頭から離れず、自分で監視しなければ気が済まなかった。

 

 せつなは、魔王を上空に放すと、魔王はパタパタつぼみ達の下に羽ばたき、

 

「せつな、世話になったカゲェ!ラブ、美希、祈里や、ママさん達によろしく伝えてカゲェ!!」

 

「ええ、魔王も元気で!二度と会わない事を祈ってるわ!!」

 

 そう言い残し、せつなは四つ葉町に帰って居た。魔王は、せつなの捨て台詞を聞いて不機嫌そうに、

 

「二度とって・・・失敬カゲェ」

 

「魔王・・・せつな達に何かしたの?」

 

 先程のせつなの様子が気になり、ゆりが魔王に問い掛けると、

 

「カゲェ!?せつな達四人と一緒にお風呂に入ったら・・・」

 

「「「「エェェ!?」」」」

 

 せつな達四人が、魔王と一緒にお風呂に入ったと聞き、ゆり達四人は驚愕した。更に魔王は言葉を続け、

 

「俺の前尻尾を見て怒り出しただけカゲ」

 

「前尻尾!?まあ良いわ、後でラブ達に聞いてみるから・・・それより、魔王を泊める順番を決めましょう!」

 

「「「はい!」」」

 

 ゆりの提案を受け入れ、四人は順番を決めに掛かった。その間暇な魔王は、植物園を散策していたが、置物のようにボォとしているコッペを見て困惑し、

 

(ボォとしているようで・・・何か凄い威圧感を感じるカゲ!?)

 

 魔王は、何やら得体の知れなさそうなコッペを不気味に感じ、そそくさとつぼみ達の側へと戻った。その魔王の姿を、コッペは目だけを動かして見つめていた。

 

 最初にゆりが、二番目にえりかが、三番目につぼみが、最後にいつきが泊める事になり、魔王はゆりに抱っこして貰おうと試みるも、ゆりにキッと見つめられ、

 

「魔王、甘えないで!カバンの中に自分で入ってなさい!!」

 

 ゆりの迫力の前に、魔王は渋々言われた通り、身体を細長く変化させ、かばんの中に入った。ゆりの家も美希と同じく母と二人暮らしで、自分の家に連れて帰ったゆりは、

 

「あなたの事は、なぎさやほのかによく聞いているわ!私の部屋でおとなしく過ごすなら、ある程度の事は見逃してあげるけど、妙な真似をしたら・・・分かってるわね?」

 

「わ、分かったカゲ!」

 

 ゆりの迫力の前に、魔王は何度もコクコク頷いた。

 

(どうもゆりは苦手カゲ・・・何か大事なものを、心の奥底に無理矢理仕舞い込んでいるような気がするカゲ)

 

 魔王も、ゆりは本当は優しいのだろうとは感じるものの、どこか違和感を覚えて居た。思い返せば、なぎさの家で三日間過ごしている時、プリキュアの仲間達の事をなぎさから少し聞いていた魔王は、ゆりは、父親が自分の目の前で爆死している事を思いだした。

 

(ゆりも寂しい思いをしてるカゲ・・・そうだ!またあいつに頼んでみるカゲ!)

 

 魔王は、ゆりとゆりの母春菜に気付かれないように影を伸ばすと、二人から月影博士の情報を仕入れた。更に、ゆりの心の中では、ダークプリキュアの存在も大きくなっている事を知った。

 

(こんなプリキュアも居たカゲェ!?)

 

 魔王は、初めて見たダークプリキュアのビジョンに驚いたものの、嘗てと同じように、まるで自己催眠でも掛けたかのように眠りに付いた・・・

 

 

 その夜、眠りに付いたゆりだったが、誰かに呼ばれた気がした目が覚めた!

 

 目が覚めた時、ゆりの目の前には、父が、コロンが、そして、ダークプリキュアが居た!皆穏やかな表情を浮かべていて、ゆりの目からはポタポタ涙が落ちていた。それを見て居た魔王であったが、長い耳と額に月のマークをした、桃色の身体をした妖精が姿を現わした。

 

「魔王!酔狂も良いけど、いい加減にして貰えるかしら?いくらユメタの恩人のあなたでも、こう頻繁に夢の世界を勝手に好きにされたら・・・」

 

「マアム!?分かってるカゲ!ゆりも悲しい過去があったから・・・少しでも癒してやりたいカゲェ!!」

 

「ハァ・・・今回で最後にしてよ?」

 

「嫌カゲェェ!」

 

 魔王は、マアムと呼んだ夢の世界の妖精に舌を出し、何処かへと去っていた。マアムはハァと溜息を付くと、

 

「魔王!全く・・・根は優しいんだろうけど、困ったものねぇ?」

 

 そう言いながら、ゆりの夢を見て目を細めた・・・

 

 

 翌日・・・

 

 再び植物園にやって来た、つぼみ、えりか、いつきは、先に来ていたゆりを見て驚いていた。魔王を抱っこしながら談笑しているゆりに気付き、えりか、つぼみ、いつきの三人は思わず目を点にし、

 

「ゆ、ゆりさんが・・・魔王を抱っこしてる!?」

 

「しかも・・・仲良さそうにしてますねぇ?」

 

「魔王・・・大人しくしてたのかなぁ?」

 

「「「天変地異の前触れかも!?」」」

 

「三人共・・・聞こえてるわよ!」

 

「「「ドキッ!?」」」

 

 ゆりに聞こえていたようで、三人は同じような表情でドキリと驚き、ゆりを苦笑させた。

 

 ゆりから魔王を引き取ったえりかは、つぼみと共に帰りながら、

 

「昨日美希姉ぇから電話があってさぁ・・・魔王の前尻尾には気を付けなさいって言ってたけど、何だろうね?」

 

「前尻尾!?・・・こうして見る限り、魔王に尻尾は生えて無さそうですけどねぇ?」

 

 そんな話をしながら家の側まで来たつぼみとえりか、二人の両肩に突然手が回ったかと思うと、

 

「えりか、つぼみちゃん、随分楽しそうねぇ?・・・あら!?えりか、あんたそんな縫いぐるみ持ってたっけ?」

 

 そう言って二人に話し掛けたのは、モデルの仕事帰りのえりかの姉ももか、ももかは、えりかが抱いてる魔王を見て小首を傾げた。つぼみとえりかはドキッとした表情を浮かべるも、

 

「こ、こ、これは・・・いつきに貸して貰ったの!」

 

「と、所々糸が解れたようで、えりかに直して欲しいと・・・ね、えりか!」

 

(つぼみ!ナイスフォロー!!)

 

「そうそう」

 

「フ~ン・・・それにしては、縫い目なんか無さそうだけど!?」

 

 そう言いながら、ももかが魔王に顔を近づけると、魔王はデレデレした顔になり、えりかはワァァと叫びながら、慌ててももかから魔王を遠ざけた。ももかは小首を傾げながら、

 

「な、何!?」

 

「エェと・・・虫が飛んでたから」

 

「フ~ン・・・まあいいわ!じゃあ、つぼみちゃんまたね!」

 

 つぼみに軽く挨拶し、ももかはフェアリードロップの中に入って行った。どうやら上手く誤魔化せたと、ホッと安堵したつぼみとえりかだったが、魔王は去っていたももかの事を思い出しながら、

 

「えりかに似ず、美人カゲェ・・・」

 

「ちょっとぉ!今何て言った?」

 

 目に炎を点したえりかが、魔王に抗議していると、えりかの携帯の着信音が鳴り、相手を見て見ると、それは美希からで、

 

「美希姉ぇ、聞いてよ!魔王ったらさぁ・・・」

 

 えりかは不満気に、魔王から受けた仕打ちを美希に告げた。溜息をついた美希は、魔王に代わってとえりかに頼むと、えりかは魔王の側に携帯を差しだし、魔王にも美希の声が聞こえてきた。

 

「美希!この前は世話になったカゲ!!」

 

「ええ・・・それは兎も角、魔王!ちゃんと大人しくしてなさいよ?ももかさんやえりかのお母さんに変な真似したら、あたしも許さないわよ!ちゃんとえりかの言う事聞いて大人しくしてる事・・・もし大人しくしなかったら、ママ達に魔王の本性を教えちゃうわよ?魔王、ママ達にまで嫌われるわよぉぉ!?良いのぉ?」

 

「そ、それは困るカゲェ・・・美希ママ、ラブママ、祈里ママは、俺の友達カゲ!折角仲良くなったのに、嫌われたら困るカゲ!!」

 

「なら、大人しくしてなさいよ?取り敢えず、さっきの事をえりかに謝りなさい!」

 

「わ、分かったカゲ!えりか、さっきはゴメンカゲ!さっきの意味は・・・えりかは美女じゃなくて、美少女だって意味カゲ!!言葉が足りなかったカゲ・・・」

 

「なぬぅ!?そ、そう・・・分かれば良いよ!」

 

 魔王の煽てを真に受けたえりかは、見る見る機嫌を戻したが、聞いていたつぼみと美希は、

 

(魔王・・・えりかの扱い方を何所で覚えたんでしょうか?)

 

(魔王・・・どんどん悪知恵がついてる気がするけど、えりか達大丈夫かしら!?)

 

 つぼみと美希は一抹の不安を覚えるのだった・・・

 

「じゃあ、何かあったら何時でも電話掛けてきなさい!最悪、せつなに頼んでそっちに駆け付けるから!!」

 

「うん!分かったっしゅ!!」

 

 美希からの電話を切ったえりかは、魔王を抱っこし、ご機嫌で家に帰って行った。つぼみは、えりかを不安そうに見送った・・・

 

 えりかの部屋に入った魔王は、思わず呆然とした・・・

 

 何故なら、魔王が今まで泊まったなぎさ達の部屋は小綺麗にしてあったが、えりかの部屋は、ファッションのデザインをしていたのか、部屋中にデザイン画が散らばり、失敗作は紙を丸めて部屋に放置してあったのだから・・・

 

(俺は今日、こんな部屋で寝る事になるカゲ!?)

 

 チラリと隣に居るコフレを見ると、コフレは溜息混じりに何時もの事だと魔王に語った。

 

「えりかは、お母さんに怒られるまで何時もこんな感じですっ」

 

「えりか、さすがに少し片付けた方が・・・」

 

「本当!?じゃあ、魔王とコフレで片付けておいて!あたしは夕飯食べてくるからヨロシクゥ!!」

 

「「エェェェェ!?」」

 

 驚くコフレと魔王を尻目に、えりかはそのまま逃げるように部屋から出て行った。顔を見合わせたコフレと魔王は溜息を付くと、

 

「これは酷いカゲェ!」

 

「そうですっ!魔王、つぼみに知らせに行くですっ!!」

 

 えりかを懲らしめようと、コフレと魔王は窓から隣のつぼみの部屋へとフワフワ移動し、窓を叩くと、つぼみが窓を開き二人を招き入れた。

 

「どうしたんですか!?コフレ、魔王?」

 

「つぼみ、シプレ、えりかったら酷いんですっ!」

 

「俺達に部屋の片付けを頼んで、自分はさっさとご飯を食べに行ったカゲェ」

 

 二人からえりかの仕打ちを聞いたつぼみとシプレは、思わず顔を見合わせると、

 

「何か前にも聞いた事があるような!?・・・えりかにも困ったものですねぇ・・・」

 

「えりかのお母さんに話して見たらどうですぅ?」

 

 えりかのお母さんに話すと言う、シプレのアイデアを聞いた魔王は目を輝かせ、

 

「俺に任せるカゲ!」

 

「「「それはちょっとぉ・・・・」」」

 

 魔王をえりかの母さくらの下に一人でやったら、どんな行動を取るか分からず、つぼみ、シプレ、コフレが、変顔を浮かべながら魔王に待ったを掛けた。

 

「大丈夫カゲ!えりかママの頭の中に、えりかの部屋のイメージを見せるだけカゲェ!!」

 

 魔王だけを、えりかの母さくらの下に向かわせる訳にも行かず、シプレとコフレも魔王と共に来海家へと向かった。

 

 こっそり覗き見ると、えりかは既にご飯を食べ終わったのか、ももかと共にテレビを見ながら大笑いをしていた。

 

「俺達に掃除を頼んでおいて・・・いい度胸カゲェ!」

 

 魔王は影を分離させると何やら命令し、影はその場を去っていった。魔王は、洗い物しているさくらにそっと影を伸ばすと、さくらにえりかの部屋のビジョンを見せた。さくらは洗い物をしていた手を止めると、

 

「そう言えばえりか、部屋はちゃんと片付けてるの?」

 

「大丈夫、大丈夫、バッチリ!」

 

 ニンマリ顔で答えたえりかを、ももかはからかうような視線で見つめ、

 

「本当かしら?」

 

「何よぉぉ!?そんなに言うなら見てくれば良いじゃん!」

 

「そう・・・じゃあ、お言葉に甘えて!」

 

「エッ!?タ、タンマァァ!」

 

 そう言うとえりかは、慌てて自分の部屋に戻り、さくらとももかは顔を見合わせてクスリと笑い合っていた。

 

 部屋のドアを開けたえりかは、中を見た途端みるみる変顔を浮かべると、

 

「な、何じゃこりゃぁぁぁ!?」

 

 えりかが驚いたのも当然で、中では魔王の分身が暴れ回り、更には合流した魔王も加わり、えりかの部屋の中を更に酷く散らかして居た・・・

 

「ま、魔王!?何してんのよぉぉぉ!!コフレ!コフレェェェ!!」

 

 えりかに呼ばれたコフレは、渋々えりかの前に進み出ると、

 

「大体、えりかが悪い・・・」

 

「いいから、プリキュアの種貸して!」

 

「エェェェ!?」

 

 ココロパフュームを取り出したえりかが、半ば強引にコフレからプリキュアの種を受け取ると、

 

「プリキュア!オープンマイハート!!」

 

「た、大変ですぅ!つぼみに知らせるですぅ!!」

 

 えりかがプリキュアに変身し、妙な状況になった事で、シプレは大急ぎでつぼみに知らせに向かい、マリンはマリンタクトを取りだし、魔王を追い回した。

 

 少し部屋の窓を開けたつぼみは、魔王をこっそり手招きし、それに気付いた魔王は、マリンにフェイントを使い、慌ててつぼみの部屋に飛び込むと、つぼみはそっと窓を閉めた。

 

「魔王!何所行ったぁぁぁ!!」

 

「マリン、冷静になるですっ!家の人が来ちゃうですっ!!」

 

 コフレに諭され、マリンは渋々部屋の窓を閉めえりかの姿に戻った。騒ぎを聞き付けやって来たさくらとももかに、えりかは怒られトホホ顔を浮かべた・・・

 

 

「魔王!えりかも悪いですけど、魔王もやり過ぎですよ・・・今日は家に泊めて上げますから、明日えりかに一緒に謝りましょう!!」

 

「俺は悪く無いカゲ・・・」

 

 そう思いながらも、魔王の身を案じて匿ってくれたつぼみの言葉を聞き入れ、魔王は翌日えりかに謝罪した。

 

 

 ある意味、恩人のつぼみの家では大人しくしていた魔王は、最後にいつきの家にやって来た。魔王は、かれんの家程では無いが、いつきの広大なお屋敷に驚いていた。

 

「ここが僕の家だよ!魔王、門下生達も沢山居るから、みんなに見つからないでよ?」

 

「わ、分かったカゲ!」

 

「後、お爺様やお父様、お母様やお兄様にも・・・」

 

「大丈夫でしゅ!ポプリがいちゅきには手を出させないでしゅ!!」

 

「ありがとう、ポプリ!!」

 

 いつきはポプリに頬擦りし、仲の良さを魔王に見せ付けた。魔王は、道場から聞こえて来る掛け声に驚き、

 

「いつき、あそこでは何してるカゲ?」

 

「あそこでみんな武道を習っているんだ!みんなが帰ったら、魔王にも精神の修行をして貰うからね?一緒に煩悩を吹き飛ばそう!」

 

「カゲェ!?じゃあ、それをやったらいつきは俺と・・・」

 

「アハハハ!魔王、それを煩悩って言うんだよ!」

 

「カゲェ!?」

 

 いつきの言葉が理解出来ず、小首を傾げる魔王であった・・・

 

 門下生の稽古も終り、続々道場から帰って行くと、いつきは現在の師範代である兄さつきを呼び止め、

 

「お兄様、少しの間道場をお借りしたいのですが・・・」

 

「構わないよ!いつき、精が出るね」

 

 さつきは爽やかな笑みをいつきに向けると、住居のある本邸へと去った。いつきは魔王を呼び、魔王がモゾモゾいつきのかばんの中から現われると、

 

「じゃあ、精神修行を始めるよ!」

 

 いつきは座禅を組み、その隣で魔王も床に座って目を瞑る。沈黙の時間が流れる中、ポプリは退屈したのか、コクリコクリと居眠りをしていた。

 

「へぇ、魔王!意外とやるね?」

 

「フフフン!精神統一は得意カゲ!!」

 

「凄いや!これなら煩悩を直ぐに吹き飛ばす事も出来そうだよ!!」

 

 いつきは魔王の精神力に感心していた・・・

 

 この分なら、魔王は煩悩を打ち消せるのではないかと思った。

 

 修行は約1時間続き、精神を集中させて居た二人からも疲労が見え、顔からは汗が流れていた。

 

「魔王、お疲れ様!」

 

「いい汗かいたカゲェ・・・でも、何かベトベトして気味悪いカゲ」

 

「アハハ、それだけ真面目に修行してたって事だね・・・じゃあ、一緒に汗を流しに行こう!」

 

 この時、魔王の目がキラリと輝いた事に、いつきは気付いて居なかった・・・

 

 

 翌日・・・

 

 植物園に集まった一同、元気にハシャギ回る魔王に対し、いつきはどんよりした表情で落ち込んでいた。

 

「いつき、何かあったの?」

 

「随分疲れた表情してますねぇ?」

 

 心配したえりかとつぼみがいつきに声を掛けるも、いつきは二人をチラリと見ると、

 

「聞かないで・・・・・」

 

 そう言うと再び俯くいつきを見た三人は、

 

(((何があったのかしら!?)))

 

「ゆりさん、ちゅぼみ、えりか、そっとしておいて上げてほしいでしゅ・・・ポプリが付いて居ながら、いちゅきを救えなかったでしゅ・・・」

 

 ハァと溜息を付き落ち込むポプリ、ゆりはキッと魔王を睨むと、

 

「魔王!いつきに何かしたの?」

 

「カゲ!?いつきと一緒に精神修行をして、お風呂で身体の洗いっこをしただけカゲェ!」

 

「「「エェェ!?」」」

 

 魔王は煩悩を振り払ったと過信していたいつきは、魔王の頼みを聞き入れてしまい、気付いた時にはまんまと魔王の策略に嵌り、いつきは魔王に成長途中の裸体を露わにしていて、落ち込んでいた・・・

 

「どんどんずる賢くなっていますねぇ?」

 

「この間、えりかにやられたからなぁ・・・勉強になったカゲ!」

 

 魔王の言葉を聞いたゆり、つぼみ、いつきはハッとしてえりかを見ると、えりかは横を向いて視線を逸らし、

 

「エェェと・・・何の事だっけ?」

 

「「「えりかぁぁ!!」」」

 

 結果として魔王に悪知恵を授けたえりかは、ゆり、つぼみ、いつきの三人に説教されるのだった・・・

 

 

2、魔王VSピーちゃん

 

 メイジャーランド・・・

 

 エレン、アコ、ハミィ、フェアリートーン達の故郷、その国に二人の客人が訪ねて来ていた。一人はトランプ王国王女、マリー・アンジュ、もう一人はお供のキュアソード、二人は、メイジャーランドの王メフィストと、女王アフロディテに謁見していた・・・

 

「お久しぶりです!アフロディテ様、メフィスト王」

 

「ウム!アン王女も元気そうで何より、お父上もお元気でいらっしゃるか?」

 

「アン王女、あなたのような律儀なお方が、何の連絡も無く不意にメイジャーランドを訪れたのには・・・何か理由がお有りのようですね?」

 

「ハイ!本日伺ったのは・・・アフロディテ様、メフィスト王、お二方は、バッドエンド王国という国をご存じ無いでしょうか?」

 

「「バッドエンド王国!?」」

 

 アン王女に問われた二人は顔を見合わせ驚いた。何故なら、バッドエンド王国こそ、今娘アコ達プリキュアが戦って居る相手なのだから・・・

 

「ウム!我々も詳しい事は知らないのだが、バッドエンド王国の報告は受けて居る!!」

 

「皇帝ピエーロとやらを復活させ、世界をバッドエンドにする事が目的だとか・・・」

 

 アン王女は、背後に控えているソードと顔を見合わせ表情を緩めた。二人がバッドエンド王国の事を知っているのなら、話は早いと・・・

 

「ご存じでしたか!実は最近、トランプ王国はバッドエンド王国のジョーカーと名乗る者から、トランプ王国に代々伝わる秘宝を奪われてしまったのです!!」

 

「「秘宝!?」」

 

「はい、我がトランプ王国に伝わる秘宝・・・一万年前、私達の先祖であるキュアマジシャンが残した、三種の神器の一つと並び称される秘宝です!その秘宝を、ジョーカーと名乗る者に奪われてしまったのです!」

 

 一同の会話を聞いていたソードも話に加わり、

 

「更にその秘宝を使い、バッドエンドプリキュアと名乗る、五人の少女達を作り出しました。私は、不覚にも彼女達に手も足も出ず・・・」

 

 自分が不甲斐ないばかりにと、ソードは思わず言葉に詰まると、アン王女はソードを庇うように、

 

「ソード、そう自分を責める必要はありませんよ!今は秘宝を取返す事を考えましょう!!」

 

「はい!」

 

 アン王女の言葉に、ソードはコクリと小さく頷いた。聞いていたメフィストとアフロディテは、

 

「アン王女、それならばアコ達の居る、向こうの世界の加音町にある、調べの館に行ってみると良いでしょう!バッドエンド王国の事ならば、私達の娘アコの方が詳しい筈です・・・」

 

「加音町にある調べの館ですか?分かりました!」

 

 アフロディテから、加音町にある調べの館に向かうと良いと助言されたアン王女は頷き、更にメフィストも話し掛け、

 

「加音町には、娘アコを始めとした四人のプリキュアが居る!更には、数十人の頼もしきプリキュア達も、向こうの世界には居る。協力を仰ぐと良い!!」

 

「数十人も!?それは頼もしい限りですね・・・ソード、では加音町へ行ってみましょう!!」

 

「はい!王女様!!」

 

 こうしてアン王女とソードは、アフロディテが作り上げた虹色の道を通り、加音町へと向かった・・・

 

 その加音町に今、問題児が居る事も知らず・・・

 

 

 加音町・・・

 

 調べの館に集まった、響、奏、エレン、アコの四人、側にはピーちゃん、フェアリートーン達を始めとした妖精達に混じり魔王が居た。ハミィは何処かに出掛けているのか、調べの館には居なかった。エレンは、響と奏を見ると、

 

「私は別に大丈夫だったし、アコの家には音吉さんも居るから大丈夫だとは思うけど、響や奏の家に魔王が行って大丈夫なの?せつなが心配してたわよ?」

 

 前日に、調べの館のエレンの部屋で過ごした魔王、元々メイジャーランドの妖精だったエレンは、魔王に対しても何時も通り振る舞った。

 

 エレンに聞かれ、顔を見合わせた響と奏は、

 

「まあ、家のママは今パリに居るから大丈夫だとは思うけど、魔王は短時間で世界中に移動出来るようだし、些か不安だよねぇ」

 

「家もそう・・・お母さんも居るし、私だって同じ屋根の下で魔王と過ごすのには抵抗が・・・」

 

「「ハァ・・・でも、しょうがないよねぇ」」

 

 エレンも、他のプリキュアのみんなもやっている事だからと、響と奏は観念しているようだった。そこに慌ただしくハミィが調べの館にやってくると、

 

「セイレーン!アコ!アフロディテ様が呼んでるニャ!!」

 

「エッ!?ママが?」

 

 パッと表情を明るくしたアコは、ハミィの後に着いていくと、調べの館の裏に映像が現われていて、そこにはアフロディテとメフィスト、その背後で微かに三銃士のバスドラ、バリトン、ファルセットが映って居た。

 

「アコ、今あなた達の下に、トランプ王国のアン王女とトランプ王国のプリキュア、キュアソードが向かっています。彼女達の話を聞き、力になってあげて下さい!」

 

「ママ、アン王女って!?」

 

「アコ、あなたが小さい時、遊んで貰った事もあるのですよ!あなたはお姉ちゃんって言いながら、よく彼女の後ろを付いて歩いていたのが、ついこの間のように感じられます・・・」

 

 アフロディテの言葉を聞き、アコの脳裏にアン王女の事がうっすらと思い出されてくる。優しい人だったような気がアコにはした。アン王女とソードが、加音町に向かっていると知った響と奏は思わず驚き、

 

「「エェェ!?」」

 

「アフロディテ様、今加音町に来るのは不味いです!」

 

「どういう事です!?セイレーン?」

 

 小首を傾げたアフロディテだったが、突然エレンを押しのけ、黒き物体がドアップになると、思わずアフロディテは仰け反った。

 

「こ、これは!?」

 

「この人がアコママカゲェ?美人カゲェェェ!」

 

「まあ、美人だ何て・・・」

 

 初対面ながら、自分を美人だと称えてくれた魔王に、アフロディテは少し照れたような表情を浮かべたものの、アコは必死に魔王を押しのけ、

 

「マ、ママに変な真似させないんだからぁ・・・ママ、分かったからまた後で!」

 

 アコは慌ててメイジャーランドとのコンタクトを絶った。自分もアコと話したかったメフィストは涙目になると、

 

「ア、アコォォ!パパには、パパには話し掛けてくれないのかぁぁ!?」

 

「「「振られたぁ!振られたぁぁ!!振られたぁぁぁ!!!」」」

 

「喧しいわぁぁぁ!!」

 

 バスドラ、バリトン、ファルセットの三銃士にからかわれ、メフィストは三銃士を追い回した。アフロディテは呆れたように溜息を付くも、

 

(アコ、プリキュアの皆さん、どうかアン王女の力になって上げて下さいね)

 

 妹同然のアン王女の力になって欲しいと願うアフロディテだった・・・

 

 

 調べの館に戻った一同は、どうするか話し合っていた・・・

 

「どうする!?その、アン王女って人と、キュアソードだっけ?」

 

「うん、キュアソードって言ってたわね!また新しいプリキュアが生まれていた何て驚いたわねぇ!?」

 

「でも、加音町には今魔王が居るし、些か不安よねぇ?」

 

 響が、エレンが、奏が、メイジャーランドに行くと騒ぐ魔王と、必死に止めるアコを見つめながら話す。

 

「魔王、ママの所に行ったら、許さないからねぇ!」

 

「アコは、まだまだ発育途中だから、代わりにアコママに挨拶しに行くだけカゲ!」

 

「だから、駄目なのぉぉぉ!」

 

「なら代わりに・・・響、奏、お前達が一緒に俺とお風呂に入るカゲェ!」

 

「「どさくさに紛れて、何て事言うのよ!!」」

 

 同じような仕草で、魔王に文句を言う響と奏に、エレンは苦笑を浮かべる。ハミィは、相変わらず暢気そうにしていたが、ピーちゃんは徐に魔王に近付くと、

 

「ピィィ!ピ」

 

「な、何ぃぃ!?女の尻を追い回すのも・・・大概にしろだとぉぉ?」

 

「「「「エッ!?魔王、ピーちゃんの言葉が分かるの?」」」」

 

「ピッピッピ・・・ピィィィィ!」

 

「何時も追いかけ回すから、みんなに嫌われてる・・・・そんな事ないカゲェ!俺何か、ひかり、かれん、ラブ、美希、祈里、せつな、いつきと一緒に風呂に入ってるカゲェ!!」

 

「「「「エェェ!?」」」」

 

 魔王の告白を聞き、響達四人が驚きの声を上げた。ひかりと一緒に入って居たのは知っていたが、かれんやラブ達、いつきともお風呂に入っているとは思わなかった。ピーちゃんは、呆れたようにピィと溜息を付きながら、

 

「ピィィィィ・・・ピィ!」

 

「な、何ぃぃぃぃ!?お前は・・・なぎさ達、咲達、のぞみ達、ラブ達、つぼみ達、響達みんなと一緒に・・・お風呂に入っただとぉぉぉ!?」

 

「ピピピピピ」

 

 蔑むような目で魔王を見るピーちゃん、魔王は見る見る涙目になると、響達を睨み、

 

「お前達、狡いカゲェェ!」

 

「いやぁ、あの時は色々あったし・・・ねぇ?」

 

「「「うん」」」

 

 響の言葉に相槌を打つ三人、

 

「悔しいカゲェェ」

 

 魔王は悔しそうに地面を転げ回って居ると、ピーちゃんが再び言葉を発し、

 

「ピッ・・・ピィピィィィピ!」

 

「な、何!?お前、胸だか背中だか分からない身体見て、何が嬉しいんだだとぉ?」

 

 魔王の通訳を聞いた響、奏、エレン、アコは、目を点にしながら、

 

「ちょ、ちょっとぉ!何気にピーちゃん酷い事言ってない?」

 

「ほ、本当にピーちゃんそんな事言ってるの?」

 

「祈里が居れば、ピーちゃんの言葉が分かるんだけど・・・」

 

「こんな事で祈里を呼ぶのも悪いし・・・」

 

 響、奏、エレン、アコの四人は、本当にピーちゃんがそんな事言ってるのだろうかと疑問に思うも、確かにノイズ状態のピーちゃんは、そのような事を言っていたのを思い出し戸惑った。

 

 ピーちゃんを睨み付けた魔王の背後から、黒きオーラが立ち上がると、負けずとピーちゃんの背後から白きオーラが立ち上がった。見る見るオーラは具現化し、魔王のオーラは、絵本の世界を壊滅寸前まで追い込んだ、あの時の巨大な魔王のようなシルエットになり、ピーちゃんのオーラは、ノイズ究極体のようなシルエットが浮かび上がった。調べの館の中で、異様に発する気と気のぶつかり合いに、響、奏、エレンは、思わず身を寄せ合い震えだし、

 

「ちょ、ちょっとぉ!ピーちゃん、魔王も落ち着いて!!」

 

「何だか・・・嫌な予感がするんですけどぉ?」

 

「これって・・・非常にヤバくない!?」

 

 ビビる三人に、アコは冷静に二人を止めようとするも、響、奏、エレンに必死に押さえ込まれ、

 

「だ、駄目だよ、アコ!」

 

「今の二人に近付いたら・・・」

 

 響と奏の言葉を表すように、室内の中なのに、調べの館内に強風が吹き荒れ、会場内の物がガタガタ音を立て始める。このまま放置しておくと、調べの館だけではなく、加音町まで被害が出るのではと危惧してくる。だが、プリキュアのみんなと力を合わせても、中々止められなかったノイズと魔王の力を思い出すと、四人だけで止められるのか不安が芽生えてくる。

 

「ど、どうしよう・・・私達だけで二人を止められるかしら!?」

 

 不安そうにエレンがポツリと呟いた時、ピーちゃんと魔王が同時に動いた。

 

「ピィィィ!」

 

「カゲェェ!!」

 

「「「ヒィィィィ」」」

 

 互いに羽ばたき、威嚇し合うと同時に突進し、響、奏、エレンが、同時に悲鳴を上げた。だが、一同の不安を余所に、二人の対決は腹相撲のように、互いのお腹とお腹で体当たりし合うシンプルなものだった。思わず響、奏、エレンが転ける。

 

「ふ、二人共、ビックリさせないで!!」

 

 イテテテと起き上がった響が、苦笑気味に二人に話し掛けたその時、調べの館の入り口が開き、二つの人影が調べの館に入って来た。

 

「あのぅ・・・こちらにアコ姫が居ると、アフロディテ様に伺ったのですが?」

 

 そう言って響達に声を掛けたのは、加音町にやって来たアン王女とキュアソード、魔王が二人に見とれている間に、ピーちゃんの体当たりを受け、魔王が地面に転がり二人の対決は終焉を迎えた。

 

 コロコロ転がった魔王を、アン王女は優しく抱き上げると、思わず魔王はその美しさに見惚れ頬を染めた。アン王女が手を放すと、魔王はアン王女の胸の位置まで羽ばたき、アン王女は魔王を見つめ微笑むと、

 

「大丈夫!?ウフフ、丸くて可愛らしい妖精さんね!」

 

「カゲェェ!」

 

 アン王女の胸に顔を埋めようとしている魔王に気付き、響、奏、エレン、アコが同時に叫び、

 

「「「「アン王女!離れてぇぇぇ!!」」」」

 

「エッ!?」

 

 抜群の反射神経で、胸に飛び込もうとした魔王を咄嗟に避けると、魔王は背後に居たソードにぶつかり、ソードは思わず尻餅を付いた。それを見て居た響は、ソードに駈けより手を差し出すと、ソードを助け起こした。

 

「大丈夫!?魔王が迷惑掛けてゴメンね!」

 

「い、いえ・・・」

 

「もう、魔王!チョコマカしない!!」

 

 響が魔王をつまみ上げる姿を見て、ソードは呆気に取られた。アン王女も状況が読み込めず呆然としていたものの、アコがアン王女に近付き、

 

「アン王女ですね?私は調辺アコ!母からあなたの事は聞いています!!」

 

「まあ、あなたがあのアコ姫・・・随分大きくなられて」

 

 アコがまだ幼き日に、一緒に遊んで上げた事を思いだし、アン王女が思いに耽っていると、エレンはアン王女に頭を下げ、

 

「それでアン王女、私達にご用とは!?」

 

「そうでした・・・わたくし達がこちらに来たのは他でもありません・・・バッドエンド王国について教えて欲しいのです!」

 

「「「「バッドエンド王国!?」」」」

 

「はい!実は、わたくし共の国トランプ王国に、バッドエンド王国のジョーカーと名乗る者が現われ、わたくし達の国に伝わる王家の秘宝を奪われてしまったのです・・・」

 

 そう言うと、アン王女は思わず悲しげに目を伏せた。響達四人は顔を見合わせると、アン王女とキュアソードに、バッドエンド王国について語り出した。アン王女とキュアソードは、四人から語られるバッドエンド王国の事を真剣に聞き入った・・・

 

「そして私達プリキュアは、バッドエンド王国に乗り込み、一度はピエーロを倒したのですが・・・」

 

「残念ながら、ピエーロは完全には滅びて居ないと、メルヘンランドのロイヤルクイーンは言ってました!」

 

「バッドエンド王国は、メルヘンランドのプリキュアである、七色ヶ丘に住んでいる私達の仲間を特に敵視しているの!」

 

「バッドエンド王国が再び動き出したのなら、彼女達の側に居る方が、再びジョーカーと出会える可能性は高いと思う・・・彼女達の名前は、星空みゆき、日野あかね、黄瀬やよい、緑川なお、青木れいか、私からもお二人の事を知らせておきます!!」

 

 響が、奏が、アコが、そしてエレンが、親身になってアン王女とソードに助言を与えた。アン王女とソードは何度も頷いた。

 

(七色ヶ丘・・・そこに行けばバッドエンドプリキュアに会える!あの時の屈辱・・・)

 

 ソードは表情をキッと引き締めると、踵を返して走り出した。アン王女は背後を慌てて振り返ると、

 

「ソード、お待ちなさい!ソード!!」

 

 だが、ソードの耳にアン王女の言葉は届かなかった・・・

 

 ソードは疾風のように駈け続け、加音町を後にした・・・

 

 

「ハァ・・・全く、あの子ったら・・・」

 

 思わず溜息を付くアン王女、奏も心配そうに、

 

「ねぇ、あの子一人で行かせて大丈夫かしら!?」

 

「だよね、まだこっちの世界に来て間もないんでしょう?」

 

「あの子・・・七色ヶ丘の場所って知ってるのかしら?」

 

「どうする!?みゆき達に知らせておいた方が良いんじゃない?」

 

 奏の言葉に、響、エレン、アコも同意し、エレンは携帯を手に取ると、れいかの家に電話を掛け、状況を手短に説明した。エレンがれいかに電話したのは、あの五人の中では、れいかに知らせるのが最適だと考えたからだった。

 

「分かりました、他の皆さんにも知らせて、キュアソードさんを見掛けたらお知らせします!」

 

「お願い、私達もアン王女を連れてそっちに向かうわ!」

 

 電話を切ったエレン、話を聞いていた魔王は、

 

「しょうがないカゲ・・・俺がソードを見つけ出して、みゆきの下に連れて行くカゲ!」

 

「エッ!?あんた、ソードの居場所分かるの?」

 

「フフフン!俺はお前達の気配を感じられるからなぁ・・・そこの美人のアンも、さっきのソードも覚えたカゲ!!」

 

「出来れば・・・アンと呼ぶのは止めて欲しいのだけれど」

 

「止めたら、アンは俺と一緒に・・・・モグモグモグ」

 

 苦笑気味にアン王女が魔王に訴えると、アン王女に一緒に風呂に入ってくれるか聞こうとした魔王を、響とエレンが慌てて魔王の口を塞いだ。

 

 

 その頃、キュアソードは・・・

 

「ねぇ、ダビィ!七色ヶ丘って・・・・何所にあるの?」

 

「そんなの、ダビィは知らないビィ!だったら、加音町に戻るビィ」

 

「無理よ・・・加音町がどっちだったか覚えて無いもの!」

 

 とあるビルの屋上で途方に暮れたキュアソード、加音町から飛び出した迄は良かったが、自分が七色ヶ丘の場所を知らない事を思いだした。

 

(アン王女・・・迎えに来て下さい!)

 

 途方に暮れたソードは、ビルの屋上で体育座りし、アン王女が迎えに来てくれるのを待ち続けた・・・

 

             第七十九話:魔王と少女達(後編)

                    完

 




 投稿が遅くなり申し訳無いです・・・
 実は、13年飼っていたペットが18日に亡くなり、更にその後を追うように、親父が26日に亡くなってしまいました・・・
 喪主を務め、色々ゴタゴタもあって、四十九日法要が終わるまでは、80話の執筆は無理な状況です・・・
 楽しみにしている方が居ればゴメンなさい!

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