プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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 こちらの世界にやって来た魔王、魔王はプリキュア達と親交を深めたいのか、一同の家に泊まりたいとなぎさに訴え掛けた。一方、バッドエンド王国のジョーカーは、プリキュアの力を欲し、ある行動に出ようとしていた・・・

 第九章スタートです!
 当初は春頃投稿しようと思ってましたが、ハピも最終回を迎えてしまいましたし、自分にも気合いを入れ直す為にも投稿致しました・・・
 尚、来週は投稿出来ると思いますが、以降は早くて隔週、遅れて一ヶ月に一話ってな感じになると思います。
 後、キュアソードファンの方・・・スイマセンでした!
 続編の試練として多めに見て下さい!!

 ハピネスチャージプリキュア!の関係者の皆さん、一年間お疲れ様でした!!


第九章:魔王と王女とバッドエンドプリキュア!
第七十七話:悪のプリキュア!?


                 プロローグ

 

 絵本の世界から、人間世界へとやって来た魔王は、美墨なぎさの家に半ば強引に泊まり込んだ。なぎさの家に泊まった魔王だったが、何や感やと理由を付けて居座り、結局三日間、魔王は美墨家の居候として過ごした。このままでは居座られると危惧を感じたなぎさは、雪城ほのかに泣きつき、魔王は二日間ほのかの家に泊まったのは良いのだが、どこで調べたのか、海外に居るほのかの母、文の下に迄現われ、温和なほのかを怒らせた。見かねた九条ひかりが昨日泊めたものの、なぎさとほのかは、大人しいひかりに魔王が悪さしたのではと危惧し、TAKO CAFEで魔王に尋問を始めて居た・・・

 

 なぎさとほのかに、ジィと見つめられた魔王は、縋るような視線をひかりに送る。ひかりは苦笑を浮かべながら、

 

「なぎささん、ほのかさん、魔王も反省しているようですし、その辺で・・・」

 

「ひかりさんがそう言うのなら・・・」

 

「魔王!本当にひかりやアカネさんに、変な事してないでしょうね?」

 

 ジィとなぎさに見つめられた魔王は、思わず視線を外し、なぎさは魔王の行動を見て一抹の不安を覚えた。なぎさはキッと魔王を見つめながら、

 

「いい、魔王!これからあんたをナッツハウスに連れて行くけど、ちゃんとみんなに、こっちの世界に来た理由を話すのよ?」

 

「ちゃんとお願いすれば、みんなも泊めてくれるとは思うけど、私達にしたみたいな事は、絶対しないように!!」

 

「わ、分かったカゲ!」

 

 プリキュア達の家に、順番に泊まりたいと願う魔王の意向を聞きいれた三人は、ナッツハウスに一同を呼び寄せ、魔王の願望をみんなに伝える機会を設けた。こうして、なぎさ、ほのか、ひかりは、魔王を伴いナッツハウスへと向かった。

 

 バッドエンド王国のジョーカーが、再び動き出そうとする事も知らず・・・

 

 

1、ジョーカーの考え

 

 不気味に静まりかえるバッドエンド王国・・・

 

 プリキュアオールスターズと、ジョーカー率いるバッドエンド王国との激戦があったのが、嘘のように静まりかえっていた・・・

 

 室内をカツカツ歩き、ピエーロのコアが祭られる祭壇を訪れたジョーカーは、何処か苛立っていた・・・

 

「おかしいですねぇ?バルガンさんを倒された魔界の者達が、プリキュア達に対して何の手出しもしないとは・・・計算が狂いましたか?」

 

 ジョーカーは、顎に手を乗せ考え込んだ。ジョーカーの目論見では、直ぐに魔界の者達は行動を開始し、プリキュア達と全面戦争に入る筈、そう目論んでいた。だが魔界は、今だ動く気配を見せず、不気味な沈黙を続けて居た。

 

「魔界は、魔界の王の下、統制が執れていると思って居たのですが・・・一枚岩では無いと云う事でしょうか?」

 

 ジョーカーの計画では、魔界の者との戦いで疲弊したプリキュア達を、一気に倒す漁夫の利を狙っていたのだが、その目論見は外れた。

 

「このまま沈黙していては、何時まで経っても、ピエーロ様の真の復活は望めないですしねぇ・・・」

 

 さて、どうしたものかと思案するジョーカー、自ら出向いてバッドエナジーを回収する事は容易い、だが、人間界にはプリキュア達が居る!!

 

 あの大勢のプリキュア相手では、いかにジョーカーといえど、たった一人で立ち向かう行為は、無謀以外無かった・・・

 

「バッドエンド王国での彼女達の戦い振り、敵ながら見事なものでしたからねぇ・・・」

 

 ジョーカーは、バッドエンド王国でのプリキュアオールスターズの戦い振りを、頭の中で思い浮かべる。ウルフルン、アカオーニ、マジョリーナ、そして、魔界の者であるサディス、ベガ、ディクレ、更には、魔界が誇る十二の魔神の一人である、バルガンすら戦力として差し向け、自らも前線で戦うも、徐々に集結したプリキュア達によって、自身が立てた計画は脆くも崩れ去った・・・

 

「完全復活していなかったとはいえ、一度はピエーロ様さへ退けたあの力、我らバッドエンド王国の戦力に加えたいものですが・・・」

 

 カツカツ室内を歩き回りながら思案していたジョーカーは、プリキュア達の何人かを拉致し、ウルルン達のようにバッドエナジーを浴びせ、配下に加える事は出来ないか思案するも、その可能性は極めて低いだろうと結論づけた。

 

「相手は伝説の戦士プリキュア!光の加護に守られた彼女達を、そう容易くは・・・・・ン!?伝説?そういえば一万年前、三人のプリキュア達が、三種の神器を駆使し、強大な闇の魔神を、たった三人で封じたとか・・・」

 

 ジョーカーは何かを閃いたのか、徐にトランプカードを取りだし回転させると、カードは黒い本に姿を変えた。中を開き、速読し始めたジョーカー、その口元がニヤリとすると、本を閉じ、再び何処かへとしまうと、今度は懐から、紙にくるまれた五本の色とりどりの髪の毛を取り出した。

 

「思い出しましたよ!あの国の秘宝なら、ハッピー達のこれを利用して・・・」

 

 メルヘンランドでの戦いで、一度はハッピー達五人を、戦意喪失まで打ちのめしたジョーカーは、勝利の証のように、彼女達の髪の毛を奪っていた。

 

「まさか、これが役立つとは思っていなかったですがねぇ・・・」

 

 ジョーカーは、含み笑いを浮かべると、何処かへとその姿を消した・・・

 

 

 

 トランプ王国・・・

 

 中世のヨーロッパをイメージさせるその国では今、ある催しが開かれていた・・・

 

 王国内にある巨大なスタジアムの中、大勢の国民達が、今から始まるセレモ二―を、今か今かと待ち侘びていた。

 

 メインスタジオ中央に、ドッシリ座るこの国の王、髭を蓄え、その優しげな風貌は、人民達からも慕われていた。その隣に座るのは、この国の王女マリー・アンジュ、長いウエーブ掛かったピンク色の髪、その美しい顔立ちは、国民達から羨望の眼差しを受けていた。

 

 慈愛の表情を浮かべ座っていたアン王女、その視線の先には、恭(うやうや)しく跪(ひざまず)く、一人の少女の姿があった。紫掛かったショートヘアー、紫と白をベースにしたその出で立ちは、何処かプリキュア達に似ていた。純白の短いマントに身を包んだ姿は、一段と少女を凛々しく見せて居た。

 

 アン王女が立ち上がり、少女の前にカツカツ歩き出すと、少女の目の前で立ち止まり、

 

「これよりそなたを、トランプ王国の伝説の戦士・・・プリキュアに任命致します!以後あなたは・・・キュアソードと名乗り、パートナー妖精ダビィと共に、この国の繁栄に助力して下さい!!」

 

「ハッ!身に余る光栄・・・若輩故、至らない所もございましょうが、この身に代えて、この国の為に尽くす事を、お約束致します!!」

 

「ワァァァァァァァ!!!」

 

 アン王女の宣誓に、新たにキュアソードとして任命された少女は、恭(うやうや)しく頭を下げ、プリキュアとして、この国の繁栄に助力する事を誓った。その姿を見に来ていた観客達から、盛大な歓声と拍手がソードに浴びせられた。だが、緊張しているのか、ソードの表情は硬かった。アン王女は、思わずクスリと笑みを浮かべ、優しくソードの右肩に手を乗せると、

 

「そう緊張しなくても良いのですよ?これはあくまで形式・・・私も本当は、こういう催しは苦手なのです。剣術のお稽古をしていた方が、どれだけ気が楽か・・・」

 

「オッホン!これ、アン!・・・聞こえて居るぞ!?」

 

 背後からアン王女の父である、この国の国王は、咳払いと共に、苦笑しながらアン王女を窘めた。アン王女は肩を竦(すく)め、ペロッと舌を出すと、ソードにウインクし、元の自分の席へと戻って行った。

 

(王女様は、私の緊張を解(ほぐ)して下さったのね・・・)

 

 ソードは、アン王女の心遣いを、心の底から感謝していた・・・

 

 幼い頃に事故で両親を亡くし、孤児となったソードを、国王も、アン王女も、王宮の一室に招き、他の孤児達と共に、一杯の愛情を与えてくれた。ソードは、二人からいっぱいの愛情を受けて育ち、いつか自分は、この恩を二人に返したいと常々考えて居た。アン王女が、音楽が大好きだと知るや、彼女は歌の猛特訓をした。その甲斐あってか、アン王女はソードの歌声を称えてくれて、よく王女の前で披露した。

 

 アン王女が親交のあるメイジャーランドにも、共に出掛けた事もあった。そこでソードは、当時の歌姫だったセイレーンの美声に感動した・・・

 

 あのような人々を感動させられる歌を、自分も歌いたい・・・

 

 そう考えて居た・・・

 

(私の歌何て、メイジャーランドの歌姫には遠く及ばないけど、私の歌が、王女様にとって少しでも役立つなら、何度でも歌って見せる!!)

 

 ソードはそう思って居た・・・

 

 それが今、プリキュアに任命され、この国の守護騎士の一人として認められた。ソードは身を引き締め、更なるトランプ王国への忠誠を、心の中で誓った。立ち上がった国王は、

 

「では此処に、トランプ王国の伝説の戦士、キュアソードの誕生を祝し・・・」

 

 王の言葉が終わらぬ内に、会場内にパチパチ拍手が響いた。スタジアムに居た一同は、王の言葉が終わらぬ内に、拍手をするとは何と無礼な者だろうかと、皆辺りを伺うも、そのような人物は見当たらなかった。ソードも険しい視線で辺りを探るも、何の異変も感じられなかった。だが、アン王女とダビィはその邪悪な気配に気付き、宙を見上げると、

 

「ソード、上を見るビィ!」

 

「エッ!?」

 

 ソードは、パートナー妖精、コミューン姿のダビィに促され、上空を見上げた。そこには、何処かピエロを思わせるような姿をした、一人の人物が宙に浮かんで居た。

 

「あなたは何者です!?此処がトランプ王国だと知っての狼藉か?」

 

 父である国王を庇うように、アン王女は鋭い視線を宙に浮かべながら、謎の男に声を掛ける。アン王女の視線の先には、薄ら笑いを浮かべたジョーカーが居た。会場内の人々から響めきの声が沸き起る。ジョーカーは、そんな国民達を鼻で笑いながらも、視線を国王とアン王女に向けると、

 

「これは、これは、私はバッドエンド王国のジョーカー!」

 

「「バッドエンド王国!?」」

 

 ジョーカーが言うバッドエンド王国など、国王も、アン王女も、一度も聞いた事が無かった。その国の者が、トランプ王国に一体何の用で現われたのか訝しんだ。そんな二人の反応を見て、ジョーカーはニィと口元に笑みを浮かべながら、

 

「いやぁ、驚きましたよ!まさかトランプ王国にも、伝説の戦士プリキュアが誕生しているとは・・・でも、一万年前の事を合わせれば、何の不思議でも無いですけどねぇ?」

 

「な、何故そなたがその事を!?」

 

「その事を知るのは、王族関係者のみの筈・・・」

 

 ジョーカーの言葉を受け、国王とアン王女の顔色が変わった。ソードは二人の反応に訝かしみながらも、二人を庇うように駆け出し、ジョーカーを睨み付けた。ジョーカーは、そんなソードを気にもしないように言葉を続け、

 

「不思議ですか?簡単な事ですよ!だって私・・・元々このトランプ王国の者でしたから!!」

 

「「なっ!?」」

 

 ジョーカーの意外な告白を受け、国王も、アン王女も驚愕の表情を浮かべた。ジョーカーは、そんな二人の反応を楽しむように、

 

「それに私、王族の者とは少々因縁(いんねん)がありましたし・・・特に、アン王女!あなたとはねぇ!!」

 

 アン王女を指さしたジョーカーの瞳が赤く光った。指を指されたアン王女は困惑した。何故この者は、自分に対し敵意を向けるのか、理由が思い浮かばなかった。

 

「わたくしと!?あなたは一体?・・・まさか!?」

 

 頭の中で記憶を整理していく中、アン王女は一人の人物に思い付き、ジョーカーに問おうとした時、ジョーカーは、それ以上のアン王女の詮索を嫌ったかのように、

 

「これ以上は止しましょう!昔の事です・・・それより、ピエーロ様完全復活の序曲を、この国から始めましょうかねぇ・・・世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!!」

 

 ジョーカーは、トランプ王国でバッドエンド空間を発生させると、王国の民達が、王族関係者が、そして、国王までがバッドエナジーを発し、ピエーロ完全復活への目盛りが上がった・・・

 

「クッ・・・お父様、しっかり!」

 

「国王様!よくもぉぉぉ!!」

 

 父である国王を気遣うアン王女、ジョーカーを鋭い視線で睨み付けるソード、ジョーカーは、プリキュアであるソードが、バッドエンド空間で動ける事にさしたる動揺は感じなかったが、アン王女がバッドエンド空間の中で動ける事には、少し驚きの表情を浮かべた。

 

(何故アン王女は、バッドエンド空間で!?・・・まあ、良いでしょう!)

 

 ジョーカーは、気持ちを切り替えると、二人を見て口元に笑みすら浮かべていた。そんなジョーカーの態度を見たソードは、宙に浮かぶジョーカー目掛け攻撃を開始する。ソードのパンチが、キックが、空を切る。ジョーカーは、ソードの攻撃を余裕で躱し続け、瞬時にソードの背後を取ると、そのまま衝撃波を加えて地上に弾き飛ばした。

 

「キャァァァ!」

 

「ソード!!」

 

 まるで遊び半分で戦うようなジョーカーだったが、ソードはそんなジョーカーに翻弄され、地上に叩き付けられる。アン王女は、ソードを心配そうに見つめ、ジョーカーは、そんなソードを見てニタリとすると、

 

「おやぁ!?あなた、それでもプリキュア何ですかぁ?私、手加減して差し上げたんですけどねぇ・・・ノンノン!この程度の実力だった何て、正直ガッカリしましたよ・・・私が相手をするまでもありませんねぇ!出でよ!アカンベェ!!」

 

 ジョーカーは、ソードを挑発するように、両手を開き、やれやれといった表情のジェスチャーを浮かべると、ソードは悔しそうに拳を振るわせた。そんなソードを見たジョーカーは、紫玉を掲げると、セレモニー用に飾られてあった剣を、アカンベェへと変えた。突然現われたアカンベェを見たソードは動揺し、

 

「あの怪物は一体!?」

 

「ソード、気を付けなさい!あの者からは、嫌な気配を感じます!!」

 

 ソードとアン王女の注意がアカンベェに向けられるや、ジョーカーはその姿を何処かへと消した・・・

 

「な、何なの!?」

 

 突然現われ、突然消え去ったジョーカーを見たソードが、呆気に取られていると、それを窘めるかのように、アン王女が話し掛け、

 

「ソード、此処には大勢のトランプ王国の民が居ます!民に被害が及ばないよう、食い止めて下さい!!」

 

「はい!王女様!!」

 

 アン王女の言葉に頷いたソードは、単身剣の姿をしたアカンベェと対峙する。ソードはパンチを放とうとするも、アカンベェは、両手に持った剣を振り、衝撃派を放つと、ソードを吹き飛ばす。

 

「キャァァァ!」

 

「ソード!・・・お父様、此処でしばしお待ちを!わたくしもソードの援護に向かいます!!」

 

 キッと表情を引き締めたアン王女、まだプリキュアに成り立てのソードでは、実戦が不足していた。それを補うには、自分もソードと共に戦う以外無い、そうアン王女は判断した。アン王女は、国王を椅子に腰掛けさせると、不測の事態に備え、側近に用意をさせておいた槍を手に持つや、ソードの援護に向かった。

 

(こんな事なら・・・ミラクルドラゴングレイブを持ってくれば良かった・・・)

 

 ミラクルドラゴングレイブ・・・

 

 嘗て、闇と戦った三人のプリキュアの一人、キュアマジシャンが所持していた光の槍・・・

 

 だが、三人のプリキュア達は、闇の呪いを受け数年の命だった・・・

 

 光の槍の所持者キュアマジシャンは、封印した闇を監視する為に、仲間達に別れを告げ、光の槍を持って異世界に王国を建国した・・・その名をトランプ王国!

 

 マジシャンは、共にこの国を作り上げた一人の男性と恋に落ち、残りの余生を一人の女性として過ごすべく、この国で生涯を終えた・・・

 

 その槍は、マジシャンの子孫であるアン王女が、現在持って居た!!

 

 だが、記念すべき式典に、ミラクルドラゴングレイブを持参する訳にも行かなかった為、アン王女は万が一に備え、通常の槍は持参していた。槍を手に持ったアン王女は、素早く髪を纏め上げると、苦戦するソードの側に駆け寄り、

 

「ソード、わたくしも援護します!」

 

「王女様!?・・・申し訳ありません!私が不甲斐ないばかりに・・・」

 

「今は落ち込んでいる場合ではありませんよ!ハァァァァ!!」

 

 アン王女は、ソードを叱咤激励し、槍を身構えると、鋭い踏み込みでアカンベェに怒濤の突きを繰り広げる。アカンベェも剣で応戦し、アン王女と凄まじい攻防を繰り返す。ソードは、アン王女とアカンベェの激闘を見て驚愕し、

 

(凄い・・・流石は王女様!私も!!)

 

 ソードは、パンと両頬を叩き、気合いを入れ直すと、アカンベェに再び立ち向かった。だが、アン王女も、ソードも、ジョーカーの真の狙いに気付く事は無かった・・・

 

 

2、奪われた秘宝

 

 ジョーカーは、アン王女の部屋を訪れていた・・・

 

「この部屋に入るのも、数年振りでしょうか?アン王女を溺愛するあの国王の事、きっと秘宝はアン王女に託している筈!!」

 

 ジョーカーは部屋の中を見渡すと、アン王女はあまりオシャレに関心はないのか、女性の部屋にしては殺風景であった。

 

(やれやれ、アン王女も相変わらずですねぇ・・・)

 

 苦笑を口元に浮かべたジョーカーだったが、全身を映し出せそうな巨大な姿見鏡に目を付けた。ジョーカーの直感は、此処が怪しいと閃きを見せた。姿見鏡の横にある机の棚を調べ始めたジョーカーは、表面にAという文字が付いた白に赤のラインが入った小箱を見付けた。

 

「これは怪しそうですねぇ・・・どれ?」

 

 ジョーカーが開けようと小箱に触れた途端、小箱は光輝き、ジョーカーの手に電流が走った。思わず小箱を落としたジョーカーは、忌々しそうな表情で、

 

「どうやら、これに間違いないようですねぇ!嘗て、キュアマジシャンが所持していた、聖なる力を持つアイテム・・・ですが、光の力など、バッドエナジーで消し去ってくれましょう!」

 

 そう言うと、小箱にバッドエナジーを浴びせた。バッドエナジーを浴びた小箱から、光の輝きが消え去り、ジョーカーは小箱を開けた。蓋の裏側には、コンパクトのように鏡が入っていた。その下段には、赤、青、黄、ピンク、紫の五色の水晶が埋め込まれていた。

 

「確かに、この水晶からは凄まじい力を感じますねぇ・・・」

 

 ジョーカーはニタリと笑みを浮かべると、小箱の蓋を閉めた・・・

 

 

 

 アカンベェと対峙し続けるソードとアン王女、アン王女の加勢で状況を覆したソードは、

 

「このキュアソードが、愛の剣であなたの野望を・・・断ち切ってみせる!」

 

 ソードは、右手を手刀のようにアカンベェに構えると、雄叫びを上げながら宙に飛んだ。アカンベェの注意が、ソードに気を取られた隙を見逃さず、アン王女は怒濤の突きでアカンベェの体勢を崩し、

 

「ソード、今です!」

 

「はい!閃け!ホーリーソ~ド!!」

 

 ソードの右手から、無数の剣形のエネルギー弾が、アカンベェ目掛け乱れ飛び、堪らずアカンベェはその威力に押され、

 

「ラァブ!ラァブ!ラァ~~ブ!!」

 

 目をハートマークにしながら、アカンベェは浄化され、着地したソードとアン王女は、互いを見つめ合い笑顔を向けた。そんな二人に対し、拍手が鳴り響いた。思わず拍手がした方角を見た二人は、何時戻って来たのか、ジョーカーの姿を見て表情を険しくする。ジョーカーは、そんな事にはお構い無いように二人に話し掛け、

 

「お見事!アカンベェを倒しましたか・・・まあ、こちらの用事も済みましたんで、時間稼ぎにもなった事ですし、私ももうこの国にも用は無いんですけどねぇ・・・」

 

「どういう事です!?」

 

 不可解なジョーカーの態度を訝(いぶか)るアン王女は、思わずジョーカーを問い詰めると、ジョーカーは含み笑いを浮かべながら、

 

「ウフフフ!いえね、この国の秘宝を、無事に手に入れる事も出来ましたので、もう用は無いと言ったんですよ?」

 

 そう言うと、ジョーカーは、アン王女の部屋から持ち去った小箱を取り出した。それを見たアン王女は、見る見る顔面蒼白になるや、

 

「な、何故それを!?か、返しなさい!!」

 

「と言われて、返すバカが居ますか?では、使わせて頂きますよ・・・」

 

 ジョーカーは、赤い小箱を開くと、中に埋め込まれていた五色の水晶を取り出した。

 

「や、止めてぇぇぇ!!」

 

 アン王女の悲鳴が辺りに響き渡る中、ジョーカーは、水晶にバッドエナジーを加えるや、ピンクの水晶にハッピーの髪の毛を、赤い水晶にサニーの髪の毛を、黄色い水晶にピースの髪の毛を、紫の水晶にマーチの髪の毛を、青い水晶にビューティの髪の毛を埋め込んだ。更に、ピンク、赤、黄、緑、青の五色の大きなトランプカードを取り出すと、カードの中に水晶を埋め込んだ・・・

 

「アァ!?な、何という事を・・・お願いだから、もう止めてぇぇぇ!」

 

(王女様!?)

 

 アン王女は、悲しげな表情でジョーカーに止めるように訴えるも、ジョーカーはただ不気味に笑むだけだった。ソードは、取り乱すアン王女を悲しげな目で見つめるも、直ぐに険しい表情でジョーカーを睨み付けた。

 

 トランプカードに吸い込まれた水晶は、まるで心臓の鼓動のように、ドクンドクンと蠢き始める。その鼓動に合わせるように、巨大なトランプカードの中から、人のような姿が形作られていった。アン王女も、ソードも、目を見開き、目の前で起ころうとしている出来事を、呆然と見つめていた・・・

 

「ウフフフ、あなた方には特別に見せて差し上げましょう!さあ、目覚めなさい!!バッドエナジーより生まれしプリキュア・・・バッドエンドプリキュアよ!!」

 

「「バッドエンドプリキュア!?」」

 

 ジョーカーが放った一言に、アン王女も、ソードも驚愕した。確かに今ジョーカーは、プリキュアの名を出したのだから・・・

 

 ジョーカーが両手を宙に広げると、トランプカードの中から、腕が、足が、現われ、更に中からゆっくり全身を現わした五人の少女達、頭部には、こうもりの羽のようなものを付け、その体は黒いタイツに覆われ、ピンク、赤、黄、緑、青のキャロットをした五人の少女達が宙に浮かんで居た。ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの姿に何処か似ている、五人の少女達の姿が・・・

 

「な、何という事を・・・」

 

「何なの!?あの子達が・・・バッドエンドプリキュア?」

 

 その光景を見たアン王女はワナワナ震えだし、ソードは、突然現われた五人の少女達を見て呆然としていた。現われた五人の少女達、ピンク、赤、緑髪の少女達は背伸びをし、黄色い髪の少女は大あくびをし、青髪の少女は、何処か冷めた視線で周囲を見渡していた。

 

「ウ~ン・・・何か窮屈な所からやっと出れたぁ!」

 

「ホンマやなぁ・・・」

 

「って言うか・・・あんた達、誰?」

 

「そう言えば・・・私、誰だっけ?」

 

「名前などどうでも良いわ!」

 

 ピンク、赤、緑、黄、青の髪をした五人の少女達は、自分が何者なのか、何故此処に居るのか、全く理解出来ない様子を見たジョーカーの顔から、汗が滴り落ちた。ハッと我に返ったジョーカーは、五人の少女達に話し掛け、

 

「あなた方は・・・バッドエンドプリキュア!あなたは、そうですねぇ・・・バッドエンドハッピー、あなたが、バッドエンドサニー、あなたが・・・」

 

 ジョーカーは、五人の少女達に説明を始め、五人の少女達に名前を付けていった。アン王女も、ソードも、その様子を呆気に取られたように見つめていた。

 

「と言う訳で、あなた方には、ピエーロ様復活の為に、バッドエナジーを大量に集めて欲しいのです!」

 

 ようやく説明を終え、ハァハァ息をするジョーカーであったが、五人の少女達は、まるで興味が無いような表情を浮かべると、

 

「フ~ン・・・でも、ヤダ!」

 

「ハァ!?」

 

「面倒やぁ!」

 

「エッ!?」

 

「そんな事しても・・・つまんなぁい!」

 

「ゲッ!?」

 

「そんなチマチマした事・・・ゴメンだねぇ!」

 

「もしもし!?」

 

「私達は・・・好きなようにやらせて貰うわ!!」

 

「あのぉ・・・」

 

 ピンク、赤、黄、緑、青、バッドエンドプリキュアと命名された五人の少女達から、ジョーカーは次々と拒否をされ、動揺していた・・・

 

(な、何々ですか!?何と我が儘な・・・)

 

「ですから、ピエーロ様を復活させれば、全世界をバッドエンドに染める事が・・・」

 

 呆気に取られていたジョーカーだったが、今一度バッドエンドプリキュアに説明するも、

 

「エェ!?別に、興味無いし・・・」

 

「ウチも、自分が面白なら、それでエエ!」

 

「私も、自分で好きなようにしたいなぁ・・・」

 

「あたしも、命令されるのはゴメンだねぇ!」

 

「私達は、好きなようにさせて貰うわ!」

 

 そう言うと、五人はバラバラに散らばろうとし、ジョーカーは慌てて五人を呼び止めると、

 

「い、言いそびれてましたぁぁ!実は、あなた方五人は・・・バッドエナジーを定期的に回収しなければ・・・消滅してしまうんですよぉぉぉぉ!!」

 

「「「「「エェェェェ!?」」」」」

 

 バッドエナジーを回収しなければ、消滅してしまう・・・

 

 ジョーカーの咄嗟(とっさ)の思いつきであったが、その一言は、バッドエンドプリキュアの心に響いたようで、五人は顔面蒼白になると、

 

「そ、それ本当!?」

 

「う、嘘やないやろうなぁ?」

 

「エェェン!まだ何もしない内に・・・消える何てヤダァァァ!!」

 

「泣くなっつぅのぉ・・・」

 

「それが事実なら・・・確かにあなたの言うように、バッドエナジーを集めない訳にはいかないようね?」

 

 ジョーカーの術中に嵌ったバッドエンドハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの五人、

 

(やれやれ、何とか誤魔化せましたねぇ・・・しかし、この我が儘振りには困りましたねぇ)

 

 呆れ顔になるも、何とか誤魔化せた事で、ジョーカーはホッと安堵するや、

 

「では、あなた方をバッドエンド王国に案内致しましょう!!」

 

 渋々ながら、ジョーカーの言葉を受け入れたバッドエンドプリキュアの五人は、宙に浮かび上がると、ジョーカーは空間に歪みを発生させた。ハッと我に返ったアン王女とソードは、

 

「お、お待ちなさい!」

 

「あなた達、水晶を王女様に返しなさい!!」

 

 二人は、慌ててジョーカーとバッドエンドプリキュアを呼び止めた。五人は振り返ると怪訝な表情を浮かべ、

 

「何や、あいつら?」

 

「あたしは・・・命令されるのが大嫌い何だよ!!」

 

 バッドエンドサニー、バッドエンドマーチの二人は、表情を険しくすると、バッドエンドサニーは炎を、バッドエンドマーチは緑色した球体を、アン王女とソードに向けて攻撃した。アン王女は、槍を巧みに操って攻撃を捌き、炎を無効化するも、ソードは緑の光弾を避けきれず、爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた。

 

「キャァァァ!」

 

「キャハハ!何あの子、超弱いんですけどぉ?」

 

 バッドエンドピースは、ソードを見て嘲笑すると、おまけとばかり、ソードに対して雷を浴びせた。直撃を受けたソードは、そのまま意識を失った。

 

「ソードォォ!」

 

 心配そうにソードに駆け寄り、介抱するアン王女、それを見下すように見た、ジョーカーとバッドエンドプリキュア達は、

 

「ウフフフ、無様ですねぇ?その程度でプリキュアを名乗るなど・・・・アン王女、あなたがプリキュアになった方が、良かったんじゃありませんかぁ?アハハハハ!」

 

「クッ!」

 

 ジョーカーの蔑む視線と嘲笑(ちょうしょう)を受け、アン王女は悔しげな表情を浮かべた。ミラクルドラゴングレイブさへあれば、此処まで翻弄される事も無かったのにと・・・

 

「じゃあねぇ!」

 

「そのポンコツさんに伝えて置いて!」

 

「これに懲りたら、二度と私達の前に現われない事だと伝えなさい!!」

 

 バッドエンドハッピー、ピース、ビューティの捨て台詞すら、アン王女の耳には届かなかった。ジョーカーの言うように、なれるものなら、自分もプリキュアとなってソードと共に戦えたのにと、アン王女は、プリキュアになれない自分を恥じた・・・

 

 だが、この時のアン王女は気付いて居なかった!

 

 三種の神器の一つ、ミラクルドラゴングレイブを扱えるその事実こそ、アン王女は、プリキュアになる資格を既に持っていた事に・・・

 

(今回は私達の完敗です・・・ですが、必ず王家の秘宝は取り戻して見せます!!)

 

 アン王女の瞳には、闘志が宿っていた。今回は完敗なのは認めても、必ず王家の秘宝は取返して見せると・・・

 

 こうして、ジョーカーとバッドエンドプリキュア達は、バッドエンド王国へと帰って行った。バッドエンド空間から解放されたトランプ王国だったが、アン王女とキュアソードの心が晴れる事は無かった・・・

 

             第七十七話:悪のプリキュア!?

                    完

 


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