プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第七十六話:プリキュアショー!?

1、羞恥心(しゅうちしん)

 

 世界絵本博覧会の会場では、佐々木先生が、預かった子供達を相手に四苦八苦(しくはっく)していた。中々戻らない姉達に、みな不安げな表情を浮かべていた・・・

 

「みんな、もうすぐ戻って来るから・・・我慢してね!」

 

 そう子供達に語って聞かせるも、佐々木先生も一抹の不安を覚えていた。なぎさ達も一緒に居るから大丈夫だとは思って居ても、心の何処かで不安が拭えなかった。

 

「ン!?あのマダムは大分お疲れのご様子・・・お嬢様!」

 

「どうしました、セバスチャン?」

 

「ハッ、あのマダムのお顔が優れないものですから・・・」

 

「まあ、あんなに沢山のお子さんをお一人で・・・セバスチャン、本館の方にご案内して差し上げて!私は、マナちゃんと六花(りっか)ちゃんと一緒に、もう少し会場を見て回りますわ!」

 

「畏まりました!」

 

 セバスチャンはありすに一礼すると、佐々木先生達の下へと近づいた。礼儀正しく深々とお辞儀をするセバスチャンに、佐々木先生も慌ててお辞儀を返すと、

 

「マダム、そのように大勢のお子さんを、お一人で面倒見て居られるのは大変でございましょう?あちらの本館には、お子様用の遊戯スペースもございます!よろしければあちらに!では、ご案内致しますので、こちらに・・・」

 

 セバスチャンがニッコリ微笑みながら、佐々木先生と子供達を促すと、佐々木先生は困惑顔で、

 

(エッ!?エェェ?ひょっとして、この子達全員・・・・・私の子と思われてる訳?嘘ぉぉ!?)

 

「あ、あのぉ、この子達は知り合いの子を預かってるだけで・・・」

 

「先生、顔が真っ赤だぁぁ」

 

「コラ、こうた!先生をからかっちゃ駄目でしょう!!」

 

 顔を真っ赤にしながら、慌ててセバスチャンに説明する佐々木先生を、こうたがからかい、直ぐにはるがこうたを窘(たしな)めた。

 

「先生!?・・・これは失礼致しました!では、改めまして・・・先生様、本館までご案内致しますので、こちらに!!」

 

「あ、ありがとうございます!ですが、ここでこの子達の身内の者と待ち合わせをしていますので・・・」

 

「さようでございましたか、出過ぎた真似を致しました。ささやかなお詫びを・・・」

 

 そう言うと、セバスチャンは素早く携帯を取りだし、何処かに電話を掛けると、直ぐに沢山の風船を持った、三匹の子豚の仮装をした三人が、ひかる達に風船を配り始めた。風船を貰い、ひかる、みのり、ゆうた、ひな、こうたは大喜びし、はるは、貰った風船でふたばをあやすと、ふたばはキャッキャと嬉しそうにベビーカーの中ではしゃいだ。

 

「風船何か貰っても・・・あんまり嬉しくないよなぁ?」

 

「だよなぁ」

 

 奏太に話を振られ、けいたも奏太に同意していたが、楽しそうにしている他の子供達を見ていると、自然に二人も優しそうな目を浮かべていた。

 

「では、私はこれで!」

 

「色々お心遣いしてくださり、ありがとうございました!!」

 

 佐々木先生は、気に掛けてくれたセバスチャンに、深々とお辞儀をしながらお礼を述べるも、内心複雑な心境であった・・・

 

(私・・・まだ二十代なのに、他の人から見ると、これぐらいの子供達のお母さんに見られるのかしら?・・・みんなぁ、早く戻ってきてぇぇぇ!!)

 

 佐々木先生は心の中で悲鳴を上げた・・・

 

 

 絵本の世界に向かった時、消え去った筈のテントが再び現われるや、その中からけたたましい悲鳴が沸き起った。

 

「今の声!?・・・六花、ありす、聞こえた?」

 

「うん、物凄い悲鳴だったよね?」

 

 テントの近くに居たマナ、六花、ありすの三人、特にこの世界絵本博覧会の主催者であるありすの表情は、見る見る険しさを増し、

 

「マナちゃん、六花ちゃん、行ってみましょう!!」

 

 ありすに促され、三人は悲鳴が聞こえた方向へ駆け出して行った・・・

 

 

 

 そのテントの中では・・・

 

「タルト、シロップ、ピーちゃん、外に出てって!」

 

「こっち見たら絶対駄目だからねぇ!!」

 

「ほら、コフレ!あんたもだよ!!」

 

「あんた達・・・外で誰も入れないように見張っておいて!」

 

 ラブが、響が、えりかが、りんが、身体を椅子で隠すようにして、顔を真っ赤にしながら、妖精の四人にテントから出て行くように伝えると、シロップは大慌てで人間姿になるや、タルトとピーちゃん、渋るコフレを抱き上げ、慌ててテントから飛び出して行った。

 

「メップル!」

 

「フラッピ!」

 

「「目を開けたら、どうなるか分かってるよねぇぇぇ?」」

 

「こ、怖いメポ」

 

「絶対見ないラピ・・・」

 

 なぎさと咲に脅され、コミューン姿のメップルとフラッピは、ブルブル震えていた。

 

 なぎさ達一同が、椅子に隠れながら、それぞれ恥ずかしそうにしていたのには訳があった。何故なら、絵本の世界から元の世界に戻って来た少女達は、靴と装飾品以外、全員一糸纏わぬ全裸だったのだから・・・

 

「ねぇ、ほのか!私達・・・何でこんな姿になってるのぉ?」

 

「私に聞かれたって・・・知らないわよぉぉ!」

 

 なぎさに聞かれたほのかも、困惑気味に訳が分からないと言葉を述べる。絵本の世界を出る時は、みんな服を着ていた。なのに、元の世界に戻って来たら、服が消えているのはどういう事なのか?

 

(もしかして・・・)

 

 みゆきの脳裏に嫌な予感が漂うのだった・・・

 

 困惑する一同の耳に、外で言い合いをしているシロップの声が聞こえてきた。思わずハッとした一同は、聞く耳を立てて、外の様子を伺った・・・

 

 

 両手を広げ、必死にマナ、六花、ありすを通さないように試みるシロップを、三人はジィと訝(いぶか)るような視線で見つめていた・・・

 

「いや、だから、今は不味いんだって!」

 

「ピィィィ!」

 

 シロップを援護するように、ピーちゃんが懸命に羽をバタ付かせていると、ありすは目を輝かせピーちゃんを抱き上げると、

 

「まぁ、可愛い!」

 

「ありす・・・今はそれどころじゃ無いんじゃ?」

 

 呆れ顔の六花に突っ込みを入れられ、要件を思い出したありすは、ピーちゃんを手放し手を振ると、直ぐにキッとシロップを見つめ、

 

「そ、そうでしたわ・・・・・何が不味いんですの?私はこの世界博覧会の主催者です!中を調べる権利がありますわ!!」

 

「主催者!?・・・いや、それはそう何だけど、色々取込んでいて・・・」

 

 ありすがこの絵本博覧会の主催者だと知り、シロップは益々動揺する。そんなシロップを見たマナと六花は、益々シロップの事を胡散(うさん)臭そうに見つめ、

 

「何か怪しいよね?」

 

「あなた、中で何を企んでるの?」

 

「エェェ!?別に企んで何か・・・・・おい、お前達、もう限界だ!後はお前達で何とかしろぉぉ!!」

 

 マナと六花に、中で何か企んで居ると言われたシロップは、大慌てで否定し、中に居る一同に対して、後は自分達で何とかしろと伝えると、中から響めきが沸き起こった。

 

「コラ、シロップ!諦めるの早すぎ!!」

 

「もうちょっと粘りなさいよねぇ!!」

 

 シロップは、ラブとりんにもっと粘れと怒られる。両者から責められ、板挟みのシロップは、

 

「んな事言ったってさぁ・・・」

 

 シロップは、自分は怪しい者じゃ無いからと、必死に三人に引き攣った笑みを浮かべた。だが、マナ、六花、ありすの視線が変わる事は無かった・・・

 

 

「アカン・・・もう限界やぁ!」

 

「でも、こんな姿見られたら・・・」

 

 あかねが頭を抱え、舞もどうしたものかと不安そうな表情を浮かべる。エレンは一同を見渡すと、

 

「音吉さんの本で読んだわ!こんな姿を見られたら、私達全員・・・・・露出狂とか、変態とか思われるんじゃないかしら?」

 

「エレン・・・どんな本読んでるのよ?」

 

「お爺ちゃん・・・・・」

 

 エレンがウンウン頷きながら言うと、美希が呆れ顔で突っ込みを入れ、アコは益々恥ずかしそうに俯いた。みゆきは辺りをキョロキョロ見渡すと、

 

「魔王、居るんでしょう?姿を見せて!!」

 

「エッ!?魔王?」

 

「魔王は絵本の世界に居るんじゃないの?」

 

 みゆきが魔王の名前を発し、魔王は絵本の世界に残って居ると思って居た一同、うららといつきが、代表するようにみゆきに問い掛けた時、辺りに不気味な笑い声が響き渡った・・・

 

「カゲカゲカゲカゲ!やっぱり、お前達にはその姿の方がお似合いカゲェ!!」

 

「魔王!!!」

 

 ニヤニヤしたスケベ顔で姿を現わした魔王に、みゆきを除いた一同が驚愕する。なぎさは胸を隠しながら魔王を指さすと、

 

「あんたの仕業かぁぁぁ!私達の服を返してよ!!」

 

「知らないカゲェ・・・絵本の世界に置いてきたカゲェ」

 

 惚け顔の魔王が、絵本の世界に置いてきたと伝えると、一同が響めきながら、

 

「「「「「何ですってぇぇぇぇ!?」」」」」

 

 魔王は、そんな動揺する少女達の裸体(らたい)を観賞するように、上空をグルグル旋回し続けた。

 

「魔王や無くて・・・エロ魔王やないかい!」

 

「魔王、私達の服を返してよ!」

 

 あかねとやよいが嫌そうに服を返すように訴えるも、魔王はベェと舌を出し、

 

「嫌カゲェェ」

 

 魔王を捕まえようとするも、胸を隠しながらでは魔王のスピードに対応出来ず、一同が翻弄(ほんろう)されていく、

 

「何て下劣(げれつ)な・・・」

 

 悔しそうにゆりが険しい表情を魔王に浴びせるも、魔王は我関せずといった表情で上空を飛び回り続ける。そんな魔王の油断を見逃さず、エレンは上空高くジャンプし、魔王を捕まえると、魔王は、そんなエレンを見て驚いたように、

 

「カゲェ!?お前、俺に裸を見られて恥ずかしくないのかぁ?」

 

「多少はね、この姿にも慣れたし・・・でも私・・・元々猫の姿をしたメイジャーランドの妖精だし!」

 

「そっかぁ!じゃあ、くるみも・・・」

 

「ミルゥ!?」

 

「アァァ!ちょっとぉぉぉ、何一人だけミルクの姿に戻ってるのよぉ?」

 

「五月蠅いミル、ミルクは多感なお年頃ミル」

 

「私達だってそうだよぉぉ」

 

「ミルク、狡いぃぃ」

 

 一人妖精姿に戻ったミルクを、のぞみ、咲、ラブが頬を膨らませて抗議した。エレンはクスリと笑いながら、

 

「みんな、魔王を捕まえたけど、どうする?」

 

「どうする!?・・・決ってるわ!!」

 

 ゆりがココロポットを手に持つと、釣られるように一同が次々に変身アイテムを握りしめた。ミルクもくるみの姿に戻ると、ミルキィーパレットを手に持つ、皆その視線は険しい表情を浮かべていて、魔王の顔に焦りが浮かんだ。みゆきは胸を手で隠しながら魔王に近づくと、

 

「魔王、早くみんなに謝って!!」

 

「ゴ、ゴメンカゲェ・・・・」

 

 困惑気味の魔王が、一同に詫びようとするも、なぎさ、つぼみ、響は、魔王の謝罪を受け入れず、

 

「もう・・・遅い!!」

 

「私・・・堪忍袋の緒が・・・切れましたぁぁぁ!!」

 

「魔王・・・やって良い事と、悪い事があるのぉぉぉ!!」

 

「カゲェェェェ!?」

 

 一同の身体が光輝き、みゆきを除いた一同がプリキュアへと変化を遂げた・・・

 

「アァァ!?良かったぁ・・・プリキュアの時は衣装着たままだよ!」

 

「本当、安心したわ!」

 

 顔を見合わせ合ったブラックとホワイトがホッと安堵する。少しはみんなも冷静さを取り戻したと感じたみゆきは、

 

「みんな、魔王も反省して・・・・・無い?」

 

 プリキュアになって衣装を着ている事で、魔王はブゥブゥ文句を言い始め、庇(かば)おうとしたみゆきも、両頬を大きく膨らませると、無言でスマイルパクトを手に持ち、ハッピーに変身した。

 

「カゲェェ!?ま、待つカゲ!話し合うカゲ!!お前達、絵本の世界で俺の愛を取り戻すって・・・」

 

「問答無用!!」

 

「カゲェェェェェ!?」

 

 

 テントの中が騒がしくなり、何事かと思ったマナ、六花、ありす、三人はシロップの制止を振り切り、テントを開けたその時、我を忘れたプリキュア達の攻撃で、テントは吹き飛び、衝撃に巻き込まれたマナ、六花、ありすの髪が、アフロヘアーになって、何事が起こったのかと目をパチクリしていた・・・

 

「ゲッ!?アハハ・・・だ、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「も、申し訳ありません・・・」

 

 呆然とする三人に、慌ててブラック、ホワイト、ムーンライトが謝罪を始め、少し遅れて他の一同が駆け寄った。

 

「俺・・・知~らねぇ!」

 

「僕も・・・知らないですっ・・・」

 

「ア~ア、やってもうたぁ・・・」

 

「ピィィ」

 

 深々と頭を下げて、マナ、六花、ありすに詫びる31人のプリキュアの姿に、シロップ、コフレ、タルト、ピーちゃんの目は点になった。困惑気味にプリキュア達を見つめるマナ、六花、ありすは、

 

「あのぅ・・・これはどういう事でしょうか?」

 

「何故あなた達がこのテントの中から!?」

 

「ちゃんと説明して頂きたいですわ!」

 

 三人に詰め寄られ、困惑気味に顔を見合わせた一同、メロディとリズムは、さり気なく後方に下がり、マナの視界から見えない位置に移動した。それに気付いたビートは小首を傾げ、

 

「メロディ、リズム、どうしたの?」

 

「いやぁ、何となくあの子苦手で・・・・」

 

「顔を合せづらくて・・・」

 

 メロディとリズムは小声で、数時間前、マナに注意されたことを思い出し、どうも苦手でと苦笑を浮かべた。マリンもその時の事を思い出したようで、

 

「そう言えば、あんた達あの子に注意されてたもんねぇ?」

 

「成る程、それで見えない位置に・・・」

 

 思わずクスリと笑ったマリンとビートだったが、

 

「お前達、本当に反省してるのか?」

 

 突然声が掛かり、メロディ、リズム、ビート、マリンの四人はビクッとしながら直立不動になると、

 

「「「「はい、反省してます!!」」」」

 

「なら良いカゲェェ!」

 

「「「「カゲ!?・・・・アァァァァ!!」」」」

 

 四人に声を掛けたのは魔王、魔王はさっきの仕返しとばかり、四人をからかった。見る見る四人の顔は真っ赤になり、

 

「大体、こんな事になったのはあんたのせいでしょうが?」

 

「そうよ、さっさと私達の服を返しなさいよ!!」

 

「まだお仕置きが足りないようだねぇ・・・」

 

「本当、可愛げの無い・・・・」

 

 メロディ、リズム、マリン、ビートが、魔王に文句を言ってると、慌ててブロッサムが四人を呼び止め、

 

「マリン!メロディ!リズム!ビート!・・・シィです!!」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 振り返った四人の視線の先には、ジィと見つめるマナ、六花、ありすの痛い視線が突き刺さった。

 

「とても反省しているようには見えませんけど?」

 

 眼鏡の位置を直した六花が、冷静な意見を述べると、マリン、メロディ、リズム、ビートは、シュンと落ち込み、

 

「「「「ゴメンなさい・・・」」」」

 

「カゲカゲカゲカゲ、いい気味カゲェ!」

 

 そんな姿を見て高笑いを浮かべる魔王を、ブラックは右手でムギュウと掴むと、

 

「あんた・・・いい加減にしなさいよぉぉぉ?」

 

「私達も・・・そう温和じゃないから!!」

 

「この場であなたを消滅させても・・・良いのよ?」

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライト、三人の険しい視線を見るや、流石の魔王も、三人から発せられる威圧感にガタガタ震えだし、ブラックはポイっと魔王をハッピーに投げると、ハッピーが慌てて魔王をキャッチする。先程とは打って変わって、ハッピーに抱かれた魔王は、ぬいぐるみのようにジッとしていた。

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライトを中心に、一同が改めてマナ、六花、ありすに謝ると、三人は思わず顔を見合わせクスリとし、

 

「いやぁ・・・プリキュアって、こんなに親しみやすい人達だったんだねぇ?」

 

「本当・・・もっと怖い人達かと思ってた!」

 

「そうですわね・・・この件はもう結構ですわ!ところで、これは私からのご提案なのですが・・・皆様方に協力して貰いたい事があるのですが?」

 

 ありすから予想外の提案を受け、顔を見合わせた一同、

 

「協力!?」

 

「これだけ迷惑掛けたし・・・」

 

「私達で出来る事なら協力しますけど・・・」

 

 代表するようにブラック、ホワイト、ムーンライトは、協力する事に同意した。ありすは、手を叩き嬉しそうにすると、

 

「まあ、それは良かったですわ・・・セバスチャン!」

 

「ハッ!!」

 

 何処から現われたのか、ありすがセバスチャンの名を呼ぶと、セバスチャンが現われ、ありすの指示を聞き、何度も頷いた。

 

「では、そのように手配致します!」

 

 一体何を手伝わされるのか?

 

 プリキュア達は皆不安げに、微笑むありすの顔を見つめた・・・

 

 

 

2、ありすの頼み

 

 ブンビーが社長を務めるブンビーカンパニー、以前プリキュアのリーダーだとテレビで出演して以来、仕事も順調だった。パートを一人増やしたブンビーであったが・・・

 

「あのぅ・・・お化粧直してばかりじゃなく、仕事の方にも行って欲しいんですけど?」

 

「ハァァ!?あたしは、パートだよ?そういう出張は、社員がやるんじゃないのかい?」

 

(何!?何なのこの態度?私は社長だよ!でもなぁ・・・)

 

 ブンビーカンパニーには、嘗てナイトメアにブンビーが居た頃の上司、カワリーノに似た社員が、この度雇ったパートは、ハデーニャに似た中年の女性だった。ブンビーは、面接に来たこの二人を断る事が出来ず、今に至っていたのだが・・・

 

「はいはい、分かりました!外回り行って来ます!!」

 

 ドアを開けたブンビーの眼前が赤く輝くと、ドリーム、アクア、パッションが突然現われ、思わずブンビーは尻餅を付いて驚く、

 

「な、何!?君達、どうしたの、突然?」

 

「ブンビーさん、一緒に来て!」

 

「私達に協力して欲しいの!!」

 

 大慌てのドリームとアクアに協力を依頼されたブンビー、仕事の依頼かと少しニンマリすると、

 

「協力!?仕事の依頼?じゃあ、事務所でゆっくり聞くけど?」

 

 事務所で話を聞こうとするブンビーの両手を、ドリームとアクアが掴むや、

 

「「時間が無いの!いいから一緒に来てぇぇ!!」」

 

「じゃあ、戻るわよ!!」

 

 パッションはアカルンに頼むと、周囲が赤く発光し始めた。ブンビーは驚愕しながら、

 

「エェェ!?いきなりそんな・・・アァァレェェェ!!」

 

 半ば強引に、ブンビーはドリーム達に連れ去られた・・・

 

 

 ラビリンス・・・

 

 物静かに読書をするサウラーと、腕立て伏せをしているウエスターだったが、突然部屋が赤く発光し、何事かと驚いた二人だったが、突然パッションが腕立て伏せをしているウエスターの上に現われ、ウエスターを押しつぶした。

 

「ウエスター、サウラー、私達にちょっと協力して貰いたいんだけど?」

 

「協力!?プリキュアの姿になっていると言う事は・・・また君達の敵でも現われたのかい?」

 

「そういう訳じゃ無いんだけど・・・」

 

「なら悪いけど、僕は本を読んでる途中何で、遠慮しておくよ!」

 

 チラリとパッションに視線を移したものの、サウラーはあっさりパッションの頼みを断った。パッションは、少し膨れっ面になると、

 

「アァン、もう・・・じゃあ、ウエスターだけで良いわ!」

 

「じゃあって何だよ!?それより・・・俺の上から退(ど)けよ!前にもあったよな、こんな事!?」

 

「じゃあ、戻るわよ!」

 

「イース!人の話を聞けぇぇぇ!!」

 

 ウエスターの言葉を無視し、パッションはウエスターの上に乗っかったまま、再びウエスターを伴いラビリンスを後にした。

 

「やれやれ、忙(せわ)しない事だねぇ・・・」

 

 そう言うと、サウラーは再び読書を始めた・・・

 

 

 突然プリキュア達に呼ばれたブンビーとウエスター、バロムとの戦いの時に面識が合った二人は、直ぐに打ち解け、

 

「あなたもプリキュアに呼ばれたの?」

 

「そう何ですよ、全く人の話を聞かなくて困ってますよ!」

 

「でも・・・毎回会う度にプリキュアの人数増えてない?」

 

「そう言えば・・・あの青いプリキュアとはパルミエ王国で会ってるから分かるけど、あの六人と、黄色い小さなプリキュアは初めて見たなぁ・・・」

 

 ブンビーとウエスターの視線がビート、ミューズ、ハッピー達六人に向けられる。ブンビーはメロディ、リズムまでのプリキュアとは面識があり、ウエスターは、パルミエ王国でビートと共に、アカンベェと戦った事があるので、ビートまでは知っていたが、ミューズ以降のプリキュアを見るのは初めてだった。ビートは、視線が合ったウエスターとブンビーに軽く右手を挙げ、

 

「ウエスター!久しぶり!!そっちの人とも、何処かで会った気はするんだけど?」

 

「そっかぁ!ビートは、バロムとの戦いの時に、ブンビーさんには会ってたよねぇ?」

 

 まだビートがプリキュアになる以前、当時マイナーランドの歌姫だったセイレーンが、プリキュア達と休戦して、共にバロムに立ち向かった事があったのを思い出したドリームは、ポンと手を叩き納得した。

 

「一応紹介しておくね!この子はキュアビート!こっちの子がキュアミューズ!で、こっちの六人は、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、エコーだよ!!」

 

 ドリームに紹介され、ビートは再び右手を挙げ、ミューズとハッピー達六人が軽く会釈し、ブンビーとウエスターも挨拶を返した。

 

「所でイース!頼みたい事って何だ?」

 

「どうせ私は、人の話を聞きませんよぉぉ!フン!!」

 

 ソッポを向いたパッションに変わり、主催者であるありすが、二人に会釈(えしゃく)をして話し出した。その内容は、プリキュアショーに参加して欲しい事だった・・・

 

「「プリキュアショー!?」」

 

 思わず目を点にしながらハモったブンビーとウエスター、そんな事で呼ばれたのかと些(いささ)か困惑していると、

 

「はい、実は先程この会場内で、絵本のキャラクターが暴れたのですが、プリキュアの皆様方が鎮めてくださったのです。ですが、こんな騒ぎを起こした今、このままでは、明日以降の開催は行えないかもしれないと考えて居ました。そこで先程の騒動は、ショーの一部だったという事にしたいのです!!」

 

「成る程・・・それに私達にも参加して欲しいと、こういう訳ですな?」

 

「はい!如何でしょうか?もちろん、ご協力頂けるなら報酬はお出し致しますわ!!」

 

 ありすの説明に納得したのか、ブンビーは何度か頷いていると、ルージュは小声でブンビーに話し掛け、

 

「ありすちゃんは、四葉財閥の跡取り娘何だって!此処で知り合いになっておくのも、悪く無いんじゃない?」

 

「四葉財閥のぉぉぉ!?やります!ぜひやらせて下さい!!」

 

 ブンビーは、揉み手をしながらあっさり承諾したものの、ウエスターは興味無さそうに、

 

「俺はパスだなぁ!ショーみたいな子供じみた真似・・・」

 

「何言ってるのよ!散々四つ葉町で、そのショーみたいな事してたくせに!」

 

「ウッ!?・・・」

 

 ベェーと舌を出したパッションに図星を指され、ウエスターが言葉に詰まる。苦笑を浮かべたブラックは、マナ達に聞こえないように小声でウエスターに話し掛けると、

 

「ウエスターは、ドーナツの他にたこ焼きも好き何でしょう?ひか・・・ルミナスの家はたこ焼き屋をやってるんだけど・・・絶品だよ!!」

 

「協力して頂けるなら・・・御馳走しますけど?」

 

 ルミナスも小声でウエスターに囁き、協力してくれるなら、たこ焼きを御馳走する事を約束する。見る見る表情を緩めたウエスターは、

 

「何ぃぃ、絶品たこさんを食えるのかぁぁ!?やるぅぅぅ!!」

 

「ハァ・・・ウエスター!協力してくれるのはありがたいけど、こっちが恥ずかしくなるわ」

 

 そんなウエスターを見たパッションは、ハァと溜息を付いた・・・

 

 ブラック、ホワイト、ムーンライトは、ハッピーに抱かれた魔王を囲むように立つと、

 

「魔王、あんたにも協力して貰うからね?」

 

「協力してくれるなら・・・さっきの事は許して上げる!」

 

「断るなら・・・」

 

 魔王の視線には、ブラック、ホワイト、ムーンライトの姿こそ、凶悪な魔王のように見えガクガク震えだし、コクコク何度も頷いた・・・

 

 

 

 何時まで経っても戻ってこないみゆき達に、困惑していた佐々木先生の耳に、場内アナウンスが聞こえてきた。

 

「皆様、先程のショーは如何だったでしょうか?これより、プリキュアショー、第二部を開催致します。どうぞお楽しみ下さい!!」

 

「プリキュアショー!?一体どういう事?」

 

 困惑する佐々木先生の耳に、高笑いを浮かべる男達の声が聞こえてくる。

 

「ハァハハハ!愚かな人間共よ!!」

 

「この会場は、我らが魔王様が支配した!」

 

「カゲェェェェ!!」

 

 ノリノリで悪役を演じるブンビーとウエスター、魔王であったが、子供達の反応はイマイチだった・・・

 

「アレェ!?何かイマイチだねぇ?」

 

「魔王、ちょっと怖さが足りないんじゃないのか?」

 

「今は力が足りないから、仕方無いカゲェ・・・」

 

 子供達からは、さっきのショーの方が怖かったとか、弱そうだとか、散々貶され、

 

「アレェ・・・良いの!?おじさん・・・本気出しちゃおうかなぁぁ?」

 

 そう言うと、蜂に似た怪人状態に変化するブンビー、

 

「泣いても知らんぞ・・・ホホエミーナ、我に仕えよ!仕えよ!仕えよ!仕えよ!」

 

 辺り構わず会場内の私設をホホエミーナに変えるウエスター、

 

「俺様もやるカゲェ・・・カゲカゲカゲカゲェェェ!!」

 

 会場内の大木に影を憑依させると、会場内を暴れ始める。ルージュとピーチは目を点にし、

 

「あのバカ達・・・やり過ぎよ!」

 

「これじゃさっきと同じじゃない?」

 

 ドリームはウンウン頷くと、

 

「まあ多少の攻撃なら・・・あの人達なら大丈夫でしょう?」

 

「みんな、行くわよ!!」

 

 ムーンライトの号令の下、物陰に隠れていたプリキュア達が次々に現われると、子供達から大歓声が沸き起った。

 

「ウワァ!プリキュアだぁぁ!!」

 

 ひかる達も、身を乗り出すようにショーに興奮しているのとは逆に、佐々木先生は目を点にしながら、

 

「プリキュアショーって・・・本物のあの子達が何してる訳!?」

 

 困惑する佐々木先生を余所に、プリキュアショーは多いに盛り上がりを見せていった・・・

 

 

 

「見て見て、真央ちゃん!プリキュアだよ!またプリキュアに会えたね・・プリキュア!何とかビーム!!」

 

 両手の親指と人差し指で輪っかを作り、自分の目に当てためぐみは、プリキュアの技だとでも言いたげにポーズを取って、側に居たウエスターに照射する真似をすると、ウエスターは少し呆気に取られながら、

 

「いや、プリキュアは、目からビームは出さんと思うぞ?」

 

「じゃあ、プリキュアテレポート・・・とか言いながら、瞬間移動したりは?」

 

 続いてゆうこに聞かれたウエスターは、チラリとパッションを見ると、

 

「ああ、それはあの赤いプリキュアが似たような事を・・・」

 

「「するのぉぉ!?凄ぉぉい!!」」

 

 興奮気味に身を乗り出すめぐみとゆうこ、真央はウエスターの白いマントを引っ張ると、

 

「ねぇねぇ、プリキュアのサインって貰えないかなぁ?」

 

「ン!?さあ、俺に言われてもなぁ・・・」

 

「エェ!?お兄さん、プリキュアの知り合い何でしょう?頼んでみてよ!!」

 

「お願い!強そうなお兄さん!!」

 

「お願い!」

 

「強そう!?・・・そうだなぁ、観客のリクエストに応えるのも仕事の内だからなぁ・・・分かった!後で俺からも頼んでみよう!!メイン会場にある建物の前で待っててくれ!!」

 

 目をキラキラ輝かせて、ウエスターにお強請りするめぐみ、ゆうこ、真央、ゆうこのヨイショに、満更でも無さそうな表情を浮かべたウエスターは、後で聞いてみる事は約束してくれた。

 

 いおなと誠司は、そんな二人を呆れながら見つめ、まりあはジィとプリキュア達の動きを見つめると、

 

(凄い!格闘経験者も何人か居るようね・・・ショーってアナウンスしてたけど、先程のプリキュア達を見た限り、本物だと思うのだけど・・・)

 

 まりあは困惑気味にショーを見つめ続けた。

 

 パッションは、めぐみ達と会話するウエスターを見つめ、表情を顰めると、

 

「ウエスター!サボるなぁぁぁ!!」

 

「何だよ、観客にサービスしただけだろう?」

 

 パッションに怒られ、ブツブツ文句を言うウエスターであった。

 

「私は、あの黄色い衣装を着た、ツインテールのプリキュアが気になるわねぇ・・・」

 

「ええ、でも彼女だけじゃないわ!あの青いプリキュアも、武道の心得が有りそうね!黒と白、そして銀色のプリキュアからは・・・凄みすら感じるわ!!」

 

「そうッスね!でも、プリキュアショーって・・・世界絵本博覧会と何の関係が!?」

 

「「さあ!?」」

 

 サンシャインを見て居たいおなの言葉に同意するも、更にビューティやブラックとホワイト、ムーンライトを見たまりあの感想に、誠司も同意した。誠司は、何故世界絵本博覧会でプリキュアショーなどやるのだろうかと疑問に持つと、まりあといおなも小首を傾げた。

 

「「プリキュア・・・格好良いなぁ!!」」

 

 目をキラキラ輝かせ、プリキュアショーを見つめるめぐみとゆうこ、苦笑を浮かべながらショーを見つめるまりあといおな、数ヶ月後にまりあが、約十ヶ月後にめぐみ、ゆうこ、いおなが、自分達がプリキュアになる事になるとは、この時は知る由も無かった・・・

 

 それはまた別なお話・・・

 

 

 

 とある鏡に囲まれた部屋・・・

 

「ウワァァァ!!」

 

 勇ましいプリキュア達の様子を、目を輝かせながら見つめるヒメルダ、ブルーはジィと背後からヒメルダを見つめると、

 

(ヒメ、すまない・・・本来なら、キュアプリーステスの子孫である君も、プリキュアとしてこの世界の為に戦う宿命を持っているのに、千年前のあの時から、僕は力を失ってしまった・・・)

 

 千年前の出来事を思い出したのか、ブルーは悲しげな表情を浮かべ目を逸らした。

 

「ねぇねぇ、神様!私、もっと近くでプリキュア見たい!!一緒に世界絵本博覧会に来てよぉぉ!!」

 

「エッ!?」

 

「ヒメェェェ!ブルー様に何て事を頼むんですのぉぉ?」

 

 目をキラキラ輝かせ、ブルーにおねだりするヒメルダ、リボンは目を見開き、ヒメルダを叱るも、ブルーは苦笑を浮かべながら、ヒメルダの頼みを引き受けた。

 

 幸い、みんなショーに夢中で、突然鏡の中から現われた三人に気付いた者は居なかった。

 

「凄いよぉぉ!」

 

 目をキラキラ輝かせながら、プリキュアショーを見つめるヒメルダ、それを微笑ましく見て居たブルーだったが、その視線に映ったまりあを見た時、ブルーの表情が凍り付いた。

 

(あれは・・・いや、まさか!?あれから1000年は過ぎている!彼女が生きている筈は・・・しかし、似て居る!?)

 

 まりあを見て動揺するブルーに気付かず、ヒメルダはプリキュア達に声援を送り続けて居た。

 

 数ヶ月後、ヒメルダもまたプリキュアとして覚醒する事になるのだが、それもまた別なお話・・・

 

 

 

 ブラックのパンチが、ホワイトの投げ技が、ブンビーに炸裂する。

 

 近付きすぎた子供達を、ルミナスのバリアーが守る。

 

 ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディが放つ合体技が、魔王が作り出した大木を吹き飛ばす。

 

 ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ローズの技のコラボレーションが、ホホエミーナに炸裂するも、ホホエミーナの顔を見ると、攻撃するのを躊躇し、六人の視線がウエスターに向けられた。

 

「エェェ!?俺ぇぇぇ?」

 

「我慢しなさい!行くわよぉぉ!!」

 

「待て待て、イース、お前達までぇぇ?」

 

 思わずその人数にビビリ、ウエスターは、風船のようなホホエミーナの上に乗り、一同から逃げようと試みるも、ドリーム達に合流したピーチ、ベリー、パイン、パッションも加わると、

 

「「「「「「「「「「プリキュア!コラボレーションパァァァンチ!!!」」」」」」」」」」

 

 ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクアの五人が、ジャンプしながらパンチをウエスターのボディに繰り出し、ホホエミーナから落ちてきたウエスターを、ローズのアッパーカットで再び宙に浮かばせると、ピーチ、ベリー、パイン、止めにパッションのパンチがウエスターの右頬に炸裂した。10人のプリキュアのコラボパンチを受けたウエスターは、

 

「お前らぁぁ!手加減しろよなぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 そう言い残しながらウエスターが吹き飛ばされ、子供達から大歓声が沸き起こった。

 

「この声援・・・癖になりそうしゅ!」

 

「マリン、私達も行きますよ!」

 

 子供達の声援を受け、ドヤ顔のマリンがポーズを取る。ブロッサムはマリンを促し、先に大木と戦闘していたムーンライト、サンシャインと合流すると、四人はフォルテウェーブ、フォルテバーストで大木を浄化する。

 

 さっきの怨みとばかり、メロディ、リズム、ビート、ミューズは、魔王に対しパショナートハーモニーを浴びせ、魔王は慌てて退散する。

 

「ほな、最後はウチらで閉めようや!」

 

 サニーの合図の下、ハッピー、ピース、マーチ、ビューティが、残ったホホエミーナを浄化し、大反響の末、プリキュアショーは幕を下ろした・・・

 

 

「皆さん、お疲れ様でした!大盛況でしたわ!!」

 

「本当、迫力あったよねぇ!」

 

「そりゃあ、本物のプリキュアだもん、当たり前でしょう!でも、世界絵本博覧会でプリキュアショー何かして、良かったのかしら?」

 

「全く問題無しですわ!!」

 

 大盛況に終わったプリキュアショーに、ありす、マナ、六花が微笑みながら一同を出迎えた。絵本に関係無いプリキュアショーなどして、良かったのかありすに問い掛けた六花、ありすは両手を組みながらコクリと頷き、問題無いと答え、それを聞いたプリキュア達が苦笑を浮かべる。それとは逆に、不機嫌そうにしているのはウエスター、ブンビー、魔王の三人、

 

「お前達、少しやり過ぎだろう!!」

 

「報酬の方、奮発して貰わないと」

 

「お前達の裸、もっと見せて貰わないと・・・割に合わないカゲェ」

 

「あんたは、黙れ!!」

 

 ドサクサに紛れた魔王の暴言を、ブラックの拳骨が魔王の頭に炸裂し黙らせる。

 

「では、これは報酬ですわ!」

 

 ブンビーには現金を、ウエスターには取り寄せたデザートの盛り合わせを手渡した。見る見る不機嫌だった二人の表情は和らぎ、

 

「こ、こんなに!?ぜひ、何かありましたら、私共ブンビーカンパニーにご連絡を、最優先でお伺い致します!!」

 

 ブンビーは、揉み手でニコニコ愛想笑いを浮かべながら、ありすに名刺を手渡した。それを見て居たドリームは思わずクスリと笑い、

 

「ウフフ、ブンビーさんったら・・・現金何だからぁ」

 

「現金大好きだからねぇ・・・」

 

 ブンビーのダジャレに、思わずムーンライトは顔を背けると、笑いを堪えるように背中が揺れた。

 

「さて、俺は帰るぞ!たこ焼きの件、忘れないでくれよな!!」

 

「分かってる、都合が付いたらせつ・・・パッションに迎えに行って貰うから」

 

「お待ちしてますね!」

 

 ブラックとルミナスの言葉に、ウエスターは右手を挙げて了解したと頷く、

 

「ウエスター、ラビリンスに送るわ!!」

 

「今度はちゃんと送ってくれよな!・・・って、思い出したぁぁ!!なぁ、さっきの観客にお前達のサイン頼まれたんだが、何とかしてやってくれないか?」

 

「サイン!?もう、またそんな勝手な約束してぇ・・・・でも、ウエスターには協力して貰ったし、みんな、私からもお願いするわ!!」

 

「別に良いよ!ねぇ、みんな?」

 

「うん!!」

 

 パッションもウエスターの頼みを引き受け、皆に頼んでみると、ドリームを始めとした一同も、サインに快く応じる事を伝えた。

 

「良いなぁ・・・」

 

「マナまで、何物欲しそうな顔してるのよ?」

 

「エェ!?プリキュアのサインだよ!あたしも欲しいよぉぉ!!」

 

 呆れ顔の六花を、マナは不服そうに見つめ、自分も欲しいと言っていると、ピーチはクスリと笑い、

 

「フフフ、別に構わないよ!あなた達にも迷惑掛けたし!!」

 

「本当!?」

 

 ピーチに許可され、マナの目は輝きを増した。素早くありすが色紙を手配し、プリキュア達は、急遽決ったサイン会を始めた。

 

「じゃあイース、さっきの子達に渡して置いてくれ!メイン会場の関係者入り口前に居る筈だから」

 

「分かった!後で彼女達に届けておくわ!!じゃあ、ラビリンスに戻るわよ!!」

 

「お前達、またな!」

 

 そう言い残し、ウエスターはラビリンスに帰って行った・・・

 

「ブンビー様と仰いましたね?こうして出会ったのも何かのご縁、宜しければ、そちらの会社がどのような業務をしているのか、お聞きしたいのですが?」

 

「エェェ!?それは喜んで!」

 

「セバスチャン!ブンビー様を応接室にご案内して上げて!!」

 

「ハッ!では、こちらに・・・」

 

 ブンビーは、ありすにへコヘコお辞儀をしながら、セバスチャンと共に出て行った。

 

「フフフ・・・ブンビーは、こういう所は相変わらず抜け目が無いわね?」

 

「良い性格してるわ・・・」

 

 アクアとルージュは、思わず顔を見合わせ合うとクスリと笑い合った。

 

 

 パッションが再び戻って来た事で、一同はありす、マナ、六花に改めて謝罪し、その場を後にした・・・

 

「プリキュアって・・・強くて、優しくて、面白い人達だったねぇ?」

 

「イメージと全く違ったわ!」

 

「また何処かでお会いしたいですわねぇ・・・・・ハッ!?私とした事が、ヒメルダ様をお待たせしたままでしたわ!!」

 

 ありすは大慌てで部屋を飛び出し、プリキュアのサインを大事そうに抱えたマナと六花は、思わず顔を見合わせてクスリと微笑み合った。

 

 そんな彼女達が約十ヶ月後、自分達もプリキュアになろうとは、この時は知る由も無かった・・・

 

 それはまた別なお話・・・・・

 

 

 

 パッションが代表してめぐみ達に色紙を渡した後、再びテントに戻ったプリキュア達の前に、ポップ、ウルルン、オニニン、マジョリンが、一同が着ていた服を持って現われ、

 

「皆の衆、忘れ物でござる!服を忘れるとは、弛(たる)んでござるなぁ?」

 

「一体どうして忘れたマジョ?」

 

 ポップに注意され、マジョリンに聞かれた一同の視線が、一斉に魔王に向けられる。魔王はソッポを向いて誤魔化すも、ポップもマジョリンも状況を理解し、

 

「成る程・・・では、確かに届けたでござるぞ!キャンディ、皆の衆さらばでござる!!」

 

「みゆき、みんな、またメルヘンランドに遊びにおいでウル」

 

「何時でも歓迎するオニ」

 

「待ってるマジョ!」

 

 ハッピーは嬉しそうに笑みを浮かべながら、

 

「うん!ポップ、ウルルン、オニニン、マジョリン、色々ありがとう!またねぇぇ!!」

 

 無事に絵本の世界も元に戻った事で、ポップ達はメルヘンランドへと帰って行った。その姿を、プリキュア達は手を振りながら見送った・・・

 

 

 服が戻って来た事で、元の姿に戻った一同、佐々木先生の下に戻ると、困惑顔の佐々木先生は、

 

「あなた達、ショーに出たり・・・一体何してたの?」

 

「まあ、色々ありまして・・・」

 

「好きで参加した訳じゃないんですけど・・・」

 

「佐々木先生にも、ご迷惑お掛け致しました・・・」

 

 なぎさ、ほのか、ゆりが、佐々木先生に頭を下げると、佐々木先生は苦笑を浮かべる。なお、つぼみ、咲、ひかり、奏も、弟や妹達を預かってくれた佐々木先生に謝辞を述べると、

 

「みんな、佐々木先生に迷惑掛けなかった?」

 

「ふたば、良い子にしてましたか?」

 

「みのり、ちゃんとお姉さんらしくしてたの?」

 

「ひかる、遅くなってゴメンね!」

 

「奏太!大人しくしてたんでしょうねぇ?」

 

 五人は、弟や妹達に声を掛けた。なぎさ、ほのか、ゆりは、

 

「じゃあ私達、バイトに戻るわ!」

 

「でも私達・・・ほとんど何もしてないけど?」

 

「確かに・・・なぎさ、ほのか、今からでも真面目にやりましょう!!」

 

「「「じゃあ、みんな!またね!!」」」

 

 そう言い残し、なぎさ、ほのか、ゆりは、手を振りながらその場を後にした。のぞみも手を振りながら見送っていたが、何かを思い出したかのようにハッとすると、

 

「アァァ!?お父さんの所に行くの、忘れてたぁぁ・・・みんな、私これで!!」

 

「待ってぇ!私も行きま~~す!!」

 

 慌てて勉の居る会場に走り出すのぞみ、その後をみゆきが追いかけた。それを見たりん、うらら、かれん、こまち、くるみは苦笑を浮かべ、

 

「やれやれ、忙しないわねぇ・・・じゃあ、あたし達もこれで!」

 

「結局私達・・・世界絵本博覧会に何しに来たんでしょう?」

 

「フフフ、何か疲れに来ただけね・・・」

 

「でも、楽しかったわね!」

 

「まあ、色々あったからね」

 

「「「「「じゃあ、みんなまたね!」」」」」

 

 のぞみとみゆきの後を追うように、りん達もその場を後にした。残された咲達、ラブ達、つぼみ達、響達、あかね達も、それぞれ別行動をしようとした時、

 

「そう言えば・・・魔王は何処に行ったんでしょう?」

 

 思い出したかのようなれいかの一言に、一同の動きが止まると、れいかを振り返り、

 

「「「「アァァァァ!!」」」」

 

 思わず一同から悲鳴混じりの声が発せられた。

 

「すっかり忘れてました!」

 

 驚愕顔のつぼみが、どうしましょうと不安げに話し掛けると、あかね、咲、ラブ、響も困惑顔で、

 

「あのエロ魔王を、このまま野放しにしといてエエの?」

 

「不味いよねぇ!?でも捜しようが無いし・・・」

 

「でも、なぎささん達に散々脅されてたから、懲りたんじゃないかなぁ?」

 

「なら良いんだけど・・・」

 

「一応、みんなにメールで知らせておくね!!」

 

 ラブはリンクルンを手に持つと、一同にメールを送信した・・・

 

 内容を読んだ一同は、魔王の事を思い出し、大丈夫だろうかと不安に思ったものの、何かあった時は、互いに連絡しあうと云う事で話は纏まった・・・

 

(魔王、何処に居るのかなぁ!?)

 

 みゆきは、この世界の何処かに居るであろう魔王の身を案じた・・・

 

 

 

 美墨家・・・

 

 なぎさが家に帰ってきたのは21時頃、帰り際にほのかとゆりと食事をし、今日の出来事を振り返り、重い足取りで家に入ると、中から母理恵の悲鳴混じりの声が聞こえていた。

 

「亮太、あんた男でしょう!早く取ってよ!!」

 

「エェェ!?嫌だよ・・・気持ち悪いもん」

 

 なぎさの父岳はまだ帰っていないようで、なぎさはハァと溜息を付きながら、キッチンにやってくると、

 

「ただいまぁ!何騒いでるの!?ゴキブリでも出たの?」

 

「アッ!なぎさお帰り!丁度良かった・・・ねぇ、お母さんのお尻にくっついた、変なの取ってくれない?気持ち悪くて・・・」

 

「変なの!?」

 

 母理恵に頼まれたなぎさが、ジッと母の尻付近に付着している黒い球体を凝視する。何処かで見たような、見ないような物体、なぎさがボールペンでツンツン突っついてみると、モゾモゾ動き出す。なぎさの目が点になるや、素早く黒い物体を右手でギュッと掴み、理恵のお尻から無理矢理引き剥がすと、

 

「アハハハハ、と、取れたよ!何だろうね?外に捨てるから、アハハハ!!」

 

「あ、ありがとう!?」

 

 挙動不審な態度を取るなぎさに、理恵も亮太も目を点にした。なぎさは二人に見られないように黒い物体を隠しながら自分の部屋に移動するや、黒い物体を壁にぶつけた。黒い物体はまるでボールのように弾け、

 

「イテテテテ・・・何するカゲェ!」

 

「それはこっちのセリフよ!何であんたが家に居るのよ?」

 

 黒い球体の正体は魔王!

 

 魔王はなぎさより先に美墨家に現われた。魔王はフワフワ浮かびながら、

 

「そんなの決ってるカゲェ・・・お前達にお世話してもらうからだカゲェ!」

 

 なぎさは枕を手に持ち魔王にぶつけると、魔王がなぎさのベッドに落下する。

 

「何するカゲェ!」

 

「勝手に決めないで!さっさと出てって頂戴!!」

 

 なぎさが窓を指差し、出て行くように魔王に伝えると、魔王の目はウルウルし始め、

 

「薄情カゲェ・・・行き場のない俺を追い出すなんて、酷いカゲェ!」

 

「ニコちゃんの所に帰れば良いでしょう?」

 

「俺は元々絵本の世界の住人じゃ無いカゲ!お前達と居れば、記憶の手掛かりが得られると思って付いてきたのに・・・」

 

「あんた・・・記憶喪失だったの!?」

 

「そうカゲ!自分が魔王と呼ばれてた事ぐらいしか・・・覚えて無いカゲ」

 

 しんみりしながら語り始めた魔王に、少しなぎさも同情心が沸き起り、

 

「だからこっちの世界に来たんだぁ・・・だからって、勝手に家に来ないでくれる?」

 

「いやぁ、順番にお前達の家にお世話になろうかと・・・」

 

「勝手に決めるなぁぁ!全く・・・今日はもう遅いから、私の家に泊めて上げるけど、明日になったら出て行ってよね!!一応みんなに知らせておくから、今後あんたをどうするかはその時考えるわ・・・それで良い!?」

 

「良いカゲ!じゃあ、一緒に寝るカゲ!!」

 

 魔王が布団に潜り込むと、なぎさは魔王を摘み出し、

 

「勝手に寝るなぁ!私、お風呂に入るんだから・・・絶対この部屋から出ない事!!出たら・・・直ぐに家から出てって貰うからね!!メップル、見張ってて!!!」

 

「何でメップルが・・・」

 

 妖精姿に変化したメップルは、渋々承諾し、なぎさは浴室へと向かった。魔王も後を追いて行こうとしたものの、メップルに止められる。

 

「何処に行くメポ?」

 

「汚れたから洗って貰おうかと・・・」

 

「そんな事したら・・・なぎさに殺されるメポ!」

 

 散々(さんざん)なぎさに殴られた魔王は、その時を思い出し、ガクガク震えだした。メップルはなぎさのベッドに飛び乗ると、

 

「でも本当は、なぎさは優しいから、魔王の事を思って一晩泊めてくれたと思うメポ!大人しくしてたら、なぎさはきっと魔王の力になってくれるメポ!!」

 

 そう言うと、なぎさと出会った時からの出来事を、魔王に語って聞かせた・・・

 

 なぎさが部屋に戻ると、メップルはコミューン姿で、魔王はそのまま羽を折り畳みながら、なぎさのベッドで眠っていた。なぎさは電気を消すと、

 

「やれやれ、こうして大人しく寝てれば可愛いんだけどねぇ・・・」

 

 そう言いながら、魔王を起こさないようにそっと掛け布団を捲り、ベッドに入ると、魔王と添い寝するように眠りに付いた・・・

 

 沢山の出会いと別れ、なぎさ達の一日はこうして終わった・・・

 

 

 だが、少女達は気付かなかった・・・

 

 再びバッドエンド王国が動き出そうとしている事に・・・

 

 

              第八章:絵本の世界の冒険!

                    完

 




新年明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願い致します!
尚、第九章はまだ1話分しか書き終わっていない為、投稿開始は春頃を予定していますが、まだ未定です・・・楽しみにしている方がいればゴメンなさい!

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