プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第七十話:少女達の冒険!(後編)

1、なぎさ悟空大暴れ!

 

 山に潜む動物使いを退治する事を条件に、タダでお腹一杯御馳走になったなぎさは、満足気にお腹を摩りながら店から出てくる一方、ほのかとゆりは微妙な表情を浮かべていた・・・

 

「なぎさ、あんな安請け合いしちゃって良かったの?」

 

「後で困った事になっても知らないわよ?」

 

 まだ自分達は、この絵本の世界について詳しい事は分かって居ない。仲間達も捜さなければならい状況で、簡単に店の主の頼みを聞いたなぎさに対し、ほのかとゆりは、少し思慮に欠けるのではないかと、なぎさを注意する。注意されたなぎさは、少し不満そうに、

 

「エェ・・・だって、お店の人も困ってたじゃない!?これも人助けだって・・・ねっ、やよい!」

 

「ブヒィ!?」

 

 なぎさ達と共に店から出てきた豚・・・猪八戒!

 

 なぎさは、猪八戒をやよいだと信じ込み、共に動物使い退治に連れ出していた。ほのかとゆりは、背後に居る猪八戒をチラリと見つめると、

 

「なぎさ・・・この人、絶対やよいさんじゃ無いと思う!」

 

「ええ、さっきから私達を、妙な視線で見つめてるし・・・」

 

 ほのかとゆりは、背後から鼻息荒くクンクン匂いを嗅ぎ、自分達を舐めるような視線で見つめながら付いて来る、後ろの猪八戒に困惑していた。

 

「エェ!?だって、こんな髪形、そうは居ないでしょう?」

 

 髪形だけを見れば、確かにやよいそっくりではあるが、大抵の人は、やよいと言われても、呆然とするであろう・・・

 

 そうは言ったものの、なぎさも確かに二人の言うように、妙な視線を感じる気はするのだった・・・

 

「じゃあ、私は觔斗雲で上空から様子を見てくるけど・・・ほのかとゆりも一緒に行く?」

 

 ほのかとゆりは、チラリと猪八戒を見ると、このまま猪八戒と残るよりは、なぎさと一緒に行った方が安心な気もすると二人で相談し合い、

 

「うん、私とゆりもなぎさと一緒に行くわ!!」

 

「あなたは此処で待っていて!」

 

 猪八戒に此処で待っているように言い残し、觔斗雲を呼んだなぎさは、ほのかとゆりを乗せ、動物使いが現われるという山へと偵察に向かった・・・

 

「兄貴達、俺をやよいとか言う奴と勘違いしてたなぁ?でも、兄貴や悟浄、お師匠様からは、何か女の匂いもしてたし・・・ひょっとして、偽物か!?」

 

 猪八戒もまた、なぎさ達を孫悟空一行と勘違いしていたが、なぎさ達から発せられる女の匂いを敏感に感じ取るや、

 

「偽物を懲らしめる為なら・・・多少の行ないも兄貴達は許してくれるだろう!ムフフフフ!!」

 

 猪八戒は、スケベそうにニヤニヤすると、觔斗雲らしき雲を呼び寄せ、なぎさ達の後を追った・・・

 

 動物使いが現われるという山に到着したなぎさ達、空から觔斗雲でクルクル辺りの様子を伺っていると、

 

「ウゥゥオオ!!」

 

 突然巨大な龍がうねりを上げて上昇してくるや、嬉しそうに觔斗雲の周りをグルグル回っていた。最初は、この龍も動物使いの仲間なのかと驚愕したなぎさ、ほのか、ゆりであったが、龍に悪意が無いと知るや困惑し、

 

「ひょっとして・・・この龍は三蔵法師を乗せていた白馬、玉龍何じゃ!?」

 

 恐る恐るほのかかが龍に手を差し出すと、龍はおとなしくほのかの側に顔を近づけ擦り寄った。

 

「間違いなさそうね!」

 

「なぎさ、地上に降りて!」

 

 ほのかに頼まれ、なぎさが觔斗雲を地上に降ろすと、そこには日本一の幟を背負った祈里が、なぎさに気付き手を振っていた。

 

「なぎささん!ほのかさん!ゆりさん!良かった、三人に出会えて・・・」

 

「あれ!?祈里じゃない?・・・フラッピとチョッピも居る」

 

「祈里さんのその格好・・・ひょっとして、桃太郎なの?」

 

 なぎさとほのかは、祈里の格好を見て驚き、祈里も改めて自分の姿を見つめると苦笑し、

 

「はい、みんなとはぐれた後・・・何故かこんな格好になってました」

 

「祈里も、私達と同じような目に遭って居たのね・・・」

 

 苦笑混じりにゆりがポツリと呟いた。なぎさはある事に気付き、変顔を浮かべながら祈里を見つめると、

 

「って事は・・・動物使いって、祈里の事だったの?」

 

 なぎさは、退治すると大見得切って店を出たのに、どうしようと頭を抱え、トホホ顔のほのかに肩を叩かれる。

 

「祈里も私達と合流したし、この山に何時までも居る訳じゃ無いから、なぎさは約束を守った事になるんじゃないかしら?」

 

「そ、そうだよね?」

 

 ゆりのフォローに、なぎさはホッと安堵の表情を浮かべ、何の事か分からない祈里は小首を傾げ、苦笑しながらほのかが祈里に状況を説明するのだった。

 

 ようやく出会えた仲間との再会・・・

 

 再会を喜び合い談笑する一同、その時、龍が首を上げると一鳴きし、

 

「この龍、何を!?・・・アッ、やよいも来た!へぇ、やよいも觔斗雲に乗れたんだねぇ・・・」

 

 上空を見上げたなぎさが、猪八戒が雲に乗った姿で現われたのを見ていると、猪八戒は見る見る下降して、なぎさ達の前に飛び降りた。

 

「アッ、祈里!私達、そこの麓の町でやよいと会ってさぁ・・・可哀想に、やよいったら猪八戒の姿にされて・・・」

 

 そう説明するなぎさの背後で、無表情な顔をしたほのかとゆりが、右手を振り違うとジェスチャーで祈里に伝えた。祈里は不思議そうに首を傾げ、チラリとフラッピとチョッピを見ると、フラッピとチョッピも、なぎさは何を言ってるんだろうか?と小首を傾げた。

 

「あのぅ・・・なぎささん、その人がやよいさんって?」

 

「エッ!?ああ、豚の姿になってるから気付かないかなぁ・・・ほら、この髪形やよいとそっくりでしょう?」

 

 そう言いながら猪八戒に近付き、ポンポン肩を叩くなぎさに、猪八戒はなぎさを抱き寄せ、

 

「ほら、やよいも・・・って、ちょっとやよい!抱き付き過ぎ!!」

 

「なぎささん!やよいさんなら、あそこに・・・」

 

 困惑気味に祈里が指さした大木の下で、やよいは、先程龍に顔を舐められたショックで気を失い、フラッピとチョッピに介抱されていた・・・

 

「エッ!?やよいが二人?」

 

 変顔を浮かべたなぎさが、向こうで横になっているやよいと、隣に居るスケベそうな顔をした猪八戒の顔を交互に見比べ、ハァと溜息を付いたほのかとゆりは、

 

「だから、別人何だってばぁ!」

 

「それは、本物の猪八戒って事よ!」

 

「エェェェェ!?」

 

 益々大慌てになったなぎさが、猪八戒から飛び退くと、猪八戒は鼻息荒く、

 

「そっちの二人からも女の匂いがするなぁ・・・お前達、この猪八戒様をよくも欺いてくれたなぁ!裸にひん剥いて、お仕置きしてやらなきゃなぁ!?ブヒィィ!!」

 

 猪八戒は、ドンドンと九本の歯のような熊手を思わせる馬鍬(まぐわ)風の農具、釘鈀(ていは)を地面に叩き付け、なぎさ達一行を威嚇するも、龍、虎、熊が一同を庇うように猪八戒を包囲し、龍は昔の中国風衣装を着た若者の姿に変化すると、

 

「八戒止せ!この方は、お師匠さまとはぐれ難儀していた俺に、食料を与えてくれた恩人・・・いくら八戒でも、恩人に仇なすなら・・・許さないぞ!!」

 

 玉龍は、再び龍の姿になり吠えて猪八戒を威嚇すると、負けずと虎と熊も猪八戒を威嚇した。

 

「アァン!?この猪八戒様と一戦交えようってぇのか?ちょうどいい、腹ごしらえに相手になってやらぁ!!」

 

 猪八戒は、釘鈀を構え、玉龍、虎、熊を相手に戦おうとしていると、祈里は必死に間に入り、両者を説得に掛かったものの、

 

「アァン!?戦いを止めろだぁ?良いぜ!止めてやっても・・・ただし、条件がある!この猪八戒様を欺いた罰に・・・お前ら全員、お師匠様達と合流するまで、俺様の夜伽になって奉仕しろ!!」

 

「「「「夜伽!?」」」」

 

 猪八戒は、なぎさ、ほのか、ゆり、祈里、そして大木に横たわっているやよいを一人づつ指差し、夜伽になるなら戦いを止めてやると、スケベそうな表情でニヤニヤしていた。

 

「ほのか、ゆり、夜伽って?」

 

「猪八戒が寝る時、側で共に寝るって事だけど・・・」

 

「性的な意味でって事でね・・・」

 

「エッ!?」

 

 夜伽の意味が分からないなぎさが、ほのかとゆりに問い掛けると、二人は顔を赤らめながら、夜伽の意味をなぎさに教えた。祈里も困惑気味に、

 

「そういう事は・・・良く無いと思うの!」

 

「ウルセェ!別にこっちは腕ずくで言う事聞かせても良いんだ・・・先ず、そこで寝てる女にでもするか?それとも、兄貴の偽物か?グフフフフ」

 

 やよいとなぎさを見て不気味に笑む猪八戒、玉龍は、共に天竺を目指す猪八戒が、このような暴走に走る事が我慢ならんとでも言いたげに、今にも猪八戒に襲いかかりそうな勢いであったが、険しい表情をしたなぎさが割って入り、

 

「待って!ほのかやゆりが何度も違うって言ってたのに、私がやよいだと信じちゃったから、こんな騒動になっちゃったし・・・私が責任取るよ!!」

 

「ちょ、ちょっとなぎさぁぁ!!」

 

「なぎさのせいじゃないわ!!」

 

 なぎさは、心の中で自分を責めていた・・・

 

 自分のミスが、ほのか、ゆり、祈里ややよい、果ては絵本の世界の住人である玉龍、虎、熊にまで及ぼうとする事に・・・

 

 ほのかとゆりは、顔色を変えて動揺し、なぎさを必死で庇い、祈里も困惑しながらなぎさのせいじゃない事を訴える。猪八戒は鼻息荒く興奮すると、

 

「覚悟は出来たようだなぁ?安心しろ、可愛がってやるからぁ・・・ブヒヒヒヒ」

 

「可愛がる!?勘違いしないでぇ!私は仮にも今は孫悟空・・・あんたが私に勝ったら、私をあんたの好きなようにすれば良いって事!でも、私が勝ったら・・・おとなしくして貰うからね!!」

 

 なぎさは、猪八戒をキッと睨みながら指差し、決闘を申し込んだ・・・

 

 猪八戒は一瞬躊躇したものの、心の中で本物の孫悟空となぎさを比べ、

 

(ブヒヒヒ・・・偽物が兄貴みたいに強い訳がねぇ!たっぷり楽しませて貰うか・・・)

 

 猪八戒は涎をすすり上げ、釘鈀を構えると、

 

「ああ、良いぜ!猪八戒様の実力を見て恐れおののけ!!」

 

「交渉成立!ほのか、ゆり、祈里、手を出さないでね・・・ドリャァァァ!!」

 

 如意棒をグルグル回し、猪八戒に向かっていったなぎさに、祈里の額から冷や汗が滴り落ちた。

 

「なぎささん・・・今プリキュアじゃないのに、大丈夫かなぁ!?」

 

「なぎさは觔斗雲も呼べたし、今は孫悟空になっているなぎさを信じるしかないわね?」

 

「大丈夫!なぎさは絶対負けない・・・私達は、なぎさを信じて居れば良い!!」

 

 プリキュアでは無い状態で猪八戒と戦うなぎさに、祈里は不安がり、ゆりとほのかはなぎさを信じ、なぎさと猪八戒の戦いを見守り続けた・・・

 

「ダァァァァ!」

 

「こ、このぉぉぉ!!」

 

 何度も何度も如意棒と釘鈀がぶつかり合い、辺りに凄まじい音を撒き散らす・・・

 

 なぎさは、孫悟空が使える術の全てを使える筈も無く、力任せに如意棒を打ち付け、猪八戒の攻撃に対しては、ひらりと身軽に身を躱し、再び攻撃に転じる。次第に猪八戒から焦りの表情が浮かんできた。

 

(な、何だ!?・・・こいつ、戦い慣れてねぇか?)

 

 仮にも、孫悟空、沙悟浄達と共に、三蔵法師を守り、妖怪達と戦ってきた猪八戒だったが、その中でもなぎさは強い部類に入ると驚愕していた・・・

 

 徐々になぎさに押され始めた猪八戒の額から、見る見る冷や汗が落ちてきた。

 

(ま、不味いぞぉぉ・・・一旦引いて、出直しだ!あいつらの隙を突いて、一人づつ夜伽にしてやる!!)

 

 猪八戒は距離を取り、雲を呼び寄せると慌てて飛び乗り、

 

「ま、負けた訳じゃねぇからなぁ・・・必ずお前ら全員、俺様の夜伽にさせてやるから、覚えてろぉぉ!!」

 

 そう言うと、慌てて空中に浮かんで逃げ出した・・・

 

「アァ!逃げるなぁぁ!!このまま逃がしたら、また何してくるか分からないし・・・觔斗雲!!」

 

 なぎさは觔斗雲を呼び寄せ、猛スピードで逃げて行った猪八戒の後を追った・・・

 

 此処まで逃げてくれば大丈夫だろう、そう安堵していた猪八戒であったが、觔斗雲は猛スピードで追いついた。同じ雲を呼び寄せる術であっても、その性能は、使う術者によって違ってくるようで、猪八戒は大口開けて驚愕し、

 

「嘘だろぉぉ!?こいつ、兄貴並に觔斗雲を?」

 

「猪八戒!降参しろぉぉ!!降参しないなら・・・」

 

 觔斗雲の上でグルグル如意棒を回したなぎさは、

 

「伸びろ!如意棒!!」

 

 なぎさの命令通り、ギュンギュン如意棒は伸びだし、その勢いのまま猪八戒の雲を突き破り、

 

「ブヒィィィィィ!?」

 

 術を解かれた猪八戒は、両手足をバタバタさせながら地上へと落下していった。なぎさは觔斗雲を素早く操り、猪八戒の下側へ潜り込ませると、猪八戒は觔斗雲の上に落ち、事無き得た。

 

「ブヒィィィ!ま、参ったぁぁ!!参りましたぁぁ!!!」

 

 そう言うと背後からなぎさに抱き付き、何度も謝り続ける猪八戒、だが両手はしっかりなぎさの胸を揉み、感触を楽しむと、鳥肌立ったなぎさはワナワナ震えだし、

 

「何処触ってるのよぉぉぉ!!」

 

「ブヒィィィィ・・・・・・」

 

 なぎさは、猪八戒の脂肪まみれのお腹に肘鉄を食らわせ、思いっ切り猪八戒を蹴り飛ばすと、猪八戒は悲鳴を上げながら遙か彼方に消え去った・・・

 

「全く、何なのよあいつは・・・・・アッ!?思わず思いっ切り蹴り飛ばしちゃった・・・大丈夫かなぁ!?」

 

 なぎさはやり過ぎたかなぁと頭をポリポリ掻き、心配しているであろう、ほのか達の下へと戻ろうとしたものの、

 

「アレェ・・・私、どっちから来たっけぇ?」

 

 自分がやって来た方角が分からなくなり、困惑するなぎさであった・・・

 

 

 

 

 帝の御殿では、ひかりの提案を受け入れたメップルとミップルが、妖精姿に変化し、室内を騒ぎ回っていた・・・

 

「広いメポ!ミップル、競争メポ!!」

 

「待ってミポ!」

 

 ドタバタ走るメップルとミップルを見た警護の人々、ひかり、れいかの親役である老翁達は困惑し、

 

「も、物の怪が御殿に!?」

 

「皆の衆、大変でござる!物の怪が姫達を・・・」

 

 翁達は、物の怪は姫達を奪いに来たのではないかと、警護の者達に姫を守ってくれるように頼み込んだ。この騒動を利用するべく、れいかは老翁に話し掛けると、

 

「鬼の落とし物は、私が預かって置きます!」

 

「姫が!?・・・そうじゃな、姫の手から帝に手渡した方が効果的じゃろうて」

 

 老翁は頷き、れいかに打ち出の小槌を手渡すと、思わずアコとあかねはホッと安堵の表情を浮かべた。室内が慌ただしくなった事で、ひかりとれいかも逃げる振りをしながら合流し、再会を喜び合った。

 

「あかねさん、アコさん、もう少しこの姿で我慢していて下さいね!」

 

「後はメップルさんとミップルさんを助けて、直ぐにこの場から逃げないと・・・」

 

 ひかりとれいかが頷き合ったその時、メップルとミップルは、抜刀した警護の者達に壁際に追い詰められ震えていた。

 

「この物の怪めぇ・・・拙者が成敗してくれる!!」

 

 一人の武士が刀を振り上げると、れいかが、ひかりが悲鳴を上げ、慌てて駆け寄ろうとするも、他の警護の者に止められる。

 

「待ってぇぇ!!」

 

「イヤァ、メップル!ミップル!」

 

「も、もう駄目ミポ」

 

「ミップル、しっかりするメポ・・・」

 

 諦めモードのミップルを励ますメップルだったが、キラリと光を帯びた刀の刃を見ると、目に涙が溜まり、

 

「な、なぎさぁぁぁ!」

 

 思わず瞼に浮かんだなぎさの名前を叫ぶと、

 

「ちょっと待ったぁぁぁぁ!!」

 

 メップルの声が聞こえたかのように、觔斗雲に乗ったなぎさが御殿に乱入し、メップルとミップルを庇うように觔斗雲から飛び降り、警護の者達に身構えると、

 

「「なぎさぁぁ!!」」

 

 目をウルウルさせたメップルとミップルが、嬉しそうになぎさに抱き付き、コミューン姿に変化した。なぎさは二人を胸元にしまうと、

 

「ちょっとぉ!よくもメップルとミップルを虐めてくれたわねぇ!!」

 

 如意棒をグルグル頭上で回転させ、警護の者達に身構えたなぎさ、なぎさがこの場所に来たのは、道に迷い、当てもなく上空を彷徨っていた時、この騒動に気付き、様子を見に来たからであった。

 

「おのれぇ、今度は猿の物の怪が・・・皆の衆、帝の御殿を物の怪から守るでござる!」

 

「「「「「オオ!!」」」」」

 

 抜刀した警護の者達が、次々になぎさに斬りかかるも、

 

「伊達に慌てんぼう将軍や、遠山の金さん銀さんを見てないわよ!」

 

 時代劇が大好きななぎさは、TVで見ていて殺陣(たて)も理解しているようで、如意棒の扱いに慣れたなぎさは、巧みに如意棒で捌き、剣を叩き落としていく。そんななぎさを見たひかりとれいかの表情がパッと明るくなり、

 

「「なぎささん!!」」

 

「エッ!?ひかり!れいかも!?二人共、メップルとミップルと一緒だったんだ?」

 

「エエ、あかねさんとアコさんも一緒です!」

 

 ひかりから、あかねとアコも一緒と聞いたなぎさだったが、どう捜しても二人の姿が見付けられず小首を傾げ、

 

「あかねとアコちゃんも居るの!?姿が見えないようだけど?」

 

「なぎささん、お二人はご無事ですから・・・詳しい話は後で!今は此処から逃げ出しましょう!!」

 

「そうだね・・・そうと決れば!觔斗雲!!」

 

 れいかの提案に同意し、なぎさは觔斗雲を再び呼び寄せると、ひかりとれいかの側に移動した。

 

「二人共、觔斗雲に乗って!」

 

 一瞬顔を見合わせ戸惑ったひかりとれいかであったが、頷き合うと觔斗雲に飛び乗った。ひかりが真ん中、れいかが最後、あかねとアコはひかりが大事そうに抱え、れいかは打ち出の小槌を大事そうに懐に持って居た。

 

「じゃあ、行くよ!!」

 

 なぎさの指示の下、觔斗雲は帝の御殿から飛び出すや、

 

「かぐや姫ぇぇ!行かないでおくれぇぇ!!」

 

「姫や、姫ぇぇ!!」

 

 二人の老翁の縋る姿を見たひかりとれいかは心を痛めるも、なぎさは二人を励ますように、

 

「大丈夫!絵本の世界が元通りになれば、本物の姫様達が戻って来るよ!」

 

「だと良いんですが・・・」

 

「きっと大丈夫ですよ・・・」

 

 不安そうな表情を浮かべるひかりに、れいかもなぎさの言う通り、絵本の世界さへ元に戻れば、きっと大丈夫だと告げた。二人は觔斗雲の上から、老翁に手を振りながら去って行った・・・

 

「一時はどうなるかと思うたけど・・・これで一安心やな」

 

「早く元の姿に戻りたいわ!」

 

「エッ!?あかね、アコちゃん、何処に居るの?」

 

 声は聞こえるも、姿が見えないあかねとアコに、なぎさは変顔を浮かべ戸惑っていると、ひかりは苦笑しながら両手をなぎさの目の前に掲げると、その上でニンマリしているあかねと、眼鏡の位置を直すアコがなぎさの視線に飛び込んできて、思わずなぎさは驚きの声を発した。

 

「あかね!アコちゃん!その姿は一体!?」

 

「ウチは一寸法師に!」

 

「私は親指姫に・・・」

 

「「なっちゃってぇ」」

 

「エェェェ!?」

 

 苦笑を浮かべながらなぎさに小さくなった事を伝えたあかねとアコ、なぎさが驚くと、ひかりとれいかは顔を見合わせ思わずクスリと笑い合った。

 

「取り敢えず、ほのか達と合流しよう!あの山は・・・アッ!玉龍が居る!!ほのか達が居る山だ・・・よ~し、じゃあ飛ばすよ!!」

 

 とある山の上で、ほのか、ゆり、祈里に頼まれた玉龍は、まるで道標のように山をグルグル飛び回っていた。なぎさはホッと安堵の表情を浮かべると、觔斗雲のスピードを上げ、ほのか達の待つ山へと向かった・・・

 

 

 

2、狸の恩返し

 

 老翁に婆さまの仇と誤解され追い回された咲、途中で再会したポルンとルルンを加えて逃げ続けていたが、どうやら老翁を撒いたようでホッと安堵し、手頃な石に腰掛け休息していた。

 

「いやぁ、参ったよねぇ・・・何で私を狸と間違えるんだろう?」

 

 小首を傾げる咲だったが、ポルンとルルンは疲れたのか、コミューン姿で眠っていた。

 

「二人共、疲れちゃったんだね・・・無理もないか、なぎささん達とはぐれて、心細かったんだろうし・・・私も早く、舞達やフラッピ達と合流しなきゃ!」

 

 立ち上がった咲が尻の埃を払っていると、お尻に妙な違和感を感じ戸惑った。

 

「何だろうこれ!?・・・・・ゲゲェッ!し、尻尾!?私に尻尾が?」

 

 自分のお尻に尻尾があって驚く咲だったが、良く確認してみると、尻尾は衣装に付いているだけだと知りホッと安堵した。その時、草むらがザワザワ揺らぎ、咲はビクッと反応すると、草むらから束ねられた柴が現われ、

 

「もしもし、狸さん!この柴を運ぶのを手伝って貰えませんか?重くて難儀していた所何ですが・・・」

 

(私、狸じゃ無いんだけどなぁ・・・)

 

 そうは言っても、困っている人をそのままにしておけない性格の咲は、柴を運ぶ事を快諾し、束ねた柴を背中に背負うと、

 

「このまま麓まで運べば良いのね?」

 

「はい!」

 

 咲は、ヨイショと気合いを込めると立ち上がり、柴を背中に背負ったまま歩き始める。その柴の上に何かがピョンと乗っかると、

 

(第一段階、成功ミル!)

 

 咲に柴を背負わせたのはミルクだった・・・

 

 ミルクは、自分の代わりに仇を討って欲しいと老翁に頼まれ、こうして老翁の替わりを果たす為、咲の後を追っていた。咲と気付かず・・・

 

 ミルクは両手に老翁から貰った火打ち石を取り出すと、石と石とをぶつけ合い、「かちかち」と音が鳴り響く、

 

「あれぇ、何の音だろう?」

 

 不思議そうに小首を傾げる咲が、ミルクに訪ねると、

 

「ここは、かちかち山だから、かちかち鳥が鳴いているだけミル!」

 

「そう何だ・・・ン!?今、ミルって?」

 

「ま、不味いミル!」

 

 ミルクは、自分の行ないがバレないように必死に火打ち石を打ち合わせ、飛び火は柴に移り、柴が徐々に燃え始めた。

 

「何か・・・背中が熱くなったような?」

 

「ミルミルミル!この性悪狸、お爺さんの怨み、このミルクが晴らしたミル!」

 

「エッ!?ミルク?私だよ、咲だよ!何、お爺さんの・・・キャァァァァァ!!」

 

 ドヤ顔で高笑いを浮かべるミルクだったが、振り向いた人物を見て顔面蒼白になった。不思議そうな表情で、後ろを振り返ったのが咲だったのだから・・・

 

 徐々に背中が熱くなり、思わず咲は悲鳴を上げ走り始め、ミルクも慌ててくるみの姿に変化すると、

 

「な、何で咲が!?・・・咲、ゴメン!狸が咲だって、知らなかったのよぉぉぉ!!」

 

「私は狸じゃなぁぁい!それより、この火を何とかしてぇぇぇ!!」

 

 背中を燃やしながら走る咲に、くるみも必死に走りながら辺りを見回すと、道の外れに池を見付け、

 

「咲、あそこ!池がある!!」

 

「分かったぁぁ!!」

 

 咲はそのままザブンと池に飛び込むと、何事かとポルンとルルンが妖精姿になって飛び起き、池から出た所をくるみが保護をした。咲はずぶ濡れになりながら上がってくると、

 

「くるみぃぃ・・・酷いよぉぉぉ!!」

 

「ゴ、ゴメンなさい!まさか、お爺さんが仇を討ってくれって言ってた性悪狸が・・・咲だったとは」

 

「人違いだよぉぉぉぉ!」

 

 くるみは動揺しながら咲の背中を見て見ると、狸のような衣装に守られ、咲自身は火傷する事は無く、くるみはホッと安堵した。その時、草むらがガサガサ音を立てると、

 

「誰か居るのか?何じゃ、狸か・・・ン!?娘さんも一緒とは珍しいのぉ?今日は良く娘さんに会う日じゃなぁ・・・」

 

 そう言いながら現われたのは薪を背負った翁、数十分前、舞を助けた翁その人である。くるみは、翁の言葉に引っ掛かり、

 

「あのぉ、娘さんって・・・私のような姿をした?」

 

「ああ、胸さ大きな・・・確か、舞とか言ってたのぉ」

 

(舞って・・・巨乳ではないわよねぇ?別人かしら!?)

 

 くるみは舞のスタイルを思い出し、人違いだろうかと小首を傾げ、

 

(私って一体・・・)

 

 会う人、会う人に狸と呼ばれ、咲はショックを受け跪くも、翁の舞と言う言葉に素早く反応し、

 

「お爺さん!舞を知ってるの!?ど、何処に居るの?」

 

「あれまぁ!この狸、人間の言葉さ喋るだかぁ?その娘さんなら、おらの家に居るぞ!誤って脚が罠に引っかかり、怪我さしてたもんだから、おらの家で休んどるよ!!」

 

「「舞が・・・怪我!?」」

 

 翁の言葉を聞いた咲とくるみの表情が凍り付き、翁に縋り付くと、是非案内して欲しい事を訴えた。人の良い翁は、二人を見るや頷き、

 

「ちょうどおらも帰る所だぁ!一緒さ来い!!」

 

「ありがとう、お爺さん!」

 

(舞、今行くからね!無事で居てよ!!)

 

 くるみは翁に礼を述べ、咲は舞の身を案じた。翁は二人を導くように、家路を急いだ・・・

 

 翁の家で怪我の治療をして貰った舞は、痛みもほとんど消え、自分で歩ける程回復していた。

 

「本当にありがとうございました!」

 

 舞は、お世話になった翁の女房に礼を述べると、人が良さそうな女房はニコニコしながら、

 

「ホンに、大した怪我で無くて良かっただなぁ・・・でも、まだ無理するでねぇだよ!もう少し、奥の部屋で休んでいると良いだ!!」

 

「ありがとうございます!では、お言葉に甘えて・・・」

 

 舞は、女房に頭を下げ奥の部屋に入ると、舞の胸に隠れていたシプレとコフレがモゾモゾ這いだし、

 

「フゥ、ようやく自由になれたですぅ」

 

「動けなくて窮屈だったですっ」

 

「もう、シプレ!コフレ!あなた達が私の胸に隠れるから、お爺さんとお婆さんに、変な誤解されちゃったじゃない・・・」

 

 顔を赤らめた舞は、胸から出てきたシプレとコフレに、苦笑混じりに苦情を言う。シプレとコフレは、そんな舞の苦情に、隠れる所が無かったからしょうがないと二人で頷き合った。

 

「お爺さんとお婆さんのお陰で、大分足の方も良くなったけど、このまま此処に居たら、みんなと会えないし、かといって、お世話になったお爺さんとお婆さんに、何のお礼もしないのも・・・」

 

 舞は、みんなと合流したいのは山々だが、怪我をした自分に良くしてくれた老夫婦に、何のお礼もしないわけには行かないと困惑した。顔を見合わせたシプレとコフレは、

 

「だったら、お手伝いをするですぅ!」

 

「舞は器用だから、きっとお爺さんもお婆さんも喜んでくれるですっ!」

 

「私はそれ程器用じゃ無いわ!でも、お手伝いかぁ・・・」

 

 シプレとコフレの言うように、お爺さんとお婆さんのお手伝いでもして恩を返そうと考える舞だった・・・

 

 

 

「婆さま!今帰ったぞ!!また、客人だ・・・何でも、さっき連れて来た胸さ大きな娘さんの知り合いだそうだ!!」

 

 家の扉を開けた翁が、中に居る女房を呼ぶと、翁を出迎えた女房は、

 

「お爺さん、お帰りなさい!またお客さんとは・・・あれまぁ!狸と娘さんがお客さんかへ?」

 

(ウゥゥ、また狸って言われた・・・)

 

 思わず変顔を浮かべる咲を見て、くるみは思わずクスリと笑い、頬を膨らませた咲に睨まれる。咲に睨まれ、コホンと咳払いしたくるみは気を取り直し、

 

「それで、舞と言う娘さんが、こちらにご厄介になっているそうですけど?」

 

「ええ、その娘さんなら、奥の部屋で休んでおりますじゃ・・・汚い家ですが、どうぞお上がり下さい!!」

 

「ほんじゃあ、おらは取ってきた薪を割ってくるでのぉ・・・ゆっくりして行きなせぇ!!」

 

 そう言い残し、翁は薪を背負ったまま裏庭へと出て行った。咲は、重たそうにしている翁を見て、自分に手伝えないだろうか思案していると、くるみは女房と翁の言葉を素直に聞き入れ、

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」

 

「くるみ、ちょっと待って!私は見た通りまだ濡れた身体が乾いてないし・・・迷惑だから、外でお爺さんの手伝いでもしてるよ!舞の様子を見たら、知らせて!!」

 

「分かったわ!それじゃあ、お邪魔します!」

 

 くるみは深々と女房に頭を下げ、草鞋を脱ぎ部屋の奥へと入っていた・・・

 

 咲も本心は直ぐにでも舞の側に向かいたかったが、どうも自分は、この絵本の世界では狸と思われる節があり、舞に迷惑が掛かる事を咲なりに考慮し、疑いもしないで自分達を案内してくれた、翁の役に少しでもたとうと、咲は率先して翁の仕事を手伝った。

 

 部屋の外から舞を呼ぶ声が聞こえるや、シプレとコフレは再び大慌てで舞の胸の中に潜り込み、

 

(一度この姿を見られてるし・・・恥ずかしいけど、この姿のままで居るしか無いわね)

 

 こんな胸の大きな姿を、咲に見られたら何と言われるだろうかと溜息を付いた舞だったが、部屋に入ってきたくるみを見るや、忽ち目を輝かせ、

 

「く、くるみさん!?良かった!仲間と会えて!!」

 

「舞・・・あなたその胸!?」

 

 少し見ぬ間に立派に成長した舞の胸を見て、くるみは目を点にしながら舞の胸を指さすと、舞は激しく動揺し、

 

「ち、違うの!胸の中にシプレとコフレが居て・・・シプレ、コフレ、くるみさんだから出てきても大丈夫よ!!」

 

 モゾモゾ舞の胸が動き出し、くるみは変顔を浮かべると、顔を出したシプレとコフレを見るや、嬉しそうにミルクの姿に戻り、三人で手を取り合った。

 

「外には、咲と一緒にポルンとルルンも居るミル!」

 

「エッ!?咲も来てるの?ミルク、ど、何処!?」

 

 咲も来ている事を聞いた舞の表情がパッと明るくなり、今にも部屋から飛び出そうとするのを、ミルク、シプレ、コフレが慌てて止め、

 

「舞、その胸を見られたら不味いですぅ!」

 

 シプレがそう言うと、二人はまた舞の胸の中にモゾモゾ潜り込んだ。ミルクは、巨乳の正体見たりといった表情で、意地悪そうな視線を舞に浴びせながらくるみの姿に変化し、舞は恥ずかしそうに、

 

(結局・・・咲にこの姿を見せる事になるのね・・・)

 

 舞はトホホ顔を浮かべると、くるみと共に部屋から出て行った・・・

 

 

 舞がお世話になった翁のお手伝いをする咲、翁は働き者の咲を感心しながら、

 

「いやぁ、こったら働き者の狸なんざ、見た事ねぇだなぁ・・・」

 

「あのぅ~・・・私、狸じゃ無いんですけどぉ・・・まぁ、いっかぁ!」

 

 どうせ言っても無駄だろうと思った咲は、薪割りを黙々と続けて居た。ソフト部で鍛えている甲斐もあってか、咲は、翁に教わった薪割りを直ぐに覚え、上手に薪を割っていった。

 

「咲ぃぃ!!」

 

「舞!!・・・・って、その胸どうしたの!?足を怪我してたって聞いたけど、胸だったの?」

 

「もう、違うわよ!これは・・・後で説明するわ!!」

 

 翁の家から走ってきた舞を見て、咲も嬉しそうな表情を浮かべるも、舞の胸を見て思わず口をアングリ開け、舞は恥ずかしそうに後で説明すると咲に伝えた。翁は、舞が走って来た事に驚き、

 

「お~い、まだ走ったら駄目だろぉ?無理するでねぇ!」

 

「色々お世話になっちゃって・・・でも、もう大丈夫です!私も何かお手伝いしたいんですが・・・」

 

「と言われても、華奢(きゃしゃ)なお前さんには、薪割りは無理じゃてのぉ・・・婆さまに聞いてみるといいだ!くれぐれも無理するでねぇだぞ!!」

 

「ハイ!」

 

 舞は翁に礼をし、再び家の中に戻った。くるみも加わり、舞とくるみは女房の家事を手伝い、咲は翁の仕事を手伝った。

 

 

 老夫婦の家の側を、一人の老翁が鎌を右手に持ち、キョロキョロしながら歩いて居た・・・

 

「うさぎさんに頼んでみたものの、気になって来てみただが、うさぎさんの姿も、狸の姿も見えんとは・・・ン!?あれは?」

 

 老翁の視線に民家が現われ、こんな所に民家があるのかと、話を聞こうと立ち寄った老翁は、そこで翁の仕事を手伝う咲を見付け、目を吊り上げると、

 

「見付けただぁ・・・この性悪狸めぇぇ!!」

 

 鎌を振り上げ、目を血走らせながら近寄って来る老翁に、翁は険しい視線を向け、

 

「何じゃ、お前さんは!勝手におらの家に・・・」

 

「す、すまねぇ・・・あんた、気ぃつけるだぁ!そこの性悪狸は、おらの婆さまを叩き殺して逃げ出した極悪狸だ!!」

 

「ち、違うよぉぉ!私、そんな酷い事しないよぉぉ!!」

 

 後退りながらブルブル首を振り否定する咲だったが、老翁は聞く耳を持たなかった。騒ぎを聞き付け、舞、くるみ、女房が家の中から出てくるも、この騒動を見て顔色を変えた。出てきた三人にも、老翁は咲の事を性悪狸と罵り、ここで成敗しなければ、今後も被害にあう者が必ず現われるから、咲を引き渡せと翁に告げる。

 

 舞とくるみは、咲を庇うように前にでて両手を広げると、

 

「止めてぇ!咲は・・・そんな酷い事絶対しない!!」

 

「そうよ!お爺さんは勘違いしているわ!!」

 

「舞!くるみ!」

 

 二人の友情に目頭が熱くなる咲だったが、老翁をそんな二人にお構いなくジリジリ距離を縮めてくる。

 

「そこを退くだぁ!退かねぇならぁ・・・」

 

「いやぁ!絶対退かない!!咲は私に取って・・・大切なパートナーだもの!!」

 

「そうよ、大切な仲間に酷い事しないでぇ!!」

 

 老翁の脅しにも屈せず、舞とくるみは必死に咲を庇い続ける。ならばと、鎌を振り上げた老翁の腕を、静観していた翁が止めると、

 

「いい加減にするだぁぁ!詳しい事情はおらにも分からねぇ・・・だども、これだけは言える!この狸は仲間思いで、仲間の恩を、自分の事のように返そうとする健気さを持ってるだ!そんな狸が、お前様の仇だとは・・・おらは思わねぇぇ!!」

 

「お、お爺さん・・・」

 

 会って間もない自分の事を、必死に庇ってくれる翁を見て、咲の瞳からポロポロ涙が零れてくる。老翁はまだ承服出来かねないように、

 

「だ、だども・・・」

 

「大体、この狸さ、お前様の婆さまを殺す所を見ただか?」

 

「そ、それは・・・だども狸なのは・・・」

 

「狸と言えば、この付近の山にどれだけの狸が居ると思って居るだ?そんな性悪狸なら、おらも、家の婆さまも、今頃とっくに化かされてるだよ・・・さあ、こっちで一息つくだ。冷静に考えれば、色々矛盾も見えてくるだ・・・」

 

 翁は、老翁を縁側へと案内し、茶を出すと、老翁も喉が渇いていたのかゴクゴク飲み干し、改めて咲を見つめた。老翁の手伝いを懸命にする咲、舞の事を気に掛ける咲を見て居る内に、自分の間違いに徐々に気付き、本来の穏やかな表情を浮かべた。くるみはそっと裏に回り、ミルクの姿に戻ると、

 

「お爺さん、捜したミル!お爺さんの仇の性悪狸は、あの山から追い出したミル!!もう安心ミル!!」

 

「ほ、本当ですかなぁ、兎さん?」

 

 ミルクはコクリと何度も頷くと、老翁はミルクの手を取り何度も礼を言い、咲の下に近付くと、

 

「散々追い回して済まなかっただぁ!おらは何と言う酷い事を・・・許してくんろ!!」

 

「分かってくれれば良いんだぁ!」

 

 咲は満面の笑みを老翁に浮かべ返し、今までの事を水に流すのだった・・・

 

 ミルクの話を受け、老翁は咲に何度も詫びながら帰って行った・・・

 

 それを見届けた咲達、いつまでも此処に留まるわけにも行かず、

 

「舞の怪我もほとんど良くなったし、そろそろ出発しようか?」

 

「ええ・・・お爺さん、お婆さん、本当にお世話になりました!!」

 

「お二人共、どうぞお達者で!」

 

 咲、舞、くるみは、そう翁夫婦に礼を述べると、夫婦はニッコリ微笑みながら、

 

「はぐれた仲間に出会えると良いのぉぉ・・・気ぃつけて行くだよ!」

 

「達者でのぉぉ!!」

 

「ハイ!ありがとう・・・・・・アッ!?」

 

 深々とお辞儀をした拍子に、舞の胸からシプレとコフレが転げ落ち、二人は反射的に縫いぐるみの振りをし、慌てて咲とくるみが拾い、老夫婦に苦笑を浮かべると、呆気に取られていた老夫婦は思わず笑いだし、

 

「アハハハ!いやぁ、胸さ随分大きいだべなぁと思ったら・・・」

 

「偽乳だっただべかぁ?」

 

 舞の顔は見る見る真っ赤になり、恥ずかしさで老夫婦の顔も見れない舞は俯きながら、

 

「ゴ、ゴメンなさぁぁい!お世話になりましたぁぁ!!」

 

 顔を覆いながら走り出した舞、咲とくるみは大慌てで、

 

「アッ!舞ぃぃ・・・じゃあ、お爺さん、お婆さん、お世話になりました!!」

 

「お二人共、どうかお元気で!」

 

「「待ってよ!舞ぃぃ!!」」

 

 老夫婦は笑顔を浮かべながら、三人の姿が見えなくなるまで手を振り続けていた・・・

 

 こうして、老夫婦と別れた咲、舞、くるみ、山道をトボトボ俯きながら歩く舞は、

 

「私・・・もうお嫁に行けない!」

 

「やだなぁ!それを言ったら、私何か狸だよ!それこそ嫁に行けないよ!!でも、此処は絵本の世界・・・気楽に行こうよ!!」

 

 落ち込む舞を、咲が励ましながらある事に気付くと、

 

「ねぇ、舞?くるみと私はかちかち山のお話に来たけど・・・結局、舞は何のお話だったのかなぁ?」

 

「多分・・・鶴の恩返しじゃないかしら?罠に嵌って足を怪我したし・・・」

 

 少し考えた舞は、似たような場面があった鶴の恩返しじゃないかと咲とくるみに語ると、くるみは舞を見てニヤリとすると、

 

「成る程!胸の正体を見られて、舞が逃げだした所何か、鶴の恩返しにそっくりかも!?」

 

「もう!くるみさんの意地悪!!」

 

「アハハハハ!」

 

 舞をからかうくるみに、舞は頬を膨らませ、咲は笑みを浮かべた。ポルンとルルンから、遊ぼうと誘われたくるみは、ミルクの姿に戻ると、ポルン、ルルン、シプレ、コフレ達と楽しそうにお喋りを始める。咲はさっきの事を思い出し、

 

「ところでミルク・・・でも、良かったの!?あんな事あのお爺さんに言って?」

 

「きっと大丈夫ミル!絵本の世界が元にさえ戻れば、ちゃんと元通りの話になる筈ミル!!」

 

「その為にも・・・早くみんなと合流しましょう!」

 

「そうだね・・・」

 

 一同は、浚われた仲間を救う為にも、早く仲間達と合流しようと山を下りて行った・・・

 

 

 

 

3、騙しあい

 

 お菓子の家に拘束されたのぞみと響を救う為、満と薫は、老婆の言う通り、下働きを懸命に行っていた・・・

 

「さあさあ、仲間を助けたかったら、テキパキ働くんだよ!!」

 

 手をパンパン叩き、尚も扱き使う老婆に反論もせず、言われた通り仕事をこなしていく満と薫、のぞみと響は、大きな鳥籠の中で申し訳無さそうにしていた・・・

 

「満ちゃん、薫ちゃん、ゴメンねぇ・・・私達が、チョットお菓子の家を摘み食いしちゃったから・・・」

 

「お黙り!あれの何処がチョットだって言うんだい?この大食い共!!」

 

 散々お菓子の家を食い荒らされた老婆は、のぞみの言葉に呆れ顔で罵ると、響は頬を膨らませ、

 

「育ち盛りの私達からしたら・・・あんなの摘み食い程度なの!ねぇ、のぞみさん!!」

 

「そうそう!だから、早く降ろして!!」

 

「お黙りってぇのぉ!誰のせいでお菓子の家を作り直してると思ってるんだい?」

 

「「さぁ!?」」

 

「あんた達のせいだろう!!全く・・・」

 

 そんな小競り合いも上の空、満と薫は、仕事をしながら周囲の様子を冷静に観察し、どの方法なら被害が少なく、のぞみと響を救えるだろうか思案していた・・・

 

 手際よくお菓子を作る満を見るや、老婆は意外そうな表情で驚き、

 

「こりゃあ、驚いた・・・あんた、無愛想だけどお菓子作りの才能あるねぇ!その調子でジャンジャン作っておくれ!!チョコレートは、お菓子の家の屋根になるんだからねぇ・・・」

 

 そして、薫を見つめた老婆は、

 

「あんたは、そこの大鍋に水を入れて、火をたきな!」

 

 薫は言われるまま大鍋に入れる水を汲み、戻る途中、満は小声で薫に話し掛け、

 

「薫、気付いてた?あのお婆さん・・・目が悪いようだわ!」

 

「ええ、そこを上手く付けば、のぞみと響を救い出せる事も出来る筈ね!」

 

 二人は頷き合うと、それぞれの仕事に戻って行った。鳥籠の中ののぞみと響は退屈そうに、

 

「ねぇ、そろそろ出してよぉぉ!私・・・お腹減っちゃった」

 

「のぞみさんも!?実は私も何です!!」

 

「「育ち盛りだもんねぇぇ!」」

 

 顔を見合わせ頷き合うのぞみと響を見て、思わず満と薫は溜息を付き、老婆は呆気に取られていた。直ぐに我に返った老母は、意味深な笑みを浮かべると、

 

「直に出してあげるさ・・・ヒィヒヒヒヒ」

 

 笑みを浮かべながら包丁を取りだし、研ぎ始めた・・・

 

「エッ!?何々、何か御馳走でもしてくれるの?」

 

「本当!?」

 

 老婆の魂胆に気付きもせず、のぞみと響は、何かの御馳走でも作るのかと期待する反面、満と薫は、老婆の行動を不審そうに見つめた。

 

(包丁を研いで、何をするつもりかしら!?)

 

 満の思考が目まぐるしく回転していく・・・

 

 世界絵本博覧会に遊びに行くと言うことで、満と薫は、絵本に付いて少し勉強をしていた。色々な絵本も読んでみた。その中から、今の自分達の境遇と似た話を思い浮かべると、

 

(お菓子の家・・・ヘンゼルとグレーテルのお話!だとすれば、この老婆は・・・魔女!捕らえたのぞみと響を、食べようと考えて居るって事ね・・・)

 

 魔女は包丁を研ぎながら薫を見ると、

 

「もう水は沸騰したかい?」

 

「いいえ!まだよ!!」

 

「何だって!?もう沸騰してもいい頃じゃないのかい?全く使えない子だねぇ!」

 

 それは薫の作戦だった・・・

 

 なるべく時間を掛け、魔女を苛つかせ、魔女が隙を見せたその時こそ、満と共に、のぞみと響を救うチャンスだと・・・

 

 薫の目論見通り、苛々した魔女は、

 

(全く、二人共召使いにでもしようかと思ったけど、使えそうなのは、あの満って子ぐらいだねぇ!もう一人は・・・あの二人と一緒に、パンにくるんで食べてしまうとするか)

 

 魔女は、のぞみと響を狂気の視線で見つめるや、包丁を構え、

 

「エェイ、もう我慢出来ない!お前達を、今からパンに挟んで食べてやるよ!!」

 

「「エェェェェ!?じょ、じょ、冗談でしょう?」」

 

 思わず身を寄せ合いビビるのぞみと響、眼下にいる満と薫に助けてぇと半泣きで救いを求めるも、

 

「こうなっては、もう私達だけではどうしようも無いわ!」

 

「恨まないでね!」

 

 満と薫は、咲と舞に教わった合掌をのぞみと響にすると、のぞみと響は顔面蒼白になり、

 

「エェェェ!?ちょっとぉぉ!諦めるの、早すぎない?」

 

「満さぁぁん!薫さぁぁん!」

 

 涙目で恨めしげに満と薫を見つめる響に、思わず満はクスリと笑いだしそうになるのを堪え、無表情さを守った。

 

「ヒィヒヒヒヒヒ!この子達は賢いようだねぇ・・・さあ、覚悟おし!!満、二人を鳥籠からお出し!妙な真似をしたら・・・もう一人がどうなるか、賢いお前さんなら分かって居るだろうねぇ?」

 

「ええ、分かって居るわ!」

 

「お前は、パンが焼けるかどうか、竈(かまど)の火加減を見ておいで!」

 

「分かったわ!」

 

 魔女は、満に二人を鳥籠から出すよう命じ、薫には、竈でパンを焼けるかどうか火加減を見るように伝えた。満と薫は互いに目配せすると、行動を開始した!

 

 竈に付いた薫は、わざと魔女を苛つかせるように、

 

「私、竈の火加減何て見た事無いから・・・よく分からないわ?」

 

「何だってぇ!?・・・全く、中に入って確かめれば直ぐに分かるだろう?」

 

「竈の中って・・・どうやって入るのかしら?」

 

 薫の策略だとは気付かず、魔女は呆れたように竈の前に来ると、

 

「お前はバカかい?こうやって身を屈めて入れば・・・・・ギャァァァァァ!!」

 

 竈に身を屈めた魔女に対し、薫はここぞとばかり、後ろから魔女を突き飛ばした!

 

 魔女は絶叫しながら竈の中に転がり落ちると、鳥籠から解放されたのぞみと響は呆然としながら、

 

「ふ、二人共、助けてくれたのは嬉しいけど・・・やり過ぎ何じゃ!?」

 

「あのお婆さん・・・死んじゃったの?」

 

 自分達を食べてしまおうとした魔女ながら、のぞみと響は哀れむように竈を見つめていると、満と薫はクスリと笑い合い、

 

「大丈夫よ!竈の火は、元々付いて無かったから・・・」

 

「あの魔女は、目が悪いから大げさに転んだだけ、直に自力で出てくるわ!」

 

「「さあ、今の内にここから逃げ出しましょう!!」」

 

 満と薫に真実を聞き、のぞみと響はホッと安堵した。安堵すると、お腹が減っているのを思い出したのか、のぞみは、満が作りかけていたチョコレートを名残惜しそうに見つめ、

 

「ちょっとぐらいなら、貰っても・・・」

 

「駄目よ!のぞみ、響、行くわよ!!」

 

 満はのぞみの背を、薫は響の背を押し、四人はお菓子の家を後にした・・・

 

 

 

 

 悪魔の家だとは知らず立ち寄ってしまった、こまち、りん、エレン、なおの四人、こまちは、子供の頃読んだ、銀の鼻のお話に来てしまった事を悟り、屋敷内を見学に向かった、りん、エレン、なおに忠告しに向かおうとした時、室内から三人の悲鳴が聞こえ、表情が凍り付いた・・・

 

「今の声・・・間違いない!三人の悲鳴だわ!!」

 

 慌てて部屋を飛び出したこまちの目の前に、銀の鼻の男が姿を現わすと、こまちの髪に付けた花を見るや目を細め、

 

「お前は私の言いつけを、ちゃんと守ってくれたようだねぇ・・・」

 

「今、三人の悲鳴が聞こえたわ!りんさん、エレンさん、なおさんは何処!?」

 

「三人は無事だ!お前は言いつけを守る良い子だ・・・私はこれからまた用事があって出掛けるが、今のように言いつけを守り、ここで待っていておくれ・・・霧が晴れたかどうかも見てきて上げよう!!」

 

 悪魔は、こまちの髪に付いたジャスミンの花が、焦げていない事に上機嫌で再び出掛けて行った・・・

 

「私のせいだわ・・・三人は、この館に来ることを頑なに拒んでいたのに、私が訪れたばかりに・・・」

 

 こまちは、悲しげな表情で俯くも、今は落ち込んでいる場合では無いと気持ちを整理し、一旦部屋に戻ると、悪魔が髪に挿したジャスミンの花をコップの水に入れ、

 

「さっき、悪魔はこの花を見て居た・・・お話の通りなら、髪に付けた花を見て、秘密の部屋を覗いたかどうか判断していた筈だわ!」

 

 こまちは念の為、首に巻いていた黄色いスカーフを頭に巻き、秘密の部屋へと向かった・・・

 

 不気味に静まりかえる室内を一人歩き、こまちは秘密の部屋の前に辿り着くと、意を決し、重い扉を力任せに開いた・・・

 

 先程、りんとエレンの二人掛かりで開けた重い扉を、たった一人で開けたこまち、本人は気付いて居ないが、これが俗に言う火事場の馬鹿力と云うものかも知れなかった。

 

「ギィィィィ」

 

 不気味な音と共に扉が開かれると、中から人々の悲鳴と共に、見知った声が聞こえていた・・・

 

「あ、熱い・・・」

 

「私・・・もう、駄目かも」

 

「なお、エレン、しっかりして!今に、こまちさんが・・・」

 

 地獄の業火のような炎に包まれ、なおが、エレンが、そしてりんが、皆苦悶の表情を浮かべながら熱さに耐えていた・・・

 

「りんさん!エレンさん!なおさん!」

 

 三人を見付けるや、こまちは焼けるような熱さに耐え、三人を部屋から引っ張り出し、重い扉を閉じた・・・

 

「た、助かったぁ!」

 

「焼け死ぬかと思ったわ!」

 

「エ~ン、怖かったよぉぉぉ!」

 

 りん、エレン、なおは、助けてくれたこまちに礼を言ったものの、こまちの表情を見て、三人はギョッとした。こまちの目からは大粒の涙が零れ落ち、三人を抱きしめると、

 

「りんさん・・・エレンさん・・・なおさん・・・みんな、みんな、ゴメンなさい!私が、嫌がるみんなを、こんな館に連れて来たばっかりに・・・本当にゴメンなさい!!」

 

 号泣するこまちを見て、貰い泣きした三人の瞳からも涙が零れ、

 

「こまちさんの所為じゃないってばぁぁ!」

 

「うん!こまちぃ、泣かないでぇぇ!!」

 

「グスッ・・・みんな、無事で良かった」

 

「「「早く此処から逃げ出そう!!」」」

 

 りん、エレン、なお、誰一人こまちを責める筈も無く、一刻も早くこの館を逃げ出そうとこまちに提案すると、こまちは涙を拭いながら首を振り、

 

「それは・・・多分無理だわ!」

 

「「「エェェェェ!?」」」

 

 こまちの意外な言葉を聞き、三人は身を寄せ合い思わず叫んだ。怯えていたなおだが、扉の中に他の人々も居た事を思い出し、

 

「ね、ねぇ、私達の他にも、扉の中に人が居たけど・・・助けてあげよう!!」

 

「なおさん・・・残念だけどそれは無理だと思うわ!」

 

「ど、どうして!?」

 

「取り敢えず部屋に戻りましょう!」

 

 こまちは、不安そうに後を歩く三人を連れ一先ず部屋に戻ると、こまちは三人に先程の説明を始め、

 

「私が思うに、この話から抜け出す為には・・・この物語のような行動をしなければ無理だと思うの!それに、この世界に居る人々は、元々銀の鼻に出てくる人々で、私達では、彼らを救える事は出来ないと思うの・・・それに、お話自体変わり兼ねない!!」

 

「エェ!?じゃあ、どうすれば?」

 

 不安そうな表情でこまちに聞くりん、こまちは、りん、エレン、なおの顔を交互に見つめると、

 

「このお話は、銀の鼻と言って・・・」

 

 こまちが三人に語って聞かせた銀の鼻の話・・・

 

 洗濯屋を営むおかみさんには、健気にも店を手伝う三人の娘が居た・・・

 

 悪魔に目を付けられた娘達・・・

 

 奉公に出た長女、次女は、悪魔の命に背き、秘密の部屋を覗いた事がバレ、炎の中に放り込まれるも、最後に奉公に来た三女ルチーアは、機転を利かせ、姉達を救い、悪魔の家から救いだし、富を得た話・・・

 

「私は、このお話に近い事をしなければ、脱出する事は不可能のような気がするの!」

 

「で、でも、どうやって?」

 

 こまちの話を聞き、りん、エレン、なおは不安そうにどうするかこまちに聞くと、

 

「あの悪魔は、人が良いのは確かなようだわ!そこを付きましょう・・・」

 

 こまちは、何やら策を、りん、エレン、なおに授けると、三人は表情を強張らせながら頷いた。

 

 用事を済ませた悪魔が帰って来た・・・

 

 出迎えたこまちの髪に付いているジャスミンの花が焦げていない事に、悪魔は満足げに頷き、

 

「どうだろう・・・君さへ良かったら、私の館で、奉公人として働いてみないか?」

 

「はい!喜んで!!ですが・・・私の仲間達にその事を伝えなければ心配してしまいます!この荷物を、人が通りそうな場所まで運んで、置いて来ては頂けないでしょうか?」

 

 こまちは、足下に横たわる大きな袋に入った三つの荷物を、悪魔に外まで運んで欲しい事を伝えた。悪魔は小首を傾げ、

 

「随分大きな袋だねぇ・・・何が入っているんだい?」

 

「私の仲間達がこれを見れば、私だって直ぐに分かる品物です・・・でも、決して覗いたりしないで下さいね!私、此処でちゃんと見て居ますから!!」

 

「ハハハハ、覗いたりするもんか!では、行ってこよう!!」

 

 悪魔は、袋の荷物を次々担ぎ、館を出て行った・・・

 

 それを見届けたこまちは、素早く次の行動へと移るのだった・・・

 

(しかし、何て重さ何だ!?)

 

 担いではみたものの、その重さにさすがの悪魔も休み休み運んでいたが、中が気になり袋を開けようとしたその時、

 

「見てるわよ!見てるわよ!見てるわよ!」

 

 何処からか声が聞こえ、思わず悪魔はギョっとし、慌てて再び荷物を担ぎ、こまちに言われた通り、人が通りそうな道に並べるように横たえた。こまちは、袋を開けられそうな時は、見て居る事を悪魔に伝えるように、三人に伝えてあった。

 

(う~む、しかし、中身は何だったんだろうか!?)

 

 悪魔は小首を傾げながら、再び館へ戻って行った・・・

 

 袋がモゾモゾ動き出すと、中から顔を出したりん、エレン、なお、中でもなおは涙目になっていて、

 

「なお・・・どうしたの?」

 

「泣いてるじゃない?そりゃあ、怖かったのは確かだけどさぁ・・・」

 

「ち、違うの!袋の中に、モゾモゾ動く・・・虫が居たのぉぉぉ!!でも、騒げないし・・・ウェェェェン!!」

 

 日頃のお姉さん振りも何処吹く風、なおは、袋の中に虫が居た事でパニックになり泣きだした。動けば今までの行動が無になってしまうと、ジッと我慢し、悪魔が去った事で、恐怖が一気に襲いかかり、りんとエレンに縋り付き、「怖かったよぉぉ」と泣きじゃくると、りんとエレンはなおの頭を撫で、

 

「なお、よく我慢したわね!」

 

「さあ、後は私達があの時のお札を見付け、こまちが上手く逃げ出すだけね!」

 

 三人はこまちに言われた通り、空になった袋に大きな石を一杯詰めると、りんは、エレン、なおを促し、

 

「さあ、行きましょう!!」

 

 りん、エレン、なおは、お札が貼られてあった場所目掛け移動を開始した・・・

 

 

 こまちは、シーツを使い、自分に似せた人形を作ると、布団の中に入れ、自分は入り口に置いた袋の中にスッポリ入ると、悪魔が戻って来るのを待った。部屋の外から、カツカツと悪魔の足音が聞こえ、部屋の前で止まると、ギィィとドアを開けた。

 

「おや!?もう寝ているのかい?」

 

「ゴメンなさい、少し疲れたようで横にならせて頂いてました」

 

「ああ、構わないよ!頼まれた荷物は、ちゃんと外に置いてきたよ!!」

 

「ありがとうございます・・・ですが、何とした事でしょう!私は、大事な物が入った袋の方を、ご主人様に手渡すのを忘れてしまったのです!!」

 

「大事な物!?それはいけないねぇ・・・分かった、私がもう一度置いてこよう!!この荷物かい?」

 

「はい・・・申し訳ありません!」

 

 袋の中に入っているのがこまちとは気付かず、悪魔は袋を担ぐと部屋から出て行った・・・

 

 さっき三人を担いだ時に比べれば、大分軽い事は確かであったが、悪魔は小首を傾げ、

 

(ウ~ム・・・館を訪ねてきた時、このような大荷物は持って居なかった気がしたのだが?)

 

 中身が気になった悪魔は、屋敷の門前で荷物を降ろし、中を確認しようとすると、

 

「見てるわよ!見てるわよ!見てるわよ!」

 

 こまちの声が辺りに響き渡り、悪魔は慌てて袋を担ぎ直し、

 

(全く、あの子には適わないなぁ・・・魔女だったのか?)

 

 だが、優秀そうな奉公人が手に入りそうで、悪魔は満足げに荷物を担いで、先程置いた三つの袋が横たわる側に袋を置くと、館へと帰って行った・・・

 

 悪魔の気配が去った事で、こまちはモゾモゾ袋から出てくると、辺りを見回し、

 

「どうやら三人も無事逃げ出せたようね・・・後は、悪魔が気付いて戻って来る前に、三人が無事にお札を持って来てくれれば良いんだけど・・・」

 

 こまちは、剥がれたお札を探しに向かった、りん、エレン、なおが早く戻って来る事を祈った・・・

 

 館に戻った悪魔、さすがに重たい荷物を担ぎすぎ、大分疲れては居たが、有能な奉公人を手に入れた事で、口元に笑みすら浮かべていた。あの秘密の部屋の前に来た悪魔は、中に居る筈の三人の様子を見る為、重い扉を開けた。「ギィィィ」と不気味にドアが開き、中を覗いた悪魔、人々の悲鳴が響くものの、その中に、りん、エレン、なおの姿が見えず困惑する。

 

「なっ、あいつらの姿が・・・まさか!?」

 

 悪魔は、慌ててこまちが居る筈の部屋に向かうと、部屋の中に入り、

 

「寝ている所を済まない!ちょっと起きて私に顔を見せてくれるかい?」

 

 悪魔は優しく話し掛けるも、返事が返ってくる事は無かった・・・

 

 悪魔は、さっき自分が担いでいた、四つの荷物の尋常じゃ無い重さを思い出すと、

 

(まさか・・・あの荷物は!?)

 

 顔色を変えた悪魔が、バッと布団を剥ぎ取ると、そこにはこまちがシーツで作った、こまちちゃん人形と、騙してゴメンなさいと書かれてあった置き手紙があった。見る見る悪魔の表情が悪鬼のように変わると、

 

「おのれぇぇぇぇ!騙したなぁぁぁぁぁ!!」

 

 部屋の窓を思いっ切り開けると、悪魔は窓からヒラリと飛び降り、雄叫び上げながら走り出した・・・

 

 館の庭から雄叫びが聞こえ、こまちは、悪魔に逃げ出した事が知られた事を悟った・・・

 

「こ、こんなに早くバレちゃう何て・・・」

 

 焦りの表情を浮かべたこまちが、辺りをキョロキョロ見渡すと、

 

「こまちさぁぁん!」

 

 りん、エレン、なおがこまちに気付き、手を振りながら走ってくるのを見たこまちは、

 

「急いでぇぇぇ!悪魔が逃げ出したのに気付き、追いかけて来たのぉぉぉ!!」

 

「「「エェェェェ!?」」」

 

 こまちが叫び、三人は顔色を変え懸命に走った・・・

 

 だが、足下が悪く、どうしても思った以上のスピードが出なかった・・・

 

「足下が悪くて・・・ン!?・・・エッ!?エェェェェ?ギャァァァァァァ!!」

 

 突然なおが絶叫し、二人を置き去りに猛ダッシュで駆け出した。目の色変えたなおの肩には、蜘蛛が止まり、なおは泣きながら、

 

「蜘蛛、蜘蛛、誰か取ってぇぇぇぇ!!」

 

 大慌てで走り、こまちの目の前で、館の外壁にぶつかり倒れたなおは目を回した。その衝撃でヒラヒラ舞ったお札を手にしたこまちは、館の門の左側にお札を貼ると、

 

「りんさん、エレンさん、後一枚!急いでぇぇ!!」

 

 こまちが絶叫するも、悪魔は肉眼で見えるまで近づいて居た・・・

 

「逃がさんぞぉぉぉ!!」

 

 見る見る迫ってくる悪魔の恐怖・・・

 

 りんが、エレンが、思わず恐怖で顔色が強張る。

 

「急いでと言われてもぉ、これ以上スピードが・・・」

 

「りん!貸して!!」

 

 困惑するりんから、お札を手渡されたエレンは、素早くジャンプし、木々の枝と枝の間を絶妙に飛び進み、館の前に飛び降りると、門の右側の壁にお札を貼った・・・

 

 お札は目映い輝きを浮かべると、館を霧が覆い始め、困惑した悪魔は、

 

「行かないでおくれぇぇ!!」

 

「ゴメンなさい!ゴメンなさい!・・・・・」

 

 こまちは、館が霧で完全に見えなくなるまで、悪魔に謝り続けた・・・

 

 悪魔は、寂しかったのでは無いか・・・そうこまちは思った。

 

 自分達がこの話から脱出する為とはいえ、良くしてくれた悪魔を欺いた事に、こまちの良心は痛んでいた・・・

 

 霧が収まると、目の前にあった館は消え去り、山道が現われた。

 

「あの封印のお札が取れた事で、私達は銀の鼻のお話に迷い込んでしまったのね・・・」

 

「何か、森の中も薄日が射してきたし、良かったぁぁ・・・」

 

「なお、大丈夫!?」

 

「蜘蛛!?蜘蛛は?・・・・・よ、良かったぁぁぁ」

 

 こまちが、りんが、無事に悪魔から逃げ出せた事に安堵し、エレンは、なおに手を差し伸べ助け起し、なおは蜘蛛が何処かに行った事でホッと安堵した。

 

「それじゃあ、この先の道に進みましょう!」

 

 こまちの提案を受け入れ、歩を進めようとしたりん、エレン、なおだったが、三人の肩を、背後から何者かがトントンと叩いた・・・

 

「「「ヒィィィィ!?」」」

 

 まさか、さっきの悪魔がまた現われたのかと、三人の表情は見る見る青ざめ、恐怖に引き攣りながら、まるでロボットのようにゆっくり背後を振り向くと、

 

「やっぱり・・・こまち、りん、エレン、なおだったのね!」

 

「あなた達、こんな所に居たのね?」

 

 三人の肩を叩いたのは満と薫、その背後で両手を振るのぞみと響の姿を見た三人は、その場でヘナヘナと腰を抜かし、満は不思議そうに小首を傾げながら、

 

「どうしたの?」

 

「ちょっとぉぉ!いきなり肩を叩かないでよぉぉ!!」

 

「声ぐらい掛けてよぉぉ!」

 

 涙目になったりんとなおが、満と薫に抗議し、半泣き状態のエレンは、口をパクパクさせると、

 

「○×△□□だったんだからぁぁ!」

 

「エレン・・・何を言ってるんだか分からないわ?」

 

 薫もまた小首を傾げるも、こまちは苦笑を浮かべながら、

 

「私達・・・悪魔が出てくるお話に迷い込んじゃって・・・でも、無事にのぞみさん達と再会出来て良かったわ!」

 

 のぞみは嬉しそうに再会出来た四人に話し掛け、

 

「りんちゃん!こまちさん!エレンちゃんも、なおちゃんも、無事で良かった!」

 

 響も大切な仲間、エレンと再会し喜んだものの、エレンが泣いているのに気付き、からかうような視線で、

 

「アレェ!?エレンったら・・・泣いてたのぉ?」

 

「な、泣いて何か無いわよ!!」

 

 恥ずかしさで顔を赤くしたエレンは、目をゴシゴシ擦り強がった。薫は、少し意地悪そうな視線を響に浴びせると、

 

「やっぱり同じチームねぇ・・・響も鳥籠の中で、魔女に食べられそうになって泣いていたもの」

 

「エェ!?ちょっと薫さん!」

 

 薫にバラされ、動揺した響を見たエレンは、逆に冷めた目で響を見つめると、響はアハハハと誤魔化し笑いを浮かべた。

 

「あたし・・・もうこんな森に居るのは嫌!早く行こうよぉぉ!!」

 

 こんな不気味で、虫も多い森からは一刻も早く抜け出したいと、なおは一同を急かした。こまちは苦笑しながらなおの言葉を受け入れ、

 

「のぞみさん達と再会出来た事で・・・この世界は繋がっている事を確信したわ!さあ、他のみんなに会いに行きましょう!!」

 

「よ~し!みんなと再会するぞぉぉ・・・決定!!」

 

 のぞみはりんとこまちの手を掴み駆け出し、響もエレンとなおの手を掴み駆け出し、そんな一同を見た満と薫も、顔を見合わせクスリとすると、駆け出した・・・

 

 

 

 

4、驚愕!三人のえりか!?

 

 金の斧と銀の斧の話に迷い込んだうらら、つぼみ、えりか、いつきだったが、えりかが誤って湖の中に落ちてしまい、三人は驚愕していた・・・

 

「僕が潜って助けてくるよ!」

 

 いつきが上着を脱ごうとしたその時、湖からブクブク泡が立ち上がり、再び美しい女神が現われ、その腕の中にはえりかを抱いていた。それを見た三人はホッと安堵するも、

 

「あなた方が落としたのは・・・このえりかですか?」

 

「「「エッ!?」」」

 

 女神に聞かれた三人は、思わず目が点になった・・・

 

「ま、まさか!?」

 

「で、でも、えりかは金色になって無いし・・・」

 

「見た感じ、えりかちゃんにしか見えませんねぇ・・・」

 

 つぼみ、いつき、うららは、脳裏に、これも金の斧と銀の斧のように、金のえりかでも現われるのかとギョっとし、女神が抱いたえりかをジッと見つめるも、見た感じいつものえりかの容姿にしか見えなかった。「ハイ」と返事をしようとしたその時、女神に抱かれたえりかが目を開け、

 

「まぁ、つぼみさん、いつきさん、うららさん、ご機嫌如何かしら?」

 

 まるで何処かの令嬢のように、ニコリと三人に会釈するえりかを見て、三人は目を点にしながら同時に首を振り、

 

「「「いいえ、違います!」」」

 

「では、あなた方が落としたのは・・・このえりかですか?」

 

 女神は一旦令嬢風えりかを湖に沈め、再び別のえりかを抱いていた・・・

 

「見た感じは・・・えりかですねぇ?」

 

「いや、さっきのもえりかには違い無いと思うよ・・・中身は別人だったけど」

 

「でも・・・何処か何時もと違って無いですか?」

 

 再びヒソヒソ話で話し合うつぼみ、いつき、うらら、女神に抱かれていたえりかが目を覚ますと、

 

「つぼみ殿、いつき殿、うらら殿・・・」

 

「「「いいえ、違います!!」」」

 

 次に現われたえりかの言葉が終わらない内に、変顔浮かべた三人が同時に首を振り、違うと女神に答えた。女神は再びえりかを湖に沈めると、違うえりかを抱き上げた瞬間、

 

「「「はい!そのえりか(ちゃん)です!!」」」

 

 女神が抱いていた三番目のえりかは、息を止めて居たのか、頬を大きく膨らました変顔をしていて、それを見た瞬間、三人は即答した・・・

 

 女神は嬉しそうに何度も頷き、

 

「あなたは正直ですねぇ・・・さあ、この金のえりかと銀のえりかも持って行きなさい!」

 

「いいえ!結構・・・エッ!?女神様!女神様ぁぁぁ!?」

 

 女神は、つぼみの言葉を全く聞かず、最初に現われたえりかを金のえりかと呼び、二番目に現われたえりかを銀のえりかと呼び、そのまま本当のえりかと共に、湖の前に置くと、湖の中へと消えて行った・・・

 

 つぼみ、いつき、うららは、湖の前に佇む三人のえりかを見て呆然としていた・・・

 

「ど、どうしましょう!?えりかが三人になっちゃいました?」

 

「ハハ・・・少し頭が痛くなってきたよ」

 

「どの辺が、金のえりかちゃんと銀のえりかちゃんで違うんでしょうか?」

 

 うららの問い掛けに、三人は今一度ジッと三人のえりかに視線を向けた。つぼみは金のえりかを見つめると、

 

「お嬢様風のえりかが、金のえりかって呼ばれるのは、何となく分かりますねぇ・・・仕草が何処か優雅ですし・・・」

 

「銀のえりかは・・・いぶし銀って事じゃないかなぁ?」

 

「成る程!何か時代掛かってて・・・渋く見えますもんねぇ」

 

「本来の意味とは、違っているような気もしますが・・・」

 

 いつきの推測に、うららはポンと手を叩き納得するも、つぼみは苦笑を浮かべながら、本来の意味とは違う気もすると三人に告げた。

 

 金のえりかと銀のえりかの話題で、盛り上がる三人を見たえりかは、不満気に頬を膨らまし、

 

「ちょっとぉぉ!何コソコソ三人で盛り上がってるのよぉぉ!それより・・・何なのよ、この二人のあたしは!?」

 

「まあ、随分お下品ですわねぇ」

 

「本当に・・・」

 

 金のえりかと銀のえりかを指差し、変顔を浮かべるえりか、金と銀のえりかは、そんなえりかを見て眉根を曇らせた。つぼみ、いつき、うららは、言い争う三人を見て目を点にした。

 

「どうしましょう・・・このまま金のえりかと銀のえりかを、置き去りにするわけにもいきませんし・・・」

 

「そうだね・・・」

 

 困惑するつぼみといつき、うららは少し思案すると、

 

「金のえりかちゃんと銀のえりかちゃんは、絵本の世界から元の世界に戻れば消えると思います!ですから・・・他の皆さんにも是非見せて上げたいなぁと思うんですが?」

 

 うららの提案に、顔を見合わせたつぼみといつきは、他のみんなの反応も見て見たいかもと苦笑しあい、金のえりかと銀のえりかも一緒に、共に仲間達を探しに向かう事を決めるのだった。だが、容姿が全く同じの三人のえりかにつぼみは、

 

「しゃべり方で判断しないと・・・これでは、どれがどのえりかか、分かりませんねぇ?」

 

「そうだね・・・」

 

「そうだ!」

 

 うららは何かを閃くと、三人のえりかに近づくや、少し三人と会話し、持って居た黒いペンで、金のえりかの額には金という文字を書き、銀のえりかの額には銀と書き、えりかの額には元祖と書くと、満足げに何度も頷き、

 

「これでバッチリです!!」

 

「「アハハハハ」」

 

 うららの機転を見て、思わず笑いだしたつぼみといつき、えりかは目に炎を点すと、

 

「あんた達、人事だと思って楽しんでない?」

 

「そんな事無いですよ!じゃあ、みんなを探しに行きましょう!!金のえりか、銀のえりか、そして・・・元祖のえりか!」

 

「ムキィィィィィ!!」

 

 普段なら、えりかがからかう対象のつぼみに、逆にからかわれたえりかは、変顔を浮かべながら悔しそうな表情を浮かべた・・・

 

 

            第七十話:少女達の冒険!(後編)

                   完

 


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