プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第七話:HEART GOES ON

              第七話:HEART GOES ON

 

1、

デザートデビルの猛攻が開始された・・・

 

さつきやももか、鶴崎先生達が、逃げ遅れた人々を懸命に植物園に誘導する。逃げ場を失った人々が、次々に植物園に避難してくる。

 

此処も無事とは言えない・・・

 

だが人々は、唯一と言っていい、建物が無事な植物園に避難していた。しかし、番ケンジは違っていた。彼は、デザートデビルの標的になるように、わざと囮になろうと、砂漠の中を駆け回り続けていた。

 

(時間を稼げば、きっと、きっとプリキュアがこの世界を救ってくれる!時間を稼ぐんだ!みんなを一人でも多く守るんだ!!)

 

 ケンジは、植物園から一匹でも多く引き離そうと必死だった・・・

 

「む、無茶です・・・番くん、逃げて下さい!!」

 

涙ながらに映像を見ていたつぼみが叫ぶ、ゆりが、えりかが、いつきが、デューンを罵る。デューンは、その罵りの言葉を嬉しそうに聞き入る。

 

(そうだ、もっと憎め!憎しみの心こそ、我が至福なり!)

 

一体のデザートデビルは、そんなケンジを目障りに感じたかのように、必死に逃げ回るケンジを追い詰めていった・・・

 

 つぼみから、絶望的な悲鳴が上がる!

 

追い詰められた番ケンジに、最期の時が迫る!!

 

つぼみはポロポロ涙を流しながら、

 

「番君!もう、もう止めて下さい!!何で、何で・・・」

 

 だが無情にも、デザートデビルが番ケンジを踏みつぶそうと、右足を高々と上げた瞬間、つぼみ達四人は一斉に目を背けた・・・

 

 

 ケンジは目を瞑り、死を覚悟した・・・

 

 だが、一向にデザートデビルが振り上げた足が、ケンジに降りてくる事は無かった。いや、逆に凄まじい音と共に、デザートデビルの呻き声が聞こえた気がした。訝しんだケンジが目を開けると、目の前に二人の姿が目に入った。自分を救ってくれた、プリキュア達と同じような姿をした、二人の姿を・・・

 

「黒と、白の・・・プリキュア!?あなた達は一体?」

 

 咆哮を上げるデザートデビルに対し、二人が名乗りを上げる。

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!」

 

 ケンジを救ったのは、キュアブラックとキュアホワイトだった。右足を振り上げたデザートデビルの左足目掛けて、二人は強烈な飛び蹴りをお見舞いし、デザートデビルを吹き飛ばした。

 

「君、大丈夫?あまり危険な事はしちゃダメだよ!・・・でも、みんなが避難する時間を稼ぐ為に、囮になる何て・・やるじゃん!」

 

 ブラックが、ケンジに向けて親指を立ててウインクする。ホワイトはクスリと笑い、

 

「あなたの勇気ある行動が、私達を間に合わせたのよ!後は私達に任せて、あなたも避難していて・・・あの建物には、私達プリキュアが、プリキュアの誇りに掛けて、絶対危害を加えさせないから!!」

 

 ホワイトの頼もしげな言葉に頷き、植物園の方を見てケンジが驚いた。ケンジの視線の先には、プリキュアが、プリキュア達が、植物園を守るように四方を囲っていたのだから・・・

 

 植物園の後方で背後のデザートデビル共に睨みを効かせるのは、キュアブルーム、キュアイーグレット、キュアブライト、キュアウィンディの四人であった。

 

「輝く金の花・キュアブルーム!」

 

「きらめく銀の翼・キュアイーグレット!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「天空に満ちる月・キュアブライト!」

 

「大地に薫る風・キュアウィンディ!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「「聖なる泉を汚す者よ!」」

 

 イーグレットとウィンディが、デザートデビルを指さし叫べば、

 

「「アコギな真似は、お止めなさい!」」

 

 ブルームとブライトが同じようにデザートデビルを指さし応える。

 

「あんた達は、私達が此処で食い止める!!」

 

 ブルームの宣言と共に、花鳥風月をモチーフにした彼女達が、後方のデザートデビル共に向けて攻撃を開始する。

 

 

 植物園の正面から見て左側を守るのは、ドリーム達プリキュア5と、ミルキィローズの六人であった。

 

「大いなる希望の力・キュアドリーム!」

 

「情熱の、赤い炎・キュアルージュ!」

 

「弾けるレモンの香り・キュアレモネード!」

 

「安らぎの、緑の大地・キュアミント!」

 

「知性の青き泉・キュアアクア!」

 

「「「「「希望の力と未来の光、華麗に羽ばたく5つの心 、Yes!プリキュア5!」」」」」

 

 五人のプリキュアが名乗りを上げる。それに続き、

 

「青いバラは秘密のしるし・ミルキィローズ!」

 

「私達が居る限り、これ以上の暴虐は許さない!行くよ、みんな!!」

 

「「「「「YES!」」」」」

 

 ドリームの力強い言葉を受け、六人がデザートデビルに立ち向かう。

 

 

 植物園の正面から見て、右側を守るのは、ピーチ達四人だった。

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ!キュアピーチ!!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ!キュアベリー!!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ!キュアパイン!!」

 

「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ!キュアパッション!!」

 

「「「「レッツ、プリキュア!!」」」」

 

 名乗りを上げた四人の戦士が、デザートデビルを威嚇する。

 

「私達が来た以上、此処から先には進ませない!行くよ、ベリー、パイン、パッション!」

 

 ピーチの勇ましい言葉を合図に、四人の頼もしい戦士がデザートデビルに突撃する。

 

 

「プ、プリキュアがあんなに居た何て・・・アッ!?」

 

 ケンジが沢山のプリキュア達に驚いていた時、デザートデビルが発したレーザーが逸れ、植物園に向かった。だが、植物園にそれが当たる事は無かった。何故なら、植物園の上では、シャイニールミナスが四方を見張り、バリアを張っていたのだから・・・

 

「光の心と光の意志、全てを一つにする為に!」

 

 ルミナスが両手を広げ、名乗りを上げる。その側には、ルルン、ココ、ナッツ、シロップ、シフォンにタルトが居て、プリキュア達に声援を送っていた。そして、咲の愛猫コロネも、プリキュア達の奮闘振りを見守る。

 

「私達が居る限り、これ以上の破壊は絶対に許しません!!」

 

 ケンジは、頼もしいプリキュア達の出現に安堵し、植物園へと避難して行った。

 

 

 ブラックとホワイトは、避難していくケンジの姿を見送ると、先程蹴り飛ばしたデザートデビルに、プリキュアマーブルスクリューマックスを浴びせ倒すと、植物園の正面に移動した。二人は、更なる進撃を開始するデザートデビルを見て、

 

「クイーンが言ってたように、此処には何かありそうだね?それにしても、いい加減あの顔にも飽きてこない、ホワイト?」

 

「そうね、たった一日だけど、もうウンザリね!」

 

 二人がアイコンタクトを取り頷くと、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

 ブラックが、ホワイトが叫び、プリキュアマーブルスクリューマックスを再び放つ、更に力を込め、スパークルブレスを回転させると、

 

「「スパークゥゥ!!!」」

 

 二人の叫びと共に発せられた強大な虹の光が、正面に居たデザートデビルの群れを次々と飲み込み、デザートデビルを消滅させていった・・・

 

 

 デューンは、つぼみ達の存在を忘れたかのように、呆然と画面に食い入るように見入っていた。

 

(地上にもプリキュアだと?・・・一体どういう事だ!?)

 

 次々に消滅させられていくデザートデビルを見て、先程までの余裕な表情は、完全に消え失せていた。

 

「貴様らぁぁ!何をしている?こうなれば強行突破だ・・・正面に戦力を集結し、プリキュア共を皆殺しにしろぉぉ!!!」

 

 苛立ったデューンの指示通り、デザートデビル達は正面に残った戦力を集結させる。それを迎え撃つように、17人のプリキュア達も正面に居並ぶ。

 

 デューンの指示通り、一斉にデザートデビルが口を開き、強力なエネルギー波を放つと、それに負けないぐらい、プリキュア達は互いが誇る最強クラスの必殺技を同時に放つ!

 MH組がエキストリーム・ルミナリオを放ち、SS組がプリキュアスパイラルハートスプラッシュと、プリキュアスパイラルスタースプラッシュを放つ!ココとナッツの力を借りたプリキュア5とローズが、プリキュアレインボーローズエクスプロージョンとミルキィローズメタルブリザードを放てば、フレッシュ勢がプリキュアトリプルフレッシュとプリキュアハピネスハリケーンの合体技を放つ!

 

 正に強大な闇のエネルギーと、光のエネルギーの激突だった・・・

 

 

2、

 

 つぼみ、えりか、いつき、ゆりの四人も、そして、別室でモニターを見て居た薫子も、それぞれ、画面に映った17人のプリキュアの勇士に驚愕していた。

 

 薫子は、地上のプリキュア達を見て、50年前の出来事を思い出していた・・・

 

 プリキュアパレスの試練で、先代のプリキュアを破り、ハートキャッチミラージュを手に入れた時を・・・

 

「あの時、先代は言っていた!砂漠の使徒と戦って居る私達だけが、プリキュアじゃないって、世界にどうしようもない危機が訪れた時、プリキュアは集う!あの時の私には、よく意味が分からなかったけれど・・・それは、彼女達の事だったの?」

 

 薫子は、モニターを見ながら、植物園を守り続けてくれるブラック達を見て、目を輝かせた・・・

 

 

「プ、プリキュアって、あんなに居たの?」

 

 えりかの驚きも最もであった。彼女達にとってプリキュアとは、キュアフラワーを除けば、自分達以外に居るとは思っても見なかったのだから・・・

 

 それは他の三人にも同じ事だった・・・

 

(プリキュアがあんなに一杯・・・凄いやぁ!!)

 

 いつきはプリキュア達の勇姿を見て、目をキラキラ輝かせた!

 

(プリキュアがあんなに沢山・・・でも、こんなに心強い事はありません!!)

 

 17人のプリキュア達の勇士が、つぼみの心に変化を与えた事に、まだつぼみ本人も気付いては居なかった。

 

(どういう事!?でも・・・つぼみに、彼女達プリキュアに・・・私は、目を覚まさせられたわ!)

 

 ゆりの表情に、もう憎悪は見られなかった。

 

 何かを吹っ切ったように・・・

 

 それはえりかといつきも同じだった・・・

 

「ぜ、全滅だとぉぉ!?あの街に居た、数十体ものデザートデビルが・・・あんなに呆気なく全滅だとぉぉ!?バカな・・・そんなバカなぁぁ!?」

 

 デューンは思わずよろめき、どんどん表情が険しくなる。画面に映るプリキュア達の勇士を見て、憤怒の表情になっていく。デューンは画面を消し、ゆっくりとつぼみ達の方を振り向くと、

 

「キュアフラワーの差し金か?それとも、貴様らか?」

 

 憤怒の表情で聞くデューンに、一瞬戸惑ったえりかが答える。

 

「あったり前じゃん!奥の手ってぇのはさ、最後に見せるもんなの!!あんた見たいに調子扱いて、恥じかくような無様な真似しないって!!」

 

 えりかがデューンにアカンベ~をする。えりかもいつものえりかに戻っていた。このチームのムードメーカー、来海えりかに・・・

 

「そう・・・か!やはり・・・貴様らの・・・し~~わ~~ざ~~か~~!!!!」

 

 激高したデューンが、どす黒いオーラを纏うと、デューンの髪の毛が一段と伸び、つぼみ達に憎悪の視線を向ける。

 

「絶対に許さん・・・この手で貴様らを・・・八つ裂きにしてやる!!!」

 

 デューンの様子を見て、スッとゆりが立ち上がる。

 

 憎しみに囚われたデューンの醜い姿を見て、先程までの自分の愚かさを思い浮かべ、大きく深呼吸するゆり、そして、何かを決意したように叫ぶ!

 

「つぼみ、あなたの言う通りだわ!私達プリキュアは、憎しみではなく・・・愛で戦いましょう!!!」

 

 ゆりの言葉に賛同するように、えりかが親指を立ててつぼみにニヤリと笑い、いつきもつぼみに微笑む、それを見て言葉を飲み込むつぼみ、

 

(みんな、みんなが分ってくれました・・・私、私、)

 

 ゆりの手にあったプリキュアの種の欠片が、一つになる。

 

(ダークプリキュア・・・あなたの思いも今、私と一つになった!)

 

「つぼみ、えりか、いつき・・・変身よ!!」

 

「「はい!!」」

 

 えりかといつきが即答で返事をし、

 

「ハイ!!」

 

 つぼみは涙を拭い、嬉しそうに返事をしてゆりの横に並んだ。正面から見て、一番左にえりか、ゆり、つぼみ、いつきの順で四人が並ぶ!

 

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

 

 四人が同時に叫び変身する・・・

 

「大地に咲く、一輪の花・キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花・キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花・キュアサンシャイン!」

 

「月光に冴える一輪の花・キュアム~~ンライト!」

 

「「「「ハートキャッチプリキュア!」」」」

 

「「「「ハァァァ!!」」」」

 

 雄叫びを上げながらデューンに突進していく四人、シプレが、コフレが、ポプリが、それぞれ、ブロッサム、マリン、サンシャインとアイコンタクトを取りマントに変わる。走りながら独自にマントを出すムーンライト、彼女達を迎え撃つように咆哮して突進するデューン、それを見て三方に散るブロッサム、マリン、サンシャイン!

 

 先ず先陣を切ってムーンライトがデューンと対峙する。拳と拳がぶつかり合い、蹴りと蹴りが相殺する。先程と違い、ムーンライトの攻撃が何度かヒットするようになっていた。サンシャインが突進し、デューンに回し蹴りを連続で浴びせ、上空から入れ替わるようにマリンがマリンダイブで跳び蹴りしながらデューンに攻撃する。躱すデューンだが、着地したマリンが瞬時に振り向き、パンチをデューンにヒットさせる。直ぐに体勢を立て直したデューンに、ブロッサムとムーンライトが、両手をハート型に繋いで、プリキュアインパクトを繰り出す。腕をクロスして何とか攻撃に耐えたデューンは、ブロッサムを見て逆上する。

 

「貴様だ!貴様が居なければ、あの時点で勝敗は決していた!許さんぞ~~~!!!」

 

 デューンが、ブロッサムを集中して狙い始める。咄嗟の判断で空中に逃げるブロッサムと、追うデューン、空中で交差し、互いに攻撃仕合う二人、

 

「ブロッサム・シュート!」

 

 連続エネルギー弾を放ち、何とか距離を取るブロッサム、入れ替わるようにムーンライトが、飛び回し蹴りでデューンを地上に蹴り飛ばす。地面にめり込みながら、直ぐ体勢を立て直して、地上に居たブロッサム目掛けるデューン、

 

「あたしの親友に、何しようってぇのさ!」

 

 マリンがマリンシュートを放ち、ブロッサムを守る。嬉しそうな表情になったブロッサムだったが、デューンが更なる雄叫びを上げ、拳にエネルギーを溜めながらブロッサムに突撃する。

 

 油断していたブロッサムの顔面に、至近距離からデューンの衝撃波が当たりそうになるのを、ムーンライトが、ブロッサムの腕を引っ張り避けさせ、デューンにカウンターの回し蹴りを食らわせ吹き飛ばす。デューンは吹き飛ばされながらも、ブロッサム、ムーンライトの二人に、強力なエネルギー波を放った。

 

(直撃だ!)

 

 デューンがフッと笑むが、直ぐにその表情は消えた。サンシャインが二人の前に立ち、サンシャイン・イージスでバリアを張って二人を助ける。バリアに亀裂が入ったのを見て再び三方に散る。

 

「ちょこまかと・・・目障りな奴らめ~~!!」

 

 再びブロッサム目掛けようとしたデューンに、サンシャインが突っ込むと、デューンは咄嗟にパンチを出す。サンシャインは身を低くして躱し、デューンのボディに連続してパンチを決める。蹌踉めいたデューンに追い打ちを掛けるように、ブロッサム、マリン、ムーンライトの攻撃が連続でヒットする。

 

「集まれ!花のパワー!!」

 

 ブロッサムが、ブロッサムタクトを、マリンがマリンタクトを取り出し、サンシャインがシャイニータンバリンを、ムーンライトがムーンタクトを取り出し、勝負に出る。

 

「花よ、煌け!プリキュア!ブルーフォルテウェ~イブ!!」

 

「花よ、舞い踊れ!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」

 

「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェ~~イブ!!」

 

「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェ~イブ!!」

 

 四人の必殺技が同時にデューンにヒットして爆発する。

 

「グゥウオオ~~!!」

 

 デューンが呻く、それを見たマリンとサンシャインが、アイコンタクトで頷き合い、

 

「「集まれ、二つの花の力よ!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」

 

 マリンとサンシャインの身体が、青と黄色の光に包まれ上昇する。それを見るブロッサムに、ムーンライトが微笑み掛ける。思わず喜ぶブロッサム・・・

 

「「集まれ、二つの花の力よ!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」

 

 ピンクの光に包まれたブロッサムと、銀色の光に包まれたムーンライトが同時に上昇する。唸り声を上げデューンも赤黒い光を帯びて、青と黄、ピンクと銀、二つの合わさった光を追いかける。だが、二つの光と激突する度にデューンは何度も地面に叩き付けられる。

 

「グゥゥオオ~~!おのれ、おのれ~~!!」

 

 更に激高するデューン目掛け、二つの光がデューンの身体を貫き、四人のプリキュアが再び姿を現わす!

 

「「「「ハ~~トキャッチ!!」」」」

 

 四人の掛け声と共に爆発するデューン、そして、四人のプリキュアは、デューンとの戦いに決着を付けるべく、ハートキャッチミラージュを取り出した・・・

 

 

3、

 

 植物園に避難した人々は、窓越しに見える、日が暮れた砂漠に立つ、17人のプリキュアのシルエットに、賞賛の声を浴びせ続けた。

 

「ブラック、まだ油断するなメポ!」

 

「まだあそこから、凄い憎しみの力を感じるミポ」

 

 メップルとミップルが忠告する場所を、ジッと凝視する17人のプリキュア達は、月の光に微かに見える物体に驚く。

 

「何、あれは?城!?」

 

 アクアが何かに気付いたように指さす、

 

「あそこから、憎しみの力が溢れだしているのね?」

 

 ホワイトの問いかけに頷く、メップルとミップル、

 

「怖いルル・・・」

 

 不安がるルルンを優しく抱き上げ、ルルンをあやすルミナスの心に、クイーンが語り掛ける。

 

「ルミナス、あそこで今四人のプリキュア達が、憎しみに囚われた哀れな王と戦っています。あの者に憎しみの心が残っている限り、虹の園が更なる脅威に晒されるやも限りません。用心して下さい!」

 

 ルミナスは頷き、皆にクイーンからの言葉を伝えると、一同はまだ見ぬ仲間達が戦って居る惑星城を見つめた。

 

「あそこで、私達のまだ見ぬ仲間が戦ってるんだね!」

 

 ブラックは感触深げに、空の彼方に浮かぶ惑星城を見続けた・・・

 

 

 

 四人のプリキュアは、ハートキャッチミラージュを取り出し、祈りを始める。

 

「「「「鏡よ、鏡、プリキュアに力を!世界に輝く一面の花・ハートキャッチプリキュア!スーパーシルエット!!」」」」

 

 全員が白色の衣装に、羽衣を身に着けたような姿に変わる。四人が一斉にハートキャッチミラージュを上空に放ち

 

「「「「花よ、咲き誇れ!プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!!」」」」

 

 四人の呼びかけに応えるように、目を閉じた巨大な女神のシルエットが姿を現わし、四人の叫びと共に行動する巨大な女神のシルエットから、デューン目掛け振り下ろされた愛の拳が直撃する。

 

「「「「ハァァァァ!」」」」

 

 四人が叫びながらタクトを、タンバリンを回し、デューンを浄化させようとする。だが、デューンは両手を握り、力を加えると、

 

「こんなもので・・・我らの憎しみが晴れると・・・思うな~~~!!!」

 

 デューンの絶叫と共に、プリキュアハートキャッチオーケストラは破られ、女神のシルエットが消え失せる。

 

「そんな、プリキュアハートキャッチオーケストラが効かない何て・・・」

 

 ブロッサムが驚愕の声を上げる。

 

「我ら砂漠の使徒の憎しみは、こんな事では消えんぞ!貴様らプリキュアさへ居なければ・・・この星はとっくに我らの安住の地となったのだ!貴様らが居なければな!!」

 

 デューンの表情に、一瞬哀しみの心を見たブロッサムは、デューンに問いかけた。

 

「何故そんなに砂漠化にこだわるのですか?何故私達プリキュアを憎むのですか?」

 

 デューンはチラリとブロッサムを見ると、

 

「いいだろう・・・教えてやる!我ら砂漠の使徒は、元々闇の存在から生まれた。数億年にも渡る長き流浪の中、闇は知識を得た。何度も代替わりをしながら、我らはこの姿をようやく手に入れた。だが、この姿を保つ事は難しかった・・・我らは急激に数を減らした。だが、遂に知った!!闇から生まれた我らにとって、乾いた砂漠の空気こそ我らが生きる最良の条件だと知った。そして数百年前、我ら砂漠の使徒にとって、最良の星であるこの星に巡り会った。この星を砂漠にすれば、我らの悲願は達成される筈だった。だが、そこにはこころの大樹があった・・・貴様達プリキュアが阻んできた!分るか?目の前に我らの安住の地を見付け、それを拒み続けられた者の怒りが!この暗黒の宇宙を数億年も流浪してきた者の思いが!代々の王に、後事を託された王達の悲願が!目の前で何度も絶望を味わった我らの憎しみが!貴様達が今味わっている苦しみなど、我らに遙かに届かんよ!!」

 

 デューンは昔を思い出したのか、拳を震わせた。

 

「50年前、砂漠の王となった私は、雌雄を決すべくキュアフラワーと戦ったのだが・・・後は貴様らも聞いていよう・・・さて、決着を付けよう!この地に眠る全ての怒りよ!全ての世界の砂漠の使徒よ、貴様達の憎しみの全てを・・・我に差し出せ!!」

 

 デューンの叫びに呼応するように、惑星城が地響きを立て崩れ始める。スナッキー達は、全てを吸い上げられたように、服を残し砂に帰り、地上に残っていたデザートデビルの全てが砂になった。デューンの身体は、憎しみの力を帯びてどんどん巨大化していった。

 

「な、何て大きさなの!?」

 

 思わずムーンライトが驚愕の声を上げる。

 

「つぼみ、ゆりちゃん、えりかちゃん、いつきちゃん、こっちに来て!!」

 

 コッペの結界の中で薫子が一同を呼ぶと、みんなは薫子の下に集った。

 

「お婆ちゃんが戦った時も、あんなに巨大だったの、あいつ?」

 

 マリンの問いかけに、薫子は首を振り答える。

 

「私と戦った時でも、あれほど巨大では無かったわ!デューンの憎しみの心が、暴走している・・・あれではデューンも・・・」

 

 哀れむようにデューンを見る薫子、デューンは憎しみの姿を吸収しつくし、巨大化を完了させた。地球をも覆いそうな巨大な姿に・・・

 

「素晴らしい力だ!まず、地上に居るプリキュア共に先程の礼をせねばな・・・」

 

 デューンは右拳を振り下ろすと、巨大な鉄拳が、希望ヶ花市に振り下ろされる。ゴオォォォという響きと共に、デューンの鉄拳により直径数キロにも及ぶクレーターが出来る。

 

 地上に居た17人のプリキュアにも、デューンの巨大な姿が見えていた。

 

「な、何て大きさなの!?アクダイカーンの比じゃないわ!」

 

 ブルームが思わずたじろぐ、

 

「え、ええ、あんな大きな敵に、どうやったら勝てるの?」

 

 アクアが思わず不安がる。呆然とする14人のプリキュア達を余所に、三人のプリキュアがクレーター目掛け突進する。嘗て、巨大なジャアクキングと戦ったブラック、ホワイト、ルミナスである。クレーターの中心に到達したブラックが、

 

「私達ってさ、何か巨大な者に縁があるよね?」

 

「フフフ、そうね・・・でも、これ以上この星を傷付けさせない!!」

 

「はい、守りましょう!!」

 

 デューンが再び拳を振り下ろすのに合わせるように、虹の光を浴びた三人が叫ぶ!

 

「漲る勇気!」

 

 ブラックが叫べば、

 

「溢れる希望!」

 

 ホワイトが応える。

 

「光輝く絆とともに!」

 

 ルミナスの言葉と共にブラックとホワイトの目の前に虹のハートが現われる。ブラック、ホワイトが上空に向きを変えると、虹のハートも上空に向きを変える。

 

「「エキストリーム・・・」」

 

「ルミナリオォォォ」

 

 強力なエネルギー波が、デューンが打ち下ろした拳を弾き飛ばす。その行動に勇気づけられた14人のプリキュアも駆けつけ、それぞれの技を繰り出し、デューンの攻撃から地上を守り続けた。

 

「地上は、私達が必ず守る!!!」

 

 17人のプリキュアの光が、ブロッサム、マリン、サンシャイン、ムーンライトに更なる力を与える。

 

 

 地上への攻撃を、地上のプリキュア達に防ぎ続かれ、デューンは苛立っていた。

 

「クッ、プリキュア共~~!!ン!?」

 

 背後に気配を感じたデューンが、背後を振り向くと、デューンの顔の位置に、左からムーンライト、マリン、ブロッサム、サンシャインが横に並び立つ!シプレ、コフレ、ポプリの妖精達も、それぞれのパートナーの顔の側に浮かんでいた。

 

「笑っちゃうよね、私達14才の美少女がデューンと戦う何てさ!」

 

「美少女は微妙ですっ!」

 

 ンっといった表情でコフレを睨むが、直ぐに笑い合う二人、

 

「えりか、ゆりさんは17才だよ!」

 

 サンシャインの指摘に、エッと戸惑うムーンライトと、慌ててムーンライトに謝るマリンの和やかな雰囲気に、ブロッサムは思わず微笑む。ムーンライトと目が合い、ブロッサムがムーンライトに先程の行為を詫びる。

 

「ゆりさん・・・さっきは年上のゆりさんに、生意気な事を言ってすいませんでした!」

 

 深々と頭を下げるブロッサムに、ムーンライトは首を振り、

 

「あなたの優しい気持ちと、思いやりの心が、私に大切なものをくれたのよ!ありがとう・・・つぼみ!!」

 

 涙ぐむブロッサム、四人の姿を見て心を動かされた薫子が、コッペに頼みコッペと共に四人の側にやってくる。

 

「お婆ちゃん!?」

 

 花びらの舞が薫子を包み込むと、

 

「今は・・・キュアフラワーよ!」

 

 キュアフラワーに変身した薫子が、四人にウインクする。サンシャインは少し横に退き、フラワーをブロッサムとサンシャインの隣に招き入れる。

 

「キュアフラワーだと!?・・・君は私に、あの時のように憎しみの心をぶつけてくれるのかな?」

 

 デューンの問いに、ゆっくり首を振るフラワーは、

 

「50年前の私は、まだ未熟だった・・・あなたの憎しみの奥に眠る哀しみに、気付いてあげられなかった。あなたを倒せば全て終わる・・・そう考えていた。でも、50年の時が過ぎて、それが間違いだったと悟ったわ!まさか、自分の孫に教わる何て思わなかったけどね」

 

 フラワーが優しくブロッサムの頭を撫でると、ブロッサムははにかむ。

 

「僕たちも一緒に戦うですっ!」

 

 コフレの言葉にシプレ、ポプリも頷き、それぞれのパートナーにしがみつく。それを微笑ましく見守っていたムーンライトの側に、三つの蛍のような光が近寄ってくる。不思議そうに見ていたムーンライトの顔の側で、ムーンライトのパートナーだったコロンのシルエットが現われ微笑んだ。驚いたムーンライトの左肩に手を掛けて優しく微笑む父、月影博士のシルエットに再び驚愕する。更にムーンライトの右手を取り微笑み掛けるダークプリキュアのシルエットが現われる。ムーンライトの瞳にそれぞれを見て涙が溜まるが、ムーンライトは唇を噛み耐えた。泣くのは、全てが済んでからにしようと心に決めた。

 

(何だ!?この力は・・・)

 

 デューンが狼狽えるが、直ぐに咆哮し、両手をクロスして超強力なエネルギー波を放つも、目を瞑ったブロッサムが掲げたハートキャッチミラージュから放たれる光が、強力なバリアを張った。ハートキャッチミラージュに映し出されるデューンの顔、それを悲しげな視線で見つめたブロッサムが、静かに語り出す。

 

「デューン・・・あなたの哀しみが終わらないのは、私達の力が足りないから・・・あなたの憎しみが消えないのは、私達の愛がまだ足りないから…だから…だから…」

 

 言葉に詰まったブロッサムの言葉を、仲間が引き継いでいく。

 

「だから、私達は力を合わせましょう!」

 

 ムーンライトが仲間達を、フラワーを、妖精達を、父と妹を見て微笑むと、

 

「無限の可能性が・・・今花開くわ!」

 

 フラワーの言葉通り、デューンを見たブロッサムが、満面の笑みを浮かべた時、ブロッサム、いや花咲つぼみの心の花、桜が満開に花開く!それに呼応するように、ハートキャッチミラージュから強烈な光が溢れ出る。彼女達が光に包まれると、巨大な卵が生まれ、一人の少女の姿に姿を変える。それはつぼみに似て居た・・・

 

「宇宙に咲く、大輪の花!無限の力と、無限の愛を持つ星の瞳のプリキュア・・・ハートキャッチプリキュア!無限シルエット!!!」

 

 一同が心を一つにして叫ぶ!

 

 巨大なシルエットは、デューンと同等なほど大きくなる。その姿を呆然と見ていたデューンに焦りが生まれる。自分に沸いてくる恐怖の心を掻き消すように、デューンは無限シルエットに、パンチを連続で繰り出すも、無限シルエットに攻撃が届く事は全く無かった。逆にそのダメージは、自分自身に返ってくるだけであった。

 

「憎しみは自分を傷つけるだけ・・・私達の思いを、愛を、あなたに届けます!!」

 

 無限シルエットが両手一杯に腕を広げ、デューンを抱きしめる。デューンの心にプリキュア達の思いが流れ込んでくる。デューンの目にたくさんの満開の桜が生い茂って見えてくる。その美しい光景を見て、デューンの身体から、黒いオーラが飛び出し、デューンの身体が徐々に、徐々に小さくなっていく。少年の姿に戻ったデューンが小声で何かを呟く、一同には何を言ったのか聞き取れなかったが、唯一人、つぼみには聞こえていたようで、

 

「私達一人一人が、人間を、動物を、自然を、そして、地球を愛すれば、地球は美しい星のままです!そして、闇と光は互いを尊重する事が出来る筈です・・・だって同じ、兄弟姉妹ですもの!!」

 

 つぼみの言葉を聞き、デューンが微かに微笑んだように見えた。デューンは光と交わり消えていった・・・

 

 そして、無限シルエットの愛は、地球全土を覆う・・・

 

 地球は、元の青く輝く姿を取り戻そうとしていた・・・

 

               第七話:HEART GOES ON

                    完

 


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