1、大暴れ!絵本のキャラクター達
なぎさ、ほのか、ゆりがアルバイトしている、世界絵本博覧会にやってきた一同だったが、会場内は、絵本の中から現われた悪役達によってパニックになっていた。一同はプリキュアに変身し、事態の収束に動き出した・・・
とある鏡に囲まれた部屋・・・
鏡に映ったプリキュア達を見て、ヒメルダとリボンは目を見開き驚くと、
「神様・・・この人達って!?」
「ブルー様、見たところ、彼女達からは不思議なパワーを感じますわ!」
「ヒメ、リボン・・・彼女達は、幾度もこの世界の危機を救って来た伝説の戦士プリキュア!一万年前、世界を救った三人のプリキュアの一人、君の先祖、キュアプリーステスと同じね!!」
「「エェェ!?」」
ブルーの発言を聞き、ヒメルダとリボンは変顔を浮かべながら驚愕し、再び鏡に映る彼女達の戦いを見つめた。
ハッピー達六人は、絵本の中から現われた少女を保護し、追ってきた西遊記の悪役、牛魔王、金角、銀角と今まさに戦おうとしていた・・・
「先制攻撃、行くでぇぇ!・・・プリキュア!サニーファイヤー!!」
「俺様の邪魔をするってぇなら・・・この芭蕉扇で吹き飛ばしてやるぜぇ!!」
気合いを込めたサニーは、先制攻撃とばかりサニーファイヤーを放ったものの、牛魔王は、手に持っていた大きな扇を、力任せに一振りすると、周囲に突風が吹き荒れ、サニーファイヤーを押し戻した。サニーは何とか自身の放った攻撃を躱したものの、立って居るのがやっとの状態になる。
「コリャ堪らんわぁ・・・」
「サニー!大丈夫?」
強風に煽られるサニーを心配したハッピーが、サニーに声を掛けるも、サニーは表情を歪めながら、
「この程度なら大丈夫や!」
(そうか・・・あいつはサニーという名前なのか)
サニーと牛魔王の戦いを見て居た金角の口元が、ニヤリと吊り上がると、
「おい!サニー!!」
「何や!?今それどころじゃ・・・エェェェェェ?」
強風で髪が激しく揺れ、苦悶の表情を浮かべるサニーに、背後から声が掛かり、振り向いたサニーが声の主に返事を返すと、突然サニーは物凄い吸引力で引っ張られ、為す術もなく、金角の持って居た巨大な瓢箪に吸い込まれた。金角はニヤリとすると、持って居た瓢箪に蓋をし、瓢箪を揺すって笑みを浮かべた。
「サニー!?」
「そんなぁ・・・サニーが瓢箪に吸い込まれちゃった!?」
ハッピーとピースが涙目になりながら、吸い込まれたサニーの身を案じる。牛魔王は、相手を金角に奪われ少し苛つくも、
「チッ!金角の野郎、俺様の獲物を・・・だが、流石は紅葫蘆(べにひさご)!大した威力だぜ!!」
思い返せば西遊記の中で、牛魔王の正妻である羅刹女が芭蕉扇を、金角と銀角兄弟が、呼びかけた相手が返事をすると、中に吸い込んで溶かしてしまう、恐るべき瓢箪の紅葫蘆を持って居た事を・・・
「金角と銀角が持って居る瓢箪って・・・名前を呼ばれて返事をすると、瓢箪の中に吸い込まれるんだった・・・」
瓢箪に吸い込まれた人物の身体は徐々に溶けて、瓢箪の中で酒のエキスに変わる事を思い出し、見る見る顔色が青ざめていくハッピー、
「迂闊に私達の名前を知られる訳にはいきませんねぇ・・」
険しい表情をしたビューティも、自分達の名前が知られないように用心するよう一同に伝えた。
「そう言えば・・・銀角って、山を動かせたよね?」
「はい・・・孫悟空が山に押しつぶされ、身動き出来なくされてましたね」
思い出したマーチが一同に話し掛けると、ビューティも頷き、一度は孫悟空も銀角に敗北した事を告げた。
「フフフン!俺様の強さが分かったようだなぁ・・・さあ、ニコをこちらに渡せ!!」
ドヤ顔を見せる銀角、不安そうな表情を浮かべるニコを隠すように、ハッピーが銀角を険しい表情で見つめていると、フンと鼻息荒く言葉を捲し立てたピースは、
「この世界の孫悟空なら、山の一つや二つ・・・かめはめ波で消滅させられるもん!」
「な、何だとぉぉ!?」
「この世界にも孫悟空が居るのか?・・・しかも、それ程の者なのか?」
思わず顔を見合わせ、驚愕する金角と銀角に、今度は逆にピースがドヤ顔を浮かべると、
「ウン!私達の仲間だよ!!今、この会場にも来てるし、あなた達何か、チョチョイのチョイ何だからぁ・・・分かったら、今の内にサニーを返して!!」
当初、ピースは何を言い出すのかと呆れ顔のマーチ、ビューティ、エコーであったが、どうやらこれはピースの作戦だと見抜き、成り行きを見守った。
「バカめ!そんな話を聞いて・・・オメオメ黙って居られるか!兄者、俺をこの世界の孫悟空と勝負させてくれ!!」
「良いだろう!我らの力、思い知らせてやれ!!」
「オオ!!」
血気盛んに荒ぶる銀角を見たピースは動揺し、仲間達を振り返りどうしようと相談するも、銀角は何やら術を唱え、雲を呼び寄せると、ヒラリと雲の上に飛び乗り、会場内に居るであろう孫悟空を探しに向かった・・・
觔斗雲と言えば、孫悟空を真っ先に思い浮かべるが、基本的には雲に乗る術、仙術なので、元々天界の関係者である猪八戒、沙悟浄、牛魔王達も搭乗可能である・・・
「ど、どうしよう!?銀角、孫悟空を捜しに行っちゃったよぉ?」
「こうなったら・・・私達の誰かが、孫悟空として戦う以外無いかも知れませんねぇ・・・」
「嘘だと分かったら・・・瓢箪に吸収されたサニーの身も、益々危ういかも知れない」
「そ、そんなぁぁぁ・・・」
ヒソヒソ話で会話するハッピー、ビューティ、マーチ、ピース、このまま孫悟空が見つからなければ、金角と銀角は腹いせに何をしでかすか分からない、思案していたエコーは何かを閃くと、
(孫悟空・・・そうだわ!なぎささんは孫悟空に扮していたし、事情を話せば、銀角を引き留めてくれるかも知れない・・・)
エコーは両手を組んで精神を集中させると、仲間達に思いを伝えた・・・
2、サニーを救え!
ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディの下に駆けつけたブラック、ホワイト、ルミナスの三人、現状をブライト、ウィンディから聞いたブラック、ホワイト、ルミナス、ルミナスは、ブルーム達四人に加わり、狼達の攻撃をハーティエルアンクションで止めるや、
「ブラック!ホワイト!今の内に・・・」
「分かった・・・そうと決れば!ホワイト!!」
「ええ、無益な争いは避けたいものね・・・」
頷き合ったブラックとホワイトは、
「ブラック・パルサー!」
「ホワイトパルサー!」
「闇の呪縛に囚われし者たちよ!」
ホワイトが叫び・・・
「今、その鎖を断ち切らん!」
ブラックが応える・・・
「「プリキュア!レインボー・セラピー!!」」
ブラック、ホワイトから発せられた、半球形の虹のオーラが広がり、狼の群れを飲み込んで行った。
二人の放ったレインボーセラピーから逃れようとするかのように、狼達から影のような物体が抜けるや、両肩に付いて居た黒い翼は消え去り、狼達はキョトンとした表情を浮かべ、まるで吸い込まれるように元の絵本へと戻って行った・・・
「良かった!どうやら、狼の出る絵本の話を守れたようだね」
安堵の表情を浮かべるブルームに、ブラックとホワイトも微笑み返した。その時、
「やいやいやい、孫悟空!何処に居やがる?この銀角様が怖いのか!?」
上空から雲に乗った銀角が、孫悟空を捜し回る声が響き渡り、ブラック達は呆然と上空を見上げた。
「な、何、あれ!?」
「銀角って名乗ってたわね・・・って事は、西遊記に出てくる銀角大王って事!?」
ブルームが呆気に取られ、ホワイトが銀角と名乗った事で、一同は西遊記に出てきた銀角大王だと悟った。そんな一同の心に、エコーの声が響き渡った・・・
(みんな、私達六人は、西遊記に出てくる牛魔王、金角、銀角に追われていた少女を保護したんですが、サニーが、金角の持って居た瓢箪に吸い込まれてしまいました。更に、この世界の孫悟空は、彼らより強いと言った所、怒った銀角が、孫悟空と戦うと会場中を飛び回っているんです・・・銀角を引き留め、サニーを救出するまでの時間を稼いで貰えませんか?お願いします!この会場での孫悟空・・・なぎささん!!)
「エェェ!?わ、私?」
「確かに、ブラックは孫悟空役をやってたけど・・・」
エコーに指名され困惑するブラックと、心配そうにブラックを見つめるホワイト、ブライトとウィンディは顔を見合わせ合うと、
「確かに、サニーを救うには、敵の戦力を分散させた方が良いわね・・・」
「銀角!あなたのお探しの孫悟空なら・・・此処に居るわ!!」
ウィンディがブラックを指さすと、呼ばれた銀角も、指を指されたブラックも驚愕し、銀角は雲から飛び降り地上に降り立つや、ブラックの顔をジッと見つめ、
「成る程・・・確かに猿面をしている」
「ハァ!?何かスッゴク腹立つんですけどぉぉ!!」
「事実だからしょうがないメポ」
「やかましい!!」
メップルにからかわれ、変顔浮かべたブラックがメップルを睨み付ける。銀角は、腕をバシバシ叩き、四股を踏みながら、
「さあ、山を打ち消すとかいう、かめはめ波とやらを・・・俺に放って見ろ!」
「そんな技出来るかぁぁぁぁ!!」
銀角に猿呼ばわりされ、変顔を浮かべながらご立腹なブラック、更にピースの言葉を信じ、かめはめ波を放って見ろと言われ困惑する。
「そんな訳の分からない事をあいつに教えたのは・・・ピースね!」
「あの子しか居ないわね」
共に顔を見合わせ頷き合うブライトとウィンディに、ホワイト、ルミナス、ブルーム、イーグレットは苦笑を浮かべ、ブルームは、
「ブライト、ウィンディ、私もそうだとは思うけど、そこまで断言しなくても・・・」
「そこは認めるのね・・・」
ピースをフォローしつつも、自分もそう思っているブルームを見て、イーグレットが苦笑混じりに呟く、
「エェイ、ゴチャゴチャ抜かしやがって・・・だったら、こちらからおみまいしてやる!!」
銀角は両手の人差し指を合わせ、何か呪文を唱えると、側にあったベンチ、ゴミ箱、自動販売機、遊戯道具が宙に浮かび上がり、建物が今にも浮かび上がりそうに激しく軋み始めた。
「さあ、我が術を受けて見ろ!孫悟空!!」
「黙って聞いてれば・・・頭きたぁぁぁ!!」
ブラック目掛け次々襲ってくるベンチ、ゴミ箱等をものともせず、まるで見切っているかのように躱し続け、雄叫び上げたブラックが、素早く銀角の懐に潜り込み、その素早い動きに、思わず銀角はギョッとした。口元に笑みを浮かべたブラックは、
「今度はこっちの番!ダダダダダダ・・・・ダァァァ!!」
怒濤のパンチの連打を銀角に放ち、堪らず銀角が吹き飛んだ。倒れ込んだ銀角の上に、先程宙に浮かべた物体が、ものの見事に銀角の頭に次々ヒットしていった。銀角はその都度「イテェ」と声を発し、その場に再び倒れ込み、
「参った!流石はこの時代の孫悟空・・・」
銀角は、何処から取りだしたのか、白旗振ってブラックに参ったと降参した。ブラックは、意外と呆気なく勝負が付いた事に驚きつつも、
「だから違うわよ!まあ良いや・・・さあ、私が勝ったんだから、サニーを元に戻して!!」
「それは、兄者の金角がした事だし・・・」
「だったら、私達をそこに案内しなさい!!」
ブラックとブルームに両手を掴まれた銀角が、トホホ顔で連行されながら一同を金角の下へと連れて行った・・・
鬼達と戦って居たドリーム達の下にも、サニーが瓢箪に吸収された事は伝わっていた。ミントは顔色を変え、仲間達に伝えるように、
「みんな、あの瓢箪の中に居ると、ジワジワ身体が溶け始める筈・・・長引けば長引く程、サニーの身が危険だわ!」
「エェ!?サニーの服が溶けちゃうんですかぁ?」
「ありゃりゃ、後で縫って上げなきゃ駄目かなコリャ?」
「レモネード、マリン・・・服だけならまだマシだけど、身体が溶けるって今ミントが言ってたでしょう」
少し呆れ顔で二人を見たアクアが注意し、仲間の危機に、ドリームの表情がキッと鋭さを増した。
「そこを退いて!プリキュア!シューティングスター!!」
色とりどりの鬼の群れに、シューティングスターで突っ込んだドリーム、次々吹き飛ばされた鬼達が倒れ込む。
「ブロッサム、マリン、サンシャイン、今よ!!」
「ハイ!マリン、サンシャイン、行きますよ!!」
「ヨッシャァ!」
「分かった!」
ドリームの合図を受けた三人は、ブロッサムタクト、マリンタクト、シャイニータンバリンを取りだし、
「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェ~イブ!!」
「花よ、煌け!プリキュア!ブルーフォルテウェ~イブ!!」
「花よ、舞い踊れ!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」
三人の放った必殺技が、次々と鬼達に取り憑いた影を引き剥がしていった。黒い翼が抜け、我に返った鬼達は呆然としながら、
「アレェ!?俺達は鬼ヶ島に居た筈でガンス?」
「一寸法師が中々現われず、イライラしてた事までは覚えてるんだが・・・」
何故自分達がこんな場所に居るのか、鬼達は不思議そうに小首を傾げ、皆元の絵本に吸い込まれるように消えて行った・・・
「鬼達・・・やっぱり誰かに操られてたんでしょうか?」
「今の様子を見た限り、その可能性が高いわね!」
レモネードの問い掛けに、ミントが頷く、まだ表情を緩めないドリームは、一同を促し、
「さあ、私達もハッピー達の援護に向かおう!」
ドリーム達とブロッサム達も、サニー救出の手助けをする為、ハッピー達の下へと駆け出した・・・
「「凄ぉぉぉぉい!!」」
イベント会場から、少し離れた場所に避難していたまりあ達一同だったが、ドリーム達とブロッサム達の活躍で、騒動が沈静化したのを見るや、めぐみと真央は急いで駆け寄り、すれ違い様にドリーム達とブロッサム達の勇姿を見て、二人は目を輝かせて居た。
「プリキュアって・・・本当に居たんだな?」
「エッ!?そ、そう見たいね・・・」
ポツリと誠司が呟くと、いおなはドキッとした表情を浮かべた。いおなの不自然な様子を見たゆうこは、
「どうしたの、いおなちゃん!?何か変だよ?」
「べ、べ、別にぃぃ!?」
そう言っていおなは否定するも、誰の目から見ても、いおなの様子はおかしかった。いおなは、縋るような目をまりあに向けると、まりあはそんないおなを見てクスリと微笑み、
「フフフ、隠してた訳じゃ無いけれど、私達の先祖に・・・プリキュアが居たって聞いていたから、実際本当に居たのを知って、いおなも驚いているのよ」
「エェェ!?いおなちゃんとまりあさん・・・プリキュアの子孫何ですか?」
「凄ぉぉぉい」
ゆうことめぐみが目を見開いて驚き、誠司と真央も驚いているようだった。まりあは再びクスリと笑むと、
「さあ!?私にも真偽の程は私にも分からないわ!千年前の話だそうだし・・・」
「「「千年前!?」」」
「ええ、私達の先祖は、昔ぴかりヶ丘神社に使えていたの・・・千年前、この世に厄が巻き起こり、人々は嘆き悲しんだそうなの・・・人々の平和への願いを聞き入れたかのように、ぴかりヶ丘神社に神様が降臨し、巫女にプリキュアの力を与えたそうよ!その巫女と神様が恋に落ち、巫女は子を宿したとか・・・でも巫女は、子を産んだ後行方知れずになり、巫女の妹がその子を娘として育てた。それが、私達の先祖・・・って事だけど、こればかりは私も本気にしてなかったんだけど、いおなはすっかり信じてて・・・」
「も、もう、お姉ちゃん!何もみんなの前で・・・」
益々動揺するいおなを見て、一同はクスリと笑い合った。
巨人の分身達の攻撃を、巧みに躱していたピーチ達四人であったが、サニーのピンチを知るや、攻撃に転じた。ピーチがパンチを中心にすれば、ベリーはキックを、パインは攻撃を受け止め、隙を見付けるや反撃に転じ、パッションはその素早い動きで翻弄していった。
(あれがプリキュアの力!?四人とも・・・凄い!)
マナは目を輝かせながら、四人の戦い振りを見つめていた。四人はまるでタイミングを合わせるかのように、ピーチロッド、ベリーソード、パインフルート、パッションハーブを取り出すと、
「「「悪いの、悪いの、飛んでいけ!」」」
「プリキュア!ラブサンシャイン・・・」
「プリキュア!エスポワールシャワー・・・」
「プリキュア!ヒーリングプレアー・・・」
「「「フレ~~ッシュ!!」」」
「吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!!」
四人のプリキュアから放たれた必殺技が、巨人の分身達を浄化する。まるで浄化されるのを喜んでいるような分身達を見て、マナ、六花、ありすは驚愕した。
「ねぇ、ねぇ、六花、ありす、見た?」
「エエ・・・あれがプリキュアの力!?」
「暖かな光に包まれ、あの巨人の分身さんも、満足気でしたわ」
だが、本体である巨人はまだ残って居る・・・
四人のプリキュアは、あの巨人を相手にどう戦おうとするのだろうか?三人は更に興味深げにピーチ達に視線を向けた。
「ベリー、パイン、パッション、こんな所でモタモタしてられない・・・一気に行くよ!!」
「OK!」
「ウン!サニーが心配だもんね」
「何時でも良いわよ!!」
ピーチの合図に、ベリー、パイン、パッションが何時でもOKだと返事を返す。ピーチは頷くと、
「クローバーボックスよ、私達に力を貸して!!!」
ピーチの合図に応えるかのように、タルトが持って居たクローバーボックスの蓋が開き、ピーチ、ベリー、パイン、パッションのリンクルンが光輝いた。
「プリキュアフォーメーション!レディー・・・ゴー!!」
ピーチの合図で、巨人目掛け走り出した四人を見て、マナ、六花、ありすが、驚愕の表情を浮かべる。
「ハピネスリーフ!セット!パイン!!」
パッションから始まったハピネスリーフ、パッションはパインに投げると、
「プラスワン!プレアリーフ!ベリー!!」
受け取ったパインが、プレアリーフをセットしベリーに投げる。
「プラスワン!エスポワールリーフ!ピーチ!!」
受けたベリーが、エスポワールリーフをセットし、ピーチに思いを託し投げる。
「プラスワン!ラブリーリーフ!!」
受け取ったピーチは、ラブリーリーフをセットし、四つ葉のクローバーマークを完成させる。ピーチが四つ葉のクローバーマークを投げると、それは巨大化し、四人はそれぞれのマークの上に乗って、クローバーの中心部に居る巨人の上で下降し、巨人を巨大な水晶の中に閉じ込めた。
「何アレェ!?・・・凄い!」
思わず見とれていたマナがポツリと呟いた。
「「「「ラッキークローバー!グランドフィナーレ!!」」」」
ラッキークローバーグランドフィナーレは、巨人を光の輝きの中で包み込んだ!!
「シュワシュワシュワァァ・・・」
巨人は幸せそうな笑みを浮かべ、巨人に取り憑いていた影が浄化された。黒い翼が抜け我に返った巨人は、不思議そうに辺りをキョロキョロ見回し、
「ハテ!?ご主人様の姿が見当たらぬようだが・・・」
巨人は不思議そうに小首を傾げながら、元の絵本へと消えて行った・・・
マナはキラキラ目を輝かせながら、四人のプリキュアの勇姿を見つめ、
「六花、ありす、約束通りプリキュアが、巨人さんを元に戻してくれたよ!」
「信じられないけど・・・目の前で見せられたら、信じるしか無いわね!」
目の前で起こった不可思議な出来事ながら、六花も自分の目で見たからには、真実だと認めるしかないと苦笑混じりにマナに返事を返す。ありすは、不思議そうに小首を傾げると、
「でも、何故プリキュアがこの会場に現われたのでしょう?」
「「さぁ!?」」
ありすの問い掛けに、思わず顔を見合わせたマナと六花は、小首を傾げた。ピーチ、ベリー、パイン、パッションの四人は、マナ、六花、ありすに軽く手を上げ、サニー救出の援護に、ハッピー達の下へと向かった・・・
「マハルカタンダフーランバ!」
魔女の魔法によって、メロディとリズムは身体が離れなくなり苦戦していた。ビート、ミューズは、メロディとリズムに魔法を掛けた魔女を、先ず浄化しようと試みるも、他の魔女達の魔法の集中攻撃を受け、安易に近付く事が出来なかった・・・
「不味いわねぇ・・・これじゃメロディとリズムを元に戻せないわ」
「うん!何とか隙を作らないと・・・」
再び距離を取った二人、ビートは走りながらラブギターロッドを取りだし、ミューズは大きくジャンプすると、
「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリングシャワー!!」
ミューズは魔女達目掛けスパークリングシャワーを放ったものの、宙にジャンプした事で、魔女達はミューズに狙いを定めた。
「ミューズ!!」
気付いたビートがミューズの援護に向かおうとするも、魔女の魔法で現われたライオン、案山子、ブリキ男が立ち塞がった。
「あれは、オズの魔法使いの・・・メロディ、何とか起き上がらないと二人が」
「そうだけど・・・上手くバランスが取れないよぉ」
ヨロヨロ立ち上がろうとするメロディとリズムだったが、嘲笑うように一人の魔女が二人の背中をチョンと押すと、二人は悲鳴を上げながら再び倒れ込んだ。
「もう、折角立ち上がったのにぃぃ!」
頬を大きく膨らませ、魔女を恨めしげに見つめるメロディ、ハミィとピーちゃんはハァと溜息を付いた。
宙に飛んだ事で、魔女達の魔法攻撃を回避出来ず、ミューズも魔法の餌食になるかと思われたその時、マントを羽織ったムーンライトが急接近し、ミューズの右手を引っ張り、魔女達からの魔法攻撃を回避させるや、瞬時にムーンタクトを取り出し、
「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェ~~イブ!!」
ムーンライトのシルバーフォルテウェイブが、魔女達目掛け飛ぶ、その中には、メロディとリズムに魔法を掛けた、ふくよかな魔女も含まれていた。
「ハァァァァァ!!」
ムーンライトはタクトをクルクル回し、フォルテウェイブの攻撃を受けた魔女達から、黒い翼が飛び出ていった。
「アレェ!?身体が離れられるよ!」
「ムーンライトが、私達に魔法を掛けた魔女を浄化してくれた事で、私達に掛けられていた魔法の効果が解けたのね!」
ムーンライトの出現に、ホッと安堵の表情を浮かべたビート、助けられたメロディ、リズム、ミューズがムーンライトに笑みを浮かべ、
「「「ありがとう!」」」
「どう致しまして!さあ、残りの魔女達を元に戻し、サニー救出に向かうわよ!!」
「「「「ハイ!!」」」」
集結したメロディ、リズム、ビート、ミューズ、そしてムーンライト、メロディはミラクルベルティエを、リズムはファンタスティクベルティエを取りだし、ビートは、ラブギターロッドをソウルロッドへと変化させる。
「「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ミュージックロンド!!」」
メロディとリズム、二人は呼吸を計ったかのように、互いにミュージックロンドを放ち、オズの魔法使いに出てきた、北の魔女グリンダ、西の魔女ミス・ガルチに取り憑いた黒い影を浄化した。
「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・ロック!!」
「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリングシャワー!!」
「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェ~~イブ!!」
そして、ビート、ミューズ、ムーンライトの三人が、案山子、ブリキ男、ライオンに取り憑いた黒い影を浄化すると、浄化された一同は、一体何が起こったのかとでも言いたげに、辺りを見回しキョトンとし、それぞれ自分の作品へと戻って行った・・・
「さあ、私達も行きましょう!!」
ムーンライトに促され、メロディ、リズム、ビート、ミューズの四人も、ハッピー達の下へと急ぎ駆け出した・・・
一方、瓢箪に吸収されたサニーは・・・
「何や、エライ酒臭い所やなぁ・・・」
薄暗い中、足下には水が溜まり、酒の匂いが充満していた。サニーは鼻を摘みながら、さてどうしたものかと思案をする。
(瓢箪に吸い込まれ、蓋をされたっちゅう事は・・・何とか蓋を取らせなアカンちゅう事やな)
サニーは、何とか上に這い上がろうとするも、濡れた壁に触れた手はベトベトし、ぬかるんでいる足下は滑りやすく、直ぐに足を滑らせ、元の場所まで戻ってしまう状況に困惑する。
「みんなぁ、何とか蓋を開けさせてやぁ!」
サニーはハッピー達仲間を信じ、一瞬のチャンスに掛けようと、無駄な体力を使うのを止めた・・・
牛魔王に立ち向かうのはマーチ、ビューティの二人、サニーを救おうと金角と対峙するのは、ハッピー、ピース、エコーの三人であったが・・・
「どうだ!?芭蕉扇の威力は凄まじいだろう?ガハハハハハ」
芭蕉扇に絶対の自信を持っている牛魔王が、ドヤ顔で高笑いを浮かべる。髪を激しく揺らしながら、苦悶の表情を浮かべるマーチとビューティ、
「私は・・・風の力を受けたプリキュア!この風を・・・力に変えてみせる!!」
マーチは目を閉じ、風の流れに逆らう事を止めた・・・
マーチの身体が、芭蕉扇の強風で錐揉みしながら上昇する。思わず顔色変え、マーチの手を掴もうとするビューティであったが、
「ビューティ、大丈夫!この風の流れ・・・分かった!!」
マーチは目をカッと見開くと、強風はマーチの周りを、グルグル渦を巻くように上昇していった。牛魔王は呆気に取られ、
「何だ!?あいつは何故芭蕉扇で吹き飛ばないんだ?この野郎!!」
牛魔王は顔色変え、力任せに何度も芭蕉扇を振るも、風はマーチを吹き飛ばすことが出来無かった。逆に、風はマーチに力を与えるかのように、マーチの周りをグルグル渦巻く。
「ビューティ!力を貸して!!」
「分かりました!」
マーチの側に来たビューティ、二人はチラリと互いを見て笑みを浮かべ合った。共に並び立った両者は、
「プリキュア!マーチシュート・・・」
「プリキュア!ビューティブリザード・・・」
「「ストリ~~ムゥゥ!!」」
風を纏ったマーチの蹴りが、冷気をマーチシュートに乗せたビューティの技が、牛魔王目掛け二人の合体技が炸裂する。凄まじい暴風は冷気を纏い、まさにブリザードとなって、驚愕の表情を浮かべた牛魔王の身体を、徐々に凍らせて行った・・・
「なっ、何ぃぃ!?牛の兄貴が?」
牛魔王が凍り漬けにされ、金角から先程までの余裕が消えていた。ピースは再びドヤ顔を浮かべると、
「フフフゥン!私達の強さが分かった?さあ、サニーを返してぇ!!」
「まだ負けた訳じゃ無ぇ!!エェッと、所で、お前の名前は何だっけ?」
金角は、探りを入れるようにピースの名前を聞き出そうとするも、ピースは、金角のバレバレの行為に思わず吹き出し、
「フフフ・・・良いよ、教えて上げる!私の名前は・・・太陽マンレディー!!」
ピースは偽名を使い、金角をからかおうとしたものの、金角はニヤリとすると、
「そうか・・・オイ!太陽マンレディー!!」
「なぁにぃ?何ちゃってぇ・・・エッ!?」
「ピース!駄目ぇぇぇぇ!!」
返事をしたピースを、顔色変えたハッピーが止めようとしたものの、偽名の筈なのに、何故か返事をしたピースは、瓢箪の中へと吸い込まれていた・・・
「オッ!瓢箪の蓋が開いた!!ハッピー達がやってくれたようやな・・・ヨッシャァ!!」
足下に力を蓄えたサニーが、光目掛けジャンプをするも、吸い込まれてきたピースと頭と頭で激突し、共に下まで落下して行った・・・
「イタタタタ・・・な、何でピースまで!?」
「エェェン!私にも良く分からないよぉぉ?」
呆然と、新たに吸い込まれてきたピースを見て困惑するサニーと、偽名の筈なのに吸い込まれたピースは、訳が分からず涙目になる。
「孫悟空のお話でも、孫悟空は偽名を使って、孫悟空の弟、空悟孫と偽名を名乗ったんだけど、例え偽名であっても、その名前を呼ばれて返事をしちゃうと、あの瓢箪に吸い込まれちゃうの!」
「エェェ!?そうだったの?じゃあ、ピースが吸い込まれたのは・・・」
「うん、太陽マンレディーと呼ばれて、返事をしちゃったから・・・」
困惑しながら、孫悟空の話をエコーに聞かせたハッピー、マーチとビューティも合流し、どうすべきか思案するも、金角は瓢箪を揺すり、
「さあ、牛の兄貴を元通りにしろ!そして、ニコを俺達に差し出して降参しろ!!そうすれば、仲間を返してやっても良いぞ?さあ、早くしないと、中の二人が溶けちまうぜ?」
形勢逆転!!
逆に金角に追い詰められたハッピー、マーチ、ビューティ、エコー、このまま二人を見殺しにする事など絶対出来ない!
だが、かといってニコと呼ばれた背後で保護している少女を、金角に渡せる筈も無かった・・・
(どうせ、私の事を忘れてたみゆきだもの・・・私を差し出すに決ってる!!)
背後に居たニコは、ハッピーの背を悲しげに見つめた。苦悩の表情を浮かべるハッピー達だったが、
「ニコちゃんは・・・絶対渡さない!!」
「!?」
ハッピーの宣言にも似た言葉に、思わずニコはハッとし、少し顔を動かしハッピーの顔を見た。それは、苦渋に満ちた悲しげな顔だった・・・
「ほう・・・なら、仲間を見殺しにするって言うんだな?」
「違う!サニーも、ピースも、必ず助けてみせるよ!!」
ハッピーの言葉を表すように、マーチ、ビューティ、エコーが、金角に身構えたその時、四人の視線の先に、ピンクの流星が急降下してくるのが見え、思わず顔が綻んだ。
「あんたの言う事何か・・・聞かないんだからぁぁ!!」
ドリームは、シューティングスターで背後から金角に突っ込んだ。金角はその威力の前に吹き飛び、思わず瓢箪を手放してしまった。
「しまった!?」
慌てて瓢箪を追おうとする金角だったが、その先には腕組みしたピーチ、右手を腰に当てたベリー、引き攣りながらも金角を睨むパインが鋭い視線を向け、パッションは卑怯な手を使った金角を、蔑みの目で見つめる。
空中に吹き飛んだ瓢箪を、加勢に来たメロディが、ハイジャンプをしてキャッチした。更にルージュ達、ブロッサム達、リズム達、ムーンライトと続々加勢に現われ、ハッピー達の目が輝いた。
「みんなぁぁ!!」
瓢箪をキャッチしたメロディが、ハッピー達に親指立ててウインクし、金角を見つめるや、
「サニーを返して貰うよ!!」
「アァ!?それは俺のだぞ!返せぇぇ!!」
金角にアカンベェをするメロディを見て、金角が悔しそうに地団駄踏む。金角は、縄のような物を取り出すと、
「行け!幌金縄(こうきんじょう)!!」
まるで縄は生きているかのように宙を飛び、メロディの身体を縛り付けた。たまらずメロディは持って居た瓢箪を落としてしまい、メロディは亀甲縛りのように縛られ、地上で悶える。
「キャァァァ!な、何て縛り方するのよぉぉぉ!?」
顔を真っ赤にしたメロディは、縄に食い込まれ悲鳴を上げ、
「イヤァァン・・・リズムゥ!ビートォ!ミューズゥ!みんなぁ!お願い、何とかしてぇぇ!!」
羞恥心に耐えながら、悩ましげな声を出すメロディに哀願され、咄嗟にリズム、ビート、ミューズ、ピーチ、ベリー、パイン、パッション、マリンが力任せに縄を引っ張り取ろうとするも、縄は簡単に解けることは無かった。
「アァァン!お願ぁい、早く取ってぇぇ!!」
「そう言われても・・・無理矢理取ろうとすると、縄が益々メロディに食い込んじゃうもの・・・」
どうしたものかと困惑の表情を浮かべるリズム、マリンはポンと手を叩くと、
「そうだ!・・・少しリラックスした方が良いんじゃないの?」
「ちょっと、マリン!ドサクサに紛れてぇ・・・アハハハ!止めてぇぇ!!」
マリンにくすぐられ、益々身悶えるメロディ、マリンの作戦が功を制したか、ただの偶然か、リズム達は何とか幌金縄をメロディから取り除くと、金角は再び何か呪文を唱え、幌金縄を呼び戻し、瓢箪を取り返した。
「あれは・・・西遊記のお話しに出てきた幌金縄なの?」
「アァン・・・後もうちょっとでサニーを救えそうだったのにぃぃ」
「惜しかったですねぇ・・・」
「後一歩だったんですが・・・」
ミントが現実に見た幌金縄に驚き、ドリームはあと一息だったのにと悔しがり、レモネードとブロッサムも同意した。ハッピーは申し訳無さそうにしながら、加勢に来てくれた仲間達に、
「あのぅ・・・サニーだけじゃなく、ピースも吸い込まれてしまったんですが・・・」
「エッ!?」
状況が飲み込めず、何故ピースまで吸い込まれたのか理解出来ず、驚きの声を発する一同、次々と加勢に現われたプリキュア達も、この状況に途方に暮れた。
「とにかく、サニーとピースを助ける事が先決ね!」
サニーだけでは無く、ピースまでも瓢箪の中に捕らわれている現実を、どうにかする事が先決だと訴えるムーンライトに、アクア、ミントも同意し、
「ええ・・・金角、もう勝負は付いたわ!おとなしくサニーとピースを解放して!!」
「私達、何もあなた達を倒す事が目的じゃないもの・・・話し合えば分かり合える筈よ!」
アクアとミントは金角に対し、金角達を倒す事が目的ではないから、サニーとピースを解放してくれるなら、喜んで話し合いに応じると訴えるも、
「そんな話信じられるか!現にお前らは、ニコを匿ってるじゃねぇか!!」
「エッ!?だってあなた達が、ニコちゃんを虐めてるから・・・」
困惑気味にハッピーは、それは牛魔王、金角、銀角がニコを虐めていたからだと言うも、金角は顔を真っ赤にして怒り出し、
「ふざけるなぁ!俺達の絵本の世界を滅茶苦茶にしたのは・・・そのニコ何だぞ!!」
「エッ!?」
ニコを指差した金角の叫びに、プリキュア達は呆然としながらニコを見つめた・・・
3、絵本の世界へ!!
ニコにとって、不味い状況になって来た事に、黒い影はイライラしたように、
「全く、邪魔な奴らカゲェ・・・」
黒い影は、分身を何かの本に取り憑かせると、本から巨大な船が現われ、空に浮かび上がった・・・
「お前らの言葉何か信じられねぇよ・・・牛の兄貴を元に戻さないなら、此奴らを酒のエキスに変えてやらぁ!!」
「金角、止めてぇぇぇ!!」
瓢箪を思い切り揺すり始めた金角を見て、ハッピーを始めとしたプリキュア達が悲鳴を上げたその時、
「コラ!金角!!」
「何だ!?・・・ゲェェェ!!」
背後から名前を呼ばれ、思わず返事をした金角の身体が、凄まじい吸引力で吸い込まれて行った。金角の持って居た瓢箪はその場に落ち、慌ててハッピー達は、金角が吸い込まれた先に視線を向けると、そこには巨大な瓢箪を二人で持った、ブラックとブルームがニンマリしていた。二人は、吸い込まれた金角を見て蓋をし、
「兄者ぁぁぁ!!」
自分が持って居た瓢箪に吸い込まれた金角を見て、ブライトとウィンディに身体を押さえられていた銀角が悲鳴を上げた。
「ブラック!ブルーム!みんなぁぁ!!」
「みんな、お待たせぇぇ!どうやら間に合ったようだね!!」
一同は、現われたブラック達7人と、捕らえられた銀角を見てホッと安堵の表情を浮かべた。銀角は心から観念したように、その場にヘナヘナへたり込むと、
「参った・・・お願いだぁ!兄者と牛の兄貴を元に戻してくれぇぇ!!」
「うん、良いよ!その代り、サニーもちゃんと助ける事!!」
「ハイ・・・」
あっさりブラック達は銀角の言葉を受け入れ、サニーも助ける事を条件に、両者の和解は成立した。
「ヨッシャァ!流石プリキュアのみんなやぁ!!」
「あのぅ・・・私も居るんですけどぉぉ!?」
瓢箪の中で、無事に出れそうだと知り、ガッツポーズを浮かべるサニー、自分の存在が忘れられていそうなピースは、涙目になりながら不安そうにポツリと呟いた・・・
瓢箪から救出されたサニーとピース、共に服も溶けて無さそうで、安堵の表情を浮かべ、二人から放たれる酒の匂いに、一同は苦笑を浮かべるのだった・・・
今度は、金角が捕らわれた瓢箪の蓋を開け、金角を解放する。銀角が金角の無事な姿に安堵の表情を浮かべるも、金角はムッとした表情で銀角を睨み付け、
「銀角、何故こんな奴らと手打ちしやがった!俺は認めねぇぞ!!」
「でも兄者・・・」
金角は、プリキュアと和解した事を認めないと吠え、銀角、プリキュア達を困惑させる中、
「銀角の言う通りだ!金角、俺達は負けた・・・此処は勝者の言う通りにするしかねぇ!!」
「「牛の兄貴!!」」
ルージュのファイヤーストライク、サニーのサニーファイヤーで氷付けから解放された牛魔王、流石に兄貴分だけあり、自分達の負けをあっさり認め、プリキュアからの和解提案を受け入れた。
「さあ、煮るなり焼くなり好きにしろ!!」
その場に胡座をかいて座り込んだ牛魔王に習い、金角と銀角もその場で胡座をかいた。その潔い行ないに苦笑を浮かべた一同、代表するようにブラック、ホワイト、ムーンライトが三人に近づき話し掛けた。
「別に私達、あんた達をどうこうしようとは思ってないわよ」
「それより、私達に詳しい事を教えて!!」
「本当にあの子が・・・絵本の世界を滅茶苦茶にしたの?」
ブラック、ホワイト、ムーンライトは、そう話し掛けると、少し離れた所で、ハッピー達に話し掛けられているニコを困惑気味に見つめた。牛魔王達もニコを見つめると、
「ああ、あいつも元々絵本の世界の住人だったようだが、あいつは黒い影を使い、絵本の世界をごちゃ混ぜにしやがった!」
「「「ごちゃ混ぜ!?」」」
牛魔王の告白に、思わずハモって驚くブラック、ホワイト、ムーンライトの三人、牛魔王、金角、銀角は頷きながら言葉を続け、
「本来、同じ絵本の世界であっても、俺達の話と、他の話の作品が交わる事は無い!」
「だがニコは、黒い影を操り、物語を滅茶滅茶にした為、物語の主人公達が現われず、俺達も途方に暮れていたって訳だ!!」
「それだけでは無く、絵本の世界の住人を、お前達の世界にまで来させ、暴れさせ始めやがった。幸い、俺達は影に操られる前に異変に気付き、何とか難を逃れたが、滅茶滅茶になった絵本の世界を元に戻させようと、ニコを追いかけている内に、俺達もこちらの世界に来てしまい・・・」
「今に至るって寸法よ!!」
牛魔王達の話を聞いていた一同の顔色が険しさを増す、だとすれば、絵本の世界だけではなく、この世界絵本博覧会をも滅茶苦茶にしたのは、あそこに居るニコだと言うのだろうか?戸惑う一同の耳に、突然ニコの叫び声が響き渡った・・・
「キャァァァァ!!」
投げ縄に捕らえられ、ニコの身体が上空に浮かび上がる。上空を見上げた一同の視線に、巨大な海賊船が姿を現わした。海賊船から次々投げ縄が投げられ、プリキュア達は巧みに躱し続けたものの、
「離すクルゥゥ!!」
投げ縄は、キャンディ、ハミィ、フェアリートーン達、シフォン、シロップの妖精達をも捕らえ、上空に引き上げた。
「「「「「「キャンディ!!」」」」」」
「「「「ハミィ!フェアリートーン達まで!!」」」」
「「「「シフォン!!」」」」
「「「「「「シロップゥゥ」」」」」」
ハッピー達、メロディ達、ピーチ達、そして、ドリーム達が浚われた妖精達の名を叫ぶ、直ぐに奪還に向かおうとする一同に対し、海賊船は爆弾の雨霰を降らし、一同は避ける事に必死で、海賊船に近付く事が出来なかった。
「アァハハハハハ!大量、大量、野郎共!さあ、戻るぞ!!」
海賊船からは、プリキュア達を嘲笑うように笑い声が響き渡り、徐々に縮小して絵本の中へと消えようとしていた。その直ぐ後を、ピーちゃんが猛スピードで追跡し、海賊船と共に消え失せた。
「そんなぁ・・・キャンディ、ニコちゃん、みんなぁ・・・」
「ピーちゃん・・・みんなをお願い!!」
ハッピーが、ビートが、不安混じりにポツリと呟き、呆然と消え去った海賊船を見つめ、プリキュア達は、浚われた妖精達の身を案じた・・・
「エライコッチャでぇ・・・」
パニクり、あたふたするタルトを抱き上げたピーチは、
「行こう、みんな!浚われたみんなを助けに!!」
「でも、私達には絵本の世界に行く手段が・・・」
意を決したピーチは、一同に呼び掛け、浚われた妖精達を救いに向かおうと告げるも、困惑気味のミントは、絵本の世界に向かう手段が、自分達には無い事を悲しげな表情で告げた。だがマリンは、パッションの背を押し、一同の前に連れ出すと、
「チッチッチ!あたしらにはパッションが居るじゃない!!」
ベリーは、閃いたマリンの頭を撫でながらパッションを見ると、
「そうだわ!パッションお願い!!」
「分かったわ・・・絵本の世界へ!!」
パッションは頷き、アカルンを呼び出すと、みんなを絵本の世界へ連れて行くように頼むも、アカルンの輝きが起こる事は無かった・・・
「駄目だわ・・・この前のバッドエンド王国のように、何かの結界が張られていて、アカルンでも近づけないみたい」
今の自分達では、キャンディ達が浚われた絵本の世界に行く手段が無い事に、沈黙するプリキュア達・・・
腕組みした牛魔王、瓢箪を担ぎ尚した金角、銀角は、
「それは俺達に任せて貰おうか!」
「最も、俺達にも何処に飛ばされるかまでは分からねぇが、お前達を絵本の世界に連れて行く事ぐらい朝飯前だ!!」
牛魔王と金角の言葉を聞き、パッと表情が輝くプリキュア達は、三人を見つめ、銀角は念を押すように、
「どうする!?俺達と絵本の世界に行くか?」
「当たり前!牛魔王!金角!銀角!お願い、私達を連れて行って!!」
一同を代表するようにブラックが三人に頼み、牛魔王達三人は頷き返した。
「じゃあ、その本の前に並びな!金角、銀角、先頭はお前達が務めろ・・・行くぜぇぇ!!」
牛魔王は、芭蕉扇をプリキュア達目掛け一振りすると、一同は芭蕉扇に煽られ、次々と絵本の中へと消えて行った。最後に牛魔王も絵本に飛び込むと、絵本は輝きを失った。
「全く、また邪魔者が来るカゲェ・・・」
影もまた不愉快そうに絵本の中へと飛び込むと、ハッピー達がニコ達の映像を見て居たテントが消え去り、空き地に変わった・・・
「キャァァァァァ!!」
プリキュア達は悲鳴を上げ、グルグル回転しながら、まるで異空間のような不思議な世界を何度も潜り抜けていった。その都度、数人の仲間達とはぐれ、一同は散り散りに散って行った・・・
第六十七話:プリキュアVS絵本のキャラクター達!
完
ドキとハピの設定は本編と変えてます!
パラレルの一つとでも思って読んで下さいませ・・・