プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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 過去の世界から戻って来たなぎさだったが、家に連絡を入れなかった事で、今月のお小遣い無しを言い渡されて・・・

 七章が長くなったので、絵本の世界編を八章と致します・・・
 尚、八章でとあるキャラ達が出てきますが、あくまでゲストです!


第八章:絵本の世界の冒険!
第六十四話:なぎさのアルバイト


                 プロローグ

 

 魔界・・・

 

 それは人々の想像を超えた不気味な世界・・・

 

 森が蠢き、大地は荒廃し、漆黒の海が、川が、湖がある世界・・・

 

 昆虫、動物、植物、神獣、果ては異形な形態をした様々な生き物が蠢き、常に争いが絶えず、不気味な声が響き渡る世界・・・

 

 だがそんな生き物達が、近付く事を恐れる地があった・・・

 

 天に轟く、不気味な黒き塔を守護するように、塔の周りを円形に囲む十二の魔宮・・・

 

 白羊宮、金牛宮、双児宮、巨蟹宮、獅子宮、処女宮、天秤宮、天蠍宮、人馬宮、磨羯宮、宝瓶宮、双魚宮、これら十二の魔宮は、何処か古代ギリシャの建造物を想像する出で立ちをし、不気味に赤く発光していた・・・

 

 だが、その輝きから一つの光が消えた!!

 

 塔の一階、広々した大広間に集まった四つの影・・・

 

 頭部の左右から二本の大きな角を生やし、下半身は茶色い毛に覆われた屈強な体軀をした古の魔獣・・・磨羯宮を守護するアモン!

 

 バルガンが着ていたような白い軍服を着て、背中まで伸びた金髪を靡かせた目付きの鋭い男・・・双児宮を守護するカイン!

 

 背中まで伸びた銀髪以外、カインと瓜二つの男・・・アベル!

 

 そして、水色の柔らかそうな腰まで伸びる長い髪を靡かせ、白い裸身を包み込む黒いワンピースを着て、右手にハープを持ち、切れ長な目をしたスレンダーな美しき女性・・・天秤宮を守護するシーレイン!

 

 大広間の前に現われし、魔界が誇る十二の魔神の内、四神と呼ばれし者達・・・

 

「十二の魔宮の内、宝瓶宮の光が消えた・・・バルガンが何者かによって倒されたようだな?」

 

「確か・・・何処かの地に封印されて居た恥知らずな三人、その三人を預かっていた、ジョーカーとか言う者に力を貸していた筈だったな」

 

 アモンの問いに、ディクレ達三人を思い出したアベルが不快そうに答えた。仮にも十二の魔宮の一つを預かる者が、他の世界に出向き、敗北するという事態に苛立っていた。カインはそんなアベルを見るや、口元に笑みを浮かべ、

 

「そう苛立つな、アベル!逆にこれは好機でもある・・・」

 

「好機!?カイン、どういう事かしら?我が王は、違う世界との干渉は嫌っている筈よ!」

 

 笑みすら浮かべながら、この事態を好機と捉えているカインに、シーレインは眉根を曇らせる。カインとアベルは顔を見つめ合うと、

 

「フフフ!そう慌てるな、シーレイン!直に分かる・・・王も此度のバルガンの失態にはお怒りだ!!」

 

「そうだな・・・ハハハハ!!」

 

(アモン、聞こえる!?・・・カインとアベル、相変わらず得体の知れない行動を取るわね?でも、おかしいわ!!私も、アモンも、ここ数ヶ月・・・王の姿を拝見していない!!なのに、何故カインとアベルは王に会えるの!?)

 

 シーレインは、カインとアベルに気付かれぬよう、テレパシーをアモンに送った・・・

 

 アモンはシーレインを見つめると、

 

(シーレインの言う通り、何かが変だ!?我らが王は、カインとアベルを警戒していた筈・・・その王が、シーレインならば兎も角、カインとアベルのみに指示を出す事などあるだろうか?)

 

 シーレイン、そしてアモンの心に、カインとアベルに対し不信感が芽生えていた・・・

 

 

 

1、たこ焼きデビュー

 

 バッドエンド王国との死闘を一先ず終えた一同は、元の生活へと戻って居た・・・

 

 過去の世界から戻って来た、美墨なぎさと雪城ほのか・・・

 

 二人は、過去の世界から戻って来てから、頻繁に妙な夢を見るようになっていた・・・

 

 暗闇の中で、長い黒髪の少女が、自分達に何か訴える夢を・・・

 

 なぎさは寝ぼけ眼のまま、今見た夢をもう一度思い浮かべながら、何故自分がこのような夢を見るようになったのか考える。だが、思い当たる節は無く、なぎさは困惑した。

 

(何処かで会った気はするんだけど、でも、不思議と顔は思い出せないのよねぇ・・・ほのかに話してみようとも思うけど・・・ほのかも忙しいし、不安になるような事は言わない方が良いよねぇ・・・)

 

 思い出せないものはしょうがないと、なぎさはベッドから起き、その枕元にはコミューン姿のメップルが眠り続けていた・・・

 

 

 

 五月中旬の土曜日、TAKO CAFEのテーブルでは、元気の無いなぎさがたこ焼きを頬張りながら、ベローネ学園の先輩である藤田アカネと、後輩九条ひかりを相手に愚痴っていた・・・

 

「ああ、もう最悪かもぉぉ!お小遣い抜きは・・・無いよねぇぇ」

 

 なぎさはそう言うと、たこ焼きを楊枝で刺し、口の中へ放り込みモグモグ食べると、ハァと溜息を付いた。過去の世界に飛ばされ、三週間家に連絡しなかったなぎさは、戻ってから両親にこっぴどく怒られ、母理恵から、今月のお小遣い抜きと言い渡されていた。

 

 アカネとひかりは、顔を見合わせクスリと笑みを浮かべると、なぎさは恨めしそうに二人を見つめ、

 

「何よ、二人共ぉぉ・・・人事だと思ってぇ!」

 

 大きく頬を膨らませるなぎさに、ひかりが近づき謝りながら、

 

「すいません・・・ところでなぎささん、最近ほのかさんいらっしゃいませんね?」

 

 ほのかも、なぎさと共に過去の世界に飛ばされ、エコー、ポルンとルルンの声を聞き、二人はバッドエンド王国との戦いに苦戦する一同の下へと帰って来た!

 

 ほのかの祖母早苗は、まるで全てを悟っているかのように、ほのかの両親にも、ほのかと連絡付かなかった事を伝える事も無く、戻って来たほのかを何時も通り暖かく迎え、普段と変わらぬように接してくれていた。

 

「ほのか!?ほら、ほのかも私と一緒に三週間学校休んでたじゃない!休んでた分を取り戻すって頑張っててさぁ、私も電話で話すぐらい何だよねぇ・・・」

 

 ちょっと寂しそうな表情を浮かべたなぎさが、再びたこ焼きを頬張り、アカネは少し心配そうに、

 

「なぎさぁ、あんたは良いの?」

 

「私!?私は保健体育専攻だし、ほのか程大変な訳じゃ無いんですよねぇ」

 

「成る程ねぇ・・・ところで、お小遣い無しにされたわりには、良く家の店に食べに来るわねぇ?」

 

 小遣い抜きにされたわりには、頻繁にやって来るなぎさに、アカネは小首を傾げながら問うと、なぎさは苦笑を浮かべながら、

 

「いやぁ、付けが利くし・・・」

 

「ちょっと待ったぁぁ!なぎさぁ、家は何時もニコニコ現金払いだからねぇ!!」

 

 そう言うと、アカネはニコニコ笑みを浮かべながら、なぎさに右手を差し出し、代金を支払うように催促すると、なぎさは変顔を浮かべながら、

 

「エェェェェ!?ウゥゥ、可愛い後輩が困ってるのにぃぃ」

 

「それはそれ、これはこれ・・・毎度!!」

 

 渋々たこ焼きの代金を支払ったなぎさに、アカネはニンマリとしながら毎度と言葉を掛けた。なぎさは、財布の中身を見つめながらトホホと呟いた・・・

 

 流石にそんななぎさを見かねたアカネは、店のカウンターの前に置いてある無料の求人誌を手に持つと、なぎさの目の前に置き、

 

「なぎさぁ!あんたも大学生何だから、お金に困ってるなら・・・アルバイトでもしたらどうなのよ?」

 

「バイト!?そうですねぇ・・・TAKO CAFEで雇って貰えればありがたいかなぁ!!」

 

「残念!家にはひかりとアカネさんと云う、二大看板娘が居るから間に合ってるんだわ!!ねぇ、ひかり?」

 

「エッ!?アハハ・・・」

 

 アカネに話を振られ、ひかりは困惑気味に笑って話を誤魔化した。なぎさはアカネを微妙な表情で見つめると、

 

「ひかりはともかく、アカネさんは・・・もう看板娘っていう年じゃないような?」

 

「なぎさぁ!何か言った?」

 

「ううん、何にも!」

 

 そう言うと、慌てて目の前の求人誌を手に取り、パラパラ読み始めるなぎさ、自分が出来そうなのはと捜し始めた。そんななぎさの耳に、聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

「ようやく着いたでぇ!TAKO CAFEやぁぁ!!」

 

 聞き覚えのある関西弁に、背後を振り向いたなぎさは、星空みゆき、日野あかね、黄瀬やよい、緑川なお、青木れいか、坂上あゆみを見付け、思わず笑みを浮かべると、

 

「誰かと思えば、みゆき達じゃない!どうしたの?」

 

「なぎささんも来てたんや!ウチ、前にひかりさんと約束してたさかい、休みを利用してみんなとやって来たっちゅう訳です」

 

「へぇ、意外に律儀だねぇ・・・みんな、よく来たね!!」

 

「皆さんいらっしゃい!よく来て下さいましたね」

 

 やって来た一同を、なぎさもひかりも歓迎し、テーブルへと手招いた。なぎさが座るテーブルと合わせ、一同が席に着くとアカネが顔を出し、

 

「いらっしゃい!この子達、なぎさやひかりの知り合いなの?そう言えばひかりが、小学生の女の子の友達が、加音町に居るって言ってたっけ・・・意外にあんた達顔が広いよねぇ?」

 

 大学生のなぎさや高校生のひかりが、見た感じ中学生の少女達と親交がある事に、アカネは少し驚き、さすがにプリキュアの仲間だと伝える訳にもいかないなぎさは、

 

「うん、ちょっとね・・・そうそう、この関西弁を喋る子も、あかねって言うんだよ!」

 

「そうなの!?」

 

「よろしゅう!シシシシ」

 

 あかねとアカネ、共に顔を見合わせると思わず笑い出した。あかねは、なぎさとひかりに、せっかく約束していたから、たこ焼きを食べた事が無い、れいかのたこ焼きデビューは、TAKO CAFEでとみんなで決め、関西での修学旅行でもたこ焼きを食べず、この日を楽しみにしていたと伝えると、なぎさ、ひかり、そしてアカネは大変喜び、

 

「あんた達、エライ!れいか、アカネさんが作るたこ焼きは、メッチャ美味しいんだからぁ!!」

 

「それは楽しみです!」

 

 れいかも心から楽しみにしているようでニコニコしていた。お金があれば、こんな粋な後輩達に御馳走して上げるのに・・・と心の中で思うなぎさであった。

 

「ウチは関西出身だから、たこ焼きにはチトうるさいよぉ!」

 

「オッ!言ってくれるじゃなぁい・・・アカネさんスペシャル!楽しみに待っててねぇ!!」

 

 そう言うと手際よくたこ焼きを作り出すアカネの姿に、みゆき達六人は目を輝かし、あかねはウンウン頷きながら、

 

「噂に聞いてただけあるやない!手際もエェし・・・ウチも食べるの楽しみやぁ!!」

 

「本当!私も楽しみ!!」

 

「うん!」

 

「そうだね!」

 

 みゆき、あゆみ、やよいもあかねの言葉に同意し、美味しそうな匂いに釣られたなおは、席を立ち上がり、アカネが作るたこ焼きを、口から涎を垂らしそうな表情で見つめ、一同を苦笑させた。次々器に並べられたたこ焼きを、ひかりとなぎさが一同の目の前に置き、

 

「お待たせしました!」

 

「さあ、召し上がれ!美味しいよ!!」

 

 表情を綻ばせたひかりとなぎさが一同に進めると、なおが真っ先に楊枝を手に取るも、

 

「なお、待ちや!此処は先ず、れいかに一番に食べて貰おうやないか!!」

 

「「「「異議無~し!!」」」」

 

 あかねの提案に、みゆき、やよい、なお、あゆみも賛同すると、れいかは少し驚いたような表情を浮かべ、

 

「エッ!?そんな、皆さん一緒に・・・」

 

「折角みんながああ言ってるんだし・・・先ずはれいか食べて見てよ!!そうそう、そんなに大きくないから、一口でパクっといっちゃって!!」

 

 なぎさもあかねの提案に賛同し、れいかに食べてみるように勧めると、れいかも一同の意を汲み、楊枝を手に取るとたこ焼きに刺し、フゥフゥ息を吹きかけ上品に口に持って行き、なぎさに言われた通り、口の中にパクリと放り込み、右手で口を隠しながらモグモグ味わった。見る見るれいかの表情が輝くと、ニッコリ微笑み右手でVサインし、

 

「私、生まれて初めて食べましたけれど・・・たこ焼きとは美味しい物ですね!皆さんも食べて見て下さい!!」

 

 そう言うと、また楊枝でたこ焼きを刺し、口の中に放り込みモグモグ食べるれいか、なぎさとひかりは嬉しそうに顔を見合わせると、

 

「でしょう!!」

 

「れいかさんのお口に合ったようで良かったです!」

 

「ほな、ウチらも頂くとしよかぁ!」

 

「「「「「いただきま~す!!」」」」」

 

 あかねの言葉を合図に、みゆき達一同もたこ焼きを食べ始めると、皆目を輝かし、来て良かったと称え、

 

「外はカリッ!中はトロッ・・・ウチ、こんなに美味しいたこ焼き食べるの、久しぶりやわぁ!!」

 

「本当、美味しいよねぇ!!」

 

 あかねは一個一個味わうように、なおは一気に頬張り口の周りをソース塗れにする。みゆきはアカネに気付かれないようにしながら、キャンディにも分けてあげて、キャンディも美味しいと表情を緩めた。そんな一同の喜ぶ姿を見て、アカネ、ひかり、そしてなぎさは顔を見合わせ喜んだ。

 

「いやぁ、あんた達良い食べっぷりだねぇ・・・気に入った!家のメニューで食べてみたいのあったらリクエストして!一品だけサービスするから!!」

 

「本当ですかぁ?」

 

「ヤッタ~~!!」

 

 みゆきとなおが大喜びで立ち上がると、カウンターに書いてあるメニューを熱心に見つめて選び始め、やよいはクレープを選び、苺とバナナ、生クリームがふんだんに入っている苺チョコバナナクレープを手に取るや、

 

「チャララン・チャラン!勇者やよいは・・・クレープを手に入れた!!」

 

「やよいちゃん・・・勇者って!?」

 

「あゆみ・・・気にせんでエエ!時々やよいは、妙なスイッチが入るさかい」

 

「そうなの!?・・・何かやよいちゃんらしいね!ウフフフ」

 

 やよいの言動に小首を傾げたあゆみに、苦笑を浮かべたあかねが気にしないでいいと伝え、あゆみが思わずクスリとする。そんな会話にお構いなく、やよいは手に入れたアイテム、苺チョコバナナクレープを美味しそうに食べるのだった。そんな一同を羨ましそうな目で見つめたなぎさは、揉み手をしながらアカネの前に行くと、

 

「アカネさぁぁん!可愛い後輩にも一つ・・・」

 

「しょうがないなぁ・・・」

 

 苦笑しながらアカネがOKを出し、なぎさは大喜びで再びたこ焼きを注文した。れいかのたこ焼きデビューも無事に終え、一同は和気藹々と過ごしていった・・・

 

 

 

2、なぎさのアルバイト先は!?

 

 なぎさの目の前に、求人誌が置いてあるのを見付けたみゆきは、小首を傾げながら求人誌を見せて貰うと、

 

「なぎささん、アルバイトするんですか?」

 

「うん!今月、お小遣い無しでピンチだからさぁ・・・良い所あればと思ってねぇ」

 

「へぇ、そう何ですかぁ・・・」

 

 パラパラページを捲っていたみゆきは、あるページを見てピクリと反応すると、変顔を浮かべながらなぎさを見つめ、

 

「此処、此処が良いですよぉぉ!!」

 

「エッ!?何、良いところあった?」

 

 目を輝かせたみゆきが、何度も指さす求人を見つめたなぎさは、

 

「どれどれ!?世界絵本博覧会スタッフ募集ねぇ・・・」

 

「はい!はい!」

 

 みゆきは鼻息荒くなぎさに迫り、此処が良いと思いますと言うみゆきの迫力に、思わずなぎさは仰け反りながら苦笑を浮かべ、改めて良く内容を確認する。

 

 世界中の絵本や童話を一堂に会したイベントを、共に盛り上げてくれるスタッフ急募、期間は六月一日からの二週間、募集内容は、絵本のキャラクターに扮した着ぐるみで、子供達に夢を与える仕事をしてみませんか?土日のみも可!時給1700円以上、交通費、日払いも可、要相談・・・主催:四葉グループなどと書かれてあった・・・

 

 記事を見たなぎさは、微妙な表情を浮かべるや、

 

「無理、無理、確かに時給は良さそうだけどさぁ・・・」

 

「エェ!?どうしてですかぁ?」

 

 少し不満気に口を尖らすみゆき、なぎさはそんなみゆきを見て困惑気味に、

 

「私さぁ・・・人前で何かするのって、結構緊張するんだよねぇ!ラクロスの時見たいに、何かに夢中になっていれば平気何だけど・・・ほのかはああ見えて度胸があるから、割とへっちゃら何だけどねぇ」

 

「「「「「「エェェ!?」」」」」」

 

 なぎさが人前では緊張すると言うと、みゆき達一同は意外そうに驚きの声を上げた。なぎさにそんな面があるなど、とても思えなかった。

 

「何よ・・・みんなその顔は?私だってこう見えて、意外にデブケート何だからねぇ!!」

 

「なぎささん・・・それを言うなら、デリケートでは!?」

 

「エッ!?」

 

 そんな一同に気付き、なぎさが不満気にするも、言葉を間違え、れいかに諭される。大学生が中学生に教えられる姿を見て、アカネは駄目だコリャと溜息を付くのだった。

 

「まあ、ほのかや、ゆりが一緒だったら・・・面接受けに行っても良いかなぁ?」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「アハハ!まあ、二人共忙しいし、駄目だと思うよ・・・」

 

 一人では流石に面接に行く気にもならないが、ほのかや月影ゆりが一緒なら、時給も良さそうだし、行っても良いかなぁと思ったなぎさが口に出すと、みゆきの目は再び輝き、

 

「是非、是非、お二人にも声を掛けてみて下さい!!」

 

「何でみゆきがそないに必死何や?」

 

「確かに・・・」

 

 必死になぎさに頼むみゆきの姿を見て、あかねとなおは首を傾げ、れいかはなぎさから求人誌を借りると、記事の内容をよく読んで見た。

 

「・・・スタッフ特典で、ご家族やご友人に割り引きシステムもあります・・・成る程、みゆきさんが必死な訳はこれですね?」

 

「エヘヘ!バレちゃった?世界絵本博覧会が開催されると知って楽しみにしてたんだけど、色々物入りで・・・」

 

「そんなん自腹で行きやぁ!!」

 

 れいかに魂胆がバレ、みゆきが苦笑を浮かべると、あかねがすかさずツッコミを入れた。なぎさも苦笑しながら、

 

「本当、みゆきは絵本とか大好きだよねぇ!?じゃあ、ほのかとゆりにメール入れてみるよ!」

 

 今の時間は午後1時過ぎ、二人に電話を掛けても、きっと忙しいだろうとメールを送信したなぎさだったが、五分ぐらい経って、早くも返信が来た。意外そうな表情を浮かべたなぎさが携帯を取りだしメールを見ると、

 

「あっ、ゆりからだ!・・・なぎさ、アルバイトをするのはあなたの自由だけれど、私やほのかを巻き込むのは、どうかと思うわよ?行くなら自分一人で行きなさい!!・・・ハァ、ご尤も・・・」

 

 確かにゆりの言う通りだと、トホホ顔のなぎさが携帯をしまうと、言い出しっぺのみゆきは申し訳なさそうに、

 

「なぎささん、ゴメンなさい!」

 

「ウウン、気にしないで!アルバイトしようとしてたのは確か何だからさ!!」

 

 そんな会話をしている間に、なぎさの携帯に電話が掛かって来た。なぎさが着信者を見ると、それはほのかからであった。ほのかにも注意されるのかと、なぎさが恐る恐る電話に出てみると、

 

「もしもし、ほのか!さっきは変なメール打ってゴメン!!」

 

「ウウン!なぎさ、アルバイトするの?」

 

「ほら、私今月お小遣い無しにされたでしょう?色々ピンチでさぁ・・・今TAKO CAFEに居るんだけど、アカネさんにもバイトでもしたらって言われてさぁ・・・そうそう、今みゆき達も来てるんだぁ!!」

 

 みゆき達も来ていると聞き、ほのかは意外そうにして驚き、なぎさは、あかねが前にひかりと約束していて、たこ焼きを食べた事が無いれいかのたこ焼きデビューは、TAKO CAFEでとやって来た事を伝えると、ほのかも自分の事のように喜び、

 

「みゆきさん達、まだ時間大丈夫かしら?休んでいた分は取り戻せたし、今から私も向かうわ!そうそう、アルバイトの件・・・私は別に良いよ!何だか楽しそうだし!!」

 

 ほのかがなぎさと一緒にアルバイトする事を承諾してくれて、なぎさの表情が見る見る綻んでいく。心の中で、ほのかに手を合わせるなぎさであった。

 

「本当!?ありがとう、ほのか!みゆきも喜ぶよ!!」

 

「みゆきさんが!?何でなぎさのアルバイトの件で?」

 

「その件はこっちに着いてから話すから!じゃあ待ってるね!!」

 

「分かった!みゆきさん達にもよろしくね!!」

 

 電話を切ったなぎさが、みゆきを見るとVサインをし、

 

「ほのか、一緒にアルバイトしてくれるってさ!」

 

「本当ですか!?」

 

「で、ほのかも今からこっち来るって言ってるんだけど・・・みゆき達、まだ時間大丈夫?」

 

「はい、特に他に予定もありませんし・・・ねぇ、みんな!」

 

 みゆきも自分の事のように表情を喜ばせながら一同に聞くと、一同もほのかに会いたいと同意してくれて、みゆきとなぎさは満面の笑みを浮かべた。そんな二人を見たアカネとあかねは、

 

「全く、面接行くのを決めただけで、何をそんなに喜んでるんだかぁ・・・」

 

「ホンマですねぇ・・・みゆきもみゆきやでぇ!」

 

 思わず二人で顔を見合わせ、苦笑を浮かべるのだった・・・

 

 

 

 ほのかは、ゆりにも声を掛けようと、メールでゆりに帰れるか聞いた所、ちょうどゆりも帰る所だとメールが来た為、二人は駅に近い校門前で待ち合わせをしていた・・・

 

「ほのか!待たせたわね!!」

 

「ウウン、私もさっき着いた所だよ!」

 

 合流した二人は駅へと向かい歩を進めた。ゆりは携帯を見ると、

 

「そう言えば、なぎさから変なメールが来なかったかしら?」

 

「アルバイトの事でしょう?私はさっき電話でOKして、これからTAKO CAFEで、詳しい事をなぎさに聞こうかと思ってるの!ゆりは?」

 

 ほのかがアルバイトに乗り気なのを見て、思わずゆりは信じられないといった表情を浮かべると、

 

「ほのか、あなたなぎさに付き合ってアルバイトするの?」

 

「うん!だってなぎさ困ってるし・・・なぎさがお小遣い無しにされたのも、あの戦いのせいだし、少しは役に立てればなぁと思って・・・それに、面白そう!!」

 

 少し楽しげに語るほのか、その言葉を聞いていたゆりの眼鏡がみるみる曇り、困惑気味の表情を浮かべたゆりは、

 

(それを言われると・・・私にも責任の一端はあるわね)

 

 過去の世界に飛ばされたなぎさとほのかの為を思い、二人の家族に対し、咲やれいかに協力して貰い、二人は薫子の手伝いで地方に行っていると誤魔化してみたものの、その後のフォローを怠っていたのは、自分のミスであるとゆりは思っていた。

 

「ほのか、私も一緒に行くわ!」

 

「本当!?なぎさもきっと喜ぶよ!そうそう、みゆきさん達も来てるんですってぇ」

 

「みゆき達が!?珍しいわねぇ・・・」

 

 ゆりが知る限り、みゆき達がTAKO CAFEに来た事は無かった筈だがと小首を傾げた。ほのかはそんな戸惑うゆりをみてクスリと笑い、

 

「行ってみれば分かるわ!さあ、行きましょう!!」

 

 ほのかに促され、二人はTAKO CAFEへと向かった。

 

 

 

 約1時間後・・・

 

 ほのかとゆりがTAKO CAFEへとやって来た!

 

 なぎさ達は、ゆりも一緒に居る事に驚いていたが、ゆりも来てくれた事に嬉しそうに二人に駆け寄って行った。みゆき達と軽く会話をしたほのかとゆりは、飲み物を注文し、一同と一緒のテーブルに座ると、なぎさはアルバイトの件を詳しく二人に話した。話を聞いたゆりも、面接に行く事を同意してくれて、なぎさは、ほのかとゆり、二人の手を取り感謝した。

 

「世界絵本博覧会ねぇ・・・中々面白そう!」

 

「ですよね!私、スッゴク楽しみにしてるんです!!」

 

「みゆきは、本当に絵本や童話が好きなのねぇ?」

 

 目を輝かせるみゆきを見て、ほのかとゆりは苦笑を浮かべた。二人はなぎさから手渡された求人誌を見ると、

 

「土日だけでも良いのは助かるわね!」

 

「うん!平日は学校があるしね!!」

 

「二人共、感謝感激雨チョコレート!!じゃあ、早速電話してみるよ!!」

 

「なぎさ、それを言うなら・・・感謝感激雨霰だよ!」

 

 思わずクスリとしながらなぎさに教えるほのかに、

 

「エッ!?・・・アハハ!まあ、感謝してると言う事で!!」

 

 なぎさは携帯を手に取ると、連絡先へと電話を掛けた。電話に出たまだ年若そうな男性に対し、アルバイトの面接を希望したい旨を伝え、自分を含めた三人で伺いたい事を伝えると、相手方は、人数は多い方が良いので、こちらとしても助かると言ってくれて、明日の10時ぐらいにでも面接に来て欲しいと言われた。その旨をほのかとゆりに伝えると、

 

「明日とは急ね・・・」

 

「履歴書も買いに行かないとね!」

 

「そうだよねぇ・・・」

 

 早速明日面接に来て欲しいと言われた三人は、少し困惑していると、アカネが三人の側にやって来て、

 

「なぎさ、ほのか、ゆりちゃん、履歴書の事なら、あたしがバッチリ書き方教えて上げるから、何なら今から履歴書買って、此処で書いちゃえば?」

 

 アカネからアドバイスするよと言われ、三人は表情を輝かせると、

 

「本当ですか?」

 

「そういう事なら、お願いしますアカネさん!」

 

「みゆき達、ちょっと待っててね!!」

 

 そう言い残し、ゆり、ほのか、そして、なぎさの三人は、慌てて履歴書を買いに出掛けて行った・・・

 

「何や、アルバイトするのも大変何やなぁ・・・ウチは自分の家の手伝いしかしないからわからんけど」

 

「私も、アカネさんのお手伝いぐらいなので、アルバイトの事は分かりませんけど、大変そうなのは今分かりました」

 

 あかねも、ひかりも、ちゃんとした所でアルバイトするのも大変な事何だと実感していた。みゆきが楽しそうに、テーブルに頬杖付いて足をブラブラさせていると、それに気付いたあゆみは、

 

「みゆきちゃん、楽しそうだね?」

 

「うん!上手くすれば、会場でなぎささん、ほのかさん、ゆりさんに会えるんだもん!!」

 

「でしたら、いっその事皆さんも誘ってみましょうか?のぞみさんのお父様も童話作家と仰ってましたし・・・」

 

 れいかの言葉に、それは良いかもと同意する一同、みゆきも頷きながら、

 

「そうだね・・・でも実は、のぞみさんからは既に誘われてるんだぁ!のぞみさんのお父さんが、二日目の土曜日にサイン会をするらしくて、のぞみさんもその日に行くそうで、一緒に行かないかって」

 

「へぇ、のぞみさん達、二日目に来るんやぁ・・・」

 

「じゃあ、なぎささん達が戻って来たら、あたし達は二日目の土曜日に会場に行くと伝えておこうか?」

 

 のぞみ達が二日目に来るなら、自分達もそうしようかとなおが一同に伺うと、れいかも同意し、

 

「そうですね!では、咲さん達、ラブさん達、つぼみさん達、響さん達にも声を掛けてみましょう!」

 

「じゃあ、せつなさんには私が知らせておくね!」

 

 自分がプリキュアになる前は、毎日のように様子を見に来てくれていたせつなには、あゆみが連絡を入れると話した。みゆきはひかりを見ると、

 

「ひかりさんも一緒に行きませんか?」

 

「エッ!?私は土日もお店がありますので・・・」

 

「良いじゃん!ひかり、行って来なよ!!何ならひかるも連れてってあげなよ!!」

 

「ハァ・・・でも、お店の方が・・・」

 

「一日ぐらい大丈夫だって!」

 

 アカネがニンマリしながら、気にしないでひかるを連れて行ってきなさいとひかりにOKを出し、ひかりも二日目に行く事を決めるのだった。

 

 

 戻って来たなぎさ達に、二日目に行く事を伝えたみゆき達は、世界絵本博覧会会場で会いましょうと伝え、TAKO CAFEを後にした・・・

 

 アカネにアドバイスを受けながら履歴書を書き終えたなぎさ、ほのか、ゆりの三人、改めて求人内容を確認していると、

 

「絵本のキャラクターに扮した着ぐるみって、どんなのだろうね?」

 

「思い付くのは桃太郎とか、シンデレラとかかしら?」

 

「そうね・・・少し嫌な予感がしないでも無いのだけれど・・・」

 

 ゆりの言葉を聞き、三人の脳裏に色々な絵本のキャラに扮した自分達の姿を想像するや、思わず顔を見合わせ三人でクスリと笑い合うなぎさ、ほのか、ゆりだった。

 

「話は変わるんだけどさぁ・・・ほのか!ゆり!ひかり!みんなは最近変な夢とか見たりしない?暗闇の中で長い黒髪の少女が、自分達に何か訴える夢とか・・・みゆき達には、不安にならないように聞かなかったんだけど・・・」

 

 なぎさは意を決し、最近頻繁に見る夢の話を、ほのか、ゆり、ひかりにしてみると、ゆりとひかりは首を捻りながら、そんな夢は見ないとなぎさに告げるも、咄嗟にほのかの顔色が変わり、

 

「なぎさも見てたの?私と全く同じ夢みたい・・・少し気になるわねぇ」

 

 ほのかは真剣な表情で考え込むも、現時点では二人が同じ夢を見ているだけで、何かの前触れなのか?今の二人にも分からない。

 

「バッドエンド王国の事なのか?あの時現われた魔界の者と関係があるのか?それとも・・・全く別の脅威なのか?」

 

「今は考えてもしょうがないか・・・」

 

 顔を見合わせ色々考えたほのかとなぎさだったが、現状で判断出来る事でもなく、この事は、他の一同にはまだ言わないでおこうと決めるも、用心だけはしておこうと四人で決めるなぎさ達だった・・・

 

 

 翌日面接に行った三人は、無事に採用が決まった。学校帰りに会場に通い、他のアルバイト達と共に稽古をする。元々運動神経の良いなぎさ、ほのか、ゆりの姿に、関係者達は目を細めていた。

 この時の三人は、世界絵本博覧会会場で、仲間達とプリキュアになる事になろうとは、夢にも思って居なかった・・・

 

              第六十四話:なぎさのアルバイト

                     完

 


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