プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第六十話:プリキュアVSバッドエンド王国!!(後編)

1、ふたりはプリキュア

 

 ブラックとホワイトが帰って来た!!

 

 二人の無事な姿を見たプリキュア達は、驚愕の表情を浮かべながらも、皆涙ぐんでいた・・・

 

 そんなプリキュア達とは逆に、サディス、ベガ、ディクレの表情は醜く歪んでいた。ブラックとホワイトは、あの時光と共に消滅したと思っていた。だが、二人のプリキュアは生きていた!!

 

 ジョーカーは、上空に浮かぶ映像を見ながら顔を顰め、

 

「サディスさん、ベガさん、ディクレさん・・・これはどう言う事です!?キュアブラックとキュアホワイト、二人はあなた方に敗れ消滅した・・・確か、そう仰って居られましたよねぇ?私の聞き違いでしたかぁ!?」

 

 上空に浮かぶ映像から、ジョーカーの皮肉混じりの嫌みが三人の魔人に浴びせられ、三人は忌々しそうにブラックとホワイトの映った画面を見ると、

 

「バ、バカな・・・あの二人は消滅したはずだ!?」

 

「畜生・・・生きていたのかぁぁぁ?」

 

「おのれぇ、プリキュアめぇぇ!!」

 

 ディクレが、サディスが、ベガが、怒りで全身を振るわせた。今にもブラックとホワイトの下に向かいそうな三人に、プリキュア達が待ったを掛けた!!

 

「あなた達を・・・ブラックとホワイトの下には行かせない!!」

 

 ムーンライトの言葉を表すように、ブルーム達が、メロディ達が、ブロッサム達が、サディス、ベガ、ディクレの前に立ち塞がった。ブラックとホワイトの出現は、プリキュア達の気持ちを再び奮い立たせていた・・・

 

 

 

「ブラックゥゥ!!」

 

「ホワイトォォ!!」

 

 メップルが、ミップルが、涙を流しながら二人の名を呼び続ける。ブラックとホワイトは二人に微笑み返すも、一同がバルガンの触手に捕らわれているのに気付くや顔色を変え、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて一旦引いた手を前に突き出すと、

 

「「マックス~~!!」」

 

 ギュッと握り合った手と手・・・

 

 黒と白の稲妻が、バルガンの触手を一蹴して消し去り、触手に捕らわれていたドリーム、ハッピー、エコー、ルミナスと妖精達を解放する。

 

「ブラックゥゥ!!」

 

「ホワイトォォ!!」

 

 解放されたメップルとミップルは、二人に駆け寄り、まだ大蛇が近くに居るのをものともせず、ブラックとホワイトに飛びつくと、ブラックとホワイトも笑みを浮かべながら二人を抱きしめた。コミューン姿に変化したメップルとミップルが、ブラックとホワイトの腰のケースに収まる。

 

「やっぱ、二人が居ないと・・・物足り無いよねぇ?」

 

「そうね・・・」

 

 ブラックとホワイトは、顔を見合わせ合いクスリと笑い合った。

 

(す、凄い!?私達が身動き出来なかったこの触手を・・・)

 

 ハッピーは、改めて二人の強さを実感するも、ルミナスの見立ては違っていた。

 

(ブラックとホワイト・・・二人は、以前よりも数段力を増している気がする!?)

 

 今二人が放ったマーブルスクリューマックスの威力は、以前とは桁違いの威力を放っていたとルミナスは思った・・・

 

「グゥゥ、おのれぇぇ!!」

 

 ブラックとホワイトに邪魔をされたバルガンは、二人を忌々しげに睨み付けるも、ドリームがその視線に割って入り、バルガンを睨み付ける。

 

「待ちなさい!あなたの相手は私達よ!!」

 

「みんな!!」

 

 その時、ドリームの側に舞い降りたルージュ、レモネード、ミント、アクア、ローズ、合流した一同がバルガンに身構えた。

 

 呻くバルガンを睨み付けるプリキュア5とローズ、ブラックとホワイトは、ルミナス、プリキュア5とローズ、ハッピー、そして空に映る仲間達を見ると、自然に笑みが浮かんだ。アクア達一同も背後を振り向くと、

 

「二人共・・・お帰りなさい!!」

 

「待ちくたびれたわよ!」

 

 アクアとローズが、微笑みながらブラックとホワイトに言葉を掛けると、二人も微笑み返し、ブラックは右手の親指を突き立て、

 

「みんな、お待たせぇ!!」

 

「ハッピー!今の内にキャンディを解放して上げて!!」

 

 ホワイトはハッピーを見ると、キャンディを解放してあげるように言葉を掛けた。バルガンが手出ししないように、プリキュア5とローズが鋭い視線で威嚇する。

 

「グゥゥゥゥ!!」

 

 唸りながらブラックとホワイトの周りを這い回る大蛇は、口を大きく開けると、口の中から、紫掛かった唾液を飛ばした。ブラックとホワイトは瞬時に躱すも、大蛇の攻撃が当たった大地が、ジュゥっと熔け始める。

 

「ブラック、気をつけて!この大蛇は・・・私達がメルヘンランドで戦った、あの時の蛇のようだわ!!」

 

(メルヘンランドで戦った!?今、ホワイトはそう申されたな?それがしが知る限り、お二方はメルヘンランドに来た事は無い筈でござるが・・・)

 

 ホワイトの言葉を聞いたポップは、ブラックとホワイト、二人がメルヘンランドに来た事は無かった筈だが、と首を捻った。

 

 このまま大蛇を放って置いて、不意打ち攻撃を食らっては不味いと考えたブラックは、

 

「本当は、ニョロニョロ系は苦手何だけど・・・ハッピー達の邪魔はさせない!!」

 

 ブラックは単身巨大な大蛇目掛け駆け出すと、大蛇はブラックを威嚇するように、身体を伸ばしたり縮めたり、前後左右に揺らしたりするも、ブラックは怯まず、大蛇の顔目掛け接近するや、大蛇の顔面にパンチの連打を浴びせ続ける。

 

「ダダダダダダダダ!・・・・ダァァァァ!!」

 

 大蛇は悲鳴にも似た声を上げ、上体を仰け反らした。更に力を込めたブラックは、全体重を乗せた強烈な右ストレートを放ち、大蛇はその威力の前に吹き飛び、岩場に激突して地響きを起こし、祭壇から遠ざけられた。

 

 バルガンが呆然とする・・・

 

 仮にも、魔界が誇る魔獣の中でも、最上級クラスの大蛇を一蹴するブラックの姿が信じられなかった・・・

 

「バ、バカな!?大蛇だぞ?あの巨体を、パンチ如きで吹き飛ばすなど・・・奴は化け物か!?」

 

「そこ!人聞きの悪い事言わないでよねぇ?大体、どう見ても化け物はあんたの方でしょう!?ハッピー、今の内に・・・」

 

 頬を膨らましてバルガンを指差し文句を言うブラックは、ハッピーに、大蛇が離れた今の内にキャンディの下に向かうように言うと、

 

「ハイ!キャンディィィ!!」

 

 ハッピーは嬉しそうに頷き、エコー、ポップを伴いキャンディの側に行くと、キャンディは大泣きしながら、

 

「ハッピー!みんなぁぁ!!」

 

 解放されたキャンディは、ハッピーに抱きつきワンワン泣き崩れた。キャンディに微笑み掛けるハッピー、頭を優しく撫でるエコー、ポップは涙を拭いながら、キャンディの無事な姿に安堵した。ブラックは、ホワイトの側に戻るとエコーを見つめ、

 

「所で・・・その子は?」

 

「そう言えば・・・」

 

 ブラックとホワイトが、エコーを見て小首を傾げると、ハッピーがエコーを指差し、

 

「あゆみちゃんがプリキュアになった姿で、キュアエコーです!!」

 

「横浜では、助けてくれてありがとうございました!!」

 

 エコーが深々お辞儀をすると、ブラックとホワイトは顔を見合わせながら笑みを浮かべ、

 

「そっかぁ、あゆみちゃんもプリキュアにねぇ・・・よろしく!キュアエコー!!」

 

 満面の笑みを浮かべながら、エコーによろしくと声を掛けるブラック、ホワイトはエコーをジッと見つめると、

 

「光の園に居た時・・・どこかで聞いた事ある声だと思って居たけど、今確信したわ!私達を導いてくれたのは・・・エコー、あなたね!!」

 

「エッ!?私は特に・・・」

 

 エコーに思い当たる節は無かった・・・

 

 確かにみゆき達を救う為に、プリキュア達に力を貸して欲しいと心の中で思ったが、その思いは、ブラックとホワイトにも届いていたのだろうか?エコーは不思議そうに小首を傾げた。

 

「私達、光の園で誰かの声を聞いたの!力を貸してって・・・それでクイーンが止めるのも聞かず、光の園から飛び出したまでは良かったんだけど・・・」

 

「時の狭間に嵌って迷って居た時・・・現われた光が私達を此処まで導いてくれたの!あの光は・・・ポルン、ルルン、あなた達がしてくれたのね?ありがとう!!」

 

「エコーも、ありがとう!」

 

 ブラックとホワイト、二人に感謝されたポルンとルルンは、顔を見合わせ嬉しそうにハシャギ、エコーは恥ずかしげな表情を浮かべた。

 

 その時、唸りながら大蛇が再び動き出し、その不気味に這う姿を見たブラックは、変顔を浮かべながら、今度はホワイト行ってよと頼み込み、ホワイトに苦笑される。

 

 ブラックらしい姿を見て、本当に二人は戻って来たと改めて実感したルミナスは、

 

「ブラック・・・ホワイト・・・良かった!無事で・・・良かった」

 

 ルミナスの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちていく・・・

 

 堪えていた感情が止め処なく溢れてきた・・・

 

 顔を見合わせたブラックとホワイトは頷き合うと、マーブルスクリューマックスを大蛇に浴びせるも、大蛇はダメージを負うものの、二人の攻撃を何とか耐えきった。

 

「マーブルスクリューマックスでは、メルヘンランドの時見たいに、大蛇は倒せない見たいだね?」

 

「この悪しき力が漂う場所では・・・スパークルブレスもきっと使えないわね?」

 

 ブラックとホワイトが頷き合うと、ルミナスを振り返り、

 

「「ルミナス!力を貸して!!」」

 

「ハ、ハイ!!」

 

 二人に力を貸して欲しいと頼まれたルミナスは、嬉しそうにハイと頷き、二人の下に合流すると、バトンを手にしたルミナスから発せられた虹の光が、ブラックとホワイトを包み込む。

 

「漲る勇気!」

 

 手を回転させながらブラックが構え、

 

「溢れる希望!」

 

 ブラックと同じように手を回転させホワイトが構えた。

 

「光輝く絆とともに!」

 

 ハーティエルバトンを構えたルミナスが、そして足を広げ踏ん張るブラックとホワイトが気合いを込め、ブラックとホワイトの前方に巨大なハートが浮かび上がると、

 

「「エキストリ~~ム!!」」

 

「ルミナリオォォ!!」

 

 ブラックとホワイトの叫び声がハモリ、気合いを込めたルミナスの叫びが響き渡る・・・

 

 虹の輝きが、大蛇の巨体を一気に飲み込み、消し去った・・・

 

「ヤッタ~~!!」

 

「フゥ・・・何とか倒せたわね!」

 

 ブラックとホワイトが顔を見合わせ、笑顔を浮かべた。

 

(お二人は気付いて居ないんだわ・・・今のルミナリオの力も、以前とは比べものに成らない!お二人の力は・・・格段に上がってる!!)

 

 ルミナスは確信し、驚愕した表情で二人を見つめた・・・

 

 

 

「ブラック・・・ホワイト・・・」

 

 二人の力強さを目の当たりにし、ブラックとホワイト、二人の無事な姿を、空に浮かぶ映像で見ていたムーンライトの瞳から、ポロポロ涙が零れる。大蛇を倒した二人に、画面から響き渡るプリキュア達の声が、自分達の名を次々に呼ぶ様子に、ブラックは小首を傾げ、

 

「やだなぁ、みんな大げさだよ!でも、何時の間に横浜から移動したの?」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 思わず側に居たルミナス、プリキュア5、ローズ、ハッピー、エコーの目が点になった。

 

「エッ!?って、こっちがエッ!?だよ!数時間離れてる間に・・・」

 

「ブラック、何暢気な事言ってるメポ!あれから三週間は経ってるメポ!!」

 

「「エッ!?」」

 

 今度は二人が思わず目を点にし、顔を見合わせたブラックとホワイトは、横浜の地で戦ってから三週間過ぎたと教えられ、二人は大慌てで、

 

「エェェェ!?何時の間にそんなに時間が経ったのぉぉぉ?」

 

「私達・・・まだあれから数時間ぐらいしか経ってないと思ってたの」

 

 ブラックとホワイト、二人の感覚では、横浜の地から飛ばされてから、まだ数時間程度に感じられていた・・・

 

 

 

 

2、奮い立つ少女達

 

 バルガンは惚けたように呆然としていた・・・

 

 大蛇が倒されるなど、想像だにしていなかった・・・

 

「バ、バカな!?大蛇を倒しただと?しかもたった三人で・・・し、信じられん!?」

 

「バルガン殿!素奴ら二人こそ、嘗てメルヘンランドで、我ら三人をロイヤルクイーンと共に封印したプリキュア!バルガン殿にお借りした大蛇も、素奴ら二人によって深手を負わされ、魔界へと逃げ戻った事がありました!!」

 

「バカ者!ディクレよ、何故先に言わんのだ!?プリキュア、これ程までとは・・・」

 

 画面を通じて話し掛けたディクレの話を聞いたバルガンは苛立ち、プリキュアを甘く見ていた事を後悔し、激しい動揺を見せた・・・

 

 十二の魔神の内、四神を除く八人に与えられし大蛇・・・

 

 火、水、氷、雷、風、毒、土、闇・・・

 

 八体の大蛇がそれぞれ属性を持ち、バルガンの大蛇は、毒の属性を持って居た・・・

 

(大蛇を失うとは・・・このまま魔界に戻れば、カイン殿とアベル殿に会わす顔が無い!!)

 

 バルガンは雄叫びを上げると、プリキュア5とローズの隙を付き、触手でブラックとホワイトの手を捕らえた。だが、

 

「こんなもので・・・ハァァァァ!!」

 

「ハァァァァ!!」

 

 ブラックとホワイト、二人が力を込めると、触手は呆気なく引き千切られ、バルガンは呆然とする。ブラックは、そんなバルガンにアッカンベェーと舌を出した。

 

 

 

「アハハ、やっぱブラックはこうじゃなきゃ!」

 

「ブルーム・・・褒め言葉じゃ無いわね?」

 

 映像から聞こえるブラックの声を聞き、思わずブルームが笑みを浮かべながらポツリと呟き、イーグレットも苦笑混じりにブルームに突っ込みを入れる。

 

「おのれぇ、舐めやがってぇぇ!!」

 

 画面で見るブラックの態度を見てベガが激昂する!瞬時に身構えたブルームとイーグレットは、

 

「あんたの相手は私達でしょう!」

 

「二人の下には行かせないわ!!」

 

 ベガに突進した二人が、ベガと至近距離での格闘戦を開始した・・・

 

 一方、ウルフルンと戦うサニーと、サニーの援護に回るブライト、ウィンディだったが、

 

「キュアサニー・・・テメェだけでも倒さなきゃ、俺の気が済まねぇぇんだよぉぉ!!」

 

 咆哮を上げたウルフルンの気迫が一段と増し、サニーに対し、パンチとキックのラッシュを浴びせる。ウルフルンの蹴りを受けたサニーが吹き飛ぶと、直ぐに援護しようとするブライトとウィンディ、だが片膝付いたサニーは、ブライトとウィンディを制止すると、

 

「すんません・・・ウルフルンは、ウチを指名しとるんで、ウチに任せてくれますかぁ?」

 

「何を言ってるの!?これは・・・・・ブライト?」

 

 サニーが、ウルフルンとの一対一の戦いに拘っている事に、ウェンディが顔を顰めながら窘めようとするのを、首を振りながらブライトが止めた。互いの信念をぶつけ合おうとする、二人の意気を感じたブライトは、ウルフルンとの戦いは、サニーに任せることが賢明だと感じる。ブライトは、真顔でサニーを見つめると、

 

「分かったわ・・・私達はブルームとイーグレットの援護に向かう!その代り、サニー・・・必ず勝ちなさい!!」

 

「おおきに!!」

 

 ブライトは手でサニーに合図を送ると、サニーも口元に笑みを浮かべながら頷いた。ブライトは、まだ後ろ髪惹かれる思いをしていたウィンディの背を軽く叩き、二人はその場を共に離れ、ブルームとイーグレットの側へと向かった。

 

 ゆっくり立ち上がったサニー目掛け、再びウルフルンが襲いかかるも、サニーも真っ向から受けて立ち、拳と拳がぶつかり合う。

 

「ウチも、負けへんわぁぁ!ウチ、最初はプリキュアになっても、何処か遊び半分の所が合った気がする。でも、ハッピー、ピース、マーチ、ビューティ、沢山の先輩達と一緒に戦ってる内に理解したんや・・・バレーやお好み焼きと同じ、今ならハッキリと言える!プリキュアもそうや・・・ウチが大切なもんは、全部みんなと繋がっとった!!」

 

「それが何だ!全部ぶっ潰してやるよぉぉ!!」

 

 覚醒したサニーの全身から、凄まじい炎が巻き起こる。思わずその威力に戸惑ったウルフルンだったが、負けじと更なる雄叫びを上げ、サニーに突っ込んだ。

 

「みんながおったら、どんな時でも100倍も1000倍も・・・力が沸いてくるんやぁぁ!プリキュア!サニーファイヤ~~・・・バーニ~~ング!!」

 

 凄まじい巨大な火の玉が、サニーの頭上に浮かび上がり、サニーが上空高くジャンプし、渾身の力でウルフルン目掛け放つと、ウルフルンは両手で押さえ、必死に堪え続ける。

 

「グゥゥゥ!ち、畜生ぅぅぅぅ!!」

 

 だが、巨大な炎の玉に押され、ウルフルンの身体が地面に埋もれていった。サニーは、ハァハァ荒い呼吸をしながら、仰向けでその場に倒れ込んだ・・・

 

「ハハ・・・もう、ヘトヘトやぁ!」

 

 闇の空に浮かぶプリキュアの仲間達を見ると、自然と顔が綻んだ・・・

 

(ウルフルンの奴め、不甲斐ない・・・だが、あいつはもうほとんど動けない筈だ!今がチャンスだな!!)

 

 ベガは、倒れ込んでいるサニーに狙いを付けると、ブルームとイーグレットに突っ込むと見せかけたフェイントで二人を欺き、サニー目掛け突進した。

 

「しまった!?」

 

「待ちなさい!!」

 

 顔色変えてその後を追うブルームとイーグレットだったが、ベガの右手を、追いついたブライトが掴むや、力を加えて右腕を捻り上げた。そのまま呻きながら跪いたベガを、見下すような視線を向けたブライトとウィンディは、

 

「何処に行こうというのかしら?」

 

「弱っているサニーを狙う何て・・・あなたの実力も高が知れるわね!」

 

「何だとぉぉ!!」

 

 二人に見下され激昂するベガだったが、二人は見下すのを止めず、追いついたブルームとイーグレットに、

 

「ブルーム、イーグレット、こんな見下げ果てた奴と、何時までもダラダラ戦って居るのも腹が立つわ!!」

 

「同感ね・・・ブルーム、イーグレット、一気に行くわよ!!」

 

「分かった!」

 

「エエ、ウィンディ!!」

 

「「「「ハァァァァ!!」」」」

 

 戦い方としては、ベガの行ないは間違っている訳では無い・・・

 

 生きるか死ぬかの戦いで、弱者を先に倒そうとするのは、強者に取っては当然の行為でもあろう・・・

 

 だが、プリキュアとして、大勢の仲間達と絆を深めてきたブライトとウィンディに取っては、ベガの行為は卑劣極まらない行為と映って居た。

 

 サニーとウルフルンは、互いの信念をぶつけ合い戦った・・・

 

 その行為を、無に帰すような行動を取ろうとするベガを許せなかった・・・

 

 四人の身体から、凄まじい精霊の光が沸き起ると、先ずブルームとイーグレットが同時にベガに突っ込み、格闘戦を仕掛けた。精霊の凄まじき力を発したブルームとイーグレットに押され、ベガは忌々しそうに猛り、がむしゃらに反撃を試みる。

 

「この野郎!プリキュアァァァ!ダークネス・・・ボンバー!!」

 

 負の力を纏い、ブルームとイーグレット目掛けダークネスボンバーを放つベガだったが、二人は手を握り合い、バリアを張って攻撃を受け止めた。入れ替わるようにブライトとウィンディが、上空から急降下して飛び蹴りを放ちベガを吹き飛ばした。

 

 ベガを嘲笑うようにウィンディの両肩に手を置いたブライトが、軽くジャンプし空中蹴りを浴びせ、体勢を崩したベガに、ウィンディが風を右拳に纏い、そのままベガの鳩尾(みぞおち)目掛けパンチを繰り出した。

 

「グゥゥ・・・ちょ、調子に乗るなぁぁぁ!!ダークネス!ボンバー!!」

 

 負の力を纏ったベガが、再びダークネスボンバーを二人に放つも、二人はブルームとイーグレット同様、手を握り合いバリアを張り、ベガの攻撃を防いだ。ブライトとウィンディは、口元に笑みを浮かべながら、

 

「一体、私達がその技をどれだけ見たと思ってるのかしら?」

 

「もう私達は・・・その技を見切ったわ!!」

 

 ウィンディは、両手をクルクル回転させるや、一気に両手をベガ向けて放つと、突風は気流に乗るように、ベガの身体を錐揉み上に上昇させた。

 

「か、身体の自由が・・・クソォォ!!」

 

 ブライトは、光を両手に集めると、その場でシャドーボクシングするように、何度も

 拳を右左と突き出すと、光の光弾がマシンガンのようにベガに浴びせられ、ベガがそのまま地上に叩き付けられる。

 

「ふ、ふざけるんじゃねぇぇ!!俺は、魔界の・・・こうなれば、貴様らを道連れにぃぃ!!」

 

 負の力を限界まで高め始めるベガ、漆黒のオーラがベガの身体を一回り大きくさせると、

 

「この一帯事吹き飛ばしてやる!」

 

「そんな事、絶対させない!!イーグレット、ブライト、ウィンディ・・・決めるよ!!」

 

「「「エエ!!」」」

 

 ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディは、スパイラルリングをセットすると、

 

「「精霊の光よ!命の輝きよ!」」

 

 イーグレットとウィンディが叫べば、

 

「「希望へ導け!二つの心!」」

 

 ブルームとブライトが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「「「スプラ~~ッシュ!!!!」」」」

 

 四人のプリキュアから放たれた精霊の光が輝き、ベガの身体を飲み込んで行く・・・

 

「お、俺が・・・俺が・・・負け・・・グゥゥアァァ!!!」

 

 精霊の光に飲み込まれたベガが消滅し、消え去った・・・

 

 四人は険しい表情を浮かべながらベガの居た場所を見つめていたが、サニーの側に行くと、ブルームがサニーの右手を、ブライトが左手を取り、起き上がらせると、五人は微笑みを浮かべながら互いの健闘を称え合った。

 

 そして、バッドエンド王国の上空から、サニー達の画面が消え去った・・・

 

 

 

 

「ブラックとホワイトが、あんた達何かにやられるもんですか!行くよ、リズム!ビート!ミューズ!」

 

「OK!メロディ!!」

 

「ウン!」

 

 メロディの合図に頷くリズムとミューズ、ビートは、アカオーニと戦うピースの身を案じ、

 

「やっぱり気になる・・・メロディ、私はピースの援護に向かうわ!!」

 

「分かった!じゃあ、みんな、行くよ!!」

 

「黙れ!よくもベガを・・・貴様ら纏めて、塵にしてくれるわぁぁ!!」

 

 メロディの合図と共に、四人が再び行動を開始し、激昂したディクレと衝突した・・・

 

 一方、アカオーニと対峙していたピースは、何時も以上の力を持つアカオーニの前に、大苦戦に陥っていた・・・

 

「キュアピース!お前と俺様とでは・・・覚悟が違うオニ!!」

 

 棍棒を激しく振り回し、周囲に風を巻き起こすと、ピースの身体が浮き上がり、そのまま思いっ切り地面に叩き付けられる。

 

「キャァァァ!」

 

 悲鳴を上げながらその場に倒れ蠢くピースを、見下すような視線で見たアカオーニは、

 

「所詮、誰かの力を借りなきゃ、何も出来ないお前と俺様では・・・はなから勝負にならないオニ!!」

 

(こんな時、ミラクルピースならどうする?ミラクルピースなら・・・)

 

 ピースの心の中に浮かんで来たのは、自分が小さい時から描いていたミラクルピースの事だった。ヒーローに憧れていたやよいが、自分で考え生み出したスーパーヒロインミラクルピース、自分の憧れを重ねて生み出したミラクルピースならば、こんな時どうするだろうか?ピースは自問し、そして、答えを見付けた!!

 

 アカオーニは、ピースを無視し、メロディ達の下へ向かおうとするのを、ピースがアカオーニの両足を掴み阻止をする。

 

「い、行かせない!痛いし怖い・・・でもここで倒れてたら、私はみんなと一緒に居られなくなっちゃう・・・自分で自分が許せなくなっちゃう!それが一番怖い!!こんな時、ミラクルピースなら・・・絶対諦めない!!私、弱虫だけど・・・絶対負けない!!」

 

「なら、このまま叩き潰してやるオニ!!」

 

 棍棒を振りかぶったアカオーニであったが、振りかぶった棍棒目掛け、ビートが全体重を乗せたキックを放ち、バランスを崩したアカオーニが尻餅を付く、

 

「ピース、大丈夫?」

 

「はい!大丈夫です!!」

 

(そう、頼れる仲間と一緒なら・・・ミラクルピースは、何時も以上の力で、悪い人に何か負けないんだからぁ!!)

 

「私の中のミラクルピース・・・今こそ力となって天に轟け!!」

 

 気合いを込めたピースの身体から、稲妻が天に昇った・・・

 

(これは・・・ピースの中で、何かが目覚めようとでも言うの?)

 

 思わず隣に居るピースの顔をマジマジ見つめるビート、雄叫び上げながら突進してくるアカオーニを、ビートバリアで食い止めると、

 

「ピース!今よ!!」

 

「ハイ!プリキュア!」

 

 天空からピース目掛け雷が降り注ぎ、ピースの身体が発光し始める。

 

「ピースサンダ~~!ハリケ~~ン!!」

 

 雷の嵐がアカオーニ目掛け吹き荒ぶ、ビートは瞬時にアカオーニから距離を取ると、

 

(凄い!これがピースの真の力!?)

 

 ビートは、ピースの技を見て驚愕するも、口元に笑みを浮かべた。

 

「こ、こんなものでぇぇ俺様がぁぁ・・・」

 

 ピースサンダーハリケーンは、アカオーニの巨体をものともせず、岩場の中を突き抜け、アカオーニの身体を吹き飛ばした・・・

 

「ハァ、ハァ・・・勝ったの!?」

 

 思わずヨロヨロ蹌踉めいたピースを、ビートが抱き支え、

 

「大丈夫?良く頑張ったわね!!」

 

「エヘヘ・・・」

 

 ビートに褒められたピースは、満面の笑みを浮かべながら微笑んだ。

 

 

 一方、三人の魔人の中でもリーダー格のディクレの前に、劣勢に陥るメロディ、リズム、ミューズ、

 

「言った筈だ・・・貴様ら纏めて塵にしてやるとなぁぁ!!」

 

 ディクレが雄叫びを上げると、負のオーラがディクレを包み込んだ・・・

 

 獣のような唸り声と共に、ディクレの身体は、まるで獣人とも呼べるマントヒヒのような風貌に変化した。

 

「ハァァ!これが我の真の姿!!この姿で戦うのは、あの忌々しき二人のプリキュアと戦って以来か・・・貴様らを血祭りに上げ、あの二人を今度こそあの世に送ってくれる!!」

 

 ディクレは、獣人化した事で更に素速さを増した。メロディ、リズム、ミューズを素早い動きで翻弄する。

 

「クッ、動きが速い!?リズム、ミューズ、気をつけて!!」

 

「クククク、まだまだこれからが本番だぞ?」

 

 ディクレは、体毛を抜き取りフゥと息掛けると、体毛は小人のディクレの容姿になり、容赦なくメロディ、リズム、ミューズをいたぶり続ける。

 

「キャァァァ!」

 

「こ、このぉぉ!!」

 

「こ、これじゃ追い払ってもきりがないわ!」

 

 ミューズが悲鳴を上げ、メロディとリズムは手で小人を追い払うも、ディクレは次々体毛を抜き取り、小人へと変えて三人を追い詰めていく。ハミィが、ピーちゃんが、心配そうな視線を三人に浴びせ応援する。ビートは苦戦する三人に気付くと、

 

「メロディ、リズム、ミューズ・・・ピース、あなたは此処で少し休んでて!私はメロディ達の援護に向かうわ!!」

 

 ビートはそう言い残すと、三人の下へと駆け出し、走りながらラブギターロッドを取り出し、上空高くジャンプすると、周囲に無数の音符を浮かび上がらせた。

 

「これ以上好きにはさせない!ビートソニック!!」

 

 上空から雨霰のようにビートソニックが浴びせられ、命中した小人が消滅していった。ビートの援護を受け、距離を取った三人は、

 

「「プリキュア!パッショナート・・・ハーモ二~~!!」」

 

「シ、の音符のシャイニングメロディ、プリキュア!シャイニングサークル」

 

 メロディ、リズムのパッショナートハーモ二―が小人の群れを打ち消し、ミューズは、お返しとばかりに、四人のミューズの幻影を生み出し、五芒星のようなサークルを描き、ディクレの動きを封じた。

 

「ムッ・・・小癪な真似を!!」

 

 気合いを込め、シャイニングサークルを打ち破ろうとするディクレに対し、メロディ、リズム、ビートが並び立つと、メロディはミラクルベルティエを、リズムはファンタスティクベルティエを取りだし、ビートはラブギターロッドを、ソウルロッドへと変化させる。

 

「「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ミュージックロンド!!」」

 

 メロディとリズム、二人は呼吸を計ったかのように、互いにミュージックロンドを放ち、

 

「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・ロック!!」

 

 それに合わせるようにビートの技が放たれた。三人の技が、三重奏を奏でるかのように、三つのリングがディクレを捕らえる。

 

「小賢しい!この程度の攻撃で、我を倒せると思うのか!?ハァァァ!!」

 

 雄叫び上げ、自分を捕らえている三人の技を振り解こうとするも、四人はハミィを振り返り、ヒーリングチェストの力を解放すると、

 

「「「「出でよ、全ての音の源よ!!」」」」

 

 クレッシェンドトーンを召喚した四人、

 

「「「「届けましょう!希望のシンフォニー!!」」」」

 

 両腕をクロスしたまま、クレッシェンドトーンの金色の光の炎と一体化した四人が、ディクレ目指して突き進む、

 

「「「「プリキュア!スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンド!!」」」」

 

 黄金の光が、まだ身動きが出来ないディクレを、光の炎が貫くと、苦悶の表情を浮かべたディクレは空を睨み、

 

「グゥゥゥゥ・・・バ、バルガン殿!サディス!ス、スマン」

 

「「「「フィナーレ!!!」」」」

 

 ディクレは四人の前に敗れ去り、闇に帰った・・・

 

 死闘を終えた四人は、ハミィとピーちゃん、そしてピースに微笑みを浮かべた・・・

 

 そして、バッドエンド王国の上空から、ピース達の画面が消え去った・・・

 

 

 

 

「畜生!!ベガ!ディクレ!・・・おのれぇぇ!プリキュアァァァァ!!」

 

 共に行動し、封印の眠りに付いた三人の絆は深かった・・・

 

 二人を失ったサディスの負の力は暴走し、サディスの目は金色に輝くや、口は耳元まで裂け、その表情は夜叉を連想させた・・・

 

 だが、ムーンライトはそんなサディスに一歩も引かず、

 

「これが、私達プリキュアの強さ・・・あなたにも教えて上げる!!プリキュア!シルバーフォルテウェーブ!!」

 

 上空高くジャンプしながら、ムーンライトのシルバーフォルテウェーブが飛ぶ!!

 

 サディスの表情が醜く歪み、両手で必死にフォルテウェーブに耐えきると、雄叫びを上げながらムーンライトに殴りかかる。ムーンライトも受けて立ち、正面から肉弾戦を開始した。

 

「何か・・・二人の戦いに参加しづらいですねぇ・・・」

 

「だねぇ・・・何か、ムーンライトとダークプリキュアの戦いを思い出すよねぇ」

 

「「じゃあ、マーチの応援に・・・」」

 

 ブロッサムとマリン、ムーンライトに加勢するタイミングを掴めず、半ば解説要員になっていた二人は、マーチの応援に行こうとするも、死闘を繰り広げるマーチとマジョリーナの戦いを、サンシャインがサポートしていた・・・

 

「もうあたし達には後がないんだ・・・プリキュア!お前達をここで葬らなきゃねぇぇ!!」

 

 足下にバッドエナジーを蓄えるや、先程マーチが放ったマーチシュートの連続蹴りのお返しとばかりに、マジョリーナがエネルギー弾の連続蹴りを放ちマーチを吹き飛ばす。

 

「キャァァ!」

 

「ウフフフ・・・そら、オマケだよ!!」

 

 更なる攻撃を加えるマジョリーナだったが、サンシャインが割って入り、サンシャインイージスで攻撃を防ぎきる。

 

「やらせない!マーチ、大丈夫?」

 

「ええ、ありがとう・・・」

 

 助けに入ってくれたサンシャインに、笑みを浮かべながら感謝するマーチ、マジョリーナはそんなマーチを忌々しげに睨み付け、

 

「あたしはお前が気に入らなかった!大勢の家族に囲まれ、幸せそうにしてるお前がねぇぇ・・・お前をこの場で倒し、お前の家族も絶望に沈めてやるよぉぉぉ!!」

 

 マジョリーナは一層険しい表情を浮かべると、上空に浮かび上がり巨大なエネルギー光弾を作り出すと、マーチ、サンシャインの顔色が変わる。

 

「不味い!あれ程の巨大な光弾は・・・私だけでは防げないかも知れない」

 

 上空に浮かび上がった、巨大な漆黒の球体を見たサンシャインの額から、汗が滴り落ちる。

 

「サンシャインとマーチがピンチです!!」

 

「今こそあたし達の・・・」

 

 救援に向かおうとしたブロッサムとマリンであったが、マーチは雄叫びを上げながら立ち上がった。マーチの脳裏に、メルヘンランドで受けたジョーカーの精神攻撃が思い返されてくる。あんな思いは絶対にさせない、家族は自分が守ると決めたあの時を・・・

 

「あたしの家族には手出しさせない!あたしの家族は、絶対にあたしが守る!!」

 

 マーチの周囲で、凄まじい緑の風が巻き起こると、風に乗るようにマーチの身体が宙を飛ぶ!

 

「だったら、止めてみな!!くたばれ、プリキュア!!」

 

 マジョリーナから発せられた巨大な漆黒の光弾が、マーチ目掛け発射されるも、マーチは光弾に真っ直ぐ向かうと、

 

「あたしは・・・絶対に負けない!!プリキュア!マーチシュート!!インパクトォォォ!!!」

 

 風の勢いに任せて、光速回転したマーチの身体が緑色に輝き、回転を利用したマーチシュートインパクトが、マジョリーナの放った巨大な黒い光弾を、緑の光弾に変え蹴り返した。

 

「バ、バカな!?あたしの攻撃を跳ね返す何てぇぇ・・・このぉぉぉ!!」

 

 向かってくる巨大な光弾を両手で押さえるも、その威力を止められず、マジョリーナの身体を飲み込み上昇し、マジョリーナは、気を失い地上に落下した・・・

 

「相手の攻撃を利用し、そのまま跳ね返す・・・凄い攻撃でしたねぇ?」

 

「まあ、流石はあたし達の後輩だね?」

 

 今の戦いを振り返っていたブロッサムとマリン、背後で声が聞こえたサンシャインは、二人を振り返ると

 

「ブロッサム、マリン、そこに居たの?」

 

「「ガ~~~ン!!!」」

 

 サンシャインにそこに居たの?と言われ、ブロッサムとマリン、二人は変顔を浮かべながら、激しいショックを受けるのだった・・・

 

(良い風・・・)

 

 風に身を任せるように、力を使い果たしたマーチが落下するのを、ポプリが変化したマントに身を包んだサンシャインが受け止める。

 

「マーチ・・・お疲れ様!」

 

「いえ・・・」

 

 微笑み掛けるサンシャインに、マーチも微笑み返していた・・・

 

 

 一対一で死闘を続けるムーンライトとサディス、サディスは、ムーンライトの周囲に、無数のシャボン玉のようにフワフワ浮かぶ黒い光弾を発生させると、

 

「逃げ場は無いよ!ダークネス・シャボン!!」

 

 サディスが両手を合せると、無数のシャボンがムーンライト目掛け降り注いだ。ムーンライトは、両手を広げバリアを張りながら光速で回転し、ダークネスシャボンの威力を軽減させると、ムーンタクトを回し、

 

「この程度の攻撃で・・・私は負けたりしない!プリキュア!フローラルパワー・・・フォルテッシモォォ!!」

 

 ffのマークを宙に描くや、上空に舞い上がったムーンライト、ムーンライトのフォルテッシモが、サディス目掛け急降下を始める。焦りの表情を浮かべたサディスが、ムーンライトに連続光弾を浴びせるも、フォルテッシモは勢いを止める事無く、サディスを突き抜けると、

 

「ハ~~トキャッチ!!」

 

 着地したムーンライトが、タクトを広げてポーズを決めると、背後で爆発が起こり、サディスは片膝付き荒い呼吸をする。

 

「ハァ、ハァ、ハァ・・・ディクレ!ベガ!あたしに力を貸しておくれ・・・プリキュアの一人でも道連れにしない限り、あたしは終われないんだよぉぉぉ!!」

 

 両手を高々と掲げたサディスに闇が流れてくる・・・

 

 サディスは闇を吸い込むと、目は益々吊り上がり、一層全身の筋肉が盛り上がりをみせた。

 

「感じる・・・ディクレを、ベガを、プリキュアァァァ!!」

 

 禍々しい気が辺りに溢れかえる。シプレが、コフレが、ポプリが、禍々しい気が増して居ると一同に告げると、暴走したサディスは辺り構わずエネルギー波を撒き散らして猛る。

 

「死ね!死ね!死ね!死ね!」

 

 サンシャインイージスが、ムーンライトリフレクションがサディスの攻撃を防ぐも、力を増したサディスの攻撃を受け、二人が飛ばされる。

 

「これ以上好きにはさせません!ブロッサムゥゥ・・・シャワ~~!!」

 

「マリィィン・・・シュ~~ト!!」

 

 ブロッサムとマリンが技を放ち、サディスの攻撃と相殺させる。

 

「ブロッサム、マリン、サンシャイン・・・決めるわよ!!」

 

「「「ハイ!!」」」

 

 ムーンライトの合図に頷いた三人が、ムーンライトの側に集結すると、ハートキャッチミラージュを取りだし、

 

「「「「鏡よ、鏡、プリキュアに力を!世界に輝く一面の花!ハートキャッチプリキュア!!スーパーシルエット!!!」」」」

 

 此処を勝負所と見た四人はスーパーシルエットへと変身すると、

 

「「「「花よ、咲き誇れ!プリキュア!ハートキャッチ・オーケストラァァ!!」」」」

 

 四人の祈りに応えるように、巨大な女神のシルエットが現われると、一同の指示の下、巨大な女神がサディスの身体に愛の拳を打ち下ろした。

 

「「「「ハァァァァァ!!」」」」

 

「ベガ・・・ディクレ・・・ゴメン!」

 

 四人の叫びと共に、サディスの身体は金色に包まれ、その身を消滅させた・・・

 

「ハハハ、流石ムーンライト達・・・凄いや!!」

 

 マーチは、ムーンライト達四人の強さを改めて実感するのだった・・・

 

 そして、バッドエンド王国の空に浮かぶ、マーチ達の映像が途切れた・・・

 

 

 

 

 バルガンは、忌々しげにブラック、ホワイト、ルミナス、ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ローズ、そして、ハッピーとエコーの顔を、一人ずつ見つめた。

 

「良くも我らが同胞を葬ってくれたな・・・現時点をもって、我ら魔界は、貴様らプリキュア、並びにお前達の息の掛かる全ての者を・・・敵と見なす!覚悟しろ、プリキュアァァァ!!」

 

 そう言い残すと、更にバルガンの容姿が変化していった・・・

 

 背は急激に伸び、髪が無数に増え始め、身体全体至る所から枝葉が生え始める。その姿は巨大樹、いや、中央に残ったバルガンの顔だけを見た限り、人面樹と言える様相を呈していた・・・

 

「勝手な事ばかり言わないで!あなたが先に攻撃を仕掛けてきたくせに!」

 

 険しい表情を浮かべた一同が、バルガンに鋭い視線を浴びせる。ドリームは一同を代表するようにバルガンの非を訴えるも、バルガンは一笑に付した。

 

「我ら魔界の者の真の力、お前達に見せてくれよう!!」

 

 バルガンの生え茂った髪の毛に、まるで実を為すようにピンクの胡桃のような物体が無数現われた。急速に育ったそれは、地上に落下し割れると、辺りに黄色い胞子を撒き散らした。

 

「バッドエンド王国か・・・この土地は心地よい力を与えてくれる!さあ、我が能力の前に朽ち果てるが良い!!」

 

 バルガンが放った胞子を吸い込んだ時、思わず一同は顔を顰めると、

 

「ゴホッ・・・な、何!?」

 

「か、身体が痺れ・・・」

 

 ブラックとホワイト、ルミナスが、プリキュア5やローズ、ハッピーとエコーが、身体が痺れ地上に倒れ込み始める。

 

「ハッピー!みんなぁぁ!!」

 

「これは・・・みんな、気をつけるココ」

 

「これを吸うと、身体の機能を麻痺させるみたいナツ」

 

 キャンディが叫び、ココとナッツが胞子の特徴を一同に伝えるも、一同は咳き込み続け、反撃する機会を見付けられなかった・・・

 

「ククク、苦しいか?貴様らは楽には殺さない!我が胞子を浴びた者は、徐々に身体の機能を鈍らせ、やがて息絶える!!何時見ても、苦しみながら死んでいく者を見るのは、爽快なものだ・・・さあ、ジワジワ苦しみながら死ぬが良い!プリキュアァァ!!」

 

 バルガンの目が妖しく輝く中、ゴホゴホ咳き込み続ける一同の顔が、一層険しさを増していく・・・

 

「ハッピー・・・みんなぁぁ・・・」

 

 キャンディの目に涙が浮かんでくる・・・

 

 自分を助けてくれたハッピー達が苦しんでいるのに、自分は何も出来ない事が悔しかった・・・

 

「ハッピー・・・みんな・・・みんなを、みんなを、虐めちゃ駄目クルゥゥゥゥ!!」

 

 キャンディの身体から、火の鳥のようなオ-ラが発せられた時、ポップが持って居たデコルデコールに異変が起こった!!

 

 まるでキャンディに感応したかのように、点滅しだしたデコルデコールは宙に浮かび上がり、激しい光に包まれると、まるで時計のような物体へと変化を果たした・・・

 

「これは一体!?」

 

 驚くココ達、ポップも目の前でキャンディが起こした異変に呆然とするも、

 

「キャンディ・・・そなたは!?それに、この姿・・・ま、まさか、伝説のロイヤルクロックでござるか?」

 

 ポップはこの姿に見覚えがあった・・・

 

 メルヘンランドの図書館で調べ物をしていた時に、確かに見た事があった・・・

 

 それは、伝説のロイヤルクロック!!

 

 だが、ポップにもどんな力があるのかまでは分からなかった・・・

 

 ロイヤルクロックの光の輝きは、辺りに漂う胞子を浄化し、プリキュア達に力を与えた。

 

「身体の痺れが収まった!?」

 

「本当だ・・・これなら!」

 

 ドリームが、ブラックが、一同が再び立ち上がりバルガンを睨み付け、ハッピーとエコーがキャンディを見て微笑み掛けた。

 

「キャンディ、ありがとう!」

 

「あなたのお陰で・・・私達助かったわ!!」

 

「クゥゥルゥ!!」

 

 二人にお礼を言われたキャンディは、自分も役に立てた事が嬉しかった。自分が起こした奇跡に気付かず・・・

 

「バ、バカな!?何故胞子が・・・まあいい、胞子は幾らでも作り出せる!!」

 

 バルガンは、胞子が消滅させられた事に驚愕するも、直ぐに再び胞子を作るべく、胡桃のような物体を作り始めると、

 

「そうはさせない!!プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

 ルージュが雄叫びを上げ、ファイヤーストライクを放ち、胡桃のような物体を燃やし、胞子を飛ばさないようにする。

 

「小賢しい!!」

 

 再び触手で一同を捕らえようとしたバルガン目掛け、ブラックとホワイトのマーブルスクリューが飛ぶ!ならばと、バルガンは口から無数の種をマシンガンのように連射するも、

 

「やらせないわ!プリキュア!エメラルドソーサー!!」

 

 ミントのエメラルドソーサーがバルガンの攻撃を防ぎきる。入れ替わるように頭上からドリームとローズ、右側からアクアとレモネード、左側からハッピーとエコーが同時にキックを放ち、バルガンの表情を曇らせた。

 

「おのれ、プリキュア共・・・これも、貴様のせいだ!!」

 

 バルガンの標的が、キャンディに向けられる。恐怖に引き攣るキャンディ目掛け、バルガンの葉が手裏剣のようにキャンディ目掛け飛んでいく。

 

「キャンディ!!」

 

 咄嗟にキャンディを庇ったハッピーの身体を擦り、ハッピーの腕と足から血が滲む、

 

「大丈夫、キャンディ!?もうキャンディに、怖い思いはさせないからね!」

 

「ハッピー・・・」

 

 キャンディは泣きそうな表情を浮かべると、ハッピーは笑顔でキャンディを励ました。ハッピーはキッとバルガンを睨み付けると、

 

「これ以上、私の大事な仲間達に・・・酷い事しないでぇぇ!!」

 

「ならば・・・力尽くで止めて見ろ!!」

 

 バルガンは、身体を揺すると、まるで花粉のように黒い粉が舞い上がり、ドス黒いオーラを周囲に撒き散らした・・・

 

 オーラは周囲を包み込むように広がり、結界の中に閉じ込められた一同は、再び動きが鈍る。

 

「クッ、な、何てプレッシャーなの?」

 

「思うように身体が・・・」

 

 ホワイトが、アクアが険しい表情を浮かべる中、勝ち誇ったバルガンの笑い声が響く、

 

「クククク!今度こそ貴様らの最期だ!!さあ、毒の花ウモーの香りを吸い、朽ち果てろ!!」

 

 結界の中で咲いた毒の花ウモー・・・

 

 まるでカマキリの卵のような形をした不気味な花・・・

 

 その花から発せられた香りが、辺りに立ち込め始める。ハッピーは、目を閉じカッと見開くと、

 

「私、みんなが大好き!みんな誰かを守りたいっていう優しい気持ちがあったから・・・プリキュアになった。だから、私達にとって・・・プリキュアのみんなも、キャンディ達妖精の仲間達も、とっても大切なの・・・だから、私はみんなを守る!!気合いだ!気合いだ!気合いだぁぁぁ!!プリキュア!ハッピーシャワ~~!シャイニィィィング!!!」

 

 凄まじいピンクの輝きを浮かべたハッピーが、上空目掛けハッピーシャワーを放つと、凄まじい輝きは光の流星となって、バルガンのフィールドを打ち消した・・・

 

「バ、バカな!?そんな、バカなぁぁぁ?」

 

 バルガンは驚愕の表情を浮かべた・・・

 

 絶対に葬れる自信があった・・・

 

 だが、ハッピーの仲間達への思いは、それを遥かに上回り、バルガンの攻撃を打ち消し、更に光の流星は、バルガンの力を一気に弱めた。思わず力を使い果たし蹌踉めいたハッピーを、エコーが、ブラックとホワイトが支え、ニッコリ笑みを浮かべながらハッピーに微笑んだ。

 

 ハッピーの攻撃が効いているとみたココとナッツは、

 

「今ココ!プリキュアに力を!!」

 

「ミルキィローズに力を!」

 

 ココとナッツの頭上にパルミエ王国の王冠が現われ、プリキュア5とローズに力を与える。

 

「クリスタル・フルーレ!希望の光!!」

 

「ファイヤー・フルーレ!情熱の光!!」

 

「シャイニング・フルーレ!弾ける光!!」

 

「プロテクト・フルーレ!安らぎの光!!」

 

「トルネード・フルーレ!知性の光!!」

 

 プリキュア5の手にキュアフルーレが装備される。そして、ミルキィミラーがローズの手に現われる。六人のプリキュア達が構えると、

 

「邪悪な力を包み込む、煌くバラを咲かせましょう!ミルキィローズ!メタル・ブリザード!!」

 

「5つの光に!」

 

「「「「勇気をのせて!」」」」

 

「「「「「プリキュア!レインボー・ローズ・エクスプロージョン!!」」」」」

 

 青い薔薇の吹雪が、五色の薔薇が合わさり虹色の薔薇が、バルガン目掛け飛んでいく・・・

 

「グゥゥゥゥ・・・舐めるなよぉぉぉ!!」

 

 バルガンは雄叫びを上げながら、プリキュア5とローズの必殺技を堪えようと試みるも、

 

「グゥゥ・・・ち、力が入らん・・・おのれ、おのれぇぇ!こんな筈じゃぁぁぁ」

 

 巨大な虹の薔薇に飲み込まれ、バルガンの身体は消滅し、闇に帰った・・・

 

 プリキュア5とローズは、ハッピーに親指立てて合図を送り、ハッピーも同じようなポーズを浮かべて微笑み返した。

 

 そして、バッドエンド王国の上空から、ハッピー達の映像が消え去った・・・

 

 

 

「ブラックとホワイトも戻って来た!キャンディも、キュアデコルも取り返した!プリキュアの皆さんが、あなた方の戦士達にも勝ちました・・・もう、あなたの思い通りにはなりません!!」

 

 再びビューティはアイスソードを取りだし、ジョーカーに剣先を向けた。ピーチ、ベリー、パイン、パッションも険しい表情でジョーカーを睨み付けると、ピーチは、

 

「あなたの負けよ!!」

 

「負け!?ウフフフ、この程度で勝ったつもりですか?」

 

(そう・・・ピエーロ様復活はもう目の前!!)

 

「あなた方に勝ち目がないと・・・教えて差し上げますよ!!」

 

 ジョーカーは宙に浮かび上がり、レイピアを軽く振ると、ジョーカーの身体が数十人に分身しだした。思わず驚愕するビューティ、ピーチ、ベリー、パイン、パッション、

 

「どうしました!?何処を見ているのです?」

 

 同時に喋る数十人のジョーカー、どれが本物なのか戸惑う一同を嘲笑うように、ジョーカーがビューティとピーチ達を翻弄した・・・

 

(これでは勝負にならない!何とかしなければ・・・)

 

 焦るビューティを、ジョーカーは挑発するように、

 

「あなた、あの妖精を助け出したつもり何でしょうけど、残念でしたぁ!あなた方はもう・・・バッドエンド王国から出られませんよ!!ノコノコ浚われた間抜けな妖精の為に、全滅するとは滑稽ですよねぇ・・・」

 

「何言ってるのよ!私達が此処に来たと言うことは・・・」

 

「そう、戻る事も可能と言う事!!」

 

「うん!私・・・みんなと帰れるって信じてる!!

 

 ピーチ、ベリー、パインが、バッドエンド王国に来られたのだから、出る事も当然出来る筈だと言葉を述べるも、ジョーカーは口元をニヤリとさせ、その態度を見たパッションとビューティは訝しんだ。

 

「いえいえ、無理ですよ・・・ほら!!」

 

 ジョーカーが指をパチリとならすと、ジョーカー達のフィールドを除くあちらこちらからマグマが吹き出し始め、大地を赤く照らし始める。

 

 四方から仲間達の悲鳴が聞こえてくる・・・

 

「ブラック!ホワイト!ルミナス!ブルーム!イーグレット!ブライト!ウィンディ!」

 

「ドリーム!ルージュ!レモネード!ミント!アクア!ローズ!」

 

「ムーンライト!ブロッサム!マリン!サンシャイン!」

 

「メロディ!リズム!ビート!ミューズ!」

 

「ハッピー!マーチ!サニー!ピース!エコー!キャンディ!ポップ!妖精の皆さん・・・」

 

 ピーチが、ベリーが、パインが、パッションが、そしてビューティが、仲間達の身を案じ、心配そうな表情を浮かべる。

 

「仲間の心配より・・・ご自分達の心配もした方が良いですよ?」

 

 大勢のジョーカーは、嘲笑うようにトランプカードを投げつけ、ビューティ達を翻弄する。

 

(このままでは・・・今私が優先させるべき事・・・それは!!)

 

 ビューティは立ち上がると目を閉じ、精神を集中し始める・・・

 

「この期に及んで何の真似です!?目障りですねぇ・・・あなたから消して差し上げましょう!!」

 

 無数のジョーカーがビューティに狙いを付けるも、ビューティを囲むようにピーチが、ベリーが、パインが、パッションが、ジョーカーの攻撃から身を持って庇い続ける。

 

「み、皆さん!?」

 

「何か考えがあるんでしょう?」

 

「あなたへの攻撃は、あたし達が防ぐ!!」

 

「うん!ビューティはそのまま続けて!!」

 

「必ずそれまで持ち堪えるわ!!」

 

 ピーチが、ベリーが、パインが、パッションが、ビューティに微笑み頷いた。ビューティは、四人の気持ちを目に涙を浮かべながら受け取り、カッと目を見開くと、

 

「私の名前は・・・キュアビューティ!!」

 

「ハァ!?知ってますけど?」

 

 ジョーカーは小首を傾げながら、今更何を言っているのかと不思議そうな表情を浮かべていると、ビューティはアイスソードを地面に突き刺し、

 

「私は、みなさんと一緒に居られる今を、大切にしたいんです!目指す未来へ向かって、大切な友達と歩み続ける。その為にも、プリキュアとして私は戦い続けます!それが私の道です!!プリキュア!ビューティブリザ~~ド・・・フリージング!!」

 

 ビューティは、アイスソードを通じ、ビューティブリザードを放つと、冷気はバッドエンド王国の地表を凍らし、マグマの勢いを弱めた。

 

「バ、バカな!?バッドエンド王国を・・・凍らせたぁぁ?」

 

 驚愕するジョーカーに、ビューティはアイスソードを抜き、もう一本作り上げ二刀流で構えると、

 

「これで暫くは保つはずです・・・」

 

「ビューティ・・・凄い!!」

 

 思わずピーチは、ビューティが此処まで成長している事に驚きを隠せなかった。パッションは、そんなビューティを見て笑みを浮かべると、

 

「やるわね・・・私も思い付いた事がある!ビューティ、あなたになら、私の考えが分かるわよね?」

 

 そう言い残すと、パッションはパッションハープを取り出し、ピーチ、ベリー、パインに作戦を授けると、

 

「行くわよ、ジョーカー!吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア!ハピネス・ハリケーン!!」

 

「「「悪いの、悪いの、飛んでいけ!」」」

 

「プリキュア!ラブサンシャイン・・・」

 

「プリキュア!エスポワールシャワー・・・」

 

「プリキュア!ヒーリングプレアー・・・」

 

「「「フレ~~ッシュ!!」」」

 

 四人のプリキュアの攻撃が、ジョーカーが作り出した紫のフィールド上空目掛け放たれた。

 

「ウフフフ、何処を狙ってらっしゃるんですかねぇ?」

 

 見当外れの方向を攻撃した四人に、嘲笑を浮かべたジョーカーであったが、

 

「いいえ!パッション達四人が、私に攻略の道を示して下さいました・・・アクア!技をお借りします!!」

 

 ビューティは、アイスソードを二つ繋げるや、弓状に変化させ身構えた。ジョーカーは見落としていた。ピーチ達が放った攻撃が光を作り上げ、ジョーカーの本体の影をはっきり照らし出して居た事に・・・

 

「なっ、何と!?私の影が?」

 

「プリキュア!ビューティブリザ~~ド!アロ~~!!」

 

 ビューティの放った氷の矢が、ジョーカーの残像を打ち消しながら、真っ直ぐジョーカーの影がある本体目掛け飛んで行く・・・

 

 その凄まじき威力が、ジョーカーが咄嗟に繰り出したトランプをも突き抜け、ジョーカーの仮面に突き刺さり、

 

(キュアビューティ・・・この短時間で此処まで力を付けるとは・・・)

 

 ジョーカーは、ビューティの攻撃を受け墜落し、仮面が飛ばされ、氷の大地の奥深くに消えて行った・・・

 

 そして、バッドエンド王国の上空は、元の暗闇へと戻った・・・

 

 

 

「ビューティ、お見事!!」

 

 ピーチは思わずビューティに右手を差し出すと、ビューティは少し照れながら握り替えし、

 

「いえ、皆さんが私に道を示してくれたからです!」

 

 その二つの手に重ねるベリー、パイン、パッション、五人のプリキュアが笑みを浮かべた。

 

 そして、散り散りだった仲間達が徐々に集結した・・・

 

          第六十話:プリキュアVSバッドエンド王国!!(後編)

                      完

 


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