プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第五十九話:プリキュアVSバッドエンド王国!!(前編)

1、決戦の幕開け!

 

 バッドエンド王国に戻ったジョーカーは、五枚のトランプカードにバッドエナジーを加えると、空間に向けて飛ばした。トランプカードは、まるで意思を持っているかのように消えて行った・・・

 

 ウルフルン、マジョリーナ、サディス、ベガ、ディクレとそれぞれ戦って居たプリキュア達は、まるで時間稼ぎをしているように戦う一同を見て訝しんでいた・・・

 

 

 ディクレと戦って居たブロッサム、マリン、サンシャイン、ムーンライトだったが、

 

「おかしいわねぇ・・・こちらが攻撃を仕掛ければ引き、こちらが様子を見れば向こうが仕掛けてくる」

 

「エェ、何かを企んでいるようですねぇ・・・」

 

 ムーンライトの言葉にサンシャインも同意する。二人が訝しんでいたその時、ディクレの下にトランプカードが現われると、

 

「フン、ようやく撤退の合図が来たか・・・プリキュア共、まんまと我らの策に嵌ったようだな!最早此処に用は無い!!」

 

「策!?待ちなさい!どういう事?」

 

「フン、直に分かる・・・直にな!!」

 

 ディクレは、ムーンライトの問い掛けに意味深な言葉を残し、その場から姿を消した。

 

 ウルフルン、マジョリーナ、サディス、ベガも、時を同じくしてバッドエンド王国へと撤退して行った・・・

 

 

「さっきのあゆみの声も気になるわね・・・」

 

 変身を解いた一同、ゆりは携帯に着信があった事に気付き、着信履歴を調べると、それは佐々木先生からで、十数回掛かって来ていた。顔色を変えたゆりが、佐々木先生に電話すると、佐々木先生は直ぐに電話に出た。

 

「先生、遅くなって申し訳ありませんでした!今まで敵と戦って居たもので・・・みゆき達に何かあったんですか?」

 

「そうなの!キュアデコルとか言ったかしら!?それが全て集まった時、仮面を被ったピエロのような人が現われて、キュアデコルと、キャンディと言う妖精さんを・・・バッドエンド王国と言う場所に、連れて行ってしまったの!!青木さん、緑川さん、星空さん、日野さん、黄瀬さん、坂上さんの六人が、もう一人の妖精さんと一緒に・・・バッドエンド王国に取り戻しに向かってしまって・・・」

 

「何ですって!?みゆき達がバッドエンド王国に・・・六人とポップで乗り込んだんですか?」

 

 顔色変え聞き返したゆり、その言葉を聞いたつぼみ、えりか、いつきは、直ぐに携帯を手に取るや、つぼみはうららと咲に、えりかは美希とエレンに、いつきはひかりに慌てて電話を掛け、この状況を知らせた。幸いな事に直ぐ側に仲間達も一緒に居ると聞き、せつながみんなを連れて、ゆり達の下に向かうと言ってくれた。

 

「分かりました!幸いみんなと直ぐに連絡が付きましたから、今から先生の下に向かいます!!先生、今居る場所は!?」

 

 ようやく、みゆき達がバッドエンド王国へと向かった事に気付いた一同・・・

 

 間に合うか?プリキュアオ-ルスターズ・・・

 

 

 

 

 バッドエンド王国・・・

 

 撤退してきた一同を出迎えたジョーカーであったが、その表情は険しかった・・・

 

「皆さん、お疲れ様でした!最後のバッドエナジーをプリキュア達から奪い、後はピエーロ様の復活を待つばかり・・・」

 

「オォォ!遂にピエーロ様が!!」

 

「待ってたオニ!」

 

「いよいよピエーロ様が・・・感無量だわさ!」

 

 ジョーカーの報告を受けて大喜びするウルフルン、アカオーニ、マジョリーナ、さしたる興味も無さそうなサディス、ベガ、ディクレ、ジョーカーは三人を見つめると、

 

「サディスさん、ディクレさん、ベガさん、一先ずご休憩下さい!ですが、直ぐにプリキュア達がバッドエンド王国に乗り込んで来ますので・・・お三方のお力を再びお貸し下さい!!」

 

「何!?プリキュアが此処に来ると言うのか?」

 

 プリキュアがバッドエンド王国に乗り込んでくると聞き、ウルフルン、アカオーニ、サディス、ベガが驚愕し、ディクレは聞き返すようにジョーカーに問うと、

 

「はい!忌々しい事ですが・・・ならば、望み通り彼女達を受け入れ、彼女達の最期を、ピエーロ様復活の狼煙と致しましょう!!」

 

「あたしらはピエーロとやらはどうでもいいけど、プリキュアの奴らは・・・痛めつけてやらなきゃ気が済まないねぇ!!」

 

「そうだな・・・」

 

 サディスの言葉にベガも頷く、ジョーカーは、そんな三人を見て含み笑いを浮かべながら、

 

「お三方、期待してますよぉ!!」

 

(フフフ、あなた方三人が我が手の内にあれば、彼の力も借りれますからねぇ・・・)

 

 ジョーカーは、場内へと消えて行った三人の後ろ姿を見ながらほくそ笑んだ。振り返ったジョーカーが三幹部を見つめると、ジョーカーは険しい表情を浮かべながら、

 

「さて、ウルフルンさん!アカオーニさん!マジョリーナさん!この紫玉を差し上げましょう!!」

 

「紫玉!?」

 

「そんな物が有ったオニ?」

 

「一体、赤玉や青玉と何が違うだわさぁ?」

 

 紫玉を渡された三人は、興味深そうに弄り回していたのだが、ジョーカーは不敵な笑みを浮かべると、

 

「簡単に言えば・・・この紫玉を使えば、あなた方の力を5倍に引き出すアイテム!ただし、その代償として・・・あなた方の命を賭けて頂きますけどねぇ!!」

 

「なっ、何だとぉ!?」

 

「命を・・・」

 

「ほ、本気かい!?」

 

 紫玉を使えば、自分達の力は5倍になるも、その代償として命を賭けると聞き、三人は硬直した。手に持った紫玉を呆然としながら見つめた。

 

「はい!本気ですよ!!あなた方、今まで数々の失敗をしておいて・・・まだチャンスがあると思ってらしたんですか?まあ、使うか使わないかはあなた方しだい・・・ですが、あなた方は・・・またあの時のように戻りたいのですかぁ?」

 

「「「ウッ・・・」」」

 

 三人の脳裏に、絵本の中での数々の出来事が思い返されていく・・・

 

 絵本の中で蔑まれ、恐れられ、孤独に過ごした日々を・・・

 

 ある者は、顔を見ただけで逃げだし、またある者には、何もしていないのに石を投げつけられる。殺され掛けた事もある。

 

 こんな生活は嫌だ・・・

 

 そんな時に、ジョーカーと出会い、バッドエンド王国の為に働く事を誓った・・・

 

 だが、三幹部は知らなかった・・・

 

 その記憶こそ、ジョーカーに植え付けられた偽りの記憶だという事を・・・

 

「お、俺はやるぜ!!」

 

「お、俺様もやるオニ!!」

 

「あたしだって、あんな思いは真っ平だわさぁ!」

 

「そうです!それで良いんですよ!!さあ、三幹部の皆さん!その力を使い、プリキュア達を迎え撃ちなさい!!」

 

 三幹部は悲壮感漂う姿でその場を去った・・・

 

(ウフフフ、精々ピエーロ様復活迄の時間を稼いで下さい!!)

 

 ジョーカーは、手に持っていたウルフルン、アカオーニ、マジョリーナのシルエットが入ったカードを、その場で消滅させるのだった・・・

 

 

 

 巨大な鷲の姿に変化したポップの背に乗りながら、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、そして、エコー・・・

 

 一同は、不気味さ漂うバッドエンド王国に遂に乗り込んで来た!!

 

「此処が・・・バッドエンド王国!?」

 

「何や、陰気な感じやなぁ・・・」

 

 ハッピーが辺りをキョロキョロ見渡しながら呟き、サニ-は陰気な感じがするバッドエンド王国を見て顔を顰めた。

 

「この国の何処かに、キャンディは居るのですね・・・」

 

「絶対に助け出さなきゃ!!」

 

「うん!!」

 

 ビューティが、マーチが、ピースが、キャンディを絶対に助け出さなければと改めて決意をしたその時、

 

「バァカ!お前らにそれは出来ねぇよ!!」

 

 不意に近くで声が響き渡り、顔色を変えた一同の前に、険しい表情を浮かべたウルフルン、アカオーニ、マジョリーナが現われ、ハッピー達一同は身構えた。

 

「今日こそ決着を付けるオニ!!」

 

「本気で行くだわさぁ!」

 

 顔色変えて身構える三幹部に、向かっていく三人の姿があった・・・

 

 サニーはウルフルンの前に、ピースはアカオーニの前に、マーチはマジョリーナの前に、ハッピー達も向かおうとしたその時、三人は振り返り笑顔を向けると、

 

「ハッピー!ビューティ!エコー!ポップ!あんたらは先に行きやぁ!!」

 

「此処は私達に任せて!!」

 

「キャンディの事、頼んだよ!!」

 

 サニー、ピース、マーチが、右手の親指を上に向けてウインクする。ハッピーとエコーは、まだ躊躇していたが、ビューティは三人と目配せして頷き合うと、

 

「ハッピー!エコー!此処は三人に任せて、私達はキャンディの下へ!!」

 

「でも・・・そうだね!サニー!ピース!マーチ!必ずキャンディを連れて来るから!でも、それだけじゃないよ・・・必ずみんなで一緒に帰るんだからぁぁ!!」

 

「三人共、無茶はしないでね!」

 

 頷き合った六人のプリキュア達、腕組みしてその会話を聞いていたウルフルンは、

 

「遺言は終わったか?そう易々お前らの思う通りにはさせねぇよ!!」

 

 この場から去ろうとするハッピー達にも攻撃を仕掛けようとするも、

 

「そうはさせん!ドロンでござる!!」

 

 ポップは煙玉を地面に叩き付けると、辺りに煙幕が立ち上った。煙に視界を遮られ、ハッピー達を見失った三幹部、アカオーニが雄叫びを上げ棍棒を振り回し、ウルフルンが大きく息を吸い込み吐き出して、煙幕を吹き飛ばすと、ハッピー、ビューティ、エコーは、ポップが変化した巨大な鷲の背に乗り崖を急上昇していた。

 

「野郎!」

 

「そうはさせへんで!!」

 

 攻撃をしようとしたウルフルンの前に、再びサニーが立ち塞がり身構えた。

 

 

「みんな、必ず無事で居てね!!」

 

 眼下で今正に三幹部と戦おうとしているサニー、ピース、マーチの身を案じていたハッピーだったが、

 

「人の心配より、自分の身を案じた方が身の為ですよ!!」

 

 突然目の前にトランプの舞いが現われ、ジョーカーが姿を現わすと、瞬時にトランプカードを投げつけた。だが、トランプカードは氷の盾に阻まれ、ポップから飛び降りたビューティが、ジョーカーに冷気を浴びせて牽制し、

 

「皆さん、ジョーカーは私が引き受けました!キャンディをお願いします!!」

 

「「「ビューティ!!」」」

 

 心配そうにビューティを見つめるも、直ぐに頷き、ポップは崖を越えると凄まじい強風が上空に吹き荒れていて、ポップは妖精姿に戻った。一同の視界の遥か先に、巨大な二本の柱が目に入り、

 

「きっと、キャンディはあの場所に・・・」

 

「うん!行こう!!」

 

 エコーの言葉に頷いたハッピー、三人は表情を引き締め、巨大な二本の柱を目指して駈け出した・・・

 

 

「悪知恵に長けたあなたの事・・・最後に現われると思っていました!!」

 

「ほう、私の行動を読んでいましたか・・・流石ですねぇ?」

 

 ビューティは、ジョーカーの行動を読んでいた。三幹部が現われたのに、ジョーカーが出て来ないのは何か訳があるだろうと・・・

 

「ですが、この私相手に一人で立ち向かおうだとは・・・私も舐められたものですねぇ!」

 

 ジョーカーの視線が赤く輝くと、バッドエンド王国上空に、サニーとウルフルン、ピースとアカオーニ、マーチとマジョリーナ、駈け続けるハッピー、エコー、ポップ、そして、ビューティとジョーカーの姿が映し出される。

 

「あなた方全員にも、仲間の最期が見れるようにサービスしてあげましょう!さあ、三幹部の皆さん、行きますよ!!」

 

 四人が白紙の本に黒い絵の具を塗りつぶすと、

 

「「「「世界よ、最悪の結末バッドエンドに染まれ!白紙の未来を、黒く塗り潰すのだ!!」」」」

 

 ウルフルンの周りに青い空間が・・・

 

 アカオーニの周りに赤い空間が・・・

 

 マジョリーナの周りに緑の空間が・・・

 

 そして、ジョーカーの周りに紫の空間が現われた!!

 

 

「キュアサニー!おまえのサンサン太陽とやらを・・・この俺様が沈めてやるぜ!!」

 

「ほんならウチは、あんたの毛ぇ刈り取って・・・セーターにしたる!」

 

 ウルフルンとサニー、両者指を鳴らし身構えた・・・

 

 

「キュアピース!泣き虫のお前に、俺様を倒せるオニ?」

 

「私、泣き虫だけど・・・根性はあるもん!」

 

 アカオーニとピース、棍棒を地面に叩き付けて威嚇するアカオーニを、涙目を浮かべながらも、気丈にピースが睨み返した・・・

 

 

「キュアマーチ!へそ曲がりのあたしに勝てるかだわさぁ?」

 

「直球勝負だ!!」

 

「ヒィヒヒヒ・・・マジョリーナタイムだわさぁぁ!!」

 

 マジョリーナがバッドエナジーを体内に蓄えると、煙に包まれたマジョリーナは若返り、サディスをも凌ぐグラマラスなボディを持った美女の姿で若返り、思わずマーチは目を点にして呆然とした。

 

「わ、若返った!?」

 

「驚いたかい?この姿のあたしは・・・一味違うよ!!」

 

 不敵な笑みを浮かべたマジョリーナがマーチを見つめた・・・

 

 

 

「友情ゴッコもこれでお仕舞いですよ!」

 

「お黙りなさい!私達は誓い合いました・・・必ずキャンディを救い、キュアデコルを取り戻し、みんなで元の世界に帰るんです!!」

 

 ジョーカーは舌をペロリと舐め、トランプカードを両手に持って身構えた。

 

 今、決戦の幕が切って落とされた・・・

 

 

 

2、裏の裏

 

 泣き疲れたキャンディは、少しの間眠っていた・・・

 

 どこからともなく、ハッピー達の声が聞こえてきたような気がしたキャンディは、目を冷ますと辺りをキョロキョロする。だが、やはり気のせいだったのか、自分は捕らわれたままで、キャンディは再びポロポロ涙を零した・・・

 

 だが、ハッピー達の声は、確かにバッドエンド王国に響いていた・・・

 

 顔色を変えたキャンディが顔を上げた時、バッドエンド王国の上空に映し出されたハッピー達の勇姿が飛び込んできた。見る見る嬉しそうな表情になったキャンディは、

 

「ハッピー!みんなぁぁ!お兄ちゃぁぁん!!」

 

 やっぱりみんなは来てくれた!!

 

 自分の事を救いにやって来てくれた!!

 

 キャンディの瞳は、涙混じりに輝いた!!

 

 

 

 拳と拳が交差する・・・

 

 蹴りと蹴りが交差する・・・

 

 ウルフルンとサニーの戦いは、肉弾戦の攻防を繰り広げていた。ウルフルンの雄叫びが辺りに響いた時、サニーがその威力に吹き飛ばされるも、直ぐに受け身を取る。

 

「紫玉を使うまでもねぇ・・・キュアサニー!このまま、お前を蹴散らしてやるぜぇぇ!!」

 

「クッ、何やウルフルンの奴・・・何時もと気迫がちゃうわ!でも、ウチも負けへんわぁぁ!!」

 

 雄叫び上げたサニーの身体が炎を纏った!!

 

 

 

「オニオニオニオニオニオニィィ!!」

 

 棍棒を振り回しながら、ピースを追い詰めていくアカオーニ、ピースは飛び退きながら攻撃を躱し続ける。

 

「逃げてるだけじゃ、俺様には勝てないオニィィ!!」

 

「ま、負けないもん!!」

 

 頬を膨らませたピースが、振り下ろされた棍棒を両手で受け止め、アカオーニを睨んだ・・・

 

 

 

 蹴りと蹴りがぶつかり合うも、必死な形相で攻撃を放つマーチと違い、マジョリーナには何処か余裕が感じられた。

 

「お楽しみは・・・これからだよ!!」

 

「エッ!?マ、マジョリーナが・・・」

 

 マジョリーナの身体が数十人に分身し、思わずマーチはどれが本物か見分けが付かず混乱した・・・

 

 

 

 ビューティの怒濤の攻撃を余裕で捌くジョーカー、ビューティは機転を利かせ、パンチを放つと見せかけ、掌底を放ちタイミングを狂わすものの、ジョーカーはそれすら見切り、二枚のトランプカードをビューティに浴びせた。

 

「ウフフ・・・おやぁ!?あの攻撃を防ぎましたかぁ?残念!!」

 

「クッ、バカにしてぇ!!」

 

 咄嗟に結晶化した氷の盾で、ジョーカーの攻撃を防いだビューティを、ジョーカーは見下すような態度を取った・・・

 

 

 

 走りながらも、上空に浮かぶ仲間達の戦う姿を見るハッピー、エコー、ポップ、三人の行く手に、デコルデコールが無造作に置かれていて、思わず三人は立ち止まり訝しんだ。

 

「何でこんな所にあるんだろう?」

 

「さぁ!?」

 

 ハッピーの問い掛けに、エコーも思わず小首を傾げ、二人がデコルデコールに近付いて行くと、

 

「ハッピー!エコー!デコルデコールから離れるでござる!!デコルデコールから、バッドエナジーを感じるでござるぞぉぉ!!」

 

「「エッ!?」」

 

 ポップの忠告を聞き、近付こうとしていた二人は立ち止まり、ポップの言葉を表すように、デコルデコールは、何処かびっくり箱を連想させる黄鼻のアカンベェへと姿を変えた。

 

 近付きすぎた二人は、アカンベェの奇襲を受け吹き飛ばされる。

 

「「キャァァ!!」」

 

「ハッピー!エコー!」

 

 バッドエンド王国上空に、苦戦するプリキュア達の姿が映し出されていた・・・

 

 

 

 七色ヶ丘・・・

 

 佐々木先生の下に集結したゆり達一同は、佐々木先生から詳しい状況を聞き、皆険しい表情を浮かべていた・・・

 

「みんな、私達もみゆき達の後を追いましょう!!」

 

 ココロポットを手に持ち、構えたゆりに頷き返した一同が、変身アイテムを手に持つと、

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

「「「「デュアル・スピリチュアルパワー!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

 

「「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」」

 

 少女達の身体が、忽ち光の中に包まれ、プリキュアへと変化していった・・・

 

「みんな、お願い!星空さん達を助けて上げて!!」

 

「はい、必ず!パッション!!」

 

 佐々木先生に頭を下げられた一同は、力強く頷き、ムーンライトは必ずみんなを連れて戻って来る事を誓った。パッションはアカルンを呼び出すと、

 

「バッドエンド王国へ!!」

 

 だが、アカルンの力は作動しなかった・・・

 

 思わずプリキュア達から響めきが沸き起り、ブルームはパッションを見ると、

 

「パッション、これは一体!?」

 

 ブルームの問い掛けに、パッションは首を振りながら、

 

「駄目だわ!闇の力が強すぎて、アカルンでも近づけないみたい・・・」

 

「そ、そんなぁ・・・」

 

 アカルンでもバッドエンド王国には近づけないとパッションが語ると、一同に再び響めきが沸き起り、ブロッサムがハッピー達の身を案じ、思わず不安そうな表情を浮かべた。ドリームは何かを閃くと、

 

「シロップ!ハッピー達に手紙を書いて・・・それを届ける事は出来ないかなぁ?」

 

「ロプ!?それは試して見ないと、何とも言えないロプ・・・」

 

「それでも、このまま手を拱いているよりマシだわ!みんな、私達プリキュア5とローズ、ココとナッツで、シロップと共に試して見る・・・向こうにさへ辿り着ければ、みんなをバッドエンド王国に送れる方法が、きっと有るはずだわ!!」

 

 何もしないでこのまま途方にくれているよりは試した方が良いと、アクアもドリームの提案に同意する。

 

「私も一緒に行きます!また、あゆみさんからのメッセージが届くかも知れない!!」

 

「うん!じゃあみんな、私達・・・試して見るね!!」

 

「分かったわ!私達も他に何か手段が無いか捜してみる!!」

 

 ルミナスもプリキュア5とローズと共に行くと進言し、ドリームも同意した。パッションもその申し出に頷き、自分達も何か他に方法が無いか調べると伝えた。

 

 シロップは巨大化し、ドリーム達を背に乗せると大空へと飛翔した・・・

 

 

 

 三幹部、ジョーカー、アカンベェ、何時も以上の強さを見せる一同の前に、ハッピー達は大苦戦していた・・・

 

「ウフフフ!どうです!?だから言ったでしょう!自分達の愚かさを思い知りなさいって・・・我々が本気になれば、あなた方を倒す事など、造作も無い事何ですよ!あんな、小さく、弱く、泣き叫ぶだけの下らない妖精を助ける為に、ノコノコバッドエンド王国に乗り込んで来る何て・・・バカですねぇ!!」

 

 バッドエンド王国に、ジョーカーの嘲笑が響き渡ったその時・・・

 

「お黙りなさい!!私達の大切な友達を・・・愚弄するなど、絶対に許しません!!」

 

「ハァ!?あんな弱っちい妖精が・・・友達ですかぁ?アハハハハ!これは傑作・・・あなた、冗談のセンスもありますねぇ!!」

 

 ジョーカーのキャンディに対しての嘲笑を聞き、ビューティは烈火の如く怒りを露わにした。そんな、ビューティを見て、ジョーカーは更なる嘲笑を浮かべるも、

 

「友達は・・・下らなく何か無いわぁ!!」

 

「辛い時も、楽しい時も・・・いつもそばに居てくれる!」

 

「みんなで笑ったり、泣いたり、励まし合ったり!」

 

「一緒に居れば、どんな困難も乗り越えて行ける!そんな力が沸いてくるのぉぉ!!」

 

「みんな一緒じゃなきゃダメなの!キャンディも、友達や家族、みんな一緒じゃなきゃ・・・それが私達の、ウルトラハッピー何だからぁぁぁ!!か・が・や・けぇ~~~!!!」

 

「「「「「「スマイルプリキュア!」」」」」」

 

 スマイルと言った六人のプリキュア達・・・

 

 ビューティの言葉に同意するように、サニー、ピース、マーチ、エコー、そして、ハッピー、踏ん張り顔だったり、泣き顔だったり、必死だったり、怒っていたり、でもそれが笑顔へと続いている。笑顔でいられる為に、彼女達は・・・戦い続ける!!

 

 サニーが気合いを込め、大岩を持ち上げると、驚愕するウルフルン目掛け投げつけた。攻撃を食らったものの、ウルフルンは目を赤くして雄叫びを上げると、バーサーカーのように挑みかかった。だがサニーは、指をパチンと鳴らすと、拳に炎を纏い、パンチでウルフルンを吹き飛ばした。

 

 

 ピースは怖いのを我慢し、アカオーニに電撃を放った。忽ち感電するアカオーニであったが、雄叫びを上げると一回り巨大化し、棍棒でピースを思いっ切り殴りつけようとするも、ピースは電気を全身に纏って蓄えると、その姿を消した。ピースの姿を見失い、戸惑ったアカオーニに対し、ピースは電光石火、アカオーニの懐に飛びこんで肘打ちを食らわせた。

 

 

 マーチは、分身したマジョリーナの攻撃を、壁面を疾走して躱し、マーチシュートを放ってマジョリーナの分身を一体潰す。

 

「ハッ!一体消したからって、どうだって言うんだい?」

 

「だったら、全て消し去るまで・・・ウワァァァ!!」

 

 雄叫び上げたマーチは、自分の周囲に無数の緑の球体を出現させると、マーチシュートの連続蹴りで次々マジョリーナの分身を消し去り、本体にも命中させ、マジョリーナは地上に落下した。

 

 

「エコー!!」

 

「うん、ハッピー!!」

 

「「せぇのぉぉ!!」」

 

 ハッピーとエコーは、重心を低くして身構えると、呼吸を計ったようにアカンベェ目掛け突き進み、ダブルパンチでアカンベェを吹き飛ばした・・・

 

 

 ビューティは、氷を剣のように尖らせ、アイスソードをピュッと一降りすると、ジョーカーを剣先で威嚇する・・・

 

「フフ、何時までも調子に乗らない方が身の為ですよ!直ぐにその顔を・・・泣きっ面にして差し上げましょう・・・サディスさん!ベガさん!ディクレさん!お待たせしました!!」

 

 ジョーカーの合図を、待ち兼ねていたように、サニーの前にベガが、ピースの前にディクレが、マーチの前にサディスが姿を現わした。

 

「このタイミングであの三人を出すとは・・・ジョーカーめぇ・・・」

 

 再び奮い立てた気力を萎えさせるかのように、このタイミングでサディス、ベガ、ディクレを召喚したジョーカーの策略に、ポップは歯軋りした。

 

「今日こそ、決着を付けてやるぞ!プリキュア!!」

 

「この地をあんた達の墓場にしてあげるよ!!」

 

「覚悟しろ、プリキュア!!」

 

 サニー、ピース、マーチに身構えるベガ、サディス、ディクレ、更に・・・

 

「「「待ちな!!」」」

 

 再び起き上がった三幹部は目の色変えると、

 

「俺達は・・・負けられないんだ!!」

 

「絶対・・・勝つオニィィ!!」

 

「必ずお前達を・・・倒す!!」

 

 三幹部が紫玉を掲げると、目の下に黒い稲妻線が浮かび上がり、三人の表情をまるで悪鬼のような形相へと変えた・・・

 

 

「マーチ!サニー!ピース!」

 

 不安そうに、上空に浮かぶ三人の画面にビューティが目を奪われた隙を逃さず、レイピアを構えたジョーカーがビューティに突っ込み、反応が遅れたビューティのアイスソードを弾き飛ばした。

 

「クッ!」

 

 思わず片膝付き苦悶の表情を浮かべるビューティ、

 

 

「サニー!ピース!マーチ!ビューティ!キャァァァ!!」

 

 ハッピーもまた、油断した所をアカンベェの体当たりを受けて吹き飛ばされた。

 

「みんな大分疲れてる!このままじゃ・・・」

 

 エコーは、再び両手を組んで祈るようなポーズを浮かべると、

 

(プリキュアのみんなぁぁ!私達に、力を貸してぇぇぇ!!)

 

 再びエコーの思いが、プリキュア達の心に駆け抜けたその時・・・

 

 

 

 三幹部、三人の魔人、ジョーカー、アカンベェの攻撃を受け、ハァハァ荒い呼吸を繰り返していた一同の上空に、ヒラヒラ何かが舞い降りてきた・・・

 

「な、何や!?」

 

「これは・・・」

 

「手紙!?」

 

「何故、私達の下に手紙が!?」

 

「一体、これは・・・」

 

 手紙の封に使われていたのは、五色の蝶のマーク!

 

 ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティの表情が輝き、上空を見上げた!

 

 自分達が戦う姿が浮かび上がるバッドエンド王国の空が光輝くと、流星のように幾つかの光が流れた・・・

 

 

「全く・・・あんた達、無茶しすぎ!時には仲間を信頼しなさい!!」

 

「ルージュ!!」

 

 サニーの目の前に舞い降りたルージュが、サニーに手を貸し起き上がらせると、ウルフルンとベガの顔が険しさを増した・・・

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ハ、ハイ!」

 

 レモネードがピースを見てニッコリ微笑むと、目に涙を浮かべながらピースがコクリと頷いた・・・

 

 

「プリキュア!エメラルドソーサー!!」

 

 ミントが発したエメラルドソーサーが、サディスの攻撃をガードし、片膝付いて居たマーチを援護した。

 

「ありがとう!」

 

「どう致しまして!!」

 

 起き上がったマーチは、ミントにニッコリ微笑み掛けると、ミントも笑み返した。

 

 

「ハッピー!遅れてゴメンねぇ!!・・・あれ、その子は!?」

 

「あゆみさんがプリキュアになった姿・・・ですよね?」

 

「ドリーム!ルミナス!来てくれたんですね!!この子は、ルミナスの言う通り、私達の新しい仲間・・・あゆみちゃんがプリキュアになった姿・・・」

 

「キュアエコーです!!」

 

 エコーが二人に改めてお辞儀をして、駆けつけてくれた事への謝辞を述べると、ドリームは目を輝かせ、ルミナスはやはりと頷いた。

 

「凄ぉぉぉい!あゆみちゃんもプリキュアになれたんだねぇ!!」

 

 エコーの手を取ったドリームが、嬉しそうにブンブン手を振りながら微笑んだ。アカンベェは、雄叫びを上げながら一同に近付き、応援に来たドリーム、ルミナスが、目の前のアカンベェを睨み付けた・・・

 

 

 

「プリキュア!サファイアアロー!!」

 

 サファイアアローの乱れ撃ちが、ビューティに止めを刺そうとしたジョーカー目掛け降り注ぐ、咄嗟に躱したジョーカー目掛け、ローズの肘打ちがヒットし、ジョーカーが吹き飛ぶも、直ぐに体勢を整えた。

 

「ビューティ、大丈夫?」

 

「まだ、戦えるわよね?」

 

「アクア、ローズ、ありがとうございます!ハイ!!」

 

 ビューティは二人に微笑み掛け、ハイと頷いた。ジョーカーは、目の前に現われたアクアとローズ、空の画面に浮かび上がったルージュ、レモネード、ミント、ドリーム、ルミナスを見て驚愕し、

 

「バ、バカな・・・どうやってバッドエンド王国に!?」

 

 ジョーカーは、空を飛び交うシロップに気付くも首を傾げ、

 

(あの妖精の力!?いや、それだけでは無さそうですねぇ・・・)

 

「遙々ご苦労ですねぇ・・・しかし、その程度の戦力でバッドエンド王国に乗り込んで来るとは・・・」

 

 目を妖しく輝かせたジョーカーが、空に浮かぶルミナス、ドリーム、ルージュ、レオネード、ミントの映像、そして、目の前に居るアクアとローズを見ると、

 

「後悔しますよ!!」

 

 トランプカードを投げつけるジョーカーの攻撃を、アクアとローズは手で払い除けると、

 

「あら!?私達、一言も私達だけとは言っていないわよ?」

 

「私達がバッドエンド王国に来たという事は・・・」

 

 アクアとローズの言葉を表すように、バッドエンド王国の上空が赤く輝くと、再び数十個の流星が流れた・・・

 

 

「サニー!お待たせぇ!!」

 

「ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディ」

 

 サニー、ルージュの下に、ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディが・・・

 

 

「ピース!大丈夫だった?」

 

「私達も一緒に戦うわ!!」

 

「メロディ、リズム、ビート、ミューズも」

 

 ピース、レモネードの下に、メロディ、リズム、ビート、ミューズが・・・

 

 

 

「佐々木先生から聞いたわ!何とか間に合って良かった・・・」

 

「ムーンライト、ブロッサム、マリン、サンシャイン・・・来てくれたんだ!」

 

 マーチ、ミントの下に、ブロッサム、マリン、サンシャイン、ムーンライトが・・・

 

 

「ビューティ!遅れてゴメン!!」

 

「さあ、反撃開始と行きましょう!!」

 

「大丈夫!?」

 

「ビューティのその目を見れば分かるわ・・・キャンディを必ず救い出しましょう!!」

 

「ピーチ、ベリー、パイン、パッション・・・ありがとうございます!!」

 

 ビューティ、アクア、ローズの下に、ピーチ、ベリー、パイン、パッションが・・・

 

 エコーの導きは光を纏い、シロップを、アカルンを、バッドエンド王国へと導いた!!

 

 

 

「みんなぁ!!」

 

 駆けつけてくれた仲間達・・・

 

 頼りになる仲間達・・・

 

 ハッピーとエコーは、空に浮かび上がるプリキュアの仲間達の映像を見て目を輝かせた・・・

 

 

「バ、バカな!?バッドエンド王国には・・・結界が張ってあるのですよ?私の許可無く・・・」

 

「形勢逆転ね・・・覚悟しなさい!!」

 

 思わずヨロヨロ蹌踉めくジョーカーを見たアクアは、形勢を逆転したと自信に満ち溢れた顔を浮かべた。後ろにヨロヨロ後退したジョーカーであったが、直ぐに踏み止まると、口元に笑みを浮かべ、

 

「なぁ~んちゃって!ウフフフ!戦いとは、常に二手三手先を読むものです・・・バルガンさん!お待たせ致しました!!真打ち登場ですよぉぉ!!!」

 

 ジョーカーは、大げさなジェスチャーで空に両手を掲げると、バッドエンド王国の上空に、巨大な両目が浮かび上がり、両目が闇から姿を現わすと、二十メートルはあろう、巨大な大蛇に乗った、白い軍服のような服を着た男が、キャンディが居る祭壇付近に降り立った。

 

「あの人は!?」

 

 ドリーム達にはその姿に見覚えがあった・・・

 

 褐色の肌が白い軍服を一段と引き立てるその男は、右目が見えないのか、黒いアイパッチをしていた。耳まで裂けた口の下から生えた二本の牙が見えたその容姿に、確かに見覚えがあった!!

 

 横浜の、港の見える丘公園で見た魔界の者、バルガンの姿に・・・

 

 バルガンの出現は、再び形勢を逆転した・・・

 

 

 

3、大蛇(オロチ)

 

「オオ!オオ!!バルガン殿ぉぉ!!」

 

 ディクレの表情が輝いた!

 

 自分達は、完全に見捨てられた訳では無かったのだと・・・

 

 ディクレ、ベガ、サディス、三人の魔人の戦意が向上した・・・

 

 魔界の者の参戦は、紫玉を使った三幹部達をも刺激し、三人が一層の雄叫びを上げ、負の力を周囲に撒き散らした。

 

 

「な、何!?あの巨大な蛇は?」

 

「あそこにはキャンディが・・・」

 

「キャンディィィ!!」

 

「あれはまさか・・・嘗て三人の魔人と共に、メルヘンランドを襲った怪物では!?」

 

 大蛇・・・

 

 十二の魔神の内、四神に劣る八人の魔神にのみ持つ事を許された。龍族と並び、魔界の誇る蛇族の中の精鋭魔獣・・・

 

 嘗てメルヘンランドを襲ったディクレ、サディス、ベガが、魔界から召喚した巨大な魔物が大蛇である。ディクレは、親交のあったバルガンから借り受け、大蛇を使いメルヘンランドを蹂躙した事があった・・・

 

 ドリームが、エコーが、ハッピーが、そしてポップが、大蛇を見て驚愕する。バッドエンド王国の空を、うねりを上げて飛び続ける。だが、キャンディの下に向かうには、目の前で身構えるアカンベェを先ず倒す必要があった・・・

 

「こんな所でモタモタしてられないね・・・私が突っ込むから、ルミナスとエコーは援護して!」

 

 ドリームはびっくり箱アカンベェ目掛け駆け出すと、アカンベェは口から火炎を吐いてドリームを牽制した。素早く反応し攻撃を回避するドリーム、ルミナスのバリアが攻撃を防ぎ、エコーがアカンベェを挑発し、自分に注意を引きつけた。

 

「今だ!プリキュア!シューティングスター!!」

 

 ドリームは、シューティングスターでアカンベェに突っ込むと、アカンベェはその威力に押され、ひっくり返った。

 

「ハッピー!今よ!!」

 

「はい!プリキュア!ハッピー・・・シャワ~~!!」

 

 ドリームの合図に頷いたハッピーが、ハッピーシャワーを放ち、起き上がれず藻搔いていたアカンベェを浄化し、デコルデコールを元の姿へと戻した。

 

「これで、デコルデコールを・・・キュアデコルを取返したでござる!!」

 

 だが、喜んでばかりは居られなかった・・・

 

 キャンディの直ぐ側には、バルガンが、巨大なる大蛇が居るのだから・・・

 

「禍々しい力を感じます・・・皆さん、気をつけて下さい!!」

 

 表情を引き締めたルミナスが、ドリーム、エコー、ハッピー、そして、画面を通じてプリキュアの仲間達や妖精達に注意を促した・・・

 

 

 

「あなた方・・・此処に何をしにいらしたんでしたっけ!?」

 

「な、何をバカな事を・・・言った筈です!キャンディを、キュアデコルを取り戻して見せると!!」

 

「私達が来た以上・・・好きにはさせないわ!!」

 

 ビューティが、ローズが、身構えながらジョーカーに鋭い視線を浴びせ続ける。アクアはジョーカーの態度を訝しがり、

 

(おかしい・・・この男、何を企んでいるの?)

 

 ジョーカーの真意が読めず、アクアの額から汗が滴り落ちた。

 

「ウフフフ、そうでしたねぇ・・・ならば、此処で絶望を味わいなさい!バルガンさん!その妖精はもう役立たずですので・・・大蛇の餌にして下さって結構ですよ!!」

 

「な、何ですってぇぇ!?」

 

 バッドエンド王国に響き渡るジョーカーの声を聞き、プリキュア達に戦慄が走った・・・

 

 キャンディを大蛇の餌にするなど、絶対にさせる訳にはいかなかった・・・

 

 

「フン、このような小物一匹食しただけで、大蛇が満足するものか!」

 

「ですよねぇ?幸い、此処には・・・プリキュアという大蛇の餌がゴロゴロ居ますから、満足出来ると思いますけどねぇ?」

 

「そういう事か・・・良かろう!来い、我が下僕共!魔界樹マンドレイクよ!!」

 

 バルガンが両手を上げると、それに答えるようにボトボト上空から何か降って来る。それらは地中の中にめり込み、直ぐに地上に出てくると、触手を持ったどす黒い植物のような姿になって、プリキュア達の前に現われた。

 

 マンドレイク・・・

 

 魔界に生えると言われ、根茎が複数分かれたその根には、毒が含まれていた。その根は古来、薬草としても使われ、麻薬効果、催眠効果をも引き起こした。かのクレオパトラも飲んでいたという伝説すらあった。地面から無理矢理引き剥がした時、マンドレイクが発した叫び声を聞いた者は、発狂するか、死を迎えると言い伝えられていた・・・

 

 

「何!?この薄気味悪いのは?」

 

「気をつけた方が良いわね・・・どんな攻撃をしてくるか分からない」

 

 驚愕するブルームに、顔色変えたブライトが一同に忠告を与えた・・・

 

 ウネウネ揺らぐマンドレイクは、プリキュアを敵と見なしたかのように、触手で攻撃を開始した・・・

 

 

 

「マンドレイク・・・聞いた事があるわ!確か・・・みんな、マンドレイクと戦う時は、絶対に無理矢理地上から引き抜かないで!!」

 

 ミントは、何かの小説でこのマンドレイクの事を読んだのを思い出し、顔色変え慌てて空に浮かび上がる画面を通じ、一同に語り掛けた。

 

 

 

 マンドレイクの不気味な姿を見て、少しビビリ顔のルージュ、困惑の表情を浮かべながら、

 

「何!?この薄気味悪いの・・・ちょっと、こっち来ないでよぉぉ!プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

「ウチも行くでぇ!ウチの炎で燃やしたるわぁぁ!!プリキュア!サニー・・ファイヤー!!」

 

 ファイヤーストライクが、サニーファイヤーが、マンドレイク目掛け炸裂すると、マンドレイクの群れが、炎に包まれ燃え尽きた・・・

 

「ルージュ、サニー、マンドレイクをお願い!私達は、此奴らを・・・」

 

 ウルフルンに身構えるブルームとイーグレット、ベガを睨み付けるブライトとウィンディ、両者が突っ込み攻撃を仕掛けた・・・

 

 

 

「何か薄気味悪いよぉぉ・・・でも!プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

 マンドレイクの群れにピースサンダーを浴びせると、マンドレイクの群れが黒焦げになっていく。マンドレイクに気を取られていたピースに、アカオーニが棍棒で殴りつけようとするのを、レモネードがプリズムチェーンで捕らえると、

 

「させませんよぉぉ・・・ビート!ミューズ!」

 

「OK!プリキュア!ビート・・・ソニック!!」

 

「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリング・・・シャワー!!」

 

 ビートソニックが、スパークリングシャワーがアカオーニ目掛け炸裂すれば、メロディとリズムが、ディクレと激しい肉弾戦を繰り広げた・・・

 

 

「ミ、ミントォォ!」

 

「大丈夫よ!断末魔の悲鳴さへ聞かなければ、マンドレイクは恐れる事は無い筈よ!」

 

 ミントにしがみつき、動揺するマーチを励ますミント、サンシャインはそれを見てクスリと笑うと、

 

「マーチ!あなたは、マジョリーナとの戦いに集中して!!マンドレイクは私が・・・サンシャイン!フラ~ッシュ!!」

 

 サンシャインは、手から光の光弾を無数に放つと、マンドレイクの群れを光に包み込んで消滅させていった・・・

 

「あ、ありがとう!マジョリーナ相手なら・・・」

 

「あたしが相手なら何だって言うんだ・・・プリキュアァァァ!!」

 

 マーチとマジョリーナ、蹴りと蹴りがぶつかり合った・・・

 

「貴様には、あの時踏みつけられた借りがあったねぇ・・・」

 

「決着を付けましょう!ブラックとホワイトの分まで・・・私は戦い続ける!!」

 

 ムーンライトとサディスが正面から激突した・・・

 

「あのぅ・・・私達も居るんですがぁ?」

 

「あたし達・・・完全に出遅れちゃったじゃない!」

 

 辺りを見回し、相手が居なくて途方に暮れるブロッサムとマリンであった・・・

 

 

 マンドレイクの群れを駆逐しながら突き進む、ハッピー、ドリーム、ルミナス、エコー、取り戻したデコルデコールを持ちながら走り付けるポップ、五人の目に、巨大な柱に挟まれた祭壇が見えてくる。

 

「「「「キャンディ!」」」」

 

「ハッピー!みんなぁ!お兄ちゃぁぁん!!」

 

 泣き叫ぶキャンディ、祭壇に近付く四人を威嚇するように、巨大な大蛇が低空で飛行し、五人は思わず戦慄する。近くで見た大蛇の迫力は想像を絶していた・・・

 

「プリキュアと言ったな?やはり貴様らと戦わせるには、マンドレイクでは力不足であったか・・・では、お前達の相手は・・・この私自らしてやろう!!」

 

 腕組みしたバルガンがドリーム、ハッピー、ルミナス、エコーに掛かって来いと一同を挑発すると、ドリームは険しい表情を浮かべながら、

 

「あの時、私達と戦う気は無いって言ったくせに・・・嘘つき!!」

 

「嘘!?フッ、ここはお前達の住む世界か?此処で戦う事に、何のお咎めも受けん!!」

 

「そんなの屁理屈よ!!」

 

「文句があるなら・・・腕ずくで退かしてみろ!!」

 

 頬を大きく膨らませたドリームがバルガンに文句を言うも、バルガンは一笑に付した。アイコンタクトをしたハッピーとエコーが、バルガン目掛け攻撃を仕掛けようとするも、バルガンの負の力を浴びて吹き飛ばされた。

 

「ハッピー!エコー!このぉぉ・・・プリキュア!シューティングスター!!」

 

 シューティングスターでバルガン目掛け突撃したドリームであったが、バルガンは右手一本でシューティングスターを受け止めると、左手でドリームを思いっ切り殴り飛ばした。

 

 

 

「そんな、ドリームのシューティングスターを右手だけで受け止める何て・・・」

 

「あいつ・・・強いわね!!」

 

 驚愕するアクアとローズ、苦戦するドリーム達を、空に浮かぶ映像で見たムーンライトは、

 

「アクア、ミント、ルージュ、レモネード、ローズ、あなた達はドリームの援護に向かって!!」

 

「そうです!私達に任せて下さい!!」

 

「大船に乗った気で、あたし達に任せた!任せた!!」

 

 ブロッサムとマリンも同意し、ドリーム達の下に向かうように言うと、さっきまで戦う相手が居なくて困惑していた二人を見て、醒めた視線を浮かべるシプレ、コフレ、ポプリであった。

 

 シロップが下降し、中に居たココとナッツと共に、アクア、ミント、ルージュ、レモネード、ローズがドリーム達の下へと飛び上がった・・・

 

 

 

「貴様らに、あの妖精は・・・救へはしない!さあ大蛇よ、生け贄を食らうが良い!!」

 

 バルガンが大蛇に命じたその時、ハッピーが、エコーが、ドリーム、ルミナス、ポップが戦慄する。再び立ち上がった一同が、バルガン目掛け攻撃を開始するも、バルガンを突破する事は出来なかった・・・

 

 ポルン、ルルンは妖精姿になり、バッドエンド王国の空を見つめると、

 

「未来へ導く光の王子・・・ポルン!」

 

「未来を紡ぐ光の王女・・・ルルン!」

 

「プリキュラァァ!!キャンディを助けてポポォォォ!!!」

 

 ポルンとルルン、二人の身体から、凄まじい輝きがバッドエンド王国上空に浮かび上がった。

 

「な、何だ!?これは?」

 

 さすがのバルガンも、二人から発せられた光の力に驚愕する。だが、光は闇の中で消え失せ、ポルンとルルンは、悲しげな表情で耳を塞ぎながら落ち込み、

 

「駄目ポポ・・・」

 

「届かないルル・・・」

 

「何事かと思えば・・・目障りだ!消えろ!!」

 

 バルガンは、負の力をポルンとルルンに浴びせようとすると、二人は怯え、震え出す。ルミナスが間一髪割って入り、バルガンの攻撃を防ぎきった。

 

「みんなに手出しさせない!!」

 

 両手を広げ険しい表情を浮かべるルミナス、ハッピー、エコー、ドリームも立ち上がり、

 

「そこを退いてぇぇ!!プリキュア!ハッピー・・・シャワ~~!!」

 

「無駄だ!!」

 

 再び右手一本で受け止めたバルガンであったが、ハッピーシャワーの威力で、少し後ろに押され出し、更にドリームが雄叫びを上げると、

 

「私達は、キャンディを・・・救うんだからぁぁぁ!プリキュア!シューティングスター!!」

 

 再びバルガンに対しシューティングスターを放つドリーム、バルガンは左手で受け止めようとするも、その威力を止められず、右手を使い何とか受け止め、ドリームを再び吹き飛ばした。

 

(こいつら・・・攻撃する度に力が増しているような!?)

 

 バルガンは忌々しげな表情を浮かべると、目を金色に輝かし、

 

「調子に乗るなぁぁ!!」

 

 バルガンの肉体に変化が巻き起こる・・・

 

 腕が、足が、植物のように変化し、足は大地に根を張り、腕は無数に枝分かれして、触手がドリーム、ハッピー、エコー、ルミナス、ポップを捕らえ締め付ける。逃げ惑うポルンとルルンを助けるべく、コミューン姿から妖精姿になったメップル、ミップルが、触手から二人を庇い捕らえられる。逃げ続けていたポルン、ルルンも捕らえられ、一同から悲鳴が漏れる。

 

 

 

「素晴らしい!素晴らしいですよ!バルガンさん!!」

 

「バカめ、バルガン殿を本気にさせるとは・・・プリキュア!貴様らはこれで終りだ!!」

 

 ジョーカーが、ディクレが、バルガンの実力を見てほくそ笑み、画面を見ていたプリキュア達から悲鳴が漏れた・・・

 

「さあ、バルガンさん!プリキュア共に絶望を見せつけて上げて下さい!!」

 

 狂気の笑みを浮かべたジョーカーが、バルガンに進言すると、バルガンは大蛇を振り返り、

 

「さあ、やれ!大蛇!!」

 

「キィシャァァァ!!」

 

 バルガンの命を受けた大蛇が、獲物を見付け急降下してくる。それを見たキャンディは大泣きしながら、

 

「クゥゥルゥゥゥ」

 

「「イヤァァァ!!キャンディィィィィ!!!」」

 

 ハッピーとエコーの叫び声が、画面を見ていたサニー、ピース、マーチ、ビューティの悲鳴が空しく響き渡ったその時・・・

 

 祭壇の上の上空から光が舞い降りた・・・

 

 光が祭壇のキャンディを照らした・・・

 

 キャンディは、眩しそうに薄めを閉じるも、光の暖かさを感じていた・・・

 

「あれは・・・さっき、ポルンとルルンが放った光なの?」

 

 ルミナスにも状況が飲み込めず、困惑の表情を浮かべる。ポルンとルルンは何かを感じたのか顔を上げると、

 

「ポポ!?」

 

「ルル!?」

 

 苦悶の表情を浮かべながらも、光の輝きを見つめた一同、戦って居たプリキュア達と妖精達も、シロップに乗っていたプリキュア5とローズ、ココとナッツも、バッドエンド王国の者達も、呆然としながら空に浮かぶ画面を見つめ続けた・・・

 

 戸惑っていた大蛇だが、光に怯む事無く、再びキャンディ目掛け急降下をかけた。だがその大蛇の巨体が、への字に曲がりながら吹き飛び、激しく地上に叩き付けられのたうち回った。

 

「な、何だ!?何が起きた?」

 

 大蛇の巨体が吹き飛んだ事に、バルガンが驚愕の表情を浮かべた。大蛇を叱咤し、さっさとキャンディを餌食にしろと命じるも、大蛇は奇声を発しながら宙を見つめ続ける。

 

(な、何だ!?大蛇が・・・怯えているだと?)

 

 バルガンは、大蛇、そして、キャンディが見つめる視線の先を見上げた・・・

 

 視線の先は、巨大な二本の柱の上を見つめていた・・・

 

 そこには、二つの人影が立って居た・・・

 

「貴様ら・・・何者だ!?」

 

 険しい表情を浮かべたバルガンが、二つの人影に問うと、二つの影は柱からジャンプし、祭壇の前に降り立ち合流すると、背後を振り返りキャンディに微笑みを向けた。

 

「クゥゥルゥゥ!!」

 

 キャンディは、涙混じりの笑顔を二人に浮かべ返した・・・

 

 黒と白、二つの衣装を身に纏った二人は、バルガンと大蛇をキッと見つめると、

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力のしもべ達よ!」

 

 ホワイトが、バルガンを険しい顔で睨みながら指差し、

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

 ブラックが、大蛇を指差し睨み付けた!

 

 キュアブラック・・・

 

 キュアホワイト・・・

 

 参戦!!

 

 

          第五十九話:プリキュアVSバッドエンド王国!!(前編)

                     完

 


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