プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第五十四話:加音町パニック!透明人間現わる!?

1、ミエナクナール

 

 5月5日・・・

 

 音楽の町加音町は、一年前、闇の救世主を名乗るバロムによって闇に覆われた・・・

 

 プリキュア達の活躍によって、闇から解放された加音町だったが、そのあちらこちらに甚大な被害の後が残っていた・・・

 

 加音町復興を手助けしようと集まった人達が、盛大に催し物を開いた・・・

 

 あれから一年・・・

 

 加音町は、嘗てのような音楽の町の姿を完全に取り戻していた・・・

 

 

 加音町では、町民一同が朝から復興祭準備で大忙しだった。もちろん、響、奏、エレン、アコも、広場の前で参加するフリーマーケットの準備をしていた・・・

 

「みんなも品物持って来てくれるって言ってたし、少し大きめにスペース取って置いたのが幸いしたね!」

 

「ええ、みんなが何を持って来てくれるのか楽しみよね!」

 

 響と奏は、プリキュアの仲間達がどんな物を持って参加してくれるのか、楽しそうに顔を見合わせ微笑んだ。エレンは紙袋から取りだした衣装を並べ始めると、アコはジッとエレンの並べた衣装を見つめ、

 

「ねぇ・・・そんな派手な衣装、誰か買うの?」

 

「エッ!?分からないけど、私はこんなの二度と着ないし・・・」

 

 困惑気味に目の前の衣装を見つめるエレン、嘗てマイナーランドの歌姫だった時、テレビカメラが来ているのを知るや、サンバのような衣装を着た事があった。その時の衣装を売りに出そうとしていた。響と奏は、その時を思い出したのかクスクス笑いだし、

 

「エレンったらTVカメラの前で、この衣装着てドヤ顔でポーズ取ってたよね?」

 

「そうそう!」

 

 二人に思い出し笑いをされ、エレンは顔を真っ赤にすると、朧気ながらその時の事を思い出し、

 

「し、仕方無いでしょう!あの時は・・・もう、響!奏!」

 

 顔を真っ赤にしたエレンは、からかう響と奏を追いかけ始め、アコとピーちゃんは顔を見合わせ溜息を付くも、そんな三人を見て笑いだす。ハミィとフェアリートーン達は、そんな騒動も気づかぬように、奏の差し入れのカップケーキを食べるのに夢中だった・・・

 

 

 

「ウワァ・・・ここが加音町!」

 

 みゆき、あかね、やよい、なお、れいかは、キャンディとポップ、あゆみ、そして、プリキュアの事を知っている佐々木先生と共に、ここ加音町にやって来ていた。まるで一同を歓迎するように、響き渡る優しいメロディに、皆心が和むような気がした。

 

「良い音色ね・・・音楽の町とは聞いていたけれど、ここまでとは想像してなかったわ!」

 

 佐々木先生も辺りを見回し、加音町が音楽の町と呼ばれる理由が分かるような気がした。

 

(この間、通天閣であった子達に誘われて来たものの・・・プリキュアのみんなに会ったら、どう挨拶しよう・・・)

 

 当初、佐々木先生は加音町に来るつもりは無かった。だがみゆき達から、プリキュアのみんなには危ない所を何度も助けられていると聞き、彼女達の担任として、一言お礼を言うべきであろうと判断し、こうしてやって来ていた・・・

 

「みゆき!あかね!やよい!なお!れいか!あゆみ!」

 

 名前を呼ばれた六人の少女達が振り返ると、そこにはつぼみ、えりか、いつき、ゆり、ひかりが居た。えりかが右手を大きく振り、みゆきがそれを見て振り返す。佐々木先生はゆりを見ると、横浜スタジアムでみゆき達を庇った三人組の一人だと思いだし、

 

(ああ、彼女達も・・・プリキュア!!)

 

 一方のゆりも、ラブから電話で、みゆき達の担任の先生には、自分達がプリキュアだという事は知られている事を聞いており、挨拶しておくべきだろうとは思っていた。

 

「この前はどうも!私は、彼女達の担任の佐々木なみえと申します!あなた達もプリキュアだったのね・・・あの時は気付かなかったわ!!」

 

「いえ、気付かれたら拙いんですが・・・私は月影ゆりと申します!あの時は,嘘を言って申し訳ありませんでした!」

 

 他にも人が居るので、小声で会話しあう佐々木先生とゆり、佐々木先生はつぼみ、えりか、いつきの頭の上に居るぬいぐるみのような物を見ると、

 

「ひょっとして・・・あの子達も妖精!?」

 

「はい!名前はシプレ、コフレ、ポプリ、彼女達のパートナー妖精です!!」

 

「パートナー!?・・・じゃあ、横浜スタジアムであなたが抱いていた白い猫、あの子があなたのパートナーなのね?」

 

「いえ、あの子はハミィと言って、シプレ達とは違う国の妖精です!あの場を誤魔化す為に,協力して貰ったんです。私のパートナーは・・・」

 

 そう言いながら悲しげに視線を落としたゆりを見て、佐々木先生は拙い事を聞いたと瞬時に理解した。ゆりは周りを見ると、

 

「場所を変えませんか?ここは人が多すぎますので・・・」

 

「そうね・・・そうしましょうか!」

 

 佐々木先生も同意してくれて、ゆりは、つぼみ達、ひかり、みゆき達に、先に響達の所に行ってと伝えると、一同は二人に手を振りながら立ち去った。

 

 二人も場所を移し、ゆりは調べの館へと佐々木先生を案内した。佐々木先生は調べの館を見回し、こういう場所もあるのかと、歴史を感じさせる調べの館を興味深げに見渡し、

 

「良い場所ねぇ・・・ところで、さっきはゴメンなさい!嫌な事を聞いたみたいで・・・」

 

「いえ・・・先生!みゆき達の事、理解してくれてありがとうございます!!」

 

「まだ全てを知ってる訳じゃ無いわ・・・出来れば止めたいけれど、彼女達の力が必要何でしょう?」

 

「はい!それだけは確実に言えます!!私達が今まで戦ってきたように、彼女達は、メルヘンランドという妖精達の国を守る為には、必要不可欠だと私は思っています!!」

 

 ゆりはそうはっきり断言した・・・

 

 あれだけの人数のプリキュアが居ても、尚みゆき達の力が必要不可欠だと聞き、佐々木先生は、みゆき達が強大な敵と戦っている事を改めて思い知らされ、表情が強張る。ゆりは、佐々木先生を安心させるかのように、

 

「当然、私達プリキュアも彼女達をフォローします!今は二人欠いていますが、彼女達も必ず戻って来て、私達に力を貸してくれる筈です!!」

 

 ゆりが言った二人とは、なぎさとほのかの事であるが、ゆりは自分にも言い聞かせるように、二人は必ず戻ってくると伝えた・・・

 

 

 

「響さん、奏さん、エレンさん、アコちゃん、お待たせしました!」

 

「つぼみさん、みんなも、いらっしゃい!!みゆきちゃん達やあゆみちゃんは初めてだよね?ようこそ!加音町へ!!」

 

 響達の姿を見付けつぼみが声を掛けると、響達は嬉しそうに近付き、一同を歓迎するのだった。

 

「響さん、奏さん、エレンさん、京都ではありがとうございました!!」

 

「ううん、気にしないで!」

 

 みゆきが京都で助けてもらった礼をすると、響は照れくさそうに気にしないでと伝え、れいかはエレンの前に来ると、

 

「ラブさんとせつなさんからお伺いしました。エレンさんがお二方に、大阪に居る私達の援護に向かうように頼んで下さったそうですね!ありがとうございました!!」

 

「どう致しまして!本当は私達が駆けつけたかったんだけど、側に響のお父さんやみんなが居たから・・・せつなとラブが間に合ってくれたようで良かった!」

 

 エレンがニッコリ微笑むも、奏は少し表情を曇らせ、

 

「でもあなた達、担任の先生にプリキュアだって・・・バレちゃったんでしょう?」

 

「それを言ったら、私達全員何だけどね!」

 

「ラブさん、美希さん、祈里さん、せつなさん、いらっしゃい!!」

 

 奏の発した言葉に答えた人物を見て、一同が微笑んだ。ラブ達四人も笑みを浮かべながら、ひかり、つぼみ達、響達に会釈すると、あゆみが四人に近付きこの間の謝辞を述べた。

 

「ラブさん!祈里さん!せつなさん!この間はありがとうございました!!」

 

「ううん、私達も楽しかったよ!」

 

 ラブ、祈里、せつなもあゆみに笑顔を向けた。美希は複雑そうな表情を浮かべ、

 

「あゆみちゃん、この間はゴメンね!前もって言ってくれれば、あたしもスケジュールの調整出来たんだけど・・・もう、ラブとせつなったら・・・」

 

「ゴメン!美希たん!!」

 

「あゆみとの話の流れでそうなっちゃったから・・・美希、悪気は無かったのよ!!」

 

 ラブとせつなを、不満げな表情で見つめる美希に、思わずラブとせつなは美希に拝むような姿で詫びるのだった・・・

 

 

 

「みんな、良く来てくれたニャ!ハミィとピーちゃん、フェアリートーン達で、みんなを案内するニャ!!」

 

 ハミィとピーちゃん、そしてフェアリートーン達は、加音町にやって来たメップル、ミップル、ポルン、ルルン、シフォン、タルト、シプレ、コフレ、ポプリ、ポップ、キャンディを前に、加音町をみんなに案内すると張り切っていた。

 

「わいらがウロウロして、大丈夫何か?」

 

 タルトは、妖精である自分達が、街中をウロウロ歩き回っていても大丈夫なのかと問うと、タルトの言葉を聞き少し考えたハミィは、

 

「大丈夫ニャ!ハミィだって、何時も加音町の中を歩き回ってるニャ!!」

 

「メポ・・・ハミィは猫の姿だから何とも思われてないだけメポ」

 

「そうですぅ・・・ぬいぐるみの振りをしないと不味いですぅ」

 

 楽観的なハミィの言葉を聞き、メップルとシプレはぬいぐるみの振りをしてないと駄目だと言うと、ハミィは少し考え、大丈夫だと笑みを浮かべた。キャンディは興味深げに辺りをキョロキョロしていると、脇道にキラッと輝く物が見え、不思議そうに側に近付いて行った。

 

「キャンディ、どうしたでござる?」

 

 ポップの言葉を聞いた妖精達が、キャンディの下に行ってみると、そこには一台のカメラが置かれていた・・・

 

「落とし物みたいですっ」

 

「わいらが交番に届ける訳にも行かへんし」

 

「ひかり達に届けて、お巡りさんに渡して貰うミポ」

 

 妖精達は頷き合い、一同の下へと戻って行った・・・

 

 

 

「加音町に来たのはクリスマス以来だね!」

 

「クリスマスの時点でも、大分活気を取り戻しては居たけど、まだあの時は、至る所にバロム達と戦った爪痕が残って居たものね・・・」

 

 ラブと美希は、一年前のバロムとの戦い後と、クリスマスに加音町に来た時を思い出し、互いに感想を述べていると、せつなは何かを思い出した表情でアコを見て、

 

「加音町でバロムと戦って居たって話で思い出したけど、あの時アコは何処に居たの?」

 

「そういえば、あの時響さんと奏さんは、覆面のプリキュア、キュアミューズの事を言ってましたもんね・・・」

 

「メイジャーランドに戻って居たの?」

 

 せつなの言葉で、つぼみと祈里も思い出したようにアコに聞くと、アコは眼鏡の位置を直しながら、

 

「あの時は、お爺ちゃんと調べの館に居たの!禍々しい気配を感じたお爺ちゃんが、調べの館に結界を張ってくれたから、何とか見つからずに済んだんだけど、私達は、調べの館から出るに出られない状況に陥ってしまったの・・・」

 

「どうりであの時、アコや音吉さんの姿を見ないと思ったよ!」

 

「キュアミューズが現われないのは、おかしいと思ったものねぇ?」

 

 響と奏も、真相を今知ったようで、ウンウン頷き納得していた。

 

「あの時は酷い目にあったよねぇ・・・倒した敵が甦るわ!プリキュア同士で戦わされるわ!あの時、ルミナスが居てくれなかったら、あたしら全滅してたんじゃないの?」

 

「確かに・・・ルミナスのお陰で、私達は正気に戻れたようなものだしね」

 

 えりかの言葉にラブも同意し、一同の視線がひかりへと向けられると、ひかりは少し頬を染めながら、

 

「いえ、私だけの力じゃ・・・皆さんの意思が氷の心を打ち破ったんです!!」

 

「氷の心・・・ですか!?」

 

 思わず氷の戦士ともいえるれいかが驚きの声を上げると、あの時の状況を知らないアコやみゆき達、あゆみに分かりやすいように美希が話し始め、

 

「簡単に言えば、敵の命令通りに動くように操られたのよ・・・もう二度とあんな思いはゴメンだけど・・・」

 

「そないな事があったんや・・・」

 

「うん!」

 

 プリキュア同士で戦ったと聞き、あかねも驚愕し、いつきが複雑な表情をしながら頷いた。そんないつきに、戻って来たポプリが抱きつき、いつきは微笑みを向けるも、キャンディがカメラを持って居る事に気付き、

 

「あれ!?キャンディ、カメラ何かどうしたの?」

 

「あそこに落ちてたクル!」

 

 キャンディがそこの路地で拾ったと言うと、みゆきの脳裏に嫌な予感が漂ったものの、えりかはカメラを見るや目を輝かし、

 

「カメラかぁ・・・折角だから、みんなで一枚撮ろうよ!」

 

「えりか!落とし物を勝手に・・・」

 

「良いじゃん!後で交番に届ければ良いし、拾い主の権限って事で・・・みんな!集まるっしゅ!!」

 

「あっ、じゃあ私が撮りますから、キャンディ達もみんなと一緒に並んで!」

 

 つぼみがえりかを窘めようとするも、えりかに押し切られ、あゆみは自分が写すから、キャンディ達もみんなと並ぶように伝えると、ひかり、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達、そして妖精達が整列する。

 

「じゃあ、撮りますよ!はい、チーズ!!」

 

 パシャっと、カメラからのフラッシュが一同に浴びせられ、あゆみが一同に視線を向けると、

 

「エッ!?皆さん、何処ですか?」

 

 あゆみは呆然とした・・・

 

 今まで目の前に居た一同が、突然消え失せたのだから・・・

 

 あゆみの脳裏に、横浜の地で消えたブラックとホワイトの事が思い出され、見る見る青ざめたあゆみは、ゆりの名を大声で呼びながら、

 

「ゆ、ゆりさん、大変です!みんなが・・・ゆりさぁぁぁん!!」

 

 あゆみは、大慌てでカメラを置いたまま、ゆりを探しに走り出した・・・

 

「あゆみちゃん、どうしたんでしょう?」

 

「何やエライ驚いてたなぁ・・・」

 

 あゆみが大慌てでこの場から去って行ったのを、不思議そうに眺めていた一同、つぼみは小首を傾げながら、何故大慌てでゆりを呼びに行ったのか、不思議そうにしていると、あかねも、あゆみの走り去って行く後ろ姿を見つめ、小首を傾げた。

 

「取り敢えず、他のみんなが来るまで商品でも並べておこうよ!」

 

「そうね!みんなも、持って来てくれた物をそこに並べて下さい!!」

 

 響の提案に奏も同意し、一同にブルーシートの上に並べて欲しいと言うと、一同は、言われた通り持って来た商品を並べだした。

 

 不思議な事に、自分達の前を通りかかった人々は、皆怪訝な表情を浮かべ、中には悲鳴を上げて慌てて立ち去る人も居た。

 

「ねぇ、何かあたし達を見る人達の様子・・・変じゃない?」

 

「そうですねぇ・・・みんなギョっとしたような表情してましたよねぇ?」

 

 美希の言葉につぼみも同意し、小首を傾げて居ると、一人の少年が小箱を抱えながら駆け寄って来ると、

 

「あれ!?姉ちゃん達何処行ったんだろう?たく、品物置きっぱなしにして何やってるんだか・・・」

 

 現われたのは奏の弟の奏太、母美空から、みんなへのカップケーキの差し入れを持ってやって来たのだが・・・

 

「ちょっと奏太!何言ってるのよ?目の前に居るでしょう!!」

 

 変な事を言う奏太に、ムッとした奏が声を掛けるも、奏太には聞こえていないようで、響、アコ、エレンも声を掛けるも、やはり奏太の耳には聞こえ無かった・・・

 

「変ですねぇ・・・どうして、私達の声が聞こえないんでしょうか?」

 

「声が聞こえへんなら・・・行動で知らしめればエエやん!」

 

 つぼみが小首を傾げ、あかねは意地悪そうな表情を浮かべると、両指を動かすや奏太の身体をくすぐり始め、

 

「キャハハハハ!アコ?それとも響姉ちゃん?もう止めて・・・エッ!?」

 

 笑いながら背後を振り向いた奏太は、ギョッとすると、顔面蒼白になり慌ててその場から飛び退くと、通行人が何事かと奏太に声を掛けると、

 

「お、お化けだぁぁ!何かが俺の身体をくすぐったぁぁ!!」

 

「ま、まさか・・・って、エェェェ!?」

 

 奏太を始めとする通行人達が、皆一斉にひかり、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達の方を指差し、お化けぇぇと悲鳴を上げながら逃げ始めた。

 

「お、お化け!?イヤァァァ!!」

 

「ど、何処!?」

 

 お化けという声を聞き、エレンとなおが激しく動揺し震え出し、みゆきも引き攣った顔で隣に居るやよいにしがみついた。悪のりしたえりかとあかねは、

 

「エレン・・・なお・・・ゆっくり背後をみてみ!」

 

「二人の背後で・・・こんな顔が笑っとるでぇぇ!!」

 

 えりかとあかねが、怖い顔でビビって居るエレンとなおをからかうと、

 

「「イヤァァァァァァァ!!」」

 

 見る見る青ざめたエレンとなおは、悲鳴を上げながらその場から逃亡した・・・

 

「セイレーン!!」

 

「なお!待って!!」

 

 慌てて二人に声を掛けるハミィとれいかだったが、二人はそんな声も聞こえないかのように街中へと消えて行った。響と奏も心配そうにエレンとなおの後ろ姿を見つめ、

 

「エレン!なおちゃん!大丈夫かなぁ!?」

 

「えりか!あかね!冗談が過ぎるわよ!!」

 

 響が二人を心配し、少し怒った表情をした美希が、えりかとあかねを窘めた。流石にえりかとあかねもやり過ぎたと反省し、

 

「いやぁ、あそこまで驚くとは・・・」

 

「せやなぁ・・・後で二人に謝まらないかんわ」

 

 えりかとあかねは、走り去った二人の方角を眺め、反省するのだった。

 

「なおちゃんとエレンさん、大丈夫かなぁ?」

 

「ええ、なおは昔からお化けが苦手でしたから・・・」

 

「セイレーンもそうニャ!」

 

 やよい、れいか、ハミィも二人を心配そうに走り去った方角を見つめていると、ひかりは複雑な表情を浮かべ、

 

「でも・・・おかしいですよね!?何故みんな、私達を見て驚いたんでしょう?」

 

 ひかりの疑問に、困惑した表情のみゆきがキャンディを見つめると、

 

「キャンディ・・・あのカメラ拾ったって言ってたよねぇ?ちょっと見せてみて!」

 

 キャンディからカメラを受け取ったみゆきが調べてみると、レンズの下側に、マジョリーナの顔が付いて居た・・・

 

「やっぱりあの人達のカメラだよぉぉ!!今度は私達、どうなっちゃうのぉぉぉ!?」

 

 見る見る変顔を浮かべたみゆきは、一同にカメラを見せ、この間マジョリーナのアイテムのせいで、咲と中身が入れ替わった事を伝えると、一同も呆然とし、みゆきはトホホ顔でカメラを見つめていた・・・

 

 

 

 一方、目の色変えて逃げ回るエレンとなおは、道行く人々に触れるのもお構いなく悲鳴を上げながら走り回り、二人に触れられた人々もまた悲鳴を上げ、加音町はちょっとしたパニック状態になっていた・・・

 

「な、何か騒がしくなってきたし・・・ゆりさぁぁん!!」

 

 半べそ掻きながらゆりを探し回るあゆみは、ようやく調べの館前に居たゆりと佐々木先生を見付けた。

 

「ハァ、ハァ・・・よ、ようやく見付けた・・・ゆりさん!佐々木先生!み、みゆきちゃん達が・・・」

 

「あゆみちゃん!?みゆき達に何かあったの?」

 

「ま、まさか、この間の人達が!?」

 

 慌てるあゆみの言葉を聞き、ゆりは険しい顔を浮かべ、佐々木先生は心配そうに不安げな表情を浮かべる。まだ、動揺しているあゆみに落ち着くように伝えた二人は、

 

「坂上さん、少し深呼吸しなさい!吸ってぇ・・・吐いてぇ・・・」

 

 佐々木先生に深呼吸するように言われたあゆみは、言われた通りにすると、大分落ち着きを取り戻し、

 

「ゆりさん!佐々木先生!実は、キャンディが拾ってきたカメラで、みんなの事を写したら・・・みんな、消えちゃったんです!!」

 

「「消えた!?」」

 

「はい!私がみんなの方を向いた時にはもう居なくなってて・・・どうしよう!?」

 

 不安そうな表情を浮かべるあゆみを励ました二人は、顔を見合わせ合うと、

 

「坂上さん、その場所まで案内して頂戴!!」

 

「そうですね・・・でも、敵が居るかも知れない!二人共、用心してくださいね?」

 

 ゆりの言葉に頷くあゆみと佐々木先生、三人はみんなが準備していたフリーマーケットの会場へと向かった・・・

 

 

 

「ヤッホ~~!咲ちゃん、舞ちゃん、満ちゃん、薫ちゃん」

 

 加音町にやって来たのぞみ達六人とココ、ナッツ、シロップ、メルポは、前を歩いていた咲達を見付け、のぞみが声を掛けた。振り返った咲達も、のぞみ達を見るや表情を綻ばせ、咲とのぞみはハイタッチで再会の挨拶を交わした。

 

「のぞみ達も今着いたんだ?私達もそう何だぁ・・・もう、他のみんなは着いたかなぁ?」

 

「そうね、フリーマーケットの会場は・・・広場の方ですって!みんな来てるかも知れないし、行ってみましょう!!」

 

 咲の言葉にかれんも同意し、会場である広場に向かおうとした一同だったが、やけに加音町が騒がしく、一同は小首を傾げた。のぞみは近くに居た同じ年ぐらいの少女に話し掛けて見ると、今加音町にお化けが出て、大変な騒ぎになっていると聞き、りんは見る見る表情を変え、かれんとこまちの後ろに張り付いて二人を苦笑させる。

 

「でも、真っ昼間からお化けとはただ事じゃないわね?」

 

「そうね、調べてみましょう!!」

 

 満の言葉にこまちも同意し、調べてみようと言うと、りんはブルブル首を振り、

 

「エェェ!?あ、あたしは出来れば遠慮したいですけど・・・」

 

「りんさん・・・お化け苦手ですもんね?」

 

「だってぇぇ!」

 

 うららに言われたりんは、オドオドしながら辺りを見渡すと、かれんはりんを励ますように、

 

「りん、みんなも居るから大丈夫よ!」

 

「そうそう、何かあったら私が退治してあげるわよ!!」

 

 くるみはドヤ顔を浮かべながら、お化けが出たら退治してあげると言っていたのだが、慌てて広場から逃げるように走ってくる男が、

 

「で、出たぁぁ!お化けだぁぁぁ!!」

 

「ミ、ミルゥゥゥ!?」

 

 くるみはミルクの姿に瞬時に戻るや、慌ててかれんにしがみつき、ブルブル震え出す。りんは思わず、ジト目でミルクを見ると、

 

「もしも~し?」

 

「アハハハハ、さっきの勇ましさは何処へいったのやら?」

 

 呆れ顔のりん、思わず笑いだす咲、舞も苦笑していると、向こうの通りからゆりとあゆみが近付いて来るのに気付き、

 

「見て!ゆりさんとあゆみちゃんが居るわ!!」

 

「本当ね!あらぁ!?もう一人一緒に居るようだけど?」

 

 舞が指さした方角を見て満も気付くも、もう一人何処かで見た人物と一緒だったので、思わず薫と顔を見合わせ、小首を傾げた。のぞみはパンと手を叩くと、

 

「あの人、横浜スタジアムで私達が会った、みゆきちゃん達の担任の先生だよ!ラブちゃんが言ってたけど、あの人は、私達がプリキュアだって知ってるって言ってたし・・・」

 

「とにかく行ってみましょう!!」

 

 かれんは一同を促し、ゆり達と合流した。

 

「咲達、のぞみ達も・・・ちょうど良かった!みんなも一緒に来て!!つぼみ達、ひかり、ラブ達、響達、みゆき達が、突然あゆみちゃんの目の前から消えちゃったそうなの!!」

 

「エェェェェ!?」

 

 ゆりの言葉を聞き、咲達、のぞみ達が一斉に驚きの声を上げた。一体みんなに何が起こったのか?一同は顔色を変えると広場へと向かった・・・

 

 

 

2、プリキュアVS透明人間

 

 バッドエンド王国・・・

 

「無い、無い、無い、無いだわさぁぁぁ!!」

 

 最早恒例となった、マジョリーナの大騒ぎを聞き、ウンザリ顔のウルフルン、アカオーニ、サディス、ベガ、ディクレが呆れながら見つめていた。

 

「また、何か無くしたのか?」

 

「あんた・・・ボケてるんじゃないの?」

 

 呆れ顔のディクレ、サディスにはボケたんじゃないかと言われ、憤慨するマジョリーナは、顔を真っ赤にしながらテーブルをバンバン叩き、

 

「失敬な!あたしゃ、ボケてないだわさぁ!!それより、この上に置いてあったミエナクナールが消えたんだわさぁぁ!!!」

 

「ミエナクナール!?」

 

「無いオニ・・・その名前も無いオニ」

 

「また安易な名前だな・・・透明人間にでもなるアイテムとでも言いやがるのか?」

 

 ベガが怪訝そうに呟き、アカオーニは首を何度も振りダメ出しをする。ウルフルンは、ダサイ名前で、名前からすると透明人間にでもなるのかと、からかい半分にマジョリーナに聞くと、マジョリーナはウンウン頷き、

 

「その通りだわさぁ!!」

 

「「「「「エェェ!?」」」」」

 

 安易なネーミングに呆れかえる一同、一体どんな物だったのかディクレが問うと、マジョリーナは自慢気に、

 

「カメラだわさぁ!そのカメラのフラッシュを浴びた物は・・・透明人間になり、その姿も、声も、周りからは気付かれないんだわさぁぁ!!ただ一つの難点は、見えなくなるだけでその場には居るから、感触だけは残ってるんだわさぁ」

 

「何か使えるんだか、使えないんだか、微妙だな・・・」

 

「確かに・・・」

 

 ウルフルンの言葉にベガも同意して頷いた。サディスは顔色を変えると、マジョリーナはサディスの動揺を見逃さず、

 

「あんた、何か知ってるねぇ?」

 

「いや、試しに撮ったら、何も写ってなかったから、壊れてると思って・・・捨てた!!」

 

「な、何て事するだわさぁぁぁ!!」

 

 マジョリーナは、大慌てでミエナクナールを探しに出掛けて行った・・・

 

 

 

 広場に着いたゆり達だったが、確かにあゆみの言う通り、一同の姿が見当たらず困惑していた。みんなは何処に消えたのか?

 

「やっぱり見当たりませんねぇ?」

 

「無事で居てくれれば良いんだけど・・・」

 

 そんなかれんとゆりの会話は、目の前に居るひかり、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達にも聞こえていたのだが、大声を出してもゆり達には気付いて貰えず、途方に暮れていた。こんな時でも、身だしなみを整えようとした美希がコンパクトを開くと、

 

「エェェェ!?」

 

「み、美希たん・・・どうしたの!?」

 

 変顔を浮かべ慌てふためく美希を見て、心配そうにラブが美希の顔を覗き込むと、

 

「ラ、ラブ!みんなも、鏡を見てみて!あたし達・・・鏡に映ってないのよぉぉ!!」

 

「エェェェェ!?」

 

 美希に言われた一同が、慌てて鏡をみて見ると、確かに鏡に自分達の姿は映って居なかった・・・

 

「も、もしかして・・・加音町の人達が私達を見て驚いていたのは・・・私達の姿が見えないのに、服とか動いていたからですかぁぁ!?」

 

「エェ!?お化けの正体って・・・あたしらって事?」

 

 つぼみとえりかが顔を見合わせ、お化けの正体が自分達だったと気付き動揺し、いつきも困惑しながら、不安そうにしているポプリを優しく労った。

 

「やっぱ気付いて貰うんには・・・くすぐるのが一番やな!」

 

「あっ、私もやるぅぅ」

 

 あかねとやよいが、あゆみと佐々木先生の背後に回ると、あかねはあゆみをくすぐり、やよいは佐々木先生の胸を触ると、

 

「アハハハハハ、や、止めてぇぇぇ!」

 

「イヤァァ!痴漢!!」

 

 あゆみは身をくねらせ悶え、佐々木先生は慌てて両胸を手でガードし、二人が背後を振り向くと誰も居らず、引き攣った表情を浮かべるあゆみと佐々木先生、ゆりは険しい表情を浮かべると、

 

「何て卑劣な!!幸い、人影も無いし・・・みんな、変身よ!!」

 

「エェェェ!?」

 

 ゆりの背後で頷く咲達とのぞみ達、ミルクもくるみに変化し、一同が変身アイテムを手に持つと、それを見たひかり、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達が思わず驚愕した。必至に弁明しようとするも、ゆり達に聞こえる事は無く・・・

 

「プリキュア!オープンマイハート!!」

 

「「「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

 変身を終えたムーンライト、ブルーム達、ドリーム達が辺りの気配を伺うようにすると、何かが動く気配を感じたムーンライトは、

 

「そこ!!」

 

 ムーンライトの手刀が空間を切り裂くと、やよいは尻餅を付きガクガク震えながら後退る。あかねに起こされ、慌てて一同の下に避難した二人に、えりかは目の色変えて怒り出し、

 

「ちょっとぉぉ!あんた達、何してくれてんのよぉぉ!!」

 

「あ、あないに怒るとは思わんかったわ・・・スンマセン」

 

「ゴ、ゴメンなさい・・・」

 

 あかねとやよいが一同に詫びると、美希は苦笑を浮かべながら、えりかの頭を軽く叩きながら諭し、

 

「えりか・・・あんたが言えないでしょうが!」

 

 美希に、さっきエレンとなおをからかっていたあんたが言うなと突っ込まれ、えりかは変顔を浮かべる。つぼみはそんなえりかを見て苦笑を浮かべるも、

 

「ムーンライトを怒らせちゃいましたねぇ?」

 

「どうしよう・・・このまま此処に居ると、私達・・・」

 

 響もこのまま此処に居るのは不味いんじゃないかと思う間もなく、ブライトとウィンディが、容赦なく辺りを攻撃し始め、一同が慌てて飛び退く。

 

「ブライト、ウィンディ、落ちついてぇぇ!!」

 

「無理よ!私達の声は聞こえてないわ!!」

 

 ラブが二人に落ち着くように訴えるも、せつなは首を振り、聞こえてないから無理だと告げる。

 

「あ、あんな攻撃受けたら・・・私達死んじゃうわよぉぉ!!」

 

「確かにそうですね・・・何とか皆さんに、私達だって事を、知らせる事が出来れば良いんですけど・・・」

 

 半分泣きべそをかいた奏の言葉に、ひかりも同意する。みゆきは何かを閃き、慌ててカバンからペンを取り出し、値札用の紙に何か文字を書き始めると、

 

「みゆきです!私達みんな、透明人間になっちゃいました」

 

 と書くや、ムーンライト達に恐る恐る見せると、気付いたムーンライトは、攻撃しようとしていたブライトとウィンディを慌てて止め、

 

「この紙を持ってるのは・・・みゆきなの!?」

 

 思わず呆然とするムーンライト、みゆきに習い、他のメンバーも、自分の名前を書いた紙を手に持ちながら一同の前に出てくる。

 

「ひかり、ラブ、美希、祈里、せつな・・・ハハ、お化けじゃなくて良かったけど・・・あんた達、一体どうして透明人間になったの?」

 

 ルージュはお化けでは無さそうでホッと安堵するも、仲間達が何故透明人間になっているのか苦笑しながら問うと、再びみゆきが紙に文字を書き始め、キャンディが拾ったカメラが、実はマジョリーナのアイテムで、それに写された自分達は、透明人間になっちゃったと書いた。

 

「マジョリーナのアイテムといえば・・・この前、私とみゆきちゃんの中身が入れ替わった事があった」

 

「みゆき・・・あなたもよく騒動に巻き込まれるわねぇ?」

 

 みゆきの字を見たブルームは、一同にこの間、マジョリーナのアイテムのせいで、みゆきと中身が入れ替わった時の事を一同に教え、ウィンディは、みゆきの不遇ぶりに思わず呆れる。あゆみは、申し訳無さそうな表情で名前の書かれた紙を見つめると、

 

「あのカメラが・・・皆さん、ゴメンなさい!私が皆さんを写したから・・・」

 

 ションボリするあゆみをフォローするように、つぼみが慌てて文字を書き始めると、悪いのは言い出しっぺのえりかなので、あゆみちゃんは気にしないで下さいと書き、気付いたえりかは、

 

「何よ!つぼみだってちゃっかり集まったじゃない!!」

 

「私はちゃんとえりかを止めましたよぉぉ!!」

 

 言い合いを始めるつぼみとえりか、姿は見えないが、つぼみとえりかと書かれた紙が激しく揺れているのを見て、ムーンライト達は苦笑を浮かべた。アクアはキョロキョロ辺りを見てみるが、カメラらしき物体は見つからず、

 

「で、そのカメラは何処にあるの!?」

 

「ああ、それは多分・・・さっきがむしゃらに攻撃した時・・・吹き飛んでいった物体がそうだと思うわ!」

 

「気配を探るのに必死で、足下まで確認しなかったわね?」

 

 ウィンディとブライトの言葉を受け、飛んでいったであろう方角を見つめると、そこには緑色のフードを被った老女が居た・・・

 

「あ、あっただわさぁぁ!!」

 

 マジョリーナは、嬉しそうに自らの発明品、ミエナクナールを取り戻し満足気にするも、正面に居並ぶムーンライトを始めとした11人のプリキュアを見て驚く、

 

「な、何でここにプリキュアが!?でも、これはチャンスだわさ!」

 

 マジョリーナは、バッドエンド空間を発生させ、加音町の人々からバッドエナジーを集め出すと、エレンが持って来たサンバ衣装を赤鼻のアカンベェへと変えた。

 

「あゆみ、佐々木先生、少し離れていて下さい!みんな、行くわよ!!」

 

 身構えるムーンライト達を見たマジョリーナは、不適に笑いだし、

 

「ヒィヒヒヒヒ・・・もう、青鼻は使い切ったからねぇ・・・今回は赤鼻で勝負だわさ!プリキュア・・・驚くなだわさぁぁ!!」

 

 マジョリーナは、ミエナクナールを自分とアカンベェに向けてシャッターを押すと、マジョリーナとアカンベェの姿が目の前から消え失せた。

 

「消えちゃった!?」

 

「何処に行ったんでしょう?」

 

 ドリームとレモネードが辺りをキョロキョロしていると、突然笑いだし、

 

「アハハハハハ、やめ、やめてぇぇ!」

 

「アハハハ・・・だ、誰かにくすぐられてます!」

 

「ヒィヒヒヒ!こりゃあ傑作だわさ!!」

 

 一方のアカンベェにも突然攻撃され、ムーンライトもブルーム達も劣勢であった・・・

 

「クッ、姿が見えないうえに・・・素早い!」

 

 辺りをキョロキョロ伺うも、気配を感じる事が出来ず苦戦する一同、その時、

 

「マジョリーナ!私達を元に戻しなさい!!」

 

 消えている筈の自分が話し掛けられ、思わずドキリとしたマジョリーナが背後を振り向くと、険しい表情を浮かべたれいかを先頭に、ひかり、ラブ達、つぼみ達、響達、みゆき達がマジョリーナを睨み付ける。

 

「な、何でお前達が・・・さては、ミエナクナールを使ったねぇ?お前達は邪魔だわさぁ!!」

 

 みゆき達目掛けパシャリとシャッターを押すと、みゆき達の姿が元のように見えるようになり、ムーンライト達は、突然現われた一同に驚きつつも笑みを浮かべた。

 

「みんな、元に戻れたのね?」

 

「エッ!?私達の姿が見えるんですかぁ?ヤッタ~~!!」

 

 みゆきは喜び、思わず元に戻れて喜び合う一同だったが、れいかは冷静に周りを見回し、

 

「ですが、そのせいで見えていたマジョリーナとアカンベェの姿が、私達にも見えなくなってしまいました・・・」

 

「不利な条件は変わらないわね・・・あなた達もプリキュアに変身して!こうなれば何処から攻撃されても対処出来るようにしたい・・・」

 

 ムーンライトの指示に頷いた一同は、

 

「ルミナス!シャイニングストリーム!!」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」

 

「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」

 

「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」

 

 エレンとなおを除いた一同がプリキュアへと変身し、一同は円状に陣を引き、アカンベェの攻撃に備えた。

 

「ヒィヒヒヒ、それじゃあ、背中がガラ空きだよ!アカンベェ、プリキュア共の頭上にジャンプし、背後を取るだわさぁぁ!!」

 

 アカンベェは、マジョリーナの命令通り大きくジャンプし、円の中心部に着地しプリキュア達の背後を取ると、サンバのように踊りながら、次々とプリキュア達を吹き飛ばした。姿が見えない敵に苦戦する一同、マジョリーナは、無様に翻弄されるプリキュア達を見て大笑いを浮かべていると、

 

「あんただったのね・・・お化けの正体は!?」

 

「私達を驚かせようだ何て・・・」

 

「「絶対許さない!!」」

 

「ハァ!?」

 

 突然背後から声を掛けられ、ビクリとしながら振り返ったマジョリーナ、そこには鋭い視線を向けたエレンとなおが立って居た。二人は変身アイテムを手に持つと、

 

「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」

 

「プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

 エレンとなおの身体がプリキュアへと変化していく・・・

 

「爪弾くは、魂の調べ!キュアビート!!」

 

「勇気リンリン、直球勝負!キュアマーチ!!」

 

「私達を怖がらせた報い・・・」

 

「纏めて返してあげるよ!!」

 

 何時になく気迫が籠もるビートとマーチ、マジョリーナは小首を傾げ、

 

「お化け!?驚かす!?あんた達何を言って・・・ヒィィィ」

 

「「問答無用!!」」

 

 何の事だか分からないマジョリーナが反論しようとするも、二人は聞く耳を持たず、ビートはラブギターロッドを取り出し、華麗に舞いながら仲間達を攻撃するアカンベェ目掛け大きくジャンプするや、ラブギターロッドを奏で、無数の音符を出現させると、

 

「チョコマカ動くな!ビート・・・ソニ~~ック」

 

 何時も以上な数のビートソニックが降り注ぎ、アカンベェは躱しきれずヒットし動きを封じた。

 

「な、何!?今の衝撃は?」

 

 思わず辺りを見渡し呆然とするブルーム、アカンベェに何か起こっている事は一同にも分かった。

 

 雄叫びを上げたマーチの周りに、三つの緑色の球体が浮かび上がると、

 

「あたし達・・・本当に怖かったんだからねぇぇ!プリキュア!マーチ・・・シュートォォォ!!」

 

 ビートとマーチ、二人は、先程えりかとあかねが言っていた、二人の背後に居たお化けをマジョリーナの仕業だと勘違いし、怒った彼女達は何時も以上の力を引き出し、アカンベェ、マジョリーナを圧倒し、アカンベェを浄化、更にマジョリーナが手に持っていたミエナクナールにもヒットさせた。

 

 キュアデコルをゲットしたマーチだったが、険しい表情は崩さず、ミエナクナールは煙を吐きながら爆発すると、ビート、マーチ、そして、マジョリーナの姿を元に戻した。

 

「ブファ・・・プ、プリキュア!覚えてるだわさぁぁ!!」

 

 目をパチクリしながら、口から黒煙を吐いたマジョリーナは、慌てて撤退する。加音町はバッドエンド空間から解放された・・・

 

 何が起こったのか理解出来なかった一同だったが、ビートとマーチがアカンベェを倒してくれたと気付き、二人に近付き称えるのだった・・・

 

 元の姿に戻った一同、エレンとなおは、お化け騒動が終わりホッと安堵しながら、

 

「全く、お化けの正体がアカンベェで良かったけど、もう懲り懲り」

 

「本当、あかね!えりかさん!さっきは教えてくれてありがとう!」

 

 二人にお礼を言われたあかねとえりかは、思わずドキっとした表情を浮かべ、

 

「さっき私をくすぐったり、佐々木先生の胸を触ったり、酷い人達でしたねぇ・・・」

 

「本当よ!頭に来ちゃうわ!!」

 

 あゆみの言葉に佐々木先生もウンウン頷きながら同意すると、やよいと再びあかねが大きく動揺し、美希は意地悪そうな視線を三人に向けると、

 

「あぁ、それ何だけど・・・エレンとなおの背後にお化けが居るって驚かしたのは、えりかとあかねの冗談で、あゆみちゃんと佐々木先生に悪戯したのも、あかねとやよいだったのよねぇ」

 

「「「「エッ!?」」」」

 

 真相を聞かされたエレン、なお、あゆみ、佐々木先生が驚きながら三人を見ると、美希にバラされた三人は、思わずゆっくり後退るも、険しい顔を浮かべたエレン、なお、佐々木先生に見つめられ、

 

「いやぁ・・・悪気は無かったっしゅ」

 

「ウチも、ちょっと悪のりしちゃったなぁと・・・ハハ」

 

「私も・・・先生の胸見たらつい出来心で」

 

 あゆみは苦笑していたが、エレン、なお、佐々木先生はジト目で三人を見つめ、

 

「日野さん!黄瀬さん!あなた達・・・連休明けに今回の反省文、英語のレポートで書いて提出するように!!」

 

「「そんなぁぁ!?」」

 

 半泣き状態のあかねとやよいが、必死に佐々木先生に縋り付き、許してぇぇと謝るも、佐々木先生は認めず、あかねとやよいは頭を抱えた。

 

「え~り~か~!あ~か~ね~!・・・どういう事かしらぁぁぁ!?」

 

「二人共、詳しく聞かせて貰うからねぇぇぇ?」

 

 ジワリ、ジワリと躙り寄るエレンとなお、えりかとあかねは思わず二人の迫力に逃げ出すも、呆気なく壁際に追い詰められ悲鳴を上げた・・・

 

「全く、何をやってるんだか・・・」

 

 呆れたようにその様子を見つめたゆりが苦笑を浮かべると、一同も笑い声を上げた・・・

 

 こうして、加音町を騒がせたお化け騒動も、プリキュアが追っ払ってくれたと人々に伝わり、加音町は無事に復興祭を大成功させた・・・

 

 フリーマーケットの商品も無事完売し、一同は響達に導かれ公園に行くと、まだ時期は早いものの、七夕のように短冊がぶら下がっていて、思わず目を輝かせるポップとキャンディ、

 

「あれは何でござる?」

 

「短冊だよ!お星様への願い事を書いた短冊を笹に吊し、どうか願いが叶いますようにってね!本当は7月の始めに行うんだけど、今回は特別に、加音町のみんなで願い事を書いて吊したんだぁ」

 

「それは拙者達の国、メルヘンランドのペガサスの日に似てるでござるなぁ・・・」

 

 響の説明を聞いたポップは、目を閉じてその時の光景を思い浮かべて居るようで、口元に笑みを浮かべていた。一同は興味深げにし、

 

「ペガサスの日?ポップ、それってどんな事をするの?」

 

 みゆきがポップにペガサスの日の事を聞いてみると、ポップは瞬時にペガサスに変身すると、一同から響めきが起こった。

 

「さよう!一年に一度、沢山の星が流れる日にキャンドルを灯して、ペガサスにお願いする日でござる!!」

 

「へぇ、メルヘンランドにもそんな日があるんだねぇ?」

 

「ウワァ・・・ロマンチックゥゥ」

 

 ポップの説明を聞き、ラブとのぞみも興味深げに聞いていると、

 

「折角みんなも来てるし、願い事を書いてみない?」

 

「うん、そうしよう!」

 

 響と奏から、みんなも短冊を書かないかと誘われ、一同も参加する。妖精達も願い事を書いた。

 

 一同が書いた願い・・・

 

 そのほとんどは、なぎさとほのかが早く戻って来ますように・・・

 

 ロイヤルクイーンが復活して、メルヘンランドが平和になりますように・・・

 

 この二つの事が書かれていた・・・

 

 そんな中、キャンディの願いは・・・

 

 みゆき達プリキュアのみんなや、ポップ達妖精達と、何時までも仲良く暮らせますようにと書かれていた・・・

 

 一同は、加音町に浮かぶ星空を見上げ続けた・・・

 

           第五十四話:加音町パニック!透明人間現わる!?

                      完

 


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