プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第五十三話:咲とみゆきがイレカワール!

1、招待

 

 色々あった修学旅行も終わり、家に帰ったみゆきは、母育代に申し訳無さそうにお土産のこけしを手渡した。育代が笑顔を浮かべながら箱を開けると、

 

「あらぁ、可愛いこけしねぇ・・・みゆき、ありがとう!」

 

「アハハハ!髪が着脱式のこけしとは・・・凄いなぁ!」

 

 育代は心から嬉しそうに喜び、博司は、笑いながらこけしの髪を着脱させ遊び、みゆきは頬を膨らませた。

 

 

 部屋に戻ったみゆきは、キャンディと遊んであげていたポップに目を細め、

 

「ねぇ、ポップは何時までこっちに居られるの?」

 

「もうすぐキュアデコルが16個集まるでござるし、もう暫くこちらに居ようかと考えて居るでござるが」

 

 ポップの返答を聞き、キャンディは嬉しそうに兄ポップに甘え、みゆきはその姿を見て微笑んだ。その時、下から母育代の声でみゆきに電話だと知らせが入り、みゆきが電話に出ると、相手はあゆみからだった。聞き耳立てていた博司は、電話の相手が女の子だと分かり、ホッと安堵すると、育代はそんな博司を見てクスクス笑っていた。

 

「みゆきちゃん、咲さんから、3日の日に遊びに来ないかって誘われたんだけど、みゆきちゃん達も一緒に行かない?」

 

「咲さんの所って・・・確か湘南だよね?うん、私は良いよ!じゃあ、みんなにも知らせてみる!!」

 

 電話を切ったみゆきは、あかね、やよい、なお、れいかに電話をして、あゆみから咲達の街に遊びに行こうと誘われた事を伝えると、他の四人も同意してくれて、今度はみゆきからあゆみに電話を掛け、五人で行く事を伝え、あゆみとの待ち合わせ場所を横浜駅と決めた・・・

 

 

 

 5月3日・・・

 

 この日、咲は珍しく早起きし、あゆみとみゆき達五人を迎える歓迎会の準備をしていた・・・

 

 咲は、なぎさとほのかが戻らず何処か元気の無いひかり、夕凪町に来た事が無い響達も誘ったのだが、ひかりは店の手伝い、響達は、5日に加音町で行われる、加音町復興式典の準備の手伝いがあり、遊びには行けないと連絡があった。

 

「ひかりや響達が来れないのは残念だけど、明後日にはみんなで加音町に行くし、まっいっかぁ!」

 

 鼻歌交じりに庭のテーブルを飾り付けていると、

 

「咲!おはよう!!」

 

「舞!おはよう!!」

 

 紙袋を持った舞がやって来て、テーブルの上に紙袋を置くと、フラッピとチョッピも妖精姿になって紙袋の中身を取りだし、飾り付けの手伝いを始めた。

 

「咲、舞、おはよう!」

 

「ちょっと遅れたみたいね・・・」

 

「満、薫、おはよう!ううん、ちっとも遅れてないよ!」

 

「満さん、薫さん、おはよう!じゃあ、飾り付けの方は私と薫さんでやっておくわね!」

 

「分かった!じゃあ、私と満でケーキ作りの方、完成させてくるから!!行こう、満!!」

 

「ええ、じゃあ、二人共こっちの方をお願いね!」

 

 店内へ入っていった咲と満、ムープとフープは、忙しそうに動き回る面々を見ると、

 

「ムープ達は何するムプ?」

 

「邪魔しなければ、それで良いラピ!」

 

「嫌ププ!フープ達も何か手伝うププ」

 

 自分達だけ除け者にされたように感じ、ムープとフープは自分達も手伝いたいとテーブルの周りをクルクル浮遊する。舞と薫は顔を見合わせクスリと笑い、

 

「じゃあ、お手伝いを頼もうかしら?」

 

「フープ!ムープ!それじゃあ、この横断幕を物干し台に掛けて貰える?」

 

 舞と薫に手伝いを頼まれ、二人は嬉しそうに宙に浮かび、横断幕を物干し台に掛けた。

 

 

 

 一方、室内に入った咲と満は、予め作っておいたスポンジ生地に、咲の店でバイトをしている満が、慣れた手付きで生クリームを絞り乗せていく。咲は苺を乗せながら、満の手慣れた手付きに感心し、

 

「満、本当に上達したよねぇ・・・満って、パティシエールになれるんじゃない?」

 

「パティシエール!?・・・ああ、お菓子職人の事ね!」

 

「うん!奏もお父さんと同じパティシエ目指してるそうだけど、満もなれるんじゃないかなぁ!?家のお父さんとお母さんも褒めてたよ!!」

 

「そんな事無いわ!咲のお父さんとお母さんの教え方が上手なだけよ!」

 

 咲に褒められ、満は顔を赤らめながら謙遜するも、

 

「ありがとう、咲!・・・本当言うとね、薫とも話していたんだけど、何れは私達二人で、お店でもやりたいねって言っていたの」

 

「本当!?凄いじゃない!」

 

「まあ、出来ればだけどね・・・当分先だけど」

 

 満はクスリと咲に微笑んだ・・・

 

 それを奥から見ていた咲の父大介と、母沙織は、顔を見合わせ微笑んだ。

 

 満と薫・・・

 

 ダークフォールで生まれた彼女達が、精霊達の力で新たなる命を与えられ、この世界の住人として暮らしていく内に、彼女達にも夢というものが生まれていた・・・

 

 咲や舞を始めとする、沢山のプリキュアの仲間達とこの世界を守り、親睦を深め、沢山の事を学んだ彼女達は、希望に向かって歩み始めようとしていた・・・

 

 

 

 バッドエンド王国・・・

 

「無い、無い、無い、無いだわさぁぁ!!」

 

 大騒ぎをするマジョリーナを、呆れ顔で眺めるのは、ウルフルン、アカオーニ、サディス、ベガ、ディクレ、

 

「この前も、そのような事言いながら何か捜して居たな?今度は何を無くしたと言うのだ?」

 

 呆れ顔のディクレに問い掛けられたマジョリーナは、一同の顔を見渡すと、

 

「はめた人間の中身を入れ替える指輪、その名を・・・パンパカパーン!世紀の大発明!イレカワールだわさぁ!!」

 

「ハァ?イレカワールだぁ!?」

 

「無いオニ・・・その名前は無いオニ」

 

「あんた・・・センス無いね!それより、そんな指輪作って・・・まさか、あたしと入れ替わって、このピチピチボディを手に入れようと考えたんじゃ無いだろうねぇ?」

 

「失敬だわさぁ!あんたの身体を奪わなくても、あたしゃ、ピチピチボディだわさぁ!!」

 

 マジョリーナが文句を言うと、腹を抱えて笑いだすウルフルン、アカオーニ、サディス、一方ディクレは額から汗を流しながら、

 

(イレカワール!分かりやすい名前だと思うが・・・今は言うのを止めておこう)

 

 ディクレ的には良い名前だと思ったようだが、一同からの不評を聞き、無言で通すディクレ、ベガは興味が無さそうにその場を立ち去った。

 

「何で笑うだわさぁぁ!!全く・・・その世紀の大発明、イレカワールが、このテーブルの上に置いてあったのに・・・消えたんだわさぁぁ!!」

 

 マジョリーナが目の前のテーブルをバンバン叩き、ここに置いてあったのが消えたと訴えると、四人が首を捻り、

 

「俺は知らねぇぞ!指輪なんて興味もねぇ!!」

 

「我もそのような物は見なかったぞ?」

 

「あたしも知らないよ!」

 

 ウルフルン、ディクレ、サディスの三人がそんな物は知らないと答え、

 

「俺様も知らないオニ!ただ、この上にあった物を眺めてて、クシャミをしたら何かが飛んでいっただけオニ!!」

 

「「「「・・・・・・・・・」」」」

 

 アカオーニの言葉を聞き、沈黙が流れる室内・・・

 

「お前じゃねぇか!」

 

「オニ!?」

 

「あんたがやったんじゃない!」

 

「オニ!?」

 

「ウム・・・お前の仕業だな!」

 

「オニ!?俺様だったオニ?な~んだ!!」

 

「「「「ハハハハハハ」」」」

 

 ウルフルン、サディス、ディクレに、お前の仕業だと言われ、ようやく気付いたアカオーニ、四人が顔を見合わせ笑い合う中、マジョリーナは顔を真っ赤にして怒り出し、

 

「笑い事じゃないだわさぁぁぁぁ!!ウルフルン!あんた、捜してくるだわさぁ!!」

 

「ハァ!?何で俺様が行かなきゃならねぇんだよ?」

 

「あんた、この間あたしの納豆餃子飴を・・・捨てたんだろう?」

 

 思わずギクリとするウルフルン、口笛を吹きながら誤魔化そうとするも、

 

「惚けたって無駄だわさぁ!ちゃぁんとお見通し何だからねぇ・・・それと、これを持って行くだわさぁ!これはモトニモドールって言って、入れ替わった者を唯一元に戻せるアイテムだわさぁ!!仮に何者かが嵌めてた場合、これを使って奪ってくるだわさぁ・・・さあ、さっさと行って、その自慢の鼻で嗅ぎ当てて見付けてくるだわさぁぁ!!」

 

「お、俺様は犬じゃねぇぇ!!」

 

 マジョリーナにブツブツ文句を言うも、納豆餃子飴を捨てた事は事実の為、ウルフルンは渋々イレカワールを探しに向かった・・・

 

 

 

「咲さん、舞さん、満さん、薫さん、おはようございま~す!!」

 

 先頭切ってルンルン気分で現われたみゆき、その直ぐ後からあかね、やよいが現われ、あゆみと話ながらなおとれいかが現われた。

 

 待ち合わせ場所の横浜駅で、みゆきが恐る恐る渡した京都のお土産を見たあゆみは、意外にも喜んでくれてみゆきはホッと安堵し、修学旅行での話をあゆみに聞かせた。一方のあゆみも、せつなにクローバータウンストリートに招待され、せつな、ラブ、祈里と共に楽しんだ事を伝えた。

 

 あゆみが喜んでくれた事で、みゆきの心はハッピーだった・・・

 

 一同が次々咲達四人に挨拶すると、咲達四人も嬉しそうに遊びに来たみゆき達を歓迎する。ポップとキャンディもみゆきのカバンから出ると、フラッピ、チョッピ、ムープ、フープとの再会を喜び合い、ポップは、咲達四人も協力してくれている事に感謝を込め挨拶をした。四人は微笑みながら、

 

「みんな、ようこそPANPAKAパンへ!」

 

「さあ、席に着いて!!」

 

「今、パンとケーキを持ってくるわね!」

 

「満、私も手伝うわ!」

 

 咲と舞は、みゆき達をテーブルに座らせると、満と薫が店内に入り、ケーキやパンを取りに行く。何が出てくるのか楽しみなみゆき達は、ワクワクしながら待っていた。みゆきは思い出したようにかばんをゴソゴソ漁ると、

 

「これ、どうぞ!私達が修学旅行で行った京都のお土産です!!皆さんで分けて食べて下さい!!」

 

「エッ!?こっちが招待したのに・・・ウワァ!八つ橋だぁ!!」

 

「咲、行き成り開けるなんて・・・ゴメンなさいねぇ、修学旅行のお土産まで気を使わせちゃって!」

 

 咲は、折角貰ったからと箱を開けると、中には八つ橋が入っており、思わずニンマリ笑顔を見せる。舞は苦笑しながらも、みゆき達に感謝を述べると、何故かみゆき達五人は微妙な表情を浮かべながら、

 

「「「「「い、いいえ・・・」」」」」

 

「みゆきちゃん達・・・どうしたの?」

 

 あゆみも不思議そうに小首を捻ると、五人は苦笑を浮かべた。みゆきは額から汗を流しながら、

 

(い、言えない・・・今日遊びに行くから、昨日慌てて不思議図書館を使って、京都で買ってきた何て言えない・・・)

 

「昨日みんなで京都に・・・」

 

 うっかり喋りそうなキャンディの口を、慌てて塞いだみゆき、みゆき達五人が苦笑を浮かべると、咲と舞は顔を見合わせ、小首を捻った。

 

「私もお土産持って来ました!横浜と言えばシュウマイらしいので、シュウマイを買ってきました!!」

 

 あゆみは、紙袋から赤い箱に入ったシュウマイを咲と舞に渡し、

 

「後で満さんと薫さんにも渡して下さい!!」

 

「みんな、悪いね・・・」

 

「返って気を使わせちゃって、ゴメンなさいね」

 

 満と薫の分のシュウマイをあゆみから貰い、思わず苦笑を浮かべる咲と舞、咲はキャンディに視線が向いた時、キラキラ輝く物体を見て小首を傾げ、

 

「キャンディ・・・何持ってるの?」

 

「これクル?来る途中で拾ったクル!!」

 

 そう言ってチョコンとテーブルに飛び乗ると、咲の前に移動し、手に持っていた物を渡した。咲は興味深げにキャンディから渡された物を見ていると、

 

「指輪・・・かなぁ?」

 

 咲は、試しに指輪を嵌めてみる。キャンディはもう一つ同じ物を持っており、みゆきがカバンをゴソゴソ漁ると、指輪を手に取り、

 

「キャンディ、さっき拾ってたもんね・・・でも、おまわりさんに・・・」

 

 そう言いながら指輪を嵌めたみゆき、咲とみゆき、二人は一瞬身体に違和感を覚えるも、直ぐに元に戻り、

 

「届けた方が良いよ!」

 

 みゆきが喋って居た言葉を、突然咲が続けたので舞は驚くも、苦笑を浮かべた。

 

 

 そこに、パンとケーキを持った満と薫が戻ってきて、テーブルの上に置くと、そこにはチョココロネを始めとした、PANPAKAパン自慢のパンの数々が籠の中に溢れるほど入っていて、更に満と咲が作ったケーキが置かれ、なおは目をキラキラ輝かせた。

 

「さあ、みんな!遠慮しないで食べてね!!」

 

「はい!いただきま~す!!」

 

 そう言ってあかね、やよい、なお、れいか、あゆみが手に取るのをニコニコしながら見ていた舞、満、薫だったが、

 

「ちょ、ちょっと咲!何であなたが食べるのよ?」

 

 咲が一同と同じようにパンに手を伸ばし、慌てて満が咲を止めると、咲は困惑気味に、

 

「エッ!?私はみゆきですよぉぉ!!」

 

「ハァ!?」

 

「満ったら、何冗談言ってるのよ?咲は私でしょう!!」

 

「「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」」

 

 パンを食べていたあかね達、接待していた舞達は、思わず目が点になり沈黙する。咲の容姿と声をした方がみゆきと名乗り、みゆきの容姿と声をした方が咲だと名乗ったのだから・・・

 

 だが、言っていた本人達も違和感を覚え、互いの顔を見ると、

 

「エッ!?何で私があっちに???」

 

「エェェェェ!?私が居る・・・」

 

 お互いを指差し困惑する咲とみゆき、もちろん見ている方はもっと混乱し、

 

「な、何や、何や!?みゆきが咲さんで、咲さんがみゆき?ウチ・・・頭が混乱してきたわ」

 

 あかねが頭を抱えると、なおは引き攣った笑みを浮かべながら、

 

「ハ、ハハ・・・大丈夫、あたしも混乱してるから」

 

 やよいは目をキラキラ輝かせると、

 

「スゴォォォイ!こんな事起こるんだねぇ!?」

 

「やよいさん・・・喜ぶ所では無いと思うのですが?」

 

 目を輝かせるやよいの反応を見て、れいかが苦笑混じりに窘める。

 

「みゆきちゃんと咲さん・・・一体どうしてこんな事に?」

 

 あゆみは心配そうに交互に二人の顔を見比べ、舞も不安げに二人を交互に見比べた。

 

「二人共、さっきは何ともなかったのに、どうして急に?」

 

「私達が離れている間に・・・何かあったの?」

 

 満と薫に聞かれた咲とみゆきは、お互い顔を見合わせながら、

 

「そう言われると・・・キャンディに見せて貰った指輪を付けた時」

 

「何か違和感がありましたけど・・・」

 

 みゆきの容姿をした咲と、咲の容姿をしたみゆきが答えると、満と薫は顔を見合わせ頷き合い、

 

「きっとその指輪が原因ね・・・」

 

「ええ、二人共、その指輪を外せば元に戻れるかも知れないわよ?」

 

「「本当!?」」

 

 満と薫の推測を聞き、咲とみゆきは言われたように指輪を取ろうと試みるも、指輪が外れる事は無かった・・・

 

 

2、ハッピーブルーム

 

 ウルフルンは、渋々ながらもイレカワールを捜している内に、咲達の町、夕凪町にやって来た・・・

 

「たく、マジョリーナの野郎・・・ン!?何かこの辺りから、バッドエナジーを微妙に感じやがるなぁ・・・」

 

 クンクン匂いを嗅ぎ、辺りをキョロキョロするウルフルン、堂々と街中を歩く彼を、人々は着ぐるみだと思い込んでいた。そんな彼の鼻に香ばしい匂いが漂って来て、思わずポワンとした表情で、匂いに釣られ歩き始めるウルフルン、本能なのか、彼の尻尾は左右にパタパタ揺れていた・・・

 

 

 

「どうしよう・・・取れなくなっちゃった?」

 

 変顔を浮かべた咲・・・いや、中身がみゆきは、一同にすがるような目を向ける。

 

「それは困りましたねぇ・・・」

 

 れいかも困惑気味にどうしたものかと思案する中、薫は、ケーキを切り分けるナイフを手に持つと、

 

「いっそ、二人の指を切り落とす?」

 

「薫ぅぅぅ!!」

 

「止めてぇぇぇ!!」

 

 涙目になったみゆき(咲)と、咲(みゆき)が激しく首を振ると、

 

「冗談よ!」

 

 薫は、持って居たナイフを再びテーブルに戻しクスリとする。舞は苦笑混じりに、

 

「か、薫さん、冗談を言う状況じゃ無いと思うけど・・・それより、困ったわねぇ?」

 

「エエ・・・みゆきの声で呼び捨てにされるのも違和感があるわね!逆に、咲の声でさん付けで呼ばれるのも違和感あるけど」

 

 満も困惑気味に戸惑いを見せた・・・

 

「クンクン!ここから美味そうな匂いが・・・って、アァァァ!?」

 

 突然庭先に現われたウルフルンは、一同を見て驚き、みゆき(咲)は、

 

「あんたは、あの時の犬男!?」

 

「犬じゃねぇよ!って言うか・・・お前、最初にあった時から狼って言ってたじゃねぇか!?俺様の事、最近はウルフルンって呼んでただろう?」

 

「あっ、そっちは私じゃなくて・・・いや、私何だけど、私じゃ・・・あれぇ!?訳分らなくなってきたぁぁ?」

 

 咲(みゆき)がウルフルンに説明しようとしたものの、自分でも訳が分からなくなり混乱する。満と薫はウルフルンをキッと睨むと、

 

「咲とみゆきがこんな状況になったのは」

 

「あなたの仕業ね!!」

 

 満と薫に指を指されたウルフルンは、何の事か分からず首をブルブル振るも、他の一同も満と薫に次々同意し、

 

「せやなぁ・・・どうもおかしい思うたんや!」

 

「こんな事思い付くの、あんた達ぐらいだからねぇ!」

 

 あかねとなおにも凄まれ、思わずウルフルンは後退るも、

 

「う、うっせぇぇ!!訳分かんない事ゴチャゴチャ言いやがって・・・ちょうどいい、纏めて相手してやらぁ!!世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まれ!白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!!」

 

 ウルフルンはヤケクソ気味にバッドエンド空間を発生させると、咲の家族大介、沙織、みのり、周辺に居た人々からバッドエナジーを集め出し、

 

「出でよ!アカンベェ!!」

 

 ウルフルンは青玉を高々と掲げると、目の前のパンを青鼻のアカンベェへと変化させた。フラッピ達はコミューン姿に変化し、それぞれのパートナーの手に握られるも、

 

「何か複雑な気分ラピ・・・」

 

 何時もと違う感触に戸惑うフラッピ、みゆき(咲)は険しい表情を浮かべると、

 

「折角の歓迎会をよくも・・・舞!」

 

「エッ!?だ、大丈夫なの?」

 

「そっかぁ、私、今みゆきちゃんの身体だった・・・」

 

 みゆき(咲)が思わず身体を見回し、これじゃ変身出来ないかも知れないと戸惑うと、

 

「あゆみ、ポップとキャンディと一緒に少し離れてて!薫、あかね達も、行くわよ!!」

 

「ええ」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 満の合図に頷く薫とあかね達、あゆみは言われた通り、キャンディとポップを抱き上げ、物陰に隠れると、それを見届けた六人は変身アイテムを手に取り、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」

 

 ブライト、ウィンディ、サニー、ピース、マーチ、ビューティが、ウルフルンとアカンベェに対し身構える。みゆき(咲)は、物は試しとばかり、

 

「みゆきちゃん、スマイルパクトを貸りるよ!試しに変身してみる!!」

 

「エッ!?は、はい!」

 

「プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

 咲(みゆき)の許可を貰い試して見たものの、何も起こらなかった・・・

 

「クッ、やっぱ駄目かぁぁ・・・」

 

「当たり前ラピ!プリキュアになるのは外見じゃないラピ・・・その人が持つ心が大切なんだラピ!!」

 

(その人が持つ心・・・そうか!)

 

 変身出来ず困惑するみゆき(咲)に、フラッピが助言を与えると、みゆき(咲)は何かに気付くと、

 

「みゆきちゃん!スマイルパクトを受け取って!!舞、みゆきちゃん、変身してみよう!!」

 

 咲(みゆき)にスマイルパクトを渡したみゆき(咲)は、舞と咲(みゆき)に変身してみようと訴えると、不安そうにしながらも、舞も咲(みゆき)も同意し、

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」

 

「プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

 何時もと違う感覚・・・

 

 だが、三人の身体をプリキュアへと変えていった・・・

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

 ハッピーの容姿をしたブルームと、イーグレットがポーズを決めた・・・

 

「な、何か違和感が・・・」

 

「一番あるのは私だよ!!」

 

 互いに顔を見合わせ苦笑しあうイーグレットとブルーム、

 

「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!!」

 

 ブルームの容姿をしたハッピーがポーズを決める。ポップとキャンディは、その姿を見て微妙な表情を浮かべ、

 

「これは・・・ある意味新鮮ではござるが」

 

「何か変クル・・・」

 

「二人共、しょうがないでしょう!ハップップ~!!」

 

 ハッピーは頬を膨らまして変顔を浮かべると、ブルームはハッピーを見て、

 

(私ってば、頬を膨らませるとあんな顔になるんだぁ・・・和也さんには絶対見せられない!!)

 

 思わず引き攣った笑みを浮かべたブルーム、三人がブライト達と合流を果たした。

 

「な、何や隣に先輩が居るみたいでやりにくいなぁ・・・」

 

「何時もと違うもんねぇ・・・」

 

 サニーとピースが、隣に居るブルームの容姿をしたハッピーを見て困惑気味にポツリと呟き、ブライトも困惑気味に、

 

「確かに、私達に混ざってハッピーが居るようで混乱するわね・・・」

 

「ハッピーブルーム、戦えそうなの?」

 

 ウィンディは、二人を合わせた名前でブルームを呼び、

 

「名前まで合体させなくて良いよぉぉ!大丈夫!!何とかいけそう・・・行くよ、イーグレット!!」

 

「エッ・・・エエ!!」

 

 困惑気味に頷いたイーグレット、まるで、ハッピーと一緒に戦って居るような違和感を覚えて居た。四人が真っ先にアカンベェ目掛け戦いを仕掛けた。

 

 ブライト、ウィンディが肉弾戦を仕掛けた後ジャンプし、キックでアカンベェを転倒されれば、起き上がりにブルームが突っ込み、

 

「ダダダダダダ!!」

 

 まるでブラックのような雄叫びを上げ、アカンベェにパンチの連打を浴びせ、ジャンプしたイーグレットがかかと落としを決める。

 

(ハッピーの野郎・・・何時も以上に攻撃的だなぁ?)

 

 困惑気味にしていたウルフルンは、アカンベェに負けんじゃねぇと指示を出し、アカンベェは、口からクロワッサンや、チョココロネのような形をした物体を吐き出し、一同を威嚇した。

 

「今度はウチらの番や!」

 

 サニーとマーチが左側から、ビューティとピースが右側から跳び蹴りを放ち、ハッピーがジャンプし、パンチをしようとするも、何時もと違う身体だからか、タイミングを狂わせ、アカンベェに頭突きをする。

 

 アカンベェの動きを止めた所で、新たなるデコルをセットし、黄金のティアラを装着する五人、

 

「ウワァ!私の髪に黄金のティアラが付いてるよ!!」

 

「何か不思議ね・・・」

 

 ブルームは、自分の容姿に黄金のティアラが装着されたのを見て目を輝かし、イーグレットは苦笑を浮かべた。

 

「な、何だ!?何で、ハッピーじゃなくてあいつに!?」

 

「「「「「プリキュア!レインボーヒーリング!!」」」」」

 

 驚くウルフルンを尻目に、ハッピー達はアカンベェをレインボーヒーリングで浄化した。合流したブルーム達が微笑み、一同はウルフルンに身構えると、

 

「どうもおかしいと思ったら・・・お前ら、イレカワールを付けてやがったな!?返しやがれ!!」

 

 ウルフルンも、ブルームとハッピーの異変に気付いたようで、イレカワールを持って居るのがブルームとハッピーだと気付き、イレカワールを返せと凄むと、

 

「やっぱあんたらの仕業やないか!」

 

「ブルームとハッピーを元に戻して!!」

 

 サニーとイーグレットがウルフルンに文句を言い、

 

「取れないんだからしょうがないでしょう!こんなの要らないもん・・・」

 

 ハッピーが涙目になりながらウルフルンに抗議する。ウルフルンは何かを思い出したようにポンと手を叩き、

 

「そういやぁ・・・このモトニモドールを使わなきゃ取れねぇとか、マジョリーナの奴言ってやがったなぁ・・・」

 

「モトニモドール!?」

 

「プッ!ダサイネーミングやなぁ!!」

 

「だろう?俺様もそう思って・・・じゃねぇ!」

 

 ブライトが怪訝そうに、サニーは名前に思わず吹き出すと、ウルフルンもウンウン頷き、そうだと言うも、直ぐに我に返り、

 

「面倒くせぇ・・・お前らを倒してゆっくり取り上げてやらぁ!!」

 

「そんな事、させない!イーグレット!!」

 

 ブルームの合図に頷いたイーグレット、二人は横に並ぶと、

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

 

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「スプラ~~ッシュ!!!!」」

 

 ブルームとイーグレットから放たれたスパイラルハートスプラッシュが、ウルフルン目掛け炸裂した。ウルフルンは抑えに掛かるも、モトニモドールが入った瓶をその場に落とし動揺すると、二人の技の前に押され始めた。

 

「ヤベェ!覚えてろぉぉ!!」

 

 慌ててジャンプして躱して撤退するウルフルンを見て、一同は笑みを浮かべた・・・

 

 

 

「やったぁ!元に戻れたぁぁ!!」

 

 サニー以外が変身を解き、ウルフルンが落としていったモトニモドールを使い、咲とみゆきは指輪を外し、無事元に戻りホッと安堵した。一時はどうなるかと思った一同も、二人の喜ぶ姿を見て目を細めた。やよいは不思議そうに、何でサニーは変身を解かないか問うと、

 

「そないな指輪が残っとったら、また被害が出るやろ?ウチが燃やしたるわ!!」

 

「そうね・・・その方が良いわね!!」

 

「うん!お願い、サニー!!」

 

 サニーの言葉に満も頷き同意し、咲とみゆきはサニーに指輪を渡すと、サニーはイレカワールを上空に投げ、炎でイレカワールを消滅させた・・・

 

「じゃあ、思わぬトラブルに見舞われたけど・・・歓迎会の続きを始めよう!!

 

「「「「オオ!!」」」」

 

 みゆき、あかね、やよい、なおが右手を挙げながら返事をし、中断していた歓迎会は開かれた。美味しいパンの数々、咲と満が作ってくれたケーキを、みゆき達とあゆみは美味しそうに味わうのだった・・・

 

 

 場所を大空の樹に移した一同、キャンディとポップは、メルヘンランドを思わせるような大空の樹を見て、心の底から喜んでいた・・・

 

「何か心が和むでござるなぁ・・・良いところでござる!」

 

 爽やかな風を浴びながら、目を閉じるポップ、みゆき達もこの場所を気に入ったようだった。

 

 少女達は、大空の樹の下で楽しそうに過ごすのだった・・・

 

             第五十三話:咲とみゆきがイレカワール!

                      完

 


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