プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第五十話:修学旅行(前編)

1、ゴプリキュア、西へ!!

 

 4月28日土曜日朝・・・

 

 あれから一週間が過ぎた・・・

 

 なぎさもほのかも、まだ戻って来ては居なかった・・・

 

 

 

 あゆみはみんなに励まされ勇気を貰い、学校のクラスメート達に思い切って声を掛けると、何人かの子と仲良くなる事が出来た・・・

 

 あゆみは何時もの通り机の前に座り、アンデとルセンの形見とも呼べる、小さな光輝く球体に話し掛けて居ると、

 

「あゆみ!星空さんって人から電話よ!もう、ちゃんと友達出来たんじゃない・・・今度家に連れてらっしゃい!!」

 

「星空さん!?・・・みゆきちゃん!!」

 

 あゆみは嬉しそうに立ち上がると、部屋を出て電話へと向かった。

 

 引っ越して来てから、あゆみに元気が無い事を心配していたあゆみの母は、嬉しそうに電話に出るあゆみを見て目を細めた。

 

「もしもし、みゆきちゃん!」

 

「うん!あゆみちゃん、おはよう!あれから何ともない?」

 

「うん、今の所大丈夫!あのせつなさんって言う人が、一日一回様子を見に来てくれてるし・・・お土産にドーナツも貰ったの!!」

 

「エェ!?良いなぁ・・・私達、まだ食べた事無いんだよぉぉ・・・所で、話は変わるんだけどぉ!行き成りだけど、私達明日から、二泊三日の修学旅行で京都と大阪に行くんだけど・・・あゆみちゃん、お土産何が良い?」

 

「エッ!?そんな、悪いよ・・・でもみゆきちゃん達、私と同じ中二って言ってたけど、もう修学旅行行くの?」

 

「うん!家の学校は、中二の時に行くんだって!あゆみちゃんの学校は?」

 

「私の所は中三になったらだから来年なの!」

 

 楽しそうに電話で会話するあゆみとみゆき、あゆみの母は、笑みを浮かべながらその場を立ち去った。

 

 

 

 修学旅行・・・

 

 学生なら誰しも一度は経験する行事・・・

 

 みゆき、あかね、やよい、なお、れいかの五人も楽しみにしていた・・・

 

 

 日中にみんなで修学旅行の買い物をしたみゆき達、休憩を兼ねて公園のベンチに座り、ジュースを飲みながら談笑をしていた・・・

 

 大阪で育ったあかねは特に大はしゃぎで、一同に大阪の街を案内すると気合いが入る。あかねは、一同に大阪講座を始め出すと、

 

「大阪といえば・・・」

 

「大阪城!太陽マンがドクガーと戦った・・・」

 

 あかねは変顔を浮かべながら、やよいが目をキラキラ輝かせながら喋るのを遮り、

 

「何やそれ?・・・まあ、太陽何とかは要らんけど、確かに大阪城は定番や!他には通天閣、道頓堀、・・・あっそうそう、阪神甲子園球場を、大阪にある思うてない?甲子園は大阪ちゃうでぇ!兵庫県やから!!間違わんといてぇ!!」

 

「東京ディズニーランドが、千葉県にあるような感じでしょうか?」

 

「どうかなぁ!?」

 

「似ているような・・・似てないような・・・」

 

 あかねの言葉に、れいかがディズニーランドの話題を振ると、一同は首を捻りながら、似ているような、似ていないようなと小首を傾げる。

 

「キャンディ、よく分からないクル・・・」

 

 キャンディも何の事か分からず小首を傾げると、あかねもディズニーランドの事はそれ程詳しく無いようで、

 

「ウチも・・・って、ディズニーランドは関係あらへん!ウチらが行くのは関西!京都、大阪や!!どうせなら、ディズニーランドや無く、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンって言ってぇな!!それに、大阪と言えば・・・食い倒れの街やぁぁ!!!」

 

 拳を振り上げ気合いを込めるあかねに、少し驚いた表情をしたれいかは、

 

「あかねさんが・・・燃えてます!」

 

「当たり前やぁ!ウチが大阪の美味しい物、教えたる!!お好み焼き、たこ焼き、串カツ、きつねうどん!これらを食べなきゃ大阪に来た意味無いでぇ!!」

 

 更に気合いが入るあかねに、れいかは少し恥ずかしげに、

 

「私・・・たこ焼きという物を、まだ食べた事が無いんです!」

 

「ホンマァ?ならウチが、たこ焼きの美味い所案内したる!れいかのたこ焼きデビューを、みんなで祝おうやないか!!」

 

「「「オオ!!」」」

 

 話を振ったあかねだったが、何かを思い出すと、変顔を浮かべながら慌てて前言撤回し始め、

 

「アカン・・・れいか、悪いんやけど・・・たこ焼きは別な日にしてくれへんか?ウチ、ひかりさんと約束してんねん!ひかりさんの店のたこ焼き食べに行くって・・・どうせなら、れいかのたこ焼きデビューは、ひかりさんの店って事にせぇへんか?」

 

「私は構いませんけど?」

 

「悪いなぁ・・・みんなも、大阪でたこ焼きは勘弁してやぁ!」

 

「「「うん!!」」」

 

 みゆき、やよい、なおも同意し、

 

「その代り・・・美味しい店案内してよ!」

 

「任しときぃ!!」

 

 なおの言葉に、腕まくりして任せてとニンマリ微笑むあかねだった・・・

 

 

 

 その夜の星空家・・・

 

「お母さん、お土産・・・何が良い?」

 

「エッ!?そうねぇ・・・これといって頼むような物は・・・みゆきが良いと思う物を買ってきてくれたら、それで嬉しいわ!!」

 

 パジャマ姿になり髪を下ろしたみゆきが、リビングで椅子に座って寛ぐ、母育代に甘えるようにお土産の話題を振ると、育代はみゆきが買ってきてくれた物なら何だって嬉しいと微笑みを向けた。

 

「分かった!可愛いお土産買ってくるからねぇ!!」

 

「エェ、楽しみにしてるわね!」

 

「じゃあ、お休みなさい!」

 

「お休み、みゆき!」

 

 博司はまだ帰って来ていないようだったが、母と娘は微笑み合いながら会話を終えた・・・

 

 

 

 ちょうどその頃、みゆきの部屋ではキャンディが、メルヘンランドに居る兄ポップに電話デコルで話をしていた・・・

 

「そうでござったか・・・キャンディ、気持ちは分かるでござるが、悲しんでいるだけでは、アンデもルセンも心配してしまうでござるぞ?せっかくみゆき殿達が、キャンディを修学旅行とやらに連れて行ってくれるのでござるから、キャンディも息抜きをするでござる!」

 

「分かったクル・・・」

 

 ポップの言葉にキャンディが素直に頷き、ポップはホッと安堵した表情で何度も頷いた。

 

「所で、みゆき殿達は何処に旅行に行くのでござる?」

 

「キャンディ、よく分からないクル・・・ちょっと待ってるクル!」

 

 キャンディは、みゆきの旅行カバンをゴソゴソ漁ると、修学旅行のしおりをポップに見せ始める。キャンディがペラペラ捲る中身を見ていたポップは、ある場面を見て目を輝かせると、

 

「こ、これは・・・キャンディ!みゆき殿は、何時に出発すると言ってたでござる?」

 

「クル!?確か・・・7時に駅前集合とか言ってたクル」

 

「7時に駅前でござるな?こうしてはおれんでござる・・・キャンディ、さらばでござる!!」

 

「アッ、お兄ちゃん、お兄ちゃぁぁん!・・・切っちゃったクル」

 

 慌ただしく電話を切ったポップに、キャンディは不満気に頬を膨らませるのだった・・・

 

「キャンディ、どうしたの?」

 

 部屋に戻ってきたみゆきに、キャンディはポップと話してたら、一方的に切られたと頬を膨らませ愚痴ると、みゆきはベッドに飛び乗り寝転びながら、

 

「そっかぁ・・・ポップも忙しいんだろうね!キャンディ、明日は早く起きなきゃならないし、もう寝よう!!」

 

「分かったクル!!」

 

 二人は少し会話した後、寝息を立てる・・・

 

 明日の修学旅行を楽しみにしながら・・・

 

 

 

 翌29日、みゆき達修学旅行当日・・・

 

 この日は快晴で、集合場所の駅前には、七色ヶ丘中学校の二年生達がワイワイしながら集まっていた・・・

 

「みゆきの奴、遅いなぁ?」

 

「もうすぐ、点呼を始めてしまいますね・・・」

 

「私、みゆきちゃんのお家に電話してこようかなぁ!?」

 

「あっ!噂をすれば・・・みゆきちゃぁぁん!!」

 

 あかね、れいか、やよい、なおが、中々来ないみゆきを心配していると、みゆきは走りながら手を振り、

 

「ゴメェェン!遅くなっちゃった・・・」

 

「星空さん・・・修学旅行の時くらい、もっと余裕を持って来ましょうね!」

 

「ハァァイ!」

 

 苦笑を浮かべた佐々木先生に注意され、みゆきは頭を掻きながら返事をすると、一同が苦笑する。

 

 こうして、みゆき達は、新幹線で京都へと旅立って行った・・・

 

 

 

2、ふたりは大凶!

 

 新幹線の中は、ゴールデンウィーク初日という事もあって混雑していたが、生徒達は、これから始まる修学旅行の旅を想像し、期待に胸を躍らせていた・・・

 

「星空さん!座席の上で踊らない!!」

 

「ハァァイ!」

 

 嬉しさのあまり、座席の上ではしゃいでいたみゆきを注意する佐々木先生だった・・・

 

 

 

 京都に着いた一同は、目の前に聳える京都タワーを見て感嘆の声を上げていた。

 

「凄ぉぉい!あれがあかねちゃんが言ってた・・・通天閣!!」

 

「ちゃうわ!!」

 

「みゆきさん・・・あれは京都タワーで、通天閣があるのは大阪です!」

 

 みゆきのボケに、間髪入れず突っ込むあかねとれいか、

 

(京都タワー・・・まだ太陽マンでは出てないなぁ・・・)

 

(やよいちゃん・・・顔が怖いんだけど・・・)

 

 早く太陽マンのロケ地に行ってみたいやよいは、些か不満気にし、なおは苦笑を浮かべながら隣のやよいを見た。

 

「あなた達・・・遊びに来た訳じゃ無いんですからね!ちゃんと先生達の話は聞くように!!」

 

「すいません」

 

「「「「ハァイ!」」」」

 

 先生の話も聞かず、談笑している五人は佐々木先生に怒られ、れいかが先ず謝り、四人も頭を下げた・・・

 

 一行を、セミロングの青い制服姿のバスガイドさんが出迎え、観光バスへと乗車し、一同は京都見物へと出掛けて行った・・・

 

 

 

 最初に到着したのは金閣寺・・・

 

 荘厳な佇まいに簡単の声を上げるみゆき達、れいかは、金閣寺を背に向けながら、

 

「金閣寺の正式名称は鹿苑寺と言い、相国寺の塔頭寺院の一つで、舎利殿「金閣」が特に有名な為に、一般的には、金閣寺と呼ばれています。元は鎌倉時代の公卿、西園寺公経の別荘だったのですが、室町幕府三代将軍の足利義満が譲り受け、山荘北山殿を造った事が始まりとされています。金閣を中心とした庭園・建築物は、極楽浄土をこの世に現わしたと言われています。この時代の文化は、北山文化と言い、義満の死後、遺言によりお寺となり、夢窓国師を開山とし、義満の法号鹿苑院殿から二字をとって鹿苑寺と名づけられました!!」

 

 れいかの語りを聞き、みゆき達も、他の生徒達も、他の観光客も驚き、歓声を上げると、立場を失ったバスガイドさんが苦笑を浮かべる。

 

「青木さん・・・長い解説ありがとう!でも・・・此処はバスガイドさんの話を聞きましょうねぇ?」

 

 引き攣った笑みを浮かべながら、れいかを諭す佐々木先生に、れいかはしまったという表情を浮かべると、佐々木先生とバスガイドに深々と頭を下げ、

 

「も、申し訳ありませんでした・・・」

 

「いえ、勉強熱心なのは素晴らしい事よ!!」

 

「ほんに、此処まで教養のある生徒さんは、私も始めてですわ!」

 

 苦笑を浮かべながらも、バスガイドもれいかを褒め称えるのだった・・・

 

「黄金の金箔何て・・・全部でナンボ掛かったんやろうなぁ?」

 

「20万枚の金箔、現在の価値で7億円以上は掛かったと言い伝えられています!」

 

「7億!?ドヒャァ!!」

 

 あかねの疑問にれいかが即答し、あかねはその金額を聞き驚く、なおは別の意味で驚いたようで、

 

「ねぇ、れいか・・・どれくらい予習したの?」

 

「ウフフフ・・・内緒です!私、楽しみにしていましたから!!」

 

 照れ笑いを浮かべるれいかに、なおはれいからしいやと苦笑を浮かべた。

 

 みゆきは柵越しに池を覗いていると、沢山の鯉が泳ぐ姿を見つめる。

 

「ワァ!一杯泳いでるねぇ・・・」

 

「本当クル!」

 

「エッ!?キャンディ、駄目だよ!ぬいぐるみの振りしてなきゃ!!」

 

「キャンディも、良く見たいクル!!」

 

 動き回るキャンディを捕まえようとしたみゆきはバランスを崩し、柵を乗り越え池に落ちそうになると、

 

「ほ、星空さん!?」

 

 気付いた佐々木先生が、大慌てでみゆきの手を掴むも、哀れ二人はそのままバランスを崩し、水飛沫を上げながら池に落下し、鯉は驚いて跳ね上がり、そのまま泳ぎ去って行った・・・

 

 金閣寺の集合写真・・・

 

 制服を着た一同の中で、体操服姿の生徒と教師が一名ずつ写っていた・・・

 

 

 

 不動堂を歩くみゆき達一同、一人落ち込むみゆきを見て、あかね、やよい、なお、れいかは、みゆきの気持ちをリフレッシュさせて上げようと考えると、

 

「あっ、みゆきちゃん!あそこにおみくじがあるよ!みんなで引いてみようよ!!」

 

「本当!?うん!!」

 

 やよいの言葉に上機嫌で頷き、一同はおみくじ販売機でおみくじを引くと・・・

 

 やよいとれいかは大吉・・・

 

「ヤッタ~!何かヒーローに会える予感!!」

 

「大吉とは縁起が良いですね!」

 

 なおは中吉・・・

 

「あたしは、まあまあかなぁ!」

 

 あかねは末吉・・・

 

「末吉・・・何や良いんか、悪いんか、よう分からんわ・・・」

 

 そして、みゆきは・・・大凶!!

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 みゆきの周囲で時が止まった・・・

 

 我に返った四人は、みゆきの大凶くじを見せて貰うと、頭上注意、足下注意、持ち物注意、食べ物注意、水に注意と、見ている自分達にまで災難が降りかかりそうな内容が書かれていた・・・

 

 思わず固まるあかね、やよい、なお、れいかだったが、慌ててみゆきのフォローに回り、

 

「ぎゃ、逆に凄いんじゃないかなぁ?」

 

「せ、せやなぁ!」

 

「そ、そうだよ!」

 

「今が一番悪い分、これから良くなりますわ!」

 

 なお、あかね、やよい、れいかの励ましを受け、みゆきも段々元気を取り戻すと、

 

「そ、そうだよねぇ?うん、みんな!ありがとう!!」

 

 だが、キャンディがみゆきの頭の上から、飛んでいた鳩をからかっていたのだが、鳩は仕返しとばかりキャンディ目掛け糞を放つと、キャンディは上手く躱したものの、みゆきの頭にヒットし、再びみゆきの周囲で時が止まった・・・

 

 

 一方、おみくじを引いた佐々木先生は、おみくじの結果を見てワナワナ震えていた・・・

 

 そこには、みゆきと同じく大凶と二文字書かれていた・・・

 

 そして、そこには、足下注意、食べ物注意、水に注意、と書かれていて、顔面蒼白になっていた。

 

(大凶って・・・もっと早くおみくじ引いておけば良かった!)

 

 金閣寺で、みゆきと共に池に落ちていた佐々木先生は、ガックリ項垂れるのだった・・・

 

 

 

 一行は、金閣寺側にあるお食事処金鶴に入り、絶品京料理バイキングの文字を見て興味深そうにしていた。

 

「ウワァ~・・・食べ放題だってぇぇぇ!!」

 

「なお・・・涎が出てますよ!」

 

 食べ放題だと聞き、目をキラキラ輝かせるなおは、涎が出ているのに気付かず、苦笑を浮かべながられいかが、ハンカチでなおの口の周りを拭いて上げた。

 

「何時もはオカンっぽいのに、食べ物食べてる時や、虫見た時は、なおは子供やなぁ!」

 

「あかね・・・これから食べる時に、虫の話は止めてよぉぉ!!」

 

 思わず頬を膨らましたなおに、一同は苦笑を浮かべた。

 

 京野菜のおひたしやきんぴら、焼き魚や湯豆腐、海老の天ぷらに舌鼓をうつ、みゆきは揚げたての海老の天ぷらを食べて熱くて悶絶するも、その美味しさに涙目になりながらも満足するのだった。デザートは、白玉善哉、手作りプリン、フルーツカクテル、ゴマ団子、ヨーグルト+手作りジャムなどがあり、一同は色々なデザートを味わった。特にデザートは女子に好評で、みゆき達五人も堪能するのだった・・・

 

 しばしの自由時間の間、みゆき達は近くの土産物に入ると、商品を物色した・・・

 

「ウワァ!このこけし可愛い!!お母さんのお土産にしよう!!!」

 

 みゆきは母育代へのお土産に、オカッパ頭のこけしを購入し、あかね、やよい、なお、れいかも小物を購入するのだった。

 

 

 

 昼食後、続いて一行が向かったのは嵐山・・・

 

 桜や紅葉の名所でもあり、日本さくら名所100選にも選定されている場所である。トロッコ列車や保津川下りは有名で、観光客にも有名なスポットである。

 

「じゃあ、此処からは2時間の自由行動になります!2時間後に必ず此処に戻ってくるようにして下さい!!」

 

 引率の堀毛先生から注意事項が述べられ、七色ヶ丘生徒一同は、それぞれ自由行動を開始した・・・

 

 

 

「渡月橋(とげつきょう)の南にそびえる標高375mの嵐山、美しい自然に囲まれていて、桜と紅葉の名所としても有名で、渡月橋はその嵐山の中心を流れる桂川(かつらがわ)に架かる全長155mを誇る橋の事です!!」

 

 渡月橋を歩く一同、れいかのバスガイド泣かせの解説が再び輝いた。

 

「お嬢ちゃん、若いのに物知りねぇ・・・はい、これ!教えてくれたお礼よ!!」

 

「そんな・・・返って申し訳ありません!」

 

 れいかの解説に聞き惚れていた三人組の老女達から、れいかは京土産の定番である八つ橋を箱事貰った。困惑するれいかだが、老女達にお礼を言い、一同は早速八つ橋を五人で分け合い食べるのだった・・・

 

「れいか、早速大吉の効果があったじゃない!」

 

「どうでしょうか?」

 

 なおに大吉の効果じゃないと言われ、れいかはそうだろうかと小首を傾げた。

 

「ねぇねぇ、せっかくだからみんなで記念写真撮ろうよ!!」

 

「エエな!せっかくやし、誰かに五人一緒の写真撮って貰おう!!」

 

 みゆきの提案にあかねが真っ先に賛成し、やよいは辺りをキョロキョロし、二人組のお婆さんに声を掛け写真を撮って貰うのだが、出来映えを確認すると、みゆきの顔はフレームから外れていた・・・

 

「まあ、こんな事もあるわ!あっすんませぇん!!写真撮って貰ってもエエかなぁ?」

 

 若い子なら大丈夫だろうと、同じぐらいの他校の生徒に写真を撮って貰うと、体操服姿のみゆきを見て笑い、手元がずれてこれまた失敗、他にも何人か試すも、ピンぼけ、まともに取れた写真も、みゆきは思わず目を瞑り、カメラのバッテリーが切れ、写真撮影は終了した・・・

 

「ま、まあ、良くある事だよ!」

 

「そ、そうだよ!これから何処行こうか?」

 

「トロッコ列車や、保津川下りは乗って見たいですが、時間が限られていますからねぇ・・・」

 

 引き攣った笑みをみゆきに向けながら、なおとやよいがみゆきをフォローし、れいかは、トロッコ列車や、保津川下りも有名で、行ってはみたいものの、時間的に厳しいようだと一同に伝えた。一同は、ガイドブックを手にしながら次に何処行こうか相談し合うと、

 

「映画村が良いでござる!」

 

 何処かから聞き覚えのある声が聞こえ、一同は顔を見合わせ驚き、

 

「ござる!?」

 

「何や・・・嫌な予感がするなぁ」

 

 なおとあかねが表情を曇らせ辺りをキョロキョロすると、みゆきのカバンの中身がゴソゴソ動き始め、

 

「エッ!?私のカバンの中に・・・何か居るよぉ?」

 

 ゴソゴソ動きだした何かが、カバンから顔を出したのはキャンディの兄ポップ、

 

「皆の衆、元気にしてたでござったか?」

 

「お・・・お兄ちゃぁぁぁぁん!!」

 

 大喜びのキャンディがポップに体当たりし、その反動でポップはカバンから放り出され、地面に後頭部から落下し悶絶する。

 

「ポップ・・・大丈夫!?」

 

「フフフ・・・何のこれしき!」

 

 みゆきが心配そうに声を掛けるも、ヨロヨロ立ち上がったポップは口に笑みさえ浮かべ、

 

「所で・・・何でポップが此処に居んの!?」

 

「何時の間に私のカバンの中に入ったんだろう?」

 

 あかねとみゆきは、ポップが居る事に大変驚き問うと、ポップは目を輝かせながら、

 

「ああ、拙者・・・キャンディの事が心配だったのもござるが、他のプリキュアの方々にも、この間のお礼を兼ね挨拶しようと考えて居たでござる。ちょうどこちらの世界は休みに入ったとか・・・これは幸いとこちらの世界に来た時、走っていたみゆき殿を見付け、体当たりをしてみゆき殿が転んだ間に、カバンの中に入り込んだのでござる!」

 

「あの時私が転んだのは・・・ポップの所為だったの?だったら声を掛けてくれれば良かったのにぃぃ・・・ハップップ~」

 

 遅刻しそうになった原因は、ポップのせいだったと知り、みゆきが変顔を浮かべる。ポップは苦笑を浮かべながらみゆきに謝り、真顔になると、

 

「皆の衆・・・実は!」

 

「「「「「実は!?」」」」」

 

「拙者・・・映画村に行きたいでござる!!」

 

 目を輝かせるポップに、思わず五人が転ける。

 

「ホンマは・・・それ目当てで来たんとちゃうの?」

 

「し、失敬でござるなぁ・・・とはいえ、否定はしないでござるが・・・」

 

「否定せんのかい?」

 

 あかねの突っ込みに返す言葉も無くなるポップ、一同は苦笑を浮かべる。やよいはガイドブックを開き調べていると目を輝かし、

 

「ウワァ!此処にはスーパーヒーローランドもあるよぉぉぉ!!私も行きたい!!!」

 

「オオ!やよい殿も同意してくれるでござるか?」

 

「うん!!」

 

 二人で目をキラキラ輝かせながらガイドブックを見るやよいとポップ、あかねとなおは、そんな二人を見て醒めた視線を向けるのだった。

 

 れいかはガイドブックを手に取ると調べ始め、

 

「東映太秦映画村の事ですね!此処からだと・・・京福電鉄に乗れば、比較的早く付けそうですが、集合時間の16時までに戻って来るには・・・あまりゆっくり見ている時間はありませんねぇ・・・」

 

「「エエェェ!?」」

 

 れいかの言葉に、この世の終りのような表情で悲しそうにするやよいとポップ、あかねとなおは、れいかの肩に手を乗せながらウンウン頷き、

 

「れいかの言う通りやなぁ!いくら自由時間ちゅうても、集合時間に間に合うように行動せなぁ!!」

 

「そうそう、仮にそこに行ったとしても、慌ただしく見ても意味無いよ!!」

 

 あかねとなおは行くのに反対しているようで、縋るような目をみゆきに向けるやよいとポップ、

 

「やよいちゃん!ポップ!れいかちゃんやあかねちゃん、なおちゃんの言う通り、今回は諦めよう!またみんなで来ようよ!!その時はゆっくり映画村見ようね!!」

 

「そ、そんなぁぁぁ・・・」

 

「む、無念でござる・・・」

 

 同じような姿で膝から崩れ落ちる二人、

 

(私の大吉は・・・何だったのぉぉぉぉ)

 

 心の中で叫ぶやよいであった・・・

 

 

 

「ねぇねぇ、此処から割と近くに、嵐山モンキーパークってあるけど・・・行ってみない?」

 

「モンキーパーク・・・エエなぁ!!」

 

 なおの提案にノリノリのあかね、れいかはガイドブックを手にすると、

 

「そうですね、此処からなら割と近いですし・・・行ってみましょうか?」

 

「うん!私も良いよ!」

 

(お猿さん何て、何時でも見れるのにぃ・・・)

 

 みゆきも同意し、少し不満気なやよいであったが、一同はモンキーパークへと向かった。

 

 嵐山の渡月橋の南端を上流に少し歩くと、左側に檪谷宗像(いちたにむなかた)神社が見え、鳥居をくぐって左に進んで行くと、嵐山モンキーパークいわたやまの入口が見えてきた。なおとあかねは大はしゃぎで中に入り、約20分掛けて山を登って行くと、一行は山頂に着いた。

 

 この嵐山モンキーパークいわたやまは、1954年、京都大学の研究の為に、野生のニホンザルが餌付けされたのが始まりだそうで、1957年から一般に公開され、研究目的の餌付けであった為、そのルールは徹底されており、サル達も人間が危害を与えないことを認識するようになったそうである。この為、ここでは人間がそばにいても怖がらず、人間に危害を与える事もまず無いそうである。ただし、ごく近くで目を見つめたり、サルに触るなどの行為は厳禁という事である。

 

「エェ!?柵が無いよ!!」

 

「ホンマや!お猿さんが・・・ウチらの前を平然と横ぎっとるぅぅ」

 

 なおとあかねが目をキラキラさせながら猿を見つめる。

 

「キャンディも見たいクル!!」

 

 ピョンと飛び降りたキャンディを見て、見慣れない生物を見て興奮したのか、猿達が徐々に増えてくる。

 

「な、何か・・・ヤバイんちゃうか?」

 

「み、みゆきちゃん、キャンディを抱いておいた方が・・・」

 

「そ、そうだね!!」

 

 あかねとなおの言葉を聞き入れ、キャンディを抱き上げようとしゃがみ込んだみゆきは、猿と目が合い・・・

 

「お、お猿さん・・・こんにちは!!」

 

「ベェ~~~」

 

 みゆきは、引き攣った笑みを目が合った猿に向けると、キャンディが舌を出す。キャンディ、止めてぇとみゆきが言うと、一匹の猿が興奮したのか、みゆきの下にダッシュし、みゆきは思わず逃げ出し、猿に追い回された・・・

 

「こんなにおとなしいのですが・・・」

 

 れいかの直ぐ側で小猿が寝転び、思わずれいかは小猿に微笑むのだった・・・

 

 

 

 

「あっ、佐々木先生ですわ!」

 

 モンキーセンターから、再び渡月橋に戻って来た一同、れいかが体操服姿の佐々木先生を見付け、一同が佐々木先生に駆け寄る。みゆきは申し訳無さそうにしながらも、自分と同じような格好をしている佐々木先生を見ると、同士に出会えたように嬉しさが込み上げていた。

 

 佐々木先生は、渡月橋の直ぐ側のお店で抹茶ソフトを買おうとしていたようで、

 

「あら、青木さん達もこの辺を見学していたのね」

 

「はい、映画村にも行きたかったのですが、ゆっくり見る時間がありませんので、断念致しました」

 

「それで、モンキーセンターを見てきました!!」

 

 れいかとなおの報告を聞いた佐々木先生は何度も頷くと、

 

「そうね、自由時間が二時間じゃ、映画村は回りきれないわね・・・」

 

 抹茶ソフトを定員から貰い舐め始める佐々木先生、美味しそうに見えた一同も抹茶ソフトを購入しようとすると、

 

「良いわよ、私が奢って上げる!」

 

 佐々木先生に御馳走になり、五人と佐々木先生は抹茶ソフトを食べながら談笑していると、

 

「何やみゆきと先生が、ジャージ姿で隣同士抹茶ソフト食べてんのみると・・・母娘見たいやなぁ?」

 

 あかねの言葉に反応し、思わず顔を見合わせるみゆきと佐々木先生、みゆきの母に見えると言われ、些か取り乱した佐々木先生は、

 

「ちょ、ちょっと日野さん、止めてよ!!」

 

「確かに、仲睦まじい母娘に見えますね!」

 

「そうかなぁ?」

 

「せめて、姉妹って言って頂戴!」

 

 れいかにも言われ、みゆきは照れ笑いを浮かべる。苦笑を浮かべながら、佐々木先生はせめて姉妹と呼んでと言って一同を笑わせた。みゆきと佐々木先生が抹茶ソフトを舐めようと顔に近づけた時、観光客の荷物が二人に当たり、二人は顔面で抹茶ソフトを味わう・・・

 

 二人の周囲で時が止まった・・・

 

 

 

 一行は、佐々木先生と別れて竹細工のお土産屋に入り、何か良いものは無いか見ていると、

 

「アッ!これなんか京都らしくて良いかなぁ・・・」

 

 みゆきは手に取った竹で出来たティーカップをあゆみへのお土産に購入する。他の四人もせっかく寄ったからと、竹細工の小物類を購入し、店を出た。

 

 竹林に覆われた道を歩く一行は、のどかな景色を堪能しながら歩いていると、キャンディは、みゆきに読んで貰ったかぐや姫を思い出し、竹に登り始め、

 

「これ、みゆき!お菓子を持て!!」

 

「ちょっとキャンディ!かぐや姫はそんな話しじゃないよ!それに、危ないから降りてきなよ!!」

 

「みゆき殿の言う通りでござるぞ!キャンディ、降りるでござる!!」

 

「嫌クル~!」

 

 駄々を捏ねていたキャンディが落ちそうになり、慌ててみゆきがキャンディの下に向かおうとした時、手から荷物が飛び去り、鈍い音が響き渡った。

 

 キャンディは体勢を整えると、自分で降りてきて一同はホッと安堵したのだが、みゆきは、紙袋の中から母育代、あゆみに買ったお土産を手に取ると、中からカタカタさっきまでしない音が聞こえ、恐る恐る中を調べてみると、こけしの髪は真二つに割れ、上手い具合に髪の毛が取れ、ティーカップは取ってが折れ、湯飲みのようになっていた・・・

 

 あかね、やよい、なお、れいか、ポップとキャンディも呆然とし、沈黙する・・・

 

「お母さんとあゆみちゃん・・・怒らないかなぁ?」

 

 涙目になったみゆきが、一同に哀願するような目を向けると、一同は顔を見合わせ、

 

「だ、大丈夫じゃないかなぁ?」

 

「せ、せやなぁ・・・こけしは大体髪の毛何かあらへんし、ティーカップは湯飲みになっただけや」

 

「うん、大丈夫だよ!」

 

「お母様も、あゆみさんも、きっと喜んでくれますわ!!」

 

「そうかなぁ!?」

 

 なお、あかね、やよい、れいかがフォローするも、みゆきは不安そうにこけしとティーカップを見つめていた・・・

 

 

 

「クション!」

 

「あゆみ、風邪でも引いたの?」

 

「花粉症かしら?」

 

「誰かに噂されてるんじゃないの?」

 

 この日あゆみは、やって来たせつなに誘われ、クローバータウンストリートに遊びに来ていた。美希はモデルの仕事らしく不在だったが、せつなと共に、ラブ、祈里があゆみを歓迎してくれていた。カオルちゃんのドーナツ屋で談笑していた四人の話題は、何時しかみゆき達へと移った。

 

「でも、ゴールデンウィークに修学旅行何て、大変だよねぇ?」

 

「人も一杯居るもんね」

 

 ラブの言葉に頷く祈里、ラブとせつなが、沖縄に修学旅行に行った時は秋・・・

 

 その時も旅行シーズンではあったが、大型連休の時じゃ、それ以上だろうと想像する。

 

「エレンに聞いたけど、エレン、響、奏も、今日から修学旅行に行ってるそうよ!」

 

「エッ!?そうなの?最近ゴールデンウィークに行くのって、流行ってるのかなぁ?」

 

「さぁ、どうかしら?」

 

 四人は顔を見合わせ首を捻る中、あゆみはタルトとシフォンが居ない事に気付き、

 

「せつなさん、ラブさん、祈里さん、そういえば、この間横浜で見たフェレットと、もう一人の妖精さんの姿が見当たりませんけど!?」

 

「あぁ、タルトとシフォンの事?二人はスウィーツ王国に一先ず帰ってるの!」

 

「私みたいに、面倒だからこっちに残ればって言ったんだけどねぇ・・・」

 

「色々事情があるそうなの・・・また来るって言ってたから、その内来ると思うけど」

 

 タルトとシフォンにも、慰められていたのを思い出し、お礼も言いたかったあゆみだが、またの機会にと気持ちを切り替える。一同はドーナツを食べ再び幸せそうな表情を浮かべた・・・

 

 

 

 

 今日の宿泊先、三条通りに在るほへと旅館に着いた七色ヶ丘中学一行・・・

 

 旅館の人々に出迎えられ、一同は班ごとに分けられた自分達の部屋へと荷物を持って入って行った。みゆき、あかね、やよい、なお、れいか達の部屋は316号室、七色ヶ丘生徒達は、暫しの自由時間後、旅館内にあるレストランに移動し、夕食を食べ皆ご機嫌だったが、みゆき一人はまだ何処か浮かない素振りであった・・・

 

 クラス事に決められた入浴時間になり、みゆきとなおはリボン、あかねとれいかはピン留め、やよいはカチューシャを取り、一同はポップにキャンディの事を託すと、大浴場へと向かった。

 

 ほへと旅館の大浴場は、観月の湯、蓮見の湯、朝顔の湯、菖蒲の湯の四種類の大浴場があり、みゆき達女生徒は、蓮見の湯を使っていた。

 

 中に入ると、脱衣所も洗面台も明るく、中々オシャレなデザインで、生徒達はキャッキャッ騒ぎながら、衣服を脱ぎ蓮見の湯に入っていった。みゆき達が着いた頃には、クラスメートの柏本まゆか、木角まゆみ、藤川あみ、本田あや達は既に入り終え、着替えている最中だった。

 

「みんな、早いねぇ!」

 

「うん、少し旅館の中を見て見たくて・・・じゃあ、お先にね!」

 

 なおの問い掛けにまゆかが答え、四人は体操着姿に着替え脱衣所を出て行った。弟や妹達を風呂に入れる事で慣れているのか、なおは素早く衣服を脱ぎ、籠にしまい、あかねも素早く衣服を脱ぎ籠に乱雑に入れ、れいかはキチンと折り畳み籠にしまう。やよいは少し恥ずかしそうにみんなに背を向けて脱いでいると、あかねにからかわれ、頬を膨らませながら衣服を脱いだ。

 

「今日は最悪な一日でした・・・ハップップ~」

 

 みゆきが、ハァと吐息を漏らしながら衣服を脱ぎ籠にしまう。五人の少女達は、中学生らしく白の下着姿のまま、みゆきを慰めていると、その背後で、

 

「同じく・・・今日は最悪な日だったわ・・・ハァ」

 

「せ、先生!?」

 

「この時間は、生徒だけが入浴時間では?」

 

 教師である佐々木先生が入ってきた事で驚くなおとれいか、佐々木先生は苦笑を浮かべながら、

 

「本当はそう何だけど、ほら、私も星空さんと一緒に池に落ちたでしょう?堀毛先生が、風邪を引くとイケナイから、先に入ってらっしゃいと言って下さって、お言葉に甘えたってわけ!」

 

 そう言いながら、体操服を脱ぐ佐々木先生、薄いブルーのブラとショーツが露わになり、ブラに覆われた豊満な胸、ショーツから溢れ出しそうな丸みを帯びたヒップ、教師にしておくのは勿体無いプロポーションが目の前に現われ、みゆき達五人は目を輝かせジッと見つめていると、五人の視線に気付いた佐々木先生は苦笑を浮かべながら、

 

「ねぇ、いくら女同士とはいえ・・・あまりジッと見つめられると、恥ずかしいわ」

 

「お、大きい!!」

 

「普段スーツ姿を見慣れてるせいか・・・新鮮や!」

 

「確かに・・・憧れてしまいますねぇ」

 

「先生・・・胸を触っても良い?」

 

「私も触りたぁぁい!!」

 

「ハァ!?何バカな事言ってるんですか!さぁ、さっさとあなた達も下着を脱いで!中に入りなさい!!」

 

 少し頬を染め、ジッと見つめる、なお、あかね、れいか、みゆき、やよいの言葉に、益々顔を赤くした佐々木先生は、さっさと浴室に入りなさいと注意を与え、一同は下着を脱ぐと、五人の少女達は、発育途上の健康的な裸身を露わにし、佐々木先生は、色気漂う成人女性の裸身を晒し、再び少女達が下から上へと佐々木先生を凝視する。佐々木先生は一同を促すと、浴室へと入っていた・・・

 

 みゆきと佐々木先生が先頭で中に入ると、二人はほとんど同時に足を滑らせ、

 

「「キャァァァ!!」」

 

 大股開きでドスンと尻餅を付くみゆきと佐々木先生は、同じように渋い表情を浮かべながら顔を見合わせた。

 

「確か、みゆきのおみくじには・・・足下注意もあったなぁ?」

 

「うん・・・あったね!」

 

 此処までおみくじの内容が当たる事に、逆に恐怖を感じて顔が引き攣るあかねとなお、

 

「みゆきさん!先生!大丈夫ですか?」

 

 慌てて近寄るれいかとやよい、みゆきと佐々木先生は、恥ずかしさと痛さが相容れる複雑な表情を浮かべながら、ガックリ項垂れるのだった・・・

 

 

 

 大浴場から出て、旅館の浴衣を着て部屋で寛ぐ一同、れいかはドライヤーで髪を乾かしながら、

 

「とても良い湯加減でしたねぇ・・・」

 

「池の水は、とても冷たかったです・・・」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

 れいかの言葉に、部屋の隅で体育座りをしていたみゆきは、金閣寺の出来事を思い出したのか、ポツリと呟く、やよいは話題を変えようと、

 

「お、お土産に買った簪・・・ママ気に入ってくれると良いなぁ!!」

 

「お母さんとあゆみちゃん・・・本当に怒らないかなぁ?」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

 髪の毛が取れたこけしと、取ってが取れたティーカップを見つめるみゆきに、今度はなおが話題を変えて

 

「モ、モンキーセンターのお猿さん達、可愛かったよねぇ?」

 

「お猿さんに、追いかけられました・・・」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

 モンキーセンターの猿達の話題を出したなおだったが、みゆきは猿に追いかけられた事を思い出し、ポツリと呟く、引き攣った笑みを浮かべたあかねは、

 

「ま、抹茶ソフトは美味しかったやん!先生の奢りやし!!」

 

「先生と一緒に・・・顔でも食べました・・・」

 

「「「「・・・・・・・」」」」

 

 どんどんブルーになっていくみゆきに、キャンディとポップを交えた一同が小声で話し合う・・・

 

「みゆき殿はどうしたでござるか?」

 

「まあ、今日のみゆきは厄日やったしなぁ・・・」

 

 ポップが小声で一同に聞くと、みゆきの今日一日の不運振りを伝え、再び一同の視線がみゆきへと向けられる。ハァと溜息を付くみゆきの後頭部に、ドスンと枕が当たり、振り向いたみゆきにあかねは、

 

「何や、何や、辛気くさい!そんな顔しとったら・・・ハッピーが逃げてまうでぇ!!」

 

「そういう事・・・」

 

 あかねとなお、二人がニッコリ笑みを浮かべ枕をバシバシ叩くと、みゆきは徐々に表情を綻ばせ、

 

「ハッピーが逃げちゃう・・・そうだねぇ!!」

 

 笑みを浮かべたみゆきが、あかねに枕を投げ返すと、あかねは嬉しそうに笑い、

 

「シシシシ!それでこそみゆきやぁ!!隙有りぃぃ!!!」

 

 みゆきが元気を取り戻した事にホッと安堵する一同、あかねは無防備なやよい目掛け枕を投げると、やよいの顔面に当たり、やよいが涙目になりながら頬を膨らませ、枕を手に持つ、れいかはオロオロしながらみんなを止めようとし、

 

「皆さん、もう消灯時間ですし、端無い真似は・・・キャァ!」

 

「れいか!隙有りだよ!!」

 

「なお・・・お返しします!!」

 

 なおに枕を投げられたれいかも参戦し、316号室は枕投げの戦場と化し、ポップはキャンディと共に、ポップが入ってきた絵本の中へと避難するのだった・・・

 

「あなた達、何時まで騒いで・・・キャァァァ!」

 

 みゆき達の部屋が騒がしく、様子を見に来た浴衣姿の佐々木先生の顔面に、みゆきが投げた枕が直撃する。思わずシーンとする室内、佐々木先生は枕を手に持つと、

 

「あなた達・・・枕投げで私に勝てると・・・思ってるのぉぉ!!」

 

 意外な事に、佐々木先生も枕投げに参加した。ベイスタ-ズのファンである佐々木先生は、投げる事に慣れているのか、コントロール良く、やよい、みゆきの顔面に当て、二人をKOし、あかね、なお、そして、巧みに躱すれいかと激しい攻防を繰り広げる。

 

「あなた達、何時まで騒いで・・・キャァァァ!」

 

 様子を見に来た堀毛先生がドアを開けた瞬間、佐々木先生の投げた枕をれいかが躱し、堀毛先生の顔面に直撃する。佐々木先生はしまったという表情を浮かべると、

 

「堀毛先生も・・・参加されます?・・・なんちゃってぇ!アハ、アハ・・・すいません!」

 

「佐々木先生!!引率のあなたが・・・何をしてるんですかぁぁ!!!」

 

「おっしゃる通り・・・すいません!」

 

 堀毛先生に怒られ、佐々木先生はみゆき達にもう寝なさいと言い残すと、堀毛先生に小言を言われながら去って行った。

 

「先生に悪い事したなぁ・・・」

 

「明日、みんなで謝りましょう!!」

 

「せやなぁ・・・」

 

 布団を直し、一同が布団の中に潜り込むも、中学生がそう易々寝る筈も無く、恋愛話や、プリキュアの事などを小声で話し合う・・・

 

 みゆきは、四人の優しさに触れ、ハッピーを取り戻した気がするのだった・・・

 

                 第五十話:修学旅行(前編)

                       完


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