プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第四十九話:悪の同盟!

1、鬼神

 

 ハッピー達は、新たなる力レインボーヒーリングで、あゆみ、アンデとルセンを元の姿に戻す事に成功したものの、強襲したサディス、ベガ、ディクレの前に、アンデとルセンはあゆみを庇い消滅し、危機を救ってくれたブラックとホワイトもまた、虹の輝きと共に消え失せた・・・

 

 

 

 一同の心に深い哀しみが覆う中、三人の魔人の嘲笑が響き渡る・・・

 

 ムーンライトの瞳から、止め処なく涙が零れてくる・・・

 

 出会った期間はほんの数年、だがその数年が、ムーンライトには何十年もの知古のように感じられていた。

 

 親友ならえりかの姉ももかも居る・・・

 

 プリキュアとしての先輩なら薫子も居る・・・

 

 同じ苦しみを乗り越えた、ブロッサム達沢山の後輩プリキュア達も居る・・・

 

 だが、月影ゆりとして、キュアムーンライトとして、対等の立場で話の出来る親友は、ブラックとホワイト、なぎさとほのかだけだった・・・

 

 同じ時期からプリキュアとして戦い、自分の事を理解し、励ましてくれた大切な親友であり、戦友でもあった。

 

 ムーンライトも、本当は優しく繊細な心を持つ少女である。プリキュアとしての使命感から気丈に振る舞う彼女だったが、精神的支えでもあるブラックとホワイトが居ない現状で、後輩達を導いていける心の強さは無かった・・・

 

 嘗て、父を目の前でデューンによって消滅させられていたムーンライトにとって、親友を同じように失う悲しみは耐えられなかった・・・

 

 後輩プリキュア達は呆然としていた・・・

 

 キュアムーンライトは、クールで頼りになる先輩プリキュア、そのムーンライトが、今まで見せた事の無い姿で動揺し、号泣する姿を見て、後輩達は掛ける言葉を失っていた。ただ、ブロッサム、マリン、サンシャインは、デューンの手に掛かり、消滅したゆりの父月影博士を見ていた。三人の心も、あの時と同じように悲しみが満ちていた・・・

 

 そんなプリキュア達に、サディス、ディクレ、ベガの嘲笑が容赦なく浴びせられる。

 

 ゆっくり立ち上がったムーンライトは、流れる涙を拭いもせず、キッと三人を睨み付けると、無言で三人目掛け歩み始める。

 

「ムーンライト、無茶です!」

 

 ブロッサムが止めるのも聞こえないかのように、ムーンライトは歩み続ける。三人の魔人を、鋭い視線で睨み付けながら・・・

 

「何だ!?次は貴様があの者達のように、無様に消滅するか?」

 

 鼻で笑うディクレに対し、ムーンライトの理性が崩壊した・・・

 

「ウワァァァァァ!!」

 

 雄叫びを上げながら突進するや、三人に怒濤の攻撃を繰り返すムーンライト・・・

 

 パンチが、キックが、サディス、ベガ、ディクレを容赦なく打ちのめしていく。

 

「こ、この野郎!調子に乗るんじゃねぇぇ!!」

 

 背後から雄叫び上げて殴りかかるベガを、振り向きもせず右手の裏拳で吹き飛ばす。その姿は、鬼神とも呼ぶ姿をしていた。鬼気迫るムーンライトの攻撃はサディスにも浴びせられ、堪らず地面にうつ伏せに倒れたサディス、ムーンライトは、雄叫びを上げたまま容赦なくサディスの後頭部を蹴り続けた。

 

「ム、ムーンライト・・・」

 

 その鬼気迫る迫力は、他のプリキュア達に近付く事を許さない凄みを放っていた。

 

「な、何だ!?コ奴、体力を失っているとはいえ、我ら三人を相手に・・・」

 

 ディクレは、体力を失っているとはいえ、自分達三人を圧倒する力に驚愕する。ゴロゴロ転がり、辛くもムーンライトから逃げたサディスは、

 

「ガハァ・・・ち、畜生ぉぉ!!だ、だが、こいつは使える!こいつの心は、あたしらに対しての憎しみで一杯だ!!」

 

 三人は頷き合うと、ムーンライトを中心に置くと、三方に散り、黒いエネルギー波がうねりを挙げてムーンライトを捕らえる。サディスが念を込めると、ムーンライトの額に五芒星が浮かび上がってくる。

 

 三人の魔人は、ムーンライトに魔を憑依させ、自分達の忠実なる魔へ変えようと試みる。何時もの冷静沈着な彼女なら、このような攻撃を迂闊に食らうことは無い、だが、今のムーンライトは、三人の魔人を目の敵にし、この手で倒さずには居られないといった状態だった。

 

「ウワァァァァ!!」

 

 それでもムーンライトは、がむしゃらに暴れ、三人に攻撃を加えようともがくも、黒いエネルギー波は、まるで鞭のようにムーンライトに巻き付き、動きを封じる。

 

「貴様のその憎しみの心、利用させて貰う・・・さあ、貴様も魔となり、我らが軍門に下るがいい!!」

 

 サディスは、黒いマントを何度も翻し、両手を天に構えると、

 

「魔よ!この地に現われ、この女の心の憎しみを、もっと、もっと増幅させよ!!我は求め・・・訴えたり!!!」

 

 サディスの両手がサッと下がると、上空に現われた黒煙がムーンライトの身体を包み込む、ムーンライトは悲鳴を上げながらも、心の中の憎しみが増幅してくるのを感じていた。

 

 ムーンライトは膝から崩れ落ちた・・・

 

 心の中の闇と格闘を始めたかのように・・・

 

「ウワァァァァァァ!!」

 

 雄叫びを上げるも、放心したかのように動きが止まるムーンライト、ハッピーはその姿を見るや、先程あゆみが受けた状態と似ている事に気付くや、

 

「あれは、あの時のあゆみちゃんと・・・ムーンライト、逃げてぇぇ!!」

 

 ハッピーの絶叫を聞き、瞬時に行動を移したプリキュア達、アクアのサファイアアローが、ビートのビートソニックが、ウィンディの凄まじい突風が、ムーンライトを捕らえていた黒いエネルギー体を断ち切れば、ドリームのシュ-ティングスターがサディスに、マリンとサンシャインのフォルテッシモがベガに、ピーチ達四人のクアドラプルパンチがディクレを吹き飛ばす。

 

「あなた達の好きにはさせない!ムーンライトは、私達が守って見せる!!」

 

 ドリームの言葉を表すかのように、ムーンライトを庇うようにその周りで身構える一同、ブロッサムは、放心状態のムーンライトの両肩を激しく揺さぶりながら、

 

「ムーンライト、しっかりして下さい!あなたが信じないでどうするんですか!!ブラックも、ホワイトも、きっと、きっと無事で居ます!!!」

 

 目の焦点が合っていなかったムーンライトだったが、ブロッサムの言葉が、次第にムーンライトの理性を再び取り戻させる。

 

「ブロッサム!?みんな?でも・・・でも・・・」

 

 額に浮かんだ五芒星も消え去り、再びムーンライトの心に理性が完全に戻るも、ブラックとホワイトが居なくなった現実が思い浮かんでくる。再び止め処なく涙を流すムーンライトに、

 

「ブロッサムの言う通りです!ブラックも、ホワイトも、こんな事で消えたり何か・・・しない」

 

「ルミナス・・・」

 

 涙を堪えるようにグッと拳を握ったルミナス、自分より二人と過ごした時間が長いルミナスや、メップルやミップルも悲しみに耐えている。

 

 なのに、自分は・・・

 

 ムーンライトは涙を拭い立ち上がった!

 

 今は悲しんでいる時ではないと・・・

 

 ポルンとルルンは、心配そうに妖精姿になってルミナスの顔を見つめていると、

 

「ポポ!?」

 

「ルル!?」

 

 突然上空を見上げたポルンとルルンが、一点を凝視するや、目を閉じて何かの気配を探るように集中し始める。

 

「ポルン、ルルン、どうしたメポ?」

 

「感じるポポ!遠い、遠い所で、なぎさとほのかの気配を感じるポポ!!」

 

「メポ!?」

 

「ミポ!?」

 

 ポルンの言葉を受け、衝撃を受けたメップルとミップル、そしてプリキュア達は、顔色を変えポルンとルルンの側に集まってくる。

 

「ポルン、ルルン、それは本当なの!?ど、何処に居るの?」

 

 驚愕の表情を浮かべながら、ポルンとルルンに問い掛けるムーンライトに、ポルンもルルンも首を振りながら、

 

「分からないルル・・・でも、遠い、遠い所で、なぎさとほのかを、ルルンも感じるルル」

 

 その言葉を聞き、プリキュア達、妖精達の顔が綻ぶ、この場所に居なくても良い、二人が無事で居てくれるなら・・・

 

「ブロッサム・・・またあなたに立ち直らせて貰う何て、まだまだ私もプリキュアとして未熟なようね!ありがとう・・・もう大丈夫!!」

 

 ムーンライトは、口元に笑みを向けながらブロッサムに頷くと、ブロッサムも頷き返した。

 

 プリキュア達の視線が、三人の魔人サディス、ベガ、ディクレへと向けられる。

 

「コ奴、立ち直ったか・・・」

 

「どうする!?今のあたし達の体力じゃ、此奴ら相手に・・・」

 

「クソォォ!魔界にさえ戻れれば・・・」

 

 今の自分達の体力では、これだけのプリキュアを相手にして勝てる見込みは0だった。最早帰る場所の無い三人に取って、此処を死に場所と決め、一人でも多くのプリキュアを道連れにするよりないと覚悟を決めようとしたその時、

 

「お困りのようですねぇ・・・どうです!?我らバッドエンド王国と手を結びませんか?」

 

 突然空中から声が響き渡るや、トランプの舞が上空から降り注ぎ、姿を現わすジョーカー、神出鬼没のその姿に、プリキュア達も、三人の魔人も驚愕する。

 

「お前は・・・確かバッドエンド王国の!?」

 

「はい、ジョーカーと申します!どうでしょう・・・我々に協力して頂けるなら、あなた方を、我らバッドエンド王国の大切なお客様として、バッドエンド王国にご招待致しますが?もちろん、好きなように過ごして頂いて結構です!!共にプリキュアを敵と見なす私達なら・・・悪い話では無いと思うんですけどねぇ?」

 

 ジョーカーは口元に笑みを浮かべながら、三人の魔人に対し同盟を提案してくる。その意外な提案に三人も虚を突かれた。ディクレは、ジョーカーの真意を探るようにジョーカーを見つめるや、

 

「なるほどな・・・確かに我々はプリキュアを敵と見なしている。サディスの話によれば、お前達はロイヤルクイーンを封じたとか・・・良かろう!我々に取って悪い話では無い!!我々はどうせ何処にも行く宛も無い・・・ならば、貴様に協力するのも、結果的には我らの目的にも通じる・・・良いな?サディス!ベガ!」

 

「どうもこいつは胡散臭そう何だけど・・・仕方が無いね!了解した!!」

 

「ああ、俺も依存は無い!!」

 

 三人が同意した事に、ジョーカーは嬉しそうにクルクル回転して三人にお辞儀をし、プリキュア達を振り向くと、

 

「と言う事で、我々の目的は一致致しました!!今日の所は一先ず退散致しますが、次からは覚悟していて下さい!!さあ、皆さん方を我らバッドエンド王国へとご招待致しましょう!!!」

 

 今、プリキュア達の目の前で、バッドエンド王国と三人の魔人が手を結んだ・・・

 

 プリキュア達の表情が一層険しさを増していく。

 

「待ちなさい!このまま黙って行かせると思っているのかしら?」

 

 見す見すこのまま見逃したりはしない!ブライトは気合いを込めると、光を頭上に集め巨大な球体を作り上げるや、ジョーカー、そして、三人の魔人目掛け強烈な一撃を放った。ジョーカーは、トランプカードを手に取り前に出るや、ブライトの攻撃をトランプの中へと吸収した。

 

「そ、そんなぁ!?」

 

 思わず目を見張るブライト、今まで幾多の敵と戦ってきた彼女であったが、こんな状況は初めてだった。ジョーカーは、ブライトの動揺する姿を見て口元に笑みを浮かべると、

 

「凄まじい攻撃ですねぇ・・・まともに食らえば、私も大ダメージを受けていたかも知れませんねぇ・・・さあ、ご自分でも受けてみなさい!!」

 

 ジョーカーが手に持つトランプから、ブライトの放った攻撃は、巨大な闇の球体となってブライト目掛け発射された。

 

(そんなぁ・・・私の攻撃を、更に力を加えて跳ね返す何て!?)

 

 虚を突かれ反応が遅れたブライトに、ブライトの名を呼びながらブルーム、イーグレット、ウィンディが近づき、バリアを張って攻撃を防ぐと、ブライトも我に返り、四人は闇の球体を両手で押さえ受け止めるも、その威力を止めきれず徐々に四人が後方に押され始める。

 

「クゥゥゥ・・・」

 

 力を込めるものの、その威力は止めきれず、四人の体力をジワジワと奪っていく。

 

「これ以上、大切な仲間を失わさせない!!」

 

 苦戦する四人を見たムーンライトの指示の下、プリキュア達全員が巨大な闇の球体を抑え、動きを止め、ムーンライトはルミナスを見ると、

 

「ルミナス!今の内にこの球体を光の力で中和して!!」

 

「分かりました!ハァァァァ!!」

 

 ルミナスは光の力を解放すると、ルミナスの体から凄まじい光の輝きが溢れ出し、巨大な闇の球体を、光の力で中和し消滅させた。

 

「みんな、ありがとう!まさか、あのジョーカーと言う者に、これ程の力があるなんて・・・」

 

「用心しましょう!私もパルミエ王国で身を持って体験したから分かる!」

 

 ブライトが一同に感謝を述べ、パルミエ王国で戦った事があるローズが、一同にジョーカーには気をつけるように忠告を与えた。

 

 プリキュア一同はハァハァ荒い呼吸を繰り返しながらも、ジョーカーと三人の魔人を険しい視線で見つめ続ける。

 

(流石は伝説の戦士・・・と言った所でしょうか)

 

 今の攻撃を受け止め、消滅させた力を見て、ジョーカーの顔色が変わった。やはりプリキュア達は、一筋縄では行かない相手だと認識する。

 

「今日の所はこれで退いてやる・・・だが、覚えておきな!一度魔に魅入られた貴様は、必ず私達が始末してやるからねぇ!!」

 

 サディスの鋭い視線があゆみに向けられると、思わずあゆみは身が竦んだ。そんなあゆみを庇うように前に出るハッピー達五人、アンデとルセンの分まで、あゆみの事は守って見せると固く心に誓った・・・

 

「あなた達こそ!あなた達がアンデとルセンにした酷い仕打ち、この街を滅茶苦茶にしようとした行為、ハッピー達や、その友達にした行為を・・・私達は、決して許さない!!」

 

 ドリームが、一同の心を代弁するかのように、ジョーカー、三人の魔人に対し宣言をすると、ジョーカーはニヤリと笑みを浮かべ、

 

「ウフフフフ!肝に銘じておきましょう・・・では!!」

 

 トランプの舞がジョーカーを、サディス、ベガ、ディクレを包み込むと、四人はその場から姿を消し去った・・・

 

 プリキュア達は飛び去っていくトランプカードを険しい視線で見つめ続けた・・・

 

 

 長かった横浜の戦いは、こうして幕を下ろした・・・

 

 失った命、消えた仲間・・・

 

 一同の心には、深い虚無感が沸き上がっていた・・・

 

 大切な友達を失った、キャンディの心の傷も深かったが、みゆき達を始めとしたプリキュアの仲間達、妖精達が、その心の傷を少しずつ埋めていく事だろう・・・

 

 少女達は前へ進む・・・

 

 悲しんでばかりは居られないのだから・・・

 

 

 

2、報告

 

 変身を解いた少女達は、山下公園で今後の事を話し合っていた・・・

 

「なぎさとほのかが、どこかで無事だと分かった事だけは幸いだけど・・・二人の家族に、何と報告すれば良いのか・・・」

 

 困惑するゆりが頭を抱えると、ひかりも神妙な面持ちで、

 

「はい、なぎささんや、ほのかさんのご家族の方達に、連絡しない訳にも行きませんから・・・」

 

 困惑するゆりとひかり、確かに二人の家族に何の連絡も入れないのは、警察沙汰になる騒動に成りかねなかった。思案する少女達の中で、つぼみは何かを閃くと、

 

「ゆりさん、ひかりさん、家のお婆ちゃんに相談してみましょうか?」

 

「そうね・・・薫子さんなら、何か良いアイデアを出してくれるかも知れないわね!」

 

 ゆりは、つぼみの言葉に同意すると、携帯を手に取り薫子に電話を掛け助言を求めた。薫子も、事の次第を聞き大変驚き思案すると、

 

「じゃあ、こうしましょう・・・なぎさちゃんとほのかちゃんは、私の研究のお手伝いをしてくれると言う事で、地方の研究施設に行っている事にするわね。私からも二人のお家には電話を入れるから、なぎさちゃんとほのかちゃん、二人のお家の電話番号を教えて貰えるかしら?でも、二人から全く連絡が無いとなると問題だけれど・・・」

 

 ゆりは、薫子に言われた通り、なぎさとほのかの家の電話番号を教え、薫子にお願いし電話を切った。みんなに薫子の言葉を伝えると、一同が考え込む・・・

 

 そんな中、えりかが何かを閃くと、

 

「そうだ!誰かがさ、なぎささんとほのかさんの振りして、二人のお家に電話すれば良いんだよ!」

 

「エッ!?一体誰が?」

 

 えりかの閃きに、不安そうなつぼみは誰が電話を掛けるか聞くと、えりかは咲の顔をニンマリしながら見つめ、一瞬キョトンとした咲は、自分を指差し、

 

「エッ!?わ、私?無理、無理、なぎささんの真似何か無理だよぉぉ!!」

 

 変顔を浮かべた咲が、ブルブル首を振ってなぎさの真似なんて無理だと拒否をするも、ゆりとひかりも咲に頭を下げるや、

 

「咲・・・お願い!これもなぎさの為だと思って、協力してくれないかしら?」

 

「咲さん・・・私からもお願いします!!」

 

「ウッ・・・そこまで言われたら・・・分かりました!やってみます!!」

 

 ゆりとひかりからも懇願され、困惑しながらも咲は承諾した。頼まれたら嫌とは言えない咲の性格は、確かになぎさに似ていた。咲は、ひかりになぎさの真似をして話してみると、ひかりは何とかなると思いますと苦笑を浮かべる。

 

「ほのかさんはおっとりした所あるし、れいか!お願い!!」

 

 続いてえりかが指名したのはれいか、困惑した表情を浮かべたれいかは、小首を傾げながら、

 

「私ですか?あいにく、私はほのかさんの事を、まだ良く存じませんが・・・」

 

「大丈夫、相手はほのかさんのお婆ちゃんだからさぁ!」

 

「ハァ・・・一応やってみますが・・・」

 

 困惑しながらもれいかも承諾し、なぎさとほのかの家に電話を掛けようと、咲、れいか、ゆり、ひかりは、一同をその場に残して公衆電話へと移動を開始した。

 

 最初に掛けたのは咲、隣でゆりとひかりが、咲にアドバイスをしながらなぎさの家に電話を掛ける。

 

「あっ、もしもし、お母さん!なぎさですけど!!実は、知り合いの研究所の手伝いを頼まれちゃって、暫く手伝いたいんだけど、良いかな?」

 

 咲は、額に汗を浮かべながら、何とかなぎさの口まねをするも、電話口のなぎさの母理恵は、

 

「なぎさ!?何時もと声が違うけど、まさかあなた、振り込め詐欺じゃないでしょうね?」

 

 と咲を疑い、変顔を浮かべた咲が、しどろもどろの言い訳をしながら動揺するのを見て、益々疑惑を募らせる理恵、慌ててゆりとひかりも電話に出て、なぎさ本人で、少し風邪気味なので声が違うのではとフォローし、咲が再び電話に出ると、理恵は怒りながらも、なぎさの事を心配そうにしながらも承諾し、頻繁に連絡を入れるように伝え、咲は何とかこの場を乗り切った・・・

 

「咲、お疲れ様!」

 

「ああ、緊張したぁ・・・ソフトの試合の方が数倍楽だよ!」

 

 変顔を浮かべた咲が、ホッと吐息を漏らし、胸を撫で下ろした。

 

「なぎささんのお母さんに、悪い事をしましたね・・・」

 

「そうね・・・しょうがないとはいえ、良心が痛むわね・・・」

 

 ゆりとひかりは、顔を見合わせ思わず溜息を付いた・・・

 

 続いてれいかがほのかの家に電話を掛ける。電話に出たほのかの祖母さなえに、

 

「あっ、お婆様・・・ほのかですが」

 

 直ぐに側に居たひかりとゆりが顔色を変え、小声でれいかに、

 

「ほのかは、お婆ちゃまって呼んでるの!」

 

「あまり丁寧な言葉遣いだと、返って怪しまれてしまいます」

 

「ハァ・・・難しいものですねぇ・・・」

 

 れいかは小首を傾げながら、言われた通りにさなえに話し掛けるも、そんなやりとりが聞こえたのかどうか、電話口のさなえはフフフフと笑いだし、

 

「あなた、ほのかのお友達?何があったかは知りませんけど・・・ほのかの事でご迷惑を掛けたようですねぇ・・・ありがとう!こちらの事は心配しなくても大丈夫ですよ!!さっき、植物園の園長さんからも連絡を貰いましたから・・・皆さんにもよろしくね!!」

 

 まるで全てを悟っているかのように、返ってこちらの事を気に掛けてくれたさなえの言動に、れいかも、れいかから聞いたひかりとゆりも驚くのだった・・・

 

 なぎさと、ほのかの家族への連絡も付け、次に一同は、あゆみをどうするか話し合う・・・

 

 あの三人の魔人は、自分達同様、あゆみの事も狙っている事は確かであり、このままあゆみと別れる訳も行かず、どうするか話し合い始めた。

 

(みゆきちゃんを始め、此処に居る人達がみんな、プリキュアだった何て!凄い!!でも・・・)

 

 あゆみは、憧れていたプリキュア達一同と知り合えて嬉しかったのだが、アンデとルセンを失った悲しみもあり、素直に喜ぶ事も出来なかった・・・

 

 そんなあゆみを見たゆりは、

 

「あゆみちゃんって言ったわね?あの三人が、私達プリキュア同様、あなたを目の敵にしている以上、このままお別れする訳にも行かないわ・・・」

 

 ゆりの言葉を聞くや、真っ先にみゆきがあゆみに語り掛け、

 

「あゆみちゃん、私の連絡先教えるね!何時でも連絡して!!」

 

 真っ先にあゆみに連絡先を教えたのはみゆき!

 

 みゆきはポシェットからペンと紙を出し、自分の連絡先をあゆみに教え、あゆみもみゆきに連絡先を教えた。みゆきは何時でも七色ヶ丘に遊びに来てねと声を掛け、また横浜にもみんなで遊びに来るからと、みゆきがあゆみにニッコリ微笑み掛けると、あかねはあゆみの肩に手を回し、

 

「もう、ウチら友達やん!」

 

「そうそう、何時でも来てね!!」

 

「私達も、今度はゆっくり横浜観光がしたいですしね!またこちらに伺います!!」

 

 あかねが、なおが、れいかが、みゆき同様あゆみに微笑み掛ける。やよいは目をキラキラ輝かせると、

 

「太陽マンのロケがある時は、絶対教えてね!」

 

「太陽マン!?」

 

「どうでもいい!」

 

「すこぶるどうでもいい」

 

「エェェ!?何で私だけぇぇ」

 

 あゆみには、太陽マンの事は知らないらしく首を捻られ、あかねとなおには、醒めた目で見つめられ、やよいが涙目になりながら頬を膨らませると、一同から苦笑が巻き起こる。咲も気さくにあゆみに話し掛けると、

 

「あゆみちゃんは、横浜に住んでるんでしょう?」

 

「はい、この近くに・・・」

 

「だったら、私達は湘南に住んでるから、みんなよりは近いかもね・・・私の家の連絡先も教えておくよ!家は海原市夕凪町で、PANPAKAパンっていうパン屋やってるから、良かったら遊びにお出でよ!!美味しいケーキもあるんだぁ!!」

 

「エッ!?は、はい・・・」

 

 ニッコリ微笑みながら、あゆみを家に誘う咲、あゆみは虚を突かれ驚くも、思わず嬉しそうにはいと答える。咲は、みゆき達五人も見つめると、

 

「みゆきちゃん達も、良かったら遊びにお出でよ!何時でも歓迎するよ!!そういえば、響と奏、エレンやアコちゃんも家にはまだ来た事無かったよね・・・みんな纏めて歓迎するよ!!」

 

「そうね、他のみんなには教えたけど、大空の樹にも連れて行ってあげたいわね!」

 

「うん!!」

 

 咲、舞、満、薫もあゆみに微笑み掛け、あゆみの不安な胸中を和らげようと声を掛けた。

 

「デザートと言えば、奏の店のカップケーキも凄く美味しいんだから!みゆきちゃん達も、あゆみちゃんも、何時でも加音町に遊びにお出でよ!!サービスするから!!!」

 

「ちょっと響!勝手に家の店の商品、サービスしないでよ!!」

 

「エェ!?いいジャン!奏のケチ!!」

 

「ケチじゃないわよ!ちゃんとみんなが来たらサービスするわよ!!」

 

 舌を出し合い、言い合う響と奏を見て、みゆき達とあゆみはオロオロし、他のメンバーは苦笑を浮かべ、

 

「また始まったわね・・・響と奏の痴話喧嘩」

 

「本当、本当」

 

 美希はクスリと笑い、えりかがニンマリする。

 

「二人共・・・飽きないわね」

 

「でも、これが始まらないと響と奏らしくもないわね・・・みゆき達も、あゆみも、気にしなくて良いわよ!毎度お馴染みだから!!」

 

 アコと顔を見合わせたエレンが、苦笑を浮かべながらみゆき達とあゆみに声を掛け、一同を安堵させる。

 

「困った時は、私達プリキュア宛に手紙を書いてくれれば、シロップが配達してくれるから・・・ねぇ、シロップ?」

 

「ロプ!何時でもプリキュア達に届けるロプ!」

 

「みゆきちゃん達も、あゆみちゃんも、私達の街にあるナッツハウスにも是非遊びにいらっしゃい!!」

 

「今は営業してないけれど、今でも私達はあの場所で度々集合してるのよ!」

 

「連絡くれれば、シロップを迎えに行かせるから!」

 

「待つロプ!シロップは手紙の運び屋ロプ!!」

 

 のぞみ達一同もニッコリ微笑みあゆみに声を掛けた。

 

「私も、あゆみに携帯とアドレス教えて置くわね!私はアカルンの力で瞬間移動が出来るから、緊急時には直ぐに駆けつけられるわ!!」

 

 せつなは、あゆみに連絡先を手渡しニッコリ微笑む中、ラブは腕を組んで考え込むポーズを見せながら、

 

「ウ~ン・・・あゆみちゃんかぁ・・・家のお母さんと同じ名前だから、混乱するなぁ・・・アハハハ!!」

 

「そういえばそうね!しかも、みゆきちゃんに、れいかちゃんも居るし、後一人、ななちゃんでも居たら・・・トリニティが出来るわね」

 

「そういえばそうだねぇ・・・みゆきちゃん達とは、何かの因縁を感じるよねぇ」

 

 苦笑を浮かべる美希に、ラブも腕組みしながら頷く、美希はあゆみとみゆき達を見ると、

 

「ねぇ、あゆみちゃん!みゆきちゃん達も!今度、四つ葉町のクローバータウンストリートにも遊びにいらっしゃい!歓迎するから!!」

 

「うん!美味しいドーナツ屋さんも紹介してあげる!!」

 

「ちょっと変わってるけどね・・・」

 

 ラブ、美希、祈里、せつなも、あゆみを気に掛け気さくに声を掛け励ます。

 

「洋服の事なら、あたしの店フェアリードロップにお任せだよ!何ならあたしが、みゆき達や、あゆみの服もコーディネートしてあげるよ!!」

 

(フェアリードロップ!?何処かで聞いた事あるような?)

 

 えりかが自分の家のフェアリードロップの名を出すと、やよいは何処かで聞いた事がある気がして小首を傾げる。それもその筈で、やよいの母千春は、ファッション関係のスタイリストをしていて、えりかの母さくらには大変お世話になっていて、来海先生と呼ぶ程尊敬しているのだが、娘のえりかとやよいはその事はまだ知らない・・・

 

「身体を鍛えるなら、僕の家でいつでも教えてあげるからね!」

 

「それはどうでしょうか?」

 

 えりかは服の事を、いつきは武道の事でみゆき達やあゆみに何時でも来るように声を掛けると、つぼみは、身体を鍛えるのはどうかと思うと言い、微妙な表情を浮かべるのだった・・・

 

 次々にあゆみを心配し、声を掛けてくれる一同の心があゆみには嬉しかった。

 

「皆さん、ありがとう・・・私、私・・・転校したばかりでこの街で一人も友達が出来なくて・・・」

 

 嬉しさのあまり、つい一同に悩みを洩らすあゆみ、あゆみの言葉を聞いた転校した事があるメンバーが頷くと、

 

「分かります!私も不安でしょうがありませんでした!!」

 

「ええ、私も住んでいた街に戻って来たとは言え、転校する時は緊張したわ!でも、咲が同じクラスに居てくれたから・・・」

 

「私もラブのクラスに転校したから、気分的には楽だったわね」

 

「私は響と奏のクラスだったけど、緊張で・・・一睡も出来なかったわ」

 

 つぼみと舞が当時を思い出したのか、感触深げに目を閉じ当時を振り返ると、せつなとエレンも話しに加わり、当時を思い出し苦笑気味に一同に語った。くるみは少し自慢気にし、

 

「私は緊張しなかったわね!謎の美少女として・・・」

 

「はいはい、そんな事思うの、くるみぐらいだから」

 

「何よぉぉ!!」

 

 りんに邪険にされ、頬を膨らますくるみ、満と薫は顔を見合わせると、

 

「私達は、当時咲と舞を観察する目的で転校したから、あまり覚えて無いわね?」

 

「ええ、あまり自己紹介にも興味無かったわね」

 

 あゆみは、みゆきも転校したばかりだと言っていたのを思い出し、

 

「こんなに転校された方々が居る何て・・・みなさん、私と同じような気持ちだったんですねぇ・・・」

 

「最初はそうですよね・・・私も自分で考えていた自己紹介をしようとして、誰かさんのせいで滅茶苦茶になりましたから・・・」

 

「何それ、あたしの事!?」

 

「はい!えりかの第一印象・・・最悪でした!!でも、今では掛け替えのない親友です!!」

 

 えりかは不満気に頬を膨らますも、つぼみのフォローで忽ち上機嫌になっていった。

 

「あゆみさん・・・勇気を出して、自分から話し掛けて見て下さい!!」

 

「うん、つぼみさんの言う通りだよ、あゆみちゃん!私達とだってお友達になれたんだもの、直ぐにこの街でもお友達が出来るよ!!」

 

 みゆきもつぼみの言葉に同意した。あゆみの目から、ポロポロ嬉し涙が溢れてくる。嫌っていたこの街で、友達が沢山出来た事が嬉しかった。自分の事を気に掛けてくれて、アドバイスまでしてくれる沢山の友達が出来て嬉しかった。

 

(アンデ!ルセン!あなた達が心配しないように・・・私も頑張るからね!!)

 

 あゆみは、二人の形見とも呼べる球体に誓い、一同に満面の笑みを浮かべながら、「はい!」と答えた・・・

 

 

                 第四十九話:悪の同盟!

                      完

 


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