プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第四十七話:あゆみを救え!

1、プリキュア5

 

 坂上あゆみは魔に憑依され、憎しみの感情を増幅させた魔の戦士ヘイトと化し、横浜の地を憎しみに溢れさせようと行動を移した。分裂して横浜の海底に沈んでいたクライナーは、アンデの意思に従うように、横浜の空を暗闇に覆った・・・

 

 あゆみを元に戻そうと、あゆみの下へと向かおうとするハッピーを、三人の魔人が襲う。駆けつけたサニー、ピース、マーチ、ビューティも加わり、五人のプリキュアと、三人の魔人との戦いが始まった・・・

 

 

 

「フハハハハハ!どうした!?さっきの威勢は虚勢か?」

 

 ベガと戦うのはサニーとマーチ、瞳が金色に輝き、本気を出したベガの前に劣勢であった。

 

「まだまだこれからや!行くで、マーチ!!」

 

「了解!!タァァァァ!!」

 

 互いに重心を低くし、サニーは左手に、マーチは右手に、炎と風を纏った拳を繰り出すと、轟音を発しながら二人の合わさった拳がベガへと炸裂するも、ベガはその威力に後退りながらも、両手で二人の拳を止める。

 

「ほう、少しはやるようだ・・・だがなぁぁ!!」

 

 気合いを込めたベガの負の力を受け、サニーとマーチが吹き飛ばされた。

 

 

 

「キャァァァ!」

 

 ディクレの衝撃波を受け吹き飛ばされるビューティ、直ぐに受け身を取り体勢を整えると、

 

「まだです!この程度の攻撃で!!」

 

(でも、此処でビューティブリザードを使ってしまっては、今後の戦いに支障が・・・)

 

 ビューティは考えを纏め、ビューティの周囲に冷気が巻き起こると、ビューティはフゥと息を吹きかけ、冷気はディクレへと流れていった。

 

「何だ、これは!?」

 

 自分の周囲に発生した冷気に驚愕するディクレ、足下を見ると、ディクレの足下が凍り付いていった・・・

 

「成る程、我の動きを止める算段か・・・良い考えだが、まだまだ力が足りん!!ヌゥゥン!!!」

 

 気合いを込めたディクレの前に、氷は砕け散り、ビューティの目論見は砕けた。

 

 

 

「ハッピー、大丈夫?」

 

「うん、みんなが来てくれたお陰で、大分体力も回復出来たよ!」

 

 サディスの前で身構えるハッピーとピース、サディスは愉快そうに笑い、

 

「アハハハハ!キュアハッピーとか言ったね!?あんた、私達と戦ってていいのかい?」

 

「何!?どう言う事?」

 

「一つ教えて上げようか?私が魔に変えたあの娘・・・後30分足らずで、二度と元の姿には戻れなくなるのさ!!」

 

 サディスの告白を受け、驚愕するハッピーとピース、サディスの背後にあるマリンタワーを見つめるも、黒い塊は粒子となって横浜の街を覆い尽くし、マリンタワーを肉眼で見る事は出来なかった・・・

 

「あのクライナーに変えた妖精と同じように、もう二度と人の姿に戻る事は出来ない!・・・あの娘も、後30分足らずで、正式にあたしら魔族の仲間入りって訳さ!!」

 

「そんなぁ・・・あゆみちゃん!!」

 

 サディスの言葉に激しく動揺するハッピー、あゆみの下に行かなくちゃ、ただそれだけが頭の中に浮かんでくる。それには目の前に立ち塞がるサディスを突破する事が急務であった。駆け出すハッピーに、遅れたピースが後を追い、二人でサディスにパンチを放つも、サディスは宙返りしながら、逆に二人を蹴り飛ばす。何とか体勢を整えたハッピーは、ベガ、ディクレと戦うサニー、マーチ、ビューティを見ると、

 

「みんなぁ、力を貸してぇ!早くあゆみちゃんの下に辿り着いて元に戻さないと、あゆみちゃんは、あゆみちゃんは、二度と元に戻れなくなっちゃう・・・」

 

 動揺するハッピーの下へ、ベガ、ディクレから距離を取ると、仲間達が集結する・・・

 

「時間が無い・・・ちゅうこっちゃな!」

 

「だったら、真っ向勝負!一点突破しか無いよ!!」

 

「危険ではありますが、実力は向こうの方が上!その方法が、この場を突破できる確率が一番高そうですね」

 

「そうと決れば・・・」

 

 サニー、マーチ、ビューティ、ピースがハッピーを見て頷くと、頷き返すハッピー、五人は三人の魔人を突破しようと駆け出すも、

 

「バァカ!それはこちらの思う壺・・・ディクレ!ベガ!」

 

 サディスの合図に同意し、三人が三方に散ると、三人から発せられた負のエネルギーが、ピラミッドのように闇のトライアングルと化し、ハッピー達を中に捕らえると、急速に収縮していく。闇のトライアングルの中に閉じ込められ、思うように動けず、トライアングルはどんどん縮まり、五人を圧迫していった。闇のトライアングルの中は息苦しく、五人の表情が見る見る苦しげになっていく。

 

「「「「「キャァァァァァ!!」」」」」

 

 段々圧迫されていく恐怖が、五人の心に浮かんでくる。

 

「ハッピー、みんなぁぁ・・・」

 

「キュ~~ン」

 

 何とか五人を助けたい・・・

 

 だが、キャンディとルセンには為す術が無かった・・・

 

「そのまま闇のトライアングルに飲み込まれ、熔けて消えちまいな!!」

 

 口元に笑みを浮かべながら、五人を見つめるサディス、ベガ、ディクレ、闇のトライアングルの中、ハッピー達の意識が遠ざかっていく・・・

 

「アァァァァァ!」

 

 このままあゆみも救えず、この場でやられるわけには行かない・・・

 

 何とか堪えようと力を合わせる五人だったが、収縮を抑える事は出来なかった・・・

 

 勝利を確信したサディス、ベガ、ディクレが、ハッピー達に嘲笑を浴びせたその時、上空から急降下したピンクの流星が、闇のトライアングルを突き抜け粉砕する。解放されたハッピー達は、跪きながら荒い呼吸を繰り返し、呆気に取られたサディスの周囲に、数本の水の矢が上空から降り注ぎ、困惑するベガに炎のボールが炸裂し、ベガが右手で払いのける。

 

「何だ、何事だ!?」

 

 一体何が起こったのか?動揺するディクレの右手を、光の鎖が捕らえ、体勢を崩したディクレの背に、何者かの肘打ちが炸裂し、ディクレを吹き飛ばす。

 

「調子に・・・乗るなぁぁ!!」

 

 直ぐに体勢を立て直し、光の鎖を外したディクレが、自分を攻撃した方角に衝撃波を放つも、緑の円状のシールドが、その攻撃を防ぎきる。

 

 ヨロヨロ立ち上がったハッピー達五人を庇うように、その目の前には、ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクア、ローズが、サディス、ベガ、ディクレに鋭い視線を向け威嚇する。その頼れる姿を見て、ハッピー達五人の目が輝く、

 

「皆さん・・・どうして此処に!?」

 

「確か、他のみんなと一緒に横浜の街に向かった筈じゃ?」

 

 この場に助けに現われてくれた六人を見て、ビューティとマーチが問うと、ルージュは二人に向き直り、

 

「いやぁ、ドリームがあんた達の事を気に掛けていたから・・・こうして様子を見に来たんだけど」

 

「どうやら正解だったようね!」

 

 アクアも後ろを振り返り、笑みを浮かべる。ハッピーは目に浮かぶ涙を拭いながら、

 

「皆さん、ありがとう・・・皆さんの力を、私達に貸して下さい!私、あの人達に悪い人に変えられた友達を救いたいんです!!でも時間が無くて、それにこの暗闇の中じゃ、あゆみちゃんが居るマリンタワーに向かうのも・・・」

 

 もう、マリンタワーがある方角も、今の自分には分からない・・・

 

 ドリームは、俯くハッピーに近づくと、両肩に手を乗せ優しく微笑み掛けた。ドリームの両肩に乗っかったココとナッツが、ミラクルガイドライトを使うようにキャンディに伝えると、キャンディはミラクルガイドライトを取りだし、スイッチを入れた。虹色の輝きが闇の中に浮かび上がる。ドリームは大きく息を吸い込むと、

 

「プリキュアのみんなぁ!ハッピー達に力を貸してぇぇ!!ハッピー達が、友達の居るマリンタワーまで向かう道のりを・・・照らしてあげてぇぇぇ!!!」

 

 ドリームの声が、暗闇の中に響き渡った時、まるで了解したとばかりに、白い稲妻と黒い稲妻が辺りを照らし、虹の光が輝いた。ドリームはニッコリ微笑むと、

 

「大丈夫だよ!あなた達には、私達プリキュアが付いて居るから!!必ずあなた達を、目的地まで送り届けてくれる・・・此処は、私達に任せて!!行くよ、みんな!!!」

 

「「「「「YES!!」」」」」

 

 プリキュア5とローズが二組ずつ別れ、サディス、ベガ、ディクレに攻撃を開始する。ハッピー達五人は、ドリーム達にペコリと頭を下げると、虹色の輝き目指し駈け始めた。

 

 

 

「サディス、こいつらがお前の言っていた、あいつらの仲間か!?」

 

「いや、あたしもこいつらを見るのは初めてだ!」

 

「一体、この時代のプリキュアは何人居ると言うのだ?」

 

 加勢に来たプリキュア5、ローズの六人と戦いながらも戸惑うベガ、サディス、ディクレ、ドリームとルージュがサディスと、アクアとミントがディクレと、レモネードとローズがベガと対峙する。三人は、ドリーム達がハッピー達よりも戦い慣れている事に驚くも、

 

「だが、我らを相手にして、その程度で倒せると思うなよ!サディス、ベガ、此奴らを蹴散らすぞ!!」

 

「「ああ」」

 

 三人の瞳が金色に輝き、辺りに負の力が立ち籠める。ココ、ナッツ、シロップは、三人から発せられる邪悪な力に戦(おのの)き、

 

「みんなぁ、油断するなココ!」

 

「邪悪な力が増してるナツ!」

 

 二人の忠告に頷いた六人だったが、彼女達にも目の前の三人から発せられるプレッシャーが、一段と強さが増した事は感じていた。

 

「この街をこれ以上・・・好きにはさせない!!」

 

 ドリームとルージュが、サディス目掛けジャンプし、空中からキックを放とうとすると、サディスは手に負の力を集め、二人に強烈な衝撃波を放った。

 

 このままでは直撃する!!

 

 ドリームとルージュは、瞬時に互いの足の裏と足の裏を蹴り合い、その反動を利用し攻撃を回避し地上に着地する。気合いを込めたルージュの周りに、炎のボールが五個浮かび上がり、ルージュはボールの群れにジャンプすると、

 

「プリキュア!ファイヤーストライク!!」

 

 連続で五発のファイヤーストライクをサディス目掛けて蹴り飛ばすルージュ、炎のボールが合わさり、巨大な炎のボールとなって、サディス目掛け突き進む、

 

「ウゥゥゥゥオォォォォォォォ!!」

 

 炎の巨大なボールを、雄叫び上げたサディスが両手で押さえ、その勢いを止めたその時、

 

「プリキュア!シュ-ティングスター!!」

 

 ピンクの流星が巨大な炎のボールに突撃し、ドリームの周りを炎が囲み、そのまま突き抜けると、抑えていたサディスに命中させ吹き飛ばす。

 

「ギャァァァ・・・お、おのれぇぇ、プリキュア!!」

 

 直ぐに立ち上がったサディスは、二人を憎らしげに鋭い眼光を向けるのだった・・・

 

 

 

「「キャァァァ!!」」

 

 ディクレの強烈なパンチを受け吹き飛ばされたアクアとミントだったが、互いに手を握り合いながらクルクル回転して勢いを止め、地上に着地する。

 

「強い・・・でも、あなた達には絶対に負けないわ!プリキュア!サファイアアロー!!」

 

 目を閉じたアクアが、カッと目を見開き、水の矢であるサファイアアローの乱れ撃ちがディクレ目掛け飛んでいく。ディクレは腰を落とし、気合いを込めた衝撃波でサファイアアローを粉砕し、辺りに水飛沫が巻き上がる。

 

「その程度で、この我を・・・何!?」

 

 口元に笑みを浮かべたディクレだったが、アクア、ミントは、ディクレの油断を見逃さず、宙に飛び足下に水気を含んだダブルキックをディクレに浴びせた。

 

「私達を見くびらないで!」

 

(今の感覚・・・今後の戦いで活かせそうな気がする)

 

 ミントがディクレに啖呵を切り、アクアは、今足下に蓄えた水を纏いながらのキックを放った時、この技に磨きを掛ければ、今後の戦いで役立つのではと考えるのだった。

 

「グゥゥ・・・調子に乗りおって!」

 

 ディクレが、アクア、ミントを睨み付けた・・・

 

 

 

 レモネードのプリズムチェーンがベガを捕らえると、ローズはベガに突進し、近距離での格闘戦を仕掛けた。ベガもプリズムチェーンを振り解き、両者が正面から激突する。

 

「ハァァァァァァ!!」

 

「ヌゥオオオオオオ!!」

 

 拳と拳が、蹴りと蹴りが交差する。一層雄叫びを上げたベガが

 

「食らえ!ダークネス・・・ボンバー!!」

 

 自らの身体に凄まじい負のエネルギーを纏わせると、ベガがローズ目掛けショルダータックルを仕掛けた。両手で受け止めたローズだったが、その威力を止めきれず吹き飛ばされる。

 

「キャァァァァ!」

 

「ローズ!」

 

 悲鳴を上げながら吹き飛ばされたローズの左手を、プリズムチェーンが巻き付き、ローズの勢いを弱めると、ローズはそのまま受け身を取り身構える。

 

「ローズ、大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫!ありがとうレモネード!!今度はこっちの番よ・・・邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザード!!」

 

 ローズの青いバラ吹雪がベガ目掛け飛んでいく。

 

「何だ!?こんなものでぇぇ!!」

 

 そのまま受け止めようと身構えるベガだったが、

 

「馬鹿者!そのまままともに受ければ、貴様といえどただでは済まぬぞ!!躱せ!ベガ!!!」

 

 ディクレの叱責がベガに飛ぶ、ベガは忌々しげにしながらもディクレに言われた通り、ミルキーローズブリザードを回避した。

 

 想像以上にプリキュア5に手こずるサディス、ベガ、ディクレだったが、その時、港の見える丘公園の上空に亀裂が走った・・・

 

 

 闇の中の亀裂から、一瞬巨大な目がギロリと動いた気が、プリキュア5とローズには感じられた。亀裂の中から、まるで白い軍服のような衣装を着た一人の男が舞い降りる。サディス達三人と同じように、褐色の肌が白い軍服を一段と引き立てるその男は、右目が見えないのか、黒いアイパッチをしていた。耳まで裂けた口の下から生えた二本の牙が見え、プリキュア達はその不気味さに思わず唾を飲み込んだ。

 

 男は一旦帽子を脱ぎ、緑色の短髪を露わにさせるも、埃を払うような仕草をすると、直ぐに帽子を被り直し、戦い合っている一同を観察するように見比べた。

 

「オオ!貴公は・・・魔界が誇る十二の魔神の一人、バルガン殿!!」

 

(魔界!?)

 

 ディクレが現われた人物を見て表情を緩めるも、アクアはベガが発した魔界と言う言葉に引っ掛かっていた。

 

「ディクレよ・・・これはどういう事か?メルヘンランドとやらにお前達が封印されて居た事は聞いた。だが、勝手な振る舞いをして貰っては困るぞ?王の方針により、我らは人間共の住む世界には・・・干渉する事は禁じられているのだぞ!?お前にも、その事は伝えてあった筈だが?」

 

 まるで詰問するようにディクレに問いただすバルガンと呼ばれた男、ディクレ、サディス、ベガは、恐れおののくようにその場に跪くや、

 

「も、申し訳ございません・・・こ奴らはプリキュアと言って、我ら三人を嘗て封印した二人組のプリキュア、その者達を受け継いだ現代のプリキュア!我らはその力を確かめたく・・・」

 

 ディクレの額から冷や汗が溢れ出す・・・

 

 サディス、ベガも同様だった・・・

 

 あの三人組を、此処まで動揺させる魔界の魔神の一人バルガン・・・

 

 ドリーム達は、この者から発せられるプレッシャーを受け、身動き出来ずに居た・・・

 

 

 

2、虹が導く道

 

 一方、プリキュア5とローズに救われたハッピー達五人は・・・

 

「この方角にマリンタワーがあるんだね!」

 

「見て、あそこで戦ってるの、ブラックとホワイト、ルミナスだよ!」

 

 キャンディをハッピーが、ルセンをビューティが抱きながら、マリンタワー目掛け走り続ける五人だったが、あちらこちらで戦闘が行われている為、ミラクルガイドライトの虹の光の導きをあてにするだけでは埒があかなかった。ピースはブラック、ホワイト、ルミナスを見付け指を指すと、ブラック達も気付き手を挙げるや、

 

「あの子達が来たね・・・ホワイト、行くよ!」

 

「ええ、ルミナスは念の為、ハッピー達にこの闇の物体が攻撃を加えないように援護して上げて!」

 

「分かりました!!」

 

 ホワイトの言葉通りハッピー達の側で辺りを警戒し始めるルミナス、ブラックは右手を、ホワイトは左手を高々と掲げると、

 

「ブラック、サンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

「プリキュアの、美しき魂が!」

 

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア!マーブルスクリュー!」」

 

 ブラックが右手に、ホワイトが左手に力を込めて一旦引いた手を前に突き出すと、

 

「「マックス~~!!」」

 

 ブラックとホワイトは、駆けつけて来た五人を見ると、マーブルスクリューを闇に蠢くクライナーの群れの中に向けて撃ち放った。マーブルスクリューの虹の輝きが、闇を蹴散らせ辺りを照らし、ハッピー達の前方の視界を切り開く、

 

「さあ、今の内に行って!」

 

「私達も後から応援に向かうわ!!」

 

 どうやらハッピー達に攻撃してくる気配は無さそうで、ルミナスも歩みを止め、

 

「みなさん、気をつけて下さいね!」

 

 ブラックが親指立てながら五人に微笑み、ホワイトとルミナスも笑顔で五人に頷き掛ける。

 

「ありがとうございます!!」

 

 ビューティが声を掛け三人に頭を下げると、ハッピー、サニー、ピース、マーチがそれに習って頭を下げた。五人はブラック、ホワイト、ルミナスに手を振りながら再び走り始める。それを見届けると、ブラックが大きく息を吸い込み、

 

「ハッピー達が行ったよ!ブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディ、後をヨロシク!!」

 

 闇の中にブラックの声が響き渡ると、精霊の光が輝き四人のプリキュアに集まっていった・・・

 

 

 

「了解!みんな、精霊の力で、ハッピー達を導いて上げよう!!」

 

「分かったわ!」

 

「「了解よ!!」」

 

 ブルームの合図に頷き同意すると、

 

「「精霊の光よ!命の輝きよ!」」

 

 イーグレットとウィンディが叫べば、

 

「「希望へ導け!二つの心!」」

 

 ブルームとブライトが叫ぶ、

 

「「プリキュア!スパイラル・ハート・・・」」

 

「「プリキュア!スパイラル・スター・・・」」

 

「「「「スプラ~~ッシュ!!!!」」」」

 

 四人から放たれた必殺技が、闇の中に螺旋の渦を浮かべながら突き進んでいく。現われたハッピー達は、労せずしてまた一歩マリンタワーへの道を切り開いて貰った。

 

「先輩方、おおきに!!」

 

 サニーが、右手を額に近づけながらブルーム達に敬礼すると、他の四人も同じような仕草をしながらその場を走り抜けて行く。ブルームは笑みを浮かべるも、大きく息を吸い込み、

 

「次はあなたたちの番だよ!メロディ、リズム、ビート、ミューズ!!」

 

 ブルームの声が闇の中で響き渡った・・・

 

 

 

「了解!私達のハーモニーパワーで、ハッピー達を援護しましょう!!」

 

「「「OK」」」

 

 メロディの合図に力強く頷きながら返事を返すリズム、ビート、ミューズであったが、メロディは頭を右手で掻きながら、

 

「所で・・・マリンタワーって、どっちだっけ?」

 

「エェェ!?もう、メロディたら・・・ビート、教えて上げて!!」

 

「エェェ!?わ、私?エッと・・・こっちね!!」

 

 マリンタワーがどっちの方角か三人も良く分からないようで、ビートが山勘である方角を指さすと、ミューズは醒めた視線をメロディ、リズム、ビートに向け、

 

「そっちは中華街でしょう!こっちよ!!」

 

「ピギャァ・・・」

 

 ミューズがマリンタワーの正確な位置を教えると、メロディ、リズム、ビートの三人が、右手で頭を掻きながら苦笑を浮かべ、ピーちゃんは呆れたように溜息を付く、

 

「では、気を取り直して・・・って、もうハッピー達来ちゃったよぉぉ!!」

 

 闇の中、視界に見えるぐらいまでハッピー達が近づいて居るのに気付き、メロディが大慌てをしながら、他の三人にアイコンタクトを浮かべると、頷き返す三人、

 

 メロディ、リズム、ビート、ミューズの四人が手を繋ぎ合い、

 

「「「「プリキュア!パッショナート・・・ハーモニー!!!」」」」

 

 四人から発せられたハーモニーパワーが闇の中で輝き、ハッピー達に道を示した。

 

「メロディ、リズム、ビート、ミューズ、先輩達、ありがとう!助かりました!!」

 

 マーチが右手を上げ四人に合図を送ると、他の四人も同じような仕草をしてその場を駆け抜けていく。

 

「いやぁ・・・間に合って良かったよね!」

 

「あなた達・・・今戦ってる場所ぐらいは覚えておいてよね!」

 

「「「面目ない・・・」」」

 

 ミューズに注意され、メロディ、リズム、ビートが俯きながら頭を下げるも、メロディは思い出したように、大きく息を吸うと、

 

「今、ハッピー達がそちらに向かいました!ムーンライト、ブロッサム、マリン、サンシャイン、後をお願いしまぁぁす!!」

 

 

 

「了解!了解!そんじゃあ、あたしらも先輩の強さを見せつけてやりますか!!」

 

「マリン・・・上から目線ですっ」

 

「何よぉぉ!!」

 

 パートナー妖精コフレに変顔で見つめられ、マリンが口を尖らせながら文句を言うも、ムーンライトは呆れたような視線をマリンに向け、

 

「マリン・・・遊んでる暇は無いわよ!」

 

「そうだよ、マリン!」

 

「本当にマリンはしょうがないですねぇぇ・・・」

 

「何よ、ブロッサムだって上から目線じゃん!」

 

 変顔を浮かべながら睨み合う二人を無視するように、ムーンライトと、サンシャインがタクトとタンバリンを取り出すと、

 

「花よ、輝け!プリキュア!シルバーフォルテウェ~~イブ!!」

 

「花よ、舞い踊れ!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」

 

 ムーンライト、サンシャインのフォルテウェーブ、フォルテバーストが闇に蠢く物体に飛んでいく、

 

「「エェェ!?」」

 

 出遅れた二人は目を大きく見開いて驚き、慌ててタクトを取りだすと、

 

「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェ~イブ!!」

 

「花よ、煌け!プリキュア!ブルーフォルテウェ~イブ!!」

 

 ブロッサム、マリンのフォルテウェーブが、後を追うように輝きを放った。

 

「ワァ・・・凄ぉぉい!あのぉ、皆さん、ありがとうございました!!」

 

 ピースがペコペコ頭を下げながら、ブロッサム達四人の横を通過していくと、他の四人も同じようにペコペコ頭を下げながら通り過ぎて行った。

 

「ジャンケンでもされたら、どうしようかと思ったよ・・・」

 

「マリン・・・また頭をグリグリされたいのかしら?」

 

 ムーンライトは、拳でグリグリするポーズをマリンに見せると、

 

「エェェ!?もう、勘弁してぇぇ!本当に背が縮んじゃうよぉぉ!!」

 

 マリンが変顔をしながら頭を庇い、笑い合う一同、直ぐに表情を引き締めると、ブロッサムは大きく息を吸い込み、

 

「ピーチ、ベリー、パイン、パッション、後はお任せしましたぁぁ!!」

 

 ブロッサムが顔を真っ赤にしながら精一杯の大声を張り上げ、マリンタワーの側に居るピーチ達に声を掛けた・・・

 

 

 

 ハッピー達の前方、光輝く先にマリンタワーが確実に視界に見えてくる。あと少し・・・

 

 そして、一同の視界にピーチ、ベリー、パイン、パッションの姿が目に飛び込んでくると、五人は安堵の表情を浮かべた。だが・・・

 

「ピーチ、ハッピー達が到着したわ!」

 

「うん、彼女達をこの先に行かせるには、あいつを何とかしなきゃね・・・」

 

 ピーチ、ベリー、パイン、パッションの視線の先には、一人の男が立ち塞がっていた。嘗てパルミエ王国を強襲したジョーカーである。ジョーカーは意味深な笑みを浮かべながら、マリンタワーの入り口に佇んで居た。

 

 到着したハッピー達は、ジョーカーがこの場所に居る事に驚きを隠せなかった。

 

「あれはジョーカー!?何で此処に?」

 

「ええ、私達も驚いたわ!何を企んで居るのか・・・」

 

 ハッピーの言葉に、パッションも同意する。このままジョーカーと戦って居ては時間が間に合わなくなる。ハッピーに焦りの色が浮かんでくる。ピーチはチラっと動揺するハッピーを見ると、

 

「パッション、こうなったら、ハッピー達をマリンタワーの上まで送って上げて!私達があいつを引きつけてる内に・・・」

 

「確かに、時間が無いならその方が良いわね・・・」

 

「うん、ハッピー!ルセンちゃん!お友達を取り戻せるって、私、信じてる!!」

 

 ピーチが、ベリーが、パインが、パッションにハッピー達をマリンタワーの上に送るように進言すると、パッションが無言で頷く、

 

「先輩方皆さんのお陰で、此処まで来る事が出来ました!本当にありがとうございます!!」

 

「ううん、最後はあなたが決めて!ハッピー!!幸せ・・・ゲットだよ!!!」

 

「ハ・・・ハイ!!」

 

 ピーチが親指を立てながら、ニッコリハッピーに微笑み、ハッピーが涙を拭いながら微笑み返した。

 

「ベリー、パイン、行くよぉぉぉ!!」

 

 ピーチの合図と共にジョーカーに突っ込み攻撃を仕掛ける三人、ジョーカーは三人の攻撃を捌きながら、隙を見て三人に反撃を繰り出す。

 

「みんな、行くわよ!マリンタワーの頂上へ!!」

 

 パッションを中心に赤く輝くと、一同は瞬間移動で消え失せた・・・

 

(ほう、何か企んでいるようですねぇ・・・こちらもそれなりの戦力は出しておいた方が良さそうですねぇ!)

 

 ジョーカーは、トランプの舞と共に姿を消した・・・

 

「消えた!?」

 

「まさか、パッション達の下に向かったんじゃ?」

 

「うん・・・」

 

 ジョーカーが消えた事で、ピーチ、ベリー、パインは改めてジョーカーの不気味さを思い知らされた・・・

 

 

3、あゆみの本心

 

 あゆみが、サディスによってその姿を変えられ、誕生した魔人ヘイト!ヘイトは、再び黒いクライナーへと変化したアンデに命じ、この世界に憎しみを広げようとマリンタワーの上で指示を出し続けていたが、虹の光が輝く度に、負の力が失われていくのを感じていた。

 

「何だ、あの輝きは・・・不愉快な光め!!」

 

「居た!あゆみちゃん!!」

 

 ヘイトの背後が赤く輝くと、パッションと共に姿を現わすハッピー達五人にキャンディとルセン、ハッピーはヘイトに声を掛けるも、振り返ったヘイトは不愉快そうに眉根を曇らせるのだった。

 

「じゃあ、私は戻るわね!ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、それにキャンディもルセンも、あなた達なら必ず出来るわ!!直ぐに応援に来るから!!!」

 

 再び赤く輝き、パッションはピーチ達の下へと戻っていった。

 

 

 

 五人のプリキュアが、ヘイトを険しい表情で見つめると、ヘイトも忌々しげに睨み返す。

 

「また貴様か・・・目障りな奴め!」

 

「あゆみちゃん・・・迎えに来たよ!みんなもね、あゆみちゃんが私の友達だって行ったら、それなら自分達にとっても友達だからって、一緒に迎えに来てくれたんだよ!!」

 

「友達!?黙れ、私はこの世界に憎しみを広げる者だぁぁ!!」

 

 ヘイトは、ハッピーの言葉を否定するかのように両手を高々と上げ、辺りに漂うクライナー達からヘイトの周囲に負の力が集まり始める。ルセンは慌ててビューティの手から飛び出すと、真っ黒く変わったアンデに必死に何かを訴え掛けるものの、その言葉も届かない。アンデはヘイトと同じように負の力を体内に集め始めるも、

 

「ギュゥゥゥゥン!!」

 

 まるでその衝撃に耐えられないかのように、アンデがのたうち回った。ルセンはアンデを庇うようにするも、ルセンの身体も黒く染まり始める。キャンディが怯えながら二人の名を叫び、ハッピーの目からも涙が溢れてくる。

 

「もう、もう止めてぇぇぇ!!」

 

 ハッピーは涙混じりに叫ぶと、ヘイトに飛びつき両者が倒れ込む。駆け寄ろうとするサニー、ピース、マーチを制したビューティは、

 

「此処は・・・ハッピーに任せましょう!私達は、この場に集まってくるこの憎しみの集合体を排除しましょう!!」

 

 ビューティの提案を受け入れ、四人は四方に散り、

 

「先輩達の攻撃が通用してたっちゅう事は、今回は吸収されへんなぁ・・・ヨッシャ~!それなら、特大のおみまいしたるでぇ!!プリキュア!サニー・・・ファイヤー!!」

 

 サニーの身体から炎が沸き上がると、炎はボールの形になり、サニーがそれを思いっきり叩き付け、周囲に炎が巻き起こり、辺りを赤く染めた。

 

 サニーファイヤーが、ピースサンダーが、マーチシュートが、そして、ビューティブリザードが、憎しみの集合体を排除していった・・・

 

 四人が、マリンタワーに憎しみの集合体が近づくのを許さず、奮闘するのを見たハッピーは、再びあゆみを元に戻すべく説得を続ける。

 

「あゆみちゃん・・・あゆみちゃんは、あの時身を挺してアンデの事を庇ってたじゃない!キューちゃんは私の大切なお友達だって・・・そのお友達があんなに苦しんでるのに、あゆみちゃんは何とも思わないの?あゆみちゃん!!」

 

「私は・・・ヘイト!あゆみじゃ・・・」

 

「違う!あゆみちゃんだよ!!あゆみちゃん、もう一度アンデを良く見て!この街を良く見て!これが本当に・・・あなたが望んでいる事なの?あゆみちゃん!!」

 

 ハッピーの言葉が、ヘイトの心の奥底に眠る、あゆみの良心を刺激する。ヘイトはハッピーの言葉の通り、苦しむアンデを、そのアンデを助けようとして同じように苦しむルセンを、闇に覆われた横浜の街を見つめた。

 

 これが私の望んだ事・・・

 

 これが私の本当に望んだ事・・・

 

 違う!!!私は・・・

 

 私は・・・

 

「あゆみちゃん!!!」

 

 ハッピーの瞳から流れた涙が、ヘイトの頬にあたる。ヘイトの心の中に、アンデと出会った日々が浮かんでくる。

 

 寂しい心を埋めたくれたアンデとの日々が・・・

 

 そして、出会って間もない自分の事を、必死になってくれるみゆきの事が・・・

 

 ヘイトの目からも涙が零れてくる。

 

「あゆみちゃん・・・答えて!これは・・・本当にあなたが望んでいる事なの?」

 

「私は・・・私は・・・本当は・・・寂しかっただけなのぉぉぉ!!私、こんな酷い事を・・・したく・・・無い!!キューちゃん・・・ゴメンね・・・ゴメンねぇぇ!!」

 

 ヘイトの瞳から止め処なく涙が溢れてくる。ハッピーの心からの叫びが、ヘイトの心に増幅された憎しみの心を浄化していった・・・

 

 

 

4、レインボーヒーリング

 

 サディス、ベガ、ディクレと対峙していたプリキュア5とローズだったが、突然現われたバルガンと名乗る者の前で、三人は跪き震えているようにドリームには見えるのだった。

 

「ディクレよ、カイン殿とアベル殿はお怒りだ!!封印などされ、魔界の名を汚したお前達には死を与えよと申された・・・お前達も噂は聞いた事があるだろう?カイン殿とアベル殿は、元々我らの魔界を支配し方々、現王にその支配を委ねたとはいえ、その影響力は計り知れない!!我ら十二の魔人と呼ばれし者の中でも、このお二方とアモン殿、シーレイン殿は別格、四神と呼ばれている事は知っているな?そのお二方が下した決断だ!!」

 

 バルガンの通告に、ディクレ、サディス、ベガの表情が凍り付いた・・・

 

「お、お待ちを!!我々は・・・」

 

 バルガンは、慌てて言い逃れをするディクレを制すると、

 

「まあ待て、ディクレ!お前とは知古の間柄、私も必死に嘆願したところ、シーレイン殿だけは私の言葉を聞き入れて下さった。シーレイン殿は、魔界の中でも慈悲深きお方、お前達を処刑するまでもないとお二方に進言して下さり、お前達の命だけは免除!魔界からの追放と決った!!感謝するのだな!!!」

 

「「「ハッ・・・ハハァ!!」」」

 

 バルガンに深々と頭を下げた三人だったが、バルガンの言葉が心の中で繰り返される。魔界からの追放・・・

 

 故郷を追われた三人の心に、プリキュアへの憎しみが沸々沸き上がってくる。呆然とするドリーム達に顔を向けた三人は、

 

「プリキュアァァァァ!貴様らの所為で我らは・・・」

 

「この手で八つ裂きにしてやる!!」

 

「絶対に許さないよぉぉぉ!!」

 

 ゆっくり立ち上がり、ドリーム達を睨み付けるディクレ、ベガ、サディス、バルガンは口元に不気味な笑みを浮かべると、三人を制止し、

 

「待て!私の目の前でこの世界の人間との衝突をさせる訳にはいかん・・・一先ずこの場を去れ!!私が去った後は、貴様らの好きにするがいいさ・・・」

 

 サディス、ベガ、ディクレは、口惜しそうにしながらもバルガンの言葉を受け入れ、上空に舞うとその姿を消した・・・

 

「待ちなさい!!」

 

「プリキュアと言ったな!?私はお前達と此処で争う気は無い!だが、お前達が我ら魔界の者に手を出した時は・・・我ら魔界と全面対決になる事は肝に銘じておくのだな!!」

 

 三人が飛び去るのを止めようとしたローズだったが、バルガンが話し掛けてきた事で思わず沈黙する。ドリーム達は、険しい顔を浮かびながらバルガンの言葉を聞き終わると、

 

「私達だって、あなた達と戦おうとは思わない!だけど、あなた達が私達の世界を、妖精達の世界を、滅茶苦茶にしようとする時は・・・私達プリキュアは、あなた達を阻止してみせる!!」

 

 ドリームが強い意志でバルガンに宣言すると、バルガンは口元に笑みを浮かべ、

 

「フフフフ、勇ましいな・・・その言葉、覚えておこう!!」

 

 ゆっくり上空に浮き上がり、次元の裂け目に吸い込まれるように消え去ったバルガン、ドリームは一同を促し、ハッピー達の居るマリンタワーへと向かい駈け始めた・・・

 

 

 

「あゆみちゃん・・・良かった!今、今私達が元のあゆみちゃんに戻して上げるから!必ず元に戻して上げるから!!」

 

 ハッピーが手を差し伸べると、ヘイトはハッピーの手を掴みゆっくり立ち上がった。ヘイトは、苦しむアンデとルセンをその手に抱き上げ、涙を流しながらゴメンねと何度も謝り続けていた。

 

 だが、どうすれば元のあゆみに戻せるのか?しかし、ハッピーに悩んでいる時間は無かった・・・

 

「みんなぁ、力を貸してぇぇ!!あゆみちゃんを元に戻せる力を・・・みんなの力を貸してぇぇ!!」

 

 ハッピーの叫び声に一斉に振り返るサニー、ピース、マーチ、ビューティは、ハッピーの側でアンデとルセンに頬擦りするヘイトを見て、笑みを浮かべながらハッピーの元へと集った。

 

「ハッピー!やったやないか!!」

 

「うん!ハッピーの心が通じたんだね!!」

 

「あたし達も嬉しいよ!!」

 

「はい、ですが急ぎましょう!!時間がありません・・・」

 

 だが、その時、上空から拍手が鳴り響き、思わず上を見上げた一同は、ジョーカーを見て驚愕する。

 

「あなたは・・・どうして此処に!?」

 

 ジョーカーは、ピーチ達と戦って居た筈であった・・・

 

 ピーチ達が負けるとは思わないものの、一同の心に不安が沸き起った。

 

「トレビアン!友情の力で、魔に変えられた友達を救おうとは・・・素晴らしいですよ!!ですがね、そうハッピーエンドにはなりませんよ・・・出でよ!アカンベェ!!」

 

 ジョーカーは青い玉を右手で空に掲げると、マリンタワー本体をアカンベェへと変化させた。ハッピーとサニーがヘイトを、ピースがキャンディを、マーチがアンデを、ビューティがルセンを抱き抱えながら、一同はマリンタワー上空からダイブし、下に居たピーチ達と合流する。

 

「ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティ、無事で良かった・・・その子はもしかして!?」

 

「はい!この子が私のお友達のあゆみちゃん、みなさんのお陰で、あゆみちゃんも、アンデも取り戻す事が出来ました!!でも、あゆみちゃんを元の姿に戻そうとした時、ジョーカーが現われて・・・」

 

 ピーチ達四人の顔が強張る・・・

 

 自分達が見す見すジョーカーを逃がしたばかりにと、そんなピーチ達の心情を揶揄するかのように、トランプの舞がプリキュア達の前に降り注ぐと、

 

「さあ、あなた方との続きを始めましょうかねぇ・・・アカンベェ!あなたはキュアハッピー達と遊んで差し上げなさい!!」

 

 ジョーカーは、トランプを手裏剣のようにピーチ達四人に投げつけ、その攻撃を躱し続けるピーチ達は、どんどんハッピー達から遠ざかって行った・・・

 

(これで邪魔者は近づけませんねぇ・・・フフフ、五人のプリキュア達の驚く顔が目に浮かぶようですねぇ!)

 

 ジョーカーの口元に笑みが浮かぶと、ピーチ達は苛々したようにジョーカー目掛け再び攻撃を開始するのだった・・・

 

 

 

「見て下さい!アカンベェの鼻が・・・何時もと違い青いです!!」

 

 ビューティがアカンベェの変化に気づき指を指すと、一同も何時もと違うアカンベェを見て驚きの声を上げた。

 

「本当だ!何時もと違うねぇ・・・あゆみちゃん、キャンディ、ルセン、アンデ、みんなは私達から少し離れてて!!」

 

「う、うん!」

 

 ハッピー達に促され、ヘイトは少し離れた大きな木の陰からハッピー達を見守った。

 

「みんな、もうあまり時間が無いわ!」

 

「ほな、派手にいこうやないかぁ!!」

 

 サニーの合図に一同が頷くと、

 

「プリキュア!ハッピ~~・シャワ~~~!!」

 

「プリキュア!サニーファイヤー!!」

 

「プリキュア!ピース・・・サンダー!!」

 

「プリキュア!マーチシュートォォ!!」

 

「プリキュア!ビューティ~・ブリザ~~ド!!」

 

 もうあゆみを元に戻す為の時間が無い!

 

 一同は一気に勝負に出ると、五人の必殺技を同時に放ち勝負に出た!!

 

 これであゆみを元に戻す事に専念出来ると考えた。だが・・・

 

 アカンベェは動じず、更にプリキュア達に攻撃を仕掛けてくる。疲弊しているプリキュア達は、アカンベェの攻撃を受け大苦戦に陥った・・・

 

「そんなぁ・・・私達の攻撃が効かない何て!?」

 

 自分達の必殺技は、このアカンベェには効かない・・・

 

 頼れる先輩達も、今この場には誰も居ない・・・

 

 もう時間が無いのに・・・

 

 ハッピー達五人の心は激しく乱れた・・・

 

 

 

「アァ・・・プリキュアが!」

 

 あゆみは、今の自分の姿ならば、プリキュア達を手助け出来るのではと考えると、妖精達に待っているように伝え走り出した。

 

「今度は私がみんなの力になってみせる・・・」

 

 ハッピー達の前に出たあゆみを見て、ハッピーは驚愕し、

 

「あゆみちゃん!?駄目だよ!負の力を使ったら、また・・・」

 

「だい・・・丈夫!私、あなたと出会って勇気を貰えたもの!私、悪い心になんか負けない!!」

 

 あゆみの周囲に負の力が集まり始める。あゆみはその力を糧とし、アカンベェの攻撃からハッピー達を庇い続ける。

 

 キャンディも、弱っているハッピー達を見ると、居ても経っても居られなくなっていた。自分もプリキュア達を、アンデとルセンを、そして、アンデを助けてくれていたあゆみの事も救って上げたいと・・・

 

 意を決したキャンディは、

 

「キャンディも、ハッピー、サニー、ピース、マーチ、ビューティを救いたいクル!!アンデを、ルセンを、助けたいクル・・・ハッピー達の力に・・・なりたいクルゥゥゥゥゥ!!!」

 

 キャンディの身体が光輝いた時、額から発せられた光が、ハッピー達五人に新たなるデコルを与えた。

 

「キャンディ、これは一体・・・キュアデコル!?」

 

「でも、みんな形がバラバラやな・・・ウチのは丸形や!」

 

「本当!私は星形で、ハッピーはハート形」

 

「あたしは菱形で、ビューティは・・・ダイヤ形って所かな?」

 

「もしかしたら、私達に新たなる力を授けてくれるのでは?」

 

 五人がスマイルパクトに新たなるデコルをセットすると、五人の額に黄金のティアラが装着された。その姿は、まるで五人がお姫様になったかのようだった。

 

「キャンディ、ありがとう!キャンディの思い、私達に伝わったよ!!みんな!!!」

 

 ハッピーは、キャンディに微笑むと、キャンディも嬉しそうに目をキラキラ輝かせた。自分もみんなの役に立てた事が嬉しかった。ハッピーの掛け声に合わせるかのように、五人が右手を前に重ね合うと、五人の中に言葉が浮かんでくる・・・

 

「「「「「プリキュア!レインボーヒーリング!!」」」」」

 

 五人の身体から、虹の輝きが広がっていく・・・

 

 何処かブラックとホワイト、二人のレインボーセラピーを連想させる五人の合体技が、アカンベェの姿をしたマリンタワーに、虹の輝きを浴びせた・・・

 

 ハッピー達が発したレインボーヒーリングの輝きは、あゆみの身体を、アンデとルセンを、そしてマリンタワーの空を覆い、憎しみに満ちたマリンタワー上空に、再び青空を取り戻した・・・

 

               第四十七話:あゆみを救え!

                     完

 


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