プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第四十六話:みゆきとあゆみ!

1、あゆみの思い

 

 港の見える丘公園・・・

 

 眼下に広がる横浜の港や横浜ベイブリッジを見渡しながら、あゆみはさっき出会った少女達の事を考えて居た。楽しそうに仲間と行動していた一同を、心の中では羨ましく思っていた。

 

 横浜の地に来て一ヶ月、ゴールデンウィークも目前に迫っているものの、あゆみには、この街に友と呼べる人物は居なかった・・・

 

 いまだに友達が出来ないあゆみに、母は自分から積極的に話し掛けなきゃ駄目よと注意し、あゆみも話し掛けようとした事はあったが、何時もタイミングを逸し、嫌な思いをするのみだった。

 

 越して来たマンションの側、近所の犬には顔を会わせる度に吠えられ、学校に向かえば、周りは仲良さそうな友人達と、楽しげに登校する姿を見ながら、一人黙々と歩く自分が悲しかった。前の学校では、あゆみにもちゃんと仲の良かった友達も居たが、この街では孤独だった・・・

 

 そんなあゆみの唯一の支えは、アンデだけだった・・・

 

「キューちゃん・・・私、この街嫌い!前に住んでた所は楽しかったなぁ・・・」

 

 思わず前に住んでいた場所を思い浮かべ涙するあゆみ、アンデはキューンと発しながら、心配そうにポシェットから顔を出すと、あゆみはアンデの心遣いに、嬉しそうな表情を浮かべると、アンデに頬擦りしてありがとうと呟いた。

 

「アッ!見~付けた!」

 

 突然背後から声が掛かり、後ろを振り向いたあゆみは、先程の少女が微笑みながら立って居る姿を見て驚く、

 

「あなたは・・・まだ私に何か用なの?」

 

「うん!私、星空みゆき!中学二年の14歳!!私の事は、みゆきって呼んでね!!あなたは?」

 

 満面の笑みを浮かべながら、突然自己紹介を始めたみゆきに、あゆみは呆気に取られながらも、

 

「わ、私?私は、坂上あゆみ・・・あなたと同じ中学二年生だけど!?」

 

「私と同じ年なの!?あゆみちゃんかぁ・・・よろしくね!!」

 

(な、何なの、この子は!?)

 

 困惑するあゆみに、みゆきは隣に立つと、横浜の港を見ながら感嘆の声を上げた。

 

「ウワァ!良い眺めだねぇ・・・私、横浜って今日初めて来たの!あゆみちゃんは、この街に住んでるの?」

 

 ニコニコしながらあゆみに声を掛けるみゆきに、あゆみは随分馴れ馴れしい子だなぁと思いながらも、みゆきと話していて、嫌な気持ちにならない自分が不思議だった。

 

「うん!今年の春に、この街に越して来たんだけど・・・私はこの街・・・嫌い!!」

 

 寂しげな視線を眼下の景色に向けるあゆみ、みゆきはそんなあゆみを見て、同じように眼下の景色を見つめると、そっかぁとポツリと呟く、

 

「あゆみちゃんは、まだ不安何だね!私もね、今住んでる街に、この春越して来たばかりなの!!」

 

「エッ!?そうなの?」

 

「うん!同じ転校生だね!!」

 

 あゆみにニッコリ微笑むみゆきを見て、あゆみの中でみゆきに対して親近感が沸き上がった・・・

 

 この子も自分と同じなのかと、だが・・・

 

「私もね、最初は不安な面もあったけど、それ以上に、どんな出会いがあるのか楽しみだった・・・あかねちゃん、やよいちゃん、なおちゃん、れいかちゃんと知り合う事が・・・」

 

「私とは違う!私はあなたとは違うもの!!私には友達何て・・・」

 

 みゆきの言葉をあゆみは遮った・・・

 

 みゆきには大勢の友達が居る・・・

 

 でも、自分には・・・

 

 あゆみの心が、みゆきを拒絶しようとした時、ポシェットの中のアンデの色が黒く変化しようとした。あゆみを虐める悪い奴、アンデはみゆきをそう認識しようとした。

 

 だが・・・

 

 みゆきは、微笑みながらあゆみの両手を取ると、

 

「此処に居るよ!学校も、住んでる場所も違うけど、私は、あゆみちゃんと友達になりたいの!!」

 

「エッ!?」

 

 みゆきの言葉に、あゆみは虚を付かれた。今日初めて会ったのに、この子は何を言ってるんだろうと、あゆみは呆然とする。

 

「それに、そのポシェットの中のお友達もね!」

 

「なっ!?」

 

 みゆきがニッコリ微笑みながら、ポシェットの中のアンデの事まで知っている事にあゆみは動揺する。

 

(この子、何でキューちゃんの事を・・・)

 

 何とか誤魔化そうと考えるあゆみだったが、言い訳が見つからず戸惑っていると、

 

「私達も、あなたのお友達と似た子とお友達なの・・・名前はルセン!そして、あゆみちゃんのお友達の名前は・・・アンデ!そして、ルセンとアンデのお友達のキャンディとも、私達はお友達なの!!」

 

 みゆきの言葉を聞き、ポシェットの中のアンデが激しく動揺する。目の前のこの子は、自分の名前も、ルセンの名前も、キャンディの事も知っている。一体何者なのか!?

 

「な、何を言ってるの?この子は・・・」

 

 ポシェットをみゆきから隠そうとしたあゆみ、その背後で低い女の不気味な声が聞こえた・・・

 

「見~つけた!」

 

 何時現われたのか、振り向いたあゆみの後ろに、褐色の肌をした三人が立って居た。一人は坊主頭で、ヒョロっとした2メートルはありそうな大男ベガ、もう一人は、紫色のボンテージ風の衣装を着、黒いマントを羽織ったスタイルの良い赤い短髪の女サディス、もう一人は、見た目小学生のような身長ながら、白髪塗れで顔は老人のような男ディクレ、三人の魔人が、アンデの気配を見付け姿を現わした・・・

 

 

 

2、誕生!魔の戦士!!

 

「あなた達は一体!?」

 

 後退るあゆみに、笑みを浮かべるサディス、ベガ、ディクレ、みゆきはサディスを見て表情を険しくすると、

 

「あゆみちゃん、その人達から逃げてぇぇぇ!!」

 

 あゆみを庇うように前に出ると、あゆみに逃げるように叫ぶみゆき、尋常じゃないみゆきの様子に、あゆみは二歩三歩とその場を後退る。サディスは、不気味な笑みを浮かべながらみゆきを見つめると、

 

「あらあら、連れない言葉を言ってくれるじゃない?」

 

「一体、あゆみちゃんに何をしようと言うの?私の友達に・・・手を出さないで!!」

 

 みゆきはスマイルパクトを手に取ると、

 

「私のお友達に、手出しはさせない!プリキュア!スマイルチャージ!!」

 

「エッ!?」

 

 みゆきがキュアデコルをスマイルパクトにセットし、身体にパフを塗っていきプリキュアへと変化していく、あゆみは呆然とみゆきの変身する姿を見つめていた。

 

「キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!!」

 

「何!?お前があの時のプリキュアだったのか?」

 

 みゆきが変身したハッピーを見て驚くサディス、ハッピーは再びあゆみに振り向くと、

 

「あゆみちゃん、アンデと一緒に逃げて!!」

 

「は、はい・・・」

 

(あの子が・・・プリキュアだったなんて!)

 

 ハッピーの言葉通り駆け出すあゆみ、あゆみは何度も振り返り、ハッピーの姿を見つめた。

 

 身構えるハッピーに、三人の魔人は口元に笑みを浮かべていた。

 

「サディス、これが今のプリキュアなのか?」

 

「ああ・・・だが他にもこいつの仲間が居る!何時現われるとも限らない・・・甘く見ない方が良い!!」

 

 ベガは、ハッピーを見て拍子抜けしたかのように、腕組みしながら問うと、サディスも鼻で笑うようにそうだと答えるも、まだ仲間が居るから甘く見ない方がいいと忠告する。

 

「成る程な・・・では、こ奴を痛めつけ、仲間の居場所でも吐かせるとするか!フゥゥン!!」

 

 気合いを込めたディクレの周辺から、負の力が巻き起こり、突風が辺りを吹き荒れる。思わず顔をしかめ、突風に耐えたハッピーだが、目を開けた時にはディクレの姿は消え、気付いた時には背後に回られ、回し蹴りを浴び吹き飛ばされる。

 

「クゥゥ・・・あゆみちゃんを、アンデを、守るんだからぁぁぁ!!」

 

 ヨロヨロ立ち上がるハッピーの横に現われたベガは、

 

「そんなにあの娘が大事か?なら・・・お前の目の前で、消してやるよ!!」

 

 ニヤリと微笑むと、一気にあゆみ目掛け距離を詰めるベガ、助けに向かおうとするハッピーを嬲るように、ディクレが掌底で吹き飛ばし、サディスが飛んできたハッピーをディクレに蹴り返す。

 

「キャァァァ!」

 

 そのまま地面に滑り込むも、ヨロヨロ立ち上がるハッピー、その視線の先には、震えるあゆみの顔に、ベガの右手がゆっくり迫る。

 

 あゆみを守る!!

 

 ポシェットから飛び出したアンデが、ベガに体当たりをするも、今の状態では何の力も持たず、ベガに弾き飛ばされる。

 

(クライナーがあたしらに刃向かうとは!?)

 

 サディスは、アンデが必死に守ろうとするあゆみに興味を持ち始めた。ベガは、目障りとばかりアンデを消し去ろうとするも、あゆみが必死にアンデを庇いながら抱き上げ、恐怖に震えながら後退る。

 

「止めてぇぇ!気合いだ、気合いだ、気合いだ、気合いだぁぁぁ!!プリキュア!ハッピー・・・シャワ~~~!!!」

 

 あゆみを救うべく、気合いを込めて放たれたハッピーシャワーは、何時も以上の輝きを放ち、ベガへと飛んでいく。ベガは両手でハッピーシャワーを止めるも、その威力に徐々に後ろに押され出す。

 

「グゥゥ、こいつ!?ヌゥゥオォォ!!」

 

 ベガは、ハッピーシャワーを堪えきると、負の力と共に掻き消すも、荒い呼吸を繰り返した。ディクレは、意外そうにハッピーを見つめると、

 

「こ奴・・・少し侮りすぎたか!?流石はプリキュアを名乗るだけはあるようだ!!」

 

「ディクレ、俺にやらせろ!この俺に手を出した事を・・・後悔させてやる!!」

 

 ベガの目が金色に輝くと、負の力が辺りに立ち込み始める。気合いを込めたハッピーシャワーを放ち、力を使いすぎたハッピーは、荒い呼吸を繰り返し、迫るベガへ攻撃する力は残って居なかった。

 

(わ、私のせいだ・・・私を助ける為に・・・)

 

 あゆみは意を決すと、ハッピーを庇うように前に出て両手を広げると、アンデもあゆみの頭の上に乗り、ハッピーを庇う仕草をした。

 

「あ、あゆみちゃん!アンデ!私は大丈夫だから、早く逃げて!!」

 

 最早面倒とばかり、纏めて葬ろうとしたベガの右手をサディスが掴むと、

 

「ベガ、待ちな!この子・・・使えそうだよ!!」

 

「何だと!?どう言う事だ、サディス?」

 

 ベガに暫く待てと言うと、サディスがゆっくりあゆみに近づき始める。サディスが何か念じると、あゆみの額に五芒星のマークが浮かび上がる。サディスは恐怖に引き攣るあゆみの額に自分の額を合わせると、

 

「フフフ、お前・・・この街が嫌い何だねぇ?」

 

「エッ!?そ、それは・・・」

 

 自分の心の中を見透かされたようで、あゆみは思わず虚を突かれた。アンデは、嘗て自分とルセンが、目の前のサディスにされた事を思い出し震えていた。

 

「このクライナーは、お前の言う事なら聞きそうだねぇ・・・お前に力を与えようじゃないか?」

 

 サディスは口元に笑みを浮かべると、黒いマントを何度も翻し、両手を天に構えると、

 

「魔よ!この地に現われ、この女の心の妬みを増幅させよ!!我は求め・・・訴えたり!!!」

 

 サディスの両手がサッと下がると、あゆみの額にある五芒星のマークが光だし、上空に現われた黒煙が、あゆみの身体を包み込む、あゆみは悲鳴を上げながらも、心の中の怒りが増幅してくるのを感じていた。

 

 私を受け入れないこの街を・・・

 

 私を認めない学校の者を・・・

 

 私の頼みも聞かない両親も・・・

 

「みんな、みんな、消えてしまえぇぇぇ!!!」

 

 憎しみの心があゆみを支配した時、あゆみの肉体は魔に取り憑かれ、ツインテールの髪は解け、乱雑に長い髪が靡き、優しげな目は激しく吊り上がり、瞳は妖しげに赤く輝き、上瞼には紫のアイシャドウが加わった。衣装はサディスと色違いの黒いボンテージ衣装、赤いマントを靡かせていた。

 

「あ・・・あゆみちゃん!?」

 

 驚愕するハッピーがあゆみの名を呼ぶも、振り向いたあゆみは、ハッピーに衝撃波を浴びせて吹き飛ばすと、

 

「あゆみ!?違う!私は、この世界に憎しみを広げし者・・・私の名は、ヘイト!!」

 

 魔人と化したあゆみは、ヘイトと名乗り上空に浮かび上がると、震えるアンデに負の力を浴びせ、アンデは再びどす黒く変色していった。

 

 アンデの心も、嘗てと同じように憎しみが支配していった・・・

 

「さあ、クライナーよ!この地に憎しみを撒き散らせ!!」

 

「あゆみちゃん!あゆみちゃぁぁぁん!!」

 

 必死に叫び、あゆみの名を呼ぶハッピーだったが、あゆみの耳には届かない、新たなる魔人ヘイトは、マントを靡かせマリンタワーの上に移動すると、アンデを高々と天に掲げた。それに刺激されたかのように、横浜の海底から、無数の黒き物体が横浜の空を覆いだした・・・

 

 

 

 港の見える丘公園目指すなぎさ達一同であったが、横浜の空を覆った黒き物体に戦慄する。

 

「な、何、これは!?」

 

「なぎさぁぁ!嫌な気配が、この街全体を覆っているメポ!」

 

「凄まじい憎しみの力を感じるミポ・・・」

 

 ざわめき始める妖精達・・・

 

 一同は、顔を見合わせ辺りの様子を伺うと、幸い人影は見当たらなかった。

 

「みんな、行くよ!!」

 

 なぎさの掛け声に返事を返した一同が、変身アイテムを手にして叫ぶ・・・

 

「「デュアル・オーロラウェーブ!!」」

 

「ルミナス!シャイニングストリーム!!」

 

「「「「デュアル・スピリチュアル・パワーッ!!」」」」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

 

「「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」」

 

 あかね、やよい、なお、れいかの四人は、次々にプリキュアへと変身していく先輩達に目を輝かせると、

 

「ウチらも負けてられへんでぇ!」

 

 あかねの言葉に、頷くやよい、なお、れいか、四人はスマイルパクトを手に持つと、

 

「「「「プリキュア!スマイルチャージ!!」」」」

 

 四人の身体がプリキュアへと変化していく・・・

 

「太陽サンサン、熱血パワー!キュアサニー!!」

 

「ピカピカぴかりん!じゃんけん・・・ポン!キュアピース!!」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「勇気リンリン、直球勝負!キュアマーチ!!」

 

「しんしんと降り積もる、清き心!キュアビューティ!!」

 

 ピースの名乗りを聞いた時、先輩プリキュア達は思わず呆然とするも、マーチ、ビューティが続けて名乗り、四人がポーズを決めた!!

 

「サニー、マーチ、ビューティは分かるよ!でも、何!?何なのよ!ピースのジャンケンって?」

 

 ルージュの突っ込みに、「エェ!?」と激しく動揺するピース、

 

「アハハハ・・・まあ、ウチも最初に聞いた時は、何やそれぇ?って、思うたんやけど・・・」

 

 サニーが苦笑を浮かべながら、確かに最初は自分も思ったと告げると、ルージュは、更に言葉を続け、

 

「うちのレモネードの、はじけるレモンの香りも、最初に聞いた時は何それって思ったけど・・・ジャンケンは無いわ!それ以上に無いわ!!」

 

「エェェ!?ルージュ、何気に酷いです?」

 

 レモネードは頬を膨らまし、ルージュに抗議すると、ルージュは苦笑いを浮かべながら、ゴメンゴメンと謝る。ミューズも醒めた目をピースに向けると、

 

「本当・・・一緒に居るのが恥ずかしくなってくるよねぇ?」

 

「ミューズ・・・少し言い過ぎよ!」

 

「だってぇぇ!」

 

 ホワイトに窘められ、ミューズは頬を膨らませると、マリンもウンウン頷き、

 

「そうだねぇ・・・ジャンケンは無いよねぇ!何か場違いって言うかさ、これから戦いますよって言うより、これからゲ-ムしますよって感じじゃん!こんなの・・・うちのムーンライトが黙ってないよ!!」

 

「エッ!?」

 

 いきなりマリンに話を振られたムーンライトは、困惑の表情を浮かべ、ピースは涙目を浮かべながら、ムーンライトにペコペコ頭を下げる。ムーンライトはフッと笑むと、

 

「ピース・・・大丈夫、気にしないで!私は何とも思ってないわよ!それより・・・」

 

 ムーンライトは、ルージュとミューズの頭を拳でグリグリし、痛いと頭を摩る二人、更にマリンの頭を、二人より強めにグリグリすると、

 

「い、痛い!背が縮んじゃうよぉぉ!?」

 

 変顔浮かべながら、両手で頭を撫でるマリン、ムーンライトは、そんな三人を厳しい視線で見つめると、

 

「全く・・・同じプリキュアの仲間に、そんな事を言うものじゃなくってよ?三人共、ピースに謝りなさい!!」

 

「「「はぁい・・・」」」

 

「ピース、ゴメンね!確かに言い過ぎだったわ」

 

「生意気言ってゴメンなさい」

 

「でも、本当の・・・ウワァァ!ゴメン、反省してます!!」

 

 ルージュとミューズは素直に謝るも、マリンは少し不満気にし、その態度にキッと睨むムーンライトに加え、ブラックとホワイトが咳払いを、やれやれといった表情を浮かべたベリーに頭を抑えられ、マリンは慌ててピースに謝った。

 

 ピースは、ブルブル頭を振り、気にしてませんと答え微笑むと、マリンがピースの肩に手を回し、感謝の言葉を述べる。ピースを庇おうとしたサニー、マーチ、ビューティは、ホッと胸を撫で下ろし、ピースも笑顔を向けた。

 

「さあ、仲直りも済んだところで・・・みんな、行くわよ!!」

 

 ムーンライトの言葉に、瞬時に表情を引き締める面々、サニーは一同を見つめると、

 

「ウチら、みゆきが心配何で、この辺捜してみますわ!」

 

「分かったわ!私達は、四方に散ってこの邪悪な物体を調べてみる。サニー、ピース、マーチ、ビューティ、みゆきさんをお願いね!!」

 

 ホワイトが四人にみゆきの事を託すと、四人は頷き、港の見える丘公園へと急ぎ走り出す。それと同時に行動を起こした他のプリキュア達だったが、ドリームは、不安気な表情で四人の後ろ姿を見つめていた。

 

(みゆきちゃん・・・大丈夫かなぁ!?)

 

「ドリーム!何してるの?私達も行くわよ!!」

 

 アクアがドリームに声を掛けると、ドリームは名残惜しそうにしながらも、アクア達の下へと歩き出す。ルージュは、そんなドリームを見つめると、アクア、ミント、レモネード、ローズに何かを頼むのだった・・・

 

 

 

「あゆみちゃんに、何をしたの?あゆみちゃんを元に戻して!!」

 

 涙ぐみながらサディス、ベガ、ディクレにあゆみを元に戻すように訴えるも、三人は笑みを浮かべ、

 

「ハァ!?あたしはあの子の望んでいる事に手を貸してあげただけ・・・おわかり?」

 

「違う!あゆみちゃんは・・・本当はそんな事望んでない!!」

 

 あゆみが飛び去ったマリンタワーへと向かおうとするハッピーに、ベガの鉄拳が炸裂し、ハッピーが吹き飛ばされる。

 

「おいおい、俺達を置いて何処に行こうっていうんだ?」

 

「あの娘の所に向かいたければ・・・我々を倒す事だな!」

 

「最も、出来れば・・・だけどね?」

 

 三人の嘲笑がハッピーに向けられるも、ハッピーにはそんな笑い声も耳には入らない・・・

 

 あゆみを救いたい、それだけだった・・・

 

 ヨロヨロ立ち上がり、マリンタワーを再び目指そうとするハッピーの背後に、掌底に負の力を交えたベガが衝撃波を放つ、だが、ハッピーの背後に氷の膜が現われ衝撃波を防ぐと、突然現われた炎がベガの行く手を遮り、突風がサディスの髪を靡かせる。雷がディクレの動きを封じた・・・

 

「あんたら、ウチらの仲間に何してるんや?」

 

「あたし達が来た以上・・・好きにはさせないよ!!」

 

「私・・・怒ってるんだからねぇ!」

 

「ハッピー、遅れてすいません・・・私達も一緒に戦います!!」

 

 振り向いたハッピーは、掠れる瞳に徐々に移る四人を見て、止め処なく涙が溢れてくる。

 

「サニー、ピース、マーチ、ビューティ・・・」

 

「何や!?泣いてるんか?もう、心配いらんでぇ!!」

 

 サニーがハッピーにウインクすると、ハッピーは涙を拭い何度も頷いた。

 

「みんな、私に力を貸して!私、その人達に悪い人にされた友達を助けたいの!!私、マリンタワーに居る友達に・・・」

 

 ハッピーの言葉に、四人は顔を見合わせると、サニーはゆっくりハッピーに近付き、ハッピーの左肩に右手を乗せると、

 

「ハッピー・・・それはちゃうで!」

 

「エッ!?」

 

「ハッピーの友達は・・・」

 

「私達にとってもお友達ですわ!」

 

「だから、泣かないで!」

 

「うん!」

 

 マーチが、ビューティが、ピースが、ハッピーに近付き微笑み掛ける。

 

「ほな、決まりやな!此奴ら、倒して・・・ウチらの友達、救いに行くでぇぇ!!」

 

「キャンディも居るクル!」

 

「キューン」

 

「キャンディ、ルセンまで・・・うん!!」

 

 四人と妖精達に、満面の笑みで頷き返すハッピー、サディス、ベガ、ディクレは、忌々しげに五人を見つめると、

 

「ハァ!?あたし達を倒す?」

 

「自惚れるなよ!小娘共!!」

 

「直ぐに身の程知らずだったと・・・後悔させてくれる!!」

 

 三人の魔人の周囲に負の力が巻き起こる・・・

 

「みんな、行くよ!!」

 

 ハッピーの合図と共に、三人の魔人目掛け駆け出す五人・・・

 

 あゆみを救えるか、スマイルプリキュア!!

 

 

               第四十六話:みゆきとあゆみ!

                     完

 


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