プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第三十八話:世界に響け!幸せのメロディ!!

1、ノイズとプリキュアオールスターズ

 

 合流したメロディ、リズム、ビート、ミューズを、仲間達は笑顔を浮かべ向かえた・・・

 

「これで、戦いに集中出来るね!」

 

「ええ、と言っても、こちらが不利なのは変わらないけど・・・」

 

 ブラックの言葉にホワイトも頷くものの、直ぐに表情を引き締める。ドリームは、嬉しそうにメロディの肩を抱きながら、

 

「みんな揃ったんだもん、何とかなるなるぅ!」

 

「ドリーム、全く・・・」

 

 ドリームの楽天的な言葉に、思わずルージュはハァと溜息を漏らすも、直ぐに笑みを浮かべた。

 

「な、何だ、こいつら?この状況で・・・」

 

 メロディ達が加わった事で、一気にテンションが変わったプリキュア達を見て、ノイズは驚く、不意にマリンが何かを思い出したようにノイズを指さすと、

 

「そうだ!ノイズはあたし達の裸、ただで見てるんだよねぇ?やい、エロノイズ!嫁入り前の、若いピチピチな女の子達の裸を見る何て・・・許さないよ!!」

 

「そう言えば、そうだね・・・あいつ、以外と変態だよね?」

 

 マリンの言葉に、ブルームもウンウン頷きながら同意すると、イーグレットは苦笑を浮かべ、呆気に取られていたノイズが怒り、

 

「ふざけるなぁ!大体、嫌がる私を無理矢理女風呂とやらに連れ込んだのは、そこの娘だろう?」

 

 ノイズがミューズに視線を向けて文句を言うも、

 

「汚れてたから綺麗にして上げようとしただけじゃない!そんなに大きいと分かってたら、一緒に入れないわよ!!」

 

「そうそう、態々怪我した振りまでして・・・完璧に怪しいわねぇ?」

 

「何か縋るような目もしてたよね・・・怪しい」

 

「そうね・・・」

 

「あの時、キルンと一緒に話し掛けて見れば良かったかなぁ?」

 

 ミューズの言葉に、ベリーもピーチも同意し、パッションとパインもジッと疑惑の視線をノイズへと向けた。

 

 口喧嘩を始めるノイズとプリキュア達、ノイズは愚弄された事で心底怒り出し、

 

「黙れ、黙れ、黙れぇぇ!この私を此処まで愚弄するとは・・・絶対に許さんぞぉ!!大体、貴様らのその胸だか背中だか分からない身体に・・・興味など持つかぁ!!!」

 

「「「「何ですってぇぇぇ!!!」」」」

 

 ノイズの言葉に、頬を大きく膨らまして、ブラック、ブルーム、ドリーム、メロディが抗議する。

 

「ねぇ、ブロッサム・・・あたし達って」

 

「まな板何でしょうか?」

 

 自分の胸を両手で触り、トホホ顔を浮かべたマリンとブロッサム、そんな二人を見たブルームは、困惑気味に慌てて二人の肩に手を乗せフォローし、

 

「ブ、ブロッサム、マリン、そ、そ、そんな事、無い無い!」

 

「ブルーム・・・声が震えてるわよ?」

 

 ブルームは、二人を励ましながらも、自身もかなり動揺しているようで、ローズに突っ込まれる。ドリームとレモネードは、自分の胸をマジマジ見つめると、

 

「そりゃあ、ピーチ達と比べたら、小さいけど・・・それなりにはあるもん!」

 

「でも確かに、ピーチ、ベリー、パイン、パッションと比べたら・・・」

 

「あたし達は、胸の大きさでは適わないわね?」

 

 苦笑しながら、レモネードとルージュが言葉を発する。ドリームは、自分の胸とピーチ達の胸を比べると、小声で負けたと呟き、三人の会話が耳に入ったのか、

 

「「ジィィィィ」」

 

 マリンとブロッサムは、羨ましげにピーチ達の胸に視線を集中させる。二人の視線に困惑したピーチは、思わず両手で胸を隠し、

 

「ふ、二人共、何所見てるのよぉぉぉ!?ノイズはあっち!!」

 

「全く・・・ノイズの言葉に惑わされないの!」

 

「大丈夫!その内あなた達も大きくなるわ!!・・・保証は出来ないけど」

 

「エェとぉ・・・二人共、あまり気にしない方が良いと思うの?」

 

 ブロッサムとマリンは、ピーチとベリーに、頭を持たれて、ノイズの方に顔を向けさせられ、苦笑を浮かべながらパッションとパインが二人を励ました。メロディは、自分の胸を触りながら、

 

「私・・・リズムよりはあるもん!」

 

 ピクリと反応したリズムは、自分の方がメロディより胸はあると言いたげに、

 

「メロディ、どさくさに紛れて捏造しないで!」

 

「捏造じゃないもん!」

 

 互いに頬を膨らませるメロディとリズム、ブラックが二人の間に入り窘めるも、

 

「メロディ、リズム、あんた達、胸の話で喧嘩しない!大体、ピーチ!あんた達だけ、胸を強調するような衣装着てるから・・・」

 

「エェェ!?それは言い掛かりだよぉぉぉぉ?」

 

 ブラックに胸元を指で指されたピーチが、再び胸を隠して益々困惑する。そんなピーチ達やブロッサム達、ドリーム達、ブラックと違い、険しい表情を浮かべたアクアは、上空高くジャンプすると、

 

「プリキュア!サファイア・アロー!!」

 

 プリキュア同士の内輪揉めを見て、呆然としていたノイズ目掛け、アクアのサファイアアローの乱れ撃ちが飛んだ。ノイズは不意を突かれたものの、翼でサファイアアローの連射に耐えきった。

 

「クッ!?やってくれたな、小娘!」

 

「19、20、凄い!20連射!?アクアのサファイアアローって、あんなに連射出来たんだ!?」

 

「さあ!?ここまでの連射は・・・私達も初めて見たような気がします?」

 

 ブラックが驚き、ドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、ローズを見つめて問うと、五人は一斉に首を捻り、レモネードが初めて見た気がすると答えた。アクアはスッと着地し、ノイズをキッと睨み付けると、

 

「ノイズ!あなたに一言言っておく事があるわ!!」

 

「何だ!?」

 

「私達の胸は・・・まだまだ成長途中なのよ!」

 

「オォォォ!」

 

 先程のノイズの一言が、アクアの癇に障ったのか、アクアがノイズを指差し、啖呵を切ると、他の一同からオォォと感動の声が上がり、拍手が鳴り響いた。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 ノイズは、そんなプリキュア達を見て呆然とするのだった。ミントはクスリと笑うと、

 

「余程アクアの癇に障ったのねぇ?さあ、私達もアクアに続きましょう!」

 

 苦笑を浮かべたミントが一同に促し、そんな仲間達を見たホワイトは、祖母さなえの言葉を思い出す。平常心が一番だと言う言葉を・・・

 

(これも、平常心・・・なのかなぁ?)

 

 ホワイトの表情が段々曇り、苦笑を浮かべた。

 

 

 

「全く、あの子達は何をしているのかしら?」

 

「本当!ハウリングを食い止めてるこっちの身にも・・・なってもらいたいわね?」

 

「彼女達らしいといえばそうだけど・・・」

 

 ムーンライトの言葉に、ブライトとウィンディも頷く、ハウリングと戦い、足止めさせるムーンライト、ブライト、ウィンディ、サンシャイン、ダークプリキュア5、ノイズと戦って居るわりには、何時ものような調子の一同を見て少し呆れていた。

 

「でも、何かメロディ達が加わって、何時ものみんなに戻ったようですよ?さっきまでは、私達もそうでしたけど、悲壮感が漂ってましたから・・・」

 

「こんな状況じゃ、悲壮感が漂うのが当然なのだけれど・・・」

 

 ノイズの力によって、加音町の住民は石化した。おそらく世界中がこのような現象になっているであろう。その不安につけ込まれない為にも、あえて明るく振る舞っているのかも知れないが、そうムーンライトは思うも、

 

(そうは見えないのよね・・・)

 

 ムーンライトは口元に笑みを浮かべ、再びハウリングに肉弾戦を仕掛けた。

 

「この俺様相手に・・・余所見とは、余裕のつもりか?直ぐに後悔させてやる!ゼタファイヤー!!」

 

 背後でノイズと戦う仲間達を見て、時折笑みすら浮かべるムーンライト達を見て、ハウリングは忌々し気に、ゼタファイヤーを一同に放つ、

 

「やらせない!風よ・・・吹き荒れよ!!」

 

「ムーンライトリフレクション!!」

 

 ウィンディが強烈な突風でハウリングの攻撃を弱めたのを見たムーンライトは、二枚のバリアーでハウリングの攻撃を跳ね返した。

 

「な、何だと!?この俺様の攻撃を、跳ね返しただとぉぉ?」

 

 信じられないといった表情を浮かべたハウリングの隙を逃さず、ムーンライト、ブライト、ウィンディ、サンシャインが空中から、そして、ダークプリキュア5が地上から突っ込み、ハウリングを吹き飛ばした・・・

 

 

 再び開始されたプリキュアとノイズの戦い・・・

 

 クレッシェンドトーンも姿を現わすと、

 

「ノイズ、あなたとの長きに渡る戦い・・・決着を付ける時が来たようですね!」

 

「それはこちらのセリフだ!貴様と音吉への怨み・・・忘れた事は無いぞ!!」

 

 ノイズと、クレッシェンドトーン、二人にどんな因縁があったのか、プリキュア達は知らない。クレッシェンドトーンは昔の話しだと前置きしながら語り出した・・・

 

「もうどれくらいになるでしょうか・・・嘗てメイジャーランドに現われたノイズによって、メイジャーランドは壊滅的被害を受けた事がありました。当時の王、音吉と私が協力し、死闘の末何とかノイズを封じる事は出来ましたが、私もノイズの力によって傷つき、眠りに付いた私は、ノイズによって作り出された魔境の森に封じられました」

 

「貴様らによって封じられてから・・・この日が来るのをどれ程待ち望んだ事か・・・遂に長年の怨みを晴らす時が来たのだ!!」

 

 ノイズとクレッシェンドトーンの話しに、ビートとミューズが割って入った。二人の表情は険しかった。

 

「ノイズ、ママがどんな辛い思いをしたのか、パパがどんなに苦しんだか・・・あなたに分かる!?」

 

 ミューズの拳がノイズの顔面にヒットするも、ノイズは微動だにしなかった。ノイズはミューズの言葉を嘲笑うように、

 

「そんなもの、分からんなぁ?」

 

「バスドラ、バリトン、ファルセットだってそう・・・みんなも音楽を愛していた・・・それをあなたは利用した!許せない!!」

 

 ビートのかかと落としがノイズに炸裂するも、

 

「愚か者め、人の心など簡単に染まる・・・貴様とてそうだったのだろう?」

 

「違うニャ!セイレーンは、優しい心を完全に失って無かったニャ!」

 

 ノイズは、ビートも闇に染まって居ただろうと問うも、ハミィが真っ向から反論する。

 

「そうだよ、あんた達は人の心につけ込んだだけ・・・私やリズムも、ハウリングに操られた事があるから分かる!!」

 

「例え人を操ろうとも、人の心の絆までは・・・あなたには壊せない!!」

 

 メロディのミュージックロンドが、リズムのミュージックロンドが、ノイズ目掛け炸裂するも、ノイズはその攻撃を跳ね返す。ノイズの攻撃を受け蹌踉めく四人を庇うように、ファイヤーストライクが、サファイアアローの乱れ撃ちが飛ぶ、レモネードのプリズムチェーンが、ミントのエメラルドソーサーが、ドリームのシューティングスターが、フレッシュ勢のクアドラプルパンチが、一同がメロディ達を援護する。

 

「調子に乗るなよ!貴様らの攻撃など効くか!!」

 

 更なる雄叫びを上げ、ノイズがプリキュア達に怒濤の攻撃を続ける。

 

 調べの館の中でパイプオルガンを直していた音吉の表情が輝く、想像以上に壊れた箇所は少なく、これならばノイズを倒せる筈だと自信があった。

 

「みんな、よく堪えてくれた・・・食らえ、ノイズ!!」

 

 調べの館からオルガンの音色が響き渡ると、ノイズが苦悶の表情でのたうち回る。それに合わせるように、プリキュア達の攻撃が炸裂し、ノイズは更なるダメージを受けた。

 

「ハ、ハウリング、何をしている!音吉を・・・奴を・・・」

 

「め、面目次第もございません・・・プリキュア共の相手が精一杯で、音吉までは手が回りませぬ!!」

 

 以前よりも、プリキュア達の強さが増して居ると感じたハウリングがノイズに答える。

 

 自らが何とかせねばと、ヨロヨロ立ち上がったノイズは、忌々しげに調べの館を見つめると、

 

「音吉ぃぃ!調子に乗るなよぉぉ!!」

 

 口を大きく開いたノイズから、凄まじい破壊光線が発せられた。音吉はバリアーを張り、石にされた人々を庇うも、苦心して作り上げたパイプオルガンは、無残に崩壊していた。

 

「な、何たる事じゃ・・・き、貴様、何時の間に?」

 

 オルガンを破壊され、意気消沈していた音吉の前に、ハウリングが現われ音吉をノイズの居る場所に蹴り飛ばす。

 

「グゥゥオォォ!」

 

「お爺ちゃぁぁぁん!!」

 

 ミューズが飛び出し、音吉を助けようと試みるも、後一歩届かず、ノイズの手に落ちる。

 

「殺すなら、殺せ!だが、必ずプリキュア達が・・・お前の企みを阻止してくれるとわしは信じて居る!!アコ、みんな、後は頼むぞ!!」

 

「なぁに、殺しはせん・・・貴様にも味わって貰おう!封印された者の苦しみをなぁぁぁ!!」

 

 ノイズの身体が、まるでブラックホールのように周りの物を吸い込み始める。音吉は、プリキュアに後を託しながら闇の中へと消え去った。泣き叫ぶミューズを庇うように、ビートは、ミューズの身体を一同の側に連れて来る。消えた音吉は、マイナーランドへと送られ、ノイズが封印されていたように壁の中に埋め込まれた・・・

 

 

 だが、ノイズもかなりのダメージを食らい、起き上がっているのがやっとの状態であった。今しかない!プリキュア達が総攻撃を開始しようとしたその時、ノイズの前にハウリングが現われ、

 

「ノイズ様、何たる痛ましいお姿・・・この私を吸収して頂きたい!そうすれば、体力も回復する筈です!!」

 

「何だと!?しかしハウリング、それではお前が・・・」

 

「構いません!むしろ、ノイズ様のお役に立てれば光栄です!!」

 

「ハウリング・・・」

 

 ハウリングの申し出にノイズも頷き、ノイズは、ハウリングを体内へと吸収を始めた・・・

 

「グァァァァオォォォォォ!!」

 

 ノイズの身体が闇の球体へと変化し、不気味に収縮を繰り返し始める。

 

「な、何?何が起きているの!?」

 

「みんなぁ、用心するココ」

 

「邪悪な気配が、その中から酷く漂ってるメポ」

 

 アクアが驚きの声を上げ、ココとメップルが、闇の球体から邪悪な気配が強さを増して居て、一同に警戒するように注意が飛んだ。

 

 闇の球体は、徐々に人のシルエットへと変化していった・・・

 

 

2、究極体

 

 ノイズの姿は、人間の形へと姿を変えた・・・

 

 血のような色をした赤い髪、背中から生えた二枚の翼、人のような腕も生え、全身を灰色に覆われ、三本指の足で立ち尽くすノイズ、大きさは人と同じ程度の身長になったものの、ノイズの体内から発せられる負の力は、今までと比べものに成らなかった。

 

 ノイズ、究極体とも呼べる姿が、プリキュア達の前に姿を現わした・・・

 

 ノイズは、自らの身体を確かめるように、指先を見て指を動かす。

 

(馴染む、実に馴染む)

 

 ノイズが軽く腕を振ると、辺りに凄まじい衝撃が巻き起こる。先程までのダメージは消え去っていた。

 

「最早、自らメイジャーランドに乗り込む必要もない・・・全ての音よ、消え去るが良い!!」

 

 ノイズが気力を為、一気に解放した時、その凄まじき力は、異世界をも飲み込んだ!

 

 

「この力は!?・・・ハァァァァァ!!」

 

 顔色を変えた光の園のクイーンは、咄嗟に力を解放し、ノイズの負の力から光の園の民を守り通した。

 

「クイーン、今のおぞましき力は一体!?」

 

 光の園の長老は、おぞましき力を感じ驚愕し、クイーンに問うも、クイーンにも確かな事は分からなかった。

 

「私にも分かりません・・・ただ、その側からプリキュア達の力を感じます!彼女達が、再び闇に立ち向かってくれているようです・・・」

 

 クイーンは、プリキュア達の勝利を光の園から祈った・・・

 

 クイーンのように、異変を察知したフィーリア王女や、絵本の世界の女王、光の槍と黄金の冠の加護に守られた二つの国もまた、辛くもノイズの負の力から民を守った。だが、ノイズの目的であった、メイジャーランドに残って居たアフロディテとメフィスト、ラビリンスに居るウエスターとサウラーを始めとした民達、パルミエ王国を始めとした四大王国も、音を奪われ皆石化した・・・

 

「な、何!?一体何をしたの?」

 

 驚愕の表情を浮かべたイーグレットがノイズに問いただすと、ノイズは口元に笑みを浮かべ、

 

「なぁに、全ての世界から音を奪ったまでだ・・・この世界の者共のようになぁ!」

 

「そんなぁ!?パパ、ママ」

 

 動揺するミューズだったが、メロディはミューズの肩に手を乗せながら、

 

「ノイズ、私達は・・・負けない!!」

 

 ノイズから発せられる威圧感を払拭するように、メロディはミラクルベルティエを、リズムがファンタスティックベルティエを装備すると、

 

「溢れるメロディの、ミラクルセッション!プリキュア!ミラクルハート・アルペジオ!!」

 

「弾けるリズムの、ファンタスティックセッション!プリキュア!ファンタスティック・ピアチェーレ!!」

 

 メロディはハートを描くようにピンクとオレンジ、二色の炎を、リズムもハートを描くように白と黄、二色の炎をノイズ目掛け発射する。メロディとリズムの行動に勇気づけられたように、ビートとミューズも頷き合うと、

 

「弾き鳴らせ、愛の魂!ラブギターロッド!!おいで、ソリー!!」

 

 ソリーを呼んだビートが、ラブギターロッドにソリーをセットすると、

 

「チェンジ!ソウルロッド!!翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・・・ロック!!」

 

 緑色のエネルギーリングをセットし、ロッドのトリガーを引くと、リングがノイズ目掛け飛んで行った。

 

「シ、の音符のシャイニングメロディ!プリキュア!スパークリングシャワー!!」

 

 大量の音符のような泡がノイズ目掛け飛ぶ、ノイズはそれらの攻撃を微動だにせず受けるも、何事も無かったようにギロリとメロディ達を見つめ、腕を振ると四人が吹き飛ばされ地面に激しく激突する。

 

「あれだけの攻撃に・・・私達も行くよ!!」

 

 ピーチ達が、ドリーム達、ダークプリキュア5が行動を開始する。ブルーム達は足下に力を溜めると一気に飛翔し、ノイズに対し上空から攻撃を開始する。

 

 ノイズが右手に力を込めると、ノイズを中心に爆発波が発生し、攻撃に向かった一同が吹き飛ばされた。

 

「みんな、大丈夫!?」

 

「あれくらい、へっちゃら、へっちゃら!」

 

 心配そうに仲間に声を掛けるブラックに、右手を挙げて大丈夫と応えるドリーム、ブラックはホッと安堵するも、それを見たノイズはニヤリと笑い、

 

「お前達、あれが私の本気だとでも思ったのか?まだ30%程度ぐらいしか出して居ないのだぞ・・・さあ、次は50%!」

 

 次の行動を開始したノイズの動きを読み、真っ向から迎え撃つムーンライト、だがノイズはムーンライトの攻撃を見切り、躱し続けたノイズはムーンライトに強烈な右ストレートを放つと、辛うじてノイズの拳を受け止めたムーンライトだったが、その勢いを完全に止める事は出来ず、激しく横回転しながら吹き飛ばされる。

 

「キャァァァ!」

 

「「ムーンライト!!」」

 

 ブラックとホワイトが、咄嗟にムーンライトを受け止め、何とかダメージを軽減させる。

 

「ふ、二人共、ありがとう・・・油断しないで!!」

 

 顔色を変えたムーンライトを見て、頷くブラックとホワイトの視線がノイズに向けられる。

 

「どうした!?まだ半分の力だぞ?次は、80%だ!!」

 

 ノイズの姿が消える・・・

 

 現われた時には懐に入られ、プリキュア達一人一人に攻撃を加えダメージを与え続ける。

 

 ノイズの両手から、凄まじいエネルギー波がプリキュア目掛け発射された。

 

 咄嗟にルミナス、ブルーム達四人、ミント、サンシャイン、ビートが協力してバリアーを張り、何とか堪えるも、瞬時にノイズは戦法を変え、肉弾戦をルミナス達に仕掛けバリアーを張れなくすると、再び爆発波が発生し、吹き飛ばされたプリキュア達が、激しく地上に叩き付けられた。

 

「さあ、100%の力を受けよ!!」

 

 下降したノイズが再び爆発波を放つも、その威力は桁違いだった・・・

 

 吹き飛ばされたプリキュア達は、地上に激しく打ち付けられ倒れ込む。

 

 プリキュア達の危機を感じたクレッシェンドトーンが現われ、ノイズの攻撃から辛くもプリキュア達を庇うも、大ダメージを受ける。ノイズは口元に笑みを浮かべながら、

 

「哀れだなぁ、クレッシェンドトーン・・・最早お前に、何の脅威も感じはせん!貴様も・・・音吉と同じ目に合わせてくれるぅぅぅ!!」

 

 ノイズの胸元が開くと、クレッシェンドトーンが吸い込まれて行く、

 

「クレッシェンドトーン!今助けに・・・」

 

「後は頼みましたよ!プリキュア!!キャァァァァ!!」

 

 助けに向かおうとしたメロディに首を振り、後を任せたクレッシェンドトーンは、闇の中に吸い込まれ、音吉と同じようにマイナーランドの壁に封印された・・・

 

 

 プリキュア達を見下すように、ゆっくり宙に浮かんだノイズは、ヨロヨロしながらも立ち上がろうとするプリキュア達を見て、不思議そうに首を傾げ、

 

「お前達、何故そんな目に遭いながら立ち上がるのだ?」

 

「当たり前じゃない!」

 

「みんなと音楽を守る為なら・・・私達は何度だって立ち上がるわ!!」

 

 真っ先に立ち上がったドリーム、みんなと音楽は必ず守って見せるとメロディが、ノイズの問いに答える。ノイズは、音楽も守るというプリキュア達の言葉に興味深げに反応すると、

 

「何故音楽を守るのだ?」

 

「大事なものだから!」

 

「そう、だからこそあなたから守って見せる!!」

 

 再び問うノイズの言葉に、ブルームとリズムが答える。ノイズは意外そうにプリキュア達一人一人の顔を見ると、

 

「お前達、音楽が幸せをもたらすと・・・本気で思っているのか?」

 

「当たり前でしょう!!」

 

 再び問うノイズに、不機嫌そうにアクアが答えると、そうかと呟くノイズ、

 

「一つ教えてやろう・・・そもそもこの争いの始まりは何だ?伝説の楽譜・・・そう、音楽が原因だ!音符に悪が宿れば不幸のメロディとなり、少し並び替えれば幸せのメロディとなる。そうだろう?だが、それも悪い心が宿れば、すぐに不幸に変化する。そんなどちらにでも変わるような曖昧な物、無い方が良い!!音楽など無意味な存在なのだ!!!」

 

 ノイズの言葉を呆然と聞くプリキュア達、まさかノイズがこのような事を言うとは、誰一人として思っても見なかった。ビートは、ノイズを悲しげな視線で見つめると、

 

「そんな事無いわ!だって、音楽が無い世界なんて、寂しすぎるでしょう?」

 

「寂しいだと!?寂しさなど感じては居ない!誰も、何も、感じては居ない!喜びも、悲しみもな・・・全ての音が消え去れば、苦しみも消える!何も感じない平穏な世界・・・これこそが、究極の理想の世界だ!!」

 

 ノイズの告白を聞き、ブルーム達四人はある人物を思い出していた。その名は、ゴーヤーン!だが、ノイズの考えは、ゴーヤーンの望んだ無とも違う気がする四人だった。

 

「さあ、問答は終わりだ!後はお前達と、そこの妖精共を片付ければ・・・私の望む世界が実現する!!」

 

「そんな事、させない・・・音楽の無い世界何て・・・」

 

 メロディは拳を握りしめて身構えると、ノイズは口元に笑みを浮かべ、

 

「なら、実力で証明して見せるのだな!!」

 

 ノイズの宣言に、メロディ同様身構えるプリキュア達・・・

 

 ノイズが再び力を込めると、辺りに爆発波が発生する。止めようと動き出すプリキュア達だったが、ノイズは強く、プリキュア達は何度も吹き飛ばされた・・・

 

 本気を出したノイズの攻撃力は桁違いに強く、プリキュア達の数々の必殺技さへも、有効打には至らなかった・・・

 

「どうした!?もう終わりか?プリキュア、所詮貴様らに・・・音楽を守る事など出来んのだ!見ろ、この静けさを・・・」

 

 口元に笑みを浮かべるノイズに、ハミィとフェアリートーン達はゆっくり首を振る。フェアリートーン達一同は、静寂なる中で微かな音色を奏でた・・・

 

(心が、安らいでいく・・・)

 

 ブラックは目を閉じて、奏でられる音色に耳を傾けた・・・

 

「自分達だけでは、今はこれが精一杯ドド」

 

「でも、プリキュアのみんなが力を貸してくれれば、もっと、もっと大きな音を奏でられるレレ」

 

「もっと、沢山の音を出したいソソ」

 

「みんなが一緒なら・・・もっと沢山の音色を奏でたいドド」

 

 フェアリートーン達は、プリキュア達の周りを飛び回り続けた。ハミィも頷くと、

 

「伝説の楽譜は真っ白ニャ!どんな曲でも、また新しく創れるニャ!ハミィは、セイレーン、響、奏、アコ、そしてプリキュアのみんなが創った音楽が聴きたいニャ・・・」

 

 妖精達の励ましを受け、沸々と気力を充実させていくプリキュア達・・・

 

「そうだよね・・・私達の鼓動は、まだ生きている!だから音楽は無くならないよね・・・絶対に!!」

 

「ノイズに消されたって創ればいいよね、何度でも・・・みんなと一緒に!!」

 

「創りたい、そしてメイジャーランドのみんなとも一緒に演奏するの!!」

 

「唄いたいなぁ・・・みんなと、思いっきり声を張り上げて!!」

 

「うん!聴かせてやろうよ、ノイズに、私達プリキュアのハーモニーを!!!」

 

 メロディが、リズムが、ビートが、ミューズが、そして、ドリームが、他の一同も頷き合うと、

 

「私達は絶対に諦めない!!!!」

 

 プリキュア達の思いが合わさった時、フェアリートーン達は光輝き、その光は、メロディ、リズム、ビート、ミューズを照らした・・・

 

 肩や頭頂部のリボン状の部分が、羽のような衣装に変わり、背中には金色の羽が追加され、腰の周辺から尾羽が付いた。

 

 今、メロディ達四人は、クレッシェンドキュアメロディ クレッシェンドキュアリズム クレッシェンドキュアビート クレッシェンドキュアミューズとして舞い降りた・・・

 

 そんな彼女達を見たプリキュア達は、再びその目に闘志を燃やした!!

 

 

3、ノイズの本心

 

 ノイズは、更なる進化を遂げたメロディ達、再び立ち上がったプリキュア達を見て驚くも、

 

「その程度の力で・・・私を倒せると思うなよぉぉ!!」

 

 急降下してきたノイズを、迎え撃つメロディ達四人が羽ばたく、空中戦を繰り広げるメロディ達だったが、進化した彼女達四人を持ってしても、ノイズが優勢に戦いを進めていた・・・

 

「私達も・・・行くよ!!」

 

 ドリームが仲間達に声を掛け戦いに加わる・・・

 

 ブルーム達が、足下に力を溜め飛翔する・・・

 

 ブロッサム達がマントを纏い宙に飛ぶ・・・

 

 戦いに参加したプリキュア達と共に、ノイズにダメージを与えていくメロディ達、ノイズは急降下して距離を取るも、地上に居たブラック達、ピーチ達が突進し、ノイズが体勢を整えるのを阻止する。

 

「クッ・・・この私を此処まで追い詰めるとは・・・だが、例えこの場で私を倒そうとも、私は何度でも甦って見せるぞ!!必ず、私の理想・・・究極の無の世界を作ってやるぅぅ!!」

 

 再び急上昇し体勢を整えるノイズの表情に、一瞬悲しみが見えたメロディは戸惑い、今ならノイズを倒せると、行動に移ろうとするプリキュア達の前に降り立つと、ノイズを見つめた。

 

 ジィと悲しげな視線でノイズを見ているメロディに気付き、ノイズは首を傾げた。何故そんな瞳で自分を見るのか、ノイズには分からなかった。

 

(そんな世界を作って・・・ノイズは何がしたいんだろう?)

 

 メロディは、その疑問をノイズにぶつけて見たくなった。メロディは一同にノイズと話をしたいから、戦う事を待って欲しいと伝えると、一歩、また一歩ノイズへと近づいて行った。

 

「ノイズ!それって・・・悲しくない?」

 

「悲しいだと!?全て消えれば、悲しさだって消え失せる」

 

「音も無い、誰も居ない、何も無い世界で・・・あなたは何をするの?」

 

「何もしないさ・・・そして、私もいずれ消え去るさ」

 

 メロディは首を激しく振ると、

 

「どうして!?あなたの理想の世界なのに、自分は消えてしまうの?何それ、あなた、何がしたいの?私には分らないよ!あなたは一体何なの!?」

 

 ノイズはイライラしたように大声で超音波を奏でると、プリキュア達は一斉に皆耳を塞いだ。一瞬寂しげな視線を一同に向けたノイズは、

 

「それだ!何時もそうやってお前達は・・・私を忌み嫌ってきた!!私が何なのかだと!?そんな事・・・私の方が知りたい!!大体、この私を産み出したのは・・・お前達人間だ!!」

 

 ノイズの告白に、一同は呆然としながらノイズを見た・・・

 

 ノイズを産み出したのは、私達人間!?

 

 プリキュア達には、その言葉の意味が理解出来なかった・・・

 

 ノイズはゆっくり語り始める・・・

 

「この世界は、決して楽しい事ばかりではない!楽しい事もあれば、同じように悲しい事がある。その悲しみの中から・・・私は生まれた!!私は、悲しみそのもの・・・お前達人間の悲しみの結晶だ!」

 

 ノイズの言葉を聞いていたメロディは、ある事に気付く、ノイズは、音楽が嫌い何かじゃない・・・と、

 

「ノイズ・・・あなたは、音楽を嫌い何かじゃない!あなたは・・・歌を忘れたカナリヤ何だね!!」

 

「黙れ!」

 

 ノイズは、警告するかのように、メロディの目の前に衝撃波を放ち威嚇するも、メロディは怯まない。

 

「独りぼっちだと思ったんだね!」

 

「黙れ、黙れ!」

 

 イライラしたように、ノイズは両手を振り衝撃波を放ち、メロディに攻撃を当てるも、ヨロヨロ立ち上がったメロディは尚も言葉を続ける。

 

「さえずる事を止めたんだね・・・」

 

「黙れと言っているのが、わからんかぁぁぁ!!」

 

 激昂しながらも、ノイズの心の中に、昔の記憶が甦ってくる・・・

 

 

 私は・・・何時生まれたのだろう・・・

 

 何故私は此処に居るのだろう・・・

 

 何故私の心はこんなにも空しいのだろう・・・

 

 何故私の心の中は悲しみで一杯なのだろう・・・

 

 誰か、私に教えておくれ!・・・

 

 何だ!?この美しき音色は・・・

 

 小鳥達よ、その歌声で私を癒しておくれ・・・

 

 私も君達と共に歌おう・・・

 

 小鳥達よ・・・

 

 何故私の声を聞いて怯えるのだ?・・・

 

 全ての生き物達よ・・・

 

 何故私の声に怯えるのだ?・・・

 

 

「貴様らとて同じだぁぁ!!誰が、誰が私の耳障りな歌を聴くものかぁぁ!!!」

 

 ノイズの心からの叫びを、思いを知ったメロディを始めとするプリキュア達は、両手を広げ、慈愛に満ちた目を浮かべた・・・

 

「「「私達は、もう耳を塞がない!」」」

 

 ブラックが、ホワイトが、ルミナスが、

 

「「「「あなたに、音楽の素晴らしさを!」」」」

 

 ブルームが、イーグレットが、ブライト、ウィンディが、

 

「「「「「「歌の素晴らしさを!」」」」」」

 

 プリキュア5が、ローズが、

 

「「「「「仲間の素晴らしさを!!」」」」」

 

 ダークプリキュア5が、

 

「「「「思い出させてみせる!!」」」」

 

 ピーチが、ベリーが、パインが、パッションが、

 

「「「「あなたは独りぼっちじゃないって」」」」

 

 ブロッサムが、マリンが、サンシャインが、ムーンライトが、

 

「「「「私達プリキュアが、もう一度信じさせて見せる!!」」」」

 

 メロディが、リズムが、ビートが、ミューズが・・・

 

「ノイズ!あなたの思いの全てを・・・私達が受け止めて見せる!!」

 

 メロディの言葉に頷いたブロッサム達は、スーパーシルエットに変身すると、ブロッサム達を中心に二列になるプリキュア達、その側に集まる妖精達、メップル達、フラッピ達も妖精の姿になりそれぞれのパートナーの近くに並び立つ・・・

 

 プリキュアの、妖精達の思いが一つになり、嘗てのようにハートキャッチミラージュが凄まじい輝きを発し上昇していく。

 

「これは一体!?」

 

 呆然と光を見つめるノイズだったが、何故か不快感は全く無かった・・・

 

「無限の力と無限の希望!そして、無限の愛を持つ星の瞳のプリキュア!プリキュア!!無限シルエット!!!!」

 

「無限・・・シルエットだと!?」

 

 ノイズは呆然としながら、星の瞳を持つ巨大な女神のようなシルエットを見つめた・・・

 

 無限シルエットの姿が、響に似た少女の姿を露わにする。

 

「私達の力、思い、希望、夢、そして、愛・・・全てをこの歌に込めるわ・・・プリキュア!無限シルエットレクイエム!!!!」

 

 嘗て、カオスを鎮めた無限シルエットレクイエムがノイズに発せられる。その穏やかな光が、安らぎの歌声が、ノイズの心に安らぎを与えていった・・・

 

(私にも・・・まだこんな穏やかな気持ちが、残っていたのだなぁ・・・)

 

 ノイズはその美しき歌声に耳を傾けた・・・

 

 ノイズの心が癒されていくように、戦いで荒廃した加音町が元に戻っていった・・・

 

 

 無限シルエットが消え去り、メロディは飛ぶ!

 

 まるで、ノイズを迎えに行くように・・・

 

「ノイズ、ごめんね!今まで私達、あなたを倒す事しか考えてなかった。でも、そうじゃない!そうじゃなかった・・・」

 

「・・・・・・・」

 

 光に包まれ出したノイズは、穏やかな表情でジッとメロディの言葉を聞いていた・・・

 

「そうよ、ノイズ・・・あなたはあなたなの!その声も、羽の音も、あなただけの立派な音楽なの!!みんなと違っていたって良いじゃない!みんなだって、それぞれ自分だけの音楽を持っているの・・・いろんな人がいて、いろんな音楽があって、喜んだり悲しんだり、きっとそうやってみんな繋がってこの世界は出来ている。この世界が一つの組曲何だよ!!ノイズ、あなたもその一部なの・・・だから私達は、あなたを消す事何て出来ない!!」

 

 メロディの言葉を表すように、両手を広げたプリキュア達は、まるでノイズに早く降りておいでとでも言っているようだった・・・

 

「お前達・・・何故そこまでする?私は音楽を奪い、お前達を倒そうとしたのだぞ!?」

 

「そんなの決ってるじゃない!」

 

 ブラックが・・・

 

「私達プリキュアは、戦うだけが全てじゃないんだよ!」

 

 ブルームが・・・

 

「みんなの笑顔を守る事・・・」

 

 ドリームが・・・

 

「それもプリキュアの使命なの!」

 

 ピーチが・・・

 

「道を踏み間違えている人が居るのなら、手を差し伸べて正しい道に導いて上げる・・・それもプリキュアの使命何です!!」

 

 ブロッサムが・・・

 

「あなたの笑顔も守らなきゃ・・・プリキュアの名がすたるでしょう?」

 

 メロディがノイズにウインクすると、

 

「ハハハハ・・・全く・・・お節介な奴らめ!」

 

 ノイズは、心の底から笑い、穏やかな表情で光と共に舞い上がった・・・

 

 ノイズの心が、深い哀しみから解放された瞬間だった・・・

 

 プリキュア達は、光に包まれ消え去ったノイズを見つめ続けた・・・

 

 

4、幸せのメロディ!!

 

 プリキュア達の導きを受けたノイズは、光と共に消えた・・・

 

 プリキュア達は変身を解き、それぞれ光が消え去るまで見つめていたが、一同は上空から沢山の何かが降ってきた事に気付くと、驚きの声を上げる。

 

「な、何あれ!?」

 

「あれは・・・音符、音符だわ!!」

 

「分かったニャ!あれは、ノイズに吸収された音符達が解放されたのニャ!!」

 

 驚くなぎさ、ジッと見つめて音符だと気付くエレン、解放された音符達だと喜ぶハミィ、少女達は降り注ぐ音符達を見つめ微笑んだ。

 

「ありがとう、ノイズ!私達の言葉を受け入れてくれたんだね・・・私達、待ってるからね!!あなたが戻って来るのを・・・この場所で!!!」

 

 満面の笑みを浮かべながら、上空を見つめる響、奏は響の右腕に手を回し、気付いた響と見つめ合い微笑むと、二人は再び上空を見つめた・・・

 

 伝説の楽譜に、今幸せのメロディが加わった・・・

 

 

「これは一体!?何でみんな元に戻らないの?」

 

 ノイズを浄化したものの、加音町はいまだ静まりかえり、人々の石化が解ける事は無かった。なぎさは呆然と辺りを見回すのだった・・・

 

 この世界に、音楽が戻る事は無かった・・・

 

 世界の人々が、元に戻る事は無かった・・・

 

 少女達は、為す術もなく呆然とその場に立ち尽くしていた・・・

 

 

「もしかしたら・・・ハミィ、幸せのメロディを歌えば、みんなを、音楽を、再び甦らせられるんじゃないかしら?」

 

「エレン、どういう事?」

 

 エレンの閃きの意味が分からず、響が問い返すと、エレンは自身の推察を一同に話し始める。

 

「考えてみて、ノイズは、不幸のメロディを聴いて復活し、音符達を吸収した。音符達を吸収したノイズの力で、世界から音楽は消え、人々は石化した・・・裏を返せば、幸せのメロディを歌えば、人々を、音楽を、元に戻せるって事じゃないかしら?」

 

 エレンの言葉を聞いていた一同、なぎさ、咲、のぞみ、ラブ、えりか、響は理解出来ず、挙動不審な態度になると、なぎさはほのかとゆりを、咲は舞、満と薫を、のぞみは、りんとかれんを、ラブは、美希、祈里、せつなを、えりかはつぼみを見て、響は奏、エレン、アコに縋るような目を向けた。

 

 なぎさ達は、私達に分かるように教えてと合図を送り、一同は溜息を付きながら、分かりやすく説明をするのだった・・・

 

「うん!エレンの言う通りだね・・・試してみよう!!」

 

「なぎさ・・・あなた、本当に理解してるの?ウフフ、まあいいわ!!」

 

 ほのかとゆりの説明を聞き、理解したのかしないのか、なぎさはエレンの案を試してみようと言うも、エレンは、アコと共に疑惑の視線をなぎさに浴びせると、思わずなぎさが怯み、エレンは思わずクスリと笑い、

 

「でも、此処で幸せのメロディを歌っても意味は無いかも知れない・・・みんな、メイジャーランドに行きましょう!」

 

「待って、エレン!まだ、待ちましょう・・・ノイズは、きっと帰ってくる!!」

 

「そうよね・・・待ちましょう!!」

 

「きっと帰ってくる!私、信じてる!!」

 

 エレンにもう少し待つように言う響、エレンも頷き、祈里も信じ、少女達が再び空を見上げて居ると、

 

「来た!みんな、帰って来たわ!!」

 

 せつなが嬉しそうな表情を浮かべ、大空を指差すと、一同の視線がその方角に釘付けになった・・・

 

 翼を懸命に羽ばたかせ、ピーちゃんとなってノイズは再び戻って来た・・・

 

 まるで悪の心を洗い流したかのように、真っ白になって・・・

 

「お帰り・・・ピーちゃん!!」

 

 響が満面の笑顔を浮かべ両手を広げると、ピーちゃんは嬉しそうにその胸に飛び込みピィピィ鳴き、少女達に微笑みを向けた。一同は待ち侘びていたように、お帰りと次々声を掛けると、ピーちゃんの目からは、涙が零れた・・・

 

「でも・・・何で白くなってるんだろう?」

 

「全てを洗い流して・・・生まれ変わって帰って来た・・・って事かしら?」

 

 なぎさは、何故白くなってるのか疑問に思うも、ほのかの言葉に何となく同意するのだった・・・

 

「ピーちゃんも戻って来たし・・・改めて、メイジャーランドに行きましょう!!」

 

 エレンの言葉に同意し、少女と妖精達は、メイジャーランドへと向かった・・・

 

 

 静まりかえる音楽の国、自分と、自分の配下達のしでかした行為を思い返し、ピーちゃんは悲しげな視線を浮かべるも、響はピーちゃんの頭を撫でると、

 

「大丈夫だよ、ピーちゃん!」

 

「ピィピィ!?」

 

 尚も不安げにするピーちゃんを見たハミィは、何かを思案するようにジッと見つめていた。

 

 

 宮殿内に入った一同は、静まりかえる宮殿内の中で、寄り添うように石化しているアフロディテとメフィストを発見する。顔色を変えて駆け寄るアコは、

 

「パパ・・・ママ・・・」

 

 アコは涙を流しながら抱きつくも、直ぐに二人から離れて涙を拭い、

 

「待ってて・・・今、今、元に戻して見せるから!!」

 

 アコと目が合い、ピーちゃんは詫びているのか、ピィィと一鳴きすると、アコはピーちゃんを抱き上げ、

 

「気にしないで・・・だって、ママもパパもお爺ちゃんも・・・みんな、みんな、これから必ず元に戻るんだから!!」

 

「ええ、アコの言う通りよ!行きましょう、私達の戦いの始まりの場所・・・コンサートホールへ!!」

 

 エレンに導かれ、一同はコンサートホールへと向かった・・・

 

 

 誰も居ない静まりかえったホール・・・

 

 今、ハミィは伝説の楽譜をセットし、一同は、これからハミィが歌う幸せのメロディを、今か、今かと待ち侘びていた。大きく息を吸い込むハミィ、一同が始まると思ったその時、

 

「その前に・・・みんなに言っておきたい事があるニャ!!」

 

 歌うと思っていた一同はタイミングを狂わせ、その場で転ける・・・

 

「もう、ハミィったら・・・私達に言っておきたい事って何?」

 

 苦笑を浮かべたエレンがハミィに問うと、珍しく真顔のハミィを見て、エレンも顔色を変えた・・・

 

「ハミィは本来、年始めのあの時、幸せのメロディを歌う筈だったニャ・・・でも、ハミィは楽譜を奪われてしまったニャ!だから、ハミィは・・・今年の幸せのメロディを歌う資格は・・・無いのニャ!」

 

「そんなぁ・・・それは、ハミィのせいじゃないわ!!それは私が・・・」

 

 エレンが、それはハミィのせいじゃなく、操られて居た自分の責任だと告げると、ハミィはゆっくりお辞儀をし、

 

「セイレーン、ハミィを庇ってくれてありがとニャ!もし、このままハミィが歌っても良いのなら・・・ハミィは、セイレーンと、プリキュアのみんなや、妖精のみんなと一緒に歌いたいニャ!もちろん、ピーちゃんも一緒ニャ!!」

 

 ハミィの言葉にざわめく一同、特にピーちゃんは激しく動揺していた・・・

 

「そういえば、前にハミィは言ってたココ・・・幸せのメロディを、セイレーンと一緒に歌うのが夢だって・・・」

 

「そうだったメポ・・・」

 

 ココやメップルの言葉を聞き、呆然とするエレン・・・

 

「ハミィがそんな事を・・・」

 

 エレンが楽譜の前で佇むハミィと視線が合うと、ハミィはニッコリ微笑み、エレンも微笑み返すと、

 

「分かったわ、ハミィ!みんな、ハミィの言う通り・・・みんなで歌いましょう!!幸せのメロディは・・・みんなで歌ってこそ価値があると私も思う!!」

 

 そう言うと、エレンはハミィの下に走り出した・・・

 

「いきなりそう言われても・・・どうする?」

 

「どうするって言われても・・・どうしよう!?」

 

 なぎさとほのかは顔を見合わせ困惑するも、響が二人の背を押すと、

 

「どうするって・・・決ってるでしょう!行きましょう、幸せのメロディをみんなで歌いに・・・」

 

「そうだね・・・行こう、みんな!!」

 

 なぎさとほのかも頷き、ステージへと駆け出す・・・

 

 響に、奏に、アコに、次々背中を押された一同が、ハミィが待つステージへと駆け出す・・・

 

 尚も不安げな表情を浮かべるピーちゃんに、笑顔を浮かべる響、奏、アコ、

 

「ピーちゃん、私達もピーちゃんの歌声が聴きたい!ピーちゃんにしか歌えない、ピーちゃんの音楽を、私達に聴かせて!!」

 

 ピーちゃんは嬉しそうな表情を浮かべ、ハミィと少女達の下へ羽ばたく、響、奏、アコも笑顔を浮かべながらそれに続いた・・・

 

「じゃあ、行くニャァ!!」

 

 ハミィの合図と共に、少女達が、妖精達が、幸せのメロディを歌い始める・・・

 

 ステージから、響き渡る歌声は、メイジャーランド、マイナーランド、全ての世界へと響き渡った・・・

 

 世界に響け!幸せのメロディ!!

 

 

5、また会う日まで!

 

 世界に響き渡った、少女達が歌う幸せのメロディ・・・

 

 光の園のクイーンが、泉の郷のフィーリア王女が、ダーククイーンが、希望が花市の植物園に居る薫子が、鏡の部屋に覆われた地球の神が、響き渡る歌声を聞き微笑む・・・

 

 

 そして、深淵の闇の中・・・

 

 歌声に微笑む少女の姿があった・・・

 

(また一つ、光と闇が融合した!でも、光の力が輝きを増しているのは・・・もう少し、このままあなた達プリキュアの行く末を見させてもらうわ!!それによっては・・・)

 

 そう言うと、闇の中の少女は姿を消した・・・

 

 

 少女達の、妖精達の歌声は、石化していた人々を次々と元に戻して行った・・・

 

 アフロディテ、メフィストを始めとするメイジャーランドの人々が・・・

 

 ウエスター、サウラーを始めとするラビリンスの人々が・・・

 

 四大国王と住民達が・・・

 

 世界中の人々が元に戻っていった・・・

 

 

「我々は一体!?」

 

「ええ、不気味な声が聞こえたかと思ったら、今度は・・・」

 

 思わず顔を見合わせ、キョトンとするメフィストとアフロディテ、

 

「あなた・・・この歌は、幸せのメロディ!」

 

「そうだな・・・だが、大勢の歌声が聞こえてくるのは、一体どういう事だ?」

 

「ええ・・・あなた、行ってみましょう!!」

 

 アフロディテが、笑みを浮かべながらメフィストに話し掛けると、メフィストも満面の笑顔を向け、歌声が聞こえるコンサートホールへと歩き出した・・・

 

 

「あれぇ!?何でメイジャーランドに居るんだ?」

 

「確か私達は・・・加音町に居た筈だが!?」

 

「ああ、不気味なハウリング音を聞いて、そこからの記憶が・・・」

 

「ひょっとしたら、私達はプリキュア達に救われたのでは?」

 

「プリキュアに?そうか・・・またセイレーン達に俺達は・・・」

 

「二人共、それより耳を澄まして下さいよ!素晴らしい歌声が聞こえてますよ!!」

 

 元に戻ったバスドラ、バリトン、ファルセットの三人、バスドラとバリトンは、エレン達プリキュアのお陰だと悟り感触深げにしていると、ファルセットは、響き渡る歌声を二人にも知らせ、二人も歌声に気付くと、聞き惚れるように穏やかな表情を浮かべた。

 

「バスドラ、バリトン、僕達もプリキュア達の下に向かいましょうよ!!」

 

「そうだなぁ・・・行くか?」

 

「ええ、彼女達には・・・直に会ってお礼を言いたいしね」

 

 三人は顔を見合わせ合うと微笑み、声が響き渡るコンサートホールへと走り出した・・・

 

 

「はて!?わしはノイズに敗れた筈では・・・」

 

「おそらく、プリキュア達がノイズを倒してくれたのでしょう!そして、この歌声は・・・幸せのメロディ!!」

 

 まるで歌に導かれたかのように、マイナーランドに封印されていた音吉とクレッシェンドトーンは、封印から解放されると、光に導かれるようにメイジャーランドへ来ていた。国中に、いや、世界中に響き渡る歌声に、二人は笑みを浮かべる。

 

「音吉、彼女達を称えに向かいましょう・・・」

 

「そうですなぁ・・・みんな、よくやってくれたわい!」

 

 二人は、歌声が響き渡るコンサートホールへと向かった・・・

 

 

 響き渡る歌声・・・

 

 今、世界に響き渡った幸せのメロディが、歌い終わろうとしていた・・・

 

 コンサートホールに次々と集まってくるメイジャーランドの人々、皆、少女達と妖精達の歌声に聞き惚れていた・・・

 

「アコ・・・立派に、立派になって・・・」

 

 号泣するメフィストを見て、少々呆れるアフロディテだったが、思わずクスリと笑む。

 

「お、おい、あそこで泣いてるの・・・メフィスト王じゃないか?」

 

「ほ、本当だ!い、何時お戻りになられたんだ?」

 

「おい、あそこに居るのは、三銃士のバスドラ様、バリトン様、ファルセット様じゃないか?」

 

「あちらには先代王、音吉様までいらっしゃられるぞ・・・一体どうなってるんだ?」

 

「今年の歌姫、ハミィと共に幸せのメロディを歌う彼女達も気になるな・・・一体何者何だ?」

 

 幸せのメロディに聴き惚れていた人々は、目の前に次々に現われる王族関係者に度肝を抜かれた。そして、幸せのメロディを歌う、歌姫ハミィと共に歌い続ける少女と妖精達を見て驚くも、幸せのメロディは、いよいよクライマックスを向かえようとしていた・・・

 

「ラ~ララァァァ!!!!」

 

 一同が歌い終わった時、コンサートホールに鳴り響く拍手の渦・・・

 

 少女と妖精達は、照れくさそうにしながらも、皆表情は晴れやかだった・・・

 

「アコォォォ!パパは、パパは感動したぞぉぉぉ!!」

 

「パパ!?ママ!?・・・良かった、元に戻れたんだね!!」

 

 アコが走り出し、メフィストとアフロディテに嬉し涙を流しながら抱きつくと、二人は満面の笑顔を浮かべアコを抱きしめた・・・

 

「バスドラ!バリトン!ファルセット!良かった・・・あなた達も無事に・・・キャァァァァ!!」

 

 三銃士の三人がエレンを見付けるや、嬉しそうに全速力で駆け出し、近付いて来る姿を見たエレンは、無事な三人を見て涙ぐむ、三人はそのままエレンに飛びついて、驚愕の表情を浮かべるエレンを押しつぶした。

 

「ウゥゥオオ!セイレーン・・・ありがとう!ありがとう!!」

 

「一生付いて行きます!一生付いて行きます!」

 

「今まで悪い事してきて・・・ごめんなさい!ごめんなさい!一生僕達の上司で居て下さい!!」

 

「やっかましいわぁぁ!さっさとドカンかぁぁ!!」

 

 感動の再会も何処へやら、三人に押しつぶされたエレンは、嘗てマイナーランドに居た頃のように三人に接するのだった・・・

 

 

「まさか・・・何故ノイズがプリキュア達と共に居るのだ?」

 

「これは一体!?」

 

 そんな一同とは別に、音吉とクレッシェンドトーンは、響が抱いている白い妖精ピーちゃんを見て呆然とするのだった・・・

 

「お前達、何をして居る!?そいつはノイズじゃぞ!!」

 

 険しい顔をして響が抱いているピーちゃんを指さす音吉、ピーちゃんは悲しげな声でピィと鳴く、音吉の言葉を受け、メフィストとアフロディテ、三銃士の表情が強張る。

 

「音吉さん、いくら幸せの世界になっても、悲しみや苦しみは・・・全て消えるわけじゃないわ」

 

「私達プリキュアは、ピーちゃんを受け入れた上で前に進みたいの」

 

「悲しみを見ない振りをするのは、幸せとは言えないもの」

 

「よく見れば可愛いよ・・・ねぇ、ピーちゃん!」

 

 響、奏、エレン、アコがピーちゃんを庇う、他の一同も次々とピーちゃんを庇い、

 

「ピーちゃん、これからはずっと一緒だからね」

 

 響がピーちゃんに頬擦りすると、ピーちゃんの目からは、止め処なく涙が零れた・・・

 

「何という事じゃ・・・」

 

「あの子達は、ノイズを受け入れ、共に歩む事を決めたようですね・・・私も忘れていました!嘗て、あの子達と同じ気持ちを持っていた事を・・・見守りましょう!あの子達を!!」

 

「そうですなぁ・・・まさか、あの子達から教わる事になるとは・・・」

 

 クレッシェンドトーンの言葉に頷いた音吉は、髭を摩りながら頼もしくなった少女達を見て微笑んだ・・・

 

 

「みんな、私達はマスターの下に戻るわね!」

 

「少しの間だったけれど、またあなた方と過ごせて楽しかったわ!」

 

「一緒に歌も歌えたしね!」

 

 ダークアクア、ダークミント、ダークレモネードが先ず一同に語り掛けると、かれん、こまち、うららが近づき、またの再会を誓い合い語り合って居ると、困惑した表情のメフィストが近づいて来る。

 

「それは困る・・・もう少しゆっくりは出きんのか?礼も兼ねて、プリキュア達には盛大な宴でも・・・」

 

「ご心配には及びません!私達は元々、この世界に現われた闇の調査にやって来たのですから・・・お気持ちだけ頂きます!!」

 

 メフィストに引き留められたダークプリキュア5だったが、ダークドリームが一同を代表し、気持ちだけ受け取るとメフィストに伝えるも、メフィストはまだ承服しかねる表情を浮かべ、

 

「ウム・・・しかし・・・だが、無理強いも出来んか・・・分かった!五人共、よく協力してくれた。感謝する!道中気をつけてな!!」

 

 メフィストは、五人の少女達一人一人と握手し感謝を込めた・・・

 

「今回は怖い話を聞かされずに済みそうね・・・」

 

「ダークルージュ、そう言う事は言わない!直ぐに実行しそうな人が居るんだからぁ!!」

 

 怖い話を聞かされる事もなく帰れそうな様子に、思わずホッとしながらダークルージュがポツリと呟くと、りんは大慌てで人差し指でシッとジェスチャーをすると、表情を強張らせながら、なぎさとこまちの様子を伺う。なぎさもこまちも、今回はそんな余裕もないのか、なぎさは、ほのか、のぞみと共にダークドリームと語り合っていて、こまちもかれん、うららと共にダークアクア達三人と語り合っていた。

 

 それを見て思わずりんはホッと安堵し、ダークルージュと見つめ合い笑みを浮かべた。

 

「あなた達、気をつけてね!ダーククイーンにもよろしく言っておいて!助かりましたってさ!!」

 

「ダークドリーム・・・きっとまた来てね!!」

 

「ええ、必ず!!のぞみ、みんな、元気でね!!みんな、行くよ!!」

 

「「「「YES!」」」」

 

 なぎさの言葉に無言で頷くダークドリームがニッコリ微笑みを向ける。固い握手をしたのぞみとダークドリームは抱き合い、またの再会を誓いあった・・・

 

 仲間を促したダークドリームは、五人の力を合わせ空間に歪みを生じさせると、次元の狭間へと消えていった・・・

 

 一同は、次元の歪みが元に戻るまで、手を振り続けていた・・・

 

 

「皆の者、これよりプリキュア達への感謝を込めて宴を開く、直ぐに準備を・・・」

 

 王宮関係者に指示を出すメフィストに気付いた響は、慌ててメフィストに近付くと、

 

「待って、メフィスト・・・王!私達はこのまま加音町に戻るわ!!」

 

「な、何ぃぃ!?お前達まで戻ると言うのか?いや、しかしそれでは・・・」

 

「私達、戻って加音町のクリスマスコンサートの続きをしなくちゃ・・・」

 

 響は、メフィストがメイジャーランドの王様だと思いだし、慌てて敬称を付ける。困惑するメフィストに、響はクリスマスコンサートの続きがあるからと告げるも、メフィストはそれでは気が収まらないから考え直すように頼む、アフロディテはメフィストの肩に手を乗せると、

 

「あなた、無理強いするのも悪いですよ!また彼女達の都合が良い日に招待すれば良いのでは?」

 

 アフロディテの言葉に、ウムと考え込み承諾するメフィスト、アコが二人に近付いて来ると、

 

「パパ、ママ、私・・・もうしばらく加音町で、お爺ちゃんとピーちゃんと暮らしたいんだけど・・・ダメかなぁ!?」

 

「な、何ぃぃぃ!?アコォォ、もうメイジャーランドに帰って来ても良いんじゃないか?なあ、アフロディテ!?」

 

 お前からもアコを引き留めろと、困惑した表情のメフィストが目で訴えると、アフロディテはクスリと笑い、

 

「そうね・・・でも、アコが望むようにしてあげましょう!!それが、今後のアコの為になると思います・・・お父様、アコをもうしばらくお願いします!!」

 

 アフロディテが父音吉に頭を下げると、音吉は髭を触りながら無言で何度も頷く、

 

「ウム・・・アコがそう言うなら・・・しょうがない、此処は私も加音町に!」

 

「あなたぁぁ!!!」

 

 キッとアフロディテに睨まれ、トホホ顔のメフィストが悄気返る。一同はそんなメフィストを見て微笑みを浮かべた・・・

 

 

 一同が支度を終え、メフィスト、アフロディテ達の下にやって来る・・・

 

「それじゃあ、私達帰り・・・あれ!?エレン、ハミィ、どうしたの?」

 

 メフィストは、アコに何時でも帰っておいでと今にも泣き出しそうな顔を浮かべ、三銃士は、プリキュアバンザイ!と大声で何度も叫び、エレンにやっかましいわと怒られる。その様子をハミィとソリー、ラリーが見つめ笑っていた。響は、何故エレンとハミィがこっちに来ないのか首を捻り問うと、エレンは少し真顔になってハミィと顔を見合わせると、

 

「私とハミィ、それにソリーとラリーは・・・メイジャーランドに残るわ!!」

 

「そんなぁぁ!?」

 

「エレン、ハミィ、急にどうしたの?」

 

「「・・・・・・」」

 

 突然のエレンの告白を受け、響と奏は呆然とし、なぎさ達一同が驚愕する。慌ててエレンに真意を聞く響に、エレンはハミィと顔を見合わせ意味深な表情を浮かべると、

 

「元々私達は、音符を探しに加音町に来たし・・・音符が全て伝説の楽譜に戻った今、私達の加音町での役目は終わったの・・・それに、私が加音町に行くと・・・」

 

 エレンが背後のバスドラ達三人を指さすと、三人はエレンが加音町に行くなら、自分達も行くと騒ぎ、メフィストを困らせていて、響と奏は苦笑する。

 

「寂しくなるね・・・」

 

「二度と会えない訳じゃないわ!私も、ハミィも、また必ず加音町に遊びに行くから!!みんなも今までありがとう!!特にせつなにはお世話になっちゃって・・・」

 

「ううん、二度と会えなくなる訳じゃないし、サヨナラは言わないわよ・・・エレン!!」

 

 エレンとせつな、互いに笑みを浮かべながら握手を交わす・・・せつなの言葉にニッコリ微笑みながらエレンが頷くと、なぎさ、ほのか、ゆりを見つめ、

 

「なぎさ、ほのか、ゆり、受験頑張ってね!!」

 

 エレンの言葉で思い出したのか、なぎさは頭を抱え悶え、ほのかに頭を撫でられる。ゆりはそんななぎさを見て、呆れたように溜息を付いた。エレンはクスリと笑うと、響達を見つめ、

 

「響、奏、アコ、他のフェアリートーン達や、ピーちゃんをヨロシクね!!みんなも気をつけて帰ってね!!!」

 

「うん、エレンもハミィも元気でね!」

 

 互いに少し涙ぐみながら、別れの挨拶を交わしたエレンと響、奏、ハミィはピーちゃんに近付くと、

 

「ピーちゃん、ハミィの分までみんなに可愛がられるニャ!」

 

「大丈夫よ、ピーちゃんは可愛いもの!」

 

 ハミィの言葉にアコは微笑みながらピーちゃんの頭を撫でると、ピーちゃんは微笑みながらピィピィ嬉しそうに鳴く、ハミィも嬉しそうに何度も頷いた・・・

 

「それじゃあ、私達戻ります!エレン、ハミィ・・・また会いましょう!!みなさんもお元気で!!」

 

「元気でねぇ!!また会いましょう!!!」

 

 一同がエレンとハミィに駆け寄り、抱き合う者、握手をする者、それぞれが大切な仲間との別れを惜しんだ・・・

 

 音吉が作り出した錠盤の橋を通り、少女達は自分達の住む世界へと帰っていた・・・

 

 その姿を、メイジャーランドの人々は、手を振りながら見送った・・・

 

 その背に向けて、エレンとハミィが歌う・・・

 

 みんなに幸せが訪れるように・・・

 

 

               第六章:新たなる闇・その名はノイズ

                      完

 


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