プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第三十七話:ノイズ・・・復活!!

1、不幸のメロディ

 

 遂にクリスマスイブを向かえ、加音町はこの日、調べの館に於いてクリスマスコンサートを行う・・・

 

 ミニスカサンタの格好をした響、奏、エレン、アコは、クリスマスコンサートのスタッフとして参加していた・・・

 

 会場に、夫の団と共に現われた、赤いドレス姿の響の母まりあは、娘響の浮かない顔を見て表情を曇らせ、響の側に近付くと、

 

「響、浮かない顔をしてどうかしたの?」

 

「ママ・・・ううん、何でもないよ!」

 

「そう、なら良いけど・・・じゃあ、打ち合わせがあるから、私達は行くわね!奏ちゃん達も頑張ってね!!」

 

 まりあは、元気のない響を気に止め声を掛けるも、響は作り笑いを浮かべ、何でもないと答える。まりあにも響が無理をしている事は分かったが、無理に聞き出す事はせず、奏、エレン、アコに微笑み掛けると、夫の団と共に調べの館の中へと入って行った。

 

 受付で参加する響、奏、エレン、アコ、一同は、来場したお客さんに、奏の店Lucky Spoonのカップケーキを手渡しながらも、何時ハウリング、そしてノイズが現われるのか、四人は気が気では無かった。

 

 今の自分達は、プリキュアになる事は出来ないのだから・・・

 

 だが、そんな心境の四人の心を癒すように、加音町に駆けつけてくれた仲間達が居た・・・

 

「響、奏、エレン、アコちゃん、メリークリスマス!どう、まだ変わった事は無い?今、なぎささん、ほのかさん、ひかりとも行き会ったんだけど、三人は時計台を調べてから来るって言ってたよ!」

 

「咲さん、舞さん、満さん、薫さん、ええ、今はまだ大丈夫です!なぎささん達、もう着いてたんですね」

 

 色違いのダウンジャケットを着た咲達四人が響達に声を掛ける。先ず咲達、なぎさ達が駆けつけてくれた。顔を見合わせホッとする響達だった。

 

「開演は何時からなの?」

 

「18時半です!」

 

「まだ少し時間があるわね・・・どうする、咲?」

 

 満の問い掛けに奏が18時半だと答えると、時計台の時計を見る薫、まだ17時半、少し時間があるがどうするか咲や舞と相談すると、

 

「う~ん、みんな来るまで待った方が良いよね・・・って、のぞみ達も来たよ!!」

 

 咲がのぞみ達に気付き手を振ると、大声で咲や響達の名を呼びながら、手を振ってのぞみが駆け出し、見事に転んだ・・・

 

「のぞみ!いきなり走り出すから・・・」

 

「ウゥゥ、痛いぃぃ・・・」

 

 りんが呆れ顔で窘め、のぞみは変顔を浮かべながらも照れ笑いを浮かべた。咲が近寄り手を差し出すと、のぞみも嬉しそうに咲の手を握り立ち上がる。

 

「のぞみらしいね!アハハハ」

 

「エへへへ、咲ちゃん達、響ちゃん達、メリークリスマス!!」

 

「みんな、メリークリスマス!今の所、まだノイズ達に動きはありません!」

 

 響の言葉に真顔になるのぞみ達とダークプリキュア5、一体何処から現われるか、一同は辺りを見回すも、加音町には楽しい音楽が響き渡っていた。

 

 少し経ってからラブ達とつぼみ達が、途中で合流したなぎさ達三人と共に現われた。

 

「みんな、メリークリスマス!こうして見る限り・・・これからあいつらが現われるとは、とても思えないよねぇ・・・」

 

「ええ、でも必ず来ると思う!!」

 

 なぎさの言葉にほのかは苦笑を浮かべるも、必ず来ると表情を引き締めた。

 

「じゃあ、中に入るグループと、外で待機するグループに別れましょう!」

 

「そうだね・・・どう分ける?」

 

 ゆりの提案になぎさも同意し、どう分けるか一同で話し合った結果、

 

 外で待機するのは・・・

 

 なぎさ、ほのか、ひかり、のぞみ、りん、うらら、こまち、かれん、くるみ、ラブ、美希、祈里、せつな・・・

 

 調べの館で待機するのは・・・

 

 咲、舞、満、薫、ダークプリキュア5、つぼみ、えりか、いつき、ゆり・・・

 

「じゃあ、お互い何かあったら連絡しあいましょう!」

 

「分かった!響達はどうする?」

 

 ゆりの言葉に頷く一同、なぎさは響達を見ると、どっちの組みに入るか聞くと、響達四人は顔を見合わせ合うと、再びなぎさを見つめ、

 

「私達は、今回のコンサートの係何で、時間が来たら会場内に入ります」

 

「分かった!じゃあ、みんなまた後で!!」

 

 一同が行動を開始した・・・

 

 

 中に入った室内組、既に調べの館には沢山の人達が集まっていた。皆、今から始まるクリスマスコンサートを楽しみにしていて、あるものはパンフレットを熱心に見、ある者は、響達に貰ったカップケーキを食べながら笑顔を浮かべていた。

 

「みんな幸せそうですねぇ・・・」

 

「ええ、だからこそみんなの笑顔を守らなければ・・・みんな、周りに気を配っていて!何処から現われるか分からないから」

 

 つぼみは、人々の笑顔を見て思わず言葉を漏らすと、ゆりも頷き一同に注意するよう指示する。

 

「現われるとしたら・・・私達の居る後ろ」

 

「後は、舞台のステージって所かしら?」

 

「この二カ所は特に注意した方が良いわね!」

 

 満と薫、そして、ダークアクアの言葉に、その可能性は大いにあると同意するゆり、えりかは、響に貰ったカップケーキを階段に座って食べ始めると、つぼみは大慌てでえりかを注意し始める。

 

「え、えりか!私達、遊びに来たんじゃないんですよ!」

 

「分かってるってば!まだ時間あるし、戦の前に腹ごしらえってね!!」

 

 つぼみといつきは、トホホ顔でえりかを見て溜息を付くも、

 

「それもそうだね・・・私も食べておこうっと!!」

 

 咲もお腹が減っていたのか、えりかの脇に座りカップケーキを食べ始める。想像以上の美味しさだったようで、えりかと咲は互いを見つめ、美味しいねぇと目を輝かせた。

 

 緊張感が無い二人を見たダークドリームは、少々呆れたように、

 

「随分緊張感無いのね?」

 

「ゴ、ゴメンなさいね!」

 

 ダークドリームの言葉に、これまたトホホ顔の舞が、咲の代わりに謝り、思わず一同から笑い声が漏れた。

 

 開演まで、後10分を切ろうとしていた・・・

 

 

 調べの館、外では・・・

 

「じゃあ、私達そろそろ中に入ります!」

 

「ええ、何かあったら知らせてね!」

 

「分かりました!」

 

 中に入ると伝える響に、ほのかは頷き、何かあったら知らせるように言うと、奏がほのかの言葉に頷いた。なぎさは何かに気付いたように、慌てて四人を呼び止めると、

 

「あっ、待って!はい、差し入れ!!」

 

「うわぁ!チョコレート・・・ありがとうございます!!」

 

 喜ぶ響とそれを見て微笑む奏、エレン、アコ、こまちもゴソゴソカバンを漁ると、

 

「私も羊羹の差し入れを・・・あらぁ!?切ってくるのを忘れたようだわ・・・」

 

「こまち・・・」

 

 こんな時にも羊羹を持っているこまちに、かれんはトホホ顔でハァと溜息を付く。響、奏、エレン、アコは、一同に手を振り、調べの館へと入って行った。

 

 なぎさは一同にも差し入れを渡すと、貰った一同は差し入れの文字を見て驚く、

 

「ブ、ブラックサンダーって・・・こんなチョコレートあったんですか?」

 

「うん、私も偶々コンビニで見付けてさぁ・・・試しに買ってみたら美味しくて!今思い出したんで、中のみんなに渡し忘れちゃったぁ・・・後で渡せば良いよね!みんなも食べてみて!!」

 

 のぞみが驚き思わず声に出すと、なぎさもチョコを食べながら、一同に勧める。くるみは目を輝かせながら美味しそうにチョコを食べ、ほのかも苦笑しながら食べ始める。

 

「そう言えばさぁ、私達もよく見掛けるよねぇ!何とかピーチとか、ベリーって」

 

「そりゃあ、あんた達は果物の名前だもん、あるでしょう!私達は、ドリーム、ルージュ、アクア・・・ミントとレモネードはありそうだけどね」

 

 ラブの言葉に、りんが突っ込みを入れ、自分達はそういう物は無いと思ったのも束の間、ミントとレモネードならあるかもと言うと、うららは凄く喜び、

 

「本当ですか?今度捜してみようっと!」

 

「他にも、ムーンライトってクッキーが売ってたよ!後でゆりにも教えてあげようっと」

 

「な、なぎさ・・・」

 

「オイオイ!みんな、緊張感無さ過ぎ!!」

 

 ラブ、りん、うらら、なぎさの言葉に、苦笑を浮かべるほのかとひかり、美希の溜息混じりの突っ込みに、一同から笑い声が溢れた・・・

 

 開演まで、後3分を切った・・・

 

 

 そして、遂にクリスマスコンサートが開幕する・・・

 

 壇上のカーテンが開くと、壇上には北条夫妻が、王子達、選抜された音楽隊がお辞儀をする。鳴り響く拍手が会場を包み込むと、響も壇上に居る両親に声を掛ける。

 

「パパ、ママ、みんなを最高の音楽で楽しませて上げてぇぇ!!」

 

 響の声が聞こえたかのように、北条夫妻はニッコリ微笑んだ。

 

「これより、加音町クリスマスコンサートを開幕します!!」

 

 司会者の言葉を受け着席する音楽隊が、楽器を手に持ったその時、会場の電気が一斉に消え、会場内は闇に包まれた・・・

 

 会場中に響き渡るハウリング音が、ざわめく人々の声が、悲鳴が、辺りに響き渡る・・・

 

 会場内に居た少女達は、慌てて辺りを見回したその時、再び会場に明かりが点る。少女達の目は、壇上に釘付けになった。そこには紫色の魔獣ハウリングが、伝説の楽譜を手に持ち佇んで居たのだから・・・

 

 会場に居た人々は、何かの力を受け皆倒れ込み、意識を失っていた。響達四人も意識を失いそうになるも、クレッシェンドトーンの力の加護を受け、何とか意識を保っていた。

 

「さあ、これより不幸のメロディの開演だ!!」

 

「そんな事はさせないわ!みんな、行くわよ!!」

 

 不幸中の幸いで、周りの人々は気を失っており、ゆりの指示の下、一同が変身アイテムを手に持ち身構えた。

 

「「「「デュアル・スピリチュアルパワー!!」」」」

 

「「「「プリキュア!オープンマイハート!!」」」」

 

「輝く金の花!キュアブルーム!!」

 

「きらめく銀の翼!キュアイーグレット!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「天空に満ちる月!キュアブライト!!」

 

「大地に薫る風!キュアウィンディ!!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「大地に咲く一輪の花・キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花・キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花・キュアサンシャイン!」

 

「月光に冴える一輪の花・キュアム~~ンライト!!」

 

「「「「ハートキャッチプリキュア!!」」」」

 

「闇に生まれ、光の暖かさに触れ生まれ変わった戦士!」

 

「「「「「ダークプリキュア5!!」」」」」

 

 13人の少女達が、変身を終えポーズを決めた!!

 

 

「響、奏、エレン、アコ、あなた達は、外に居るなぎさ達を呼びに行って頂戴!」

 

「分かりました!!行こう、奏、エレン、アコ、ハミィ!!」

 

 ムーンライトの指示を受け、外に居るなぎさ達を呼びに向かう響達、四人が外へと飛び出そうとするも、

 

「キャァ・・・み、みんなぁ、どうしたの?」

 

 響達の行く手を遮るように、加音町の人々が道を塞ぎ、響達四人に群がり動きを封じる。

 

「み、みんな、止めて!和音、どうしたの?」

 

「聖歌先輩、どうしたんですか?」

 

「これは・・・まるであの時の響や奏のようだわ!」

 

「ええ・・・ちょっと、奏太!しっかりしなさいよ!!」

 

 響、奏、エレン、アコは動きを封じられ外に出る事が出来なかった。それに気付いたムーンライトの指示の下、一同がハウリングに攻撃をしようとしたその時、響達同様加音町の人々がプリキュア達に群がってきた。

 

「これは・・・や、止めなさい!ハウリング、みんなに何をしたの?」

 

 ムーンライトは、忌々しげにハウリングを睨み叫ぶも、ハウリングは口元に笑みを浮かべながら、

 

「な~に、此奴らはこれから始まるショーの重要な奴らだ・・・手荒な真似はせん!だが、お前達には、これから始まる素晴らしいショーが終わるまで、おとなしくしていて貰おうか!!貴様ら、しっかり抑えておけよ!!」

 

 ハウリングの命を受け、プリキュア達に群がり、身体を押さえに掛かる加音町の市民達、振り解くのは簡単だが、何の罪もない人々を振り解く事に、プリキュア達は躊躇する。ハウリングはそんな一同を嘲笑い、

 

「クククク、此処で俺様を待ち伏せしていた事は褒めてやろう・・・中々鋭い勘をしている奴が居るようだ!だが・・・お前達はまだ一つ忘れている!!」

 

「何の事?」

 

「私達が何を忘れているって言うの?」

 

 ブライト、ウィンディは、ハウリングが何を言っているのか理解出来ず問い返すと、ハウリングは伝説の楽譜を指差し、エレンの方を向くと、

 

「セイレーン!何故お前がマイナーランドの歌姫に選ばれたか・・・分かっているだろうな?」

 

「メイジャーランドの歌姫だった私に、不幸のメロディを歌わせるのが目的だったんでしょう!その為に私を・・・まさか!?」

 

 エレンの表情が一層険しさを増した。

 

(何故気付かなかったんだろう・・・ハウリングは、不幸のメロディを歌わなかったんじゃない・・・歌えなかったんだ!!)

 

「みんな、ハウリングの目的は、この会場の人々に・・・不幸のメロディを歌わせるのが目的なのよ!何故なら、ハウリングは自らでは不幸のメロディは歌えない!!奴は音楽を忌み嫌う者、だから奴らは、私やメフィスト様、三銃士達、メイジャーランドの人間を配下に加えようとしていたんだわ!!」

 

「本当なの、エレン!?」

 

 響が、そして他の一同が、エレンの言葉に驚いた・・・

 

「だったら、今こそあなたの目的を阻むチャンス!みんな、行くわよ!!悪いけれど・・・少し手荒な真似をするわよ・・・」

 

 力を込めたムーンライト、側に居た人々が飛ばされる。他の一同も謝りながらも力を込めて人々から解放されると、ハウリング目掛け攻撃を開始する。真っ先に突撃するムーンライトが肉弾戦を仕掛け、宙に舞ったブルーム、イーグレット、ブライト、ウィンディが、頭上からムーンライトの攻撃を援護する。だが、ハウリングにダメージを与えられない。

 

「効かんなぁ・・・食らえ、ゼタ・サンダー!!」

 

 ハウリングの周りに紫色の雷が降り注ぐと、駆けつけたサンシャインが、

 

「やらせないよ!サンフラワー・プロテクション!!」

 

 ドーム型のバリアーを、自身の周囲に発生させムーンライトを援護する。直ぐに罅が入り、バリアーは砕け散るも、サンシャインとムーンライトはその場を離れて躱す。ジャンプしたダークプリキュア5が、必殺技の連係攻撃でハウリングに攻撃を開始する。

 

「ダークアロー!」

 

「ダークネス・シュート!」

 

「ダークネス・プラズマ!」

 

「ダークネス・ウィップ!」

 

 ダークアクアの黒き矢が、ダークルージュの黒き炎のボールが、ダークミントから放たれた黒き閃光が、ダークレモネードの黒き鞭が、ハウリング目掛け突き進む、だがハウリングは、口からゼタ・ファイヤーを放ち一蹴する。

 

「流石にやる・・・でも・・・プリキュア!ダークネス・スター!!」

 

 ダークドリームが、黒き流星となってハウリングに突進するも、ハウリングは片手で受け止め、ダークドリームの顔面に衝撃波を放とうとするのを、ブロッサムとマリンがダブルインパクトで辛くも方向を変え、ダークドリームを援護した。

 

「全く、チョロチョロとうるさい奴らだ・・・だが、貴様らの負けだ!さあ、歌え!!不幸のメロディを!!!」

 

 ハウリングは両腕を高々と上げると、無表情の人々は一斉に口を開け、

 

「アァ、アァアァァァ・・・・・・」

 

 ハウリングの命を受け、会場内に居た人々が一斉に歌い始める・・・

 

 響の両親が、奏の家族が、王子が、和音が、聖歌が、加音町の人々が・・・

 

「こ、これは何事じゃ!?」

 

「お爺ちゃん、ハウリングが・・・」

 

 騒ぎを聞き付け、音吉が現われた。アコは、音吉にハウリングが人々に不幸のメロディを歌わせている事を語ると、険しい表情を浮かべた音吉は、

 

「おのれぇ、お前達の好きにはさせんぞぉぉ!!」

 

 音吉は急ぎオルガンに座ると、オルガンを奏でようとするが、歌いながらも人々が音吉を襲い、オルガンを弾けないように邪魔をする。群がる人々の群れの重さに耐えかね、オルガンのパイプがミシミシ軋み始める。

 

「残念だったなぁ、音吉!?そして、プリキュア共!!」

 

「おのれぇぇ!!」

 

「クッ、防げなかった・・・」

 

 音吉とムーンライトは、力及ばず、不幸のメロディが歌われる事を、阻止できなかった事に悔しさを滲ませる。ハウリングの嘲笑が、不幸のメロディに混じり会場に響き渡ると、

 

「パパぁぁ!ママぁぁ!み、みんな、止めてぇぇぇ!!」

 

 響の絶叫が、会場内に空しく響き渡った・・・

 

 調べの館の天井が吹き飛び、不気味なハーモニーが、不幸のエネルギーが、調べの館から加音町に轟いた・・・

 

 

「な、何、今の音!?それに、この歌は?」

 

「まさか・・・これが不幸のメロディ?」

 

「なぎさ、この街全体に邪悪な気配が漂ってるメポ」

 

「ほのか、早く止めないと大変な事になるミポ」

 

 なぎさが、ほのかが、メップル、ミップルの忠告を聞き険しい表情を浮かべる。不気味な歌声が響き渡る調べの館を振り返り、呆然とする一同・・・

 

 その時、バサバサ翼を羽ばたかせ、ノイズが一同の前に姿を現わす。

 

 身構える一同を余所に、上空高く飛んでいくノイズは、

 

「ギャァァァァス!!」

 

 勝ち誇ったように雄叫びを上げ、辺りにノイズの声が響き渡る・・・

 

 不幸のエネルギーを歌われた音符達は、まるで吸い取られていくかのように、ノイズに吸収されていくと、ノイズの容姿が変わって行った・・・

 

 防げなかった・・・

 

 なぎさが、ほのかが、一同が拳を握りしめる。皆表情は険しかった・・・

 

 だが、彼女達は諦めない・・・

 

「みんな、変身よ!!」

 

 なぎさの絶叫に一同が頷くと、

 

「「デュアルオーロラウェーブ!!」」

 

「ルミナス、シャイニングストリーム!!」

 

「「「「「プリキュア!メタモルフォーゼ!!」」」」」

 

「スカイローズ!トランスレイト!!」

 

「「「「チェインジ・プリキュア!ビートアップ!!」」」」

 

「光の使者・キュアブラック!」

 

「光の使者・キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!!!」

 

「輝く生命、シャイニールミナス!光の心と光の意志、全てをひとつにするために!」

 

「大いなる、希望の力!キュアドリーム!!」

 

「情熱の、赤い炎!キュアルージュ!!」

 

「弾けるレモンの香り!キュアレモネード!!」

 

「安らぎの、緑の大地!キュアミント!!」

 

「知性の青き泉!キュアアクア!!」

 

「「「「「希望の力と未来の光、華麗に羽ばたく5つの心!Yes! プリキュア5!!」」」」」

 

「青いバラは秘密のしるし!ミルキィローズ!!」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ、キュアベリー!!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」

 

「真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!!」

 

「「「「レッツ!プリキュア!!」」」」

 

 変身を終え身構える少女達の前に、黒き翼竜とも言うべき、ノイズの真の姿が現われた・・・

 

 

2、スイートプリキュア♪

 

「良くやった、ハウリング!我、再び力を取り戻したり!!私を不快にさせる忌々しい音楽よ!鼓動よ!全て・・・全て、消えて無くなれぇぇぇ!!!」

 

 ノイズの身体から凄まじい負のエネルギーが照射された・・・

 

 それは、世界を駆け巡った・・・

 

 世界中の人々は、何が起こったのか分からぬ内に、メイジャーランドの住人のように石化した・・・

 

 プリキュア達の肉親も、友人達も、嘗て闇との戦いで力を貸したブンビー、サラマンダー、オリヴィエも例外なく・・・

 

 異変を察知したコッペによって、薫子とコッペは難を逃れていた・・・

 

 そして・・・

 

「これは一体!?世界中の人々が石になるとは?今の僕は、ここで見て居る事しか出来ない・・・また、君達に縋るしか無い!伝説の戦士達よ!!」

 

 鏡に覆われた部屋で、世界の様子を見て居た地球の神は、悲しげな瞳で、鏡に映るプリキュア達に願いを託した。

 

 

 とある無人島・・・

 

 亀の甲羅を背負った妖精は、三種の神器の一つ、水晶の鏡の前で表情を曇らせていた。

 

「水晶の鏡がまた曇った・・・やれやれ、また厄がやって来たのかい?この時代のプリキュアは、本当によく闇を引き寄せるものだ・・・」

 

 憎まれ口を叩きながらも、妖精は心の中では、再び厄に立ち向かうであろう、この時代のプリキュア達を信じて居た・・・

 

 

 ノイズ、完全復活から約5分・・・

 

 世界中の人々は一部を除き石化した・・・

 

 

「そんな・・・パパ、ママ」

 

「お父さん、お母さん、奏太・・・」

 

 響が、奏が、変わり果てた家族を見て涙を流す。

 

「フハハハハハ!いい静けさだ・・・さあ、今度こそメイジャーランドから全ての音を奪ってくれる!!・・・何!?」

 

 高笑いを浮かべるノイズに対し、ブラックとホワイトの二人から、マーブルスクリューマックスが飛ぶ、ノイズはその威力に後ろに押されるも、何とか攻撃を耐え抜き、忌々しげにブラックとホワイトを睨み付けるも、その側に仲間達が合流し、

 

「そんな事、私達プリキュアが絶対にさせない!!」

 

 ブラック達、ドリーム達、ピーチ達が、ノイズに対し身構えた。

 

「全く目障りな奴らめ・・・良いだろう!さあ、決着を付けてやる!!行くぞ、プリキュア共ぉぉぉぉ!!!」

 

 ノイズもプリキュアとの戦いを優先すべく、一同を威嚇するように咆哮した

 

 

 

 一方調べの館では、勝ち誇ったハウリングが雄叫びを上げる。険しい表情を浮かべたムーンライトが辺りを見渡すと、

 

「此処では石にされた人々が・・・みんな、外に出てなぎさ達と合流するわよ!」

 

 ムーンライトの指示の下、響達を先頭に外へと飛び出し、殿(しんがり)をムーンライトが勤め、ハウリングを石にされた人々に接触させないように外へと導いた。

 

「お、おのれ、ノイズ!だが、オルガンがある限り・・・お前の好きにはさせんぞぉぉ!!」

 

 音吉は急ぎオルガンの修復に取りかかった・・・

 

 

「ブラック、ホワイト、みんな、ゴメン・・・防げなかった」

 

 調べの館から駆け出してきた室内組、悲しみの表情を浮かべながら謝る響に、ホワイトもブラックも首を振り、

 

「今はこの状況をどうにかする事を考えましょう!」

 

「今、私達もノイズと戦かっていた所だよ・・・見て、あれがノイズの真の姿見たい!!」

 

 ホワイト、ブラックの言葉を受け、室内組は目の前に聳える巨大な龍、ノイズを見て驚愕する。前にはノイズ、そして、後方からムーンライトと戦いながら現われるハウリング、プリキュア達は、強大な敵二人に挟み撃ちにされた格好になる。

 

「響、奏、エレン、アコ、プリキュアになれないあなた達は、巻き込まれたら危ない・・・少し離れていて!!」

 

 ローズの言葉を受け、戸惑いながらもその場から離れようとする四人に、

 

「おっと、お前達にはこれを返さなければな・・・受け取れ、伝説の楽譜だ!ネガトーン!!」

 

 ハウリングの咆哮を浴びた伝説の楽譜は、ネガトーンとなって響達の前に立ち塞がった。

 

「響、奏、エレン、アコちゃん・・・クッ!」

 

 ダッシュで援護に向かおうとするブラックを、ノイズの羽ばたきが凄まじい強風を巻き起こし阻止する。足を踏ん張りその攻撃を耐えたブラック、ノイズとハウリングに邪魔をされ、響達を助けに行けない事に一同から焦りが生じる。ピーチは、険しい表情でパッションを見つめると、

 

「パッション!」

 

「ええ!」

 

 ピーチの言葉に素早く反応したパッション、二人の間に言葉は不要だった・・・

 

 だが、瞬間移動で援護に向かおうとするパッションに気付いたノイズは、させんとばかりに衝撃波をパッションに放ち吹き飛ばす。

 

「キャアァァ!」

 

 吹き飛ばされるパッションを、アクアとミントが支えるも、三人が吹き飛ばされる。

 

「コノォォォ!!」

 

 ピーチが突っ込み、ノイズの顔面に一撃入れるも、うるさいとばかりに弾き飛ばされたピーチを、ベリーとパインが盾になりダメージを軽減させる。

 

 ノイズ、ハウリングの前に、徐々に追い込まれていくプリキュア達は、響達の加勢に向かえなかった・・・

 

 

 プリキュアになれない響達は、ネガトーンの攻撃の前に為す術は無かった・・・

 

 幸せを奏でる筈の伝説の楽譜が、ネガトーンとなり暴れている姿に、響の目から涙が零れた・・・

 

「ゴメン・・・ゴメンね、伝説の楽譜!私達に力が足りなかったから・・・あなたをそんな姿に・・・」

 

 立ち上がった響は、一人ネガトーンへと、一歩、また一歩近づいて行った。その姿に、思わずネガトーンはたじろぎ攻撃を躊躇する。響に刺激されたのか、奏が、エレンが、アコが、みな響と同じようにネガトーンに向かい歩み出す。

 

「何やってるの!?あなた達、早く逃げなさい!!」

 

 ローズの叱咤が飛ぶも、四人は歩みを止めない・・・

 

 四人が涙を流しながら謝る姿を見たネガトーンは、戦意を失い棒立ちする。

 

「何をやっている!?まあいい、貴様がやらないのなら・・・ゼタ・ファイヤー!!」

 

 ハウリングから放たれた猛烈な炎が、響達四人を襲うも、反応が遅れたプリキュア達は、彼女達を救助に向かえなかった。

 

「逃げてぇぇ!!」

 

 ドリームの空しい叫び声が響き渡ったその時・・・

 

 

 響、奏、エレン、アコは、呆然としてネガトーンを見た・・・

 

 ネガトーンは、まるで響達を庇うように、ハウリングからの攻撃をその身に受けたのだから・・・

 

「私達を・・・助けてくれたの?」

 

「だのに、私達は・・・」

 

「私達、みんなに守られる事しか出来ないの?」

 

 奏が、エレンが、アコが、肩を振るわせ涙を流す。悔しい、このまま何も出来ない自分が悔しい、四人が拳を握ったその時、彼女達の鼓動が激しさを増した。響は、キッと顔を見上げると、

 

「このままじゃ、終われない!私達の鼓動が刻まれる限り、終わってない!!だから私達は・・・」

 

「「「「絶対に、諦めない!!」」」」

 

 響の言葉に同意するように、四人の言葉がハモったその時、ネガトーンと化した伝説の楽譜がパラパラページを捲っていくと、空白のページから新たなるト音記号が浮かび上がった。それに呼応するように、響、奏、エレン、アコの胸に、ハートのト音記号が浮かび上がり、再びキュアモジューレは輝きを取り戻した。

 

 響が、奏が、エレンが、アコが、そしてプリキュア達の表情が輝く、

 

「な、何故だ!?全ての音符はこの私が取り込んだ!世界から音は消えた!!何故だ!?」

 

「ノイズ、あなたも私も、大切な事を忘れていたのです。音楽は、今あるものが全てではありません!新しく生み出すことが・・・出来るのです!!ハートのト音記号は・・・音楽の始まり!今、彼女達は新たなメロディを奏で始めたのです!!」

 

「な、何だとぉぉ!?」

 

 困惑するノイズに対し、ハミィの持っていたヒーリングチェストから、姿を現わしたクレッシェンドトーンがノイズに話しかける。クレッシェンドトーンの言葉を聞いたノイズは、信じられないといった表情を浮かべた・・・

 

 響が、奏が、エレンが、アコが、四人が顔を見合わせ微笑み合うと、それを見ていた伝説の楽譜が、ハウリングの力を更に受け凶暴化を始める。四人は悲しげな表情を浮かべると、

 

「あなたの苦しみ・・・私達が今取り除いてあげるからね・・・」

 

 響の言葉に頷く三人、キュアモジューレを手に持った四人が叫ぶ、

 

「「「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」」」

 

 四人の身体を、リボンのような光が全身を覆っていくように衣装を身に着けていくと、四人をプリキュアと変えていった。

 

「爪弾くは、荒ぶる調べ!キュアメロディ!!」

 

「爪弾くは、たおやかな調べ!キュアリズム!!」

 

「爪弾くは、魂の調べ!キュアビート!!」

 

「爪弾くは、女神の調べ!キュアミューズ!!」

 

「「「「届け!四人の組曲!!スイートプリキュア!!!」」」」

 

 四人のプリキュアがポーズを決めた!

 

 四人は再び暴れ出したネガトーンを見ると、

 

「「「「出でよ、全ての音の源よ!!」」」」

 

 クレッシェンドトーンを召喚した四人、

 

「「「「届けましょう、希望のシンフォニー!」」」」

 

 両腕をクロスしたまま、クレッシェンドトーンの金色の光の炎と一体化した四人は、

 

「「「「プリキュア!スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンド!!」」」」

 

「「「「フィナーレ!!!」」」」

 

 四人の合体技を受け、伝説の楽譜は元の姿を取り戻し、空から降ってきた伝説の楽譜をハミィが受け取り、妖精達から歓声が沸き上がった・・・

 

 遂にメロディ達四人も、プリキュアの力を取り戻し、戦いに参戦した!

 

              第三十七話:ノイズ・・・復活!!

                    完

 


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