プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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黒川エレンが仲間達と親睦を深めてから三ヶ月・・・
響達三人と、マイナーランドの音符争奪戦も、いよいよ佳境を迎えようとしていた!
そして、遂にマイナーランドの王、メフィスト自ら加音町に現われて・・・

第六章スタートです!


第六章:新たなる闇・その名はノイズ!
第三十一話:新たなる仲間!キュアミューズ!!


            第三十一話:新たなる仲間!キュアミューズ!!

 

1、メフィストを救え!

 

 キュアビート事、黒川エレンが、プリキュアオールスターズの面々と親睦を深めてから、早三ヶ月になろうとしていた・・・        

 

 その間にも、響、奏、エレンは、メフィスト率いるマイナーランドとの音符争奪戦を繰り広げ続けた・・・

 

 10月も終わりを迎えようとしていたこの日、キュアメロディ、キュアリズム、そして、キュアビートの三人は、自らの手で音符を全て集めるべく現われたマイナーランドの王、メフィストが呼び出した三つ首のネガトーンと死闘を繰り広げていた。

 

 一同が持っていた音符は全て奪い取られ、メフィストによって奪われた音符はマイナーランドへと送られてしまい、三人は絶対的な危機に陥るのだった・・・

 

 響達の誘いを受け、加音町に遊びに来ていた花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつきの三人もプリキュアに変身し、苦戦する三人の援護に向かった。

 

 加勢に来てくれたブロッサム達のお陰で、何とかネガトーンを倒したものの、自らプリキュアと雌雄を決するべく、メフィストは六人のプリキュアに攻撃を始める・・・

 

 

「おのれ、プリキュア共めぇ・・・」

 

 六人のプリキュアと死闘を続けるメフィストだったが、成長した彼女達は強さを増しており、メフィストは徐々に押され始め、怒りの咆哮を上げた。メフィストの咆哮に応えるかのように、邪悪なオーラがメフィストを包み込むと、メフィストは見る見る巨大化し、六人のプリキュアと再び死闘を繰り広げる。

 

 パワーを増したメフィストの前に、何度も攻撃を受け弾き飛ばされるプリキュア達、その時、空に鍵盤の回廊が出現したかと思うと、メイジャーランドの高貴なる女王、アフロディテが一同の目の前に降臨する。

 

「アフロディテ様!?」

 

「どうして此処に?」

 

「メフィストとは、私も因縁有る間柄、このままあなた方に任せたままでは居られません・・・メフィスト、いい加減に目を覚ましなさい!!」

 

 ビート、メロディの問いに、アフロディテが答えると、毅然とした表情を浮かべメフィストを睨み付けた。メフィストはアフロディテを見て鼻で笑い、

 

「フン、態々自らお出ましとは・・・丁度良い!アフロディテよ、お前もプリキュア同様に始末してくれる!!」

 

「メフィスト・・・あの時のようには、もう戻れないのですね・・・」

 

 メフィストの言葉に、悲しそうな表情になるアフロディテだったが、直ぐに毅然な態度で再びメフィストを睨み付けた。

 

 

「ミューズ・・・このままでいいドド?今こそプリキュア達に全てを語り、共に協力する時ドド」

 

「・・・・・」

 

 その戦いを、民家の屋根の上から、複雑な胸中で見守るのは覆面の戦士、キュアミューズだった・・・

 

 パートナー、ドドリーに助言されるも、ミューズの頭は混乱していた・・・

 

 私はどうすれば良いのか?・・・

 

 ミューズは戸惑い続ける・・・

 

 

「ゆりさんが居れば、ハートキャッチオーケストラで、髭オヤジ何てちょちょいのちょいだったのにぃぃ!」

 

「仕方ないです・・・ゆりさんは今、大事な時期何ですから・・・」

 

「そうだよ、マリン!それに、ゆりさんやなぎささん、ほのかさんは、私達にプリキュアの活動を託してくれてるんだし、ゆりさんの分まで、私達がメロディ達の力になろう!!」

 

 変顔したマリンが思わず愚痴を零すも、ブロッサム、サンシャインに窘められ、思わずマリンは口を尖らし、ブロッサム、サンシャイン、メロディ、リズム、ビートは苦笑を浮かべる。

 

 ブロッサム達の中心的存在の月影ゆりは、大学受験に向けて美墨なぎさ、雪城ほのかと共に、大事なこの時期を過ごしていた。

 

 バロムとの戦い後は、後輩達にプリキュアとしての活動を託し、なぎさ、ほのか、ゆりは、なるべくプリキュアになる事を控えていた。

 

 もう、自分達の力が無くても、後輩達ならプリキュアとして安心して任せられると彼女達は考えて居た。だが、彼女達も無責任に戦いを放棄した訳では無く、もしもの時は彼女達に加勢する覚悟は持ち続けていた。

 

 響達とマイナーランドとの戦いも、佳境に入った事を知ったのぞみ達一同は、彼女達を気に掛け、順番に時折加音町を訪れていた。

 

 加音町で、明日ハロウィンパーティーが開かれると聞き、今回響達に誘われたつぼみ、えりか、いつきが一同を代表して様子を見に来たこの日、メフィストとの戦いに遭遇していた・・・

 

 

「まっ、いっかぁ!でっかくなったお陰で、的が大きくなって戦いやすいや・・・みんな、決着付けるよ!」

 

 巨大化したマイナーランドの王、メフィストを見て、デューンとの戦いを思い出したのか、手間が省けたと拳を叩き、気合いを入れるマリンが一同に声を掛けると、一同が頷き返す。アフロディテも頷くものの、

 

「プリキュアの皆さん、メフィストを・・・倒して下さい!!」

 

 何かを決意したように、プリキュア達にメフィストを倒してくれと頼むアフロディテ、その瞳の中に、悲しげな光が宿るのにビートが気付く、

 

「アフロディテ様・・・」

 

「うん、ここでケリを付けなきゃ・・・メフィスト、覚悟!!」

 

「黙れ、小娘共!何人居ようが・・・返り討ちにしてくれる!!」

 

 メロディの言葉を忌々しげに、メフィストが苛立ちを募らせるも、メロディ、リズム、ビートは頷き合うと、

 

「「「出でよ!全ての音の源よ!!」」」

 

 三人は、ヒーリングチェストからクレッシェンドトーンを呼び出す。初めて見るブロッサム達は、三人が呼び出したクレッシェンドトーンに驚きつつも、

 

「ブロッサム、サンシャイン、先輩として負けられないよ!」

 

「はい!マリン、サンシャイン、行きますよぉ・・・」

 

 ブロッサムタクト、マリンタクト、シャイニータンバリンを取り出した三人が勝負に出る。

 

「「集まれ、二つの花の力よ!プリキュア!フローラルパワー・フォルテッシモ!!」」

 

 ブロッサムとマリンがピンクと青の光に包まれ上昇すると、それを合図にしたようにサンシャインが、シャイニータンバリンを構え、

 

「花よ!舞い踊れ!!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」

 

 キュアサンシャインが、ゴールドフォルテバーストの力で太陽のような光のゲートを空中に作り出すと、それ目掛けて突入するフォルテッシモ状態のブロッサムとマリンの身体が金色に輝く。

 

「プリキュア!シャイニング」

 

「「フォルテッシモ!!!」」

 

 三人の合体技、シャイニングフォルテッシモがメフィスト目掛け下降する。一方、クレッシェンドトーンを呼び出した三人は、

 

「「「届けましょう!希望のシンフォニー!!」」」

 

 両腕をクロスしたメロディ、リズム、ビートが、クレッシェンドトーンと一体化する。

 

「「「プリキュア!スイートセッション・アンサンブル!!!」」」

 

 クレッシェンドトーンの黄金の光と、一体化して突撃するメロディ、リズム、ビート、黄金のフォルテッシモが、黄金のスイートセッション・アンサンブルが、二組の黄金の技のハーモニーが、メフィストが放つ攻撃を掻き消しながら、メフィスト目掛け突き進んだその時・・・

 

「止めてぇぇぇ!!!」

 

 まるでメフィストを庇うかのように、プリキュア達に両手を広げ攻撃を止めさせようとするキュアミューズ、クレッシェンドトーンは、咄嗟に反応して緊急回避をし、その煽りを食らい、メロディ、リズム、ビートは地上に墜落し、ブロッサムとマリンも瞬時に躱すも、その勢いにミューズの覆面が弾き飛ばされる。

 

 覆面が取れ、素顔を晒したキュアミューズを見た時、メロディ、リズム、ビート、アフロディテ、そして、敵である筈のメフィストが激しく驚愕した。

 

「やはり、ミューズの正体は・・・アコ、あなただったのですね!」

 

「あの顔・・・もしかして、アコちゃん?」

 

「嘘!?アコちゃんが・・・」

 

「生意気なあの子がキュアミューズなの?・・・って言うか、あの顔、私何処かで見たような・・・」

 

 アコがミューズと知り戸惑うアフロディテ、メロディ、リズムに対し、ビートは何処かで見たようなと小首を傾げる。ミューズは覆面が取れたのを契機に、衣装を脱ぎ捨てると、中からは黄色い衣装のあどけなさが残るミューズが姿を現わす。

 

「嘘ぉぉ・・・あのブーツは反則っしょ!!」

 

「もう、マリン!」

 

「今はそんな場合じゃないよ!」

 

 ミューズの足底ブーツを見て羨ましがるマリンに、呆れかえるブロッサムとサンシャイン、ハミィも口を大きくアングリ開けて驚くも、

 

「ニャンですとぉぉ!?キュアミューズのあのスタイルの良さは、あのおっぱいは・・・偽物だったのかニャァァ!?」

 

「ハミィ・・・驚くのはそこじゃないシシ」

 

 フェアリートーン達は、ハミィの相変わらずさに呆れながらも、成り行きを見守る。

 

「ママ!みんな!もう、もう、止めてぇ!パパを、パパを虐めないでぇぇ!!パパ、アコです!私・・・アコです!!パパ・・・あの頃のパパに・・・戻ってぇぇぇぇ!!!」

 

「アコ・・・アコなのか?私は一体!?」

 

 メフィストの事をパパと呼ぶミューズの姿に、プリキュア達は混乱し、成り行きを呆然と見つめていた・・・

 

 アコと名乗るミューズを見て、メフィストは戸惑いながらも、徐々に記憶が甦りつつあった。自分は何故此処に居るのか?何故目の前で、愛する娘アコが悲しそうな顔をしているのか、メフィストの頭が混乱する。マイナーランドでその様子を見ていたバスドラ、バリトン、ファルセットにも異変が起きていた。

 

「お、おい、あの娘・・・もしかして?」

 

「確かに見覚えがある・・・」

 

「そうですよ、僕達も遊んで上げた事がありましたよ!」

 

 トリオ・ザ・マイナーの三人も、朧気ながらミューズの素顔を見て徐々に記憶が甦りつつあった。だが、玉座の背後にある化石のような物体の目が輝き、状況は一変した・・・

 

 

「アコ・・・お前がどうして此処に?そうだ、私は一体何を!?」

 

「パパ!記憶が、記憶が戻ったのね?」

 

 思わず嬉しそうな表情を見せたミューズであったが、メフィストは記憶が戻ったと言われ、戸惑いの表情を見せながら、

 

「記憶!?私は・・・そうだ、魔響の森に入り其処で・・・グゥゥオォォ!!」

 

 記憶を取り戻しそうになったメフィストであったが、突然耳に付く貝殻のようなヘッドフォンからの悪のノイズが、再びメフィストの心を悪へと導く。

 

「あれは・・・そうか、そうだったんだ!メフィストも・・・ううん、メフィスト様も、あれに操られて居たのね・・・私同様に!!」

 

 苦しむメフィストの様子を見て、思わずビートが叫ぶ、メロディもリズムも首を捻り、

 

「ビート、どういう事?」

 

「メフィストが操られて居るって本当なの?」

 

 呆気に取られながらビートに問い掛けるメロディとリズムに、ビートは頷きながら、

 

「ええ、元々メフィスト様は、メイジャーランドの王様だったの!つまり・・・アフロディテ様と夫婦って事ね!バスドラ、バリトン、ファルセットもそう・・・彼らはメイジャーランドの三銃士として、王国の民から慕われていた。でも、ある日突然彼らはメイジャーランドに反旗を翻し、マイナーランドを建国した。そして、ハミィが今年の幸せのメロディの歌い手に選ばれた事で、メフィスト様に私の中にあった妬みの心を利用され、私もあのヘッドフォンで洗脳され、ハミィやあなた達と敵対した。メフィスト様の耳に付いているあれがそうよ!・・・あれ?今アコってあなた達やミューズ、メフィスト様は言ってたわよね?って事は・・・キュアミューズの正体って、アコ姫だったって事!?」

 

 仰天してミューズの顔を見るビート、そして、フェアリートーン達、ハミィは首を傾げる。セイレーンも、フェアリートーン達も何をそんなに驚いているのだろうかとハミィは不思議に思った。ハミィは疑問を解消するべくビートに問い掛ける。

 

「セイレーン、何がどうなってるのニャ?」

 

「だから、メフィスト様も、トリオ・ザ・マイナーも、何者かに操られて居ただけで、倒すべき者は他に居るって事よ!おまけに、ミューズはメイジャーランドのお姫様だったっの!ハミィも、私の付き添いでお城に来た時、アコ姫と会ってるでしょう?」

 

「ニャンですとぉぉ!?・・・ハミィは、すっかり忘れてたニャ!」

 

 嘗て歌姫に選ばれたセイレーンの付き添いで城に招待された時、ハミィもアコはもちろん、メフィスト、トリオ・ザ・マイナーにも出会っていた事をようやく思い出す。

 

 相変わらずの天然振りを発揮するハミィに、メロディとリズムも思わず苦笑するも、直ぐに表情を引き締め、

 

「それが本当なら・・・アコちゃん!私達も、あなたのパパを救って上げたい!!私達と一緒に・・・メフィストを救って上げよう!!」

 

「でも・・・パパと戦うなんて私・・・」

 

 メロディの言葉に、メフィストと戦う事に躊躇するミューズ、ミューズに近づき、そっと肩にブロッサムが手を置き優しく微笑むと、

 

「アコちゃん、プリキュアは戦うだけが全てじゃないの・・・道を踏み外している人が居るなら、正しい道に導いて上げる。それもプリキュアの使命だと、私は思います。私達の大切な仲間達もそうしてきました・・・そして、嘗て闇の救世主を名乗る者との戦いの時、彼らは私達に力を貸してくれました。アコちゃん、ここにはあなたも含めて、七人のプリキュアが居るんですよ!必ずあなたのお父さんを・・・救って見せます!!」

 

 ブロッサムが微笑み、その背後でマリンがドヤ顔でニヤリとし、サンシャインが頷く、反対側ではメロディ、リズム、ビートが微笑みながら頷いた。

 

 ミューズの目に、アフロディテの目に涙が溜まる・・・

 

「みんな、みんな、パパを・・・パパを助けて上げて!!」

 

「うん!必ず助けよう!!」

 

 メロディがミューズに頷き、一同にアイコンタクトをすると、一同が頷き返す。今、一同の思いが一つになった・・・

 

 ミューズもメロディの隣に並び立ち、七人のプリキュアが横に居並ぶと、ギロリとメフィストが唸り声を上げながら一同を睨み付ける。

 

「パパ、その苦しみ・・・私達が晴らして見せる!!」

 

「ミューズは、メフィストに話し掛け続けて!」

 

「ミューズのフォローは私達がするわ!」

 

 メロディ、リズムの言葉に頷き、巨大なメフィスト目掛け走るミューズ・・・

 

 それを合図にしたかのように、一同が行動を開始した・・・

 

 思いは一つ、メフィストを元に戻し、ミューズの笑顔を取り戻す事・・・

 

「花よ、輝け!プリキュア!ピンクフォルテウェイブ!!」

 

「花よ、煌け!プリキュア!ブルーフォルテウェイブ!!」

 

「花よ、舞い踊れ!プリキュア!ゴールドフォルテバースト!!」

 

 ブロッサム、マリン、サンシャインが、

 

「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ミュージックロンド!!」

 

「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ミュージックロンド!!」

 

「翔けめぐれ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・ロック!!」

 

 メロディ、リズム、ビートの技が、六人のプリキュアの力がメフィストの動きを封じる。

 

 ミューズは大きくジャンプし、メフィストの肩に飛び乗ると、

 

「パパ!私、私、パパが大好きだよ!私のパパに戻って・・・私、またパパと、ママと、また、一緒に、一緒に、暮らしたいぃぃぃぃ!!!」

 

 涙に濡れたミューズの拳がメフィストの顔に炸裂する。

 

「メフィスト・・・あなた、お願い・・・あの頃の、あの頃の優しいあなたに戻ってぇぇぇ!!」

 

 その愛の拳が、愛の言葉が、ミューズ、アフロディテの思いが、メフィストの心に、忘れ去られた思いを甦らせていった・・・

 

 メフィストの脳裏にかつての光景が蘇る・・・

 

 大きな木の陰に隠れたアコ、メフィストは笑みを見せながらアコを見付けると、見つけられたアコは喜びながら 父の胸に飛び込み抱きつく。その姿を見て幸せそうに笑うアフロディテと音吉、幸せな家族の風景・・・

 

(私は・・・私は、何をしているのだ・・・愛する娘を、愛する妻を・・・アコ、アフロディテ、そして、プリキュア達よ・・・ありがとう!最早、このような悪のノイズになど・・・私は負けん!!!)

 

「ヌゥゥオォォォォォ!!!」

 

 メフィストの気迫の籠もった雄叫びと共に、悪のヘッドフォンは飛び落ち、メフィストの容姿が元の姿へと戻っていった。

 

「パパァァァ!!」

 

「あなた!!」

 

「アコ、アフロディテ・・・心配掛けたね!もう、もう、何処にも行かないよ!!」

 

 抱きついて泣くミューズを、アフロディテを、メフィストは愛しそうに力強く抱きしめた。その姿に、メロディ、リズム、ビートは涙ぐみ、ブロッサム、マリン、サンシャインは、救えなかったゆりの父、月影博士の事を思い浮かべるのだった・・・

 

 

「響さん、奏さん、セイレーン、ハミィ、そして、つぼみさん、えりかさん、いつきさん、ありがとう!あなた方には何とお礼を申し上げれば良いやら・・・」

 

 大きな身体を窮屈そうにしながら深々と頭を下げるメフィスト、とてもさっき戦った相手とは思えぬ程腰が低かった。

 

「もう、パパ!早くお家に帰って着替えてよ!そんな衣装じゃ・・・私、恥ずかしいよぉ!」

 

「本当よ・・・一先ずお父様の下に参りましょう!」

 

「そ、そうか?いやぁ、私も何でこんな姿なのか理解出来んが・・・こら、アコ、そう急かすな・・・じゃあ、皆さんまた改めまして!」

 

 取り戻した親子の団欒・・・

 

 嬉しそうなアコ、アフロディテとメフィストの姿を、笑顔を向けながら見送る一同だった・・・

 

「アコちゃん、嬉しそうでしたね!」

 

「うん・・・これもみんなが手助けしてくれたお陰だよ!」

 

 つぼみの言葉に頷き、響、奏、エレンが、つぼみ、えりか、いつきに感謝の言葉を述べるも、つぼみもいつきも、同じ仲間同士当然だから気にしないでと微笑み返し、一人踏ん反り返って腰に手をあてていたえりかであった・・・

 

「でも、これからが本番よ!メフィスト様を操っていた敵は・・・きっと表舞台に現われる筈だわ!!」

 

 エレンの言葉に表情を引き締める響と奏、つぼみ達三人も頷き返すも、ハミィは暢気そうに、リュックからカップケーキを取りだし食べ始める。

 

「ハミィ!もう、私達持っていた音符を全て取られちゃったのに・・・」

 

「大丈夫ニャ!また集めればいいのニャ!!」

 

 エレンはハァと溜息を付くも、ハミィの前向きな考え方に励まされるのだった・・・

 

「私達も力になります!・・・そうだ、アコちゃんも仲間に加わった事ですし、ハロウィンパーティーには、他の皆さんにも来てくれるように頼んでみましょうよ!!」

 

 つぼみの提案に一同は同意し、シロップを通じ、プリキュアオールスターズ一同に新たなる仲間、キュアミューズの事が伝えられるのだった・・・

 

 

「メフィスト、ようやく正気に返ったか・・・」

 

「お義父様・・・申し訳ありません!」

 

「うむ・・・だが、アコやアフロディテのその嬉しそうな顔を見せられては小言も言えんわい・・・お前をそんな姿に変えたのは・・・やはり、ノイズか!!」

 

「恐らく!魔境の森に入った私は、ゴーレムの襲撃に遭い敗れました。その後の記憶は定かではありませんが、思い返せば・・・」

 

「そうか・・・プリキュア達にも、ノイズの事を話す時が来たのかも知れんなぁ・・・」

 

 髭を撫でながらノイズと戦った時の事を思い出した音吉は、複雑そうな表情を浮かべた・・・

 

 

2、ハロウィンパーティー

 

 ハロウィンパーティー当日の早朝、南野家・・・

 

 奏の父、南野奏介は何時も以上に早起きをし、ハロウィンパーティーで出すカップケーキ作りに精を出す。奏の母、美空は、奏に頼まれ早朝から、奏の部屋でハロウィンでのコスプレ衣装作りを手伝っていた。

 

「出来た!何とか間に合って良かった・・・ありがとう、お母さん!」

 

「ううん、じゃあ早速試着してみたら?」

 

「そうね・・・折角だからお母さんも着てみたら?」

 

 二人はパジャマを脱ぎ、奏は白い下着姿に、美空はピンクの下着姿になり、ハロウィンで着る衣装合わせをしようとしたその時、奏の部屋の窓がノックされる。奏と美空は顔を見合わせるも、

 

「きっと響だわ!窓から来る何て・・・最初に私を驚かせようって魂胆ね!!」

 

 クスリと笑い合う奏と美空が、共にカーテンを開けた時、窓の外には、満面の笑顔を浮かべたスーツ姿のメフィストの顔が合った・・・

 

 一瞬の間の後、メフィストの視線が、奏と美空の下着姿を見て顔を赤らめると、奏と美空は手を取り合い悲鳴を上げる。

 

「「キャァァァァァァ!!」」

 

「ウワァァァ!!」

 

 奏と美空の悲鳴が南野家に響き渡ると、驚いたメフィストは梯子から地上に転落して失神し、奏介と奏の弟奏太が奏の部屋に駆けつける。奏介は警察に電話し、奏太はバットを持って外に飛び出し、失神しているメフィストをバットで突っついた・・・

 

 

 

「アフロディテ、お前も一緒に行かんのか?」

 

「結構です!!私という妻が居ながら、他の女性を覗きだなんて・・・私、メイジャーランドに戻ります!!お父様、メフィストには・・・メイジャーランドに帰って来なくて結構と伝えて下さい!!」

 

「あっ、待て、アフロディテ!アフロディテ!!」

 

 音吉が止めるのも聞かず、ムッとしながらアフロディテはメイジャーランドへと帰って行った・・・

 

 音吉は、去って行ったアフロディテを見て溜息を付くと、

 

「やれやれ、ちゃんとメフィストの話しを聞いてやらんとわな・・・さて、では人騒がせな婿を迎えに行くとするか・・・」

 

 音吉は愛用の自転車に跨がると、警察に連行されたメフィストを迎えに出掛けた・・・

 

 

「奏、大変だったね・・・」

 

「まあね・・・メフィストの話しによると、奏太の部屋と間違えたらしいの、私も大騒ぎにはしたく無かったんだけど、お母さんも居たから、お父さんが動揺しちゃって・・・お母さんは気にしてないって言ってくれたから、直ぐに釈放されるとは思うけど・・・」

 

「メフィスト様もうっかりした所があるから・・・アコ姫も大変ね」

 

 奏の連絡で交番に駆けつけた響とエレン、三人の視線が、交番の中で警官に事情聴取されるメフィストと、隣に座り、父のチンプンカンな話しをフォローするアコの姿に向けられる。

 

 つぼみ、えりか、いつきは、今日の仮装衣装とゆりへの報告もあり、昨日の内に希望ヶ花市へと帰っていた。

 

 加音町の実力者でもある音吉の計らいで、何とか釈放されたメフィストは、奏を見付けるや抵当平身で謝り、奏、響、エレンは苦笑を浮かべる。メフィストは奏太を見付けるや目を輝かし、奏太の両手を握りしめ、

 

「いやぁ、君が奏太くんかい!是非君とは話しをしたいと思って君の家に伺ったんだが、部屋を間違えてしまって、先程は失礼したね・・・アコが大変お世話になったそうで、ありがとう、感謝しているよ!私はアコのパパです!!」

 

「アコの!?あっどうも、南野奏太です!」

 

 突然アコのパパと名乗るメフィストに話し掛けられ戸惑う奏太だったが、メフィストはお構いなく奏太に話を続けた。

 

「実は、私達は今日のハロウィンパーティーとやらが終わったら、メイジャーランドに帰る事になってね」

 

「メイジャーランド?外国かどっか!?」

 

「もう、パパ!奏太には私から説明するから向こうに行ってよ!!」

 

 膨れっ面したアコが慌ててメフィストを奏太から引き離すと、メフィストは表情を曇らせ、響、奏、エレンの側に来ると落ち込みながら階段に腰を下ろした。

 

「私は・・・アコに駄目なパパと思われているのだろうか?」

 

「そりゃあねぇ・・・この間まで悪い事をしてきたんだし、今日は今日で・・・」

 

「そうね・・・でも、これから挽回すれば良いんじゃない?」

 

 響と奏の言葉を聞きながら、仮装をした娘と楽しげに歩く父親を見たメフィストは、羨ましげに溜息を付いた・・・

 

「アコ、お前何処か引っ越すの?」

 

「うん・・・離れて暮らしてたパパが戻って来たから、私達、パパとママと三人で暮らす事になったの!」

 

 アコが嬉しそうに語る事に、奏太に戸惑いが生まれる。離れて暮らしていた親と共に暮らせる喜びは、奏太にも理解出来る。でも、もうちょっと寂しそうにしても良いんじゃないのか?奏太はアコの反応にイライラが沸き起こってくる。

 

「お前・・・ここを離れるのに寂しくないのかよ?」

 

「エッ!?それは寂しいけど・・・それ以上にパパやママと暮らせる・・・」

 

「もういいよ!じゃあな、元気で暮らせよ!!」

 

 奏太はそう言い残すと、その場から駆け出し去っていった。アコは呆然とその後ろ姿を見送った・・・

 

 

「奏太、相当ショック見たいね・・・」

 

「そうだね、奏太はアコちゃんと仲が良かったから尚更ショックだろうね・・・」

 

 走り去った奏太を見て、姉の奏と響が奏太の気持ちを思い心配する。エレンも奏太に同情しながらも、

 

「でも、仕方が無いわよ・・・アコ姫は、メイジャーランドのお姫様ですもの」

 

「エレン、ハミィ、それ何だけど・・・あなた達、アコちゃんを見て今まで気付かなかったの?」

 

 響に突っ込まれ、思わず顔を見合わせたエレンとハミィは、

 

「ま~たく気づかないニャ!」

 

「私もそう・・・だって、あの頃の姫様は眼鏡何か掛けてなかったし、髪も長かったし、それに・・・あんなに生意気じゃなかったし・・・」

 

 エレンの言葉を聞き、不意に落ち込んでいたメフィストが顔を上げると、

 

「コラ、セイレーン!可愛いアコに対して、生意気とは何だ!!」

 

「ゴ、ゴメンなさ~い!!」

 

 メフィストに怒られ、思わず動揺したエレンが、ハミィを抱きながらメフィストに謝るも、側にやって来たアコは、

 

「別に良いわよ!気にしてないし・・・それより、姫様って呼ぶの止めてくれない?」

 

「エッ?でも、私やハミィに取っては姫様ですし・・・」

 

「アコちゃんの言う通りだよ、エレン!私達、プリキュアの仲間何だしさ」

 

「そうそう、エレンも私達と接するように、アコちゃんと接しなきゃ」

 

 アコに注意され、響と奏にも言われたエレンが、アコと呼ぼうとするも、アコの背後に居るメフィストが凄い視線をエレンに向けて、思わずエレンがビビリ仰け反る。エレンの反応に気付き、後ろを振り向いたアコは、メフィストに冷めた視線を浴びせ、メフィストは益々落ち込みを見せた。

 

「暫く会わない内に・・・アコは難しいお年頃になってしまった・・・」

 

「な~に、アコはまだまだ子供じゃよ!」

 

 髭を撫でながら一同の下にやって来た音吉を見て、メフィストは慌てて立ち上がると、音吉の両手を取り詫び始める。

 

「お義父様、この度はとんだご迷惑をお掛け致しまして・・・何とお詫び申し上げればよいやら・・・」

 

「もう済んだ事じゃ・・・それより、父親として、夫としての威厳を取り戻す事じゃな!」

 

 音吉は、アフロディテが今回の顛末に腹を立てて、メイジャーランドに帰った事を伝えると、メフィスト、アコは驚愕し、響、奏、エレンも顔を見合わせ驚くも、まあそうかも知れないと苦笑を浮かべる。

 

「アフロディテ、誤解だ!誤解だぁぁ!!こうしてはおれん、直ぐにメイジャーランドに連絡をせねば・・・」

 

 慌てたメフィストがメイジャーランドに連絡するも、一瞬顔が映ったアフロディテは、不機嫌そうにコンタクトを解除する。

 

「何とした事だ・・・急いでメイジャーランドに戻らねば・・・」

 

「まあ、慌てるな!今帰っても門前払いされるだけじゃろう・・・全く、アフロディテの奴も、まだまだ子供じみた所があるのぉ・・・まあ、今日はハロウィンパーティーの日じゃ、終わってからメイジャーランドに帰れば、いくらかアフロディテも頭が冷えるじゃろう」

 

「ハァ・・・お義父様の言葉に従います!」

 

「パパ、私も取りなして上げるから、ちゃんとママに謝ってよね!!」

 

 娘のアコにも注意され、益々父親としての尊厳を失った気がするメフィストであった・・・

 

 

 

「ラブ、ブッキー、どんな衣装にしたの?」

 

「内緒だよ!でも、また私達に新たな仲間が出来た何て楽しみだよねぇ?」

 

「そうだね・・・それに、せつなちゃんにまた会えるのも楽しみだよね!」

 

「うん!せつなは、ラビリンスからそのまま加音町に向かうって連絡あったし、またみんなに早く会いたいなぁ・・・」

 

「せやなぁ・・・わいの自慢の仮装も、みんなにはよぉ見せたいわぁ・・・なぁ、シフォン!」

 

「プリップゥゥゥ!!」

 

 加音町へ向かう電車の中で、桃園ラブ、蒼乃美希、山吹祈里は、仮装用の衣装のバックを持ち、バックの中にはカボチャのコスプレをしたシフォンと、牙を付けて狼男のコスプレをするタルトも居た。タルトは、本当は祈里に協力を頼み、以前テレビで観た名探偵を祖父に持つ少年の仮装をしようとするも、祈里に苦笑混じりに断られ、ラブと美希からも、それじゃただのコスプレだと注意され、狼男の仮装をしていた。

 

 ラブ達は、せつな、新しい仲間のミューズ、そして、プリキュアの仲間達との再会を待ち侘びるのだった・・・

 

 

「ねえ、咲、舞、私達も本当にこんな姿にならなきゃいけないの?」

 

「出来れば遠慮したいけど・・・」

 

 加音町に向かう電車の中で、バックの中の衣装を見て思わずキョトンとする満と薫が咲と舞に訪ねると、舞も引き攣った笑みを浮かべながら、

 

「出来れば私も恥ずかしいから遠慮したいけど・・・復興した加音町のお祝い事だからって、えりかさんから是非にって頼まれてるし・・・」

 

「そうラピ!折角の誘いを断るのも悪いラピ」

 

「チョッピも頑張るチョピ」

 

 長い付け鼻と、頭にゴーグルを身に付けたフラッピ、ドレス姿に扇子を持ったチョッピがニコニコしながらバックの中から声を掛ける。

 

「ムープとフープは仮装をしないの?」

 

「ムープ達はこのままで良いムプ!」

 

「フープ達はもう仮装してるププ」

 

 満の問い掛けに、ムープとフープは、顔を見合わせて楽しそうにこのままで仮装はOKだと語り、満と薫は顔を見合わせ首を傾げた。

 

「そうそう、やってみると楽しいもんだよ!前に文化祭でオバケ屋敷やった事を思い出すなぁ・・・満と薫は初めて何だし、きっと楽しいなりィ~!!」

 

 満面の笑みを浮かべた咲が、満と薫にきっと楽しいよと語るも、満と薫は再び顔を見合わせ、そんなものなのだろうかと小首を傾げた。

 

 

「あなた達、本気なの?息抜きは必要だから、加音町に行く事は構わないけど・・・仮装何て、恥ずかしくて嫌よ!!」

 

「エェ・・・折角ゆりさんの分も作ったのにぃぃ!!なぎささんはノリノリでOKしてくれたよぉぉ!!」

 

「ほのかさんには・・・笑いながら考えておくわって即答を避けられましたけど、なぎささんが説得してくれるって言ってくれました!!」

 

「ゆりさん・・・復興した加音町のイベントを、僕達も盛り上げましょうよ!!」

 

 加音町で行われる、ハロウィンパーティーに参加する事はOKしたゆりだったが、参加者は皆仮装する事を聞き、ゆりは戸惑いを見せた。えりか、つぼみ、いつきに尚も誘われ、ゆりは困惑する。

 

 ゆりの眼鏡が曇る・・・

 

「ゆりちゃん、気分転換になるかも知れないわよ?やってみたら?私ももう少し若かったら、オレンジ色のレオタードでも着て、美女怪盗の仮装何かやりたかったわぁ・・・ウフフフ」

 

 つぼみの祖母、キュアフラワー事花咲薫子の冗談とも本気とも取れる発言に、一同が一瞬固まるも、我に返ったゆりは、

 

「もう、薫子さんまで・・・まあ、折角衣装を作ったって言うし・・・見るだけなら・・・」

 

 薫子にも参加を勧められ、困惑するゆりだったが、渋々ながらも見る事には同意した。つぼみ、えりか、いつきは顔を見合わせ微笑み合うと、バックから衣装を取りだし始める。

 

「ジャ~ン!ゆりさんには・・・小悪魔風ファッション!!」

 

 えりかがバックから取り出した衣装を見て、再びゆりの眼鏡が曇る。

 

「えりか、何の真似かしら?その衣装は・・・ダークプリキュアじゃないの!?」

 

「うん、小悪魔風ファッションにピッタリ!!」

 

 目をパチクリしながら、自分の会心の出来に何度も頷くえりかに、ゆりは深い溜息を付いた。つぼみも衣装を取りだし、

 

「でしたら、こちらの水色のセーラー服は如何でしょうか?」

 

「腰のリボンもオシャレですよ!」

 

「オオ!昔テレビでやってた、美少女戦士見たいだねぇ!!」

 

「こんなミニスカートを・・・私に着ろと言うのかしら?」

 

「似合うと思うんだけどなぁ・・・」

 

「「似合う!似合う!」」

 

「あなた達ねぇ・・・」

 

 ゆりは再び深い溜息を付くのだった・・・

 

 

「響、奏、エレン・・・恨むわよぉぉ!何でよりにもよって態々ハロウィンパーティーの日に・・・招待するのよぉぉぉ!!」

 

「まあまあ、りんちゃん!折角誘ってくれたんだからさ・・・ハロウィンってぇ、お菓子もくれるありがたい日何だってぇ!!はい、こまちさんが用意してくれたりんちゃんの衣装!!」

 

「のぞみ、あんたはお菓子目当てなだけでしょう?」

 

「そんな事無いもん!ちゃんとみんなとの再会を楽しみにしてるよ!!でも・・・やっぱりお菓子も楽しみだけど・・・アハハハ」

 

 ナッツハウスに集合した夢原のぞみ、夏木りん、春日野うらら、秋元こまち、水無月かれん、そして、パルミエ王国からやって来たココ、ナッツ、シロップ、メルポ、ミルク事美々野くるみの面々、りんは、苦手なオバケの仮装が行われるハロウィンの日に、響達に招待された事に激しく動揺していた。のぞみから手渡された仮装を見て、りんの顔が引き攣る。

 

「こ、こまちさん・・・これを私が!?」

 

「ええ、きっとりんさんに似合うと思うわ!!」

 

 ニコニコしながらりんに似合うと思うと言うこまちの言葉に、りんは益々狼狽えた。うららもこまちが用意した衣装を興味津々で覗き見、くるみはそんな一同を呆れながらも、自分の衣装を念入りに調べていた。

 

(ハロウィンって・・・こんな格好したかしら?)

 

 かれんは、こまちに渡された衣装を見て思わず考え込むのだった・・・

 

 

「ほのか、ひかり、準備は良い?そろそろ出掛けよう!」

 

「良いけど・・・何で私は人魚なの?」

 

「エッ!?そう突っ込まれると困るけど、何となく・・・他には若作りな50過ぎのナイスバディな超能力者とか、背の高い気弱な副隊長とか、長い銀髪と灰色の瞳をした軍人の美少女とか、緑の髪と金色の瞳の容姿をした不老不死の少女とかどう?ラブが一杯かつら持ってくるって言ってたし・・・」

 

「・・・・・・」

 

 何故自分は人魚の仮装なのだろうかと疑問に思ったほのかが問い掛けると、なぎさの答えは何となく思っただけだと言い、更にほのかに似合いそうな仮装を提案するも、ほのかには何の事だかさっぱり分からず、ほのかは溜息を付く。

 

「もう、なぎさったらTVの見過ぎ・・・人魚で良いわ!ひかりさんは?」

 

 半ば呆れながら人魚で良いと呟き、ひかりに話を振ると、

 

「はい・・・丈の短い和風の衣装に陣羽織見たいな衣装を纏った歌姫って設定の少女・・・らしいです」

 

「ルルンは、そのお供ルル!ひかり、元気ルル?」

 

 ピンクのボールから顔を出したルルンが、楽しそうにひかりの周りをクルクル回りながらハシャグ姿に、ひかりも目を細める。

 

「メップルは・・・俺のこの手が真っ赤に燃えるメポ!お前を倒せと轟き叫ぶメポ!メップルは格闘チャンピオンメポ!」

 

「ミップルは・・・ちょっとおませな幼稚園児ミポ!」

 

「ポルンは・・・二重人格のお嬢様ポポ!でも、ポルンはもっとカッコイイ役が良いポポ!!」

 

 意外とノリノリなメップルとミップル、ポルンはあまり乗る気ではなく駄々を捏ね始めると、ほのかは引き攣りながら、

 

「ひかりさんの衣装も、ミップル達の衣装も、なぎさが勝手に決めたんでしょう?もう・・・なぎさはどんな衣装なのよ!!」

 

「私!?私は・・・優秀な戦術予報士でナイスバディな大酒飲み!」

 

「さっきから思ってたけど・・・その設定、ハロウィンと関係あるの?」

 

「エッ?特に無いけど・・・でも、ほら、折角仮装するんだしさ・・・何か格好良いでしょう!駄目?」

 

「却下!!」

 

 少し頬を膨らましながら、ほのかはなぎさに駄目出しをするのだった・・・

 

 

「みんな、どんな衣装で来るんだろうね?」

 

「そうね・・・そろそろ私達も着替えましょう!エレン、部屋で着替えさせてね!」

 

「どうぞ!じゃあ、私も着替えようっと・・・ハミィはどうする?」

 

「ハミィも仮装するニャ!ハミィは前から月を見て思ったニャ・・・あんな綺麗な月のお姫様みたいな格好を・・・」

 

「ゴメン!ハミィに合うサイズの服無いわ・・・セーラー服ならあるけど・・・」

 

「ニャンですとぉぉ!?しょうがないニャ、それで我慢するニャ!」

 

「何でハミィが着れるセーラー服があるの?」

 

「さあ?音吉さんに言ったら、これなら有ったって持ってきてくれたんだけど」

 

 響の問いに、エレンも首を捻りながら返事を返し、奏は音吉の事が益々分からなくなるのだった。

 

 午後になり、調べの館のエレンの部屋で、そろそろ自分達も着替えを始めようとする響、奏、エレン、そして、ハミィ、フェアリートーン達も仮装すると言うものの、街のみんなにバレちゃうからと響と奏に止められ、ファリーは地面を叩いて悔しがるのであった・・・

 

 

「どう?私の衣装!世界名作劇場にでも出てきそうな、旅の一座で生活しながら、家族を捜して世界を旅する、薄幸の少女って感じで素敵じゃない?」

 

 その場でクルクル回りスカートを靡かせる響、エレンとハミィは何度も頷き、可愛いと賞賛するも、奏は微妙な表情を浮かべると、

 

「ウ~ン・・・響に似合ってると言えば似合ってるけど、響なら、こっちの衣装の方が似合ってるんじゃない?」

 

 奏はそう言うと、衣装棚から丈の短いセーラー服を取り出して響に手渡した。これを着るのと小首を傾げながらも、響がセーラー服を着てみると、上は右胸辺りに目のようなポイントが付きヘソ出し、リストバンドで下のスカートと繋がっており、スカートは超ミニで、響の白いパンティが丸見えだった。

 

「ちょっとぉぉ!パンツ丸見えじゃない?こんな服、人前で着れないよぉぉ!!」

 

「確かに・・・音吉さんの本で読んだ、スケ番って人見たいね?」

 

「響に似合うと思ったんだけどなぁ・・・ところで、私のはどう?」

 

 今度は奏が一同に自分の衣装を披露する。全身黒い和風装束、腰の差物を抜き、刀を構えポーズを取る奏、

 

「ハロウィンにちなんで、和風な死神姿をイメージしてみました!エイッ、ヤァ!このたわけめ!!」

 

 刀を振るう奏の勇姿に、一同が拍手を送る。

 

「普段の奏からは想像出来ないから、みんなも驚くと思うわ・・・私のはどう?音吉さんの本を読んで参考にしたの」

 

 次に披露するのはエレン、黒のノースリーブとピンクのミニスカートを靡かせるも、エレンの下着が見える事は無かった・・・

 

「ハロウィンにちなんで・・・私はモンスター使い!ハミィ、引っ掻き!!」

 

「任せるニャ!って、何させるニャ!!でも、セイレーンの衣装も可愛いのニャ!!」

 

「ありがとう!ハミィも可愛いわよ!!」

 

「本当かニャ!月に代わってお仕置きニャ!!」

 

 エレンの部屋で、楽しそうな一同の笑い声が響き渡った・・・

 

 

「響、奏、エレン、居る?」

 

「あっ、誰か調べの館に来たわ!」

 

 窓の外から響達を呼ぶ声に、一同が窓から外を覗くと、響と奏が思わず驚きの声を上げる。セミロングの銀髪に黒いカチューシャをし、赤と黒のボンデージ風の衣装を身に纏った少女が佇んでいた。

 

「私を待たせるなんて、良い度胸ね!我が名はイース!ラビリンス総統メビウス様の忠実な下僕!!・・・って、こんな格好でも良いのかしら?」

 

 嘗てのイース時代の口癖をするせつな、思わず照れくさそうにしながら一同にこんな仮装でも良いか聞いて見るのだった。

 

「うわぁ・・・せつなさん!いらっしゃい・・・一瞬驚いたよ・・・また、闇の力に目覚めたのかと・・・」

 

「本当ね・・・でもその格好には抵抗あったような気がしましたけど?」

 

「でも、全然有りですよ!!」

 

 響と奏が、せつなを見て苦笑を浮かべながらもOKだと言うと、せつなはホッと安堵した表情になる。エレンは初めてイースの姿を見たのでポカンとしていたが、

 

「ひょっとして、その姿はせつながラブ達と戦ってた頃の?」

 

「ええ、私がラビリンスの、メビウスの下僕として戦って居た時の姿!仮装なんて全然分からないし、ウエスターやサウラーに相談したら、イースの姿はピッタリだろうって言われて・・・前まではこの姿には抵抗があったわ!でも、この前にイースの姿になった時思ったの、この姿も私の一部って事を認めてこそ先に進めるってね!!それで、ちょっとラブ達も驚かしちゃおうかなぁって思ってこの姿を選んだの!!」

 

 せつなの言葉を聞き考え始めるエレン、自分も今は猫の姿にはなれないが、あの頃の気持ちを忘れてはならないのではないかとエレンも感じ、

 

「う~ん・・・ちょっと待ってて!私も衣装変えようっと!響、奏、先にせつなの所に行ってて!」

 

 エレンはせつなの姿に刺激され、衣装を着替え始めるのだった・・・

 

 

 マイナーランド・・・

 

 メフィストが記憶を取り戻し、マイナーランドを去った為、後継のリーダーを決めるべく話し合うバスドラ、バリトン、ファルセットだったのだが・・・

 

「リーダーは俺様こそが相応しい!」

 

「何を馬鹿な・・・バスドラは、さんざんリーダーをやって成果を上げられなかったじゃないか!此処はやはりこの私が・・・」

 

「二人共、狡いですよぉぉ!僕はまだリーダーになった事無いんですからぁ、僕にやらせて下さいよぉぉ!!」

 

 三者三様の事を言い、中々意見が纏まらないトリオ・ザ・マイナーの三人であった。その時、玉座の後ろにある化石のような物体の目が輝くと、辺り一帯を凄まじい稲光が轟き、思わずバスドラ、バリトン、ファルセットは身を寄せ合って何事が起こったのか戸惑った。玉座の前には五つの人影が佇み、思わず三人は顔を見合わせ首を傾げた。

 

「やい、お前達は何者だ!?」

 

「此処は我らの本拠地マイナーランドだ!」

 

「出て行ってくれないか!」

 

 バスドラ、バリトン、ファルセットの言葉に、五つの人影から笑い声が響き渡ると、その内の三人が一歩前に出て、その素顔をトリオ・ザ・マイナーの三人に晒すと、全身赤色で、頭部から肩に掛けて鋼のような分厚い針を纏った鬼のような男、全身青色で鬼のような黒髪の筋肉男、全身緑色をしたイノシシのような巨体な男が居た。

 

「フン、その貴様らが不甲斐ないから、ノイズ様は我らを召喚なされたのだ!」

 

「本来なら貴様らなど用済みなのだが・・・」

 

「ノイズ様の計らいにより、再び貴様らに力を与えてやろう!!」

 

「「「さあ、受け取るがいい!!」」」

 

 口元に笑みを浮かべながら、赤き魔物、青き魔物、緑の魔物が、順々にバスドラ、バリトン、ファルセットを見つめると、再び化石の目が光輝き、バスドラ達三人を黒い稲光が包み込む。三人の身体は巨大化し、化け物のような姿へと変わって行った・・・

 

「バリトン、ファルセット、お前らその姿は!?」

 

「そういうバスドラだって・・・」

 

「ど、どうなってるんですかぁぁ!?」

 

 自分達の身体をまさぐる三人、バリトンは持っていた鏡で自分を見つめると、思わずクラクラとその場にへたり込む。慌てて両脇からバリトンを抱えるバスドラとファルセット、三人がショックを受けるのも当然で、バスドラは巨大な緑色の蛙を思わせる姿に、バリトンは水色の半魚人のような姿に、ファルセットはピンク色のウーパールーパーのような容姿に姿を変えられたのだから・・・

 

「我らが盟主ノイズ様の復活は近い!さあ、貴様らは下界へと赴き残りの音符を全て集めて来い!!」

 

 赤き魔物が三人に指示を出すも、バリトンは自分の醜い姿に崩れ落ち泣き続ける。

 

「ヤイ、泣いちゃったじゃないかよ~!」

 

「バリトンに謝って下さいよぉぉ!!」

 

「黙れぇぇ!!」

 

 バスドラ、ファルセットも、仲間のバリトンを庇うように抗議するも、青き魔物が一喝し、三人の身に雷が降り注ぎ、三人を痺れさせる。

 

「貴様らに選択権は無い!さあ、行くがいい!!」

 

 バスドラ、バリトン、ファルセットは、慌てて逃げるようにその場を後にするのだった。

 

「フン、仕えない奴らめ!」

 

「だが、陽動の役には立つだろうよ」

 

「ああ、では我らも出掛けるとするか・・・後は頼むぞ!!」

 

 残る二人の戦士に後時を託し、三匹の魔物は何処化へと去っていった・・・

 

            第三十一話:新たなる仲間!キュアミューズ!!

                      完

 


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