プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

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第三十話:その名はビート!(後編)

              第三十話:その名はビート!(後編)

 

 ハミィを猫質に取り、メロディとリズムを追い詰めるトリオ・ザ・マイナーであったが、バスドラは、助けに現われたベリーをビートだと思い込むも、何処か違和感を感じていた・・・

 

「おい、バリトン!ファルセット!セイレーンがプリキュアになった姿って・・・あんな感じだったか?」

 

 何やら三文芝居を見せられているようなバスドラは、首を捻りながらバリトン、ファルセットに問いかけると、聞かれた二人も、改めてベリーをジィと見て微妙な表情で首を傾げた。まだセイレーンがプリキュアになってから日が浅く、二人もそこまでハッキリとは覚えては居なかった。

 

「さあ!?あんな感じだったような、違うような?」

 

「ですよねぇ・・・でも、どっちでも良いじゃないですか?こっちが優勢なのは変わらないんですから!!」

 

 バリトンとファルセットの言葉を聞き、バスドラは、確かに今は自分達の方が優位に立っているのを思い出し、

 

「それもそうだな・・・やい、セイレーン!俺様に逆らうとどうなるか教えてやる。お前が抵抗すれば、この人・・・いや、猫質がどうなるか分かって居るな?ネガトーン、中々現われなかった見せしめに、そいつもそっちの二人と同じ目に合わせてやれ!!」

 

 網に捕らえたハミィを振り回し、ネガトーンに指示を出したバスドラだったが、腰のリボンを靡かせながら、疾風のようにビートが現われ、バスドラの頭を踏みつけると、思わず手を放したバスドラから、ハミィを見事に救出する。ビートは網からハミィを救い出すと、ニッコリ笑みを浮かべた。救われたハミィは、嬉しそうにビートの顔を見ると、

 

「セイレーン!・・・アッ、今はキュアビートだったニャ!ありがとニャ!!」

 

「ううん、私の方こそ巻き添えにしてゴメンね・・・ハミィ!!それに、助けに来たのは、私だけじゃないのよ?」

 

 ビートはそう言うとハミィにウインクし、ビートの言葉にエッと嬉しそうな表情になるハミィであった。

 

「な、何ぃ!?何故此処にセイレーンが?じゃあ、あいつは一体!?」

 

「残念だったわね!ベリーは囮よ!!」

 

「何だとぉぉぉ!?」

 

 向こうに居る筈のビートが現われ、驚愕するバスドラに、ピーチの声が追い打ちを掛ける。ピーチ達、ブルーム達、ドリーム達、ブロッサム達、次々に姿を現わすプリキュア達が、トリオ・ザ・マイナーとネガトーンを包囲する。キョロキョロ周りを見渡した三人の顔から、脂汗が滴り落ちた。プリキュア達の人数に圧倒されるトリオ・ザ・マイナーだった・・・

 

「お、おのれ、何て数だ!?」

 

「だから、私をリーダーにすれば良かったのに・・・」

 

「何だとぉぉ!?リーダーは俺様だ!!」

 

「二人共、今はそんな事してる場合じゃないですよぉぉぉ!」

 

 不利な状況になり、仲間割れをし始めるバスドラとバリトン、ファルセットは包囲しているプリキュア達を見て及び腰だった。

 

「皆さん、プリキュアが来てくれました!」

 

「こちらに避難して下さい!!」

 

「慌てなくても大丈夫ですよ!!」

 

 ゆり、なぎさ、ほのかが、少し回復した人々を誘導して避難させる。それに気付いたバスドラが、慌ててネガトーンに指示を出し攻撃するも、なぎさ達の護衛に来ていたルミナスが立ち塞がり、バリアでネガトーンの攻撃を完全に防いだ。思わず口を開けて放心するバスドラとネガトーン、動揺したネガトーンの隙を、ウィンディは見逃さず、

 

「風よ!吹き荒れよ!!」

 

 ウィンディがお返しとばかりに、強烈な突風をネガトーンに浴びせて、トリオ・ザ・マイナーの側に、ネガトーンを吹き飛ばすと、三人は思わず上空から落ちてくるネガトーンを見て仰け反り、何とかネガトーンの下敷きになるのを免れた。

 

 

「ミューズ、どうやら加勢は必要無いみたいドド」

 

 プリキュアが優勢になったのを、民家の屋根から見ていた覆面の戦士キュアミューズは、踵を返すと、マントを翻しながら、無言のまま何処かへ消え去って行った・・・

 

 

 加勢に来てくれた他のプリキュア達の勇姿に、自然と顔が綻ぶメロディとリズム、側に駆け寄ったベリーに、メロディはニコッと笑みを浮かべると、

 

「ベリー!みんなも、ありがとう!よくも散々私達をいたぶってくれたわね!!」

 

「タップリお返しさせてもらうわよ!!」

 

「ここからは、あたしも参加するわよ!」

 

 ベリー、そしてメロディとリズムも加わり、プリキュアフルボッコタイムが開始された・・・

 

 先陣を切ったのはキュアビート、ハミィを猫質に取った恨みとばかり、

 

「バスドラ、よくもハミィを・・・タァァ!!」

 

 ビートの俊敏で鮮やかな攻撃が、バスドラに降り注ぐ、パンチの連打を受け、前のめりになったバスドラを、回し蹴りで吹き飛ばしたビートは、直ぐにネガトーンに向き直ると、助走を付けてジャンプし、空中からパンチの連打を食らわした。ジャンプしたメロディとリズムが、上空からスイートハーモニーキックで追い打ちを浴びせ、再びビートの連続攻撃の連携に為す術もなくなり、ネガトーンの動きが弱まった。

 

 それを見たビートが勝負に出た!

 

「弾き鳴らせ、愛の魂!ラブギターロッド!」

 

 ビートがアイテムであるラブギターロッドを取り出すと、

 

「おいで、ソリー!」

 

 フェアリートーンの内ソリーを呼ぶと、ラブギターロッドに装着される。

 

「チェンジ!ソウルロッド!」

 

 そして、ラブギターロッドからソウルロッドへと変化する。

 

「駆け巡れ、トーンのリング!プリキュア!ハートフルビート・ロック!!」

 

 トーンのリングをセットし、ソウルロッドのトリガーを引くと、ソウルロッドから勢いよくネガトーン向けて射出されたトーンのリングが、ネガトーンを捕らえた。

 

「フィナーレ!!」

 

 ビートの合図と共に爆発が起こり、ネガトーンは浄化され、音符と風鈴の姿に戻った。更に振り向いたビートが、険しい顔でトリオ・ザ・マイナーを睨み付けると、三人は思わずドキッとした表情を浮かべる。リーダーとしては、二人に無様な姿は見せられないと感じたバスドラは、

 

「な、何だセイレーン!?俺様に向かってその生意気な顔は?」

 

「あんたはデカイ顔でしょうが!行くよ、ブロッサム、サンシャイン!」

 

「「「プリキュア、トリプルインパクト!!」」」

 

 マリンの合図と共に、バスドラ目掛け三人の合体技が炸裂すると、バスドラは目が飛び出るかと思うほどの衝撃を受け、巨体が宙に浮いて吹き飛び、フレッシュ組がバリトンを、プリキュア5とローズがファルセットを攻撃する。

 

「ちょ、ちょっと待て!リーダーはあいつだぁ!!」

 

「そ、そうです!僕達は、リーダーのバスドラの命令を聞いただけで・・・」

 

「アァ!?狡いぞ、お前らぁぁ?」

 

 二人はフルボッコにされながらも、リーダーはあいつですとバスドラを指さした。呆れながらもSS組がバスドラに追い打ち攻撃を掛けると、追い詰められた三人は、益々言い合いを始め、責任を擦り付けあい、プリキュア達はそんな三人を見て思わず唖然とする。

 

 プリキュア達に隙が出来たのを見た三人は、

 

「此処は何時ものように・・・」

 

「この状況じゃしょうがない・・・」

 

「お前達・・・」

 

「「「オ・ボ・エ・テ・イ・ロ・ヨォォ!!!」」」

 

 ハモらせながら、この場から逃げ出すトリオ・ザ・マイナーに、益々呆然とするプリキュア達であった・・・

 

 

「みんな、お疲れ様!」

 

「美希、中々良い作戦だったわよ!」

 

 なぎさ達が戻って来て一同を称え、作戦の立案者美希を、ほのかとなぎさが褒め称える。

 

「まあ、あたし、完璧ですから!」

 

 腰に手を当て、得意気にする美希に、エレンは些(いささ)か不満気な視線を向けると、

 

「でも私、あんな変な笑い方しないからね!」

 

 美希を見て少し膨れっ面になるエレンを見て、一同から笑みがこぼれる。笑い声が収まると、響と奏が一同に謝り始めた。

 

「みんな、私達から会いたいって言ったのに・・・ゴメンね!」

 

「本当にすいませんでした・・・」

 

「ううん、この状況じゃ仕方ないわ!」

 

「それに、こうして無事エレンさんにも会えたんだし!!」

 

 謝る響と奏を制止して、ほのかと祈里がフォローすると一同も同意する。

 

「じゃあ、遅くなったけど、これからナッツハウスで、エレンの歓迎会を始めましょう!!」

 

「賛成!!!!」

 

 なぎさの提案に賛成する一同だった・・・

 

 

 せつなのアカルンの力で、再びナッツハウスに戻った一同は、料理作りに、デザート作りに、盛り上がった。一方妖精達は、テラスに出て料理の出来上がりを待っていた。話の中心には、セイレーンと仲直りする事が出来たハミィが居た。

 

「ハミィ、セイレーンと仲直り出来て良かったミポ」

 

「セイレーンも、すっかりなぎさ達と打ち解けたようで安心メポ」

 

 ミップルとメップルも、仲直りしたハミィとセイレーンの関係を、自分の事のように喜んでいた。ハミィも嬉しそうに、心配してくれて居た妖精達に感謝するのだった。

 

「みんな、ありがとニャ!でも、ハミィとセイレーンは昔から仲良しだったニャ!!これで、ハミィの夢がまた一歩近づいたニャ!!」

 

「夢・・・ラピ?」

 

「ぜひ、聞かせて欲しいココ!」

 

 フラッピとチョッピに聞かれたハミィが目を瞑ると、

 

「バロムとの戦いの時、ハミィはセイレーンと一緒に歌えて、凄く、凄く嬉しかったニャ!今度はセイレーンと一緒に、幸せのメロディを歌って、みんなを幸せにするのが、ハミィの夢ニャ!!」

 

 ハミィはその日の場面を思い描いて、満面の笑みを浮かべた。そんなハミィを見た妖精達の顔も、自然と笑顔が溢れていた。

 

「ハミィ!みんな!奏達が、デザート出来たからおいでだって!みんなにも色々心配掛けてゴメンね!」

 

 妖精達を呼びに来たエレンは、心配してくれていた妖精達にも謝った。そんなエレンに、妖精達は皆優しい言葉を掛けるのだった。

 

 

 和やかな食事会も終わり、片付けも大方終わらせ一段落すると、なぎさはラブを手招きし、

 

「ラブ、頼んでいた物、出来たかな?」

 

「まっかせて下さい!お父さんの会社が、精魂込めて作りましたから!!」

 

 なぎさに言われたラブが、紙袋から何か取り出すと、一同の目が点になる。ラブが取り出したのは、黒髪のかつらだったのだから・・・

 

「か、かつら!?」

 

「なぎさ・・・かつら何て何に使うの?」

 

 ほのかは思わず目を点にし、なぎさが何を考えているか分からず、思わずゆりが問いかけると、

 

「フフフ、付け髭もあるよ!さて、今年は電力不足でこの夏の暑さも大変な状況ですが、こんな時こそ・・・心の底から冷たくなろうよって言う事で・・・ジャ~ン!!」

 

 かつらと付けヒゲを付けたなぎさの姿に一同が笑いだす、なぎさも口元に笑みを浮かべながら、

 

「いや、笑うんじゃなくて、怖がって貰わなきゃ・・・はい、皆さん稲川なぎさです!!」

 

「アハハハ!何それぇぇ!!」

 

 ホラー話で有名な、稲川淳二のマネで怪談を話だすなぎさを見て、えりかがお腹を抱えて笑いだすも、なぎさの行動を見たりんが慌てて遮ると、

 

「ま、またそれですかぁぁぁ!?この間、ダークプリキュア5の壮行会でもやったじゃないですかぁ?」

 

 ビビリ顔のりんがなぎさに抗議するも、なぎさは口元にニヤリと笑みを浮かべ、怪談を続けた・・・

 

 なぎさは、ひかりも世話になっている、藤田アカネから大量に怪談を仕入れたようで、ノリノリで怪談を続けた。こまちも加わり、二人は楽しそうに怪談話を一同に聞かせ続けた・・・

 

「ハ、ハミィ、怖そうにしてるわね!?しょうがない、私が抱っこしてあげるわ」

 

 怪談話を聞かされる度に、顔色が悪くなっていくエレンは、怪談よりデザートを食べまくっていたハミィを、震える手で抱き上げると、引き攣りながら怪談を聞いていた。時にはハミィの両手を使って自分の耳を塞ぐ行為に、

 

「セイレーン・・・顔色が悪いニャ!そう言えば、セイレーンは怖い話や・・・・・」

 

「ワァァァ!やかましいわ!やかましいわ!やかましいわ!こ、怖く何てないわよ!」

 

 ハミィの言葉を、大声で引き攣りながら否定するエレンを見たりんは、涙目になりながら、仲間が居たと引き攣った笑みを浮かべると、エレンもそんなリンを見ると、仲間が居たと、引き攣った笑みを浮かべ返し、思わず二人はホッと安堵するのだった・・・

 

 そんなりんとエレンを見て、なぎさは不気味な笑みを浮かべると、突然真顔でエレンを指差し、

 

「あれぇ!?エレンの後ろに、白い服を着た女の人が・・・」

 

「「ギャァァァ!!」」

 

 エレンとりんが絶叫し、その声に、咲と舞、のぞみ、うらら、かれん、ラブと美希、つぼみとえりかも驚き騒ぎ始める。エレンは、ハミィを潰れそうなくらい抱きしめ震え出すと、それを見たほのかは、表情を曇らせながらなぎさを肘で突っつき

 

「なぎさ、質悪いよ!ゴメンなさいね、エレンさん!」

 

「ゴメンゴメン!そこまで怖がるとは・・・」

 

「覚えてなさいよぉぉ!!」

 

 ほのかが暴露して、なぎさが言った事が嘘だと分かったエレンは、涙目になりながら、なぎさを見つめて抗議するのだった。

 

 そうは言っても、エレンにも、なぎさが自分を仲間の輪に入りやすくする為、こんな行動をしているだろう事は分っていた。改めて仲間達を見渡したエレンは、

 

「みんなと初めて会った時は、こんな風になるなんて想像出来なかった・・・でも私は、またハミィと一緒に居れて、響と奏に会えて、そして、プリキュアになれて・・・本当に良かった!みんなとこうして仲良く慣れたから・・・みんな、今日はありがとう!これからもよろしくね!!」

 

「こちらこそ!!!」

 

 エレンの挨拶に、盛大な歓声で答える23人の少女達だった・・・

 

 24人の少女達は、新しき仲間を加え、思い思い語らい続けて居た・・・

 

 時間を忘れながら・・・

 

                 第五章:新たなる戦士

                     完結

 


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