プリキュアオールスターズif   作:鳳凰009

24 / 136
第二十四話:プリキュア引退!?

              第二十四話:プリキュア引退!?

 

1、ありえな~~い

 

 5月4日、TAKO CAFEのテラス席で、なぎさとほのかはテーブルに顔を付けて項垂れていた。その姿をひかりは申し訳なさそうにして見ていた。

 

「なぎさ、何時までしょげてるのよ!全く、いくら練習がきつかったからって、逃げ出すなんて、なぎさらしく無いじゃない!!」

 

 なぎさは、アカネの言葉に不満そうに口を尖らせながら、

 

「これにはいろいろ訳が・・・」

 

「ほのかも、心配したわよ!海外で行方不明になったってニュース見た時は驚いたわ!!ちゃんと出掛ける時は、誰かに言っとかなきゃ駄目だよ!!」

 

 ほのかも溜息を付きながら、

 

「はい・・・でも、これには深い訳が・・・」

 

「まあ、過ぎた事はしょうが無いか・・・はい、たこ焼きお待たせ!!まあ、これでも食べて、元気出しなねぇ!!」

 

 アカネは苦笑を浮かべながら、車の中に入っていった。目の前に置かれたたこ焼きを見ながら、再び溜息を付くなぎさとほのか、二人の視線が重なると、

 

「ほのかぁ・・・」

 

「なぁにぃ~?」

 

「こんな事って、ぶっちゃけ・・・」

 

「ありえな~~い」

 

 なぎさとほのかは顔を見合わせ苦笑すると、再びテーブルに顔を埋めて溜息を付いた。

 

 ひかりの側に居る妖精達、メップル、ミップル、ポルン、ルルンも、なぎさ達を心配していた。

 

「何で元気ないポポ?」

 

「ポルン、ルルン、そっとしてやるメポ」

 

「なぎさやほのかには、可哀想だったミポ」

 

(なぎささん、ほのかさん、ごめんなさい・・・私がもっとしっかりしていれば、お二人をあの戦いに巻き込まないで済んだかも知れないのに・・・)

 

 ひかりは、元気の無いなぎさとほのかを見て、益々落ち込むのだった・・・

 

 

「なぎさ、ほのか、そんなに落ち込んでいたら、ひかりが責任感じちゃうわよ?」

 

 苦笑を浮かべながらゆりがTAKO CAFEにやって来た。突然やって来たゆりに驚いた二人は、

 

「ゆり!えっ、ひかりが!?」

 

「ひかりさんが責任感じるって・・・どうして?」

 

「ひかりだけじゃ無いわよ・・・あなた達、そこで申し訳なさそうにしてないで、こっちにいらっしゃい!!」

 

 ゆりに呼ばれて、これまた申し訳なさそうに姿を現わす咲達4人と妖精達、のぞみ達5人とくるみ、人間姿のココ、ナッツ、シロップ、ラブ達4人とシフォンにタルト、つぼみ達三人とシプレ達が居た。

 

「みんなも来てたんだ!あれぇ!?美希も居る?・・・しばらくTAKO CAFEには来たくないって言ってなかったっけ?」

 

「いえ、あれと・・・これとは、別だし・・・」

 

 美希は、みんなでTAKO CAFEで親睦会を開いた時、裏切ったラブ、せつなによって、なぎさにたこ焼きを食べさせられ、おまけに咲からはたこ焼きパンを、のぞみからは、卵焼きからたこの足が飛び出した、最早何かの生物のような見栄えの卵焼きを、食べさせられるという散々な目に合った事があった・・・

 

「あなた達が落ち込んでいては、彼女達まで落ち込んでしまうわよ?」

 

 ゆりの言う事にも一理あるのはなぎさにも、ほのかにも分かっていた。のぞみ達は、自分達が敵の計略に掛かり、なぎさ、ほのか、ひかり、ゆりに迷惑を掛けた事を後悔していたのだから・・・

 

 だが・・・

 

「そんな事言ったってさ・・・ゆりは良いよ!コッペ様にパリまで送って貰えたから・・・私とほのかは・・・ひなたは先に帰っちゃったし、シロップはココ達送ってパルミエ王国に行っちゃうし、シフォンはタルトと自分の国に帰っちゃうし、せつなも、ウエスターとサウラー送りにラビリンスに帰っちゃって・・・気付いた時には私達、元居た場所に戻れなくなってたんだもん」

 

「戻った時に、あんな騒ぎになってる何て・・・」

 

 やっとの事で合宿所に戻ったなぎさを待っていたのは、無情にも練習が辛くて逃げ出した事にされる現実、なぎさはメンバーから外された・・・

 

 一方のほのかも、2日夕方になってようやく戻って来たシロップに乗って戻ったものの、帰って来ないほのかを心配した両親が、現地の警察に連絡、騒動になり、邦人女性行方不明とされニュースに取り上げられた後だった・・・

 

 なぎさとほのかは顔を見合わせると、また溜息を付くものの、

 

「でも、何かみんなの顔見てたら元気出てきた!!アカネさん、みんなの分もたこ焼き追加お願い!!」

 

「あたしは、クレープでお願いしま~す!」

 

 慌ててクレープを頼む美希に、一同からクスリと笑い声が漏れる。

 

「みんなが気にする事なんて無いんだよ!こうなる事が分かってたら、バロムの奴をもっとボコっておけば良かったかな・・・なぁんちゃって!」

 

「そうそう、ひかりさんも気にしないで!私となぎさも、みんなの顔見て元気貰ったから!!」

 

 何時もの調子を取り戻したなぎさとほのかを見て、ひかりも元気を取り戻す。

 

 

「あっ、居た居た・・・オォイ!」

 

「あれ!?ブンビーさんじゃない?」

 

 手を振りながら近づいて来る、作業着姿のブンビーにのぞみが気付くと、ココ、ナッツ、シロップ、タルトの挙動が不自然になった。

 

「いやぁ、探したよ、君達・・・実は、この間の件の事何だがね!ようやく君達に合いそうな仕事の依頼が入ってね!!」

 

「仕事って?」

 

 のぞみの質問に、ブンビーは何枚かの紙を用意して説明を開始する。

 

「今から幾つか仕事の内容言うから、気に入った仕事に協力して欲しいのよ!一つ目は・・・あっ、その前に君達の写真撮らせてくれる?」

 

 ブンビーが21人の少女達一人一人の写真を撮り始める。

 

「この前言ってた協力って、写真撮らせる事だったの?だったらお安いご用だよ!!」

 

 ニッコリ微笑み、カメラに向かいピースするのぞみを見て、

 

「いやいや、写真はあくまでも前振り・・・ええ、コホン!まず一つ目、彼女の居ないあなた達に幸せを届け・・・」

 

「ちょっと待って・・・何か嫌な予感がするナリ」

 

「そうだね、ちょっと見せてみて」

 

 咲とラブが、ブンビーが持っていた紙を取り上げる。内容を読んだ咲とラブは、ジロッとブンビーを睨むと、他の仲間達に取り上げた紙を手渡した。次々と手渡され、手紙を読んだ少女達の目が、変質者を見るような視線をブンビーに送る。

 

「あれぇ!?何か・・・その視線痛いんですけど?」

 

 テーブルを思いっきり叩いたゆりが、凄みをきかせてブンビーに詰問する。

 

「どういう事かしら!?納得いく説明をしてくれるんでしょうね?」

 

「ブンビーさん・・・この間の事は感謝してるけど、これを私達にさせるのが目的だったの?」

 

 せつながジッとブンビーを見つめる。

 

「まったく、また新手の変態が出たよ・・・」

 

 ハァと溜息を付くえりか、

 

(へ、変態って、酷い言われ方だな・・・あれぇ!?何か私・・・極悪人みたいな扱いにされてるような・・・)

 

 額に汗をかきながら、一同からの痛い視線を浴びるブンビーは、慌てて両手を振り、

 

「あっ、気に入らないなら良いんだよ!強制している訳じゃ無いし・・・でもおかしいなぁ!?君達、そこの妖精達から何も聞いてないの?」

 

 ブンビーが、ココ、ナッツ、シロップ、タルトの方を見ると、妖精達は皆ドキッとしたような表情になる。

 

「ココ・・・まさか!?」

 

「ナッツさん・・・ちゃんと説明してくれるんでしょうね?」

 

「シロップ!どういう事?」

 

「ココ様、ナッツ様、あんなイヤらしい真似をあたし達に・・・」

 

 のぞみ、こまち、うらら、くるみに責められ、更にりんやかれん、他のメンバーからも疑惑の視線を向けられたココ達は、思わず妖精姿に戻り、地面の上で駄々をこねながら否定する。

 

「ち、違うココ・・・ココはお礼するとは言ったけど、そんな変な約束はしてないココ!!」

 

「違うナツ、違うナツ!ナッツだって、そんな変な約束はしてないナツ!!」

 

「シロップは、約束自体してないロプ」

 

 ココ達が否定する中、こっそりその場を離れようとしたタルトだったが、美希に首を掴まれ持ち上げられる。ラブとせつなも近づき、三人はタルトを物凄い形相で見つめると、タルトは顔中に汗をかき狼狽えた。

 

「アワワワワワ・・・ピ、ピーチはん、ベリーはん、パッションはん、そう興奮せんと・・・」

 

「あ~ら、タルト!?何処に行こうというのかしら?」

 

「タルト・・・怒らないから・・・正直に言ってごらん・・・」

 

「さあ・・・タルトぉぉぉ」

 

 美希、ラブ、せつなが、ジワリジワリとタルトに顔を近づけていくと、

 

「ヒィィィ・・・か、堪忍やぁ!あの場では仕方なかったんやぁ」

 

 ラブ、美希、せつなに反省させられるタルトであった・・・

 

 

 不意に落ちていた紙を拾ったなぎさは、内容を読み始めると、

 

「あっ、これ良い!これなら良いよ!!」

 

 なぎさが乗り気なのを見て驚く一同、一人でも乗り気な娘が居た事にニンマリするブンビーだったが、

 

「あっ、いいのあった!?どれどれ・・・エェと・・・加音町復興支援・・・あっ、これは別に・・・」

 

「加音町って、響達の・・・何だ、まともなのもあるんじゃない!これなら私達もOKよ!!」

 

「はい、私もアカネさんに加音町に出張して貰えるように頼んでみます!!」

 

 咲、ひかりもこれなら喜んで協力すると申し出る。

 

(うわぁ・・・よりによってボランティアの依頼だったんだけどな・・・まあ、いいか)

 

 たいした儲け話にはならないだろうが、ブンビーは正式に21人の少女達に依頼するのだった。

 

「よ~し、加音町でボランティアするぞ~~決定!!」

 

 のぞみの言葉に、一同も手を上げ返事を返すのだった・・・

 

 

2、世代交代!?

 

 5月5日朝、時計台の中、セイレーンは、戻って来たトリオ・ザ・マイナーと共にメフィストの説教を聞いていた。

 

「いやぁ、この前は大変だった・・・闇が広がる中、突然不快な歌が響きだしてきてな・・・」

 

 メフィストの嫌みに、顔中から汗が噴き出すセイレーン、

 

「我が輩、世界の終わりの前に、あの歌で死ぬかと思った程だ・・・一体あんな歌、誰が歌ってたんだろうなぁ・・・セイレーンよ!?」

 

「さ、さあ?」

 

 メフィストの嫌みに、首を傾げながら惚けるセイレーンであったが、

 

「惚けるな!!お前だろうがぁぁぁ!!!・・・ウワァァ」

 

 興奮しすぎて思わず泉に落ちたメフィストだったが、何とか泉から這い出ると、顔面ドアップでセイレーンを脅し出す。

 

「まあ、今回だけは多めに見てやる・・・さっさと音符集めを再開せんか!!」

 

「は、はい!」

 

 慌てて、返事を返すセイレーン、その背後で含み笑いを浮かべるトリオ・ザ・マイナーであった・・・

 

 響と奏も、街の復興フェスティバルの手伝いで朝から頑張っていた。加音町は闇の中心地と化した事もあり、至る所に闇の傷跡が残っていた。

 

「あっ、居た居た!響!奏!手伝いに来たよ!!」

 

「なぎささん、ほのかさん、それにみんなも・・・ありがとう!!」

 

 数日振りの再会を果し、響達も嬉しそうになぎさ達一同と語らっていた・・・

 

 フェスティバルには、いろいろな街からも参加していた。アカネのTAKO CAFE、咲の家のベーカリーPANPAKAパン、久しぶりに出張出店したナッツハウス、カオルちゃんのドーナツ屋、えりかの家フェアリードロップ、りんとつぼみの家からは合同で花屋を開いていた。この街の店、奏の家Lucky Spoonもケーキを出店していた。

 

 皆商売度外視で、このフェスティバルの収益は、加音町に全額寄付を申し出ていた。加音町の人々は、皆の行為に感謝した・・・

 

 この賑わいに刺激されたのか、音符達も何体か集まっていた。

 

「やはりこの賑わいに刺激されたわね・・・出でよ、ネガトーン!!」

 

 セイレーンは音符を見付けてネガトーンに変える。その数三体・・・

 

 その時、騒ぎを聞きつけ響と奏、そしてハミィが駆けつけた。

 

「セイレーン、何でこんな事するんだよ!私達、一緒に闇からこの世界を守ったじゃない!!」

 

「五月蠅いわね・・・もう、休戦協定は終わったのよ!!さあ、ネガトーン共、不幸のメロディを撒き散らしなさい!!」

 

 ネガトーンから発せられるメロディが、人々を悲しみに陥れる。満足そうに観客席を見渡すセイレーンだったが、

 

「良いわよ!もっと悲しみを・・・エッ・・・エェェェ!?な、何であの娘達が居るの?」

 

 なぎさ達21人を見付け、顔中に汗を掻くセイレーンは激しく動揺する。

 

「ねえ、あの猫・・・私達と一緒に戦ったセイレーンじゃない?」

 

「本当だわ・・・どういう事?」

 

 かれんとこまちがセイレーンを見て困惑する。

 

 側に居たハミィが、一同に大体の説明をすると、一同がセイレーンを見つめる。セイレーンは口を大きく開け惚けていると我に返り、

 

(まずい・・・非常にまずい・・・何でよりによってこんな時に此処に現われるのよ?)

 

「しゃあない、セイレーンと戦うのは気が引けるけど・・・」

 

 響達の加勢に向かおうとするえりかに、

 

「待って!ここは私と奏に任せて!!行くよ、奏」

 

「OK、響!」

 

「「レッツプレイ!プリキュア!モジュレーション!!」」

 

「爪弾くは荒ぶる調べ!キュアメロディ!!」

 

「爪弾くはたおやかな調べ!キュアリズム!!」

 

「「届け、二人の組曲!スイートプリキュア!!」」

 

 メロディ、リズムが三体のネガトーンに立ち向かうのを見る一同、

 

「敵は三体居るのに、大丈夫でしょうか?」

 

 不安がるつぼみにたいし、なぎさとほのかは笑顔を浮かべ、

 

「あの娘達なら、きっと大丈夫!!」

 

「そうね、彼女達も随分成長した筈だものね」

 

 なぎさとほのかは、彼女達の戦い振りを見届けた・・・

 

 なぎさ達の言葉通り、メロディ、リズムは格段に強さを増していた。

 

 格闘戦で素晴らしいコンビネーションを繰り出し、二人の新技、ミュージックロンドが、パッショナートハーモニーが、ネガトーンを打ち破り、音符を元の姿に変え保護をする。

 

「キィィ・・・覚えてらっしゃい!!」

 

 撤退するセイレーンの姿を、寂しそうに見送るハミィを、ゆりが抱き上げ優しく撫でる。

 

「大丈夫、あの娘は、本当は心の優しい娘・・・きっと、またあの時みたいに一緒に歌える日が必ず来るわ!!」

 

 ハミィはゆりの言葉に嬉しそうに何度も頷いた。

 

(あの娘達も、もう立派にプリキュアとして戦っていけるわ)

 

 メロディ、リズムの成長振りを見届けたなぎさ、ほのか、ゆりは、ある決意をするのだった・・・

 

 

 

「プリキュアを辞める!?そ、そんな・・・」

 

 なぎさ、ほのか、ゆりからの引退宣言とも取れる言葉を聞き、かれんは激しく動揺する。

 

「ううん、辞めるわけじゃないわ・・・ただ一線を引くって事!」

 

「あなた達は、もう私達が側に居なくても十分戦っていけるわ!」

 

「今まで戦ってきたようにね!」

 

 ほのか、ゆり、そしてなぎさが、20人の仲間達をニッコリしながら称えた。

 

「でも、みなさんが不在だった今回の事のような事が起きたら・・・」

 

 ひかりは、不安な本心を打ち明けるも、三人は苦笑を浮かべながら、

 

「私達だって、みんなを見捨てた訳じゃないわ!もしもの時は・・・きっと駆けつける!!」

 

「それにさ、私達ももう、高三だしね!」

 

「大丈夫、あなた達はそれぞれがこの世界を守ってきた戦士!自信を持って良いはずよ!!」

 

 そう言うと、仲間達を見てニッコリ微笑むほのか、なぎさ、ゆり・・・

 

 三人は、プリキュアの活動を後輩達に託そうとする・・・

 

 そして、後輩達も、彼女達の思いを受け取った・・・

 

 だがこの世界は、なぎさ、ほのか、ゆり、まだ彼女達三人の力を必要としていた・・・

 

                 第三章:闇の救世主!

                     完結

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。